説明

鍵盤装置

【課題】ベース部材とプレート部材とを強固に固着すると共に、押鍵時の異音の発生を低減することができる鍵盤装置を提供すること。
【解決手段】ベース部材21とプレート部材22とは、超音波溶着によって溶着されるので、接着剤によって接着する場合と比較して、互いを強固に固着することができる。よって、演奏者によって、強く押鍵されたり、長期間が経過したとしても、ベース部材21とプレート部材22とが剥がれてしまうことを抑制できる。また、プレート部材22の突出部31a〜31fは、その突出部31a〜31fが押鍵部2aに対して占有する比率が、突出部31a,31bが細長部2bに対して占有する比率より高くなっているので、押鍵部2aの溶着が密となる。よって、押鍵部2aは、ベース部材21とプレート部材22との間の隙間がなくなるので、隙間によって押鍵時に異音が発生することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤装置に関し、特に、ベース部材とプレート部材とを強固に固着すると共に、押鍵時の異音の発生を低減することができる鍵盤装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実開昭49−35209号公報に開示されているように、樹脂材料により一体成形された鍵を複数備える鍵盤装置が知られている。一体成形された鍵は、一種類の樹脂材料から成形されるので、例えば、強度を高めるために硬質な材料を用いた場合には演奏者によって押鍵される押鍵部の吸湿性が乏しい鍵となったり、逆に吸湿性を高めるために粗い材料を用いた場合には押鍵部の強度が弱いなどの問題点があった。
【0003】
そこで、特開平7−44156号公報に開示されているように、鍵(ベース部材)の表面に吸汗性材からなる表面素材(プレート部材)を接着剤により接着し、鍵が有する特性とは異なる特性をもった表面素材を表面に接着する鍵も知られている。
【特許文献1】実開昭49−35209号公報
【特許文献2】特開平7−44156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベース部材とプレート部材との2つの部材を接着材で接着する鍵では、演奏者によって鍵が激しく押鍵されたり、接着後に長期間が経過すると、接着材の接着能力が低下してプレート部材が剥がれてしまうという問題点があった。
【0005】
また、ベース部材の表面とプレート部材の表面との間に接着剤を塗布するので、その接着剤が均一に塗布されないと、一部分が剥がれたりして、ベース部材とプレート部材との間に空間が形成されてしまう。ベース部材とプレート部材との間に空間が形成されると、押鍵時に演奏者の爪が当たり異音が発生し、演奏者に不快な思いをさせてしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ベース部材とプレート部材とを強固に固着すると共に、押鍵時の異音の発生を低減することができる鍵盤装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の鍵盤装置は、後端側が支持されて揺動可能に配置されるベース部材と、そのベース部材の表面を覆うプレート部材とを有する鍵を複数備えており、前記鍵は、前記ベース部材とプレート部材とを重ね合わせた状態で超音波溶着することによって形成される。
【0008】
請求項2記載の鍵盤装置は、請求項1記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、木目調に着色された樹脂材料により形成されると共に、前記プレート部材は、白色に着色された樹脂材料により形成される。
【0009】
請求項3記載の鍵盤装置は、請求項1又は2に記載の鍵盤装置において、前記ベース部材およびプレート部材は、主成分が同じ樹脂材料で構成されると共に、いずれか一方に異なる成分が添加される。
【0010】
請求項4記載の鍵盤装置は、請求項1から3のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記プレート部材は、前記ベース部材の上面に前記超音波溶着によって溶着される上面部と、その上面部に連接され前記ベース部材の先端側の前面を覆う前面部とを備えている。
【0011】
請求項5記載の鍵盤装置は、請求項4記載の鍵盤装置において、前記プレート部材は、前記上面部から前記ベース部材側に突出すると共に、前記超音波溶着によって溶融される溶着用突出部を備え、その溶着用突出部は、前記上面部の先端から前記後端側への所定範囲の面積に対して占有する比率が、その所定範囲以外の面積を占有する比率より高くなっている。
【0012】
なお、請求項5記載の溶着用突出部は、斑点状の凸部を複数設けて構成するものであっても良いし、連続した曲線または直線を有する凸部の少なくとも一方を設けて構成するものであっても良く、その形状および形成位置は限定されない。
【0013】
請求項6記載の鍵盤装置は、請求項5記載の鍵盤装置において、前記ベース部材には、前記プレート部材が重ね合わせられた状態において、前記溶着用突出部に対応した位置に凹状の溝部が形成されている。
【0014】
請求項7記載の鍵盤装置は、請求項4から6のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記溶着用突出部の1つは、前記上面部の後端側に設けられ、前記先端側から後端側に傾斜した傾斜部を有する傾斜突出部であり、前記ベース部材は、前記プレート部材が重ね合わせられた状態で、前記傾斜突出部の傾斜部と当接する開口部を備えている。
【0015】
なお、請求項7記載の傾斜突出部は、傾斜部が平面であっても良いし、曲面であっても良い。例えば、傾斜突出部を、後端側と先端側とを結ぶ方向に直交する方向の中心位置で且つ円錐台形状に形成しても良く、この構成の場合には、ベース部材とプレート部材とを溶着する際に、傾斜部が開口部の下方に移動しつつ溶着が行われるので、プレート部材が後端側に引っ張られ、その結果、ベース部材の前面とプレート部材の前面部との隙間を減らすことができる。さらに、開口部の縁により傾斜突出部を中心位置へ誘導しつつ溶着できるのでプレート部材の位置決めも兼ねることができる。
【0016】
