説明

鋼材表面の耐火被覆方法

【課題】本発明は、防錆性、鋼材表面(金属面)との密着性に優れ、発生錆や既存塗膜が存在していても優れた防錆性を確保し、発生錆や既存塗膜との密着性にも優れ、かつ優れた耐火性能を示す鋼材表面の耐火被覆方法を提供する。
【解決手段】本発明の鋼材表面の耐火被覆方法は、鋼材表面に、A.キレート変性エポキシ樹脂、B.ケチミン化合物、C.アニオン交換型化合物、D.有機溶剤を含有する防錆性下塗材を塗付した後、発泡性耐火材を積層することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材表面に対して、優れた密着性、防錆性を示す耐火被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物等の鋼構造物に耐火性能を持たせる場合、鋼材の防錆性等も考慮にいれ、鋼材表面に防錆性を有する防錆性下塗材を塗付し、その上に耐火材を積層する方法が広く採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、水硬性セメント、合成樹脂エマルション、繊維剤及び/または中空状フィラーからなる水性防食プライマ−を下塗とし、発泡型耐火塗料を被覆する方法が開示されている。
また、特許文献2では、ホウ酸塩または/およびリン酸塩を防錆顔料とする防錆塗料を下塗し、その上に発泡型耐火塗料を用いて耐火被覆層を形成する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−212472号公報
【特許文献2】特開2001−64548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、建築物等の鋼構造物に耐火性能を持たせる場合としては、新築物件だけでなく、改修物件等の塗り替えにより耐火性能を付与する場合もある。
特に、塗り替えにより耐火性能を付与する場合は、鋼構造物の鋼材表面に、発生錆や既存塗膜が残存している場合が多く、このような発生錆や既存塗膜を全面除去してから防錆性下塗材を塗付し、耐火材を積層することが好ましいが、現実には発生錆や既存塗膜を全て除去することは困難である。
このような発生錆や既存塗膜が残存している鋼材表面に防錆性下塗材を塗付する場合、防錆性下塗材の性能としては、防錆性や、鋼材表面(金属面)との密着性はもちろんのこと、発生錆や既存塗膜との密着性等の性能も要求される。
【0006】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載の防錆性下塗材では、発生錆が存在する場合は、発生錆への浸透性が不十分であり、錆を十分固定化することができず、錆の発生を抑制することが困難なため、十分な防錆効果が得られない場合があった。また、既存塗膜が存在する場合は、既存塗膜との密着性に不十分な場合があり、塗膜の剥れが生じやすく、その結果十分な耐火性能が得られない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような問題に対し、鑑みなされたもので、防錆性、鋼材表面(金属面)との密着性に優れ、かつ、発生錆や既存塗膜が存在していても優れた防錆性を確保し、発生錆や既存塗膜との密着性にも優れ、優れた耐火性能を示す鋼材表面の耐火被覆方法を提供するものである。
【0008】
即ち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.鋼材表面に、A.キレート変性エポキシ樹脂、B.ケチミン化合物、C.アニオン交換型化合物、D.有機溶剤を含有する防錆性下塗材を塗付した後、耐火材を積層することを特徴とする鋼材表面の耐火被覆方法。
2.防錆性下塗材が、A.キレート変性エポキシ樹脂100重量部に対し、B.ケチミン化合物5〜40重量部、C.アニオン交換型化合物0.01〜100重量部、D.有機溶剤10〜300重量部、を含有することを特徴とする1.に記載の鋼材表面の耐火被覆方法。
3.D.有機溶剤のうち40重量%以上が脂肪族炭化水素系有機溶剤であることを特徴とする1.または2.に記載の鋼材表面の耐火被覆方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鋼材表面の耐火被覆方法では、防錆性、鋼材表面(金属面)との密着性に優れ、発生錆や既存塗膜が存在していても優れた防錆性を確保し、発生錆や既存塗膜との密着性にも優れ、かつ優れた耐火性能を示すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、その実施するための最良の形態とともに詳細に説明する。
【0011】
本発明は、鋼材表面に、A.キレート変性エポキシ樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)、B.ケチミン化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)、C.アニオン交換型化合物(以下、「(C)成分」ともいう。)、D.有機溶剤(以下、「(D)成分」ともいう。)を含有する防錆性下塗材を塗付した後、耐火材を積層することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の対象となる鋼構造物等としては、例えば、一般の建築物、土木構築物の主要構造部材である柱、梁、壁、床、天井、階段、屋根等が挙げられる。このような鋼構造物等の鋼材表面としては、例えば、冷延鋼、アルミニウム鋼、ステンレス鋼、銅鋼、溶融亜鉛メッキ鋼、溶融亜鉛・アルミニウム合金メッキ鋼、電気亜鉛メッキ鋼、電気合金メッキ鋼、合金メッキ鋼、銅メッキ鋼、錫メッキ鋼等の鋼材表面、またはこれらの鋼材表面にリン酸塩系やクロム酸塩系などの表面処理を施した鋼材表面、Cu、Ni、Cr、P、Mo等の元素が少量含有し防錆効果を施した鋼材表面等が挙げられる。さらにこれらの鋼材表面に、公知の塗膜で被覆したもの等が挙げられる。
