説明

銅含有酸性廃液からの銅の除去回収方法及び装置

【課題】 産業廃棄物として処分されていた塩化銅含有エッチング廃液や電解銅箔メッキ
浴の廃液などの銅を高濃度で含有する強酸性の廃液を、効率的かつ低いスラッジ発生量で
処理して、酸化銅を沈殿物として回収するための方法及び装置を提供すること。
【解決手段】 銅含有酸性廃液と酸化剤との混合液をアルカリ剤溶液に注加し、生成する
固形物を取得することを特徴とする銅含有酸性廃液からの銅の回収方法およびこの方法に
使用する銅含有酸性廃液からの銅の回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銅プリント基板を塩化第二銅エッチング液でエッチングする際に生じるエッチング廃液や電解銅箔製造におけるメッキ浴液の更新廃液などのような、銅イオンと酸性イオンを高濃度で含有する酸性廃液を処理して銅を除去回収する方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅イオンを高濃度で含有する酸性の廃液(以下、「銅含有酸性廃液」という)としては、銅プリント基板を塩化第二銅エッチング液でエッチングする際に生じるエッチング廃液や電解銅箔製造におけるメッキ浴液の更新廃液などが知られている。これらの廃液は、銅濃度が5〜20質量%(以下、単に「%」で示す)程度と高い一方で、共存する塩化物イオンや硫酸イオンの濃度も通常5〜30%と高い。
【0003】
このような銅含有酸性廃液を対象にした銅の回収処理としては、イオン化傾向の差を利用して例えば鉄スクラップと反応させて金属銅を析出させて回収する方法が一部で行われている。しかし、この方法では廃液からの銅回収率が低いとともに、銅イオンとの反応により溶出した鉄イオンなどと回収されなかった銅イオンとが含まれる廃液が残るため、この廃液の処理が別途必要であり効率的な処理方法とは言いがたい。
【0004】
また、一般的な銅含有酸性廃液の処理方法としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性物質を添加することにより重金属類を水酸化物として沈殿除去する処理方法が知られているが、この方法は生成するスラッジの嵩が高く量も多いため、銅イオンの含有濃度が高い銅含有酸性廃液の処理には適さない。
【0005】
更に、エッチング廃水については、アルカリを添加して銅イオンを銅水酸化物として不溶化し、更に酸化剤を添加して酸化銅にして回収する処理方法(特許文献1等)が試みられている。しかしながら、当該技術において酸化剤として次亜塩素酸塩やさらし粉などの塩化物イオンを含む酸化剤を使用した場合には、添加後の液中の塩化物イオン濃度が更に濃くなることで塩化銅と酸化銅との複塩の生成やスラッジへの塩分の混入が懸念されるなどの問題点があり、また、高濃度廃液を対象にした場合には回収される酸化銅への不純物含有量が多くなるなど、改善すべき点が多い。
【0006】
一方、酸化剤として過酸化水素を使用する場合には前述の塩類濃度の上昇は起こらないが、次のような問題点から、この方法では効率的な処理が実施出来ない。すなわち、銅イオンと、塩化物イオンあるいは硫酸イオンが高濃度で共存する強酸性廃液を処理する場合、酸性であるこの液に対してアルカリ剤を添加して酸性側から中性付近ないしアルカリ性へと中和を進める方法では、pH≒1.5以上で水酸化銅と塩化銅あるいは硫酸銅との複塩を主成分とする固形物が析出する。そして、この複塩を主体とする固形物は不純物濃度が高いだけでなく、酸化銅に比べると嵩高であるために、銅を高濃度で含むこの廃液の処理に採用した場合は、中和の途中でペースト状の汚泥に変化し、処理が困難となってしまう問題があった。
【0007】
さらにこの複塩は、過酸化水素では酸化分解が進行しない一方で、過酸化水素の分解触媒として作用するため、この固形物が析出した液に酸化剤として過酸化水素を加えても、過酸化水素が一方的に分解消費され、酸化銅への酸化処理が不完全な状況で反応が終結してしまうという問題もあった。
【0008】
この複塩を主成分とする固形物析出に伴う対象液のペースト状化を回避するためには、中和処理に際して銅イオン濃度が10g/L程度以下、塩化物イオンあるいは硫酸イオン濃度が20g/L程度以下になるように希釈することが有効である。しかし、このためには多くの希釈水を必要とし、またそれに伴い処理する装置も大型となるという問題点がある。
【0009】
更にまた、銅イオンを含有するエッチング廃液のように、廃液に含有される銅イオンと、塩化物イオンあるいは硫酸イオンが高濃度で共存する強酸性廃液を処理する場合には、銅を含有する酸性廃液に過酸化水素を先に添加して共存させておいても、これにアルカリ剤を注入して酸性側から中性ないしアルカリ性へと中和反応を進めた場合には、酸性側での反応の途中で前述の複塩を主成分とする析出物を一部生じるため、これにより過酸化水素の多くが触媒分解されて消失してしまい、過酸化水素量が不足することで酸化銅への酸化処理が一部不完全な状況で反応が終結してしまう問題があった。これに対し、不足する分を見越して過酸化水素量を十分過剰に加えることで酸化処理状況を改善することは可能であるが、薬剤の添加量が多くなり効率が悪いとともに、この場合でも過酸化水素で酸化分解を受けない複塩はスラッジ中に残留する。そしてこの複塩自体は水洗を十分に行うことでスラッジから溶解して含有濃度を低減することが可能ではあるが、洗浄用水を多く必要とするとともに、洗浄排水に銅イオンが含有されることになるため、その処理が別途必要であり、この点からも処理効率が悪い。
