説明

鎮痛薬

【課題】痛覚消失の急速な開始および延長された痛覚消失を達成するために、鼻腔内送達される鎮痛薬組成物を提供し、有利な薬物動態プロファイルを達成する。
【解決手段】治療される患者の鼻腔内への導入の際に、鎮痛薬が血流へ送達され、30分以内に0.2ng/ml以上の治療的血漿濃度Ctherを生じ、これが少なくとも2時間のTmaint期間維持されうるように、鎮痛薬および送達物質を薬学的組成物中に組合わせ、オピオイド鎮痛薬または非ステロイド系抗炎症薬の鎮痛薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、鎮痛薬組成物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多種多様な化合物が、鎮痛薬として作用しうる。鎮痛薬のふたつの重要なクラスは、オピオイド鎮痛薬および非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。
【0003】
オピオイド鎮痛薬は、モルヒネ様特性を示す。オピオイドは、それらの受容体特異性を基に亜群に分類することができる。μ-アゴニストオピオイドは、極めて強い痛覚消失を提供する。これらのオピオイドは、長期作用性(例えば、メタドン)または短期作用性(例えば、レミフェンタニル)でありうる。混合されたアゴニスト/アンタゴニストオピオイド(例えば、ブトルファノールおよびブプレノルフィン)は、部分的アゴニストであり(前者はμおよびκ受容体で、後者はμ受容体で)、良質の痛覚消失を生じることができる。これらは、効力の高いμアゴニストよりも呼吸抑制および便秘症を起こしにくい。
【0004】
クラスとしてのオピオイド類は、多くの望ましくない副作用に関連しており、これは呼吸抑制、悪心、嘔吐、眩暈、意識混濁、不快気分、掻痒、便秘、胆管圧上昇、尿閉、および低血圧を含む。耐性の出現ならびに化学物質の依存および乱用のリスクは、更に問題点である。しかしブプレノルフィンは、呼吸抑制に低い最大作用を示し、また作用が最初に比較的大用量で増大して上限に到達し、その後用量を更に増大させるにつれて減少するという釣り鐘型の用量反応曲線を示すという点において独特であり、呼吸抑制が最終的には死に至るモルヒネよりも安全な薬物である。ブプレノルフィンは、完全型μアゴニストよりも、ヒトにおいて便秘のような他の副作用の発生率がより低く、乱用の可能性がより低いことが示されている。
【0005】
NSAIDは、抗炎症作用を有し、プロスタグランジン(PG)および他の炎症メディエーターの放出に関連した疼痛に有効である。これらは、アラキドン酸をエイコサノイドに転換するシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用をブロックすることにより作用する。エイコサノイドは、プロスタノイド、プロスタサイクリン(PGI2)、PGE2、およびトロンボキサンを含む。少なくとも2種のCOX酵素が存在する:恒常性プロスタグランジンおよびトロンボキサンメディエーターの産生に寄与する、構成的に発現されるCOX-1、ならびに感染および炎症などの刺激に反応して大量に産生される、誘導性COX-2。
【0006】
プロスタグランジンおよびトロンボキサンは、多くの恒常性および保護的機構を媒介するので、これらの機構の破壊の結果として、毒性副作用が、NSAIDの使用から生じることが多い。これらは、凝固障害(出血時間の延長につながる)および胃過敏(潰瘍形成を含む)を含む。NSAIDは、塩および水の停留も引き起こし、その結果高血圧を増悪することがある。これらはまた、妊娠時高用量では催奇性でありうる。これらは、消化性潰瘍、胃炎、限局性腸炎、潰瘍性大腸炎、憩室炎、胃腸病巣の再発の既往、胃腸出血、凝固障害(例えば、貧血、低プロトロンビン血症および血友病)、腎疾患の患者、ならびに手術を受ける患者または抗凝固剤を服用している患者には禁忌である。
【0007】
NSAIDは、腎臓に対する多くの有害作用に関連しているが、ほとんどは稀である。腎臓は、PGI2、PGE2、および少量のPGFを生成する。これらは、腎血流、糸球体濾過速度、レニン放出、尿の濃縮機構、ならびにナトリウムおよびカリウムの排泄の局所的変調に関連している。NSAIDの望ましくない作用は、プロスタグランジン生成の減少の結果であり、これを以下にまとめた:
1.急性可逆性/血管運動性腎不全
2.水、ナトリウム、およびカリウムの腎排泄の妨害
3.抗高血圧療法および利尿療法の妨害
4.腎不全を伴うまたは伴わない急性間質性腎炎
5.間質性腎炎および腎不全を伴うまたは伴わないネフローゼ症候群
6.慢性腎損傷(「鎮痛薬ネフロパシー」)。
【0008】
COX-2特異的なNSAIDは、COX-1を介した胃腸保護に影響を及ぼすことなく炎症および疼痛の治療を可能にすると期待されるので、このような薬物の開発に大きな関心が注がれている。しかし、COX-2インヒビターは、非選択的NSAIDの腎および心作用を依然示している。
【0009】
理想的には、疼痛緩和は、鎮痛薬投与直後に起こるべきである。緩和は、少なくとも正常な邪魔されない睡眠パターンを可能にし、複雑な投薬計画を避けるのに十分な長さである延長された期間、維持されるべきである。
【0010】
しかし実際には、現在の鎮痛薬投与技術により得られる疼痛緩和の動力学は、これらの理想には合致していない。疼痛緩和の迅速な開始は、静脈内注射により達成される一方で、この投与様式は、概して患者により行うことができず、そのため比較的経費がかかり不便である。更に、循環する鎮痛薬は血漿から除かれるので、静脈内注射は一般に、疼痛緩和の迅速な終結に関連している。痛覚消失の延長には、複数回注射が必要であり、これは不便で経費がかかる。静脈内注射は通常、比較的高いCmax値にも関連しており、これは鎮痛薬に関連する副作用の引き金となりうる(またはこれを増幅しうる)。
【0011】
痛覚消失の迅速な開始に作用する代替技術(筋肉内注射および吸入を含む)が開発されているが、これらは全て、鎮痛薬投与量のバルクの血液システムへの迅速な送達に頼っており、静脈内注射に関連するものと同じ、迅速な終結の問題がつきまとう。
【0012】
患者が管理する迅速投与ポンプ(quick-dose pump)により、ポンプ注入された鎮痛薬を血液供給へ提供することにより、そのような問題を未然に防ぐ試みがなされている。この装置は、長期間効果的に疼痛を管理する可能性を有するが、高価であり、携帯ができず、大規模なモニタリングを必要とし、正常な睡眠パターンを妨害する可能性がある(疼痛が患者に再投与を促す頻度に応じて)。
【0013】
疼痛緩和の迅速な終結の問題点は、徐放技術の開発を促進してきた。このような技術は、経皮貼付剤および舌下錠を含む。しかし、経皮貼付剤は、皮膚刺激を引き起こす可能性があり、薬物用量を管理することが困難である。舌下錠は、味が不快であり、比較的長期間口中に保持されなければならず(30分間またはそれよりも長いことが多い)、このことは服薬遵守の問題点につながる。
【0014】
しかし、このような持続性の痛覚消失技術システムに関連する主要な問題点は、疼痛緩和の開始が遅く、少なくとも1時間のずれ(その間に鎮痛薬の血漿レベルは治療的濃度閾値へとだんだん上昇していく)に関連しているということが原因である。多くの適用(特に、疼痛が強力で長期化された症例)において、そのような疼痛緩和の動力学は、受け入れ難い。
【0015】
ブプレノルフィンは、これまで、静脈内、筋肉内、および舌下経路でヒト対象に投与されてきた。鼻腔内投与に関する報告は限られている。Eriksenら、J. Pharm. Pharmacol.、41:803-805(1989)は、鼻腔スプレーのヒト志願者への投与を報告している。このスプレーは、5%デキストロースに溶解された2mg/ml塩酸ブプレノルフィンからなり、この溶液のpHはpH5に調節されている。
【0016】
国際公開公報第90/09870号(特許文献1)は、薬理学的活性化合物、およびDEAE-デキストランまたはキトサンのようなポリカチオン性物質を含有する、粘膜に投与するための組成物を開示している。国際公開公報第98/47535号(特許文献2)は、粘膜表面に投与するための単一成分液体薬学的組成物を開示している。この組成物は、治療的物質、エステル化度が低いペクチン、および塗布部位でゲル化するかもしくはゲル化するようにすることができる水性担体を含有する。国際公開公報第90/09780号(特許文献1)も国際公開公報第98/47535号(特許文献2)も、ブプレノルフィンについては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開公報第90/09870号
【特許文献2】国際公開公報第98/47535号
【発明の概要】
【0018】
鼻腔投与のために改善された鎮痛薬製剤を、今回考案した。鼻粘膜経由での血漿への鎮痛薬の迅速な取込みが達成され、痛覚消失の急速な開始をもたらすことができる。更に、この鎮痛薬の鼻腔内の滞留時間を増大し、延長された痛覚消失をもたらすことができる。その結果この鎮痛薬の全身循環への吸収の改善されたプロファイルを実現することができる。
【0019】
従って本発明は、疼痛治療のための鼻腔内投与用医薬品製造のための鎮痛薬および送達物質の使用を提供し、これにより、治療される患者の鼻腔内への導入時に、この鎮痛薬が血流に送達され、30分以内に0.2ng/mlまたはそれよりも大きい治療的血漿濃度Ctherを生じ、これは少なくとも2時間のTmaint期間維持される。
【0020】
従って本発明は、鎮痛薬の治療的血漿濃度、すなわち疼痛緩和または疼痛改善を生じる濃度を、30分以内に到達し最大24時間維持することを可能にする。用語Ctherは、治療的血漿濃度を意味する。用語Tmaintは、Ctherが維持される期間を意味する。同じく以下も提供される:
−痛覚消失を誘導するために使用する鼻腔内送達器具を製造するための、鎮痛薬および送達物質を含有する薬学的組成物の使用であり、これにより、治療される患者の鼻腔内への導入時に、この鎮痛薬が、血流に送達され、30分以内に0.2ng/mlまたはそれよりも大きい治療的血漿濃度Ctherを生じ、これは少なくとも2時間のTmaint期間維持される、使用;
−鎮痛薬および送達物質を含有する薬学的組成物であり、これにより、治療される患者の鼻腔内への導入時に、この鎮痛薬が、血流に送達され、30分以内に0.2ng/mlまたはそれよりも大きい治療的血漿濃度Ctherを生じ、これは少なくとも2時間のTmaint期間維持される、組成物;ならびに
−それを必要とする患者に痛覚消失を誘導する方法であり、この方法は、鎮痛薬および送達物質を含有する薬学的組成物を該患者に鼻腔内投与することを含み、これにより、治療される該患者の鼻腔内への導入時に、鎮痛薬が、血流に送達され、30分以内に0.2ng/mlまたはそれよりも大きい治療的血漿濃度Ctherを生じ、これは少なくとも2時間のTmaint期間維持される、方法。
【0021】
本発明は更に、以下を提供する:
(1)(a)ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、
(b)キトサンを0.1〜20mg/ml、および
(c)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を0.1〜15mg/ml含有し;その溶液がpH3〜4.8である、鼻腔内投与に適した水溶液;
(2)(a)ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、
(b)キトサンを0.1〜20mg/ml、および
(c)一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aは2〜130であり、bは15〜67である)のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを50〜200mg/ml含有し;その溶液がpH3〜4.8である、鼻腔内投与に適した水溶液;ならびに
(3)ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、およびエステル化度50%未満のペクチンを5〜40mg/ml含有し;その溶液は、pHが3〜4.2であり、実質的に二価金属イオンを含まず、および鼻粘膜上でゲル化する、鼻腔内投与に適した水溶液。
【0022】
本発明の好ましい溶液は、pH3.5〜4.0を有し、実質的に二価金属イオンを含まず、ならびに:
(a)ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを、ブプレノルフィンとして計算して1〜6mg/ml、
(b)エステル化度10〜35%のペクチンを10〜40mg/ml、および
(c)張性調節剤としてデキストロースを、含有する。
【0023】
本発明は更に下記も提供する:
−溶液(1)の調製方法であって、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル、キトサン、およびHPMCを、水中に溶解し、ブプレノルフィンまたはその該塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、キトサンを0.1〜20mg/ml、およびHPMCを0.1〜15mg/ml含有する溶液を提供する工程;ならびに、所望に応じて溶液のpHを3〜4.8の値に調節する工程を含む方法;
−溶液(2)の調製方法であって、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル、キトサン、および一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aは2〜130であり、bは15〜67である)のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを、水中に溶解し、ブプレノルフィンまたはその該塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、キトサンを0.1〜20mg/ml、およびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを50〜200mg/ml含有する溶液を提供する工程;ならびに、所望に応じて溶液のpHを3〜4.8の値に調節する工程を含む方法;
−溶液(3)の調製方法であって、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを、水に溶解する工程;得られた溶液を、エステル化度50%未満を有するペクチンの水溶液と混合し、その混合液が、ブプレノルフィンまたはその該塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、およびペクチンを5〜40mg/ml含有する工程;ならびに、望ましいならば、溶液のpHを3〜4.2の値に調節する工程を含む、方法;
−本発明の溶液が装填された鼻腔送達器具;
−痛覚消失を誘導する際に使用する鼻腔送達器具の製造のための本発明の溶液の使用;
−それが必要な患者において痛覚消失を誘導する方法であって、本発明の溶液を患者へ鼻腔内投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のプレノルフィン製剤(製剤A)を、ブプレノルフィンとして計算して800μgの塩酸ブプレノルフィン投与量で健常志願者に鼻腔内投与した場合に得られた薬物動態プロファイルを示している。製剤A:塩酸ブプレノルフィン-ペクチン溶液。比較のため、塩酸ブプレノルフィンの市販溶液(Temgesic(商標);製剤D)を同一試験において、ブプレノルフィンとして計算して400μgの塩酸ブプレノルフィン投与量で健常志願者に静脈内投与した場合に得られた薬物動態プロファイルも示されている。
【図2】本発明のプレノルフィン製剤(製剤B)を、ブプレノルフィンとして計算して800μgの塩酸ブプレノルフィン投与量で健常志願者に鼻腔内投与した場合に得られた薬物動態プロファイルを示している。製剤B:塩酸ブプレノルフィン-キトサン/ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)溶液。比較のため、塩酸ブプレノルフィンの市販溶液(Temgesic(商標);製剤D)を同一試験において、ブプレノルフィンとして計算して400μgの塩酸ブプレノルフィン投与量で健常志願者に静脈内投与した場合に得られた薬物動態プロファイルも示されている。
【図3】本発明のプレノルフィン製剤(製剤C)を、ブプレノルフィンとして計算して800μgの塩酸ブプレノルフィン投与量で健常志願者に鼻腔内投与した場合に得られた薬物動態プロファイルを示している。製剤C:塩酸ブプレノルフィン-キトサン/ポロキサマー188溶液。比較のため、塩酸ブプレノルフィンの市販溶液(Temgesic(商標);製剤D)を同一試験において、ブプレノルフィンとして計算して400μgの塩酸ブプレノルフィン投与量で健常志願者に静脈内投与した場合に得られた薬物動態プロファイルも示されている。
【図4】製剤Aの投与量400μgの薬物動態を示す。このプロファイルは、製剤Aの投与量800μgのデータから計算した。比較のために製剤Dの400μgの投与量の薬物動態プロファイルも示されている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、 痛覚消失の急速な開始および延長された痛覚消失を達成するために、鼻腔内送達される鎮痛薬組成物に関する。従って、有利な薬物動態プロファイルを、達成することができる。鎮痛薬は、治療される患者の鼻腔内への導入時に、鎮痛薬が、血流に送達され、30分以内に0.2ng/mlまたはそれよりも大きい治療的血漿濃度Ctherを生じ、これは少なくとも2時間のTmaint期間維持されるように選択された、送達物質と組合わされる。この作用は、鎮痛薬の単回投与、またはその後の複数投与により達成することができる。
【0026】
本発明の組成物は、0.2ng/mlまたはそれよりも大きい、例えば0.4ng/mlまたはそれよりも大きいCtherに、鼻腔内導入後30分以内、例えば0.5〜20分、例えば2〜15分または5〜10分で到達するように、鎮痛薬が送達されるように適合される。用語Ctherは、治療的血漿濃度(またはその範囲)を定義する。従ってこの用語は本明細書において、疼痛緩和または疼痛改善を生じる鎮痛薬の血漿濃度(または血漿濃度の範囲)を定義している。
【0027】
鎮痛薬に応じて、Ctherは、最大100ng/ml、例えば0.4ng/ml〜80mg/mlでありうる。強力な鎮痛薬に関して、Ctherは、0.4ng/ml〜20ng/mlでありうる。より効力が低い鎮痛薬に関して、Ctherは、20〜100ng/ml、例えば50〜80ng/mlでありうる。これらのCther値は、特にオピオイド鎮痛薬にあてはまる。強力なオピオイド鎮痛薬であるブプレノルフィンについて、Ctherは、0.4〜5ng/ml、例えば0.5〜4ng/mlまたは0.8〜2ng/mlでありうる。
【0028】
Tmaintは、典型的には少なくとも2時間である。用語Tmaintは、鎮痛薬投与後Cther維持の期間を定義する。例えばTmaintは、最大24時間、最大12時間、または最大6時間であり、例として2〜4時間または2〜3時間でありうる。従って本発明により、Ctherの少なくとも0.4ng/mlが2〜15分以内に達成され、2〜4時間のTmaint期間維持されうる。
【0029】
既に言及したように、痛覚消失の迅速な開始および延長された痛覚消失を実現することができる。達成することができる鎮痛薬送達プロファイルは、静脈内投与に関連した比較的高いCmax値を避けることができ、そのため改善された治療指数につながる。投与後到達される鎮痛薬のピーク血漿濃度は、Cmaxと定義される。本発明は、鎮痛薬に関連した副作用の一部または全てを軽減または排除することができる。
【0030】
Cmaxは、鎮痛薬によって左右される。Cmaxは、典型的には1〜500ng/mlまたはそれよりも高く、例えば1.5〜400ng/ml、または1.5〜100ng/mlである。強力な鎮痛薬に関して、Cmaxは、1.5〜50ng/mlでありうる。より効力の弱い鎮痛薬に関して、Cmaxは、50〜500ng/ml、例えば50〜200ng/mlまたは50〜100ng/mlでありうる。これらのCmax値は、特にオピオイド鎮痛薬にあてはまる。ブプレノルフィンについて、Cmaxは、典型的には1〜5ng/ml、例えば1〜4ng/mlまたは1.5〜3ng/mlである。特により低い投与量のためには、Cmaxは1〜2ng/mlでありうる。Cmaxに到達する時間(Tmax)は、典型的には投与後10〜40分であり、例えば10〜30分または15〜25分であり、例えば15〜20分である。
【0031】
好ましい態様において、この送達物質は、Cmax=Coptであるように鎮痛薬成分を送達するために適合させる。用語Coptは、副作用の用量-反応曲線に対して左側に配置されるような痛覚消失の用量-反応曲線を示す鎮痛薬に関して使用される。この用語は、許容できる疼痛緩和または疼痛改善を生じるが、副作用を生じないかもしくはより高い血漿濃度に関連したものよりも少ない副作用を生じるような、治療的血漿濃度またはその範囲を定義する。
【0032】
鎮痛薬は、オピオイド鎮痛薬でありうる。これは混合されたアゴニスト/アンタゴニスト、例えば混合されたμ-アゴニスト/アンタゴニスト(部分型アゴニストとしても知られる)または混合されたμ-およびκ-アゴニスト/アンタゴニストでありうる。これはμ-アゴニストでありうる。好ましいオピオイド鎮痛薬は、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルである。ブプレノルフィン(ケミカルアブストラクツ登録番号(CAS RN)52485-79-7;[5α,7α(S)-17-(シクロプロピルメチル)-α-(1,1-ジメチルエチル)-4,5-エポキシ-18,19-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-6-メトキシ-α-メチル-6,14-エテノモルフィナン-7-メタノール)は、下記式を有する:

