説明

鋼管の製造方法

【課題】多サイズ多品種の鋼管を製造する際、各処理設備に対し処理条件の段取り設定を適切に行える鋼管の製造方法を提供する。
【解決手段】製作番号・製品情報を設定しホストCPに登録するステップと、タグ番号が記憶されたICタグを鋼管に取り付け製作番号とタグ番号を関連付けして生産管理CPに登録するステップと、ホストCPから製作番号・製品情報を取得し各処理設備での操業条件の設定データテーブルを生産管理CPに登録するステップとを経た後、処理設備にて、鋼管を受け入れるステップと、鋼管に取り付けられたICタグを読み取りタグ番号を生産管理CPに送信するステップと、受信したタグ番号に基づき製作番号に対応する操業条件を設定データテーブルから抽出し処理設備に送信するステップと、受信した操業条件を処理設備に設定するステップと、処理を実行するステップと、処理後に実操業条件を品質管理CPに送信し保存するステップとを経る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の処理設備を経由して製造される鋼管の製造方法に関し、特に、処理設備への段取り設定ミスの防止を図った鋼管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管は、複数の製造工程を経て製造される。例えば、火力発電用ボイラー管などに適用されるステンレス継目無鋼管の製造工程は、マンネスマン製管法やユジーンセジュルネ製管法などによって素管を成形した後、素管の熱処理、素管の曲がり矯正、素管の酸洗、素管の外観検査、口絞り加工、潤滑剤の被覆処理、抽伸加工、抽伸後の曲がり矯正、脱脂、成品の熱処理、成品の曲がり矯正、ET(過流探傷)、管切り、酸洗、UT(超音波探傷)、および寸法検査といった多岐にわたる。また、鋼管の製造工程や熱処理などの処理条件は、寸法サイズ(外径、肉厚および長さ)や品種(規格および材質)により異なる。
【0003】
さらに、鋼管の製造においては、サイズや品種により製造工程が異なる状況に機動的に対応するため、処理設備間は連続した搬送ラインで接続されないことが多い。この場合、処理設備で処理が完了した材料は、クレーンや台車やトラックを用いて一旦オフラインに搬出され、必要なときにクレーンなどを用いて次工程の処理設備に搬入される。
【0004】
これらのことから、多くのサイズや品種にわたる鋼管の製造は極めて煩雑であり、各製造工程において、作業指示ミスが生じ易く、その工程で用いられる処理設備に対して処理条件の段取り設定ミスが発生し易い。段取り設定ミスが発生すると、適切な処理が行われないことから、所望の品質が得られない。
【0005】
このような問題に対し、関連する従来技術は下記のものがある。
特許文献1には、複数の製造工程からなる継目無鋼管の製造において、製造情報が記憶されたICタグを鋼管の管体または管端プロテクターに装着する工程と、ICタグに記憶された製造情報を各製造ラインに設置されたプロセスコンピュータに送信し予定と実績を照合して判定する工程と、判定結果をICタグに送信し書き込む工程と、判定結果に基づき現品を次工程に払い出す工程と、を備えた鋼管の製造管理方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、半導体回路基板を加工対象部品とし、その加工設備に加工条件を設定するための加工条件設定装置が開示されている。同文献に開示された設定装置では、加工対象部品にICタグが添付されており、加工対象部品が加工設備に搬入されたとき、無線ICタグリーダによってICタグからデータを読み込み、読み込んだデータをその加工設備の加工条件として設定するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−250714号公報
【特許文献2】特開2007−279827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示された技術では、ICタグに記憶された製造情報から、予定された製造工程が完了しているか否かを判別することができ、鋼管の工程管理を行うことが可能である。しかし、同文献に開示された技術では、処理設備への段取り設定に関して何ら考慮されてなく、段取り設定ミスを防止することはできない。