【0010】
また更に、これらの技術では酸性の液をpH=8〜12のアルカリ性側にして処理するため、回収固形物の脱水や上澄水の放流など後段側の状況を考慮し、後段側で中性付近に再中和する必要があるが、その場合はその分の薬品も必要となるため、この点からも効率的な方法とは言いがたい。
【0011】
一方、銅の回収処理工程で発生する排水は、塩類濃度が高いため、その処理及び放流が困難な場合がある。特に塩類濃度の高い排水を放流できず、産廃処理の委託先もない場所においては、塩類濃度の高い排水の適切な処理手段が無ければ、銅イオンの回収処理自体が実施できないことになってしまう。
【0012】
以上のように、銅イオン濃度は高いが、同時に銅の回収再利用の妨げとなる塩化物イオンなどの塩類濃度が高い銅含有酸性廃液から銅のみを効率良く回収する技術がないために、これらの廃液は一般的には産業廃棄物処理会社により回収され、再利用されることなく処分されることが多かった。
【0013】
これらの状況を鑑み、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究をかさねた結果、以下の事柄を見出し、銅含有酸性廃液から酸化銅を主体とする固形物を塩素含有量の少ない状態で析出させ、回収できる発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、処理対象液である銅イオンを高濃度で含有する酸性廃液、例えばエッチング廃液と、酸化剤とを混合した後、これをアルカリ剤溶液に所定のpH域(アルカリ領域)に管理しつつ注加、混合することで、塩化物イオンなどの含有濃度が高い廃液においても複塩の生成を回避出来、該廃液中の銅イオンを酸化銅として不溶化し、回収できることを見出した。また、この酸化反応を逐次進行させることにより、残留銅イオン濃度が低い液が得られ、この液による希釈効果を有効に活用することで最終的に中和した状態においても複塩の生成を回避して過酸化水素等の酸化剤による銅イオンからの酸化銅の生成反応を良好に維持、進行することが出来、これにより、効率良く酸化銅を析出させることが可能で、最終的な液性が弱アルカリ性ないし中性となる処理を実施することができることを見出した。
【0015】
しかしながら、上記方法も、実用化に当たっては経済性の面での問題があった。すなわち、上記方法では、高濃度のアルカリ溶液中に銅含有酸性廃液を注入することになり、この中和反応で多量の塩が生成するが、この塩を含む溶液の廃液としての処理費用がコストとして問題となることが予想される。また、反応に用いられるアルカリ剤や酸化剤のコストが、この反応自体の経済性を低下させることも予想される。従って、これらのコストを低減し、より実用性の高い方法とすることが望まれている。
【特許文献1】特願2002−212857
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明は、排水の発生量を抑制した上で、これまで産業廃棄物として処分されていた塩化銅含有エッチング廃液や電解銅箔メッキ浴の更新廃液などの銅を高濃度で含有する強酸性の廃液を、高い経済性で、しかも、効率的かつ低いスラッジ発生量で処理して、酸化銅を沈殿物として回収するための方法及び装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究をかさねた結果、以下の事柄を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、処理対象液である銅イオンを高濃度で含有する酸性廃液を酸化剤と混合した後、これをアルカリ剤溶液に所定のpH域に管理しつつ注加、混合する方法により、該廃液中の銅イオンを酸化銅として不溶化し、固液分離装置により回収できるが、この際に生じる固液分離装置からの分離液を電気透析に付すことにより、酸化性溶液およびアルカリ性溶液を回収することができ、得られた酸化性溶液およびアルカリ性溶液は、それぞれ反応に用いる酸化剤およびアルカリ剤として再利用できることを見出した。そして、これに伴い、用水量、薬剤使用量、排水放流量がともに削減できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち本発明は、銅含有酸性廃液と酸化剤との混合液を、アルカリ剤溶液に、混合液注加後のアルカリ剤溶液のpHが一時的にでも7以下に下がらないよう管理しつつ注加し、生成する酸化銅を主成分とする固形物を固液分離により取得する銅含有酸性廃液からの銅の回収方法において、固液分離後の分離液及び/又は固液分離した固形物の洗浄排液を電気透析に付し、当該電気透析において生成した酸化性溶液を酸化剤の少なくとも一部として回収利用することを特徴とする銅含有酸性廃液からの銅の回収方法である。
【0019】