【0033】
ブプレノルフィン塩は、酸付加塩または塩基との塩であってよい。適当な酸付加塩は、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、ステアリン酸塩、酒石酸塩、および乳酸塩を含む。塩酸塩(CAS RN53152-21-9)が好ましい。
【0034】
他の適当なオピオイド鎮痛薬は、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、ベンジトラミド、ブトルファノール、クロニタゼン、シクラゾシン、デソモルフィン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアンプロミド(diampromide)、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン(dimethylthiambutene)、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルフィン、エトニタゼンフェンタニル、ヘロイン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボロルファン(levallorphan)、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル(lofentanil)、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルフィン、ミロフィン(myrophine)、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ノルモルフィン、ノルピパノン、オピウム、オキシコドン、オキシモルホン、パパベレタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロファドール(profadol)、プロフェプタジン、プロメドール(promedol)、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、およびトラマドールを含む。前述のいずれかのエステル、塩、および混合物も含む。
【0035】
本発明において使用するための塩は、薬学的に許容できる酸付加塩を含む、任意の生理的に許容できる塩でありうる。例は、塩酸塩(例えば、ナルブフィン、プロファドール、ブプレノルフィン、モルフィン、ペンタゾシン、ナロキソン、およびナロルフィンの塩酸塩)に加え、レボルファノール酒石酸塩、ナロルフィン臭化水素酸塩、レボロルファン酒石酸塩、モルフィン硫酸塩、ブトルファノール酒石酸塩、ペンタゾシン乳酸塩、およびフェナゾシン臭化水素酸塩を含む。
【0036】
鎮痛薬は、NSAID、三環系抗欝薬(例えば、アミトリプチリン)、抗痙攣薬(例えば、ガバペンチン)、または抗片頭痛化合物(例えば、スマトリプタンまたはナラトリプタン)などの、非オピオイド鎮痛薬でありうる。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼ(COX)であるCOX-1またはCOX-2のインヒビターでありうる。NSAIDの具体例は、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、エトドラク、ジフルシナル(diflusinal)、メロキシカム、アセクロフェナク、フェノプロフェン、ナプロキセン、チアプロフェン酸、トルメチン、セレコキシブ、およびロフェコキシブ、ならびにそれらの生理的に許容できる塩およびエステルを含む。適当な塩は、カリウムまたはナトリウム塩などのアルカリ付加塩である。
【0037】
好ましいNSAIDは、ジクロフェナク(CAS RN 15307-86-5;2-[(2,6-ジクロロフェニル)アミノ]ベンゼン酢酸)またはその生理的に許容できる塩またはエステルである。ジクロフェナクは、下記式を有する:

【0038】
ジクロフェナクは様々な形で入手できる。ジクロフェナクナトリウム(CAS RN15307-79-60;2-[(2,6-ジクロロフェニル)アミノ]ベンゼン酢酸ナトリウム塩)は、下記商標で販売されている:Allorvan、Benfofen、Dealgic、Deflamat、Delphinac、Diclomax、Diclometin、Dichlophlogont、Diclo-Puren、Dicloreum、Diclo-Spondyril、Dolobasan、Duravolten、Ecofenac、Effekton、Lexobene、Motifene、Neriodin、Novapirina、Primofenac、Prophenatin、Rewodina、Rhumalgan、Trabona、Tsudohmin、Valetan、Voldal、Voltaren、およびXenid。ジクロフェナクカリウム(CAS RN15307-81-0;2-[(2,6-ジクロロフェニル)アミノ]ベンゼン酢酸カリウム塩)も、Cataflam(商標)として知られている。
【0039】
別の好ましいNSAIDは、エトドラク(CAS RN 41340-25-4;1,8-ジエチル-1,3,4,9-テトラヒドロピラノ[3,4-b]インドール-1-酢酸)またはその生理的に許容できる塩もしくはエステルである。エトドラクは、商標Etogesic、Lodine、Tedolan、およびUltradolで販売されている。エトドラクは下記式を有する:


【0040】
更に好ましいNSAIDは、ピロキシカムおよびメロキシカム、ならびにそれらの生理的に許容できる塩およびエステルである。ピロキシカム(CAS RN 36322-90-4;4-ヒドロキシ-2-メチル-N-2-ピリジニル-2H-1,2-ベンゾチアジン-3-カルボキシアミド-1,1-ジオキシド)は、商標Feldine、Sinartrol、Zelis、Zen、Brexin、Cicladol、またはCycladolで販売されており、下記式を有する:


【0041】
メロキシカム(CAS RN 71125-38-7;4-ヒドロキシ-2-メチル-N-(5-メチル-2-チアゾリル)-2H-1,2-ベンゾチアジン-3-カルボキシアミド1,1-ジオキシド)は、下記式を有する:


