説明

鍵盤装置用スイッチ

【課題】接点の接触不良を防止したスイッチを提供する。
【解決手段】スイッチ10は、基板22上に設けられた固定接点23,24と、弾性体で構成され、固定接点23,24に対向する端面を有し、端面に導電性材料を印刷した可動部27,28とを有する。可動部27,28には、可動部27,28の固定接点側端面の外縁部の一部を切り欠いて、可動部27,28の端面から側面に向かう平面状の傾斜部27b,27c,28b,28cが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器の鍵盤装置に用いられるスイッチであって、基板上に形成された固定接点に対向して配設され、導電性材料を印刷した可動部が固定接点に接触して、固定接点が短絡することにより通電状態になるスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスイッチにおいて、従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、可動部の端面の弾性変形を利用して接点の接触面積を広くすることにより、接触不良を防止したスイッチは知られている。このスイッチは、ゴム、シリコンなどの弾性体で円柱状の可動部を形成し、その端面を球面状に形成している。そして、可動部の端面に導電性材料を印刷して可動接点を形成している。スイッチが押圧されると、可動接点が基板に点接触する。その後、接触部分の可動接点が平面状に弾性変形して、接触面積が拡大され、固定接点が短絡する。これにより、スイッチの接触不良を防止している。
【特許文献1】登録実用新案第2553155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のスイッチは、押鍵に伴って揺動する押圧部材によりスイッチを押圧するように構成される。押圧部材が揺動するため、押圧部材は基板面に対して僅かに平行移動している。また、押圧部材の構造、加工精度などによって、押圧部材の位置が基板面に平行な方向にずれることがある。また、鍵盤装置の機能により、押圧部材が基板面に対して平行移動することもある。これらの場合、スイッチが斜めに押圧されることがある。すると、可動接点が基板に対して傾斜し、可動接点の外縁部が基板と点接触する。この場合、可動接点の外縁部は弾性変形し難いので、接触面積が広くならない。そのため、固定接点が短絡せず接触不良となることがあった。
【0004】
本発明は上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、接点の接触不良を防止した鍵盤装置用スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、鍵盤装置の各鍵ごとに設けられたスイッチであって、基板上に設けられた固定接点と、弾性体で構成され、固定接点に対向する端面を有し、端面に導電性材料を印刷した可動部とを有するスイッチにおいて、可動部における固定接点側端面の外縁部の一部を切り欠いて、端面から可動部の側面に向かう平面状の傾斜部を設けたことにある。スイッチを押圧する押圧部材の位置が、前後方向(鍵の長手方向に平行)にずれる場合、及び押圧部材が前後方向に移動する場合、鍵の前後方向における可動部の固定接点側端面の外縁部に傾斜部を設けるとよい。すなわち、可動部の前側及び後側に平面状の傾斜部を設けるとよい。また、押圧部材の位置が左右方向(鍵の幅方向)にずれる場合、及び押圧部材が左右方向に移動する場合、鍵の横方向における可動部の固定接点側端面の外縁部に傾斜部を設けるとよい。すなわち、可動部の右側及び左側に平面状の傾斜部を設けるとよい。
【0006】
上記のように構成したスイッチにおいては、可動部の端面に傾斜した平面が設けられ、その表面に導電性材料が印刷される。印刷された導電性材料は表面張力の影響により凸状となるが、その曲率は小さく平面に近い。そのため、押圧部材が揺動することにより僅かに基板面に対して平行移動してスイッチが斜めに押圧されても、接点の接触面積を十分に確保できる。したがって、スイッチの接触不良を防止できる。また、押圧部材の構造、加工精度、鍵盤の機能などにより、押圧部材が基板面に対して平行移動してスイッチが斜めに押圧された場合は特に有効である。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、傾斜部にさらに凹部を設けたことにある。
