説明

銀層を有するフイルム又はシート

【課題】危険度の高いエッチング液を使用することなく、銀メッキ層との密着性も高く、良好な銀層を有するフィルムやシートを経済的に得ようとする。
【解決手段】プラスチック製のフイルム又はシートの表面に、ウレタン変性した飽和ポリエステル樹脂を含有する組成物を塗布した処理層を設ける。この処理層の上に銀鏡反応により銀層を生成する。これによって、良好な銀層を有するフイルム又はシートを得ることができる。
また、プラスチック製のフイルム又はシートの表面に飽和ポリエステル樹脂を含有する組成物を塗布した下処理層を設け、この下処理層の上に上記ウレタン変性した飽和ポリエステル樹脂の処理層を形成する。この処理層の上に銀鏡反応により銀層を生成する。これによって、良好な銀層を有するフイルム又はシートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀メッキ層を有するフイルム又はシートに関する。特に、フイルム又はシート基材の表面に銀鏡反応によって形成する銀メッキ層の密着性を良好にするプライマーを備えた銀層を有するフィルム又はシートの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、銀溶液とその還元剤を混ぜ合わせると瞬時に金属銀が析出する銀鏡反応を利用したメッキ方法は、広く用いられて来た。しかしながら、この方法によって析出した銀は、基材に対して密着性が悪かったり、その後の処理によって直ぐに酸化が始まったりすることも多い。また、銀の析出の仕方によって銀層表面の平滑性が異なり、艶消し状態の銀層になったり、反射率が95%以上の平滑な表面になったりし、その制御が難しかった。これらの問題点を解決するために、これまでに様々な工夫が為されてきた。
【0003】
例えば、特開平11−335858号公報(特許文献1)には、従来の技術として、ABS樹脂等のプラスチックに化学鍍金を施す方法乃至その前処理方法が知られていたことが記載されている。
すなわち、この化学鍍金法等は、先ず、プラスチックをエッチング液に15〜30分間浸漬して表面を粗化し、次に、塩化第一スズの塩酸溶液の浴に浸漬し、水洗後活性化浴に浸漬し、更に水洗して鍍金浴に5〜10分間浸漬した後、鍍金浴から引上げ、水洗、乾燥する工程からなる。この化学鍍金法によれば、被鍍金物を各工程ごとに鍍金浴に浸漬することから、鍍金浴を設置するのに大きなスペースを要し、また、工程に要する時間がかかり、更に、メンテナンスに手間を要しコストアップの原因ともなる等の問題があったことが記載されている。
そして、この問題の解決のために、銀鏡面を形成する下地を調整(エッチング処理)し、該下地に活性化処理を施し、次いで、水洗処理し、金属塩と還元剤を反応させて銀鏡面を形成する方法において、塩化第一スズと銀等の貴金属塩を含む活性化処理剤をスプレー法で吹付けることによって活性化処理(アクティベイティング)を施し、また、金属塩含有溶液と還元剤含有溶液からなる銀鏡反応処理剤をそれぞれスプレー法により同時的に吹付けることを特徴とする銀鏡面の形成方法が開示されている。(特許文献1)
【0004】
上記開示においてもエッチング処理を行っているが、エッチング液は極めて危険度の高い薬液で取り扱いには十分な注意が必要である。また、エッチング処理を浸漬によって行った場合には、処理後の洗浄液も有害物質を含んだものであり廃水処理に多大の費用を要する。また浸漬処理は、シートやフィルム類に全て適用できるものでもない。
【特許文献1】特開平11−335858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の浸漬その他のエッチング工程を省き、プライマー処理を行うことによって、フィルムやシートに適した加工法により、銀メッキ層との密着性も高く、良好な銀層を有するフィルムやシートを経済的に得ようとするものである。
そして、従来のプライマーに見られるような、添加物に頼るのではなく、有機化学的な見地から銀鏡反応がプライマー層の上ではスムーズに進行し、銀鏡反応後は還元剤のリンス、水洗等の簡易処理だけで、基材に密着良好で高反射率から低反射率までの金属銀層を有するフィルム・シート得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、試験、研究の過程において、ある特定の化学構造が銀粒子の析出の仕方に影響を与えているのではないかと考え、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などを有する各種化合物をプライマーとして検討した結果、線状の飽和ポリエステル系、脂肪族ポリアミン系が本発明の課題解決のために極めて高い適合性を有していることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
即ち、飽和ポリエステル系のプライマーを使用すると銀鏡反応が速やかに進行し、密着が良好で、銀析出面が鏡面で反射率の高い金属銀層から、艶消し面で反射率の低い金属銀層迄を得ることができる。また、飽和ポリエステル又は脂肪族ポリアミンの上を更に紫外線硬化樹脂で覆ったプライマー層を作っても同様に良好な金属銀層を得ることができる。また、ウレタン変性脂肪族飽和ポリエステル、紫外線硬化樹脂の種類の選択により表面が拡散反射に必要とされる艶消状の表面を得ることも容易になる。