【0042】
鎮痛薬は、送達物質と組合わせた鼻腔投与に適した製剤中に提供される。この製剤は、典型的には液体製剤、特に水溶液である。あるいは、この製剤は、散剤またはミクロスフェアの形であることができる。
【0043】
製剤が液体製剤である場合、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルの濃度は、0.1〜10mg/ml、例えば0.5〜8mg/mlである。好ましい濃度は、ブプレノルフィンとして計算して1〜6mg/ml、例えば1〜4mg/mlである。適当な製剤は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して1mg/mlまたは4mg/mlの量含有することができる。
【0044】
送達物質は、迅速な開始および延長された痛覚消失が得られるように選択される。送達物質は、鎮痛薬を血流へ送達するように作用する。従って送達物質は、鎮痛薬吸収修飾剤として作用し、この機能の必要要件に合致するならば、多種多様な送達物質のいずれをも使用することができる。
【0045】
送達物質は、吸収促進物質を含むことができる。このような物質は、鎮痛薬成分の血流への取込みを促進する。これらは、様々な異なる機構を介して作用することができる。特に好ましいのは、粘膜接着剤である。このような接着剤は、バルク鎮痛薬組成物と鼻粘膜の間の密な関係を維持し、そして鎮痛薬成分の吸収を増強し、Tmaintを延長する。これらは鎮痛薬のCmaxを低下するために使用することもでき、このことは、副作用の最小化または排除が望ましいような適用において重要であると考えられる。
【0046】
適当な吸収促進物質は、カチオン性ポリマー(特にキトサン)、界面活性剤、脂肪酸、キレート剤、粘液溶解剤、シクロデキストリン、ジエチルアミノエチル-デキストラン(DEAE-デキストラン;デキストランのポリカチオン性誘導体)、またはそれらの組合せを含む。特に好ましいのは、エステル化度50%未満、特に10〜35%を有するペクチン、およびキトサンである。
【0047】
本発明の組成物は、送達物質がペクチンである場合には、水溶液の形をとる。ペクチンは、ゲル化剤として作用する。本発明のペクチン含有組成物は、二価の金属イオンの外部給源を必要とせずに、送達後鼻腔の粘膜表面でゲル化する。従ってペクチンと共に処方される鎮痛薬は、鼻腔上皮表面により長く維持される。得られる鎮痛薬の血流への徐放は、延長された痛覚消失が達成されることを可能にする。結果的に改善された鎮痛薬の送達を得ることができる。鎮痛薬の迅速な取込みも生じ、これは痛覚消失の急速な開始につながる。
【0048】
本発明において使用されるペクチンは、50%未満のエステル化度を有する。ペクチンは、全ての植物組織の細胞壁に存在する多糖物質である。市販のペクチンは、一般に柑橘類果実の外皮の内側部分の希酸抽出物から、またはリンゴ搾りかすから得られる。ペクチンは、部分的にメトキシル化されたポリガラクツロン酸からなる。メチルエステル型のガラクツロン酸部分の割合は、エステル化度(DE)を示す。用語DEは、当業者によく理解されており、エステル化されたカルボキシル基の総数の割合(%)として示す(すなわち、5個の酸基の中の4個がエステル化されている場合、これは、エステル化度80%である)か、またはペクチンのメトキシル含量として示すことができる。本明細書において使用されるDEは、エステル化されている、カルボキシル基の全体の割合(%)を意味する。ペクチンは、低いエステル化度(低いメトキシ化)または高いエステル化度(高いメトキシル化)を有するものへ分類することができる。「低DE」または「LM」ペクチンは、50%未満のエステル化度を有するのに対し、「高DE」または「HM」ペクチンは、50%またはそれよりも大きいエステル化度を有する。ペクチン水溶液のゲル化特性は、ペクチン濃度、ペクチンの型、特にガラクツロン酸ユニットのエステル化度、および付加塩の存在により制御することができる。
【0049】
低DEペクチンが、本発明において使用される。このようなペクチンが水溶液中でゲル化する主要な機構は、国際公開公報第98/47535号に開示されたような鼻粘液中に認められるもののような、金属イオンへの曝露によるものである。本発明において使用されるペクチンのエステル化度は、好ましくは35%未満である。従ってエステル化度は、10〜35%、例えば15〜25%であってよい。低DEペクチンは、商業的に購入しうる。低DEペクチンの例は、CP Kelco社(Lille Skenved)から供給されるSLENDID(商標)100であり、これはエステル化度約15〜25%を有する。
【0050】
本発明のペクチン含有溶液は、貯蔵時にゲル化してはならない。これは、鼻腔への塗布前にはゲル化しないこととする。従って、実質的にこの溶液のゲル化を引き起こす物質を含んではならない。特に本発明の溶液は、二価金属イオン、特にカルシウムイオンを実質的に含んではならない。従って溶液中の二価金属イオンの含量は、最小でなければならない。その結果本発明のペクチン含有溶液は、二価金属イオンの濃度は無視できる程度か、または検出可能な二価金属イオンは存在しないものでありうる。
【0051】
ペクチンは典型的には、濃度5〜40mg/ml、例えば5〜30mg/mlで本発明の溶液中に存在する。より好ましくは、ペクチン濃度は、10〜30ng/ml、または10〜25mg/mlである。ペクチンおよびペクチン濃度は、この溶液が、鼻粘膜への送達時にゲル化するように選択される。この溶液は、二価金属イオン、例えばCa2+イオンの外部給源の非存在下で、鼻粘膜上でゲル化する。
【0052】
本発明の組成物は、送達物質がキトサンである場合にも、水溶液の形状をとる。キトサンは、粘膜接着性を有するカチオン性ポリマーである。この粘膜接着は、正帯電したキトサン分子とムチン上の負帯電したシアル酸基の間の相互作用により生じると考えられる(Soaneら、Int. J. Pharm、178:55-65 (1999))。
【0053】
本発明者らは、用語「キトサン」に、N-アセチル基のほとんどが加水分解(脱アセチル化)により除去されている、全てのポリグルコサミンおよび異なる分子量のグルコサミン物質のオリゴマーを含む、キチン、またはポリ-N-アセチル-D-グルコサミンの全ての誘導体を含ませている。好ましくは、キトサンは、キチンから、40%より多い程度、好ましくは50〜98%、より好ましくは70%〜90%の脱アセチル化により生成される。
【0054】
キトサンは典型的には、分子量4,000Daまたはそれ以上、好ましくは10,000〜1,000,000Da、より好ましくは15,000〜750,000Da、最も好ましくは50,000〜500,000Daを有する。
【0055】
従ってキトサンは、脱アセチル化されたキチンであってよい。これは生理的に許容できる塩であってもよい。適当な生理的に許容できる塩は、薬学的に許容できる無機酸または有機酸による塩、例えば硝酸塩、リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、および酢酸塩を含む。好ましい塩は、キトサングルタメートおよびキトサン塩酸塩である。
【0056】
キトサンは、脱アセチル化されたキチンの誘導体であることができる。適当な誘導体は、脱アセチル化されたキチンの、アミノ基でなくヒドロキシ基と、アシル基および/もしくはアルキル基の結合により形成された、エステル、エーテル、または他の誘導体を含むが、これらに限定されるものではない。例は、脱アセチル化されたキチンのO-(C1-C6アルキル)エーテルおよび脱アセチル化されたキチンのO-アシルエステルである。誘導体は、脱アセチル化されたキチンの修飾された形、例えばポリエチレングリコールに複合された脱アセチル化されたキチンも含む。
【0057】
本発明における使用に適した低および中程度の粘度のキトサンは、様々な供給業者から入手することができ、これはFMC Biopolymer社、Drammen、ノルウェイ;Seigagaku America社、MD、米国;Meron(India) Pvt社、インド;Vanson社、VA、米国;および、AMS Biotechnology社、英国を含む。適当な誘導体は、Roberts「Chitin Chemistry」、MacMillan Press社、ロンドン(1992)に説明されているものを含む。挙げられうる特に好ましいキトサン化合物は、FMC Biopolymer社、Drammen、ノルウェイから入手可能な「Protosan(商標)」である。キトサンは、水溶性であることが好ましい。
【0058】
キトサンの水溶液は、キトサン塩基またはキトサン塩基誘導体を、薬学的に許容できる無機酸または有機酸、例えば塩酸、乳酸、クエン酸、もしくはグルタミン酸中に溶解するか、またはキトサン塩を水中に溶解することにより調製することができる。
【0059】
キトサンは典型的には、溶液中に濃度0.1〜20mg/ml、例えば0.5〜20mg/mlで存在する。好ましくは溶液は、1〜15mg/ml、より好ましくは2〜10mg/mlのキトサンを含む。キトサン濃度5mg/mlが特に適している。
【0060】
本発明のキトサン含有溶液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを含有してもよい。
【0061】
いずれか適当なHPMCを使用することができる。数種類の等級のHPMCが入手可能である。例えば、Dow Chemical社は、商標Methocelで様々なHPMCポリマーを製造している。HPMCの等級および濃度は、本発明の溶液が、好ましくは25℃で円錐平板粘度計(例えば、Brookfield)により測定した粘度1〜200cpsの範囲、より好ましくは3〜150cps、および最も好ましくは5〜100cpsを有するように選択される。
【0062】
特定の粘度を有する溶液を製造することは当業者の能力内であり、例えば低粘度HPMCを高濃度でまたは高粘度HPMCを低濃度で用いて実現することができる。HPMCは好ましくは、見かけの粘度(20℃で水中2%溶液で測定)が3000〜6000cpsの範囲を有するものである。粘度3000〜6000cpsを有するHPMCの濃度は典型的には、0.1〜15mg/ml、例えば0.5〜10mg/ml、および好ましくは1〜5mg/mlである。
【0063】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、典型的には分子量2,500〜18,000、例えば7,000〜15,000を有する。このコポリマーは、下記一般式のブロックコポリマーである:
HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH
(式中、aは2〜130であり、bは15〜67である)。aの値は、40〜100、例えば60〜90または70〜95であることができる。bの値は、20〜40、例えば25〜35であることができる。
【0064】
このようなコポリマーは、ポロキサマーとして公知である。いくつかの異なる種類のポロキサマーが、BASF社などの供給業者から市販されており、分子量ならびにエチレンオキシドの「a」ユニットおよびプロピレンオキシドの「b」ユニットの割合は変動する。本発明における使用に適した市販のポロキサマーは、ポロキサマー188であり、これは構造的に80個の「a」ユニットおよび27個の「b」ユニットを含み、分子量7680〜9510を有する(Handbook of Pharmaceutical Excipients、編集A.H. Kippe、第3版、Pharmaceutical Press社、ロンドン、英国、2000年)。好ましいポロキサマーは、ポロキサマー188である。
【0065】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは典型的には、50〜200mg/ml、好ましくは65〜160mg/ml、およびより好ましくは80〜120mg/mlの量で存在する。好ましい濃度は、100mg/mlである。
【0066】
吸収促進物質としての使用に適したキトサン以外のその他のカチオン性ポリマーとしては、ポリカチオン性炭水化物が挙げられる。このポリカチオン性物質は、好ましくは少なくとも分子量10,000を有する。これらは、液体製剤中、濃度0.01〜50%w/v、好ましくは0.1〜50%w/v、より好ましくは0.2〜30%w/vでありうる。
【0067】
適当なポリカチオン性ポリマーの例は、ポリアミノ酸(例えば、ポリリシン)、ポリ4級化合物、プロタミン、ポリアミン、DEAE-イミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチル-アミノメチルエチレン、ポリヒスチジン、DEAE-メタクリレート、DEAE-アクリルアミド、ポリ-p-アミノスチレン、ポリオキシエタン、コ-ポリメタクリレート(例えば、HPMA、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミドのコポリマー)、GAFQUAT(例えば米国特許第3,910,862号参照)、およびポリアミドアミンである。
【0068】
本発明における使用に適当な界面活性剤は、胆汁酸塩(例えば、デオキシコレートナトリウムおよびコリルサルコシン、コール酸のサルコシン[N-メチルグリシン]との合成N-アシル複合体)である。同じく本発明における使用に適しているのは、胆汁酸塩誘導体(例えば、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム)である。広範な非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン-9ラウリルエーテル)、リン脂質、およびリゾホスファチジル化合物(例えば、リゾレシチン、リゾホスファチジル-エタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、およびリゾホスファチジル酸)のいずれをも使用することができる。水溶性リン脂質も使用することができる(例えば、短鎖ホスファチジルグリセロールおよびホスファチジルコリン)。本発明において使用される界面活性剤の濃度は、選択された界面活性剤の物理化学特性に従って変動するが、典型的濃度は、0.02〜10%w/vの範囲である。
【0069】
吸収促進物質としての使用に特に好ましい界面活性剤は、リン脂質およびリゾホスファチド(リン脂質の加水分解産物)であり、両方ともミセル構造を形成する。
【0070】
ミクロスフェアが送達物質として使用される場合、これらは好ましくは粘膜表面と接触してゲル化する生体適合性材料から調製される。実質的に均質な固形ミクロスフェアが好ましい。デンプンミクロスフェア(必要ならば架橋している)が好ましい。
【0071】
ミクロスフェアは、デンプン誘導体、修飾されたデンプン(アミロデキストリンなど)、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン、デキストランおよびデキストラン誘導体、ポリビニルアルコール、ポリラクチド-コ-グリコリド、ヒアルロン酸およびその誘導体(ベンジルおよびエチルエステルなど)、ゲランガムおよびその誘導体(ベンジルおよびエチルエステルなど)、ならびにペクチンおよびその誘導体(ベンジルおよびエチルエステルなど)から調製することもできる。用語「誘導体」は、特に親化合物のエステルおよびエーテルを含み、これは官能基化することができる(例えばイオン基を組込む)。
【0072】
多種多様な市販のデンプン誘導体のいずれをも使用することができ、これはヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルデンプン、カチオン性デンプン、アセチル化されたデンプン、リン酸化されたデンプン、デンプンのコハク酸誘導体、およびグラフトされた(grafted)デンプンを含む。
【0073】
適当なデキストラン誘導体は、ジエチルアミノエチル-デキストラン(DEAE-デキストラン)、硫酸デキストラン、デキストランメチル-ベンジルアミドスルホネート、デキストランメチル-ベンジルアミドカルボキシラート、カルボキシメチルデキストラン、デキストランジホスホン酸、デキストランヒドラジド、パルミトイルデキストラン、およびデキストランリン酸を含む。
【0074】
本発明に使用するためのミクロスフェアの調製は、公知の方法により行うことができ、これはエマルションおよび相分離法(例えば、Davisら(編集)、「Microspheres and Drug Therapy」、Elsevier Biomedical Press社、1984年を参照、そのミクロスフェア調製に関連している部分は、本明細書に参照として組入れられる)を含む。例えば、ホモジナイゼーションまたは攪拌によりアルブミンを油中に分散させる(必要ならば少量の適当な界面活性剤を添加する)油中水型乳化法を使用して、アルブミンミクロスフェアを作成することができる。
【0075】
このミクロスフェアのサイズは、攪拌の速度またはホモジナイゼーション条件により大部分決定される。攪拌は、簡単な実験室用スターラーまたはより精密な器具(例えばマイクロフルイダイザーまたはホモジナイザー)により提供することができる。乳化技法は、デンプンミクロスフェアの製造(GB 1518121およびEP 223303号に記載されたような)およびゼラチンミクロスフェアの調製にも使用することができる。
【0076】
タンパク質性ミクロスフェアは、コアセルベーション法により調製することができる。このような方法は、単純なまたは複雑なコアセルベーションに加え、相分離技術(溶媒または電解質溶液を使用する)を含む。このような方法は当業者に周知であり、詳細は標準的な教本に見ることができる(例えば、FlorenceおよびAttwood、「Physicochemical Principles of Pharmacy」、第2版、MacMillan Press社、1988年、第8章)。
【0077】
ミクロスフェアは有利なことに、制御放出特性を有し、これはミクロスフェアの修飾により(例えば、架橋度の制御によるか、または鎮痛薬成分の拡散特性を変更する賦形剤の組込みにより)付与されうる。あるいは、制御放出特性は、イオン交換化学を利用することにより組み込むことができる(例えば、DEAE-デキストランおよびキトサンは正帯電しており、負帯電した代謝産物とのイオン交換相互作用に使用することができる)。
【0078】
ミクロスフェアが保持することができる鎮痛薬成分の最大量は、負荷容量(loading capacity)と称される。これは、鎮痛薬成分の物理化学的特性、特にそのサイズおよびミクロスフェアマトリックスへの親和性により決定される。高い負荷容量は、ミクロスフェア製造時に鎮痛薬がミクロスフェアへ組み込まれる場合に実現される。
【0079】
マイクロカプセル(生体接着性であることができ、制御された放出特性を示すこともできる)も、本発明の組成物中に吸収促進物質として使用することができる。これらのマイクロカプセルは、様々な方法により製造することができる。このカプセルの表面は、もともと接着性であるか、または当業者に公知の標準的コーティング法により修飾することができる。適当なコーティング物質は、ポリカーボフィル、カルボポール、DEAE-デキストラン、アルギン酸塩、微晶質セルロース、デキストラン、ポリカルボフィル、およびキトサンなどの、生体接着性ポリマーを含む。
【0080】
水中油型製剤は、水にあまり溶けない鎮痛薬を効果的に鼻腔送達するために提供することができる。このような適用において、鼻腔刺激も軽減され得る。
【0081】
本発明のエマルションの油相は、ヒドロキシル化された油、特にヒドロキシル化された植物油を含むことができる。本明細書において使用される用語「ヒドロキシル化された油」は、ヒドロキシル化された脂肪酸を含むいずれの油をもカバーすることが意図されている。好ましいヒドロキシル化された油は、ヒドロキシル化された植物油であり、本組成物において使用するのに好ましいヒドロキシル化された植物油は、ヒマシ油である。
【0082】
本明細書において使用される用語「ヒマシ油」は、トウゴマの油、パルマ・クリスチ(Palma Christie)の油、tangantargon油、およびNeoloid(Merck Index、第12版、311頁に記されたようなもの)に加え、Ricinus Zanzibarinus由来の油を含むことが意図されている。後者は、リシノール酸のグリセリドの含量が高い。従って、ヒマシ油は、リシノール酸(ヒドロキシ脂肪酸)のグリセリドを含む。
【0083】
ヒマシ油が本発明において使用される場合、これは都合の良いことにトウゴマ(Ricinus Communis L.)(トウダイグサ科)の種子の冷間押出により得ることができる。
【0084】
本発明のエマルションの油相は、エマルションの1〜50%v/vであってよい。エマルション中の油の好ましい濃度は、10〜40%v/vである。特に好ましいのは、濃度20〜30%v/vである。
【0085】
本発明のエマルション組成物は、水相(選択的に安定化剤と共に)との、油および鎮痛薬成分の混合物のホモジナイゼーションなどの常法を用いて調製することができる。マイクロフルイダイザーまたは超音波装置を含むいずれか適当な器具を使用することができるが、マイクロフルイダイザーが大規模製造に好ましい。
【0086】
本発明のエマルションにおいて使用するのに適した安定化剤は、ポリオキシエチレンブロック(すなわち、反復するエチレンオキシド部分で形成されたブロック)を含むブロックコポリマーを含む。この型の適当な安定化剤の例は、ポロキサマー(商標)である。他の適当な安定化剤は、リン脂質乳化剤(例えば、ダイズおよび卵レシチン)を含む。特に好ましいのは、卵レシチンLipoid E80(商標)(Lipoid(商標)から)であり、これは、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノリン(phosphatidyl ethanoline)の両方を含む。他の適当なリン脂質は、リン脂質-ポリエチレングリコール(PEG)複合体を含む(例えば、Litzingerら、Biochem Biophys Acta、1190: 99-107(1994)参照)。
【0087】
いずれか適当な濃度の安定化剤/乳化剤を使用することができ、これは典型的には、エマルションの水相の0.1〜10%w/vの範囲に収まる。特に好ましい濃度は1〜5%w/vである。