【0008】
このように構成しておけば、印刷される導電性材料によって形成される凸部の曲率をより小さくでき、接点の接触面積をより広く確保できる。したがって、スイッチの接触不良をより確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明に係るスイッチ10の正面図であり、図2は、スイッチ10の平面図である。図3は、図1及び図2に示すスイッチ10を適用した鍵盤装置の縦断側面図である。
【0010】
複数の鍵11は所定数ずつ(例えば白鍵ならば3つ又は4つずつ、黒鍵ならば5つずつ)複数のグループに分けられている。各グループに属する鍵11は、鍵ユニット12として樹脂により一体成型されている。各鍵ユニット12においては、複数の鍵11が、各鍵11の後端部から下方にそれぞれ延設された前後方向に薄肉の延設部13をそれぞれ介して、横方向に延設されて前後方向に薄肉の連結部14に共通に接続されている。複数の鍵ユニット12の連結部14は、前後に重ねられて鍵フレーム15の後部にねじ16により固定されている。この構成により、各鍵11は、それらの前端部を延設部13の弾性変形により上下方向に揺動可能にして、連結部14にて鍵フレーム15に支持されている。
【0011】
鍵フレーム15は、複数の鍵11の下方にて横方向に延設されている。鍵フレーム15は金属又は樹脂の一体成型により、又は金属及び樹脂との複合により、適宜凹凸を有する板状に構成された部材である。鍵11は、中間部位置にて、それらの下面からストッパ片17を下方に一体的に延設させている。このストッパ片17は、下部を後方へ屈曲させた突出部17aを有する。突出部17aは、鍵フレーム15の縦壁部に設けた開口部18から後方へ侵入し、鍵11の前部の上下方向の変位を許容する。開口部18を含む縦壁部の後面側上部には、鍵11の前端部の上限位置を規定する上限ストッパ19が固着されている。一方、開口部18を含む縦壁部の上端から後方へ向かう水平部上面には、鍵11の前端部の下限位置を規定する下限ストッパ20が固着されている。上限ストッパ19及び下限ストッパ20は、横方向(紙面に垂直方向)に延設された長尺状かつ平板状の緩衝材(例えばフェルト)で構成されて、突出部17a及び鍵11の下面との衝突による衝撃を緩和するようになっている。
【0012】
鍵11のストッパ片17の後方位置には、スイッチ駆動部21がそれぞれ設けられている。スイッチ駆動部21の下方の鍵フレーム15上には、基板22が固着されている。図4(A)に示すように、基板22上には、第1固定接点23及び第2固定接点24が設けられている。図4(B)に示すように、第1固定接点23は一対の櫛歯状の電極23a及び電極23bからなる。電極23aは、櫛歯状電極部23a1,23a2を有し、電極23bは、櫛歯状電極部23b1,23b2を有する。電極23a及び電極23bは対向しており、電極23aの櫛歯状電極部23a1,23a2と電極23bの櫛歯状電極部23b1,23b2が交互に隣り合うように平行に形成されている。また、櫛歯状電極部23a1,23a2,23b1,23b2は、鍵11の前後方向(長手方向)に延設されている。なお、櫛歯状電極部23a1,23a2,23b1,23b2は、図4(C)に示すように、鍵11の横方向(幅方向)に延設されていてもよい。第2固定接点24も、第1固定接点23と同様の一対の櫛歯状の電極24a及び電極24bからなる。この第1固定接点23及び第2固定接点24は、スイッチ10に含まれる。
【0013】
スイッチ10は、ゴム、シリコンなどの弾性部材によって一体成型される。図4(A)に示すように、スイッチ10は、スイッチ駆動部21によって押圧される被駆動部25を有する。被駆動部25の上面は、離鍵状態におけるスイッチ駆動部21の下面と平行となるように、前部に比べて後部が低くなっている。被駆動部25の下方にはスカート部26が形成される。スカート部26はスカート上部26a及びテーパ部26bからなる。スカート上部26aは、大きな曲率(曲面の曲がりの程度をいい、曲率が大きいほど湾曲が急になる。)を有する湾曲部であって、スカート上部26aの上部が被駆動部25の下端に接続される。そして、スカート上部26aの下端から、さらに下方に向かうほどテーパ状に広がったテーパ部26bが設けられる。また、スカート部26の内側には、鍵11に対応して前後に配置した一対の第1可動部27及び第2可動部28が設けられている。