【0007】
本発明は、プラスチック製のフイルム又はシートの表面に、ウレタン変性した飽和ポリエステル樹脂を含有する組成物で処理した処理層を設け、該処理層の上に銀鏡反応により生成する銀層を設けることによって、良好な銀層を有するフイルム又はシートを得るものである。
また、プラスチック製のフイルム又はシートの表面に飽和ポリエステル樹脂を含有する組成物で処理した下処理層を設け、この下処理層の上に上記ウレタン変性した飽和ポリエステル樹脂の処理層を形成し、該処理層の上に銀鏡反応により生成する銀層を設けることによって、良好な銀層を有するフイルム又はシートを得るものである。
さらに、プラスチック製のフイルム又はシートの表面に飽和ポリエステル樹脂又は脂肪族ポリアミンを含有する組成物で処理した処理層を設け、この処理層の上の全面または一部に紫外線硬化樹脂組成物による加工層を形成し、この加工層の上に銀鏡反応により生成する銀層を設けたことを特徴とする銀層を有するフイルム又はシートを得るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、銀鏡反応工程中の最初のエッチング処理工程が省略できるようになり、従来の浸漬処理法では高速処理できなかった長尺物のフィルムも高速で効率的に処理できるし、重金属を含む処理液の排水処理の問題も考慮しなくて済む。そして、このフィルムに対してプライマー処理に続いて、銀鏡反応処理を効率的に行うことができ、極めて経済的に高品質の銀層を有するフイルムを得ることができる。
また、フィルムに密着した良好な銀層が得られることにより、光学分野での高反射率面や、低反射率面が得られて光拡散フィルム、画像形成に応用できるし、レジスト塗布によりFPC(フレキシブルプリンテッドサーキット)フィルム状の電気回路も経済的に得ることができる。
【0009】
このプライマーには従来使用されてきた、塩化錫のような添加物を加える必要が無いために、銀層の酸化や劣化が起き難い。また、この飽和ポリエステルや脂肪族ポリアミンは、現在フイルムやシートに大量に使用されているPET(ポリエチレンテレフタレ−ト)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)等に密着良好なため応用分野が極めて広い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のプライマー処理層に使用される飽和ポリエステル樹脂は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから得られる線状飽和ポリエステルである。
その中で、特に銀メッキ層と密着性が良く、高反射率の銀層から低反射率の銀層まで得ることができるのはイソシアネートによってウレタン変性した線状飽和ポリエステルである。このことはウレタン結合とエステル結合、水酸基とカルボン酸基の相乗効果によるものと推定される。
【0011】
上記ウレタン変性した線状飽和ポリエステルは、例えば、溶剤に溶解したものをフイルムやシートの表面にそのままコーティングし、溶剤を揮発さること等によってプライマー層を形成することができ、使用可能である。また、このウレタン変性した線状飽和ポリエステルのポリマー中にある水酸基やカルボン酸基を利用して、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネートと反応させることも可能である。
【0012】
また、プラスチックフイルムやシートの材質などによっては、先ずその表面にウレタン変性していない飽和ポリエステルを約0.1〜5μm程度(乾燥後;以下同じ)コーティングし、その上に上記ウレタン変性した線状飽和ポリエステルをコーティングすることによってプライマー層を形成してから、その後の銀鏡処理などを行うようにすると好ましいことがある。
【0013】
更に、ウレタンアクリレート或いはエポキシアクリレートオリゴマーを含有する紫外線硬化樹脂プライマーを使用すれば、上記飽和ポリエステルプライマーよりも反射率が高い銀層が得られることを見出した。この場合、紫外線硬化樹脂プライマーがPETフィルムに十分密着しないこともあるので、先ず飽和ポリエステルや脂肪族ポリアミンの約0.1〜5μm程度の塗布層を形成し、その上に紫外線硬化樹脂プライマーを約5〜15μm程度に塗工して銀メッキ塗装を行うと、PETフィルムに良く密着し、銀メッキ層に約90%以上の反射率が得られる。この飽和ポリエステル系のプライマーは、PETフィルム及び紫外線硬化樹脂プライマーの双方に密着性が良好で、プライマーとしての要求特性を満たすものであれば適宜のものを使用することができる。
【0014】
この紫外線硬化樹脂プライマーには、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ウレタンアクリレートは、ウレタン骨格を有する反応性オリゴマーであって、具体的には新中村化学工業株式会社の「NKオリゴシリーズ」(例えば、U−6LPA、U−6H)、荒川化学工業株式会社の「ビームセット500シリーズ」、日本合成化学の紫外線硬化型樹脂である「紫光シリーズ」などが挙げられる。