【0088】
エマルションの安定性は、1種または複数の共乳化剤(co-emulsifier)の添加により増強することができる。適当な薬学的に許容できる共乳化剤は、脂肪酸、胆汁酸、およびそれらの塩を含む。好ましい脂肪酸は、8個よりも多い炭素原子を有し、特に好ましいのはオレイン酸である。適当な胆汁酸で好ましいのは、デオキシコール酸である。前述のものの適当な塩は、アルカリ金属(例えば、NaおよびK)塩を含む。共乳化剤は、水相の1%w/vまたはそれ未満の濃度で添加することができる。
【0089】
緩衝剤も本組成物中に使用することができる。例えば、緩衝液を用い、鼻汁(nasal fluid)と適合性のあるpHを維持し、エマルション安定性を保ち、および/または鎮痛薬成分がエマルション油相から水相へ分配されないことを確実にすることができる。
【0090】
当業者には、増粘剤およびゲル化剤(例えば、セルロースポリマー、特にカルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸塩、ゲラン、ペクチン、アクリルポリマー、アガー-アガー、トラガカントガム、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、キトサン、更にはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンのブロックコポリマー)を含む、追加成分もエマルションに添加することができることは明らかであろう。パラ安息香酸メチル、ベンジルアルコール、およびクロロブタノールのような保存剤も添加することができる。
【0091】
送達物質は、リポソームを含むことができる。リポソームは、透過性物質捕獲障壁として作用するリン脂質二重層により取り囲まれた水性コンパートメントから構成された微視的小胞である。多くの様々な種類のリポソームが知られている(Gregoriadis(編集)、「Liposome Technology」、第2版、I-III巻、CRC Press社、ボカラント、Fla.、1993参照のこと)。被包薬物の制御された徐放を提供できるリポソームもある。このようなシステムにおいて、薬物放出速度は、リポソームの物理化学特性により決定される。リポソームは、薬物送達の望ましい速度を提供するために、サイズ、組成、および表面電荷を変更することにより、具体的適用に合わせて生産することができる(Meisner Dら:In Proceedings, 15th International Symposium on Controlled Release of Bioactive Materials、15:262-263(1988);Mezei M:In Drug Permeation Enhancement, Theory and Application、Hsieh DS(編集):Marcel Dekker社、ニューヨーク、1993年、171-198頁;および、Meisner Dら:J Microencapsulation、6:379-387(1989)を参照のこと)。従って、リポソーム被包は、本発明の組成物において有効および安全な送達物質として作用することができる。
【0092】
リポソーム製品の徐放特性は、脂質膜の性質およびリポソーム製品の組成中に他の賦形剤を封入することにより調節することができる。現在のリポソーム技術は、リポソーム製剤の組成を基にした薬物放出速度の妥当な推察を可能にしている。薬物放出速度は、例えば水素化(-H)もしくは非水素化(-G)などのリン脂質の性質、またはリン脂質/コレステロール比(この比がより高いと、放出速度がより速くなる)、活性成分の親水性/親油性特性、ならびにリポソーム製造法などに主に左右される。
【0093】
リポソーム形成の材料および方法は、当業者に周知であり、エタノールまたはエーテル注入法を含む。典型的には、脂質が溶媒に溶解され、この溶媒が蒸発され(減圧下が多い)、薄フィルムを形成する。次にこのフィルムは、攪拌しながら水和される。鎮痛薬成分が、この脂質フィルム形成工程(親油性である場合)、または水性水和相の一部として水和相(親水性である場合)に配合される。選択された水和条件および使用される脂質の物理化学特性に応じて、リポソームは、多重膜脂質小胞(MLV)、単膜脂質小胞(小単膜小胞(SUV)および大単膜小胞(LUV)を含む)、ならびに多小胞リポソームでありうる。
【0094】
脂質成分は典型的には、リン脂質およびコレステロールを含有し、賦形剤は、トコフェロール、抗酸化剤、増粘剤、および/または保存剤を含んでよい。ホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルイノシトールからなる群より選択されたものなどのリン脂質は特に有用である。このようなリン脂質は、例えばコレステロール、ステアリルアミン、ステアリン酸、およびトコフェロールを用いて修飾してもよい。
【0095】
本発明の組成物は更に、他の適当な賦形剤、例えば不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、および保存剤などを含むことができる。適当な不活性希釈剤は、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、および乳糖を含み、コーンスターチおよびアルギン酸は適当な崩壊剤である。結合剤は、デンプンおよびゼラチンを含むことができ、滑沢剤は、存在するならば、一般にはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであろう。
【0096】
保湿剤、等張剤、抗酸化剤、緩衝剤、および/または保存剤のような賦形剤が、好ましくは使用される。製剤および用量はとりわけ、鎮痛薬が、液滴の形でまたはスプレー(エアロゾル)として使用されるかどうかによって左右される。あるいは、懸濁剤、軟膏剤、およびゲル剤を、鼻腔に塗布することができる。しかし、鼻腔粘膜は、わずかに高張の溶液を忍容することが可能であることもわかっている。液剤の代わりに懸濁剤またはゲル剤が望ましいならば、適当な油性またはゲル状のビヒクルを使用してもよく、または1種もしくは複数の高分子材料を含むことができ、これは望ましくはビヒクルに生体接着特性を付与することが可能である。
【0097】
多くの他の適当な薬学的に許容できる鼻腔用担体が、当業者には明らかであろう。適当な担体の選択は、特定の望ましい鼻腔用剤形の正確な性質、例えば薬物が鼻腔用液剤(液滴またはスプレーとしての使用のため)、鼻腔用懸濁剤、鼻腔用軟膏、または鼻腔用ゲル剤に処方されるかどうかによって左右される。別の態様において、鼻腔用剤形は、液剤、懸濁剤、およびゲル剤であり、これは活性成分に加え、大量の水(好ましくは精製水)を含有している。pH調節剤(例えば、NaOHのような塩基)、乳化剤または分散剤、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、およびゼラチン化剤(例えば、メチルセルロース)などの他の少量の成分も存在してよい。
【0098】
溶液の場合、本発明の鼻腔用組成物は、等張、高張、または低張であることができる。望ましいならば徐放型鼻腔用組成物、例えば徐放型ゲル剤を、好ましくは所望の薬物をその比較的不溶性の形のひとつ(例えば遊離塩基または不溶性塩など)で使用することにより、容易に調製することができる。
【0099】
本発明の組成物はそれゆえ、必要ならば体液とほぼ同じ浸透圧(すなわち等張)に調節することができる。高張溶液は、繊細な鼻腔の膜を刺激する可能性があるが、等張組成物は刺激しない。等張性は、グリセロールまたはイオン化合物(例えば、塩化ナトリウム)の組成物への添加により実現することができる。これらの組成物は、部品のキットの形をとることができ、このキットは、鼻腔内組成物を、使用説明書および/または単位用量容器および/または鼻腔送達器具と共に備えることができる。
【0100】
本発明の組成物は、痛覚消失を誘導するために、患者へ鼻腔内投与される。鎮痛剤の有効量が、患者へ送達される。単位投与量を、片方の鼻孔に送達することができる。あるいは、投与量の半量または2倍量を、各投与時に各鼻孔に送達することができる。投与量は、送達される鎮痛剤、患者の年齢および性別、治療される疼痛の性質および程度、ならびに治療期間を含む、多くの要因に応じて決まるであろう。オピオイド鎮痛薬の適当な投与量は、0.02〜100mg、例えば0.1〜50mgでありうる。ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルについて、適当な投与量は、ブプレノルフィンとして計算して0.02〜1.2mg、例えば50〜600μgまたは100〜400μgである。
【0101】
本発明の組成物の複数投与量を使用してもよい。例えば、本発明の溶液により生じる痛覚消失の迅速な開始は、患者による鎮痛薬の自己滴定(self-titration)を可能にする。初回量の鎮痛作用は、患者により迅速かつ信頼できるように測定され、不充分であるならば、痛覚消失が必要レベルに到達するまで、直ぐに更なる投与量を補充することができる(各鼻孔に交互であることが多い)。複数投与も、疼痛緩和を延長するために使用することができる。例えば、1日に1〜4回、例として2〜4回の投与が指示される。
【0102】
本発明の組成物を使用し、存在する疼痛状態を治療するか、または疼痛状態の発生を防止することができる。存在する疼痛を緩和することができる。組成物を使用し、例えば術後(例えば、腹部手術、背部手術、帝王切開、人工股関節置換術、または人工膝関節置換術)疼痛管理などの、慢性または急性の疼痛を治療または管理することができる。
【0103】
他の医学用途は以下を含む:本発明の溶液の術前鼻腔内投与;麻酔に付属する療法または予防;術後痛覚消失;外傷性疼痛の管理;癌の疼痛の管理;子宮内膜症の管理;炎症性疼痛の管理;関節炎疼痛の管理(リウマチ様関節炎および変形性関節炎に関連した疼痛を含む);腰痛の管理;心筋痛の管理(例えば虚血性または梗塞性疼痛);歯痛の管理;ニューロパシー疼痛の管理(例えば、糖尿病性ニューロパシー、疱疹後神経痛、または三叉神経痛);疝痛(例えば、腎疝痛または胆石)、頭痛、片頭痛、繊維筋肉痛、または月経困難症の管理;悪性および非悪性疾患に関連した耐え難い痛みの管理;ならびに、手技による激痛(例えば、骨髄吸引または腰椎穿刺)の管理。
【0104】
本発明の組成物は、溶液の形状である場合、液滴またはスプレーを含む形状で鼻腔へ投与することができる。好ましい投与法は、スプレー器具を使用する。スプレー器具は、例えば、ボトル、ポンプ、および作動部を具備する、単回(単位)投与量または複数投与量のシステムであることができる。適当なスプレー器具は、Pfeiffer社、Valois社、Bespak社、およびBecton-Dickinson社を含む、様々な商業的供給業者から入手することができる。
【0105】
散剤またはミクロスフェアの形状である場合、鼻腔吸入用器具を使用することができる。このような器具は、鼻腔内塗布が意図された市販の散剤システムのために既に使用されている。吸入器を使用して、乾燥散剤またはミクロスフェアの細かい分散した噴射物(plume)を作成することができる。鎮痛薬組成物の予め定められた投与量を投与する手段を備える吸入器が提供されることが好ましい。散剤またはミクロスフェアは、吸入器と共に使用するように適合されたボトルまたは容器内に含むことができる。あるいは、散剤またはミクロスフェアは、鼻腔投与に適合されたカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)または他の単回投与用の器具内に提供することができ、これらの態様において、吸入器は、カプセルを開封するための手段(または他の単回投与器具)を備えてもよい。
【0106】
本発明は、鼻腔送達に適した具体的なブプレノルフィン製剤も提供する。本発明の第一の溶液は、本質的にブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル0.1〜10mg/ml、キトサン0.1〜20mg/ml、HPMC 0.1〜15mg/ml、および水からなる。本発明の第二の溶液は本質的に、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル0.1〜10mg/ml、キトサン0.1〜20mg/ml、一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aは2〜130であり、bは15〜67である)のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー50〜200mg/ml、および水からなる。
【0107】
各々の場合において、ブプレノルフィン塩は、酸付加塩または塩基との塩であることができる。適当な酸付加塩は、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、ステアリン酸塩、酒石酸塩、および乳酸塩である。塩酸塩が好ましい。
【0108】
いずれかの溶液中のブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルの濃度は、0.1〜10mg/ml、例えば0.5〜8mg/mlである。好ましい濃度は、1〜6mg/ml、例えば1〜4mg/mlである。適当な溶液は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して濃度1mg/mlまたは4mg/mlで含有することができる。各溶液は、典型的には鼻腔スプレーとして送達される。従って、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して1〜4mg/ml含有する溶液の100μl噴霧は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して100〜400μgの臨床投与量となる。各投与時の鼻孔あたり2回のこのような噴霧により、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して投与量最大4x400μg、すなわち最大1600μgで送達されるように与えることができる。
【0109】
適当なキトサンは先に説明されている。キトサンは、溶液中に、濃度0.1〜20mg/ml、例えば0.5〜20mg/mlで存在する。好ましくはこの溶液は、キトサン1〜15mg/ml、より好ましくは2〜10mg/mlを含む。キトサン濃度5mg/mlが特に適している。
【0110】
同じく先に説明されたように、いずれか適当なHPMCを使用することができる。本発明の溶液において使用されるHPMCは、見かけの粘度(20℃で水中2%溶液として測定して)3000〜6000cpsの範囲を有するものが好ましい。3000〜6000cpsの粘度を有するHPMC濃度は、0.1〜15mg/ml、好ましくは0.5〜10mg/ml、および好ましくは1〜5mg/mlの範囲である。
【0111】
典型的な適当なポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、先に説明されている。ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、50〜200mg/ml、好ましくは65〜160mg/ml、およびより好ましくは80〜120mg/mlの量で存在する。好ましい濃度は、100mg/mlである。
【0112】
任意の適当な保存剤、特に溶液の微生物損傷を防止する保存剤を、この溶液中に存在させることができる。保存剤は、溶液の他の成分と適合性がなければならない。保存剤は、いずれかの薬学的に許容できる保存剤、例えば4級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウムなどであることができる。
【0113】
溶液は、pH3〜4.8を有する。この範囲内のいずれかのpHを、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルが溶液中に溶解され続ける限り、使用することができる。pHは、3.2〜4.2、例えば3.2〜4.0、または3.5〜4.0であることができる。適したpHは、3.6〜3.8である。pHは、生理的に許容できる酸および/または生理的に許容できる緩衝液の添加により、適当な値に調節することができる。従ってpHは、生理的に許容できる無機酸単独によりまたは生理的に許容できる有機酸単独により調節することができる。塩酸の使用が好ましい。
【0114】
張性調節剤を、溶液中に含んでも良い。張性調節剤は、糖質、例えばデキストロース、または多価アルコール、例えばマンニトールであってよい。溶液は、高張、実質的に等張、または低張であることができる。実質的に等張の溶液は、オスモル濃度0.28〜0.32osmol/kgを有しうる。正確に等張な溶液は0.29osmol/kgである。従って十分量のデキストロースまたはマンニトールのような張性調節剤は、所望のオスモル濃度を達成するために存在させうる。好ましくは、溶液は、50mg/mlのデキストロースまたはマンニトールを含有する。
【0115】
キトサンおよびHPMCまたはポロキサマーを含有する溶液のオスモル濃度は、0.1〜0.8osmol/kg、例えば0.2〜0.6osmol/kg、または好ましくは0.32〜0.4osmol/kgでありうる。
【0116】
これらの溶液は、他の成分、例えば酸化防止剤、キレート剤、または一般に薬学的液体調製物において使用される他の物質も含有することができる。溶液は、無菌溶液でありうる。
【0117】
キトサンおよびHPMCを含有する溶液は、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル、キトサン、およびHPMCを、水、典型的には注射用水中に溶解することにより調製される。ブプレノルフィンまたはその塩もしくはエステルの量は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステル0.1〜10mg/mlが溶液中に溶解されるように選択される。キトサンおよびHPMCの必要な濃度も提供される。保存剤を、溶液中に溶解することができる。溶液のpHは、必要に応じ3〜4.8の範囲の値に調節することができる。好ましくは、pHは塩酸により調節される。
【0118】
キトサンおよびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを含有する溶液は、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル、キトサン、およびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを、水、典型的には注射用水中に溶解することにより調製される。ブプレノルフィンまたはその塩もしくはエステルの量は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステル0.1〜10mg/mlが溶液中に溶解されるように選択される。キトサンおよびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーの必要な濃度も、提供される。保存剤を、溶液中に溶解することができる。溶液のpHは、必要に応じ3〜4.8の範囲の値に調節することができる。好ましくは、pHは塩酸により調節される。
【0119】
他の成分は、いずれか都合の良い段階で溶液中に提供することができる。例えば、デキストロースまたはマンニトールは、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルが溶解されている水中に溶解してもよい。無菌の出発材料を使用して無菌条件下で操作するか、および/または最終溶液を滅菌フィルターを通過させるような標準の滅菌技術を用いることのいずれかにより、無菌溶液を得ることができる。こうしてパイロジェン非含有溶液を提供することができる。その後この溶液を、鼻腔送達器具へ、典型的には無菌のそのような器具へ導入することができる。必要ならば、器具を密封する前に、酸化から溶液を保護するために、窒素などの不活性ガスで覆うことができる。
【0120】
第三の本発明の薬学的溶液は本質的に、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル0.1〜10mg/ml、低いエステル化度、特に50%未満のエステル化度を有するペクチン5〜40mg/ml、および水からなる。ブプレノルフィン塩は、酸付加塩または塩基との塩であってよい。適当な酸付加塩は、塩酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、ステアリン酸塩、酒石酸塩、および乳酸塩を含む。塩酸塩が好ましい。
【0121】
ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルの濃度は、0.1〜10mg/ml、例えば0.5〜8mg/mlである。ブプレノルフィンとして計算して1〜6mg/ml、例えば1〜4mg/mlである濃度が好ましい。適当な溶液は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して1mg/mlまたは4mg/mlの量で含有することができる。
【0122】
溶液は、典型的には鼻腔スプレーとして送達される。従って、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して1〜4mg/mlを含有する溶液の100μl噴霧は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して100〜400μgの臨床投与量となる。各投与時に片方の鼻孔につき2回のこのような噴霧により、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して投与量最大4x400μg、すなわち最大1600μgで送達されるように与えることができる。
【0123】
この溶液中に含ませる適当なペクチンは、先に説明されている。この溶液は、二価金属イオンの外部給源を必要とせずに鼻腔粘膜表面上でゲル化する。ペクチンは、本発明の溶液中に、濃度5〜40mg/ml、例えば5〜30mg/mlで存在する。より好ましくは、ペクチン濃度は、10〜30mg/mlまたは10〜25mg/mlである。