【0009】
前記特許文献2に開示された技術では、上述の通り、ICタグに記憶されたデータを読み込み加工設備の加工条件として設定するとしている。しかし、同文献に開示された技術では、加工設備は、これを構成する複数の加工機が搬送ラインで連なってなる単独設備であり、鋼管を製造する場合のように、互いに独立した複数の処理設備が組み合わさってなる複雑なものでない。
【0010】
また、前記特許文献1、2に開示された技術では、ICタグに製造情報や加工条件データなどの詳細情報を記憶させており、この場合、製造工程を経る過程でICタグが破損したり紛失すると、詳細情報が消失することから、処理設備への段取り設定を行えず、工程管理も行えない。特に、鋼管の製造工程のうち、潤滑剤の被覆処理や脱脂や酸洗の工程では、ICタグを鋼管に取り付けた状態で処理を行うことが想定され、この場合、ICタグへの負荷は著しく、ICタグの破損や紛失は大いに起こり得る。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、多サイズ・多品種にわたり鋼管を製造する際、個々の製造工程で用いられる処理設備に対し、処理条件の段取り設定を適切に行うことができる鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の鋼管の製造方法は、複数の処理設備を経由して製造される鋼管の製造方法であって、
鋼管ごとに製作番号および製品情報を設定し、ホストコンピュータに登録するステップと、鋼管にICタグを取り付け、対象とする鋼管の製作番号とICタグに記憶されているタグ番号とを関連付けして生産管理コンピュータに登録するステップと、ホストコンピュータから製作番号および製品情報を取得し、製作番号に対応し製品情報に基づき各処理設備での操業条件に関する設定データテーブルを生産管理コンピュータに登録するステップと、の一連のステップを経た後、
処理設備のうちの2以上の処理設備において、鋼管を受け入れるステップと、当該鋼管に取り付けられたICタグを読取装置によって読み取り、読み取ったタグ番号を生産管理コンピュータに送信するステップと、受信したタグ番号に関連付けられた製作番号に対応する操業条件を設定データテーブルから抽出し、当該処理設備に送信するステップと、受信した操業条件を当該処理設備の操業条件として設定するステップと、設定された操業条件に従って処理を実行するステップと、処理を実行した後に実際に用いた操業条件を品質管理コンピュータに送信して保存するステップと、の一連のステップを経ることを特徴とする鋼管の製造方法である。
【0013】
上記した鋼管の製造方法は、処理設備で前記一連のステップを経た後に、当該処理設備での処理が完了したことを示す処理完了情報を生産管理コンピュータに送信し、受信した処理完了情報を製作番号に関連付けして保存するステップを含み、
以降の処理設備において、処理を実行する前に、生産管理コンピュータに保存された処理完了情報に基づいて、直前の処理設備での処理が完了しているか否かを確認し、処理の実行可否を判断するステップを含む構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鋼管の製造方法によれば、各処理設備で処理を行うに際に、鋼管に取り付けられたICタグを読み取ることにより、生産管理コンピュータに予め登録された設定データテーブルに基づいて、個々の処理設備に適切な処理条件を設定することができる。しかも、処理設備に設定する処理条件の基になる設定データテーブルが生産管理コンピュータに登録されているため、ICタグが破損したり紛失した場合でも、設定データテーブルの情報が消失することは一切ない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の鋼管の製造方法を実施するのに適した鋼管製造システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】鋼管製造システムにおいてICタグを読み取る状況を説明するための模式図である。
【図3】本発明の鋼管の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の鋼管の製造方法の実施形態について、その製造方法を適用できる鋼管製造システムを含め詳述する。