請求項8記載の鍵盤装置は、請求項4から7のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記プレート部材は、前記上面部から前記ベース部材側に突起した突起部を備え、前記ベース部材は、前記突起部の先端側端部と当接する当接部と、その突起部の突起方向先端を少なくとも収容する空間とを有する収容部を備え、前記突起部の先端側端部と前記前面部との間の距離と、前記当接部と前記ベース部材の先端側前面との間の距離とが、同距離に構成されている。
【0017】
請求項9記載の鍵盤装置は、請求項4から7のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記プレート部材は、前記上面部から前記ベース部材側に突起した突起部を備え、その突起部は、前記先端側と後端側とを結ぶ第1方向に直交する第2方向に一対設けられており、前記ベース部材は、前記一対の突起部の前記第2方向外側端部とそれぞれ当接する当接部と、その一対の突起部の突起方向先端を少なくとも収容する空間とを有する収容部を備え、前記第2方向において、前記一対の突起部の外側端部と前記上面部の外縁との間の距離と、前記当接部と前記ベース部材の外縁との距離とが、同距離に構成されている。
【0018】
なお、請求項9記載の収容部において、突起部の先端側端部と当接する当接部(請求項8記載の当接部)を有する構成としても良い。また、請求項9記載の収容部は、一対の突起部の第2方向外側端部と当接する当接部を有していればよいので、一対の突起部をそれぞれ収容する一対の収容部を備えるものであっても良いし、一対の突起部の両方を収容する1の収容部を備えるものであっても良い。さらに、突起部は、超音波溶着によって溶融される溶着用の突出部を兼ねても良い。
【0019】
また、請求項8又は9に記載の収容部の当接部およびその当接部に当接する突起部の端部は、曲面であっても良いし、平面であっても良いし、先端側に凸形状であっても良いし、その形状は特に限定しない。なお、当接部および突起部の端部は、上面部から略垂直方向に突起して形成する方が好ましい。これは、突起部の端部を上面部に対して鈍角にすると、突起部が収容部から外れやすくなり位置決めができなくなるし、一方、鋭角にすると、プレート部材をベース部材に重ね合わせる場合に突起部が邪魔となり填めづらいからである。
【0020】
また、請求項8又は9において、「ほぼ同距離」とは、全く同じ距離を含むものとする。なお、ほぼ同距離とは、ベース部材に対してプレート部材を位置決めできる範囲内の差であれば良く、その距離の差は、ベース部材およびプレート部材の大きさなどによって適宜設定される。
【0021】
請求項10記載の鍵盤装置は、請求項4から9のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材は、前記プレート部材が重ね合わせられた状態で、そのプレート部材の前面部下部を支持する複数の支持部を備え、前記プレート部材は、その前面部下部に設けられ、前記複数の支持部間に嵌挿される嵌挿部を備えている。
【0022】
請求項11記載の鍵盤装置は、請求項4から10のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記プレート部材の前面部には、前記ベース部材側の側面に、その前面部下部先端から前記上面部側に延びた凹部が形成されており、前記ベース部材には、前面下部先端で且つ前記凹部に対応した位置に切欠部が形成されている。
【0023】
請求項12記載の鍵盤装置は、請求項1から11のいずれかに記載の鍵盤装置において、前記ベース部材には、前記プレート部材が重ね合わせられた状態で、そのプレート部材の後端側端部との間に所定空間が形成されている。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の鍵盤装置によれば、ベース部材とプレート部材とが超音波溶着によって形成されるので、ベース部材とプレート部材とを溶融しながら溶着することができ、従来の接着剤で貼着する場合と比較して、ベース部材とプレート部材とを強固に固着することができる。よって、演奏者によって強く押鍵されたり、長期間の使用であっても、ベース部材とプレート部材とが剥がれてしまうことを抑制することができるという効果がある。
【0025】
請求項2記載の鍵盤装置によれば、請求項1記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材が木目調に着色された樹脂材料により形成され、プレート部材が白色に着色された樹脂材料により形成されるので、簡単な構成で見栄えが良く高級感を持った鍵盤装置を提供することができるという効果がある。
【0026】
請求項3記載の鍵盤装置によれば、請求項1又は2に記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材およびプレート部材は、主成分が同じ樹脂材料で構成され、いずれか一方に異なる成分が添加されるので、異なる成分が添加された部材に特有の特性を与えることができるという効果がある。例えば、プレート部材を硬質にする成分を添加すれば、プレート部材の強度を高くすることができるし、プレート部材に吸汗性を有する成分を添加すれば、吸汗性に優れた鍵とすることができる。なお、ベース部材およびプレート部材ともに主成分が同じなので、超音波溶着によって強固に固着することができる。
【0027】
請求項4記載の鍵盤装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、プレート部材が上面部と前面部とで構成され、上面部は、ベース部材の上面に超音波溶着によって溶着され、前面部は、ベース部材の前面を覆うように構成されている。一般的に鍵盤装置は、複数の鍵を隣接して並べるので、演奏者に視認される部分は、上面と前面である。本鍵盤装置によれば、プレート部材が上面と前面を覆うので、簡単な構成で美観が損なわれることを抑制できるという効果がある。また、ベース部材とプレート部材との溶着は、上面部のみを超音波溶着によって溶着するので、上面部と前面部とを備える場合であっても、製作工程が増加することを防止できるという効果がある。
【0028】
請求項5記載の鍵盤装置によれば、請求項4記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、超音波溶着によって溶融される溶着用突出部は、上面部の先端から後端側への所定範囲の面積に対して占有する比率が、その所定範囲以外の面積を占有する比率より高くなっているので、溶着される部分が先端側の所定範囲の方が密となる。鍵の先端側は、演奏者によって押鍵される部分なので、ベース部材とプレート部材との間に隙間が多いと爪が当たったときなどに異音が発生することがある。しかし、演奏者が押鍵する部分の溶着を密にできるので、ベース部材とプレート部材との間の隙間を減らすことができ、異音の発生を抑制することができるという効果がある。