【0124】
本発明のペクチン含有溶液は、pH3〜4.2を有する。この範囲内のいずれかのpHを、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルがこの溶液中に溶解され続ける限り、利用することができる。pHは、3.2〜4.0、例えば3.5〜4.0であることができる。特に適したpHは3.6〜3.8である。このpHは、生理的に許容できる酸および/または生理的に許容できる緩衝液の添加により、適当な値に調節されうる。従ってこのpHは、生理的に許容できる無機酸単独でまたは生理的に許容できる有機酸単独で調節することができる。塩酸の使用が好ましい。
【0125】
いずれか適当な保存剤、特に溶液の微生物による損傷を防ぐ保存剤が、ペクチン含有溶液中に存在してもよい。保存剤は、任意の薬学的に許容できる保存剤、例えばフェニルエチルアルコールまたはヒドロキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)またはその塩の一種であることができる。フェニルエチルアルコールおよびプロピルパラベンまたはプロピルパラベン塩は、組合せて使用されることが好ましい。保存剤は、溶液の他の成分と適合性がなければならず、特に溶液のゲル化を引き起こしてはならない。
【0126】
ペクチン含有溶液は、例えばデキストロースなどの糖質、または例えばマンニトールなどの多価アルコールのような、張性調節剤を含んでもよい。溶液は、高張、実質的に等張、または低張であることができる。実質的に等張な溶液は、オスモル濃度0.28〜0.32osmol/kgを有しうる。厳密に等張な溶液は、0.29osmol/kgである。溶液のオスモル濃度は、0.1〜0.8osmol/kg、例えば0.2〜0.6osmol/kgであるか、または好ましくは0.35〜0.5osmol/kgでありうる。適当なオスモル濃度範囲は、0.32〜0.36osmol/kgである。従って十分量のデキストロースまたはマンニトールのような張性調節剤は、そのようなオスモル濃度を実現するために存在することができる。好ましくは、溶液は、50mg/mlのデキストロースまたはマンニトールを含有する。
【0127】
ペクチン含有溶液は、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを、水、典型的には注射用水に溶解することにより調製され、得られた溶液は、水、やはり典型的には注射用水中の適当なペクチンの溶液と混合される。ブプレノルフィンまたはその塩もしくはエステルの量およびペクチンの量は、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステル0.1〜10mg/mlおよびペクチン5〜40mg/mlが混合液中に溶解されるように、選択される。保存剤または保存剤の組合せを、溶液中に溶解してもよい。混合液のpHは、必要に応じ3〜4.2の範囲の値に調節することができる。pH調節が必要であるならば、pHは塩酸で調節されることが好ましい。
【0128】
他の成分は、いずれか都合の良い段階で溶液中に提供することができる。例えば、デキストロースまたはマンニトールは、ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルが溶解されている水中に溶解されてもよい。無菌の出発材料を使用して無菌条件下で操作するか、および/または最終溶液を滅菌フィルターを通過させるような標準の滅菌技術を用いることのいずれかにより、無菌溶液を得ることができる。こうしてパイロジェン非含有溶液を提供することができる。その後この溶液を、鼻腔送達器具へ、典型的には無菌のそのような器具へ導入することができる。必要ならば、器具を密封する前に、酸化から溶液を保護するために、窒素などの不活性ガスで覆うことができる。
【0129】
本発明の3種の溶液は各々、痛覚消失を誘導するために、患者へ鼻腔内投与される。その結果、痛覚消失の迅速な開始および延長された痛覚消失を得ることができる。ブプレノルフィンまたはその塩もしくはエステルの有効量が、患者へ送達される。単位投与量が、片方の鼻孔に送達される。あるいは、投与量の半量または2倍量を、1回の投与時に各鼻孔に送達することができる。投与量は、患者の年齢および性別、治療される疼痛の性質および程度、ならびに治療期間を含む、多くの要因に応じて決まるであろう。ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルの適当な投与量は、ブプレノルフィンとして計算して0.02〜1.2mg、例えば50〜600μg、または100〜400μgである。
【0130】
本発明の溶液の複数投与量を使用してもよい。例えば、本発明の溶液により生じる痛覚消失の迅速な開始は、患者による鎮痛薬の自己滴定を可能にする。初回量の鎮痛薬の作用は、患者により迅速かつ信頼できるように測定され、不充分であるならば、痛覚消失が必要なレベルに到達するまで、直ぐに更なる投与量を補充することができる(各鼻孔に交互であることが多い)。複数投与も、疼痛緩和を延長するために使用することができる。例えば、1日2〜4回の投与が指示される。
【0131】
本発明の溶液を使用し、存在する疼痛状態を治療または疼痛状態の発生を防止することができる。存在する疼痛を緩和することができる。本発明の溶液を使用し、例えば術後(例えば、腹部手術、背部手術、帝王切開、人工股関節置換、または人工膝関節置換)疼痛管理などの、慢性または急性の疼痛を治療または管理することができる。他の医学的使用は先に説明されている。
【0132】
本発明の溶液は、液滴またはスプレーを含む形状で鼻腔へ投与することができる。好ましい投与法は、スプレー器具を使用する。スプレー器具は、例えば、ボトル、ポンプ、および作動部を具備する、単回(単位)投与量または複数投与量のシステムであることができる。適当なスプレー器具は、Pfeiffer社、Valois社、Bespak社、およびBecton-Dickinson社を含む、様々な商業的供給業者から入手することができる。
【0133】
既に言及したように、本発明により、痛覚消失の迅速な開始および延長された痛覚消失を実現することができる。実現することができる鎮痛薬送達プロファイルは、静脈内投与に関連する比較的高いCmax値を避けることができ、改善された治療指数につながる。投与後に到達される鎮痛薬のピーク血漿濃度は、Cmaxと定義される。本発明は、鎮痛薬に関連した副作用の一部または全ての軽減または排除を可能にすることができる。
【0134】
Cmaxは典型的には、1〜5ng/ml、例えば1〜4ng/ml、または1.5〜3ng/mlである。より低いブプレノルフィン投与量については特に、Cmaxは、1〜2ng/mlでありうる。Cmaxに到達している時間(Tmax)は、典型的には投与後10〜40分、例えば10〜30分または15〜25分、例えば15〜20分である。
【0135】
好ましい態様において、送達物質は、Cmax=Coptとなるような鎮痛薬成分の送達に適合されている。用語Coptは、副作用の用量-反応曲線に対して左側に配置される、痛覚消失に対する用量-反応曲線を示す鎮痛薬に関して使用される。この用語は、許容できる疼痛緩和または疼痛改善を生じるが、副作用を生じないかまたはより高い血漿濃度に関連したものよりも少ない副作用を生じるような治療的血漿濃度またはその範囲を定義する。
【0136】
好ましくは、本発明の溶液は、ブプレノルフィンまたはその塩もしくはエステルが、鼻腔への導入後30分以内、例えば0.5〜20分、例えば2〜15分または5〜10分以内に、0.2ng/mlまたはそれよりも大きい、例えば0.4ng/mlまたはそれよりも大きいCtherが達成されるように送達されることを可能にする。用語Ctherは、治療的血漿濃度(またはその範囲)を定義する。従ってこの用語は、本明細書において、疼痛緩和または疼痛改善を生じるブプレノルフィンまたはその塩もしくはエステルの血漿濃度(または血漿濃度の範囲)を定義するために使用される。Ctherは、0.4〜5ng/ml、例えば0.4〜1ng/mlまたは0.5〜4ng/mlまたは0.8〜2ng/mlでありうる。
【0137】
Tmaintは、典型的には少なくとも2時間である。用語Tmaintは、鎮痛薬投与後Ctherが維持される期間を定義する。例えばTmaintは、最大24時間、最大12時間、または最大6時間であり、例えば2〜4時間または2〜3時間であることができる。従って本発明により、少なくとも0.4ng/mlのCtherが、2〜15分以内に到達され、2〜4時間のTmaint期間維持されうる。
【0138】
下記実施例は、本発明を例証する。
【実施例】
【0139】
実施例1:ブプレノルフィン(4mg/ml)およびペクチン含有する鼻腔用液剤
ペクチン(SLENDID(商標)100、CP Kelco社、デンマーク)5gを、注射用水(WFI)(Baxter社、英国)約180mlへ攪拌することにより溶解した。塩酸ブプレノルフィン(MacFarlan Smith社、英国)1075mgおよびデキストロース(Roquette社)12.5gを、このペクチン溶液に溶解した。フェニルエチルアルコール(R. C. Treat社、英国)1.25mlおよびヒドロキシ安息香酸プロピル(Nipa社、英国)50mgを、ペクチン/ブプレノルフィン溶液に溶解した。この溶液を、WFIを用いて250mlに調節した。1M塩酸(BDH社、英国)を添加し、pH3.6に調節した。
【0140】
最終生成物は、塩酸ブプレノルフィン4.3mg/ml(ブプレノルフィン4mg/mlに相当)、ペクチン20mg/ml、デキストロース50mg/ml、フェニルエチルアルコール5μl/ml、およびヒドロキシ安息香酸プロピル0.2mg/mlのわずかに濁った溶液であった。この溶液のpHは、前述のように3.6であった。この溶液のオスモル濃度は、0.46osmol/kgであった。
【0141】
単回投与量の鼻腔スプレー器具(Pfeiffer社、独国)に、この溶液を装填した。各器具につき、液体123μlを装填した。この器具の作動により、ブプレノルフィン400μgおよびペクチン2mgを含有する液体100μlの投与量が送達された。
【0142】
実施例2:ブプレノルフィン(2mg/ml)およびペクチン含有する鼻腔用液剤
ペクチン5gを、WFI約180mlへ攪拌することにより溶解する。塩酸ブプレノルフィン538mgおよびデキストロース12.5gを、このペクチン溶液に溶解する。フェニルエチルアルコール1.25mlおよびヒドロキシ安息香酸プロピル50mgを、ペクチン/ブプレノルフィン溶液に溶解する。この溶液を、WFIを用いて250mlに調節する。
【0143】
最終生成物は、塩酸ブプレノルフィン2.16mg/ml(ブプレノルフィン2mg/mlに相当)、ペクチン20mg/ml、デキストロース50mg/ml、フェニルエチルアルコール5μl/ml、およびヒドロキシ安息香酸プロピル0.2mg/mlを含む、わずかに濁った溶液である。
【0144】
前記溶液123μlを、Valois Monospray単回投与量の鼻腔スプレー器具(Pfeiffer社、独国)に装填する。この器具の作動により、ブプレノルフィン200μgおよびペクチン2mgを含有する液体100μlの投与量が送達される。
【0145】
実施例3:ブプレノルフィン(4mg/ml)、キトサン、およびHPMCを含有する鼻腔用液剤
HPMC(Methocel(商標)E4M、Colorcon社、英国)0.75gを、予め加熱した(70〜80℃)注射用水(WFI)(Baxter社、英国)約125mlに分散させた。HPMC分散体を、氷浴中で、透明な液体が形成されるまで攪拌した。キトサングルタメート(Protosan(商標)UPG213、Pronova社、ノルウェイ)1.25gを、このHPMC溶液に溶解した。50%w/w塩化ベンザルコニウム溶液(Albright and Wilson社、英国)75mgを、WFI 10mlに分散させ、更なるWFI 40mlと共に250mlのメスフラスコに移した。塩酸ブプレノルフィン(MacFarlan Smith社、英国)1075mgおよびデキストロース(Roquette社、英国)12.5gを、このメスフラスコに移した。キトサン/HPMC溶液および追加のWFI 40mlを、このフラスコに追加した。この溶液を、1M塩酸溶液(BDH社、英国)を用いpH3.4に調節し、このフラスコ内容物を、WFIを用いて250mlに調節した。
【0146】
最終生成物は、塩酸ブプレノルフィン4.3mg/ml(ブプレノルフィン4mg/mlに相当)、キトサングルタメート5mg/ml、HPMC 3mg/ml、デキストロース50mg/ml、および塩化ベンザルコニウム0.15mg/ml含有する透明な無色の溶液であった。この最終溶液のオスモル濃度は、0.34osmol/kgであり、Brookfield CP70円錐平板粘度計で測定した粘度は、2.5rpmおよび25℃で、84.7cpsであった。
【0147】
単回投与量の鼻腔スプレー器具(Pfeiffer社、独国)に、この溶液を装填した。各器具につき、液体123μlを装填した。この器具の作動により、ブプレノルフィン400μg、キトサン0.5mg、およびHPMC 0.3mgを含有する液体100μlの投与量が送達された。従って、ブプレノルフィン400μgの投与量が片方の鼻孔への1回のスプレーにより提供される。投与量800μgは、各鼻孔への1回のスプレーにより提供される。
【0148】
実施例4:ブプレノルフィン(1mg/ml)、キトサン、およびHPMCを含有する鼻腔用液剤
HPMC、キトサングルタメート、および塩化ベンザルコニウムを含有する溶液を、実施例3に従い調製する。塩酸ブプレノルフィン269mgおよびマンニトール(Sigma社、英国)12.5gを、メスフラスコに移す。キトサン/HPMC溶液および追加のWFI 40mlを、このフラスコに追加する。この溶液を、1M塩酸溶液を用いpH3.6に調節し、このフラスコ内容物を、WFIを用いて250mlに調節する。
【0149】
最終生成物は、塩酸ブプレノルフィン1.08mg/ml(ブプレノルフィン1mg/mlに相当)、キトサングルタメート5mg/ml、HPMC 3mg/ml、マンニトール50mg/ml、および塩化ベンザルコニウム0.15mg/ml含有する透明な無色の溶液である。
【0150】
前記溶液123μlを、単回投与量の鼻腔スプレー器具(Pfeiffer社、独国)に装填する。この器具の作動により、ブプレノルフィン100μg、キトサン0.5mg、およびHPMC 0.3mgを含有する液体100μlの投与量が送達される。
【0151】
この溶液5mlを、10mlのガラス製ボトルに装填する。Valois VP7の100μlポンプおよび作動部(Valois社、仏国)をこのボトルに装着した。始動させると、このポンプがブプレノルフィン100μgを含有する溶液100μlを分配する。
【0152】
実施例5:ブプレノルフィン(4mg/ml)、キトサン、およびポロキサマーを含有する鼻腔用溶液
ポロキサマー188(Lutrol(商標)F-68、BASF社、独国)25gを、温度2〜8℃で注射用水(WFI)(Baxter社、英国)100mlへ攪拌することにより溶解した。キトサングルタメート1.25g(Protasan(商標)UPG213、Pronova社、ノルウェイ)を、ポロキサマー溶液に溶解した。50%w/w塩化ベンザルコニウム溶液(Albright and Wilson社、英国)75mgをWFI 10mlに分散し、追加のWFI 40mlと共に250mlのメスフラスコに移した。塩酸ブプレノルフィン(MacFarlan Smith社、英国)1075mgおよびデキストロース(Roquette社、英国)12.5gを、メスフラスコに移した。キトサン/ポロキサマー溶液および追加のWFI 40mlを、フラスコに添加した。溶液を、1M塩酸溶液(BDH社、英国)を用いてpH3.4に調節し、フラスコ内容物を、WFIを用いて250mlに調節した。
【0153】
最終生成物は、塩酸ブプレノルフィン4.3mg/ml(ブプレノルフィン4mg/mlに相当)、キトサングルタメート5mg/ml、ポロキサマー188 100mg/ml、デキストロース50mg/ml、および塩化ベンザルコニウム0.15mg/mlを含有する、透明な無色の溶液であった。最終溶液のオスモル濃度は、0.60osmol/kgであった。
【0154】
単回投与量の鼻腔スプレー器具(Pfeiffer社、独国)に、この溶液を装填した。各器具につき、液体123μlを装填した。この器具の作動により、ブプレノルフィン400μg、キトサン0.5mg、およびポロキサマー188 10mgを含有する液体100μlの投与量が送達された。
【0155】
実施例6:ブプレノルフィン(1mg/ml)、キトサン、およびポロキサマーを含有する鼻腔用溶液
キトサングルタメート、ポロキサマー188、および塩化ベンザルコニウムを含有する溶液を、実施例5に従い調製する。塩酸ブプレノルフィン269mgおよびマンニトール(Sigma社、英国)12.5gを、メスフラスコに移す。キトサン/ポロキサマー溶液および追加のWFI 40mlを、このフラスコに追加する。溶液のpHを、1M塩酸溶液を用いpH3.6に調節し、このフラスコ内容物を、WFIを用いて250mlに調節する。
【0156】
最終生成物は、塩酸ブプレノルフィン1.08mg/ml(ブプレノルフィン1mg/mlに相当)、キトサングルタメート5mg/ml、ポロキサマー188 100mg/ml、マンニトール50mg/ml、および塩化ベンザルコニウム0.15mg/ml含有する透明な無色の溶液である。
【0157】
前記溶液123μlを、単回投与量の鼻腔スプレー器具(Pfeiffer社、独国)に装填する。この器具の作動により、ブプレノルフィン100μg、キトサン0.5mg、およびポロキサマー188 10mgを含有する液体100μlの投与量が送達される。
【0158】
この溶液4mlを、5mlのガラス製ボトルに装填する。Pfeiffer 100μl鼻腔スプレーのポンプおよび作動部を、このボトルに装着する。始動させると、このポンプがブプレノルフィン100μgを含有する100μl溶液を分配する。
【0159】
実施例7:ブプレノルフィン-ペクチン溶液の変動するパラメータの作用
全体的な方法
これらの溶液の外観、pH(Mettler MP230 pHメーター)およびオスモル濃度(Osmomat 030凝固点降下浸透圧計)を測定した。
【0160】
溶液の粘度は、Brookfield円錐平板レオメーターを用い測定した。得られた結果は、溶液の粘度に適した3種の回転速度の測定値の平均である。
【0161】
Pfeiffer複数投与量の鼻腔スプレー器具(標準ノズル、0.1mlポンプ、カタログ番号62897)からの噴霧の特徴を、画像解析を使用する噴射角度の測定により評価した。得られた結果は、4回の測定値の平均である(2回はある一つの方向で、2回は第一の方向に対して90°回転させて)。
【0162】
製剤のブプレノルフィン含量は、hplcにより決定した。
【0163】
ゲルは、標準塩化カルシウム溶液(9.44mg/ml CaCl2・2H2O)5mlと製剤20mlを制御して混合し、その後室温で1時間静置して調製した。各ゲルの構造、均一性、透明度、および離液の形跡の目視評価を行い、加えてゲル構造をStable Microsystems Texture Analyserにより試験した。結果(単一の測定から)は、力(最大透過力)および面積(ゲル透過の全作用)について表す。
【0164】
ペクチン濃度の、外観、溶液/ゲル特性、および噴霧特性に関する作用
1. 方法
塩酸ブプレノルフィン(107.5mg)および無水デキストロース(1.25g)を、25mlのメスフラスコ中、水18〜20ml中で適量のペクチンと共に攪拌し、この混合物を、一晩または溶液が形成されるまで攪拌した。その後この混合物を水で25mlとし、ブプレノルフィン4mg/ml、デキストロース50mg/ml、およびペクチン1、5、10、20、30、40または80mg/mlを含有する溶液を作成し、pH、外観、オスモル濃度、粘度を測定した。加えて、Pfeiffer複数投与量の鼻腔スプレー器具(標準ノズル、0.1mlポンプ、カタログ番号62897)からの噴霧特性を、画像解析を使用する噴射角度の測定により評価した。ゲルは、標準塩化カルシウム溶液(9.44mg/ml CaCl2・2H2O)5mlと製剤20mlを制御して混合し、その後室温で1時間静置して調製した。各ゲルの構造、均一性、透明度、および離液の形跡の目視評価を行い、加えてゲル構造をStable Microsystems Texture Analyserにより試験した。
【0165】
インビトロ法を用い、ペクチン製剤が鼻粘膜表面に接触した場合に生じ得るゲル化をシミュレートした。これは、各製剤2mlを等量のシミュレート用鼻腔電解質液(SNES)(塩化ナトリウム8.77g/l、塩化カリウム2.98g/l、および塩化カルシウム二水和物0.59g/lを含有)に添加することと、穏やかな攪拌とを含むものであった。この混合物を、室温で1時間静置し、その後目視により評価した。
【0166】
2.結果
ペクチン濃度が増加するにつれ、溶液は濁りが増し、オスモル濃度および粘度が増大し、噴射角度が減少した(表1)。最大30mg/mlペクチンまで、濃度と噴射角度の間に優れた相関が得られた。pHは、ペクチン濃度による顕著な影響は受けなかった。
【0167】
カルシウムイオンの添加時に、ペクチンは、濃度範囲5〜20mg/mlで目視により満足できるゲルを形成した(表2)。相応したゲル構造のより大きい完全性が、この範囲で注目された。より高いペクチン濃度では、質感分析(texture analysis)結果は、ゲルの均質性が制御困難であり離液の増加が認められ、決定的ではなかった。
【0168】
より低いカルシウムイオン濃度(SNES)では、ペクチンは可動性のゲルを10〜20mg/mlで形成し、より高い濃度では強力で均質でないゲルを形成した。
【0169】
(表1)塩酸ブプレノルフィン(BPN.HCl)4.3mg/ml、デキストロース50mg/ml、および様々な濃度のペクチン(Slendid 100)を含有するブプレノルフィン溶液の外観、pH、オスモル濃度、粘度、および噴霧特性(噴射角度)