また本発明は、銅含有酸性廃液と酸化剤との混合液を、アルカリ剤溶液に、混合液注加後のアルカリ剤溶液のpHが一時的にでも7以下に下がらないよう管理しつつ注加し、生成する酸化銅を主成分とする固形物を固液分離により取得する銅含有酸性廃液からの銅の回収方法において、固液分離後の分離液及び/又は固液分離後の固形物の洗浄排液を電気透析に付し、当該電気透析において生成したアルカリ性溶液をアルカリ剤の少なくとも一部として回収利用することを特徴とする銅含有酸性廃液からの銅の回収方法である。
【0020】
更に本発明は、銅含有酸性廃液と酸化剤との混合液とアルカリ剤溶液とを反応させ、酸化銅を主成分とする固形物として析出させる反応槽と、この固形物を分離回収する固液分離装置と、酸化剤と銅含有酸性廃液とを混合して反応槽に注加する装置と、固液分離装置からの分離液を処理する電気透析装置とを含み、反応槽と固液分離装置とは固形物を含むアルカリ性懸濁液を移送可能に連通され、固液分離装置と電気透析装置は、固液分離装置からの分離液及び/又は固液分離後の固形物の洗浄排液を電気透析装置の脱塩室に供給可能に連通され、更に、電気透析装置の陽極室で生成した酸化性溶液を酸化剤配管へ返送するための配管と、アルカリ濃縮室で生成したアルカリ性溶液をアルカリ剤配管へ返送するための配管を設けたことを特徴とする銅含有酸性廃液からの銅の回収装置である。
【0021】
更にまた本発明は、上記電気透析装置が、陰極と第1のアニオン交換膜で区画され、アニオン交換体を充填した陰極室、第1のアニオン交換膜と第1のカチオン交換膜で区画されるアルカリ濃縮室、第1のカチオン交換膜と第2のアニオン交換膜で区画される脱塩室、第2のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜で区画される酸濃縮室および第2のカチオン交換膜と陽極で区画され、カチオン交換体が充填された陽極室の順で構成された上記銅含有酸性廃液からの銅の回収装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、銅含有酸性廃液と酸化剤を混合した後、これをアルカリ剤溶液に所定のpH域(アルカリ領域)に管理しつつ注加、混合することで、該廃液中の銅イオンを酸化銅として不溶化し、回収することができる。しかも、固液分離操作により生成した分離水等を電気透析に付すことにより、これから酸化性溶液およびアルカリ性溶液を生成させることにより、薬剤使用量、廃棄物量や使用用水量も削減が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明方法による処理プロセスは、銅含有酸性廃液と酸化剤とをまず混合し、得られた混合液をアルカリ剤溶液に注加して、酸化銅を主成分とする固形物を生成させて固液分離し、酸化銅は回収し、分離水は更に電気透析処理して、酸化性溶液およびアルカリ性溶液として再利用するというものである。
【0024】
本発明方法で処理対象となる銅含有酸性廃液としては、銅をイオン状態で含有する酸性廃液であり、これに含まれる銅イオン濃度や、アニオン濃度に特に制約なく適用できるが、例えば銅プリント基板を塩化第二銅エッチング液でエッチングする際に生じるエッチング廃液や電解銅箔製造におけるメッキ浴液の更新廃液など、銅イオン濃度や塩濃度の高い廃液に対して、特に有利に適用することができる。
【0025】
また、本発明方法で利用される酸化剤としては、2価の銅イオンを酸化銅とすることができるものであれば、種々の酸化剤を利用することができる。溶液として取り扱えることや、反応後に水以外の成分が残らないことから、過酸化水素やオゾン水などが有効に利用され、特別な発生装置が不要な取り扱い上の容易さから過酸化水素が特に適しているが、気体状オゾンを直接酸化剤として廃液又は酸化剤溶液に吹き込んでも良い。また、後で詳しく説明するが、電気透析により、陽極室で生成する酸化性溶液を酸化剤として利用することができる。
【0026】
更に、本発明で利用されるアルカリ剤としては、種々のアルカリ剤を使用することができるが、共存する恐れのある陰イオンと沈降性の塩を形成する可能性のないアルカリ金属の水酸化物が望ましく、比較的安価で入手が容易なことから水酸化ナトリウムが好適に使用できる。また水溶液として入手した場合は、容易に使用できる利点があるが、固体状のアルカリ剤を適宜溶解させて用いても良い。なお、固体状のアルカリを使用する場合、先に溶解させてから反応槽に供給しても良く、反応槽内に固体状のまま供給して反応槽と溶解槽を兼ねさせても良い。また、後で詳しく説明するが、電気透析により、アルカリ濃縮室において生成したアルカリ性溶液を利用することができる。
【0027】
本発明方法は、銅含有酸性廃液と酸化剤とをまず混合し、得られた混合液をアルカリ剤溶液に注加するという順序で実施することが特に重要である。そこで、酸化剤溶液として過酸化水素溶液を、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いる場合を例にとり、混合、反応順序の重要性を以下に説明する。
【0028】
まず、銅イオンを高濃度で含有する銅含有酸性廃液にアルカリ剤を注加するという順序では、従来技術で述べたとおり複塩の生成が起こり、処理が困難な性状の汚泥が析出するという結果となる。