【0014】
図5に、第1可動部27及び第2可動部28を縦断して高音部側(演奏者から見て右側)から見た図を示す。また、図6に第1可動部27及び第2可動部28の下端の下面図を示す。第1可動部27及び第2可動部28は、図5に示すように、下方に向かうほど直径が小さくなる円錐台状部分とその下端から下方へ突出した円柱状部分からなる。第1可動部27の下端面は、図5及び図6に示すように、平面状に形成された第1平面部27a、並びに円柱状部分の下端面から前側及び後側の側面に向かう平面状の第1傾斜部27b,27cからなる。第1傾斜部27b,27cは、第1可動部27の円柱状部分の前側部分と後側部分を僅かに切り欠いて形成される左右方向に延設された平面であり、その面積は小さい。言い換えれば、第1傾斜部27b,27cは、鍵11の前後方向における第1可動部27の電極23a,23b側の外縁部に設けられている。第2可動部28の下端面も、第1可動部27と同様な第2平面部28a及び第2傾斜部28b,28cからなる。
【0015】
鍵11を押鍵すると、延設部13が弾性変形して前方へ湾曲する。そして、鍵11の前端は、延設部13の前方に位置し、横方向(図3において紙面に垂直方向)に平行な揺動軸を中心として上下方向に揺動する。そのため、第1可動部27及び第2可動部28の下端面も円弧状の軌跡を描いて移動する。スイッチ10の接触不良を防止するためには、接点の接触面積をできるだけ大きくする必要がある。そのためには、接点面が平行に接触すればよい。これを実現するため、本実施形態においては、後述の第1可動接点凸部29a及び第2可動接点凸部30aがそれぞれ第1固定接点23及び第2固定接点24に当接するときの鍵11の回動角度と同じ角度(図4(D)において、それぞれθ1,θ2)だけ、離鍵状態における第1可動部27及び第2可動部28の下端面を前部が後部よりも高くなるように傾斜させている。
【0016】
図7に示すように、第1可動部27及び第2可動部28の下端面に導電性材料(例えばカーボンインク)が印刷され、第1可動接点29及び第2可動接点30が設けられる。ここで、導電性材料の「印刷」とは、スクリーン印刷、ピンによる塗布などをいう。印刷工程において、導電性材料が第1可動部27及び第2可動部28の端面に薄い膜状に付着する。第1平面部27a及び第2平面部28aには、導電性材料の表面張力の影響により、それぞれ緩やかな凸状の第1可動接点凸部29a及び第2可動接点凸部30aが形成される。第1傾斜部27b,27c及び第2傾斜部28b,28c上においても、それぞれ緩やかな凸状の第1可動接点傾斜部29b,29c及び第2可動接点傾斜部30b,30cが形成される。
【0017】
スカート部26の下端には、台座部32が設けられ、その下面から複数の突起状の脚部33が延設されている。脚部33が、基板22に設けられた図示しない貫通孔に嵌挿されることにより、スイッチ10が基板22に取り付けられる。第1可動部27及び第2可動部28は、それぞれ第1固定接点23及び第2固定接点24の上方に位置し、それぞれが対向した状態となる。そして、第1可動接点29及び第1固定接点23が第1スイッチSW1を構成し、第2可動接点30及び第2固定接点24が第2スイッチSW2を構成する。
【0018】
第1可動部27は第2可動部28よりも長く形成され、第1可動接点29の下端は第2可動接点30の下端よりも低くなっている。そのため、被駆動部25が押圧されてスカート部26が弾性変形すると、最初に第1可動接点29が第1固定接点23に接触し、次に第2可動接点30が第2固定接点24に接触する。すなわち、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2がこの順に通電状態になる。これは、第1スイッチSW1が通電状態になってから第2スイッチSW2が通電状態になるまでの時間を計測することにより、押健時における鍵タッチ強さ(押鍵速度)を検出するためである。そして、第2スイッチSW2が通電状態になった時点で、前記鍵タッチ強さで楽音信号が発生され始める。