【0013】
このような鋼材表面に対し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を含有する防錆性下塗材を塗付する。
【0014】
(A)成分は、発生錆に対して優れた浸透性を有し、発生錆への物理的な固定化による優れた防錆性を示し、鋼材表面や既存塗膜に点在する錆に対してキレート反応を起こし、化学的な固定化による優れた防錆性を示す成分である。また、発生錆、鋼材表面、既存塗膜、さらには耐火材と優れた密着性を有するため、防錆性能、耐火性能を高めることができる成分である。また、外部環境からの影響を選択的に遮断する作用を有し、錆形成の原因となる塩素イオン等の腐食性イオンの透過を防止することができる。
(B)成分は、(A)成分の架橋剤として作用し強固な塗膜を形成するとともに、腐食因子となる水分と反応する性質がある。そのため、鋼材表面に存在する水分を低減させることができ、防錆効果を向上させることができる。
(C)成分は、腐食因子となる塩素イオン等の腐食性イオンを捕集し、固定化することによって、防錆効果を高める効果を有するものである。
(D)成分は、塗装時の気温や素地の表面温度に左右されることなく、発生錆に対して優れた浸透性を示す成分である。
本発明の防錆性下塗材は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を必須成分とすることにより、互いの相乗効果により極めて優れた防錆性を示すことができる。
【0015】
(A)成分は、エポキシ樹脂の基本骨格や側鎖・末端にキレート形成能を有する官能基を含有するエポキシ樹脂のことである。
【0016】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等、あるいはこれらをポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等で変性したもの等を挙げることができる。
【0017】
キレート形成能を有する官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基、アミノ基、カルボニル基などの配位能をもつ官能基等が挙げられる。特に好適なものとして、水酸基、リン酸基、カルボキシル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0018】
(A)成分はこのようなキレート形成能を有する官能基を、前述したエポキシ樹脂の基本骨格や側鎖・末端に含有するものであり、例えば、ケトン変性エポキシ樹脂、リン酸変性エポキシ樹脂等が好適に用いられる。
(A)成分の分子量は通常1000〜10000、好ましくは1500〜6000である。
【0019】
(B)成分は、主に(A)成分の架橋剤として作用し、強固な塗膜を形成するものである。
(B)成分は、化学式1に示すような化合物で、一般的に、カルボニル化合物(O=CR)(以下「(B−1)成分」ともいう)と1級アミノ基を有する化合物(−NH)((以下「(B−2)成分」ともいう)の反応により得られる化合物である。
【0020】
(化学式1)
−N=CR
(B)
(式中のR、Rは、同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基で示される。)
【0021】
具体的には、化学反応式1で示されるような反応により得られるものである。
【0022】
(化学反応式1)
O=CR + −NH → −N=CR + H
(B−1) (B−2) (B)
【0023】
(B−1)成分としては、一般式:O=CR(式中のR、Rは、同じでも異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、フェニルアルキル基で示される。)で示されるものであれば特に限定されないが、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類などを挙げることができる。
【0024】
(B−2)成分としては、1分子中に1個または2個以上の1級アミノ基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリ(オキシプロピレン)ジアミンなどの脂肪族アミン類;キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族アミン類;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどの脂環族アミン類、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンプロピレンジアミン等のポリエーテルアミン類を挙げることができる。
【0025】
このようにして得られる(B)成分からは、化学反応式2のように、発生錆、既存塗膜中に存在する水分及び大気中の水分等と反応し、(B−1)成分と(B−2)成分が得られる。
【0026】
(化学反応式2)
−N=CR + HO → O=CR + −NH
(B) (B−1) (B−2)
【0027】
このように、腐食因子の一つである水分は、(B)成分との反応により消費され減少する。また、この反応により生成した(B−2)成分と(A)成分により硬化反応が開始される。
このように、(B−2)成分と(A)成分の硬化反応が開始されるためには、(B)成分と水分との反応(化学反応式2)が必須となる。よって、(B)成分と水分との反応(化学反応式2)がある程度進行するまで、(B−2)成分と(A)成分の硬化反応がほとんど進行しない。そのため、塗材の流動性が持続し、発生錆の奥深くまで浸透することが可能である。
次いで(B)成分と水分との反応(化学反応式2)がある程度進行すると、(B−2)成分と(A)成分の硬化反応が進行し、脆弱であった発生錆を強化補強し、外部環境からの遮断性を有する強固でかつ防錆性、密着性に優れた塗膜を形成することができる。