【0017】
1.鋼管製造システム
図1は、本発明の鋼管の製造方法を実施するのに適した鋼管製造システムの構成例を示すブロック図である。ここでは、ステンレス継目無鋼管の製造に用いられる鋼管製造システムを例に挙げて説明する。
【0018】
鋼管製造システムは、最上層のホストコンピュータ(以下、「ホストCP」という)1と、このホストCP1の下層にネットワーク接続された生産管理コンピュータ(以下、「生産管理CP」という)2と、この生産管理CP2と並列にネットワーク接続された品質管理コンピュータ(以下、「品質管理CP」という)3と、これらの生産管理CP2および品質管理CP3の下層にネットワーク接続された種々の処理設備とから構成される。生産管理CP2および品質管理CP3と各処理設備とのネットワーク接続は、厳密には、各処理設備の動作を制御するシーケンサに対してなされる。
【0019】
この鋼管製造システムにおいては、各処理設備を経由する鋼管に下記図2に示すICタグ40が取り付けられる。ここで、製造する対象の鋼管は、予めロットごとに固有の製作番号が付され、同一ロットの鋼管はまとめて各処理設備を流通する。このため、ICタグは、同一ロットの鋼管の1本に代表的に取り付けることができる。ICタグには、ICタグそれぞれに固有のタグ番号が記憶されている。なお、ICタグは鋼管1本毎に取り付けてもよい。
【0020】
さらに、鋼管製造システムでは、各処理設備の材料搬入ステージに、ICタグのタグ番号を読み取る、下記図2に示すICタグ読取装置30が配置されている。このICタグ読取装置は、生産管理CP2にネットワーク接続されており、各処理設備に処理対象の鋼管が搬入されたとき、その鋼管に取り付けられているICタグを読み取り、読み取ったタグ番号を生産管理CP2に送信する。
【0021】
ホストCP1は、製造対象の鋼管ごとに製作番号および製品情報(サイズ、規格および材質)を設定し、それらの情報を自己の記憶媒体に登録する。
【0022】
生産管理CP2は、ICタグが取り付けられた鋼管の製作番号と、そのICタグに記憶されているタグ番号とを関連付けして、自己の記憶媒体に登録する。また、生産管理CP2は、ホストCP1からネットワークを介して鋼管の製作番号および製品情報を取得し、製品情報に基づき、製作番号に対応して各処理設備での操業条件に関する設定データテーブルを作成し、自己の記憶媒体に登録する。さらに、生産管理CP2は、各処理設備での処理が完了するたびに、その処理設備からネットワークを介して、その処理設備での処理が完了したことを示す処理完了情報を受信し、製作番号と関連付けして自己の記憶媒体に保存する。
【0023】
品質管理CP3は、各処理設備での処理が完了するたびに、各処理設備からネットワークを介して、実際に処理で用いた操業条件を受信し、製作番号と関連付けして自己の記憶媒体に保存する。
【0024】
図1に示す鋼管製造システムは、その製造工程として、素管の熱処理、素管の曲がり矯正、素管の酸洗、素管の外観検査、口絞り加工、潤滑剤の被覆処理、抽伸加工、抽伸後の曲がり矯正、脱脂、成品の熱処理、成品の曲がり矯正、ET(過流探傷)、管切り、酸洗、およびUT(超音波探傷)を行う。これらの製造工程に対応するため、鋼管製造システムは、処理設備として、熱処理設備10、曲がり矯正設備11、酸洗設備12、素管検査設備13、口絞り加工設備14、潤滑剤被覆処理設備15、抽伸加工設備16、脱脂設備17、ET設備18、管切り設備19、およびUT設備20を備える。
【0025】
熱処理設備10は、素管や抽伸加工後の成品に熱処理を施す。熱処理設備10としては、ローラーハース式熱処理炉やバレル式熱処理炉などを採用することができる。この場合、操業条件の段取り設定項目は、各ゾーンの加熱温度、送管速度、冷却速度などが該当する。
【0026】
曲がり矯正設備11は、熱処理後の素管や成品に曲がり矯正を施す。曲がり矯正設備11としては、パスラインに沿って複数のつづみ形ロールを傾斜配置してなる傾斜ロール式矯正機を採用することができる。この場合、操業条件の段取り設定項目は、ロールのオフセット量、クラッシュ量、ロール角度などが該当する。
【0027】