【0029】
請求項6記載の鍵盤装置によれば、請求項5記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材には、溶着用突出部に対応した位置に凹状の溝部が形成されているので、溶着用突出部が溶融した場合に、その溶融した樹脂を溝部内に収容することができる。よって、溶融した樹脂材料がベース部材の上面とプレート部材との間に残り、プレート部材がベース部材に対して傾いて溶着されることを抑制できるという効果がある。
【0030】
請求項7記載の鍵盤装置によれば、請求項4から6のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、プレート部材の上面部の後端側に溶着用突出部の1つである傾斜突出部が設けられている。その傾斜突出部は、先端側から後端側に傾斜した傾斜部を有しており、その傾斜部が、ベース部材に設けられた開口部に当接する。一般的に、超音波溶着が行われる場合には、プレート部材を上面から押さえつけながら超音波によって溶着するので、傾斜部が開口部を後端側にスライドしつつ溶融されて溶着が行われる。よって、プレート部材が後端側に引っ張られるので、ベース部材の前面とプレート部材の前面部との間に隙間が形成されることを抑制でき、鍵の外観品質を向上することができるという効果がある。
【0031】
請求項8記載の鍵盤装置によれば、請求項4から7のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、プレート部材には、上面部からベース部材側に突起した突起部が備えられており、ベース部材には、突起部の先端側端部と当接する当接部と突起部の突起方向先端を少なくとも収容する空間とを有する収容部が備えられている。また、突起部の先端側端部と前面部との間の距離と、当接部とベース部材の先端側前面との間の距離とが、同距離に構成されているので、ベース部材にプレート部材を重ね合わせる場合には、突起部の先端側端部と収容部の当接部とが当接しつつ突起部が収容部に収容される。よって、プレート部材がベース部材に重ねられる際に、そのプレート部材の先端側方向への移動が規制され位置決めをすることができるので、プレート部材が正規の位置からずれた位置に重ねられることを抑制できるという効果がある。また、プレート部材が正規の位置に重ねられるので、不良品の発生を減らし、歩留まりを向上できるという効果がある。
【0032】
請求項9記載の鍵盤装置によれば、請求項4から7のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、プレート部材には、先端側と後端側とを結ぶ第1方向に直交する第2方向に一対の突起部が備えられており、ベース部材には、突起部の第2方向外側端部とそれぞれ当接する当接部と、突起部の突起方向先端を少なくとも収容する空間とを有する収容部が備えられている。また、一対の突起部の外側端部と上面部の外縁との間の距離と、当接部とベース部材の外縁との距離とが同距離に構成されているので、ベース部材にプレート部材を重ね合わせる場合には、突起部の外側端部と収容部の当接部とが当接しつつ突起部が収容部に収容される。よって、プレート部材がベース部材に重ねられる際に、そのプレート部材の第2方向への移動が規制され位置決めをすることができるので、プレート部材が正規の位置からずれた位置に重ねられることを抑制できるという効果がある。また、プレート部材が正規の位置に重ねられるので、不良品の発生を減らし、歩留まりを向上できるという効果がある。
【0033】
請求項10記載の鍵盤装置によれば、請求項4から9のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、プレート部材がベース部材に重ねられる場合には、プレート部材の前面部下部がベース部材の支持部により支持され、さらに、プレート部材の嵌挿部が支持部の間に嵌挿される。よって、プレート部材をベース部材に重ね合わせる場合には、支持部と嵌挿部とによって、後端側と先端側と結ぶ方向に直交する方向(第2方向)への位置決めを行うことができるので、プレート部材が正規の位置からずれた位置に重ねられることを抑制できるという効果がある。また、プレート部材の前面部下部が支持部により支持されているので、前面部を溶着しない場合であっても、押鍵時の振動により前面部がばたつくことを防止でき、異音の発生を抑制できるという効果がある。
【0034】
請求項11記載の鍵盤装置によれば、請求項4から10のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、プレート部材の前面部には、ベース部材側の側面に、その前面部下部先端から上面部側に延びた凹部が形成され、ベース部材には、下部先端で且つ凹部に対応した位置に切欠部が形成されているので、その切欠部から接着材などを凹部に簡単に流し込むことができる。よって、プレート部材とベース部材とが超音波溶着された後に、前面と前面部との間に隙間が形成されてしまった場合には、切欠部から接着材を流し込み、前面と前面部とを接着することができる。従って、簡単な工程により不良品の発生を低減することができるという効果がある。
【0035】
請求項12記載の鍵盤装置によれば、請求項4から10のいずれかに記載の鍵盤装置の奏する効果に加え、ベース部材には、プレート部材の後端側端部との間に所定空間が形成されているので、その所定空間にプレート部材の後端側端部にあるゲート残りなどを収容することができる。一般的に、鍵の後端側は、鍵盤装置の外枠により演奏者に視認不可の場所となるので、プレート部材の後端側にゲートが残ったとしても美観が損なわれることはない。よって、所定空間を形成することで、プレート部材のゲート処理の作業を省くことができ、その結果、コスト低減を図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施例における鍵盤装置1の構成を示す図であり、図1(a)は、鍵盤装置1の平面図であり、図1(b)は、鍵盤装置1の側面図である。なお、以下の説明では、白鍵2及び黒鍵3の長手方向(矢印X方向)を第1方向とし、その第1方向に直交する方向(矢印Y方向)を第2方向とし、鍵盤装置1の高さ方向(矢印Z方向)を第3方向として説明する。
