鍔部付きスリーブ
【課題】本発明は、鉄筋端部の定着手段となるスリーブに関し、所定定着寸法が確保できない施工箇所においても、鉄筋とコンクリートとの定着強度を十分に確保することのできる鍔部付きスリーブに関する。
【解決手段】鉄筋端部と一体化するための所定長、所定周壁厚、充填材の充填孔及び排出孔並びに鉄筋の挿入及び充填材の充填空間を形成する筒状体の内側空間とよりなるスリーブ本体において、該本体の長手方向に直交する方向に本体の外周面より突出する環状の鍔部を設けたことを特徴とする鍔部付きスリーブ。
【解決手段】鉄筋端部と一体化するための所定長、所定周壁厚、充填材の充填孔及び排出孔並びに鉄筋の挿入及び充填材の充填空間を形成する筒状体の内側空間とよりなるスリーブ本体において、該本体の長手方向に直交する方向に本体の外周面より突出する環状の鍔部を設けたことを特徴とする鍔部付きスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋端部の定着手段となるスリーブに関し、所定定着寸法が確保できない施工箇所においても、鉄筋とコンクリートとの定着強度を十分に確保することのできる鍔部付きスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
RC構造の柱と梁等の連結部に使用される鉄筋は、引き抜き力等が作用したときのコンクリートとの定着状態が強固となるように、その端部を折り曲げて折り返してコンクリートとの定着強度が十分に得られるようにしている。
【0003】
しかし、鉄筋端部を折り曲げる定着手段は、定着のための長い寸法を必要とし、また、大径の鉄筋にあっては折り曲げるのに困難があった。
【0004】
また、橋梁の端部のように鉄筋を折り曲げて折り返すような余裕のあるスペースを確保することが構造的に困難な施工箇所も多かった。
【0005】
上記事実を踏まえ、鉄筋の端部に定着板を溶接或いは螺合等によって固定し、或いはナットを螺合することにより定着のための長さ寸法を抑えた定着手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−360215号公報
【特許文献2】特開2004−100409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記定着板を使用する方法は、定着板を溶接する作業に手間がかかること、且つ鉄筋への定着板の固定状態が溶接工の技術に頼るものであり確固たる固定が得られるという保証は必ずしも十分でなかった。
【0008】
また、該定着板やナットを鉄筋へ螺合する方法は、鉄筋としてネジ切り鉄筋を使用する場合のみ可能であり、一般的な異形鉄筋や丸鋼鉄筋に使用することはできなかった。
【0009】
更に、定着板により所定の定着強度を得るためには単独のみの使用となる定着板の大きさを鉄筋径に比較して大きくする必要があり、且つ引き抜き強度に耐える所定厚を必要とし、上記のように大きくて厚くなる割には定着強度をバランスよく有効に得ることができなかった。
【0010】
また、鉄筋が複雑且つ多数本配置される端部や連結部が対象となるため、大きな定着板を採用することが施工上困難な箇所も多く、鉄筋への定着板の固定位置をずらす等の対応をしなければならない箇所も生じていた。
【0011】
更に、鉄筋の強度が高く、径が太い場合については、定着板に要求される必要な定着力も大きくなり、そのために定着板が大型化し、上記のように実際の施工においては現実的な定着手段とは成り得なかった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、定着のための鉄筋からの突出長を短くしても定着力の向上を図ることができ、且つ、高強度及び/又は太径の鉄筋に対しても、長期にわたって破損することのない強度のある確実な定着力を確保することのできる定着手段となる鍔部付きスリーブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、鉄筋端部と一体化するための所定長、所定周壁厚、充填材の充填孔及び排出孔並びに鉄筋の挿入及び充填材の充填空間を形成する筒状体の内側空間とよりなるスリーブ本体において、該本体の長手方向に直交する方向に本体の外周面より突出する環状の鍔部を設けた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0014】
また、鍔部は、スリーブの複数箇所の適宜位置に設けた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0015】
更に、鍔部は、少なくともスリーブの長手方向中芯位置から左右にほぼ対称となる位置に設けてなる鍔部付きスリーブを特徴する。
【0016】
また、鍔部は、少なくとも両端部に設けた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0017】
更に、鍔部は、その外径を鉄筋径の2.35〜2.5倍の外径とし、複数の鍔部を設置する場合には、その間隔が当該スリーブ周囲のコンクリートの最大粗骨材寸法よりも大きくしてなる鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0018】
また、鍔部をスリーブの1箇所又は複数箇所の適宜位置に設け、鍔部を設けない場合に比べスリーブ周壁厚を長手方向に沿って均等及び/或いは薄くした鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0019】
更に、スリーブの周囲に凹凸を設け、コンクリートとの付着面積を増加させた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
突出の比較的短い鍔部をスリーブ本体の外周面に単独或いは複数箇所に規則的或いは不規則的に設けることによりコンクリートとの定着、特に引き抜きに有効な定着手段を得ることが可能となった。
【0021】
また、定着のために鉄筋の先端部を折り曲げて折り返す必要がないので、定着寸法が確保できない施工箇所においても定着強度を十分に確保することが可能となった。
【0022】
更に、従来のネジ切り鉄筋を対象とした定着金物と異なり、一般的な異形鉄筋等の鉄筋の形状、太さ等に限定されることなく様々な鉄筋に対応でき、例えば、折り曲げの困難な大径の鉄筋であっても、有効な定着手段を得ることが可能となった。
【0023】
また、スリーブ本体の外周面から鍔部となる環状の突起を複数箇所にわたって適宜設けることができるので、突出が極めて限定される箇所或いはコンクリートとの定着状態に作用する引き抜き力に対して十分な抵抗力を必要とする箇所等にあっては、鍔部を複数箇所に設けるとか外周面からの突出状態を施工箇所に応じて調整すること等の対応が可能となった。
【0024】
特に、鍔部をスリーブ本体の両端に対称的に2箇所設置することにより、各々の鍔部が定着力を合理的に分担することが可能となり、鍔部が端部に単独で設置されている場合に比べ、少ない突出の鍔部であっても高い定着力が実現できる。また、引抜き力が作用した際にスリーブに生じる軸ひずみの分布が、スリーブの中心に対して引張−圧縮の対称となり、軸ひずみの最大値が、単独の鍔部に比べて小さくなることから、スリーブの厚さを薄くすることができる。このことにより、大きな定着力が要求される高強度及び/又は太径の鉄筋の定着手段を、鍔部の外径やスリーブの周壁を厚くすること無く、実現することができ、製造コストを低減させることが可能となった。