酸洗設備12は、曲がり矯正後の素管や管切り後の成品に酸洗を施してスケールを除去する。酸洗設備12では、素管や成品を、例えば水洗槽、弗硝酸槽、湯洗槽に順に浸漬させる処理を行う。酸洗設備12での操業条件の段取り設定項目は、各槽への浸漬時間などが該当する。
【0028】
素管検査設備13では、酸洗後の素管に対し目視により外観検査が行われる。
【0029】
口絞り加工設備14は、外観検査後の素管の管端を加熱し、口絞り機によって口絞り加工を施す。口絞り加工設備14での操業条件の段取り設定項目は、口絞り径、加熱の有無などが該当する。
【0030】
潤滑剤被覆処理設備15は、抽伸加工に先立ち、口絞り加工後の素管の表面に潤滑剤を被覆する処理を施す。潤滑剤被覆処理設備15では、素管を、例えば蓚酸槽、水洗槽、潤滑剤皮膜処理槽の順に浸漬させ、その後に乾燥機に挿入して乾燥させる処理を行う。潤滑剤被覆処理設備15での操業条件の段取り設定項目は、各槽への浸漬時間などが該当する。
【0031】
抽伸加工設備16は、潤滑剤被覆処理後の素管に抽伸加工を施し、所定の外径および肉厚の成品に仕上げる。抽伸加工設備16での段取り設定項目としては、使用する工具の種類などが該当する。
【0032】
脱脂設備17は、抽伸加工および曲がり矯正が施された後の成品に脱脂処理を施し、成品表面に残存する潤滑剤を除去する。脱脂設備17では、成品を、例えばアルカリ槽、リンス槽、硫酸槽、水洗槽の順に浸漬させ、その後に乾燥機に挿入して乾燥させる処理を行う。脱脂設備17での操業条件の段取り設定項目は、各槽への浸漬時間などが該当する。
【0033】
ET設備18では、脱脂、熱処理および曲がり矯正が施された後の成品に対し渦流探傷を行い、表面および表皮下の欠陥を検出する。
【0034】
管切り設備19は、ETで合格した成品を所定の長さに切断し、その切断面に面取りを施す。管切り設備19での操業条件の段取り設定項目は、切断長さなどが該当する。
【0035】
UT設備20では、管切りおよび酸洗が施された成品に対し超音波探傷を行い、表層や内部の欠陥を検出する。
【0036】
図2は、鋼管製造システムにおいてICタグを読み取る状況を説明するための模式図である。同図に示すように、ICタグ読取装置30は、アンテナ31と、アンテナ31に接続された読取コンピュータ(以下、「読取CP」という)32とから構成され、各処理設備の材料搬入ステージにそれぞれ配置されている。各読取CP32は、生産管理CP2にネットワーク接続されている。
【0037】
処理対象の鋼管が処理設備に搬入されたとき、読取CP32からの指令によりアンテナ31から電磁波が放出され、これに伴い、ICタグ40に内蔵されている小型アンテナ42が共振し電流が発生する。これにより、ICタグ40のICチップ41内のロジック回路が駆動し、そのICチップ41内のメモリーに記憶されているタグ番号の情報が小型アンテナ42から送信される。ICタグ読取装置30は、送信されたタグ番号の情報をアンテナ31で受信して読取CP32内の記憶媒体に保存し、生産管理CP2に送信する。
【0038】
ICタグ読取装置30を構成するアンテナ31には、移動可能な携帯式のものや固定のゲート式ものを採用することができる。
【0039】
ICタグ40としては、基板にICチップ41と小型アンテナ42を搭載し、この基板全体を硬質の合成樹脂(例:ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA))で覆って保護した板状のものを採用することができる。また、ICタグ40の表面には、記憶されているタグ番号が明記されていることが好ましい。記憶されているタグ番号を目視で確認できるからである。
【0040】
ここで、ゲート式のアンテナ31を有するICタグ読取装置30を用いる場合、鋼管に取り付けたICタグ40は、この鋼管を含む同一ロットの鋼管を台車やリフト台に積載して搬送しながら読み取ることができる。この場合、ICタグ40は、鋼管の外表面に直接取り付けるのではなく、鋼管の一端に針金を挿し込み、鋼管から突出する針金の先端に取り付けるのが好ましい。読み取りに際し、ICタグ読取装置30からの電磁波が導電性を有する鋼管にも作用することから、その影響を回避し、ICタグ40に電磁波を有効に作用させるためである。さらに、針金に電磁波が作用することも回避するため、ICタグ40は、内蔵の小型アンテナ42と針金との距離を確保するように、針金と直角、すなわち鉛直方向に取り付けるのが好ましい。