【0029】
また、銅含有酸性廃液を過酸化水素溶液と混合する前にアルカリ剤に注加した場合は、水酸化銅の析出が先行して起こる。そしてこれに過酸化水素溶液を注加した場合には、液中に析出した水酸化銅の固体の酸化処理となるため、過酸化水素による酸化銅への酸化反応の効率が低下する。
【0030】
さらにエッチング廃液などの第一銅イオンを含有する廃液を処理対象とする場合、過酸化水素と混合する前にこれをアルカリ剤に注加した場合には、塩化第一銅(CuCl)としても析出する。この塩化第一銅(CuCl)析出物は過酸化水素の分解触媒として作用するため、過酸化水素が消費されてしまい、過酸化水素による酸化反応の効率が更に低下する。
【0031】
以上のように、本発明による処理プロセスにおいては、アルカリ剤溶液と混合、反応させるに先立ち、銅含有廃液と過酸化水素溶液とを混合させることが重要である。これにより、廃液に含有される第二銅イオンの酸化銅への酸化反応が、アルカリ剤に注加した際に速やかに進行する。また、廃液に第一銅イオンが含有される場合には、第一銅塩の溶解度が低いが、アルカリ剤と接触させる前に過酸化水素と混合することで、過酸化水素の酸化作用により第一銅イオンが第二銅イオンに酸化されるため、塩化第一銅(CuCl)などの第一銅塩の析出を回避出来る。
【0032】
本発明において、銅含有廃液と過酸化水素溶液とを混合させるために必要な時間は、混合する両者の濃度にもよるが、両者が高濃度の場合は、第一銅イオンは5秒程度の短時間でもかなりの割合で酸化され、20秒間程度では酸化反応が十分に進行する。
【0033】
その一方で、銅含有酸性廃液と過酸化水素溶液を混合すると、過酸化水素の分解反応が進行する。その分解反応は、両者を混合後約60秒経過した時点から顕在化し、7分間〜10分間経過後には顕著な発泡を伴いながら激しく進行する。混合する両者の濃度にもよるが、例えば銅イオンに対してモル濃度で2倍量の過酸化水素を混合した場合、過酸化水素の分解に伴う発泡は、混合20分間経過後には減少し、25分間経過後には僅かなものになり、この時点でアルカリ剤に注加した場合には酸化銅よりも水酸化銅を多く含む沈殿物が生成する。
【0034】
このようなことから、アルカリ剤への注加に先立ち、銅含有酸性廃液と過酸化水素溶液との混合、反応時間として、5秒間〜20分間程度、望ましくは20秒間〜7分間程度の時間を取ることが好ましく、この時間設定が本発明技術の特徴の一つである。
【0035】
上記した、銅含有廃液と過酸化水素溶液との混合方法としては、例えば、1つ又は複数の混合槽内に両液を注加して撹拌する方法や、銅含有廃液と過酸化水素溶液とを合流させて混合する方法等が適用可能である。
【0036】
このうち、混合用の槽内に両液を注入して撹拌する方法では、混合槽をバッチ式で用いる場合には、混合してから注加までの反応時間の制御が問題になるが、注入量の確認と調整が容易で、混合時に発泡しても開放系のため装置上の問題が発生しないメリットがある。
【0037】
また、銅含有廃液と過酸化水素溶液とを合流させて混合する方法では、両溶液の配管を2字管等で接続して合流させる方法、どちらかの配管内に他方の液を注入して混合する方法などが使用できる。さらに合流後にスタティックミキサーを通すことで両液の撹拌混合することもできる。この方法では、発泡への対処のために装置の耐圧性、もしくは発生した気体を排出できる機構が必要になるが、両液を混合してから供給するまでの時間を均一に保ち、かつ連続的に供給できるというメリットがある。さらに、反応槽水面上から銅含有廃液と過酸化水素溶液とを気中流下させて合流させることも出来る。この場合、落下流中に邪魔板などを置き、反応時間と混合状態を確保することが望ましい。
【0038】
次に、銅含有廃液と過酸化水素溶液との混合液(以下、「混合液」と略称する)とアルカリ剤との反応であるが、複塩の生成を回避するためには、イオンとしての銅濃度が希薄な条件下で反応させることが必要である。また、銅イオンの酸化反応を速やかに進行させるためには、過酸化水素の反応性が高くなる強アルカリ性条件下で反応させることが望ましい。
【0039】
これらの条件を実現するため、本発明技術においては、操作性の良い溶液体のアルカリ剤を用い、このアルカリ剤溶液を撹拌しているところに前記の混合液を適切な速度で注加してゆくことが必要である。この注加速度は、注加後のアルカリ剤溶液中において、そのpHが部分的に、一時的にでも7以下に下がらないように、望ましくは8以下にならないように管理しながら注加、混合して逐次反応を進行・完結させてゆくことが必要であり、この点が本発明技術の別の特徴である。
【0040】
混合液の注加方法としては、例えば、アルカリ剤が入れられた反応槽に滴下する方法や配管を通して液中に注入する方法等の方法が適用可能である。このうち、反応槽へ滴下する方法では、供給状況を目視で確認でき、供給状況が不調の際に対応しやすいメリットがある。一方、配管を通して液中に供給する方法では、液表面から供給する場合に比べて、撹拌流の分布上で良好に混合できる位置に供給できるメリットがある。混合槽が反応槽に比べて十分に小さく反応制限時間内に注加できる場合には、混合槽1回分ごとを分注することで、簡単な設備で行うことができる。複数の混合槽を順次使用する方法、混合槽内を完全混合状態にして滞留時間が反応制限時間内になるようにする方法もある。なお、配管を通して液中に注入する方法では、銅含有廃液と過酸化水素溶液とを合流させて作成した混合液を連続して添加する方法が好適に使用できる。