【0025】
また、スリーブは鉄筋より太径となっているので端部における鉄筋の周面積を増やすことができ、コンクリートとの付着力を増加させることができる。更に、該スリーブの外周面に積極的に凹凸を設けることによりその効果を一層向上させることができる。
【0026】
また、鍔部の位置を対称的に設けることにより該鍔部付きスリーブの内側空間へ左右開口部のいずれからも同様の効果を奏することができる状態で鉄筋を挿入することができ、鉄筋の装着対応が簡単となった。また、鉄筋相互の継手手段として該スリーブを利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の鍔部付きスリーブをコンクリート中に埋設した状態の断面図。
【図2】図2(a)は従来の鉄筋端部を折り曲げてフックを形成した試験体の断面図、(b)は本発明の鍔部付きスリーブの試験体の断面図。
【図3】図3は試験体の実験結果を示した表。
【図4】図4は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図5】図5(a)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を1箇所に設けた場合の軸ひずみ分布表、(b)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を両端部に設けた場合の軸ひずみ分布表。
【図6】図6(a)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を1箇所に設けた場合の鉄筋引き抜き力に対するひずみ状態を説明する略図、(b)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を両端部に設けた場合の鉄筋引き抜き力に対するひずみ状態を説明する略図。
【図7】図7は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図8】図8は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図9】図9は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図10】図10は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図11】図11は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図12】図12は複数の鍔部を設けた本発明の鍔部付きスリーブをコンクリート中に埋設した状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参考に本発明を実施するための最良の形態についてその実施例を説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の鍔部付きスリーブをコンクリート中に埋設した状態の長手方向中央部の断面図を示している。鍔部付きスリーブ1は、RC構造の橋脚上端、柱と梁の連結部或いは他の部位等の鉄筋定着のために長さや幅に十分なスペースを得ることのできない定着長や定着幅が制限される部位のコンクリート中に埋設され、鉄筋端部の定着手段として引き抜き力に対して十分な抵抗力を得ることのできるものである。
【0030】
該鍔部付きスリーブ1は、所定長と所定周壁厚を有し並びに鉄筋の挿入及び該鉄筋挿入後の充填材の充填空間を有する内側空間部を形成した筒状体よりなる本体2、該本体2の両端部に該本体2の外周面より突出する環状の鍔部3、筒状体の内側空間を形成する内壁に本体2と充填材との付着力を高めるための凸部4、該鉄筋と内壁との間に充填材を充填するための充填孔5及び該充填材を排出するための排出孔6とより構成されている。
【0031】
本実施例では、鍔部3は本体2の両端部に該本体2の外周面から突出させて形成している。該鍔部3の外周面からの突出は、該本体の周壁厚とほぼ同じ突出長から2倍程度としている。従って、鉄筋径の2.35〜2.5倍の範囲内で想定される外力に応じて選定することを可能としている。突出が少ないとコンクリート7との付着力が減少することになるが、その分を鍔部3の設置数によって対応することになる。突出が大きくなると他の鉄筋や型枠等に接触する可能性が高くなる等の不具合が生じるが、その突出を抑えることが可能となる。また、該鍔部3の厚さは、鉄筋径の0.15〜0.45倍としている。想定される引張力等に耐えて破損することのない厚さとしている。
【0032】
鍔部付きスリーブは、設置部において周辺の鉄筋、定着体と干渉しないような大きさでなければならない。すなわち、当該スリーブで最外径である鍔部の外径は、定着しようとする鉄筋の中心間隔よりも小さくする必要がある。例えば、道路橋等では、コンクリートの最大粗骨材寸法等にもよるが、鉄筋相互の間隔は該鉄筋径(φ)の2.5φ程度以上を確保しなければならない。
【0033】
この場合において、周囲の鉄筋や他の鍔部と干渉することなく、一列、若しくは千鳥状に鍔部付きスリーブを設置するためには、鍔部の外径は定着しようとする鉄筋径の2.5倍を上限とすれば良い。ただし、鍔部の設置部において、周辺の鉄筋、他の鍔部と干渉しない寸法であれば良いので、鍔部の外径の上限については、定着しようとする鉄筋の配筋状況、周辺の状況により、適切な大きさとして良いことは言うまでもない。
【0034】
一方、鍔部は鉄筋の引抜に対して十分な定着力を確保できる大きさ以上であることが必要である。後述のSD685D51を対象とした定着実験では、鍔部の外径が定着しようとする鉄筋径の2.35倍としたものに対して、定着実験を行い、十分な定着力を確保できることを確認している。つまり、鍔部の外径が定着しようとする鉄筋径の2.35倍以上であれば、少なくともSD685相当以下の強度の鉄筋に対して、定着体として有効に機能する。ただし、SD685よりも強度が小さい鉄筋については、同じ径でも必要な定着力が小さくなるので、定着しようとする鉄筋径の2.35倍以上の鍔部の外径が必要でないこともある。そのような場合には、定着しようとする鉄筋の強度、径を十分に考慮した上で、適切な鍔部の外径を設定すれば良い。
【0035】
すなわち、少なくとも鍔部の外径が定着しようとする鉄筋径の2.35〜2.5倍であれば、SD685D51以下の強度、径の鉄筋の定着体として、周囲の定着体、鉄筋と干渉せずに十分な定着力を確保することができる。
【0036】
本体2の内壁には、スパイラル等のネジ状或いは節状の凸部4を必要に応じて形成している。
【0037】
また、スリーブ本体2の内径は、一般的なモルタル充填式継手用スリーブと同様に、挿入する鉄筋とスリーブ本体2の間隙に充填材が隙間無く充填される空間を有し、かつ鉄筋の応力を間隙に充填された充填材がスリーブ本体2に伝達できる径であれば良い。例えば、一般的なモルタル充填式継手用スリーブによれば、その内径は使用する鉄筋の1.2倍〜1.6倍程度である。
【0038】