* N/M=測定不能
【0170】
(表2)標準塩化カルシウム溶液と混合した場合のBPN.HCl 4.3mg/ml、デキストロース50mg/ml、および異なる濃度のペクチン(Slendid 100)を含有するブプレノルフィン溶液のゲル化特性

【0171】
(表2a)SNESと混合した場合のBPN.HCl 4.3mg/ml、デキストロース50mg/ml、および異なる濃度のペクチン(Slendid 100)を含有するブプレノルフィン溶液のゲル化特性

【0172】
塩酸ブプレノルフィンの溶解度およびゲル化特性に対するpHの作用
1.方法
ペクチン(Slendid 100)(20mg/ml)およびデキストロース(50mg/ml)を含有するストック溶液を、pH範囲3.0〜6.0の様々なpHで調製した(pH調節は0.1M HClまたは0.1Mメグルミンで行った)。その後過剰な塩酸ブプレノルフィンを、各溶液5または25ml中18℃で一晩攪拌した。飽和溶液を、各混合物を0.2μmポリカーボネートメンブランフィルターを通して回収した。濾液中の塩酸ブプレノルフィン濃度を、hplcにより決定した。
【0173】
予備実験において、過剰な塩酸ブプレノルフィンの添加は、溶液(非緩衝)のpHを低下することがわかった。所望のpH範囲のより高い終点(end)の溶液を作成するために、最小量の過剰な塩酸ブプレノルフィンを、0.1M HClまたは0.1MメグルミンによりpH4.5〜6.0の範囲の様々なpH値に調節したペクチン(Slendid 100)(20mg/ml)およびデキストロース(50mg/ml)を含有する溶液(5ml)に添加した。添加した余剰の塩酸ブプレノルフィンの量は、予備的知見および塩酸ブプレノルフィンについて報告された溶解度データ(Cassidyら、J. Controlled Release、25:21-29(1993))を基にした。一晩18℃で攪拌した後、残留した未溶解の薬物を確認するために混合物を試験し、各混合物を0.2μmポリカーボネートメンブランフィルターを通すことにより飽和溶液を回収した。
【0174】
選択された製剤について、標準塩化カルシウム溶液(9.44mg/ml CaCl2・2H2O)5mlと製剤20mlを制御して混合し、その後室温で1時間静置してゲルを調製した。各ゲルの構造、均一性、透明度、および離液の形跡の目視評価を行い、加えてゲル構造をStable Microsystems Texture Analyserにより試験した。
【0175】
2. 結果
ブプレノルフィンは、pH4.4より低い20mg/mlペクチン+50mg/mlデキストロースを含有する水溶液中ではやや可溶性であった(10ng/mlより多い)(表3)。全体的に溶解度は、pHが4.5を超えて増加すると下落した(表3a)。溶液は、pH4.5〜6.0でわずかに可溶性であった(10ng/ml未満)。
【0176】
ゲル化特性は、pHによって(従って、ブプレノルフィン濃度によって)大きな影響は受けなかった(表4)。
【0177】
(表3)20mg/mlペクチン(Slendid 100)および50mg/mlデキストロースを含有する溶液中pH3.2〜4.0でのBPN.HClの溶解度