【0041】
2.鋼管の製造方法
図3は、本発明の鋼管の製造方法を説明するためのフローチャートである。本発明の鋼管の製造方法では、先ず事前準備として、下記のステップ#5〜#20の一連のステップを経る。
【0042】
ステップ#5では、ホストCPにおいて、鋼管ごとに製作番号および製品情報を設定し登録する。
【0043】
ステップ#10では、鋼管にICタグを取り付ける。これと同時に、ステップ#15では、生産管理CPにおいて、鋼管の製作番号と、その鋼管に取り付けられたICタグに記憶されているタグ番号とを関連付けして登録する。
【0044】
さらに、ステップ#20では、生産管理CPにおいて、ホストCPから製作番号および製品情報を取得し、製品情報に基づき、製作番号に対応して各処理設備での操業条件に関する設定データテーブルを作成し登録する。設定データテーブルを必要とする処理設備は、前記図1に示す鋼管製造システムの場合、熱処理設備10、曲がり矯正設備11、酸洗設備12、潤滑剤被覆処理設備15、および脱脂設備17が該当する。下記の表1および表2に設定データテーブルの一例を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1は、熱処理設備における設定データテーブルを例示し、鋼管の材質およびサイズごとに、途中熱処理(抽伸加工前の熱処理)と成品熱処理(抽伸加工後の熱処理)に区別して、均熱帯の温度、および送管速度の設定条件を示している。表2は、曲がり矯正設備における設定データテーブルを例示し、鋼管のサイズごとに、各ロールのオフセット量、およびクラッシュ量の設定条件を示している。
【0048】
上記ステップ#5〜#20の一連のステップを経た後、各処理設備において、下記のステップ#25〜#50の一連のステップを繰り返す。
【0049】
ステップ#25では、材料搬入ステージに鋼管を受け入れる。これと同時に、ステップ#30では、その鋼管に取り付けられたICタグをICタグ読取装置によって読み取り、読み取ったタグ番号を生産管理CPに送信する。
【0050】
続いてステップ#35では、生産管理CPにおいて、受信したタグ番号に関連付けられた製作番号に対応する操業条件を設定データテーブルから抽出し、該当する処理設備に送信する。なお、生産管理CPに設定データテーブルが登録されてない処理設備に対しては、送信は行わない。
【0051】
次にステップ#40では、処理設備において、受信した操業条件を当該処理設備の操業条件として段取り設定する。この段取り設定は自動で行われる。なお、生産管理CPに設定データテーブルが登録されてない処理設備に対しては、手動により段取り設定の入力を行う。
【0052】
ステップ#45では、設定された操業条件に従って処理を実行する。処理の実行前に、各種の段取り設定項目を確認するステップを組み込むこともできる。
【0053】
そして、ステップ#50では、処理を実行した後に、実際に用いた操業条件を品質管理CPに送信し、品質管理CPにおいて保存する。実操業では、処理の実行中に操業条件を微調整することがあり、微調整した操業条件の情報を品質管理CPに保存しておくことにより、有効な品質保証を行える。
【0054】
なお、処理設備のうち、潤滑剤被覆処理設備、脱脂設備および酸洗設備においては、鋼管にICタグを取り付けた状態で処理を行うことができる。それ以外の処理設備においては、鋼管からICタグを取り外して処理を行い、処理後に同じICタグを取り付ける。
【0055】
このような鋼管の製造方法では、多サイズ・多品種にわたり鋼管を製造する場合であっても、各処理設備で処理を行うに際し、鋼管に取り付けられたICタグを読み取ることにより、生産管理CPに予め登録された設定データテーブルに基づいて、個々の処理設備に適切な処理条件を設定することができ、設定ミスの発生を防止することが可能になる。
【0056】
また、処理設備に設定する処理条件の基になる設定データテーブルが生産管理CPに登録されているため、製造工程の過程でICタグが破損したり紛失した場合でも、設定データテーブルの情報が消失することは一切なく、安全である。
【0057】