他方、スリーブ本体2の外径は、前述の必要内径に、使用鉄筋の材質強度とスリーブ本体2の材質強度により決まる必要周壁厚を加算することにより決定される。周壁厚は、確保すべき定着力に対してスリーブ本体2が降伏しないために十分な厚さとする必要がある。すなわち、周壁厚にスリーブ本体2の外周と内周の平均を乗じた断面積にスリーブ本体2の降伏強度を乗じて算出したスリーブ本体2の降伏耐力が、定着しようとする鉄筋の規格引張強さに鉄筋の断面積を乗じた必要定着力よりも大きくなるような厚さを、鍔部付きスリーブの製造の容易性、安全率等を考慮した上で設定する。例えば、SD685鉄筋に対して材質がFCD700−2(降伏強度420N/mm2)のスリーブの組み合わせの場合には、必要周壁厚は鉄筋径に対して0.3倍程度になり、SD390鉄筋に対して材質がFCAD1000−5(降伏強度700N/mm2)のスリーブを組み合わせた場合には、鉄筋径に対して0.1倍程度になる。すなわち、SD390からSD685の範囲の鉄筋であり、スリーブの材質がFCD700−2からFCAD1000−5の範囲内であれば、必要周壁厚は定着しようとする鉄筋径の0.1〜0.3倍であれば良い。
【0039】
また、鍔部は、鉄筋の定着力に応じて鍔部に作用するせん断力に対して十分な厚さを設定すれば良い。すなわち、鍔部厚にスリーブ本体2の外周を乗じた鍔部のせん断耐力が、定着する鉄筋の規格引張強さに鉄筋の断面積を乗じた必要定着力よりも大きくなるような鍔部厚を、鍔部付きスリーブの製造の容易性、安全率等を考慮した上で設定する。例えば、鍔部厚は、材質がSD685の鉄筋に対して鍔部の材質がFCAD700−2(降伏強度700N/mm2)の組み合わせの場合には、鉄筋径に対して0.45倍程度となり、材質がSD390の鉄筋に対して鍔部の材質がFCAD1000−5(降伏強度700N/mm2)の組み合わせの場合には、鉄筋径の0.15倍程度となる。すなわち、SD390からSD685の範囲の鉄筋であり、スリーブの材質がFCD700−2からFCAD1000−5の範囲内であれば、鍔部厚さは定着しようとする鉄筋径の0.15〜0.45倍であれば良い。
【0040】
更に、スリーブの外周面から鍔部3となる環状の突起を2箇所設けているので、スリーブ本体2の強度の一部を該鍔部3で合理的に分担することができ、スリーブ周壁厚を均等及び/又は薄くすることが可能となりコスト減とすることができる。
【0041】
上記鍔部付きスリーブ1は、その両端部に突出する環状の鍔部3が形成されることになるので、その製造方法としては長手方向半割状のものを2個製造し、その長手方向周壁端相互を溶接することにより突出する環状の鍔部3を有するスリーブの製造に対応できることになる。
【0042】
該鍔部付きスリーブ1内に挿入された鉄筋8と該本体2の内側空間となる内径寸法との間に生じる空間にはモルタル、エポキシ樹脂等のグラウト材9が充填され鉄筋を固定することになる。該本体2と該グラウト材9との一体性を良好とするため凸部4を形成してグラウト材9と内壁との接触面積を大きくしている。
【0043】
上記グラウト材9は、鉄筋8の挿入後、本体2の一端側に設けた充填孔5より本体2の内側空間と鉄筋8との間に充填し、他端側に設けた排出孔6より余剰グラウト材9を排出させることにより内側空間全体を充満状態とすることになる。
【0044】
図1は、SD685D51鉄筋に対する鍔部付きスリーブ1の一例を示すものである。該鍔部付きスリーブ1では、鉄筋径の2.35倍の外径、鉄筋径の0.33倍の厚さからなる鍔部を両端部に2箇所、対称に設けている。鍔部の外径が120mmであるため、道路橋等におけるD51鉄筋の最小鉄筋間隔(2.5×51=127.5mm)より小間隔となり、設置箇所について周囲の鉄筋及び/又は定着部と鍔部との干渉を防ぐことができる。また、厚さについては、SD685D51鉄筋の必要定着力に対して鍔部のせん断耐力を確保できる実験の結果の値として鉄筋径の0.33倍を採用している。
【0045】
上記実施例1の両端部に鍔部を設けた鍔部付きスリーブ1に鉄筋を挿入して固定したものと、従来の鉄筋の端部を折り曲げてフックを形成した鉄筋とをコンクリート中に埋設し、以下の実験をした。
【0046】
実験は、図2(a)に示す端部を折り曲げてフックを形成したSD685D51鉄筋をコンクリート中に埋設した従来例としての試験体と、図2(b)に示す両端部に鍔部を設けた鍔部付きスリーブ12中にSD685D51鉄筋端部を固定したものをコンクリート中に埋設した本実施例の試験体とを各々引き抜き荷重−抜け出し変位量の関係を計測して行ったものである。
【0047】
上記各々の試験体としては、フック付試験体及び鍔部付きスリーブ試験体とも同一径のSD685D51鉄筋を使用し、試験体となるコンクリートの外形は1,300mm(縦)×1,300mm(横)×1,100mm(厚さ)とし、該コンクリートと鉄筋とのアンボンド長は612mmとしている。フック付試験体は、曲げ半径180mm、余長204mmの鉄筋で、他方、鍔部付きスリーブは、スリーブ外径95mm、長さ370mmとし、鍔部の外径120mm、厚さ17mmとした試験体である。その各々を3個用意して引抜実験をした。
【0048】
各々の試験体への加圧は、載荷力:3,000kN、ストローク:±200mmの油圧ジャッキを使用し、降伏基準強度90%(1,250kN)で30回の加圧及び降荷の繰り返しを行った後、規格引張強度相当(1,634kN)以上まで引張力を作用させた。
【0049】
上記フック付試験体と本実施例1の試験体との実験結果は、図3の表の通りである。この結果より、
1.鍔部付きスリーブ試験体(両端部に鍔部を設けたスリーブ)の規格降伏強度相当載荷時及び高応力繰返し試験による抜け出し量は、フック付試験体よりも小さい、
2.鍔部付きスリーブ試験体の静的耐力は、SD685D51の規格破断強度相当以上の引張力(1,634kN)よりも大きい、
3.鍔部の外径120mm、厚さ17mmを有する長さ370mmのスリーブは、標準的なフックと同等以上の定着性能を有する、
ことが判明した。
【実施例2】
【0050】
図4は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体10のいずれか一端部に環状の鍔部11を形成した鍔部付きスリーブ12である。鉄筋挿入側の鍔部しか機能しない場合を想定して、一端部にのみ鍔部を設けた鍔部付きスリーブである。スリーブの内側の形状及び充填孔13、排出孔14等は上記実施例1と同様である。環状の鍔部11を1箇所としているので複数形成するものよりその突出長は長くなり厚さも厚くなるが、施工箇所により適宜調整できるものである。上記実施例2の鍔部を1箇所に設けた試験体と実施例1の両端部に鍔部を設けた試験体とをコンクリート中に埋設し、各々引き抜き荷重−抜け出し変位量の関係を計測してみた。
【0051】
図5(a)(b)は、上記実験において計測された鍔部付きスリーブの軸ひずみ分布を示すもので、鍔部付きスリーブ単体からの鉄筋の引き抜き実験(a)と両端部に鍔部を設けたスリーブからの鉄筋の引き抜き実験(b)とにおけるスリーブの軸ひずみ分布を比較したものである。
【0052】
鉄筋挿入側にのみ鍔部を設けた鍔部付きスリーブ単体の実験では、鉄筋の挿入側の鍔部だけで引き抜き力に抵抗しているため、同部分近傍のスリーブに鉄筋の引き抜き力が圧縮力として集中的に作用し、大きな圧縮ひずみが生じた。その結果、スリーブのひずみの最大値は、降伏ひずみを超え、SD685D51の鉄筋に対しては鍔部が1箇所では必要な定着性能を満足することができないことが分かった。
【0053】