【0037】
図1(a)及び図1(b)に示すように、鍵盤装置1は、演奏者によって押鍵される白鍵2及び黒鍵3をそれぞれ複数備えている。白鍵2及び黒鍵3は、各鍵の後端側(図1(a)及び図1(b)の矢印X方向左側)に揺動軸孔を有しており、シャシー4に設けられた揺動軸5を中心に揺動可能に取り付けられている。
【0038】
また、白鍵2及び黒鍵3は、押鍵されると、シャシー4に設けられたハンマー6がシャシー4に設けられた軸を中心に揺動され、ハンマー6のアクチュエータ部7がシャシー4の下部に固着されたプリント基板8のスイッチ9を作動させる。鍵盤装置1においては、スイッチ9が作動することによって鍵の操作が検出され、図示しない制御部によって音声が出力される。
【0039】
図2は、白鍵2の斜視図であり、図2(a)が溶着前の白鍵2を示したものであり、図2(b)が溶着後の白鍵2を示したものである。なお、白鍵2は、音高により異なる形状となるが、図2に示す形状では、左側面(図2正面側の側面)がほぼ全長に亘って平面に形成され、右側面(図2奧側の側面)が段差を有して形成されている。よって、白鍵2の第1方向先端側(矢印X方向右側)が第2方向に厚みを有して形成されている。その厚みを有している部分が白鍵2の押鍵部2aであり、その他の部分が細長部2bである(図2(b)参照)。
【0040】
白鍵2は、シャシー4に設けられた揺動軸5に揺動可能に支持されるベース部材21と、そのベース部材21の表面を覆うプレート部材22とで構成されている。ベース部材21は、上面23(矢印Z方向上側面)と、先端側の前面24(矢印X方向右側面)を有しており、プレート部材22は、上面23に超音波溶着される上面部25と、前面24を覆う前面部26とを有して構成されている。
【0041】
また、白鍵2及び黒鍵3は、隣接して並べられるので(図1参照)、白鍵2の上面と前面とが演奏者に視認可能な部分となる。白鍵2は、上面部25と前面部26とを備えているので、簡単な構成で鍵盤装置1の外観品質を向上することができる。
【0042】
なお、ベース部材21は、木目調に直色された樹脂材料により形成され、プレート部材21は、白色に着色された樹脂材料により形成されている。よって、簡単な構成で見栄えが良く高級感を持った白鍵2を製作することができる。
【0043】
また、ベース部材21及びプレート部材22は、樹脂材料により射出成形により形成され、互いの主成分が同じ樹脂材料から構成されている。よって、ベース部材21及びプレート部材22の主成分が同じなので、超音波溶着によって互いを強固に固着することができる。また、プレート部材22の樹脂材料には、硬質な材料が添付されており、プレート部材22の強度が高められている。
【0044】
次に、図3から図10を参照して、白鍵2の構造について詳細に説明する。
【0045】
図3は、白鍵2の構成を説明するための図であり、図3(a)は、ベース部材21及びプレート部材22の溶着前の側面図であり、図3(b)は、図3(a)の矢印IIIb視におけるプレート部材22の下面図であり、図3(c)は、図3(a)の矢印IIIc視におけるベース部材22の上面図であり、図3(d)は、図3(a)のIIId−IIId線における溶着前の白鍵2の断面図である。
【0046】
図3(a)に示すように、白鍵2の製作は、ベース部材21にプレート部材22を、ほぼ垂直方向(矢印A方向)から重ね合わせ、その後、超音波溶着によってそれぞれが溶着される。なお、本実施例では、図示しない溶着装置に、ベース部材21及びプレート部材22を装着し、その後、超音波を発生可能な発生部によってプレート部材22を上方(矢印Z方向上側)からベース部材21側に押圧しつつ溶着が行われる。
【0047】
以下に、ベース部材21とプレート部材22とを重ね合わせて超音波溶着によって溶着を行うための特徴的な構成について説明する。
【0048】
図3(b)に示すように、プレート部材22の上面部25には、その上面部25から略垂直方向に突出した溶着用の突出部31a〜31f及び突出部32と、ベース部材21に対してプレート部材22を位置決めするために上面部25から略垂直方向に突起した一対の突起部33とが形成されている。
【0049】
突出部31a〜31eは、プレート部材22の第1方向(矢印X方向)に直線状に延設されている。突出部31a〜31eのうち、突出部31a,31bは、プレート部材22のほぼ全体に亘って形成されており、突出部31c〜31eは、プレート部材22の押鍵部2aに対応した部分に形成されている。また、突出部31fは、プレート部材22の先端側(矢印X方向右側)に第2方向(矢印Y方向)に延設されている。突出部32は、プレート部材22の後端側(矢印X方向左側)に形成され、一対の突起部33は、突出部31fの両側に形成されている。
【0050】
図3(c)に示すように、ベース部材21の上面23には、プレート部材22が重ねられた状態において、突出部31a〜31fが位置する凹状の溝部41a〜41fと、突出部32が挿入される貫通形成された貫通孔42と、一対の突起部33を収容可能な収容部43とが形成されている。即ち、溝部41a〜41e及び、貫通孔42、一対の収容部43は、突出部31a〜31f及び突出部32、突起部33に対応した位置にそれぞれ形成されている。
【0051】
以上の通り、プレート部材22の突出部31a〜31fは、その突出部31a〜31fが押鍵部2aに対して占有する比率が、突出部31a,31bが細長部2bに対して占有する比率より高くなっている。従って、ベース部材21とプレート部材22とを溶着した場合には、細長部2bの溶着より押鍵部2aの溶着の方が密となる。その結果、押鍵部2aは、ベース部材21とプレート部材22との間に空間が形成されることを抑制でき、その空間によって押鍵時に異音が発生することを抑制することができる。
【0052】
次に、図3(d)を参照して、プレート部材22の突出部31a〜31f及びベース部材21の溝部41a〜41fについて説明する。なお、突出部31a〜31f及び溝部41a〜41fの断面形状は全て同一形状であるので、以下の説明では、突出部31e及び溝部41eについて説明する。
【0053】
突出部31eは、断面視略三角形の凸状に形成されており、溝部41eは、断面視略四角形の溝に形成されている。また、溝部41eの深さより突出部31eの突出長さの方が長く形成されると共に、突出部31eの横幅より溝部41eの横幅の方が長く形成されている。