また(B−1)成分は、溶剤としての作用も有し、発生錆への浸透性を高める効果もある。
【0028】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、(B)成分の固形分で5〜40重量部、好ましくは8〜20重量部である。5重量部より少ない場合は、(A)成分との反応が十分起こらず、強固な塗膜を形成することができない。(B)成分が40重量部より多い場合は、(A)成分との反応が起こり易く、ポットライフが短くなる。
【0029】
本発明では、前述した(A)成分と(B)成分の反応に際し、硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジブチルメチルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、ベンジルジメチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチルピロリジン,N,N’−ジメチルピペラジン、2,4,6―トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン、ジイソプロピルフェノール、p−t−ブチルフェノール等のフェノール類、トリメチロールプロパンアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリレート化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。このような硬化促進剤を用いることにより、硬化反応を促進させることができ、強固な塗膜を形成することができる。
【0030】
硬化促進剤の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、硬化促進剤0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。0.01重量部より少ない場合は、低温での硬化反応が十分に促進されず、強固な塗膜を形成することが困難となる場合がある。硬化促進剤が20重量部より多い場合は、(A)成分と(B)成分の反応が起こり易く、ポットライフが短くなる傾向がある。
【0031】
(C)成分は、錆の原因となる塩素イオン等の腐食性イオンを捕集し、腐食性イオンを固定化する成分である。
このような(C)成分としては、例えば、次の一般式で表されるようなものが挙げられる。
一般式:[X1−a(OH)]a+[An−a/n・mHO]a−
(X:Mg、Mn、Cu、Ni、Fe、Zn、Ca、Co等の2価の金属元素、Y:Al、Co、Cr、In、Fe等の3価の金属元素、An−:CO2−、OH、NO、SO2−、F、Br、MnO、CHCOO、Fe(CN)3−、シュウ酸イオン、サリチン酸イオン等のn価の陰イオン、0<a<1.0、m>0、nは1〜4の整数)
【0032】
(C)成分を構成する金属元素としては、一般式において、X:Mg、Mn、Cu、Ni、Fe、Zn、Ca、Co等の2価の金属元素、Y:Al、Co、Cr、In、Fe等の3価の金属元素が挙げられる。このX、Yは、それぞれ1成分の金属元素で構成されてもよいし、一部を他の金属元素で置換していてもよい。
これらX、Yは、いかなる組み合わせでも用いることが可能であるが、特に好適な組み合わせとしては、例えば、Mg-Al、Ca-Al、Zn-Al、Zn-Cr、Mn-Al等を挙げることができる。
(C)成分を構成する陰イオンとしては、一般式において、An−:CO2−、OH、HNO、NO、SO2−、F、Br、MnO、CHCOO、Fe(CN)3−、シュウ酸イオン、サリチン酸イオン等のn価の陰イオン(nは1〜4の整数)が挙げられる。
【0033】
このAn−は、それぞれ1成分の陰イオンで構成されてもよいし、一部を他の陰イオンで置換していてもよい。本発明では、An−が錆の原因となる塩素イオン等の腐食性イオンと交換され、防錆効果を発揮するものである。このようなAn−としては、特に、CO2−、HNO等を使用することが好ましい。An−がこのような場合、より防錆効果が高まる。
【0034】
(C)成分の、特に好適な形態としては、
一般式:[Mg1−aAl(OH)a+[CO2−a/2・mHO]a−(0<a<1.0、m>0)
で表されるハイドロタルサイト、
一般式:[Ca1−aAl(OH)a+[CO2−a/2・mHO]a−(0<a<1.0、m>0)
で表されるハイドロカルマイト、等が挙げられる。
【0035】
また、(C)成分は、上述のようなアニオン交換型化合物が含まれていれば特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機酸化物の変性物等も挙げられる。
【0036】
(C)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、(C)成分0.01〜100重量部、好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.05〜10重量部である。0.01重量部より少ない場合は、優れた防錆効果が得られない。(C)成分が100重量部より多い場合は、コストがかかってしまい、また、それに似合うだけの効果が得られない。
【0037】
(D)成分は、主に、発生錆に対して優れた浸透性を示す成分である。(D)成分としては、(A)成分〜(C)成分により、適宜設定すればよいが、特に(A)成分、(B)成分を溶解できるものを使用する。
(D)成分としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールt−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、n−ブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらのほかに、テルピン油、ミネラルスピリット、HAWS、ソルベッソ100、ソルベッソ150、スワゾール310、スワゾール1000、スワゾール1500等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このような(D)成分を用いることにより、塗装時の気温や鋼材表面温度に左右されることなく、塗材の流動性を持続させ、発生錆への浸透性に優れた防錆性下塗材を得ることができる。