これに対し、コンクリート中に埋設された両端部に鍔部を設けたスリーブは、スリーブの周囲にコンクリートが充填されていることから鉄筋の挿入側とその反対側の2箇所の鍔部が分担して引き抜き力に抵抗できることになる。スリーブ内に設置された鉄筋が引き抜き力を受けた場合、グラウト材を介してスリーブへ引き抜き力が伝達する。そのため、鉄筋挿入部分からの一定区間が鉄筋からの引き抜き力が伝達している部分となり、その重心位置は、一般に、スリーブの中心から挿入部との間となる。つまり、挿入側の鍔部付近のスリーブには鉄筋の引き抜き力が圧縮力としてスリーブに伝達し、それに対して挿入側の鍔部が抵抗するために圧縮ひずみが生じる。一方、反対側の鍔部付近のスリーブには鉄筋の引き抜き力が伝達点から引張力として作用し、それに対して反対側の鍔部が直下のコンクリートに反力を確保して抵抗するために引張ひずみが生じる。その結果、スリーブの中心に対して対称的なひずみ分布となり、同じ荷重に対する軸ひずみの最大値は、挿入側の鍔部しか機能していない単体に比べて小さくなる。
【0054】
すなわち、図1のように、鍔部をスリーブ両端の2箇所に対称的に設置したものをコンクリート中に埋設して定着手段として機能させた場合、引き抜き力に対して2箇所の鍔部が共同して抵抗する共に、スリーブの軸ひずみの局所的な増加を防ぐことに繋がり、その周壁厚を低減するのに有効であり合理的であることが確認された。
【0055】
このような作用は、本実施例のようにSD685、SD490及びD51、D41のような高強度及び/又は太径の鉄筋に対する定着手段を小型化する上で極めて有効であることがわかった。上記鍔部の設置とスリーブの軸ひずみと降伏ひずみ、スリーブ内の鉄筋のひずみ等の関係は図6(a)(b)にも示した通りである。
【実施例3】
【0056】
図7は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体15の中心部或いはほぼ中心部に環状の鍔部16を形成した鍔部付きスリーブ17である。本実施例のスリーブの環状鍔部16の外周面からの突出及びその厚さ、内側の形状並びに充填孔18、排出孔19等は上記実施例2のものと同様である。
【0057】
従来、鉄筋継手に使用するスリーブの周壁中心部は当該部分に作用する応力の関係で厚く形成していたが、中心部に鍔部16を設けることにより効率的に該鍔部16が強度の一部を分担することができ、当該部分を薄くすることができるので均等な周壁厚のスリーブとすることが可能となった。この周壁厚を均等とするスリーブは、他の実施例でも同様とすることが可能である。
【実施例4】
【0058】
図8は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例で、本体20の適宜位置に環状の鍔部21を形成した鍔部付きスリーブ22である。施工箇所によって鍔部の位置を予め設定しておくことができる。本実施例で示したスリーブの環状鍔部21の外周面からの突出及びその厚さ、内側の形状並びに充填孔23、排出孔24等は上記実施例2、3と同様である。
【実施例5】
【0059】
図9は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体25の中心部から等寸法の左右に環状の鍔部26を形成した鍔部付きスリーブ27である。本実施例のスリーブの環状鍔部26を外周面から突出させること、内側の形状及び充填孔28、排出孔29等は上記実施例2乃至4同様である。
【0060】
実施例1と同様に、環状の鍔部26を2箇所に設けているが、実施例1の実験結果で明らかなように、鍔部2箇所のスリーブ試験体の引き抜き試験で十分な効果を示しているので、各々の鍔部の突出長及び/又はその厚さを抑えることが可能となるし、必要により定着力を増加させるために突出長及び/又はその厚さを大きくすることも可能である。施工箇所の状況により様々な対応が可能である。
【実施例6】
【0061】
図10は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体30の適宜位置に2箇所の環状の鍔部31を形成した鍔部付きスリーブ32である。上記実施例のスリーブ外周面からの環状鍔部31の突出及びその厚さ、内側の形状並びに充填孔33、排出孔34は上記実施例5と同様である。施工箇所の状況に応じて予め邪魔とならない位置に鍔部を設けておくことが可能である。
【実施例7】
【0062】
図11は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体35の規則的或いは不規則的な位置となる3以上の複数箇所に環状の鍔部36を形成した鍔部付きスリーブ37である。本実施例のスリーブの環状鍔部36を外周面から突出させること、内側の形状及び充填孔38、排出孔39等は上記実施例と同様である。施工箇所に応じて鍔部36の設置箇所数、突出長、厚さ等は適宜選択することが可能となる。
【実施例8】
【0063】
上記実施例において、環状の鍔部はその設置箇所数及び突出長を施工箇所に応じて適宜調整することが可能であるが、状況により突出長を抑える必要が生じることがある。その場合、少なくとも環状鍔部の突出を鉄筋径の2.5倍に抑え、且つ鍔部の設置箇所数を増やすと同時に、スリーブ本体の外周面に凹凸部を形成し、上記環状鍔部と該凹凸部とによりコンクリートとの付着力を増加させることで対応することを可能とするものである。
【0064】
ただし、鍔部の間隔が短い場合、引き抜き力を受けた際に鍔部の最外縁を結ぶようにコンクリートとのズレが生じ、引き抜き力に対する複数の鍔部の負担が分散されなくなり、定着力が低下することがある。これを防ぐために、図12に示すように鍔部間に粗骨材を含むコンクリートが密実に充填されることが重要であり、そのために鍔部の間隔は、コンクリートの最大粗骨材寸法以上であることが望ましい。
【符号の説明】
【0065】
1、12、17、22、27、32、37 鍔部付きスリーブ
2、10、15、20、25、30、35 本体
3、11、16、21、26、31、36 鍔部
4 凸部
5、13、18、23、28、33、38 充填孔
6、14、19、24、29、34、39 排出孔
7 コンクリート
8 鉄筋
9 グラウト材
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋端部の定着手段となるスリーブに関し、所定定着寸法が確保できない施工箇所においても、鉄筋とコンクリートとの定着強度を十分に確保することのできる鍔部付きスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
RC構造の柱と梁等の連結部に使用される鉄筋は、引き抜き力等が作用したときのコンクリートとの定着状態が強固となるように、その端部を折り曲げて折り返してコンクリートとの定着強度が十分に得られるようにしている。
【0003】
しかし、鉄筋端部を折り曲げる定着手段は、定着のための長い寸法を必要とし、また、大径の鉄筋にあっては折り曲げるのに困難があった。
【0004】
また、橋梁の端部のように鉄筋を折り曲げて折り返すような余裕のあるスペースを確保することが構造的に困難な施工箇所も多かった。
【0005】
上記事実を踏まえ、鉄筋の端部に定着板を溶接或いは螺合等によって固定し、或いはナットを螺合することにより定着のための長さ寸法を抑えた定着手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−360215号公報
【特許文献2】特開2004−100409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記定着板を使用する方法は、定着板を溶接する作業に手間がかかること、且つ鉄筋への定着板の固定状態が溶接工の技術に頼るものであり確固たる固定が得られるという保証は必ずしも十分でなかった。
【0008】