【0015】
上記エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸、カルボキシル基を持つ(メタ)アクリレートを反応させて得られる反応性オリゴマーである。具体的には、新中村化学工業株式会社の上記とは別の「NKオリゴシリーズ」(例えば、ビスフェノールAタイプ、フェノールノボラックタイプ、クレゾールノボラックタイプ等のエポキシ樹脂にカルボキシル基を持つ(メタ)アクリレート等を反応させた化合物)、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールアクリレートシリーズ」、日本化成株式会社の4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0016】
上記ポリエステル(メタ)アクリレートは、末端にカルボキシル基を有するポリエステルにグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得られる反応性オリゴマーである。具体的には、東亞合成株式会社の「アロニックス」(M−7100,M−8030,M−8060)、荒川化学工業株式会社の「ビームセット700シリーズ」、ダイセル・サイテック株式会社のポリエステルアクリレート等が挙げられる。
【0017】
上記ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートは、ポリエステルポリオールとイソシアネートとを反応させ、反応物を更にヒドロキシアルキルアクリレートと反応させて得られる反応性オリゴマーである。具体的には、株式会社トクシキの「ハイコープ・AUシリーズ」、新中村化学工業株式会社の上記とは別の「NKオリゴシリーズ」(例えばU−108A、U−200AX、UA―4400、UA−6100)、荒川化学工業の「ビームセットシリーズ」等が挙げられる。
【0018】
これらの紫外線硬化樹脂プライマーは、単独で用いたり2種以上で用いることができる。また、粘度が高くて加工性が低い場合には希釈剤を用いることができる。希釈剤としては、水酸基、カルボキシル基、フェニル基などの官能基を有するモノマーを好適に使用することができる。
希釈剤としての水酸基を有するモノマーには、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
上記カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0020】
上記フェニル基を有するモノマーとしては、例えば、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等がある。
【0021】
その他の希釈剤も、希釈剤の50重量%以下の量で用いることができる。その他の希釈剤としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン等が挙げられる。
【0022】
また、上記プライマー処理層として、上記した紫外線硬化樹脂層の下に形成した上記飽和ポリエステルの代わりに使用する脂肪族ポリアミンとしては、例えば、変性脂肪族ポリアミン(NK−350)(日本触媒株式会社製)等がある。この変性脂肪族ポリアミンは、PETフイルムやシートに対して密着性が良好であり、溶液型で架橋剤を必要とせず、加熱乾燥することによってプライマー層を作ることができる。
【0023】
上記の如くフイルム表面にプライマー層を形成したら、このプライマー層を乾燥し、下記銀鏡反応処理の前にその表面に活性化処理を行うとよい。この活性化処理は、通常、水1リットルに、塩酸10〜40ml、塩化第一スズ1〜5g、塩化パラジウム0.001〜0.005gを含む活性化処理剤を、スプレーなどによって均一に塗布する。この場合、塩化第一スズの塩酸溶液と、塩化パラジウムの塩酸溶液を、双頭ガンやダブルガンによって同時に吹付ける方法で行うこともできる。上記処理後に、水洗してからエアーブローによって活性化処理剤を除去する。
【0024】
上記活性化処理が終わったら、銀層を形成する銀鏡反応処理を行う。この処理は、銀金属塩溶液と還元剤含有溶液をプライマー層の上に噴霧しながら反応させることによって、銀金属を析出させて銀層を形成する。通常、銀金属塩溶液と還元剤含有溶液をそれぞれ双頭ガン、ダブルガン、噴霧器等によってスプレー法により同時的に吹付け塗布することによって行うとよい。
【0025】
上記金属塩溶液としては、一般的には、硝酸銀の水溶液にアンモニアと水酸化ナトリウム水溶液を加えたものであり、例えば、水1リットルに、水酸化ナトリウム5〜25g、25%アンモニア水20〜70g、硝酸銀2〜20gを含むものがある。