【0041】
更に、アルカリ剤溶液内に、pHが一時的にでも7以下に下がらないように管理しながら注加、混合する方法としては、たとえば撹拌混合状態にあるアルカリ剤溶液中に、少量の混合液を間隔をあけて断続的に注加する方法や、混合液を少量づつ注加する方法を挙げることができる。このとき、アルカリ剤溶液に対する、混合液の注加量は、アルカリ剤溶液のpHが一時的にでも7以下にならず、最終的な反応終了時のpHが7以上、望ましくは8以上であれば、後述の一定の範囲内で任意に調節できる。この操作により、アルカリ剤溶液による希釈効果を得ながら、主要な酸化反応を過酸化水素の反応性が高い、pH11.5〜14.5の強アルカリ性条件下で効率的に行うことが出来るとともに、酸化反応を逐次進行完結させることによりイオンとしての銅含有濃度が低い液を得ることができる。なお、反応槽内のアルカリ剤溶液のpH管理方法として、反応槽内にアルカリ剤を補充供給することも出来る。
【0042】
また、アルカリ剤に対する酸の量が等量となる付近に至った段階では、混合液の添加量に対して、それまでの反応の結果得られている銅イオン含有濃度が低い液の量が相対的に多くなっているため、これによる希釈効果が得られることで、pH7〜11.5、望ましくはpH8〜11という条件下においても複塩の生成を回避して過酸化水素による銅イオンからの酸化銅の生成反応を良好に維持、進行することが出来る。これにより、効率良く酸化銅を析出させることが出来て、かつ最終的な液性が中性付近となる処理を実施することが可能である。
【0043】
前記の、混合液が注加されるアルカリ剤溶液の濃度は、反応槽中のpHが所定範囲に維持できるようであれば特に限定されないが、反応槽中のアルカリ濃度が低いと、処理可能な廃液の量が小さくなったり、排水量が増えるなどの問題があるため、例えば、濃度25%の水酸化ナトリウム溶液を使用することが好ましい。
【0044】
一方、上記処理に用いられる過酸化水素の濃度は特に限定されないが、あまり低濃度では所要液量が大きくなり、反応効率が低くなるので、例えば、濃度30%程度のものを利用することが好ましい。
【0045】
上記した、銅含有酸性廃液の処理後に生成する固形物は酸化銅を主成分とするものであり、固液分離が比較的し易く、脱水性も比較的良好な性状のものである。しかしながら、高濃度の銅イオンを含む銅含有酸性廃液の場合には、濃厚な酸とアルカリを混合して処理しているため、反応完了時の固形物は中和反応により生じた高濃度の塩類と共存している。そこで、再利用を目的とした固形物の回収に際しては、水洗を複数回繰り返すことでこれらの塩類を洗い流し、回収物の純度を上げる対応が有効である。
【0046】
この場合の固液分離方法としては例えば、ろ過分離、遠心分離、沈降分離等が適用可能であり、これにより塩分濃度が高く、アルカリ性の分離液が得られる。また、固液分離した固形物は、更に付着した塩類を洗浄水で洗浄することもできる。ここで使用される洗浄水としては、塩類含有量が少ない清澄な水、例えば水道水や工業用水などを用いても良いが、これに代えて、処理済液、固形物を水洗で洗い流した洗浄排水、及び/又は固液分離されたろ液などを脱塩処理して得られた処理水を再利用することも有効である。
【0047】
本発明の基本的な特徴は、上記のようにして生じた、酸化銅を主成分とする固形物を固液分離で分離した後の分離液(塩類を多量に含むアルカリ性溶液)および/または固液分離した固形物の洗浄排液(分離液ほどではないが、塩類を多く含むアルカリ性溶液)を電気透析に付し、当該電気透析において生成したアルカリ性溶液および酸化性溶液の少なくとも一部を回収し、これをそれぞれアルカリ剤および酸化剤として再利用する点である。
【0048】
このように本発明においては、前記のアルカリ剤の他、固液分離処理で生じる分離液や、洗浄廃液を電気透析に付すことでアルカリ性水溶液が得られ、これをアルカリ剤溶液として利用できる理由は、次の通りである。
【0049】
すなわち、電気透析装置は、後記図2にも示すように、陰極と第1のアニオン交換膜で区画され、アニオン交換体を充填した陰極室、第1のアニオン交換膜と第1のカチオン交換膜で区画されるアルカリ濃縮室、第1のカチオン交換膜と第2のアニオン交換膜で区画される脱塩室、第2のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜で区画される酸濃縮室および第2のカチオン交換膜と陽極で区画され、カチオン交換体が充填された陽極室をこの順配置することにより構成されている。
【0050】