また、該定着板やナットを鉄筋へ螺合する方法は、鉄筋としてネジ切り鉄筋を使用する場合のみ可能であり、一般的な異形鉄筋や丸鋼鉄筋に使用することはできなかった。
【0009】
更に、定着板により所定の定着強度を得るためには単独のみの使用となる定着板の大きさを鉄筋径に比較して大きくする必要があり、且つ引き抜き強度に耐える所定厚を必要とし、上記のように大きくて厚くなる割には定着強度をバランスよく有効に得ることができなかった。
【0010】
また、鉄筋が複雑且つ多数本配置される端部や連結部が対象となるため、大きな定着板を採用することが施工上困難な箇所も多く、鉄筋への定着板の固定位置をずらす等の対応をしなければならない箇所も生じていた。
【0011】
更に、鉄筋の強度が高く、径が太い場合については、定着板に要求される必要な定着力も大きくなり、そのために定着板が大型化し、上記のように実際の施工においては現実的な定着手段とは成り得なかった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためのもので、定着のための鉄筋からの突出長を短くしても定着力の向上を図ることができ、且つ、高強度及び/又は太径の鉄筋に対しても、長期にわたって破損することのない強度のある確実な定着力を確保することのできる定着手段となる鍔部付きスリーブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、鉄筋端部と一体化するための所定長、所定周壁厚、充填材の充填孔及び排出孔並びに鉄筋の挿入及び充填材の充填空間を形成する筒状体の内側空間とよりなるスリーブ本体において、該本体の長手方向に直交する方向に本体の外周面より突出する環状の鍔部を設けた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0014】
また、鍔部は、スリーブの複数箇所の適宜位置に設けた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0015】
更に、鍔部は、少なくともスリーブの長手方向中芯位置から左右にほぼ対称となる位置に設けてなる鍔部付きスリーブを特徴する。
【0016】
また、鍔部は、少なくとも両端部に設けた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0017】
更に、鍔部は、その外径を鉄筋径の2.35〜2.5倍の外径とし、複数の鍔部を設置する場合には、その間隔が当該スリーブ周囲のコンクリートの最大粗骨材寸法よりも大きくしてなる鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0018】
また、鍔部をスリーブの1箇所又は複数箇所の適宜位置に設け、鍔部を設けない場合に比べスリーブ周壁厚を長手方向に沿って均等及び/或いは薄くした鍔部付きスリーブを特徴とする。
【0019】
更に、スリーブの周囲に凹凸を設け、コンクリートとの付着面積を増加させた鍔部付きスリーブを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
突出の比較的短い鍔部をスリーブ本体の外周面に単独或いは複数箇所に規則的或いは不規則的に設けることによりコンクリートとの定着、特に引き抜きに有効な定着手段を得ることが可能となった。
【0021】
また、定着のために鉄筋の先端部を折り曲げて折り返す必要がないので、定着寸法が確保できない施工箇所においても定着強度を十分に確保することが可能となった。
【0022】
更に、従来のネジ切り鉄筋を対象とした定着金物と異なり、一般的な異形鉄筋等の鉄筋の形状、太さ等に限定されることなく様々な鉄筋に対応でき、例えば、折り曲げの困難な大径の鉄筋であっても、有効な定着手段を得ることが可能となった。
【0023】
また、スリーブ本体の外周面から鍔部となる環状の突起を複数箇所にわたって適宜設けることができるので、突出が極めて限定される箇所或いはコンクリートとの定着状態に作用する引き抜き力に対して十分な抵抗力を必要とする箇所等にあっては、鍔部を複数箇所に設けるとか外周面からの突出状態を施工箇所に応じて調整すること等の対応が可能となった。
【0024】
特に、鍔部をスリーブ本体の両端に対称的に2箇所設置することにより、各々の鍔部が定着力を合理的に分担することが可能となり、鍔部が端部に単独で設置されている場合に比べ、少ない突出の鍔部であっても高い定着力が実現できる。また、引抜き力が作用した際にスリーブに生じる軸ひずみの分布が、スリーブの中心に対して引張−圧縮の対称となり、軸ひずみの最大値が、単独の鍔部に比べて小さくなることから、スリーブの厚さを薄くすることができる。このことにより、大きな定着力が要求される高強度及び/又は太径の鉄筋の定着手段を、鍔部の外径やスリーブの周壁を厚くすること無く、実現することができ、製造コストを低減させることが可能となった。
【0025】
また、スリーブは鉄筋より太径となっているので端部における鉄筋の周面積を増やすことができ、コンクリートとの付着力を増加させることができる。更に、該スリーブの外周面に積極的に凹凸を設けることによりその効果を一層向上させることができる。
【0026】
また、鍔部の位置を対称的に設けることにより該鍔部付きスリーブの内側空間へ左右開口部のいずれからも同様の効果を奏することができる状態で鉄筋を挿入することができ、鉄筋の装着対応が簡単となった。また、鉄筋相互の継手手段として該スリーブを利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の鍔部付きスリーブをコンクリート中に埋設した状態の断面図。
【図2】図2(a)は従来の鉄筋端部を折り曲げてフックを形成した試験体の断面図、(b)は本発明の鍔部付きスリーブの試験体の断面図。
【図3】図3は試験体の実験結果を示した表。
【図4】図4は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図5】図5(a)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を1箇所に設けた場合の軸ひずみ分布表、(b)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を両端部に設けた場合の軸ひずみ分布表。
【図6】図6(a)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を1箇所に設けた場合の鉄筋引き抜き力に対するひずみ状態を説明する略図、(b)は本発明の鍔部付きスリーブの鍔部を両端部に設けた場合の鉄筋引き抜き力に対するひずみ状態を説明する略図。
【図7】図7は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図8】図8は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図9】図9は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図10】図10は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図11】図11は本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例の正面図。
