説明

鋼板等の切断方法および切断装置

【課題】鋼板等を切断加工する場合、切断加工時の熱ひずみや残留応力等により被切断材が移動し、寸法形状が指示と異なる場合が発生するという問題があった。
【解決手段】問題点を解決するため、
被切断材の切断進行に伴い、上部から被切断材を拘束することにより被切断材の移動を抑制することを特徴とする切断加工方法、
被切断材の切断進行に伴い、上部から被切断材を拘束することにより被切断材の移動を抑制することを特徴とする切断加工装置、
前述の切断加工において、マグネットまたは吸盤を用い被切断材を拘束することを特徴とする切断加工方法、
前述の切断加工において、マグネットまたは吸盤を用い被切断材を拘束することを特徴とする切断加工装置、
前述の切断加工において、移動可能な押さえジグを用い上部から圧力を付与することにより被切断材を拘束することを特徴とする切断加工方法、
前述の切断加工において、移動可能な押さえジグを用い上部から圧力を付与することにより被切断材を拘束することを特徴とする切断加工装置、
を 提供することを手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板等を熱切断する方法およびその際に使用する切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等を熱切断する際には、被切断材を切断定盤に載置し、数値制御されたガス切断機、プラズマ切断機、レーザー切断機等を使用して切断加工されるのが一般的である。
【0003】
数値制御するための指示情報は、計算機上で設計されかつ図面作成された形状数値情報として各種切断加工機械に入力される。これにより複雑な曲線形状を含む外形形状や穴あけ加工、中抜き加工を有する部材でも容易に切断加工することが可能である。
【0004】
これを更に効率的に進める方法の一例として特開平5−123863がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス切断機、プラズマ切断機、レーザー切断機等を使用して鋼板等を切断加工する場合、被切断材をクランプや溶接等の手段で積載する切断定盤等に拘束しても、切断加工時の熱ひずみや被切断材が有する内部の残留応力等により被切断材そのものが切断加工の進捗に伴い微量ずつ移動し、切断加工後の寸法形状が指示された情報数値と異なる場合がまれに発生する。特開平5−123863は切断加工の指示情報を効率的に与える方法の一例であるが、幾ら指示情報を精度良く効率的に与えても、被切断材の移動等に伴う寸法形状のズレ、ゆがみは防止し得ない。一方で切断加工時に被切断材の移動を検出し補正をする方法も考えられるが、装置が大がかりになり実用的ではないという問題があった。
【0006】
また、熱ひずみや被切断材が有する残留応力等の影響を回避でき、精度良く切断加工が出来た場合でも、切断加工されつつある製品は切断加工の進行とともに被切断母材から次第に拘束されなくなるために、載置された切断定盤からの拘束のみとなるために、その大きさや有する重心の位置によっては、切り離される時点でバランスを失い傾くなどして、当該切断切り離し部分にノッチ疵が生じたり、製品が切断設備に接触して切断用トーチを破損するなどの不具合を発生させることがしばしば生じていた。
【0007】
本発明は上記問題点を解決する効果的な切断方法およびその際に使用する装置を提供するもので、切断加工そのものの精度、切断面品質を高く維持することが可能となり、後の複雑な全数検査や抜き取り検査の負荷を軽減することができ、生産能率を大幅に向上できるとともに、不合格品の次工程への流失や客先での品質事故が防止できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記問題点を解決するため、
被切断材の切断進行に伴い、上部から被切断材を拘束することにより被切断材の移動を抑制することを特徴とする切断加工方法、
被切断材の切断進行に伴い、上部から被切断材を拘束することにより被切断材の移動を抑制することを特徴とする切断加工装置、
前述の切断加工において、マグネットまたは吸盤を用い被切断材を拘束することを特徴とする切断加工方法、
前述の切断加工において、マグネットまたは吸盤を用い被切断材を拘束することを特徴とする切断加工装置、
前述の切断加工において、移動可能な押さえジグを用い上部から圧力を付与することにより被切断材を拘束することを特徴とする切断加工方法、
前述の切断加工において、移動可能な押さえジグを用い上部から圧力を付与することにより被切断材を拘束することを特徴とする切断加工装置、
を 提供することを手段とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、不良品の発生を抑制することが出来るとともに、負荷の高い手作業による計測作業、すなわち全数検査や抜き取り検査を実施して詳細形状を測定し品質を保証するなどの負荷の高い作業の負荷を低減することが出来、また切断不良部位を手直しする等の補修作業を大幅に低減することが可能となって、生産能率が大幅に向上し、不良品に伴う品質事故の発生が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に、多本トーチを有するNCガス切断装置にマグネットローラーを配設し被切断材を上部から拘束しつつ切断することを可能にした切断機を示す。マグネットローラーはガス切断トーチを保持するガントリー型の走行架台に取り付けられ、マグネットの磁力により被切断母材と切り離されつつある被切断製品を拘束する。またマグネットの磁力に加え、マグネットローラーの自重も加わり拘束はより確実なものとなる。拘束力が不足する場合は必要に応じ、油圧・圧空シリンダーにより加圧することも可能である。弱い拘束力で十分な場合は、磁力を持たないローラーで押さえるだけでも有効である。
【0011】
マグネットローラーは本事例のように単体単数でも良いが、被切断製品の形状や大きさに合わせ、複数本数配設することも有用である。また、被切断母材の大きさや切断機の幅方向長さに応じ、たわみが生じにくいよう分割して配置することも考えられる。