そして、脱塩室に分離液等塩類を多量に含むアルカリ性溶液を注入後、電気透析を行うと、電流印加によって、脱塩室からはカチオン交換膜を通って陰極側にあるアルカリ濃縮室にカチオンが移動するが、このカチオンは、反対側でアルカリ濃縮室を区画するアニオン交換膜を通過することができず、アルカリ濃縮室に溜まってゆき、アルカリ濃縮室中の溶液のアルカリ性が高まる。このような理由で、このアルカリ濃縮室でアルカリ性溶液を回収し、アルカリ剤として再利用が可能となるが、このアルカリ性溶液の濃度が低い場合には、更にアルカリ剤を補充してアルカリ剤濃度を増加させることが望ましい。
【0051】
同様、固液分離処理で生じる分離液や、洗浄廃液を電気透析に付すことで酸化性水溶液が得られ、これを酸化剤として利用できる理由は、次の通りである。
【0052】
すなわち、電気透析装置の陽極室においては、酸濃縮室のアニオンは、当該室を区画するカチオン交換膜により、また、脱塩室からのカチオンは、それより手前のアニオン交換膜により通過が妨げられるため、水しか存在しないことになる。そして、この陽極室には、アニオンである塩素が存在しないため、遊離塩素の生成がなく、この陽極室での反応は、下式(I)および/または(II)で示される水の電気分解反応が生じ、過酸化水素等を含む酸化性溶液が生成することになるのである。
【0053】
2HO → H + 2H + 2e (I)
2HO → 4H + O + 4e (II)
【0054】
本発明方法においては、この電気透析により陽極室で生成する酸化性溶液を酸化剤として利用可能であるが、その酸化力が低い場合には、過酸化水素液を添加するか、気体状オゾンを吹き込むなどの方法によって、酸化力を上げることが望ましい。
【0055】
このように、本来廃液として処理される分離液や洗浄排液を、電気透析を利用することによって、アルカリ性溶液や酸化性溶液として回収利用し、コストや廃液処理の労力の削減が可能となり、経済的に銅含有酸性廃液から銅を、酸化銅を主成分とする固形物として回収可能になるのである。
【0056】
次に、本発明方法を実施するために使用する回収装置のいくつかの態様について、図面を参照して説明する。
【0057】
図1は本発明を実施する場合の銅の回収装置の一態様を示す系統図である。図中、1は銅回収装置、2は反応槽、3は固液分離装置、4は銅含有酸性廃液配管、5は酸化剤供給配管、6は混合配管、7は流量調節器、8はアルカリ供給配管、9はpHメーター、10は攪拌機、11は移送ポンプ、12は液面レベル計、13は洗浄水供給配管、14は電気透析装置、15は脱塩水返送配管、16は酸化剤溶液返送配管、17はアルカリ剤返送配管をそれぞれ示す。
【0058】
図1に示す銅回収装置1は、攪拌機10、pHメーター9および液面レベル計12を備えた反応槽2と、これに移送ポンプ11を介して連通される固液分離装置3を有する。そして、反応槽2の上部には、銅含有酸性廃液配管4と、酸化剤供給配管5が一緒になった混合配管6が設けられ、銅含有酸性廃液と酸化剤の混合液が反応槽2中に注加可能となっている。注加される銅含有酸性廃液と酸化剤の量は、それぞれ銅含有酸性廃液配管4と、酸化剤供給配管5に設けられた流量調節器7aおよび7bにより調整され、適切な割合の混合液が混合配管6で生成されるようになっている。
【0059】
反応槽2には、アルカリ供給配管8からアルカリ剤溶液が供給される。そして、攪拌機10により撹拌されているアルカリ剤溶液中に、前記混合配管6から銅含有酸性廃液と酸化剤の混合液が注入され、その際のpH変化はpHメーター9で測定され、流量調節器7aや7bにより、pHが、一時的にでも7以下にならないよう制御される。
【0060】
この反応槽2中において生成する、酸化銅を主体とする固形物は、移送ポンプ11を介して固液分離装置3に移され、ここにおいて、固形物と分離液に分離される。そして更に、固形物は、固形物精製装置18において、洗浄水供給配管13から供給される洗浄水により洗浄され、系外に取り出され、酸化銅として再利用に供される。
【0061】
一方、分離液は、その一部が分離液返送配管19を通じてそのまま反応槽2に戻され、他は、電気透析装置14に送られ、電気透析に付される。
【0062】
図2に、本発明で利用される電気透析設備の構成の一例を示す。図中、20は陰極、21は第1アニオン交換膜、22は第1カチオン交換膜、23は第2アニオン交換膜、24は第2カチオン交換膜、25は陽極であり、26は陰極室、27はアルカリ濃縮室、28は脱塩室、29は酸濃縮室、30は陽極室を示す。陰極20と第1アニオン交換膜21の間の、これらで区画、構成される陰極室26にはアニオン交換体(繊維、スペーサ含む)31が充填され、陽極25と第2カチオン交換体24の間の、これらで構成される陽極室30にはカチオン交換体(繊維、スペーサ含む)32を充填されている。
【0063】
そして、第1カチオン交換膜22と第2アニオン交換膜23の間の、これらで区画された脱塩室28には、分離液及び/又は洗浄排液(以下、「塩溶液」ということがある)が供給される。また、第1アニオン交換膜21と第1カチオン交換膜22の間の、これらで区画されたアルカリ濃縮室27、第2アニオン交換膜23と第2カチオン交換膜24の間の、これらで区画された酸濃縮室29および陰極室26には、それぞれ脱塩室28からの流出水又は純水が供給され、陽極室30には、気液分離装置33により気液分離された陰極室流出水又は純水が供給される。
【0064】