【図12】図12は複数の鍔部を設けた本発明の鍔部付きスリーブをコンクリート中に埋設した状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参考に本発明を実施するための最良の形態についてその実施例を説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の鍔部付きスリーブをコンクリート中に埋設した状態の長手方向中央部の断面図を示している。鍔部付きスリーブ1は、RC構造の橋脚上端、柱と梁の連結部或いは他の部位等の鉄筋定着のために長さや幅に十分なスペースを得ることのできない定着長や定着幅が制限される部位のコンクリート中に埋設され、鉄筋端部の定着手段として引き抜き力に対して十分な抵抗力を得ることのできるものである。
【0030】
該鍔部付きスリーブ1は、所定長と所定周壁厚を有し並びに鉄筋の挿入及び該鉄筋挿入後の充填材の充填空間を有する内側空間部を形成した筒状体よりなる本体2、該本体2の両端部に該本体2の外周面より突出する環状の鍔部3、筒状体の内側空間を形成する内壁に本体2と充填材との付着力を高めるための凸部4、該鉄筋と内壁との間に充填材を充填するための充填孔5及び該充填材を排出するための排出孔6とより構成されている。
【0031】
本実施例では、鍔部3は本体2の両端部に該本体2の外周面から突出させて形成している。該鍔部3の外周面からの突出は、該本体の周壁厚とほぼ同じ突出長から2倍程度としている。従って、鉄筋径の2.35〜2.5倍の範囲内で想定される外力に応じて選定することを可能としている。突出が少ないとコンクリート7との付着力が減少することになるが、その分を鍔部3の設置数によって対応することになる。突出が大きくなると他の鉄筋や型枠等に接触する可能性が高くなる等の不具合が生じるが、その突出を抑えることが可能となる。また、該鍔部3の厚さは、鉄筋径の0.15〜0.45倍としている。想定される引張力等に耐えて破損することのない厚さとしている。
【0032】
鍔部付きスリーブは、設置部において周辺の鉄筋、定着体と干渉しないような大きさでなければならない。すなわち、当該スリーブで最外径である鍔部の外径は、定着しようとする鉄筋の中心間隔よりも小さくする必要がある。例えば、道路橋等では、コンクリートの最大粗骨材寸法等にもよるが、鉄筋相互の間隔は該鉄筋径(φ)の2.5φ程度以上を確保しなければならない。
【0033】
この場合において、周囲の鉄筋や他の鍔部と干渉することなく、一列、若しくは千鳥状に鍔部付きスリーブを設置するためには、鍔部の外径は定着しようとする鉄筋径の2.5倍を上限とすれば良い。ただし、鍔部の設置部において、周辺の鉄筋、他の鍔部と干渉しない寸法であれば良いので、鍔部の外径の上限については、定着しようとする鉄筋の配筋状況、周辺の状況により、適切な大きさとして良いことは言うまでもない。
【0034】
一方、鍔部は鉄筋の引抜に対して十分な定着力を確保できる大きさ以上であることが必要である。後述のSD685D51を対象とした定着実験では、鍔部の外径が定着しようとする鉄筋径の2.35倍としたものに対して、定着実験を行い、十分な定着力を確保できることを確認している。つまり、鍔部の外径が定着しようとする鉄筋径の2.35倍以上であれば、少なくともSD685相当以下の強度の鉄筋に対して、定着体として有効に機能する。ただし、SD685よりも強度が小さい鉄筋については、同じ径でも必要な定着力が小さくなるので、定着しようとする鉄筋径の2.35倍以上の鍔部の外径が必要でないこともある。そのような場合には、定着しようとする鉄筋の強度、径を十分に考慮した上で、適切な鍔部の外径を設定すれば良い。
【0035】
すなわち、少なくとも鍔部の外径が定着しようとする鉄筋径の2.35〜2.5倍であれば、SD685D51以下の強度、径の鉄筋の定着体として、周囲の定着体、鉄筋と干渉せずに十分な定着力を確保することができる。
【0036】
本体2の内壁には、スパイラル等のネジ状或いは節状の凸部4を必要に応じて形成している。
【0037】
また、スリーブ本体2の内径は、一般的なモルタル充填式継手用スリーブと同様に、挿入する鉄筋とスリーブ本体2の間隙に充填材が隙間無く充填される空間を有し、かつ鉄筋の応力を間隙に充填された充填材がスリーブ本体2に伝達できる径であれば良い。例えば、一般的なモルタル充填式継手用スリーブによれば、その内径は使用する鉄筋の1.2倍〜1.6倍程度である。
【0038】
他方、スリーブ本体2の外径は、前述の必要内径に、使用鉄筋の材質強度とスリーブ本体2の材質強度により決まる必要周壁厚を加算することにより決定される。周壁厚は、確保すべき定着力に対してスリーブ本体2が降伏しないために十分な厚さとする必要がある。すなわち、周壁厚にスリーブ本体2の外周と内周の平均を乗じた断面積にスリーブ本体2の降伏強度を乗じて算出したスリーブ本体2の降伏耐力が、定着しようとする鉄筋の規格引張強さに鉄筋の断面積を乗じた必要定着力よりも大きくなるような厚さを、鍔部付きスリーブの製造の容易性、安全率等を考慮した上で設定する。例えば、SD685鉄筋に対して材質がFCD700−2(降伏強度420N/mm2)のスリーブの組み合わせの場合には、必要周壁厚は鉄筋径に対して0.3倍程度になり、SD390鉄筋に対して材質がFCAD1000−5(降伏強度700N/mm2)のスリーブを組み合わせた場合には、鉄筋径に対して0.1倍程度になる。すなわち、SD390からSD685の範囲の鉄筋であり、スリーブの材質がFCD700−2からFCAD1000−5の範囲内であれば、必要周壁厚は定着しようとする鉄筋径の0.1〜0.3倍であれば良い。
【0039】
また、鍔部は、鉄筋の定着力に応じて鍔部に作用するせん断力に対して十分な厚さを設定すれば良い。すなわち、鍔部厚にスリーブ本体2の外周を乗じた鍔部のせん断耐力が、定着する鉄筋の規格引張強さに鉄筋の断面積を乗じた必要定着力よりも大きくなるような鍔部厚を、鍔部付きスリーブの製造の容易性、安全率等を考慮した上で設定する。例えば、鍔部厚は、材質がSD685の鉄筋に対して鍔部の材質がFCAD700−2(降伏強度700N/mm2)の組み合わせの場合には、鉄筋径に対して0.45倍程度となり、材質がSD390の鉄筋に対して鍔部の材質がFCAD1000−5(降伏強度700N/mm2)の組み合わせの場合には、鉄筋径の0.15倍程度となる。すなわち、SD390からSD685の範囲の鉄筋であり、スリーブの材質がFCD700−2からFCAD1000−5の範囲内であれば、鍔部厚さは定着しようとする鉄筋径の0.15〜0.45倍であれば良い。
【0040】
更に、スリーブの外周面から鍔部3となる環状の突起を2箇所設けているので、スリーブ本体2の強度の一部を該鍔部3で合理的に分担することができ、スリーブ周壁厚を均等及び/又は薄くすることが可能となりコスト減とすることができる。
【0041】
上記鍔部付きスリーブ1は、その両端部に突出する環状の鍔部3が形成されることになるので、その製造方法としては長手方向半割状のものを2個製造し、その長手方向周壁端相互を溶接することにより突出する環状の鍔部3を有するスリーブの製造に対応できることになる。
【0042】
該鍔部付きスリーブ1内に挿入された鉄筋8と該本体2の内側空間となる内径寸法との間に生じる空間にはモルタル、エポキシ樹脂等のグラウト材9が充填され鉄筋を固定することになる。該本体2と該グラウト材9との一体性を良好とするため凸部4を形成してグラウト材9と内壁との接触面積を大きくしている。
【0043】
上記グラウト材9は、鉄筋8の挿入後、本体2の一端側に設けた充填孔5より本体2の内側空間と鉄筋8との間に充填し、他端側に設けた排出孔6より余剰グラウト材9を排出させることにより内側空間全体を充満状態とすることになる。