また、還元剤含有溶液として、一般的には、グルコン酸ナトリウム、グルシトール、ブドウ糖、酒石酸、ホルムアルデヒド等の還元剤と水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ成分とを含む水溶液があり、例えば、水1リットルに、酒石酸1〜5g、グルコース10〜50g、ホルムアルデヒド0.05〜4gを含有するものがある。
【0026】
上記銀鏡反応の処理剤の吹付け終了後、再度スプレーにより純水などの洗浄水を吹き付けて洗浄し、更に、5〜10重量%程度のチオ硫酸ナトリウム水溶液の洗浄還元液によって洗浄還元処理を行い、水洗してから、エアーブローによって洗浄水を吹き飛ばした後、ヒーター等で乾燥する。
【0027】
上記のようにして形成した銀層の上には、これを保護するために、通常、トップコート層を設けて覆うようにする。このトップコート層は、銀鏡反応によって生成した銀層に良く密着し、透明で硬度の高いものが好ましい。
このトップコート層は、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂等によって形成される。又、アクリル変性のポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステルウレタン樹脂等の紫外線硬化性の樹脂も用いることができる。この場合、紫外線硬化樹脂組成物を使用すれば、トップコート層を形成する工程時間を大幅に短縮することが可能となる利点がある。
【実施例】
【0028】
実施例、比較例を作成するに当たって次の材料を用意した。
1.フイルム基材:東洋紡株式会社製の厚さ100μmの無処理PETフイルム
2.プライマー処理剤
2−1.バイロン500:東洋紡株式会社製の飽和ポリエステル・バイロン500の50%トルエン溶液
2−2.バイロン1400:東洋紡株式会社製のウレタン変成飽和ポリエステル・バイロン1400の50%トルエン溶液
2−3.バイロン3200:東洋紡株式会社製のウレタン変成飽和ポリエステル・バイロン3200の50%トルエン溶液
2−4.ウレタン架橋剤(1):大橋化学工業株式会社製のDN60
2−5.ウレタン架橋剤(2):大橋化学工業株式会社製のIP60
2−6.NK−350:日本触媒株式会社製の固形分が35%、溶剤のトルエンが45%、イソプロピルアルコール(IPA)が20%の変成脂肪族ポリアミン
2−7.溶媒:トルエン/メチルエチルケトン(MEK)=1/1
2−8.溶媒:トルエン/イソプロピルアルコール(IPA)=45/20
3.活性化処理剤:水1Lに塩酸25ml、塩化第1スズ3g、塩化パラジウム0.003gを加えたもの。
4.銀鏡反応処理剤:水1Lに水酸化ナトリウム10g、25%アンモニア水40g、硝酸銀7gを加えたもの。
5.還元剤:水1Lに酒石酸3g、グルコース30g、ホルムアルデヒド2gを加えたもの。
6.洗浄還元液:7重量%チオ硫酸ナトリウム水溶液
7.紫外線硬化樹脂
7−1.ウレタンアクリレート(1):日本合成化学株式会社製の紫光6640B
7−2.ウレタンアクリレート(2):日本合成化学株式会社製の紫光1700B
7−3.エポキシアクリレート(1):ダウ社製のエポキシ樹脂828にアクリル酸2モル付加反応物
8.光反応開始剤:チバガイギー社製のダロキュア1173
9.トップコート剤:大橋化学工業株式会社製のガンメッキ用ラスタートップクリアーTMD(アクリル系の溶剤型トップコート剤)
【0029】
処理プロセスの概要は、次のとおりである。
フィルム基材⇒プライマー塗布乾燥⇒活性化処理⇒水洗⇒エアーブロー⇒銀鏡塗装⇒水洗⇒還元液処理⇒水洗⇒エアブロー⇒乾燥⇒トップコート塗布乾燥
【0030】
(実施例1)
表1に表示する材料を、表示量(重量部:以下同じ)により、バイロン1400の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加えてウレタン変成飽和ポリエステル溶液を作り、これを厚さ100μmの無処理PETフィルムに厚さ3μm(乾燥後)に塗工して乾燥し、その後活性化処理剤をスプレーガンで塗布し、エアーブローで活性化処理剤を除去して、水洗し、水を除去した。その後、これに2頭ガンで銀鏡反応処理剤と還元剤とを混合塗布して銀鏡を作成し、純水をスプレーガンで吹き付けて洗浄し、洗浄還元液(チオ硫酸ナトリウム)を吹き付けて、水洗、エアーブローを行い、その後70℃で15分乾燥した。こうして形成した銀メッキ層の上に、トップコート剤を塗布し、80℃で20分乾燥を行い、銀層を有するフイルムを得た。
【0031】
(実施例2)
バイロン1400の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加え、さらにウレタン架橋剤(1)の10重量部を加えてウレタン変成飽和ポリエステル溶液を作り、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0032】
(実施例3、4)
バイロン1400の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加え、さらに実施例3ではウレタン架橋剤(2)の10重量部を、実施例4ではウレタン架橋剤(2)の25重量部を加えて、ウレタン変成飽和ポリエステル溶液を作り、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0033】