【0038】
本発明では、特に、有機溶剤のうち40重量%以上(好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上)が脂肪族炭化水素系有機溶剤であることが好ましい。脂肪族炭化水素系有機溶剤が40重量%以上であることにより、既存塗膜に塗り重ねたとき既存塗膜のリフティング現象をより緩和することができ、より密着性に優れた防錆性下塗材を得ることができる。
【0039】
(D)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、(D)成分10〜300重量部、好ましくは50〜250重量部である。(D)成分が10重量部より少ない場合は、発生錆への浸透性に劣る場合がある。(D)成分が300重量部より多い場合は、塗膜の乾燥が遅くなる場合がある。
【0040】
本発明では、さらに、脂肪酸変性エポキシ樹脂を配合することが好ましい。脂肪酸変性エポキシ樹脂としては、例えば、ダイマー酸変性エポキシ樹脂等が挙げられる。このような脂肪酸変性エポキシ樹脂を配合することにより、可とう性に優れた塗膜を得ることができる。
脂肪酸変性エポキシ樹脂の混合比率は、特に限定されないが、(A)成分の固形分100重量部に対し、脂肪酸変性エポキシ樹脂の固形分で10〜100重量部、好ましくは30〜70重量部程度である。
【0041】
また樹脂成分として、前述したような樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない程度に、公知の樹脂を配合することもできる。このような樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・ベオバ樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0042】
本発明防錆性下塗材は、上記成分以外に、本発明の効果を阻害しない程度に、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、カップリング剤、増粘剤、レベリング剤、可塑剤、防藻剤、防黴剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含有することもできる。
【0043】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、亜鉛顔料、アルミニウム顔料、パール顔料等の1種または2種以上を使用いることができる。
【0044】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、寒水石、軽微性炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、珪砂、珪石粉、石英粉、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、中空バルーン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0045】
防錆顔料としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウムなどのリン酸系防錆顔料、亜リン酸亜鉛、亜リン酸鉄、亜リン酸アルミニウムなどの亜リン酸系防錆顔料、モリブデン酸カルシウム、モリンブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウムなどのモリブデン酸系防錆顔料、酸化バナジウムなどのバナジウム系防錆顔料、ストロンチウムクロメート、ジンクロメート、カルシウムクロメート、カリウムクロメート、バリウムクロメートなどのクロメート系防錆顔料、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの微粒シリカ等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0046】
本発明防錆性下塗材の塗装方法としては、刷毛塗り、鏝塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、静電気塗装、ロールコーター、カーテンフローコーター、ディッピング塗装や電着塗装等を用いることができるが、塗装作業性、塗着性等の点でローラーまたは刷毛が好適である。
また、鋼材表面に発生錆や既存塗膜が存在する場合、予めワイヤーブラシ等を用いてケレンしたり、研磨工具を用いて研磨することもできる。
塗付量としては、特に限定されないが、通常0.05kg/m〜0.15kg/mである。
【0047】
本発明では、防錆性下塗材を塗付した後、後述する耐火材を積層する。
本発明は、上述する防錆性下塗材を塗付した後に、後述する耐火材を積層することによって、優れた密着性を示し、さらには優れた耐火性能を示すことができる。
また、耐火材を積層する前に、公知のプライマー、特に防錆プライマー等を塗付してもよい。このようなプライマーを塗付することによって、密着性をより高めることができる。さらに防錆性のプライマーを塗付することによって、防錆性、密着性をより高めることができる。
【0048】
耐火材としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、発泡性耐火塗料、発泡性耐火シート等の発泡性耐火材、セメント系耐火被覆材等の非発泡性耐火材等が挙げられる。本発明では、特に発泡性耐火材を使用することが好ましい。