【0019】
次に、上記のように構成したスイッチ10の動作について説明する。離鍵時においては、延設部13及びスイッチ10の弾性力によって、鍵11の前端が上方へ付勢されている。これにより、突出部17aの上面が上限ストッパ19の下面に当接して鍵11は静止し、各鍵11の上面が同一平面上にある(図3)。鍵11を押鍵すると、延設部13が前方へ湾曲する。そして、鍵11は、延設部13の前方の揺動中心を中心として、図3において反時計回りに回転する。鍵11の回転に伴いスイッチ駆動部21が被駆動部25を押圧し、スイッチ10の上下方向の変形量が増加する。その後、第1可動接点凸部29aが第1固定接点23の電極23a又は23bに当接する。鍵11、スイッチ10及び基板22の取り付け位置の誤差、これらの寸法のばらつきなどによっては、第1可動接点凸部29aは、電極23a又は23bの近傍の基板面に当接することもある。その後、第1可動接点凸部29aが押圧されることにより、接触部分が多少弾性変形して円形の平面状になり、接触面積が増大する。そして、第1可動接点29が電極23a及び電極23bの双方に接触して、第1固定接点23が短絡する。
【0020】
この鍵盤装置においては、延設部13が前後方向に薄肉かつ左右方向に幅広の薄板状になっている。そのため、押鍵時において、鍵11に前後方向の力が加わると、鍵11が前後方向にずれることがある。この場合、第1可動接点29の下面が基板22の上面に対して傾斜して当接する。すると、第1可動接点傾斜部29b又は29cが電極23a又は電極23bに当接する。ずれの程度によっては、第1可動接点傾斜部29b又は29cは、第1固定接点23の近傍の基板面に当接することもある。例えば、鍵11が前方にずれた場合、被駆動部25の前部が押圧されるので、第1可動部27は、その下端の後端部が後側上方へ持ち上げられるように傾斜する。そのため、第1可動接点傾斜部29bが電極23aもしくは電極23b又はそれらの近傍の基板面に当接する。一方、鍵11が後方にずれた場合、被駆動部25の後部が押圧されるので、第1可動部27は、その下端の前端部が前側上方へ持ち上げられるように傾斜する。そのため、第1可動接点傾斜部29cが電極23aもしくは電極23b又はそれらの近傍の基板面に当接する。
【0021】
前述のとおり、第1可動接点傾斜部29b,29cは表面張力の影響により、緩やかな凸状に形成されているが、電極23aもしくは電極23b又はそれらの近傍の基板面と当接して押圧されると、凸部が平面状に多少弾性変形する。第1傾斜部27b,27cは平面状に形成されるので、第1可動接点傾斜部29b,29cは、第1可動部27の円柱状部分の曲率の影響を受けない。そのため、第1可動接点傾斜部29b,29cの凸部は、導電性材料の表面張力のみの影響により、平面に近い小さな曲率で形成され、弾性変形により、さらに接点の接触面積が大きくなり、第1固定接点23が短絡する。第1可動接点傾斜部29b,29cは、左右方向に延設されているから、櫛歯状電極部23a1,23a2,23b1,23b2は、図4(B)に示すように、前後方向(すなわち、第1可動接点傾斜部29b,29cの延設方向に垂直な方向)に延設すると、接点の接触面積をより広く確保できる。これは、第2固定接点24についても同様である。
【0022】
その後、鍵11の揺動角度がさらに増大すると、第1可動接点29が第1固定接点23に当接するのと同様に、第2可動接点30が第2固定接点24に当接し、第2固定接点24が短絡する。そして、鍵11の前部下面が下限ストッパ20の上面に当接すると鍵11の回転が停止する。鍵11が離鍵されると、延設部13及びスイッチ10の弾性力によって鍵11の前端が上方へ付勢される。そして、鍵11は、その揺動中心を中心として、図3において時計回りに回転する。突出部17aの上面が上限ストッパ19の下面に当接すると、鍵11は静止し、元の位置(図3)に復帰する。
【0023】
上記のように構成したスイッチ10においては、鍵11が、押鍵時に前後方向にずれても、第1可動接点傾斜部29b,29c及び第2可動接点傾斜部30b,30cが、第1固定接点23及び第2固定接点24又はそれらの近傍の基板面に当接して弾性変形する。上述の通り、第1可動接点傾斜部29b,29c及び第2可動接点傾斜部30b,30cの凸部の曲率は小さいので、十分に接点の接触面積を確保することができる。したがって、第1固定接点23及び第2固定接点24が確実に短絡するので、スイッチ10の接触不良を防止できる。