【0044】
図1は、SD685D51鉄筋に対する鍔部付きスリーブ1の一例を示すものである。該鍔部付きスリーブ1では、鉄筋径の2.35倍の外径、鉄筋径の0.33倍の厚さからなる鍔部を両端部に2箇所、対称に設けている。鍔部の外径が120mmであるため、道路橋等におけるD51鉄筋の最小鉄筋間隔(2.5×51=127.5mm)より小間隔となり、設置箇所について周囲の鉄筋及び/又は定着部と鍔部との干渉を防ぐことができる。また、厚さについては、SD685D51鉄筋の必要定着力に対して鍔部のせん断耐力を確保できる実験の結果の値として鉄筋径の0.33倍を採用している。
【0045】
上記実施例1の両端部に鍔部を設けた鍔部付きスリーブ1に鉄筋を挿入して固定したものと、従来の鉄筋の端部を折り曲げてフックを形成した鉄筋とをコンクリート中に埋設し、以下の実験をした。
【0046】
実験は、図2(a)に示す端部を折り曲げてフックを形成したSD685D51鉄筋をコンクリート中に埋設した従来例としての試験体と、図2(b)に示す両端部に鍔部を設けた鍔部付きスリーブ12中にSD685D51鉄筋端部を固定したものをコンクリート中に埋設した本実施例の試験体とを各々引き抜き荷重−抜け出し変位量の関係を計測して行ったものである。
【0047】
上記各々の試験体としては、フック付試験体及び鍔部付きスリーブ試験体とも同一径のSD685D51鉄筋を使用し、試験体となるコンクリートの外形は1,300mm(縦)×1,300mm(横)×1,100mm(厚さ)とし、該コンクリートと鉄筋とのアンボンド長は612mmとしている。フック付試験体は、曲げ半径180mm、余長204mmの鉄筋で、他方、鍔部付きスリーブは、スリーブ外径95mm、長さ370mmとし、鍔部の外径120mm、厚さ17mmとした試験体である。その各々を3個用意して引抜実験をした。
【0048】
各々の試験体への加圧は、載荷力:3,000kN、ストローク:±200mmの油圧ジャッキを使用し、降伏基準強度90%(1,250kN)で30回の加圧及び降荷の繰り返しを行った後、規格引張強度相当(1,634kN)以上まで引張力を作用させた。
【0049】
上記フック付試験体と本実施例1の試験体との実験結果は、図3の表の通りである。この結果より、
1.鍔部付きスリーブ試験体(両端部に鍔部を設けたスリーブ)の規格降伏強度相当載荷時及び高応力繰返し試験による抜け出し量は、フック付試験体よりも小さい、
2.鍔部付きスリーブ試験体の静的耐力は、SD685D51の規格破断強度相当以上の引張力(1,634kN)よりも大きい、
3.鍔部の外径120mm、厚さ17mmを有する長さ370mmのスリーブは、標準的なフックと同等以上の定着性能を有する、
ことが判明した。
【実施例2】
【0050】
図4は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体10のいずれか一端部に環状の鍔部11を形成した鍔部付きスリーブ12である。鉄筋挿入側の鍔部しか機能しない場合を想定して、一端部にのみ鍔部を設けた鍔部付きスリーブである。スリーブの内側の形状及び充填孔13、排出孔14等は上記実施例1と同様である。環状の鍔部11を1箇所としているので複数形成するものよりその突出長は長くなり厚さも厚くなるが、施工箇所により適宜調整できるものである。上記実施例2の鍔部を1箇所に設けた試験体と実施例1の両端部に鍔部を設けた試験体とをコンクリート中に埋設し、各々引き抜き荷重−抜け出し変位量の関係を計測してみた。
【0051】
図5(a)(b)は、上記実験において計測された鍔部付きスリーブの軸ひずみ分布を示すもので、鍔部付きスリーブ単体からの鉄筋の引き抜き実験(a)と両端部に鍔部を設けたスリーブからの鉄筋の引き抜き実験(b)とにおけるスリーブの軸ひずみ分布を比較したものである。
【0052】
鉄筋挿入側にのみ鍔部を設けた鍔部付きスリーブ単体の実験では、鉄筋の挿入側の鍔部だけで引き抜き力に抵抗しているため、同部分近傍のスリーブに鉄筋の引き抜き力が圧縮力として集中的に作用し、大きな圧縮ひずみが生じた。その結果、スリーブのひずみの最大値は、降伏ひずみを超え、SD685D51の鉄筋に対しては鍔部が1箇所では必要な定着性能を満足することができないことが分かった。
【0053】
これに対し、コンクリート中に埋設された両端部に鍔部を設けたスリーブは、スリーブの周囲にコンクリートが充填されていることから鉄筋の挿入側とその反対側の2箇所の鍔部が分担して引き抜き力に抵抗できることになる。スリーブ内に設置された鉄筋が引き抜き力を受けた場合、グラウト材を介してスリーブへ引き抜き力が伝達する。そのため、鉄筋挿入部分からの一定区間が鉄筋からの引き抜き力が伝達している部分となり、その重心位置は、一般に、スリーブの中心から挿入部との間となる。つまり、挿入側の鍔部付近のスリーブには鉄筋の引き抜き力が圧縮力としてスリーブに伝達し、それに対して挿入側の鍔部が抵抗するために圧縮ひずみが生じる。一方、反対側の鍔部付近のスリーブには鉄筋の引き抜き力が伝達点から引張力として作用し、それに対して反対側の鍔部が直下のコンクリートに反力を確保して抵抗するために引張ひずみが生じる。その結果、スリーブの中心に対して対称的なひずみ分布となり、同じ荷重に対する軸ひずみの最大値は、挿入側の鍔部しか機能していない単体に比べて小さくなる。
【0054】
すなわち、図1のように、鍔部をスリーブ両端の2箇所に対称的に設置したものをコンクリート中に埋設して定着手段として機能させた場合、引き抜き力に対して2箇所の鍔部が共同して抵抗する共に、スリーブの軸ひずみの局所的な増加を防ぐことに繋がり、その周壁厚を低減するのに有効であり合理的であることが確認された。
【0055】
このような作用は、本実施例のようにSD685、SD490及びD51、D41のような高強度及び/又は太径の鉄筋に対する定着手段を小型化する上で極めて有効であることがわかった。上記鍔部の設置とスリーブの軸ひずみと降伏ひずみ、スリーブ内の鉄筋のひずみ等の関係は図6(a)(b)にも示した通りである。
【実施例3】
【0056】
図7は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体15の中心部或いはほぼ中心部に環状の鍔部16を形成した鍔部付きスリーブ17である。本実施例のスリーブの環状鍔部16の外周面からの突出及びその厚さ、内側の形状並びに充填孔18、排出孔19等は上記実施例2のものと同様である。
【0057】
従来、鉄筋継手に使用するスリーブの周壁中心部は当該部分に作用する応力の関係で厚く形成していたが、中心部に鍔部16を設けることにより効率的に該鍔部16が強度の一部を分担することができ、当該部分を薄くすることができるので均等な周壁厚のスリーブとすることが可能となった。この周壁厚を均等とするスリーブは、他の実施例でも同様とすることが可能である。
【実施例4】
【0058】
図8は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例で、本体20の適宜位置に環状の鍔部21を形成した鍔部付きスリーブ22である。施工箇所によって鍔部の位置を予め設定しておくことができる。本実施例で示したスリーブの環状鍔部21の外周面からの突出及びその厚さ、内側の形状並びに充填孔23、排出孔24等は上記実施例2、3と同様である。
【実施例5】
【0059】