(実施例5)
バイロン3200の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加えてウレタン変成飽和ポリエステル溶液を作り、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
(実施例6,7)
表2に示すように、バイロン3200の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加え、さらに実施例6ではウレタン架橋剤(1)の10重量部を、実施例4ではウレタン架橋剤(2)の25重量部を加えて、ウレタン変成飽和ポリエステル溶液を作り、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0034】
(実施例8)
バイロン500の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加えて飽和ポリエステル溶液を作り、これを厚さ100μmの無処理PETフィルムに厚さ3μm(乾燥後)に塗工して乾燥し、さらにその上にバイロン1400の100重量部とウレタン架橋剤(1)の10重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加えて作ったウレタン変成飽和ポリエステル溶液を厚さ2μm(乾燥後)に塗工し乾燥してプライマー層とし、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0035】
(比較例1)
バイロン500の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加えて飽和ポリエステル溶液を作り、これを厚さ100μmの無処理PETフィルムに厚さ3μm(乾燥後)に塗工、乾燥してプライマー層とし、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
(比較例2)
厚さ100μmの無処理PETフィルムにプライマー処理を行わず、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
(比較例3)
脂肪族ポリアミンのNK−350の100重量部を溶媒(トルエン/イソプロピルアルコール=45/20)600重量部に加えて脂肪族ポリアミン溶液を作り、これを厚さ100μmの無処理PETフィルムに厚さ3μm(乾燥後)に塗工、乾燥してプライマー層とし、他は実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0036】
(実施例9)
表3に表示する材料を、表示量により、バイロン500の100重量部を溶媒(トルエン/メチルエチルケトン=1/1)900重量部に加えて飽和ポリエステル溶液を作り、これを厚さ100μmの無処理PETフィルムに厚さ3μm(乾燥後)に塗工、乾燥した。さらにその上に、紫外線硬化樹脂のウレタンアクリレート(1)の100重量部に、希釈剤の2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートの100重量部と反応開始剤のダロキュア1173の6重量部を加えたものを厚さ8μm(乾燥後)に塗布し、80w/cmの高圧水銀ランプを使用して2秒間紫外線照射(照射量:1J)を行った。また、トップコート塗布処理の乾燥は、80℃×30分で行った。その他は、上記実施例1と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0037】
(実施例10、11)
実施例10では紫外線硬化樹脂の希釈剤にヒドロキシエチルアクリレートを、実施例11ではフェノキシジエチレングリコールアクリレートを使用した他は、上記実施例9と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0038】
(実施例12)
紫外線硬化樹脂のウレタンアクリレート(2)を100重量部と、希釈剤の2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートの100重量部と反応開始剤のダロキュア1173の6重量部を加えたものを使用した他は、実施例9と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
(実施例13、14)
表4に示すように、実施例13では紫外線硬化樹脂の希釈剤にヒドロキシエチルアクリレートを、実施例14ではフェノキシジエチレングリコールアクリレートを使用した他は、上記実施例12と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0039】
(実施例15)
脂肪族ポリアミンのNK−350の100重量部を溶媒(トルエン/イソプロピルアルコール=45/20)600重量部に加えて脂肪族ポリアミン溶液を作り、これを厚さ100μmの無処理PETフィルムに厚さ3μm(乾燥後)に塗工、乾燥した他は、実施例9と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0040】