【0024】
ここで、比較のために、第1傾斜部27b,27cに代えて、第1可動部27の下端外周に面取り部34を設けた例を図8に示す。この場合、面取り部34は円錐台形状の側面部であるから円錐部の曲率に応じた凸状の曲面となる。したがって、面取り部34に導電性材料を印刷して形成される凸形状の曲率は、円錐部の曲率と導電性材料の表面張力の影響を共に受けるため、第1可動接点傾斜部29b,29cの曲率よりも著しく大きくなる。この場合、背景技術の項で述べたような点接触が起こる場合に比べると、接点の接触面積は増えるが、それでも接触面積が十分でなく、第1固定接点23が短絡しないことがある。これに比べて、本実施形態のように、平面状の第1傾斜部27b,27cに導電性材料を印刷すれば、凸形状の曲率を小さくし、より平面に近い形状にすることができる。そのため、接点の接触面積を十分に確保できるので、第1固定接点23が短絡する。これは、第2傾斜部28b,28cについても同様である。
【0025】
なお、上記実施形態においては、押鍵時に鍵11が前後方向にずれることを考慮して、第1可動部27及び第2可動部28の前側及び後側にそれぞれ第1傾斜部27b,27c及び第2傾斜部28b,28cを設けた。しかし、傾斜部を設ける位置はこれに限られるものではない。例えば、鍵ユニット12の取り付けの作業性向上のため左右方向の取り付け位置にある程度の幅を持たせることにより、鍵11の位置が左右方向に僅かにずれることがある。この場合、第1可動部27及び第2可動部28の下端に、前後方向に延設された平面状の傾斜部をさらに設けてもよい。すなわち、第1可動部27及び第2可動部28の左側及び右側にさらに平面状の傾斜部を設けてもよい。このように構成しておけば、鍵11の取り付け位置が左右方向にずれて、第1可動部27及び第2可動部28が基板22に対して傾斜しても、接点の接触面積を十分に確保することができ、第1固定接点23及び第2固定接点24が確実に短絡するので、スイッチ10の接触不良を防止できる。
【0026】
また、図9に示すように、各鍵35を左右方向にも揺動可能に構成し、鍵35に加えられる左右方向の力及び変位を、図示しないセンサ(例えば歪ゲージ)によって検出し、そのデータに基づいて楽音の発生態様を制御するようにした鍵盤装置にスイッチ10を適用してもよい。図9の鍵盤装置の構成は、図3に示す鍵盤装置とほぼ同じであるので、共通する部分には同じ符号を付してその説明を省略する。複数の鍵35は所定数ずつ(例えば白鍵ならば3つ又は4つずつ、黒鍵ならば5つずつ)複数のグループに分けられている。各グループに属する鍵35は、鍵ユニット36として樹脂により一体成型されている。鍵ユニット36の例を図10に示す。図10においては、白鍵について示すが、黒鍵についても同様の構成である。図10に示すように、鍵ユニット36においては、各鍵35の後端部から後方にそれぞれ延設された垂直方向に薄肉の水平延設部37が設けられる。各水平延設部37の後端は、横方向に延設され、前後方向に薄肉の縦壁部38にそれぞれ接続される。各縦壁部38の後面側には、前後方向に延設され、横方向に薄肉の垂直延設部39がそれぞれ設けられる。各垂直延設部39の後端は、横方向に延設され、前後方向に薄肉の縦壁部40にそれぞれ接続される。各縦壁部40の後面は、横方向に延設されて垂直方向に薄肉の連結部41に共通に接続される。複数の鍵ユニット36の連結部41は、上下に重ねられて鍵フレーム15の後部にねじ43により固定されている。この構成により、各鍵35は、それらの前端部を水平延設部37の弾性変形により上下方向に揺動可能かつ垂直延設部39の弾性変形により左右方向に揺動可能にしている。ただし、その左右方向の揺動範囲は、隣り合う鍵35との間の僅かな隙間の範囲であり、微少である。
【0027】