【0054】
よって、ベース部材21にプレート部材22が重ねられた状態では、突出部31eの先端が溝部41eの底面に当接する。そして、ベース部材21とプレート部材22とを超音波溶着によって溶着する場合には、突出部31eが溶融して溝部41e内に流れ込み互いが強固に固着される。なお、突出部31eの横幅より溝部41eの横幅の方が長く形成されているので、超音波溶着によって溶融した樹脂が溝部41e内からはみ出すことを防止でき、溶融した樹脂がベース部材21の上面23とプレート部材22の上面部25との間に入り込み溶着の不具合の発生を防止することができる。
【0055】
図4は、白鍵2の外観および断面を示した図であり、図4(a)は、白鍵2の上面図であり、図4(b)は、白鍵2の下面図であり、図4(c)は、図4(a)のIVc−IVc線における白鍵2の溶着前の断面図であり、図4(d)は、図4(a)のIVd−IVd線における白鍵2の溶着後の断面図である。なお、図4の説明では、詳細な説明を省略し、以下の図5〜図10の説明において、白鍵2の特徴的な構成について説明する。
【0056】
ここで、図5を参照して、プレート部材22の突起部33とベース部材21の収容部43について説明する。図5は、突起部33及び収容部43の構造を示した断面図であり、図5(a)は、図4(c)のVa−Va線における白鍵2の先端部分の断面図であり、図5(b)は、図4(c)の破線Vbで囲んだ部分の拡大断面図であり、図5(c)は、図4(d)の破線Vcで囲んだ部分の拡大断面図である。
【0057】
図5(a)に示すように、白鍵2(ベース部材21及びプレート部材22)の第2方向(矢印Y方向)の長さは、t1であり、突起部33の第2方向外側の端面33aからプレート部材22の外縁までの距離は、それぞれt2であり、突出部33の第2方向外側の端面33aの間がt3となる。一方、ベース部材21は、収容部43の第2方向外側の端面43aからベース部材21の外縁までの距離もそれぞれt2であり、収容部43の端面43aの間もt3となっている。
【0058】
よって、ベース部材21にプレート部材22を重ね合わせると、突起部33の端面33aと収容部43の端面43aとが互いに当接するので、プレート部材22の第2方向への位置決めを行うことができる。
【0059】
図5(b)に示すように、突起部33は、第1方向の先端側(矢印X方向右側)が端面33bとなり、収容部43は、第1方向の先端側が端面43bとなる。また、突出部33の端面33bと前面部26の内側の端面との距離と、収容部43の端面43bと前面24の外側の端面との距離とが、それぞれt4となっている。
【0060】
よって、図5(c)に示すように、ベース部材21にプレート部材22を重ね合わせると、突起部33の端面33bと収容部43の端面43bとが互いに当接するので、プレート部材22の第1方向への位置決めを行うことができる。
【0061】
また、突起部33の端面33a,33b及び収容部43の端面43a,43bは、白鍵2の第3方向(矢印Z方向)に沿った平面となっている。即ち、突起部33の端面33a,33bは、上面部25から略垂直方向に形成されると共に、収容部43の端面43a,43bは、上面23から略垂直方向に形成されている。ここで、例えば、突出部33の端面33a,33b及び収容部43の端面43a,43bを先端側から後端側(矢印X方向右側から左側)に傾斜して構成すると、突起部33が収容部43から外れやすくなり位置決めができなくなる。一方、突出部33の端面33a,33b及び収容部43の端面43a,43bを後端側から先端側(矢印X方向左側から右側)に傾斜して構成すると、ベース部材21にプレート部材21を重ねる場合に突起部33が邪魔となり填め辛くなってしまう。しかし、本実施例によれば、突起部33の端面33a,33bは、上面部25から略垂直方向に形成されると共に、収容部43の端面43a,43bは、上面23から略垂直方向に形成されているので、突出部33が収容部43から外れることを防止できるし、突出部33を収容部43に填め辛くなることを防止することができる。
【0062】
なお、本実施例では、突起部33の端面33a,33bと、収容部43の端面43a,43bとを、それぞれ平面状に形成するものとしたが、突起部33を半円状の突起とすると共に、収容部を半円状の溝に形成しても良い。この構成の場合には、突起部33の先端側および外側の曲面と、収容部43の先端側および外側の曲面とが、それぞれ当接する位置に、突起部33と収容部43を形成する。また、突起部33の先端側および外側の端部と、収容部43の先端側および外側の端部の形状は、突起部33の端部と収容部43の端部とが当接する形状であれば、平面および曲面だけでなく、尖形部を有する形状であっても良いし、その形状は特に限定されない。
【0063】
さらに、突起部33は、端面33a,33bのいずれか一方を有し、収容部43は、いずれか一方の端面33a,33bと当接する端面43a,43bを有する構成としても良い。また、突起部33及び収容部43は、それぞれ一対設けるものとしたが、1の突起部33と1の収容部43で構成しても良いし、一対の突起部33と1の収容部43で構成するものとしても良い。
【0064】
また、第2方向において、突起部33の端面33aからプレート部材22の外縁までの距離と、収容部43の端面43aからベース部材21の外縁までの距離とを、同じ距離(t2)とし、突起部33の端面33bからプレート部材22の前面部26までの距離と、収容部43の端面43bからベース部材21の前面24までの距離とを、同じ距離(t4)としたが、異なる距離としても良い。即ち、ベース部材21に対してプレート部材22を位置決めできる距離の差であれば、同距離にしなくても良い。本実施例の場合では、突出部33の端面33a,33bからプレート部材22の縁までの距離t2,t4に対して、収容部43の端面43a,43bからベース部材21の縁までの距離t2’,t4’の方が、例えば、0<t2’,t4’<0.1mmの範囲内で短く構成するものとしても良い。
【0065】
次に、図6を参照して、プレート部材22の突出部32及びベース部材21の貫通孔42について説明する。図6は、突出部32及び貫通孔42の構造を示した断面図であり、図6(a)は、図4(a)のVIa−VIa線における白鍵2の断面図であり、図6(b)は、図6(a)の破線VIbで囲んだ部分の拡大断面図であり、図6(c)は、図4(c)の破線VIcで囲んだ部分の拡大断面図であり、図6(d)は、図4(d)の破線VIdで囲んだ部分の拡大断面図である。