*ブプレノルフィン遊離塩基として表す
【0178】
(表3a)20mg/mlペクチン(Slendid 100)および50mg/mlデキストロースを含有する溶液中pH4.4〜5.3でのBPN.HClの溶解度

*ブプレノルフィン遊離塩基として表す
【0179】
(表4)標準塩化カルシウム溶液と混合した場合の20mg/mlペクチン(Slendid 100)および50mg/mlデキストロースを含有する溶液中でのBPN.HClのゲル化特性に対するpHの作用

*濾過の間の容量喪失が予想された量よりも高かったので、容量を減少させて(製剤14mlおよびCaCl2・2H2O 3.5ml)使用した。
【0180】
塩酸ブプレノルフィンの粘度、噴霧特性、およびゲル化特性に対するオスモル濃度(デキストロースまたはマンニトール濃度)の作用
1. 方法
塩酸ブプレノルフィン(107.5mg)およびペクチン(Slendid 100)(500mg)を、25mlのメスフラスコ中、適量の無水デキストロースまたはマンニトールと共に水18〜20ml中で攪拌し、この混合物を一晩または溶液を形成するまで攪拌した。その後混合物を水で25mlとし、ブプレノルフィン4mg/ml、ペクチン20mg/ml、およびデキストロース15、50、87、122、157、または192mg/ml(またはマンニトール15、50、87、122mg/ml)を含有する溶液を得、pH、外観、オスモル濃度、粘度を決定した。加えて、Pfeiffer複数投与量の鼻腔スプレー器具(標準ノズル、0.1mlポンプ、カタログ番号62897)からの噴霧の特徴を、画像解析を使用する噴射角度の測定により評価した。ゲルは、製剤20mlを標準塩化カルシウム溶液(CaCl2・2H2O 9.44mg/ml)5mlと制御して混合し、その後室温で1時間静置して調製した。各ゲルの構造、均一性、透明度、および離液の形跡の目視評価を行い、加えてゲル構造をStable Microsystems Texture Analyserにより試験した。
【0181】
2. 結果
デキストロース濃度が15から50mg/mlに増加するにつれ、鼻腔用スプレー器具からの噴霧特性は、粘度の増加に関わる噴射角度の減少により示されるような影響を受けた:50mg/mlを超えるデキストロースでは、噴射範囲は一貫して狭かった(表5)。マンニトール濃度が増加すると、粘度はわずかに増加し、噴射角度がわずかに減少した(表6)。
【0182】
ゲル構造は、デキストロース濃度が増加するにつれ、わずかに弱まることがある。これは、目視評価により示されたが、質感分析の結果は決定的ではなかった(表7)。
【0183】
ゲル構造は、比較的高いマンニトール濃度で影響を受けた。目視評価および質感分析は、より少ない均一性およびより脆弱なゲルが作成されたことを示した(表8)。
【0184】
(表5)異なる濃度のデキストロースを含有する4.3mg/ml BPN.HCl/20mg/mlペクチン(Slendid 100)溶液のオスモル濃度、粘度、および噴霧特性

【0185】
(表6)異なる濃度のマンニトールを含有する4.3mg/ml BPN.HCl/20mg/mlペクチン(Slendid 100)溶液のオスモル濃度、粘度、および噴霧特性

*溶解せず
【0186】
(表7)異なる濃度のデキストロースを含有する4.3mg/ml BPN.HCl/20mg/mlペクチン(Slendid 100)溶液のゲル化特性

【0187】
(表8)標準塩化カルシウム溶液と混合した場合の異なる濃度のマンニトールを含有する4.3mg/ml BPN.HCl/20mg/mlペクチン(Slendid 100)溶液のゲル化特性