この場合、第1可動部27及び第2可動部28の下端に、前後方向(鍵の長手方向に平行)に延設された平面状の傾斜部を設けるとよい。すなわち、第1可動部27及び第2可動部28の左側及び右側に平面状の傾斜部を設けるとよい。このように構成しておけば、押鍵時に鍵35が左右方向に揺動して、第1可動部27及び第2可動部28が基板22に対して左右方向に傾斜しても、接点の接触面積を十分に確保することができ、第1固定接点23及び第2固定接点24が確実に短絡するので、スイッチ10の接触不良を防止できる。
【0028】
また、上記実施形態及びその変形例においては、第1傾斜部27b,27c及び第2傾斜部28b,28cを平面状にした。これに加えて、第1傾斜部27b,27c及び第2傾斜部28b,28cに凹部を設けてもよい。第1傾斜部27b,27c及び第2傾斜部28b,28cの面積は小さいので、凹部を設けると傾斜部のほぼ全面が凹状に形成されることになるが、このように構成しておけば、印刷される導電性材料によって形成される凸部の曲率をより小さくでき、接点の接触面積をより広く確保できる。したがって、スイッチの接触不良をより確実に防止できる。
【0029】
また、上記スイッチ10においては、第1固定接点23の電極23aは、2本の櫛歯状電極部23a1及び23a2を有するようにした。しかし、これに限られるものではなく、より多く(3本以上)の櫛歯状電極部を有するようにしてもよい。この場合、電極23b,24a,24bも電極23aの櫛歯状電極部と同じ数だけ櫛歯状電極部を有するようにすればよい。単位面積あたりの櫛歯状電極部の数を多くすれば、さらに接点の接触面積を広くすることができ、より確実に接点の接触不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るスイッチの正面図である。
【図2】図1のスイッチの平面図である。
【図3】図1のスイッチを適用した鍵盤装置の縦断側面図である。
【図4】(A)は、図1のスイッチの詳細断面図である。(B)及び(C)は、固定接点の電極を示す図である。(D)は、離鍵時における図1のスイッチの可動部の傾斜角度を示す図である。
【図5】図4の可動部を縦断して高音部側から見た図である。
【図6】図4の可動部の下面図である。
【図7】図4の可動接点を縦断して高音部側から見た図である。
【図8】図1のスイッチとの比較のために、可動部に面取りを設けた例を示す図である。
【図9】本発明の変形例に係るスイッチを適用した鍵盤装置の縦断側面図である。
【図10】図9の鍵盤装置の鍵ユニットを示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10・・・スイッチ、22・・・基板、23・・・第1固定接点、24・・・第2固定接点、27・・・第1可動部、27b,27c・・・第1傾斜部、28・・・第2可動部、28b,28c・・・第2傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤装置の各鍵ごとに設けられたスイッチであって、
基板上に設けられた固定接点と、
弾性体で構成され、前記固定接点に対向する端面を有し、前記端面に導電性材料を印刷した可動部とを有するスイッチにおいて、
前記可動部における前記固定接点側端面の外縁部の一部を切り欠いて、前記端面から前記可動部の側面に向かう平面状の傾斜部を設けたことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記鍵の前後方向における前記可動部の前記固定接点側端面の外縁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記鍵の横方向における前記可動部の前記固定接点側端面の外縁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記傾斜部に、さらに凹部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載のスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−123261(P2010−123261A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292955(P2008−292955)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】