【0066】
図6(a)及び図6(b)に示すように、プレート部材22の突出部32は、上面部25の内側の端面(ベース部材21側の端面)から突出した円錐台形状の下段部32aと、その下段部32aに連接され円柱状の中段部32bと、その中段部32bに連接され円錐台形状の上段部32cとで構成されている。また、ベース部材21の貫通孔42は、上面23上に開口部42aが形成されており、その開口42aの第2方向(矢印Y方向)における長さが、突出部32の中段部32bの直径と略同等に形成されている。なお、開口42aの第2方向における長さ、及び中段部32bの直径は、t5である。
【0067】
また、図6(c)に示すように、ベース部材21にプレート部材22が重ねられる位置は、突出部32の上段部32cの表面(傾斜した傾斜面、傾斜部)と、貫通孔42の開口42aとが当接する位置となる。また、貫通孔42の開口42aの第1方向(矢印X方向)における長さは、t6であり、上述した、第2方向の距離t5より長く形成されている。即ち、開口42aは、楕円状の貫通孔となる(図3(c)参照)。
【0068】
また、図6(c)の状態からプレート部材22が略垂直方向下方へ(矢印Z方向下側方向)移動され、ベース部材21に重ね合わせられた状態で超音波溶着が行われると、上述した発生部(図示せず)によってプレート部材22がベース部材21側に押されるので、プレート部材22は、上段部32cの傾斜面が開口部42aを後端側(矢印X方向左側)にスライドしつつ溶着が行われる。さらに、下段部32aの表面も傾斜面を有しているので、超音波溶着が行われると、プレート部材22が後端側に引っ張られる。その結果、プレート部材22の前面部26とベース部材21の前面24との間に隙間が形成されることを防止できるので、外観品質を向上することができる。
【0069】
なお、図6(d)に示すように、ベース部材21とプレート部材22とが溶着されると、突出部32の一部分と、貫通孔42の一部分(特に開口部42a)とが溶融され、溶融部27となり、ベース部材21とプレート部材22とが強固に固着される。また、図6(b)に示したように、貫通孔42の第2方向の長さと中段部32bの直径とが略同等(t5)に形成されているので、プレート部材22は、第2方向における中心位置に誘導されつつ溶着が行われる。よって、プレート部材22を後端側に引っ張るだけでなく、第2方向への位置決めも同時に行うことができる。
【0070】
なお、突出部32は、円錐台形状の下段部32a及び円柱状の中段部32b、円錐台形状の上段部32cとで構成するものとしたが、上面部25の内側の端面から突出する円錐台形状(1段のみ)の突出部とするものとしても良い。また、超音波溶着時にプレート部材22を後端側に引っ張れればよいので、先端側から後端側への傾斜面を有する形状(例えば、断面形状が三角形など)であれば、如何なる形状であっても良い。
【0071】
次に、図7及び図8を参照して、白鍵2の先端側の構造について説明する。図7は、白鍵2の先端側を示した正面図であり、図7(a)は、図4(c)の矢印VIIa視における白鍵2の溶着前の状態を示した図であり、図7(b)は、図4(d)の矢印VIIb視における白鍵2の溶着後の状態を示した図である。図8は、白鍵2の先端側下部の拡大断面図であり、図8(a)は、図4(c)の破線VIIIaで囲まれた部分の拡大断面図であり、図8(b)は、図4(d)の破線VIIIbで囲まれた部分の拡大断面図である。
【0072】
図7(a)に示すように、ベース部材21の下方端部(矢印Z方向下側の端部)には、前面24から前方に突起した支持部44が、第2方向(矢印Y方向)の左右に一対設けられている。図8(a)に示すように、支持部44は、側面視略レ字状に形成されている。一方、プレート部材22の前面部26下方端部には、支持部44に対応した位置に傾斜部34が形成され、その傾斜部34に挟まれた部分が、支持部44の間に嵌挿される嵌挿部35となる。
【0073】
図7(b)に示すように、ベース部材21にプレート部材22を重ね合わせると、傾斜部34と支持部44とが当接し、その支持部44により傾斜部34が支持されると共に、嵌挿部35が支持部44の間に嵌挿される。よって、嵌挿部35は、支持部44の間に嵌挿されるので、プレート部材22の第2方向(矢印Y方向)の位置決めを行うことができる。また、図8(b)に示すように、ベース部材21とプレート部材22との溶着後は、傾斜部34と支持部44とがほぼ当接した状態となるので、押鍵時にプレート部材22の前面部26がばたつくことを防止し、異音の発生を防止することができる。
【0074】
次に、図9を参照して、ベース部材21及びプレート部材22の先端側下部の構成について説明する。図9は、ベース部材21及びプレート部材22の先端側下部の構成を示した図であり、図9(a)は、図4(b)の破線IXaで囲まれた部分の拡大図であり、図9(b)は、プレート部材22の前面部26の先端部分を示した斜視図であり、図9(c)は、ベース部材21の前面23の下部を示した斜視図である。
【0075】
図9(a)に示すように、プレート部材22の嵌挿部35の内側には、凹部36が形成され、ベース部材21の凹部36に対応した位置には、切欠部46が形成されている。図9(b)に示すように、凹部36は、前面部26の下部先端(矢印Z方向上側の先端)から上面部25方向(矢印Z方向下側方向)に向かって、溝の深さが浅くなると共に溝の幅が細くなるように形成されている。一方、図9(c)に示すように、切欠部46は、ベース部材21の前面24の下部先端(矢印Z方向上側の先端)から上面23方向(矢印Z方向下側方向)に向かって略U字状の切欠が形成されている。
【0076】
この凹部36及び切欠部46は、ベース部材21とプレート部材22とが溶音波溶着された後に、切欠部46から凹部36内に接着剤などを簡単に流し込むために設けられている。これは、ベース部材21とプレート部材22とを超音波溶着した際に、ベース部材21の前面24と、プレート部材22の前面部26との間に若干の隙間が形成されると、不良品となってしまうが、切欠部46から凹部36内に接着剤を流し込み前面24と前面部26とを接着することで、製品として扱えるためである。よって、凹部36を設け、更に切欠部46を設けることで、凹部36内に簡単に接着剤を流し込むことができ、簡単な作業により不良品の発生を低減することができる。