【0012】
本事例のように走行架台にマグネットローラーを配設すると、切断トーチと被切断材拘束位置の間隔を常に一定に保つことが出来、またトーチの移動に円滑に追従するため、切断時の衝撃振動等の外乱を及ぼしにくく、安定した切断が可能である。また、トーチと接触部分の間隔を被切断製品の形状に合わせ、最適な距離に都度変えて作業することも可能である。
【0013】
マグネットローラーによる拘束が不十分な場合には、前述のようにその数を増やしたり、圧力を変更することが可能であるが、ローラーの円形断面を多角形にするなどして接触面積を増やすことも有用である。この際には接触面を有する拘束装置と切断トーチの動きをそれぞれに制御する必要があり、磁力の入り切りを行いつつ複数拘束面の切り替えを行うウォーキングバーのごとき機構が必要になる。
【0014】
簡易に行うには着脱が容易でバンドリング可能なマグネットを被切断製品の切断進行に応じ、被切断母材と切り離される製品に跨るよう接着させ、必要に応じ着脱して移動させることも有用である。
【0015】
更に簡易な方法としては、切断の進行に応じ、被切断母材と被切断製品の上部に覆いかぶせるように平板を載置し、自重による摩擦力で被切断母材と被切断製品を拘束し、相対的な移動を抑制する方法も有用である。
【実施例】
【0016】
図1に基づき説明する。本実施例は多本トーチを有するNCガス切断機に本発明法を適用した例である。マグネットローラー1はガントリー形式の切断機走行架台2に付帯して配設した。走行架台は走行レール3を移動するとともに、他本数のガス切断トーチ4を搭載し、これらの切断トーチはNC制御により走行方向および横行方向に自由に移動可能で、指示に従い任意の図形に合致した切断線を描くことができる。本実施例には3本の切断トーチにより被切断母材5より矩形形状の製品6を切断し、切り抜く作業の進行過程を示す。マグネットローラーはその軸方向両端にてヒンジ7にて走行架台に接続され、切断トーチの走行方向の移動に追従する。また、ヒンジ7には油圧・圧空シリンダーを付帯することができ被切断母材および製品に一定の圧力を加えることも可能である。また、スクリュー機構によりトーチ切断位置とマグネットローラー押え位置の間隔を製品の形状などに合わせ最適な位置に調整することが可能である。
【0017】
本実施例では切断開始点8a、8b、8cより時計回りに切断を実施し、9a、9b、9cに進行するまではマグネットローラーを被切断母材より上方に保持し待機させ、それ以降の切断に際し振動を与えないようゆるやかに下降、接地させた後に切断トーチの移動に同期して、被切断製品と被切断母材の相対的な移動を抑制する事例である。多くの場合、単数のマグネットローラーで効果を得ることができるが、被切断製品の形状が切断機走行方向に長い場合などには複数のローラーを使用することも効果を高める。
【0018】
また、図2には着脱可能なマグネット板を用い、本発明法を実施した例を示す。内蔵される磁石の向きをレバーにより変えることによりマグネット板16は容易に着脱でき、また容易に移動させることが可能である。2本のトーチ11を有するNCガス切断機で矩形形状の製品を切断する作業を示している。本事例でも切断トーチは切断機走行架台に搭載され、走行・横行をNC制御されて図形を描くように移動する。
【0019】
本事例では14a、14bより切断を開始し、時計回りに切断が進行するが、15a、15bを通過したのちさらに切断が進行し、マグネット板を載置可能な位置まで切断トーチが移動した際にマグネット板16を静かに載置し磁力を働かせ、被切断母材12と製品13の相対的な移動を抑制する事例である。なお、マグネット板の代わりに縞鋼板など自重を有する鋼板等を用いても一定の効果を享受することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示す図である。
【図2】最良の形態を示す図1の実施例の設備を、背後から見た状態を示す図である。
【図3】本発明を実施する一例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 マグネットローラー
2 切断機走行架台
3 切断機走行レール
4 ガス切断トーチ
5 被切断母材
6 被切断製品
7 マグネットローラー支持ヒンジ
8 切断開始点
9 切断通過点
10 切断定盤
11 ガス切断トーチ
12 被切断母材
13 被切断製品
14 切断開始点
15 切断通過点
16 マグネット板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切断材の切断進行に伴い、上部から被切断材を拘束することにより被切断材の移動を抑制することを特徴とする切断加工方法。
【請求項2】
被切断材の切断進行に伴い、上部から被切断材を拘束することにより被切断材の移動を抑制することを特徴とする切断加工装置。
【請求項3】
請求項1の切断加工において、マグネットまたは吸盤を用い被切断材を拘束することを特徴とする切断加工方法。
【請求項4】
請求項2の切断加工において、マグネットまたは吸盤を用い被切断材を拘束することを特徴とする切断加工装置。
【請求項5】
請求項1の切断加工において、移動可能な押さえジグを用い上部から圧力を付与することにより被切断材を拘束することを特徴とする切断加工方法。
【請求項6】
請求項2の切断加工において、移動可能な押さえジグを用い上部から圧力を付与することにより被切断材を拘束することを特徴とする切断加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−183452(P2011−183452A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76156(P2010−76156)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(507420189)東海鋼材工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】