上記した鋼管の製造方法においては、さらに以下の構成を追加することができる。すなわち、処理設備において、前記図3に示すステップ#25〜#50の一連のステップを経た後に、当該処理設備での処理が完了したことを示す処理完了情報を生産管理CPに送信し、受信した処理完了情報を製作番号に関連付けして生産管理CPに保存する。そして、以降の処理設備において、処理を実行する前に、生産管理CPに保存された処理完了情報に基づいて、予定された直前の処理設備での処理が完了しているか否かを確認し、処理の実行可否を判断する。このような構成にすれば、鋼管の工程管理を行うことも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の鋼管の製造方法によれば、各処理設備で処理を行うに際に、鋼管に取り付けられたICタグを読み取ることにより、生産管理CPに予め登録された設定データテーブルに基づいて、個々の処理設備に適切な処理条件を設定することができ、所望の品質の鋼管を効率良く確実に製造することができる。しかも、処理設備に設定する処理条件の基になる設定データテーブルが生産管理CPに登録されているため、ICタグが破損したり紛失した場合でも、設定データテーブルの情報が消失することは一切ない。従って、本発明は、多サイズ・多品種にわたる鋼管の製造に極めて有用である。
【符号の説明】
【0059】
1:ホストコンピュータ、 2:生産管理コンピュータ、
3:品質管理コンピュータ、 10:熱処理設備、 11:曲がり矯正設備、
12:酸洗設備、 13:素管検査設備、 14:口絞り加工設備、
15:潤滑剤被覆処理設備、 16:抽伸加工設備、 17:脱脂設備、
18:ET設備、 19:管切り設備、 20:UT設備、
30:ICタグ読取装置、 31:アンテナ、 32:読取コンピュータ、
40:ICタグ、 41:ICチップ、 42:小型アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理設備を経由して製造される鋼管の製造方法であって、
鋼管ごとに製作番号および製品情報を設定し、ホストコンピュータに登録するステップと、
鋼管にICタグを取り付け、対象とする鋼管の製作番号とICタグに記憶されているタグ番号とを関連付けして生産管理コンピュータに登録するステップと、
ホストコンピュータから製作番号および製品情報を取得し、製作番号に対応し製品情報に基づき各処理設備での操業条件に関する設定データテーブルを生産管理コンピュータに登録するステップと、の一連のステップを経た後、
処理設備のうちの2以上の処理設備において、
鋼管を受け入れるステップと、
当該鋼管に取り付けられたICタグを読取装置によって読み取り、読み取ったタグ番号を生産管理コンピュータに送信するステップと、
受信したタグ番号に関連付けられた製作番号に対応する操業条件を設定データテーブルから抽出し、当該処理設備に送信するステップと、
受信した操業条件を当該処理設備の操業条件として設定するステップと、
設定された操業条件に従って処理を実行するステップと、
処理を実行した後に実際に用いた操業条件を品質管理コンピュータに送信して保存するステップと、の一連のステップを経ることを特徴とする鋼管の製造方法。
【請求項2】
処理設備で前記一連のステップを経た後に、当該処理設備での処理が完了したことを示す処理完了情報を生産管理コンピュータに送信し、受信した処理完了情報を製作番号に関連付けして保存するステップを含み、
以降の処理設備において、
処理を実行する前に、生産管理コンピュータに保存された処理完了情報に基づいて、直前の処理設備での処理が完了しているか否かを確認し、処理の実行可否を判断するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼管の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−274303(P2010−274303A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129114(P2009−129114)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】