【0077】
次に、図10を参照して、プレート部材22の後端側近傍の構造について説明する。図10は、プレート部材22の後端側近傍を示した断面図であり、図4(d)の破線Xで囲まれた部分の拡大断面図である。
【0078】
ここで、射出成形によって成形されるプレート部材22について説明する。プレート部材22は、射出成形によって成形されるので、その外縁にゲートを配置することが必要な場合がある。この場合、このゲートは取り除かないと白鍵2の美観が損なわれたり、超音波溶着時に障害となる可能性があるので、ベース部材21に重ねられる前に取り除かれる。図10では、プレート部材22の後端側の端部(矢印X方向の左側の端部)に、ゲート37を配置した場合について説明する。
【0079】
図10に示すプレート部材22には、その後端側の端部にゲート処理が不十分なゲート残り(ゲート37の部分)が残っている。一方、ベース部材21には、プレート部材22の後端側に対応した位置に所定空間47が形成されている。この所定空間47は、第1方向(矢印X方向)の後端側に位置する第1空間47aと、白鍵2の高さ方向(矢印Z方向)の下方に位置する第2空間47bとで構成されている。
【0080】
第1空間47aは、プレート部材22のゲート残り37を収容するための空間であり、ゲート残り37の形状(矢印X方向の左側の大きさ)が一定でなくても収容できるように大きめな空間に形成されている。
【0081】
射出成形品において外縁にゲートを設けた場合の通常のゲート処理では、手作業による綿密な処理作業を行わない限りゲート残り37の大きさは不均一となる。この空間が設けられていないと超音波溶着時に障害となるのを避けるため、ゲートを綿密に処理する必要が生じる。それを回避するために第1空間47aは、大きめな空間に形成されている。
【0082】
第2空間47bも、プレート部材22のゲート残り37を収容するための空間であるが、第1空間47aが矢印X方向の左側の大きさを吸収するために形成されていることに対し、第2空間47bは、矢印Z方向の下側の大きさが一定でなくても収容できる目的で形成されている。
【0083】
射出成形品において外縁にゲートを設けた場合の通常のゲート処理では、手作業による綿密な処理作業を行わない限りゲート残り37の矢印Z方向に、バリやカエリのような破断突起が容易に発生しうる。この第2空間47bが設けられていないと、これらの破断突起は超音波溶着時に障害になりうる。
【0084】
このように、第1空間47a及び第2空間47bを設けることにより、プレート部材22のこの部位にゲートを設けた場合の綿密なゲート処理作業を省くことが可能となるため、作業効率の向上を図ることができる。
【0085】
以上、説明したように、本発明の鍵盤装置1は、ベース部材21とプレート部材22とを超音波溶着によって溶着するので、従来のように、ベース部材21とプレート部材22とを接着剤によって接着する場合と比較して、互いを強固に固着することができる。よって、演奏者によって、強く押鍵されたり、長期間が経過したとしても、ベース部材21とプレート部材22とが剥がれてしまうことを抑制することができる。
【0086】
また、プレート部材22には、突出部32及び突起部33、嵌挿部35が形成され、ベース部材21には、貫通孔42及び収容部43、一対の支持部44が形成され、それぞれが、プレート部材22を位置決めすることができるので、ベース部材21に対してプレート部材22が正規とは異なった位置に重ねられ溶着されることを防止することができる。よって、製造された白鍵2が不良品となることを抑制できるので、歩留まりを向上することができる。
【0087】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0088】
例えば、上記実施例では、プレート部材22の突出部31a〜31fを略直線状の凸部で構成するものとしたが、曲線を有する凸部で構成しても良いし、斑点状に凸部を複数設ける構成としても良し、略直線状および、曲線、点状の凸部を組み合わせて構成しても良い。
【0089】
また、上記実施例では、白鍵2の特徴的構成を説明したが、その特徴的構成を黒鍵3に適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施例における鍵盤装置の構成を示す図であり、(a)は、鍵盤装置の平面図であり、(b)は、鍵盤装置の側面図である。
【図2】白鍵の斜視図であり、(a)が溶着前の白鍵を示したものであり、(b)が溶着後の白鍵を示したものである。
【図3】白鍵の構成を説明するための図であり、(a)は、ベース部材及びプレート部材の溶着前の側面図であり、(b)は、図3(a)の矢印IIIb視におけるプレート部材の下面図であり、(c)は、図3(a)の矢印IIIc視におけるベース部材の上面図であり、(d)は、図3(a)のIIId−IIId線における溶着前の白鍵の断面図である。
【図4】白鍵の外観および断面を示した図であり、(a)は、白鍵の上面図であり、(b)は、白鍵の下面図であり、(c)は、図4(a)のIVc−IVc線における白鍵の溶着前の断面図であり、(d)は、図4(a)のIVd−IVd線における白鍵の溶着後の断面図である。
【図5】突起部及び収容部の構造を示した断面図であり、(a)は、図4(c)のVa−Va線における白鍵の先端部分の断面図であり、(b)は、図4(c)の破線Vbで囲んだ部分の拡大断面図であり、(c)は、図4(d)の破線Vcで囲んだ部分の拡大断面図である。
【図6】突出部及び貫通孔の構造を示した断面図であり、(a)は、図4(a)のVIa−VIa線における白鍵の断面図であり、(b)は、図6(a)の破線VIbで囲んだ部分の拡大断面図であり、(c)は、図4(c)の破線VIcで囲んだ部分の拡大断面図であり、(d)は、図4(d)の破線VIdで囲んだ部分の拡大断面図である。
【図7】白鍵の先端側を示した正面図であり、(a)は、図4(c)の矢印VIIa視における白鍵の溶着前の状態を示した図であり、(b)は、図4(d)の矢印VIIb視における白鍵の溶着後の状態を示した図である。
【図8】白鍵の先端側下部の拡大断面図であり、(a)は、図4(c)の破線VIIIaで囲まれた部分の拡大断面図であり、(b)は、図4(d)の破線VIIIbで囲まれた部分の拡大断面図である。