【0049】
発泡性耐火材は、火災等により周辺温度が所定の発泡温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものであれば特に限定されず、公知のものまたは市販品を使用することができる。
発泡性耐火材の一例として、発泡性耐火塗料が挙げられるが、その構成成分としては、例えば、結合剤、難燃剤、発泡剤、炭化剤等を含むものが挙げられる。
【0050】
結合剤としては、例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、イソブチレンゴム等の有機質結合剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。また、必要に応じ、セメント、石膏、水ガラス、シリコーン樹脂等の無機質結合剤を併用することも可能である。
【0051】
難燃剤は、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、結合剤炭化促進効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、結合剤の燃焼を抑制する作用を有するものである。本発明で用いる難燃剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の耐火材における難燃剤と同様のものが使用できる。例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等のホウ素化合物等が挙げられる。難燃剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明では、難燃剤として、特にポリリン酸アンモニウムを用いるのが好ましい。ポリリン酸アンモニウムを使用する場合には、脱水冷却効果と不燃性ガス発生効果とをより効果的に発揮することができる。
【0052】
難燃剤の含有量は限定的ではないが、結合剤の固形分100重量部に対して、通常200〜600重量部、好ましくは250〜450重量部である。
【0053】
発泡剤は、一般に、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していく結合剤及び炭化剤を発泡させ、気孔を有する発泡層を形成させる役割を果たす。発泡剤としては、公知の発泡性耐火材で採用されているものも使用可能である。このような発泡剤としては、例えばメラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカルボンアミド、尿素、チオ尿素、ビステトラゾール・ジグアニジン、アゾビステトラゾール・ジグアニジン、アゾビステトラゾール・ジアミノグアニジン等が挙げられる。
【0054】
発泡剤の含有量は限定されないが、結合剤の固形分100重量部に対して、通常40〜200重量部、好ましくは40〜100重量部である。
【0055】
炭化剤は、一般に、火災による結合剤の炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性により優れた厚みのある発泡層を形成する作用を有する。炭化剤としては、このような作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡性耐火材料における炭化剤と同様のものが使用できる。例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの他、デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と発泡層形成作用に優れている点で好ましい。
【0056】
炭化剤の含有量は特に制限されないが、結合剤の固形分100重量部に対して、通常40〜150重量部、好ましくは50〜100重量部である。
【0057】
本発明ではさらに、充填剤を含有することができる。充填剤は、火災時には、十分な強度を有し、発泡した発泡層を安定に保つ効果もあり、基材の温度上昇を効果的に抑制することができる。
充填剤としては、例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ、シリカ等の天然鉱物類等が挙げられる。
充填剤の含有量は、結合剤の固形分100重量部に対して、通常40〜200重量部、好ましくは50〜150重量部である。充填剤が40重量部より少ない場合は、発泡層の強度が不足し、発泡層が消失又は崩壊してしまうおそれがある。充填剤が発泡倍率が低下するおそれがある。
【0058】
また本発明の発泡性耐火塗料は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて着色顔料、繊維、可塑剤、分散剤、触媒、溶剤等を配合することもできる。さらに、膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合することもできる。
【0059】
本発明の発泡性耐火塗料は、上記のような各成分を均一に混合すれば得ることができる。各成分の混合順序等は特に制限されない。上記混合に際しては、ミキサー、ニーダー等の公知の装置を使用すれば良い。
【0060】
発泡性耐火塗料を積層する際には、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用して、一回ないし数回塗り重ねて塗装すれば良い。最終的に形成される発泡性耐火層の厚みは、所望の耐火性能、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は0.2〜5mm程度とすればよい。
【0061】
本発明では、また、上記発泡性耐火塗料を公知の方法により、予め塗膜化してシート状としたもの、不織布、織布等の布状物に含浸させたもの、不燃性布状物(金属箔等を含む)上に積層したもの、不燃性鋼状物上に積層したもの、断熱性板状物上に積層したもの、或いはこれらを積層したもの等の発泡性耐火シートを積層することもできる。積層する方法としては、例えば、公知の接着剤を用いて貼着する方法、熱融着により貼着する方法等により積層すればよい。