図2中には、塩化ナトリウムを多量含むアルカリ性溶液を脱塩室28に入れた場合のイオンの動きも例示するが、この電気透析設備に電流を印加すると、これによって、脱塩室28から陽極側に向かって塩化物イオンなどのアニオンが移動する。しかし、これは第2カチオン交換膜24に妨げられて陽極室30まで移行することはできず、酸濃縮室29に蓄積される。同様に、陰極側に向かって、ナトリウムイオンなどのカチオンが移動するが、これも同様に第1アニオン交換膜に妨げられて陰極室26に到達することができず、アルカリ濃縮室27に蓄積される。
【0065】
また、電気透析により生じる陰極20での水の電気分解によって陰極室26では、下式の反応により、水酸イオンと水素が発生するが、このうちの水酸イオンは、アルカリ濃縮室27に移行できるが、第1カチオン交換膜22により、脱塩室28までは移動できない。
【0066】
2HO + 2e → 2OH + H (III)
【0067】
一方、前記式(I)または(II)に従い、陽極25での水の電気分解により陽極室30に生成した水素イオンは、酸濃縮室29には移行するが、第2アニオン交換膜23に妨げられて脱塩室28には到達しない。
【0068】
このような機構により、脱塩室28の陰極側に隣接するアルカリ濃縮室27にはアルカリが、陽極側に隣接する酸濃縮室29には酸が濃縮されるのであるが、このうちのアルカリ濃縮室27に濃縮されるアルカリ性溶液をアルカリ剤溶液として回収使用するのである。なお、酸濃縮室29に濃縮された酸溶液は、直接本発明装置においては回収利用できないが、酸性銅含有廃液が主に塩酸を含むものであれば、濃縮された酸溶液は塩酸を主に含むものであるから、例えば、エッチング液として利用することが可能である。
【0069】
また、前記したように、陽極室30中には、塩化物イオンが存在しないため、陽極での電気分解によって、遊離塩素の生成反応はなく、過酸化水素等の酸化剤が生成することになる。そして、電気分解による遊離塩素が生成しないため、電極の損傷も防止される。
【0070】
なお、電気透析装置14で生成される脱塩水は、ほとんど塩を含有しないものであるため、例えば、洗浄水供給配管13に返送して洗浄水として再使用することも可能である。あるいは、陰極室26、アルカリ濃縮室27、酸濃縮室28等での補充液として利用可能である。また、前記陰極室で生成する、水酸イオンと水素を含有するイオン水は、例えば、気液分離装置33により水素ガスを除去した後、例えば、陽極室30に送り、補充水として利用することもできる。
【0071】
図3に示す系統図は、本発明の別の態様の銅の回収装置を示す図面である。本態様の銅の回収装置は、基本的に図1の回収装置と同じであるが、電気透析装置14の前段に、膜ろ過装置44を設けた点で相違する。
【0072】
この態様の装置では、膜ろ過による濃縮水を濃縮液配管46から系外に排出し、透過水を膜濾過透過水配管45を介し、図1の態様と同じく電気透析装置14に供給する。この態様では、濃縮水としてアルカリも排出されるため、アルカリの回収率が低くなり、アルカリ剤の補充所要量が多くなるが、酸性廃液中の不純物を膜処理の濃縮水として系外に排出するため、装置としての安定性が高く、少ない電流所要量で脱塩水を得られるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明した本発明の銅回収方法や装置によれば、電気透析装置の設置とその稼動電力が必要にはなるが、酸化銅の純度の高い固形物を回収でき、また電気透析により回収したアルカリ性溶液や、酸化性溶液を再度利用することができるため、アルカリ剤や酸化剤の購入量のを低減でき、更に、廃棄物や排水量を大幅に低下させることができるため、経済性に優れたものということができる。
【0074】
従って、本発明の銅回収方法や装置は、エッチング廃液や電解銅箔製造におけるメッキ浴液の更新廃液など、銅イオン濃度や塩濃度の高い廃液の処理が必要な場合に、特に有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の銅の回収装置の一態様を示す系統図である。
【図2】本発明で用いる電気透析装置を模式的に示した図面である。
【図3】本発明の銅の回収装置の他の態様を示す系統図である。
【符号の説明】
【0076】
1 … … 銅回収装置
2 … … 反応槽
3 … … 固液分離装置
4 … … 銅含有酸性廃液配管
5 … … 酸化剤供給配管
6 … … 混合配管
7 … … 流量調節器
8 … … アルカリ供給配管
9 … … pHメーター
10 … … 攪拌機
11 … … 移送ポンプ
12 … … 液面レベル計
13 … … 洗浄水供給配管
14 … … 電気透析装置
15 … … 脱塩水返送配管
16 … … 酸化剤溶液返送配管
17 … … アルカリ剤返送配管
18 … … 固形物精製装置
19 … … 分離液返送配管
20 … … 陰極
21 … … 第1アニオン交換膜
22 … … 第1カチオン交換膜
23 … … 第2アニオン交換膜
24 … … 第2カチオン交換膜
25 … … 陽極
26 … … 陰極室
27 … … アルカリ濃縮室
28 … … 脱塩室
29 … … 酸濃縮室
30 … … 陽極室
31 … … 繊維状アニオン交換体