(比較例4)
紫外線硬化樹脂にエポキシアクリレート(1)を、希釈剤にN,N−ジメチルアクリルアミドを使用した他は、実施例9と同様にして銀層を有するフイルムを得た。
【0041】
(試験・評価)
フイルム上に形成された銀メッキ層を評価するために、最後のトップコート処理を行っていないものについて次の試験を行った。
1.銀鏡反応表面状態:目視によって評価した。
評価基準:◎・・・表面状態が優良
○・・・表面状態が良
×・・・表面状態が不良
その他目視状態を表記
2.反射率:60℃での反射率を%で表記した。
3.剥離試験:銀メッキ層表面にセロハンテープを貼り付け、これを剥がした後の剥離
していない量を貼付前のものと比較した。
剥離の見られないものは100/100である。
4.折り曲げ密着試験:銀メッキ層を表側にして180度折り曲げた後で元に伸ばし、
折り目部分にセロハンテープを貼り付け、これを剥がした後の剥離した後の状態を
目視で評価した。
【0042】
(結果)
上記各試験の結果は、それぞれ表1〜4に表記した。
(考察)
プライマー処理を飽和ポリエステルで行った、実施例1〜4、8では、銀鏡状態が良く、反射率も85〜93%であって、密着試験の結果も良好であり、180度折り曲げ試験においても剥離が見られず、優良である。また、実施例5〜7のものでは、反射率が33〜56%であって、艶消しまたは半艶の銀鏡面状態であり、密着試験の結果も良く、折り曲げ試験においても剥離が見られず良好であることが判る。
これに対して、比較例1では密着試験の結果と折り曲げ試験の結果においては良い結果が出ているが、鏡面が白ボケしていて不良である。比較例2は、フイルムにプライマー処理を行っていないので、密着性が悪いし、折り曲げ試験において部分的に剥離が見られ、不良である。また、比較例3では、プライマー処理においてNK−350(脂肪族ポリアミン)の上に紫外線硬化樹脂層を欠いており、密着性は良いが、鏡面状態が不良である。
プライマー処理を飽和ポリエステルで行った後で紫外線硬化樹脂で処理したものにおいて、実施例10、12、13、15では、銀鏡状態が優良であり、反射率も75〜96%であって、密着試験の結果も良好であり、180度折り曲げ試験においても剥離が見られず、優良である。また、実施例9、11、14のものでは、銀鏡状態が良く、反射率が65〜76%であって、密着試験の結果も良く、折り曲げ試験においても剥離が見られず良好であることが判る。
これに対して、比較例4では鏡面状態が不良であり、これは希釈剤が水酸基、カルボキシル基、フェノキシ基を持っていないことによるものと考えられる。
【0043】
【表1.2.3.4】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製のフイルム又はシートの表面にウレタン変性した飽和ポリエステル樹脂を含有する組成物で処理した処理層を設け、該処理層の上に銀鏡反応により生成する銀層を設けたことを特徴とする銀層を有するフイルム又はシート。
【請求項2】
プラスチック製のフイルム又はシートの表面に飽和ポリエステル樹脂を含有する組成物で処理した下処理層を設け、該下処理層の上にウレタン変性した飽和ポリエステル樹脂の処理層を形成し、該処理層の上に銀鏡反応により生成する銀層を設けたことを特徴とする銀層を有するフイルム又はシート。
【請求項3】
プラスチック製のフイルム又はシートの表面に飽和ポリエステル樹脂を含有する組成物で処理した処理層を設け、該処理層の上の全面または一部に紫外線硬化樹脂組成物による加工層を形成し、該加工層の上に銀鏡反応により生成する銀層を設けたことを特徴とする銀層を有するフイルム又はシート。
【請求項4】
プラスチック製のフイルム又はシートの表面に脂肪族ポリアミンを含有する組成物で処理した処理層を設け、該処理層の上の全面または一部に紫外線硬化樹脂組成物による加工層を形成し、該加工層の上に銀鏡反応により生成する銀層を設けたことを特徴とする銀層を有するフイルム又はシート。
【請求項5】
上記紫外線硬化樹脂組成物は、その紫外線硬化樹脂がウレタンアクリレートまたはエポキシアクリレートであり、希釈剤が水酸基含有モノマー、フェニル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーから選ばれる組成物であることを特徴とする請求項3または4に記載の銀層を有するフイルム又はシート。
【請求項6】
上記プラスチック製のフイルム又はシートがポリエチレンテレフタレート製であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の銀層を有するフイルム又はシート。

【公開番号】特開2007−223276(P2007−223276A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49889(P2006−49889)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】