説明

鋼管被覆用断熱材料及びその施工方法

【課題】 耐久性に優れた鋼管被覆用断熱材料及びその施工方法を提供する。
【解決手段】 末端に少なくとも2個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとアミン系化合物Cとからなり、ポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとの配合比A/Bが重量比で25/75〜75/25である樹脂成分A+B+Cに対し、ガラスバル−ン混合物を重量比で25/75〜75/25になるように配合した樹脂組成物からなる鋼管被覆用断熱材料、及びこの樹脂組成物を溶剤で希釈して鋼管の表面上に塗布した後、樹脂組成物が硬化する前に塗布面を整形するようにした鋼管被覆用断熱材料の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鋼管被覆用断熱材料及びその施工方法に関し、さらに詳しくは、パイプライン等の長距離輸送管の被覆材料として好適な、耐久性に優れた鋼管被覆用断熱材料及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、パイプラインによる重質原油の輸送では、原油の粘度が高いために原油を加熱することにより粘度を下げて輸送する方法が用いられている。このようなパイプラインでは、重質原油を長距離にわたり安定的に輸送するために、原油の温度が低下するのをできる限り抑えることが重要な課題になっている。そのために、輸送管の外面に断熱材料を被覆するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、輸送管が長くなれば長くなるほど、配管周辺の気候環境が必然的に大きく異なってくるために、輸送管の外面に被覆した断熱材料の劣化は一様ではなくなり、部分的ではあるにしろ、断熱材料の破損や剥離の発生が避けられなくなるという問題があった。
【特許文献1】特開平8−25561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、上述する従来の問題点を解消するもので、耐久性に優れた鋼管被覆用断熱材料及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためのこの発明の鋼管被覆用断熱材料は、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとアミン系化合物Cとからなり、前記ポリアルキレングリコ−ル重合体Aと前記エポキシ樹脂Bとの配合比A/Bが重量比で25/75〜75/25である樹脂成分A+B+Cに対し、ガラスバル−ン混合物を重量比で25/75〜75/25になるように配合した樹脂組成物からなることを要旨とする。
【0006】
また、この発明の鋼管被覆用断熱材料の施工方法は、上述する樹脂組成物を溶剤で希釈し、これを鋼管の外周面に塗布した後、前記樹脂組成物が硬化する前に塗布面を整形することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとアミン系化合物Cとからなり、前記ポリアルキレングリコ−ル重合体Aと前記エポキシ樹脂Bとの配合比A/Bが重量比で25/75〜75/25である樹脂成分A+B+Cに対し、ガラスバル−ン混合物を重量比で25/75〜75/25になるように配合した樹脂組成物を鋼管被覆用断熱材料として、これを溶剤で希釈して鋼管の外周面に塗布した後、樹脂組成物が硬化する前に塗布面を整形するようにしたので、樹脂組成物が有する優れた接着性と耐久性とを利用して、鋼管被覆用断熱材料としての優れた耐久性を確保すると共に、樹脂組成物が有する室温で硬化する性質を利用して、樹脂組成物の硬化前に塗布面を所望の形態に整形することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の構成につき詳細に説明する。
【0009】
この発明の鋼管被覆用断熱材料(以下、単に断熱材料という)は、末端に少なくとも2個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとアミン系化合物Cとからなる。さらに、ポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとの配合比A/Bが重量比で25/75〜75/25であり、これらの配合樹脂成分A+B+Cに対して、ガラスバル−ン混合物を重量比で25/75〜75/25になるように配合した樹脂組成物により構成されている。
【0010】
このように構成された樹脂組成物は、低熱伝導性を有すると共に、優れた接着性と耐久性とを兼ね備えている。したがって、パイプライン等の鋼管の断熱被覆材料として適しており、さらにこの樹脂組成物の有する室温で硬化する性質を利用して、樹脂組成物の硬化前に塗布面を所望の形態に整形することを可能にする。
【0011】
ポリアルキレングリコ−ル重合体としては、ジグリシジルポリエチレングリコール、ジグリシジルテトラメチレングリコールを例示することができる。また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ジグリシジルエーテルなどが使用され、アミン系化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノシクロヘキサンなどが使用される。
【0012】
また、ガラスバル−ン混合物としては、ガラスバル−ンとシラスバルーン又はフェノールバルーンとの混合物が使用され、内径を0.1mm以下とする中空体が好ましく使用される。
【0013】
上述する樹脂組成物において、ポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとの配合比A/Bが25/75未満では可塑性が低下して、硬化後の組立時の変形に追従し難くなり、75/25超では耐熱性が低下することになる。
【0014】
上記樹脂組成物からなるこの発明の断熱材料は、メチルエチルケトン等の溶剤で希釈して、鋼管の外周面に塗布する。塗布する方法は、特に限定されるものではないが、こて塗り、キャスティング又はその他適当な手段で行なうようにすればよい。塗布された樹脂組成物はそのまま放置しておくことによって硬化するが、硬化前に塗布面にシ−トを被覆して押圧したり、帯状部材を巻回するなどして、塗布面を自由な形態に整形することができる。ここで、硬化後の断熱材料は鋼管の表面に強固に接着される。したがって、この発明の断熱材料の施工方法によれば、手間をかけることなく鋼管の表面に被覆することができると共に、塗布面を所望の形態に整形することができる。
【0015】
上述するように、この発明は末端に少なくとも2個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとアミン系化合物Cとからな樹脂成分に対し、ガラスバル−ン混合物を配合した樹脂組成物を断熱材料とし、これを溶剤で希釈して鋼管の表面に塗布することにより、優れた接着性及び耐久性を兼ね備えた断熱材料を簡単に被覆できるようにしたもので、特に、長距離輸送を対象にしたパイプラインにおける鋼管用の断熱材料として広く適用することができる。
【実施例】
【0016】
表1の組成からなる樹脂組成物を作製し、これをメチルケトンにより希釈した後、スプ−ガンを用いて鋼管の表面に塗布した。塗布後の4時間以内に、塗布面にポリエステルテ−プを巻き付けて模様を形成し、これを室温(平均24℃)下で72時間静置して硬化させた。硬化後、この鋼管をサンシャイン・ウエザオメ−タ(条件:水噴霧時間12±0.5分、水噴霧停止時間48±0.5分)の槽内に100時間静置し、静置後の外観を検査したところ、異常は認められず、良好な接着状態が維持されていることを確認した。
【0017】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端に少なくとも2個のグリシジル基を有するポリアルキレングリコ−ル重合体Aとエポキシ樹脂Bとアミン系化合物Cとからなり、前記ポリアルキレングリコ−ル重合体Aと前記エポキシ樹脂Bとの配合比A/Bが重量比で25/75〜75/25である樹脂成分A+B+Cに対し、ガラスバル−ン混合物を重量比で25/75〜75/25になるように配合した樹脂組成物からなる鋼管被覆用断熱材料。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を溶剤で希釈し、これを鋼管の外周面に塗布した後、前記樹脂組成物が硬化する前に塗布面を整形することを特徴とする鋼管被覆用断熱材料の施工方法。

【公開番号】特開2006−225479(P2006−225479A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39400(P2005−39400)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】