32 … … 繊維状カチオン交換体
33 … … 気液分離装置
40 … … 固形物含有液配管
41 … … 分離液配管
42 … … 洗浄排水配管
43 … … 酸(廃液)配管
44 … … 膜ろ過装置
45 … … 膜ろ過透過水配管
46 … … 濃縮液配管(廃液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅含有酸性廃液と酸化剤との混合液を、アルカリ剤溶液に、混合液注加後のアルカリ剤溶液のpHが一時的にでも7以下に下がらないよう管理しつつ注加し、生成する酸化銅を主成分とする固形物を固液分離により取得する銅含有酸性廃液からの銅の回収方法において、固液分離後の分離液及び/又は固液分離した固形物の洗浄排液を電気透析に付し、当該電気透析において生成した酸化性溶液を酸化剤の少なくとも一部として回収利用することを特徴とする銅含有酸性廃液からの銅の回収方法。
【請求項2】
銅含有酸性廃液と酸化剤との混合液を、アルカリ剤溶液に、混合液注加後のアルカリ剤溶液のpHが一時的にでも7以下に下がらないよう管理しつつ注加し、生成する酸化銅を主成分とする固形物を固液分離により取得する銅含有酸性廃液からの銅の回収方法において、固液分離後の分離液及び/又は固液分離後の固形物の洗浄排液を電気透析に付し、当該電気透析において生成したアルカリ性溶液をアルカリ剤の少なくとも一部として回収利用することを特徴とする銅含有酸性廃液からの銅の回収方法。
【請求項3】
上記電気透析を、陰極と第1のアニオン交換膜で区画され、アニオン交換体を充填した陰極室、第1のアニオン交換膜と第1のカチオン交換膜で区画されるアルカリ濃縮室、第1のカチオン交換膜と第2のアニオン交換膜で区画される脱塩室、第2のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜で区画される酸濃縮室および第2のカチオン交換膜と陽極で区画され、カチオン交換体が充填された陽極室の順で構成された電気透析装置を用い、前記電気透析装置の脱塩室に固液分離後の分離液及び/又は固液分離後の固形物の洗浄排液を供給することにより行うものである請求項第1項または第2項記載の銅含有酸性廃液からの銅の回収方法。
【請求項4】
上記酸化性溶液が、電気透析装置の陽極室で生成したものである請求項第1項または第3項記載の銅含有酸性廃液からの銅の回収方法。
【請求項5】
上記アルカリ性溶液が、電気透析装置のアルカリ濃縮室で生成したものである請求項第2項または第3項記載の銅含有酸性廃液からの銅の回収方法。
【請求項6】
上記電気透析に先立ち、膜処理を行なう請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載の銅含有酸性廃液からの銅の回収方法。
【請求項7】
上記電気透析において、前記アルカリ濃縮室、酸濃縮室および陰極室には、脱塩室からの流出水または純水を供給し、前記陽極室には気液分離後の陰極室流出水または純水を供給する請求項第3項ないし第6項の何れかの項記載の銅含有酸性廃液からの銅の回収方法。
【請求項8】
銅含有酸性廃液と酸化剤との混合液とアルカリ剤溶液とを反応させ、酸化銅を主成分とする固形物として析出させる反応槽と、この固形物を分離回収する固液分離装置と、酸化剤と銅含有酸性廃液とを混合して反応槽に注加する装置と、固液分離装置からの分離液を処理する電気透析装置とを含み、反応槽と固液分離装置とは固形物を含むアルカリ性懸濁液を移送可能に連通され、固液分離装置と電気透析装置は、固液分離装置からの分離液及び/又は固液分離後の固形物の洗浄排液を電気透析装置の脱塩室に供給可能に連通され、更に、電気透析装置の陽極室で生成した酸化性溶液を酸化剤配管へ返送するための配管と、アルカリ濃縮室で生成したアルカリ性溶液をアルカリ剤配管へ返送するための配管を設けたことを特徴とする銅含有酸性廃液からの銅の回収装置。
【請求項9】
上記電気透析装置が、陰極と第1のアニオン交換膜で区画され、アニオン交換体を充填した陰極室、第1のアニオン交換膜と第1のカチオン交換膜で区画されるアルカリ濃縮室、第1のカチオン交換膜と第2のアニオン交換膜で区画される脱塩室、第2のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜で区画される酸濃縮室および第2のカチオン交換膜と陽極で区画され、カチオン交換体が充填された陽極室の順で構成されたものである請求項第8項記載の銅の回収装置。
【請求項10】
上記固液分離装置と上記電気透析装置の間に、分離水を処理する膜処理装置を有する請求項第8項または第9項記載の銅の回収装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−59521(P2010−59521A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229001(P2008−229001)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(591030651)荏原エンジニアリングサービス株式会社 (94)
【Fターム(参考)】