図9は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体25の中心部から等寸法の左右に環状の鍔部26を形成した鍔部付きスリーブ27である。本実施例のスリーブの環状鍔部26を外周面から突出させること、内側の形状及び充填孔28、排出孔29等は上記実施例2乃至4同様である。
【0060】
実施例1と同様に、環状の鍔部26を2箇所に設けているが、実施例1の実験結果で明らかなように、鍔部2箇所のスリーブ試験体の引き抜き試験で十分な効果を示しているので、各々の鍔部の突出長及び/又はその厚さを抑えることが可能となるし、必要により定着力を増加させるために突出長及び/又はその厚さを大きくすることも可能である。施工箇所の状況により様々な対応が可能である。
【実施例6】
【0061】
図10は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体30の適宜位置に2箇所の環状の鍔部31を形成した鍔部付きスリーブ32である。上記実施例のスリーブ外周面からの環状鍔部31の突出及びその厚さ、内側の形状並びに充填孔33、排出孔34は上記実施例5と同様である。施工箇所の状況に応じて予め邪魔とならない位置に鍔部を設けておくことが可能である。
【実施例7】
【0062】
図11は、本発明の鍔部付きスリーブの他の実施例を示している。本体35の規則的或いは不規則的な位置となる3以上の複数箇所に環状の鍔部36を形成した鍔部付きスリーブ37である。本実施例のスリーブの環状鍔部36を外周面から突出させること、内側の形状及び充填孔38、排出孔39等は上記実施例と同様である。施工箇所に応じて鍔部36の設置箇所数、突出長、厚さ等は適宜選択することが可能となる。
【実施例8】
【0063】
上記実施例において、環状の鍔部はその設置箇所数及び突出長を施工箇所に応じて適宜調整することが可能であるが、状況により突出長を抑える必要が生じることがある。その場合、少なくとも環状鍔部の突出を鉄筋径の2.5倍に抑え、且つ鍔部の設置箇所数を増やすと同時に、スリーブ本体の外周面に凹凸部を形成し、上記環状鍔部と該凹凸部とによりコンクリートとの付着力を増加させることで対応することを可能とするものである。
【0064】
ただし、鍔部の間隔が短い場合、引き抜き力を受けた際に鍔部の最外縁を結ぶようにコンクリートとのズレが生じ、引き抜き力に対する複数の鍔部の負担が分散されなくなり、定着力が低下することがある。これを防ぐために、図12に示すように鍔部間に粗骨材を含むコンクリートが密実に充填されることが重要であり、そのために鍔部の間隔は、コンクリートの最大粗骨材寸法以上であることが望ましい。
【符号の説明】
【0065】
1、12、17、22、27、32、37 鍔部付きスリーブ
2、10、15、20、25、30、35 本体
3、11、16、21、26、31、36 鍔部
4 凸部
5、13、18、23、28、33、38 充填孔
6、14、19、24、29、34、39 排出孔
7 コンクリート
8 鉄筋
9 グラウト材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋端部と一体化するための所定長、所定周壁厚、充填材の充填孔及び排出孔並びに鉄筋の挿入及び充填材の充填空間を形成する筒状体の内側空間とよりなるスリーブ本体において、該本体の長手方向に直交する方向に本体の外周面より突出する環状の鍔部を設けたことを特徴とする鍔部付きスリーブ。
【請求項2】
鍔部は、スリーブの複数箇所の適宜位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項3】
鍔部は、少なくともスリーブの長手方向中芯位置から左右にほぼ対称となる位置に設けてなることを特徴とする請求項2に記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項4】
鍔部は、少なくとも両端部に設けたことを特徴とする請求項2に記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項5】
鍔部は、その外径を鉄筋径の2.35〜2.5倍の外径とし、複数の鍔部を設置する場合には、その間隔が当該スリーブ周囲のコンクリートの最大粗骨材寸法よりも大きくしてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項6】
鍔部をスリーブの1箇所又は複数箇所の適宜位置に設け、鍔部を設けない場合に比べスリーブ周壁厚を長手方向に沿って均等及び/或いは薄くしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項7】
スリーブの周囲に凹凸を設け、コンクリートとの付着面積を増加させたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項1】
鉄筋端部と一体化するための所定長、所定周壁厚、充填材の充填孔及び排出孔並びに鉄筋の挿入及び充填材の充填空間を形成する筒状体の内側空間とよりなるスリーブ本体において、該本体の長手方向に直交する方向に本体の外周面より突出する環状の鍔部を設けたことを特徴とする鍔部付きスリーブ。
【請求項2】
鍔部は、スリーブの複数箇所の適宜位置に設けたことを特徴とする請求項1に記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項3】
鍔部は、少なくともスリーブの長手方向中芯位置から左右にほぼ対称となる位置に設けてなることを特徴とする請求項2に記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項4】
鍔部は、少なくとも両端部に設けたことを特徴とする請求項2に記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項5】
鍔部は、その外径を鉄筋径の2.35〜2.5倍の外径とし、複数の鍔部を設置する場合には、その間隔が当該スリーブ周囲のコンクリートの最大粗骨材寸法よりも大きくしてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項6】
鍔部をスリーブの1箇所又は複数箇所の適宜位置に設け、鍔部を設けない場合に比べスリーブ周壁厚を長手方向に沿って均等及び/或いは薄くしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の鍔部付きスリーブ。
【請求項7】
スリーブの周囲に凹凸を設け、コンクリートとの付着面積を増加させたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鍔部付きスリーブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−209564(P2010−209564A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55823(P2009−55823)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390005186)日本スプライススリーブ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390005186)日本スプライススリーブ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]