【図9】ベース部材及びプレート部材の先端側下部の構成を示した図であり、(a)は、図4(b)の破線IXaで囲まれた部分の拡大図であり、(b)は、プレート部材の前面部の先端部分を示した斜視図であり、(c)は、ベース部材の前面の下部を示した斜視図である。
【図10】プレート部材の後端側近傍を示した断面図であり、図4(d)の破線Xで囲まれた部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0091】
1 鍵盤装置
2 白鍵(鍵)
21 ベース部材
22 プレート部材
23 上面(ベース部材の上面)
24 前面(ベース部材の前面)
25 上面部
26 前面部
31a〜31e 突出部(溶着用突出部)
32 突出部(傾斜突出部、溶着用突出部)
32a 下段部(傾斜突出部の一部)
32b 中段部(傾斜突出部の一部)
32c 上段部(傾斜突出部の一部、傾斜部)
33 突起部
33a 端面(突出部の第2方向外側の端部)
33b 端面(突出部の先端側端部)
35 嵌挿部
36 凹部
41a〜41e 溝部
42a 開口部
43 収容部
43a 端面(突出部の第2方向外側の端部と当接する当接部)
43b 端面(突出部の先端側端部と当接する当接部)
44 支持部
46 切欠部
47 所定空間
X 第1方向(後端側と先端側とを結ぶ第1方向)
Y 第2方向(第1方向に直交する第2方向)
t2 突出部の端面33aからプレート部材の外縁までの距離、収容部の端面43aからベース部材の外縁までの距離
t4 突出部の端面33bから前面部の内側端面までの距離、収容部の端面43bからベース部材の前面の外側端面までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端側が支持されて揺動可能に配置されるベース部材と、そのベース部材の表面を覆うプレート部材とを有する鍵を複数備える鍵盤装置において、
前記鍵は、前記ベース部材とプレート部材とを重ね合わせた状態で超音波溶着することによって形成されることを特徴とする鍵盤装置。
【請求項2】
前記ベース部材は、木目調に着色された樹脂材料により形成されると共に、前記プレート部材は、白色に着色された樹脂材料により形成されることを特徴とする請求項1記載の鍵盤装置。
【請求項3】
前記ベース部材およびプレート部材は、主成分が同じ樹脂材料で構成されると共に、いずれか一方に異なる成分が添加されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鍵盤装置。
【請求項4】
前記プレート部材は、前記ベース部材の上面に前記超音波溶着によって溶着される上面部と、その上面部に連接され前記ベース部材の先端側の前面を覆う前面部とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項5】
前記プレート部材は、前記上面部から前記ベース部材側に突出すると共に、前記超音波溶着によって溶融される溶着用突出部を備え、
その溶着用突出部は、前記上面部の先端から前記後端側への所定範囲の面積に対して占有する比率が、その所定範囲以外の面積を占有する比率より高くなっていることを特徴とする請求項4記載の鍵盤装置。
【請求項6】
前記ベース部材には、前記プレート部材が重ね合わせられた状態において、前記溶着用突出部に対応した位置に凹状の溝部が形成されていることを特徴とする請求項5記載の鍵盤装置。
【請求項7】
前記溶着用突出部の1つは、前記上面部の後端側に設けられ、前記先端側から後端側に傾斜した傾斜部を有する傾斜突出部であり、
前記ベース部材は、前記プレート部材が重ね合わせられた状態で、前記傾斜突出部の傾斜部と当接する開口部を備えていることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項8】
前記プレート部材は、前記上面部から前記ベース部材側に突起した突起部を備え、
前記ベース部材は、前記突起部の先端側端部と当接する当接部と、その突起部の突起方向先端を少なくとも収容する空間とを有する収容部を備え、
前記突起部の先端側端部と前記前面部との間の距離と、前記当接部と前記ベース部材の先端側前面との間の距離とが、ほぼ同距離に構成されていることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項9】
前記プレート部材は、前記上面部から前記ベース部材側に突起した突起部を備え、
その突起部は、前記先端側と後端側とを結ぶ第1方向に直交する第2方向に一対設けられており、
前記ベース部材は、前記一対の突起部の前記第2方向外側端部とそれぞれ当接する当接部と、その一対の突起部の突起方向先端を少なくとも収容する空間とを有する収容部を備え、
前記第2方向において、前記一対の突起部の外側端部と前記上面部の外縁との間の距離と、前記当接部と前記ベース部材の外縁との距離とが、ほぼ同距離に構成されていることを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項10】
前記ベース部材は、前記プレート部材が重ね合わせられた状態で、そのプレート部材の前面部下部を支持する複数の支持部を備え、
前記プレート部材は、その前面部下部に設けられ、前記複数の支持部間に嵌挿される嵌挿部を備えていることを特徴とする請求項4から9のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項11】
前記プレート部材の前面部には、前記ベース部材側の側面に、その前面部下部先端から前記上面部側に延びた凹部が形成されており、
前記ベース部材には、前面下部先端で且つ前記凹部に対応した位置に切欠部が形成されていることを特徴とする請求項4から10のいずれかに記載の鍵盤装置。
【請求項12】
前記ベース部材には、前記プレート部材が重ね合わせられた状態で、そのプレート部材の後端側端部との間に所定空間が形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の鍵盤装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−83507(P2008−83507A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264600(P2006−264600)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000116068)ローランド株式会社 (175)
【Fターム(参考)】