このような発泡性耐火シートの厚みは、所望の耐火性能、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は0.2〜5mm程度とすればよい。
【0062】
本発明では、耐火材により形成された耐火層を保護するために、必要に応じてさらに上塗層を積層することもできる。このような上塗層は、公知の上塗塗料を塗付することによって形成することができる。上塗塗料としては、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等の塗料を用いることができる。クリヤー塗料の塗装は、公知の塗装方法によれば良く、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0064】
(防錆性下塗材の作製)
表1に示す原料を用い、表2に示す原料配合にて、原料を混合し、防錆性下塗材を作製した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
(防錆性下塗材の評価)
鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)の表面に、防錆性下塗材を刷毛にて、0.08kg/mで塗装し、標準状態(23℃、50%RH)で、7日間養生したものを試験体とし、次の試験を行った。
【0068】
1.防錆性試験
試験体に対し、JIS K 5400:1990 9.1に記載の方法で、120時間、耐塩水噴霧試験を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜の膨れ・はがれが見当たらず、錆の発生も見当たらなかった。
○:錆の発生がほとんど見当たらなかった。
△:錆の発生が一部見られた。
×:塗膜の膨れ・はがれが見られ、錆の発生が見られた。
【0069】
【表3】

【0070】
2.密着性試験
耐塩水噴霧試験後の試験体に対し、JIS K 5400:1990 8.5.3.に記載の方法(Xカットテープ法)で、密着性試験を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜のはがれが見当たらなかった。
○:塗膜のはがれがほとんど見当たらなかった。
△:塗膜のはがれが一部見られた。
×:塗膜がはがれてしまった。
【0071】
また、表面の錆びた鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)をワイヤーブラシにて簡易的に錆をケレンした上に、作製した防錆性下塗材を、刷毛にて、塗付量0.08kg/mで塗装し、試験体を作製した。塗装後、標準状態(23℃、50%RH)で、7日間養生させ、各試験を行った。
【0072】
3.防錆性試験
塗装後試験体に対し、1.防錆性試験(鉄板)と同様の耐塩水噴霧試験を行った。評価は以下の通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜の膨れ・はがれが見当たらず、錆の進行が進んでおらず、錆の発生も見当たらなかった。
○:錆の進行、錆の発生がほとんど見当たらなかった。
△:錆の進行、錆の発生が一部見られた。
×:塗膜の膨れ・はがれが見られ、錆の進行、錆の発生が見られた。
【0073】
4.密着性試験
耐塩水噴霧試験後の試験体に対し、2.密着性試験(鉄板)と同様の密着性試験を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表3に示す。
◎:塗膜のはがれが見当たらなかった。
○:塗膜のはがれがほとんど見当たらなかった。
△:塗膜のはがれが一部見られた。
×:塗膜がはがれてしまった。
【0074】
5.錆への浸透性試験
塗装後の試験体の断面を、実体顕微鏡(SZ6045TRPT:オリンパス(株)社製)にて観察し、錆への浸透性を評価した。評価は、◎(錆への浸透に優れていた)から、○、△、×(錆への浸透が見られなかった)の4段階評価で行なった。その結果を表3に示す。
【0075】
(発泡性耐火塗料の作製)
表4に示す原料を用い、表4に示す原料配合にて、原料を混合し、発泡性耐火塗材を作製した。
【0076】
【表4】

【0077】
(実施例1)
(実施例1−1)
鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)(以下、「鉄板」ともいう。)の表面に、防錆性下塗材1を刷毛にて、0.08kg/mで塗装し、標準状態(20±1℃、65±5%RH)で、7日間養生した後、発泡性耐火塗料を刷毛にて、0.5kg/mで塗装し、標準状態で、7日間養生し、試験体を得、次の試験を行った。
【0078】
(防錆性試験)
JIS K 5400:1990 8.5.3.に記載の方法(Xカットテープ法)に準じて、試験体にX状の切傷を付け、JIS K 5400:1990 9.1に記載の方法で、120時間、耐塩水噴霧を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表5に示す。
◎:錆の発生が見当たらなかった。
○:錆の発生がほとんど見当たらなかった。
△:X状のカット部に錆の発生が見られた。
×:X状のカット部から錆の流出が見られた。
【0079】
(密着性試験)
防錆性試験において、耐塩水噴霧を行った後、JIS K 5400:1990 8.5.3.に記載の方法(Xカットテープ法)に準じて、密着性試験を行った。評価は、以下に示す通りである。結果は表5に示す。
◎:塗膜のはがれが見当たらなかった。
○:塗膜のはがれがほとんど見当たらなかった。
△:塗膜のはがれが一部見られた。
×:塗膜がはがれてしまった。
【0080】
(実施例1−2)
鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)の替わりに、表面の錆びた鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)をワイヤーブラシにて簡易的に錆をケレンした鉄板(以下、「錆鉄板」ともいう。)を用いて、実施例1−1と同様の方法で、試験体を得、実施例1−1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0081】
【表5】

【0082】
(耐火性試験)
また、実施例1においては、実施例1−1及び実施例1−2で得られた試験体を用いてそれぞれ耐火性試験を実施した。試験方法は、ISO834の標準加熱曲線に準じて一定時間(1時間)加熱し、室温に冷却した後、発泡層の発泡倍率を測定した。
その結果、両者とも優れた発泡倍率を示し、優れた耐火性能を有していた。
【0083】
(実施例2)
(実施例2−1)
鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)の表面に、防錆性下塗材1を刷毛にて、0.08kg/mで塗装し、標準状態(23℃、50%RH)で7日間養生した後、ミラクボーウセイM(エスケー化研社製、防錆プライマー)を刷毛にて、0.1kg/mで塗装し、標準状態で7日間養生し、さらに、発泡性耐火塗料を刷毛にて、0.5kg/mで塗装し、標準状態で7日間養生し、試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0084】
(実施例2−2)
鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)の替わりに、表面の錆びた鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)をワイヤーブラシにて簡易的に錆をケレンした鉄板(以下、「錆鉄板」ともいう。)を用いて、実施例2−1と同様の方法で、試験体を得、実施例1−1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0085】
(実施例3)
防錆性下塗材1を防錆性下塗材2に替えた以外は、実施例2と同様の方法で試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0086】
(実施例4)
防錆性下塗材1を防錆性下塗材3に替えた以外は、実施例2と同様の方法で試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0087】
(実施例5)
防錆性下塗材1を防錆性下塗材4に替えた以外は、実施例2と同様の方法で試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0088】
(実施例6)
防錆性下塗材1を防錆性下塗材5に替えた以外は、実施例2と同様の方法で試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0089】
(実施例7)
防錆性下塗材1を防錆性下塗材6に替えた以外は、実施例2と同様の方法で試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0090】
(実施例8)
防錆性下塗材1を防錆性下塗材7に替えた以外は、実施例2と同様の方法で試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0091】
(比較例1)
防錆性下塗材1を防錆性下塗材8に替えた以外は、実施例2と同様の方法で試験体を得、実施例1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0092】
(比較例2)
(比較例2−1)
鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)の表面に、発泡性耐火塗料を刷毛にて、0.5kg/mで塗装し、標準状態で、7日間養生し、試験体を得、実施例1−1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。
【0093】
(比較例2−2)
鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)の替わりに、表面の錆びた鉄板(JIS G3141 SPCC)(7cm×15cm)をワイヤーブラシにて簡易的に錆をケレンした鉄板を用いて、比較例2−1と同様の方法で、試験体を得、実施例1−1と同様の防錆性試験、密着性試験を行った。結果は表5に示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材表面に、A.キレート変性エポキシ樹脂、B.ケチミン化合物、C.アニオン交換型化合物、D.有機溶剤を含有する防錆性下塗材を塗付した後、耐火材を積層することを特徴とする鋼材表面の耐火被覆方法。
【請求項2】
防錆性下塗材が、A.キレート変性エポキシ樹脂100重量部に対し、B.ケチミン化合物5〜40重量部、C.アニオン交換型化合物0.01〜100重量部、D.有機溶剤10〜300重量部、を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼材表面の耐火被覆方法。
【請求項3】
D.有機溶剤のうち40重量%以上が脂肪族炭化水素系有機溶剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鋼材表面の耐火被覆方法。


【公開番号】特開2006−36969(P2006−36969A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220436(P2004−220436)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】