【0188】
ブプレノルフィン溶解度に対するデキストロースおよびマンニトール濃度の作用
1. 方法
ペクチン(Slendid 100)(20mg/ml)を含有する溶液を、pH3、4、5、および6で調製した(pH調節は、0.1M HClまたは0.1Mメグルミンで行った)。各溶液5mlへ、無水デキストロースまたはマンニトール0、62.5、125、187.5、または200mgを溶解し、およそのデキストロース/マンニトール濃度0、12.5、25、37.5、または50mg/mlをそれぞれ生じた。その後過剰な塩酸ブプレノルフィンを添加し、この混合物を一晩18℃で攪拌した。飽和塩酸ブプレノルフィン溶液を、各混合物を0.2μmポリカーボネートメンブランフィルターを通すことにより作成した。濾液中の塩酸ブプレノルフィン濃度は、hplcにより決定した。
【0189】
2. 結果
ペクチン20mg/mlを含有する水溶液中のブプレノルフィン溶解度は、測定したpH範囲について、デキストロース(表9)またはマンニトール(表10)濃度によって著しい影響は受けなかった。
【0190】
(表9)20mg/mlペクチン(Slendid 100)含有溶液中のBPN.HClの溶解度に対するデキストロース濃度の作用

*ブプレノルフィン遊離塩基として表す
【0191】
(表10)20mg/mlペクチン(Slendid 100)含有溶液中のBPN.HClの溶解度に対するマンニトール濃度の作用

*ブプレノルフィン遊離塩基として表す
【0192】
陰性対照実験:HM(高メトキシ)ペクチン(20mg/ml Genu(商標)ペクチン[citrus]型USP-H)溶液のカルシウムとの混合の作用
薬物の粘膜表面への保持に適したペクチンは、エステル化度が低く(「低メトキシ」または「LM」ペクチンとも称される)、水溶液中で、粘液中に認められるイオン、特に二価イオン、特にカルシウムの存在下でゲル化する。陰性対照として、「高メトキシ」ペクチン溶液を調製し、カルシウムイオンを含有する溶液と混合した。
【0193】
1. 方法
塩酸ブプレノルフィン(107.5mg)、無水デキストロース(1.25g)、およびペクチン(Genuペクチン[citrus]型USP-H;CP Kelco, Lille Skenved社、デンマーク)(500mg)を、25mlメスフラスコ内で、水18〜20ml中で一晩または溶液が形成されるまで攪拌した。その後この混合物を水で25mlとし、ブプレノルフィン4mg/ml、ペクチン20mg/ml、およびデキストロース50mg/mlを含有する溶液を得、pHおよびオスモル濃度を決定した。この製剤のアリコート20mlを、標準塩化カルシウム溶液(9.44mg/ml CaCl2・2H2O)5mlと混合し(制御された条件下で)、その後室温に1時間静置した。その後生成物の構造、均一性、および透明度を評価した。
【0194】
2. 結果
この溶液は、pH3.3およびオスモル濃度0.35osmol/kgを有した。この溶液が9.44mg/ml CaCl2・2H2Oと混合された場合、不透明な淡黄色の溶液を形成した。この溶液は、室温に1時間放置してもゲル化しなかった。
【0195】
実施例8:臨床試験
実施例1、3、および5の鼻腔内ブプレノルフィン製剤(製剤AからC)の単位投与量および1種の静脈内投与用の市販のブプレノルフィン製剤(Temgesic(商標);製剤D)を、健常志願者に投与した。志願者に投与された単位投与量は、以下のようである:
−鼻腔内投与された製剤A、B、またはCの、ブプレノルフィンとして計算して800μgの塩酸ブプレノルフィン;および
−製剤Dの、ブプレノルフィンとして計算して400μgの塩酸ブプレノルフィンの単回の緩徐な静脈内注射。
【0196】
投与は、12名の健常志願者に、無作為化完全クロスオーバーデザインを用いて行った。各投与は、少なくとも7日間に分けた。志願者は、投与前に一晩絶食を求められた。対象は、診療所に各用量投与の前の晩に入院し、各試験日について血液検体採取まで診療所に留まった。血液検体は、各投与量投与後24時間まで定期間隔で採取した。志願者は、24時間の試験手順が全て完了後、診療所を退院した。各投与の間に、少なくとも7日間の休薬期間を置いた。
【0197】
各投与計画の薬物動態を評価した。結果を図1から3に示す。3種の鼻腔内溶液は全て、同様の薬物動態プロファイルを示した。Ctherは、各製剤について5〜10分以内に到達し、20分またはそれ未満でCmaxに到達した。このデータは、初期血漿ピークが、鼻腔内製剤について、静脈内投与と比べて鈍いことを示した。これは、製剤Aについて最も顕著であるように見えた。3種全ての鼻腔内溶液が、高い生体利用率を示した(表11)。
【0198】
(表11)鼻腔内ブプレノルフィンに関する臨床試験データからの重要な薬物動態パラメータの、舌下錠剤に関する公表されたデータおよびブプレノルフィンのデキストロース含有製剤との比較

【0199】
ブプレノルフィンとして計算した製剤Aの400μg鼻腔内投与量についての薬物動態プロファイルは、製剤Aの800μg投与量についてのデータから算出した。このプロファイルを図4に示す。図4に、静脈内投与された製剤Aの400μg投与量の薬物動態プロファイルも示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛の治療のための鼻腔内投与用医薬品を製造するための鎮痛薬および送達物質の使用であって、これにより、治療される患者の鼻腔への導入時に、鎮痛薬が血流に送達され、30分以内に0.2ng/ml以上の治療的血漿濃度Ctherを生じ、これが少なくとも2時間のTmaint期間維持される、使用。
【請求項2】
鎮痛薬がオピオイド鎮痛薬である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
鎮痛薬が、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルである、請求項2記載の使用。
【請求項4】
鎮痛薬が、非ステロイド系抗炎症薬である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
鎮痛薬が、ジクロフェナク、エトドラク、ピロキシカム、もしくはメロキシカム、またはそれらの生理的に許容できる塩もしくはエステルである、請求項4記載の使用。
【請求項6】
医薬品が水溶液である、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
送達物質が、エステル化度50%未満を有するペクチンである、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
送達物質がキトサンである、請求項1〜6のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
キトサンが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aは2〜130であり、bは15〜67である)のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーと組合せて提供される、請求項8記載の使用。
【請求項10】
Ctherが、0.4〜100ng/mlであり、1〜15分以内に生じる、請求項1〜9のいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
Cmaxが、治療される患者の鼻腔内に医薬品が導入された後10〜30分以内に到達される、請求項1〜10のいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
痛覚消失の誘導に使用する鼻腔内送達器具製造のための、鎮痛薬および送達物質を含む薬学的組成物の使用であって、これにより、治療される患者の鼻腔への導入時に、鎮痛薬が血流に送達され、30分以内に0.2ng/ml以上の治療的血漿濃度Ctherを生じ、これが少なくとも2時間のTmaint期間維持される、使用。
【請求項13】
鎮痛薬および送達物質を含む鎮痛薬としての使用に適した薬学的組成物であって、これにより、治療される患者の鼻腔への導入時に、鎮痛薬が血流に送達され、30分以内に0.2ng/ml以上の治療的血漿濃度Ctherを生じ、これが少なくとも2時間のTmaint期間維持される、使用。
【請求項14】
痛覚消失をそれが必要な患者へ誘導する方法であって、鎮痛薬および送達物質を含む薬学的組成物を該患者へ鼻腔内投与し、これにより、治療される患者の鼻腔への導入時に、鎮痛薬が血流に送達され、30分以内に0.2ng/ml以上の治療的血漿濃度Ctherを生じ、これが少なくとも2時間のTmaint期間維持される工程を含む、方法。
【請求項15】
ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルをブプレノルフィンとして計算して0.1〜0.6mgの単位用量が鼻腔内投与される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
(a)ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、
(b)キトサンを0.1〜20mg/ml、および
(c)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1〜15mg/ml
を含み;pH3〜4.8を有する、鼻腔内投与に適した水溶液。
【請求項17】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、見かけの粘度3000〜6000cpsを有し、かつ0.1〜15mg/mlの量で存在する、請求項16記載の溶液。
【請求項18】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースが、0.5〜10mg/mlの量で存在する、請求項17記載の溶液。
【請求項19】
(a)ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、
(b)キトサンを0.1〜20mg/ml、および
(c)一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aは2〜130であり、bは15〜67である)ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを50〜200mg/ml
を含み;pH3〜4.8を有する、鼻腔内投与に適した水溶液。
【請求項20】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが、80〜120mg/mlの量で存在する、請求項19記載の溶液。
【請求項21】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが、分子量7,000〜10,000を有する、請求項19または20記載の溶液。
【請求項22】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが、aは80であり、bは27であるものである、請求項19〜21のいずれか1項記載の溶液。
【請求項23】
オスモル濃度が、0.32〜0.4osmol/kgである、請求項16〜22のいずれか1項記載の溶液。
【請求項24】
ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルが、0.5〜8mg/mlの量で存在する、請求項16〜23のいずれか1項記載の溶液。
【請求項25】
ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルが、ブプレノルフィンとして計算して1〜6mg/mlの量で存在する、請求項24記載の溶液。
【請求項26】
塩酸ブプレノルフィンを含む、請求項16〜25のいずれか1項記載の溶液。
【請求項27】
キトサンが2〜10mg/mlの量で存在する、請求項16〜26のいずれか1項記載の溶液。
【請求項28】
キトサンが、脱アセチル化されたキチンの生理的に許容できる塩である、請求項16〜27のいずれか1項記載の溶液。
【請求項29】
塩がキトサングルタメートである、請求項28記載の溶液。
【請求項30】
pHが3.2〜3.8である、請求項16〜29のいずれか1項記載の溶液。
【請求項31】
pHが、塩酸により調節される、請求項16〜30のいずれか1項記載の溶液。
【請求項32】
保存剤を含む、請求項16〜31のいずれか1項記載の溶液。
【請求項33】
保存剤が、塩化ベンザルコニウムである、請求項32記載の溶液。
【請求項34】
張性調節剤としてデキストロースを含む、請求項16〜33のいずれか1項記載の溶液。
【請求項35】
請求項16記載の水溶液の調製方法であって、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル、キトサン、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを水中に溶解し、ブプレノルフィンまたはその該塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、キトサンを0.1〜20mg/ml、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1〜15mg/ml含む溶液を提供する工程;ならびに、所望に応じて溶液のpHを3〜4.8の値に調節する工程を含む、方法。
【請求項36】
請求項19記載の水溶液の調製方法であって、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステル、キトサン、および一般式HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH(式中、aは2〜130であり、bは15〜67である)のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを水中に溶解し、ブプレノルフィンまたはその該塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、キトサンを0.1〜20mg/ml、およびポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを50〜200mg/ml含む溶液を提供する工程;ならびに、所望に応じて溶液のpHを3〜4.8の値に調節する工程を含む、方法。
【請求項37】
得られた溶液が、鼻腔送達器具へ導入される、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを0.1〜10mg/ml、およびエステル化度50%未満のペクチンを5〜40mg/ml含み;pHが3〜4.2であり、実質的に二価金属イオンを含まず、かつ鼻粘膜上でゲル化する、鼻腔内投与に適した水溶液。
【請求項39】
ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルが、0.5〜8mg/mlの量で存在する、請求項38記載の溶液。
【請求項40】
ブプレノルフィンまたはブプレノルフィン塩もしくはエステルが、ブプレノルフィンとして計算して1〜6mg/mlの量で存在する、請求項39記載の溶液。
【請求項41】
塩酸ブプレノルフィンを含む、請求項38〜40のいずれか1項記載の溶液。
【請求項42】
ペクチンが、10〜30mg/mlの量で存在する、請求項38〜41のいずれか1項記載の溶液。
【請求項43】
ペクチンが、10〜35%のエステル化度を有する、請求項38〜42のいずれか1項記載の溶液。
【請求項44】
pHが、3.2〜3.8である、請求項38〜43のいずれか1項記載の溶液。
【請求項45】
pHが塩酸により調節される、請求項38〜44のいずれか1項記載の溶液。
【請求項46】
保存剤を含む、請求項38〜45のいずれか1項記載の溶液。
【請求項47】
フェニルエチルアルコールおよびヒドロキシ安息香酸プロピルを保存剤として含む、請求項46記載の溶液。
【請求項48】
オスモル濃度が0.25〜0.4osmol/kgである、請求項38〜47のいずれか1項記載の溶液。
【請求項49】
張性調節剤としてデキストロースを含む、請求項38〜48のいずれか1項記載の溶液。
【請求項50】
(a)ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを、ブプレノルフィンとして計算して1〜6mg/ml、
(b)エステル化度10〜35%を有するペクチンを10〜40mg/ml、および
(c)張性調節剤としてデキストロース
を含み、pH3.5〜4.0を有し、実質的に二価金属イオンを含まない、鼻腔内投与に適した水溶液。
【請求項51】
請求項38記載の水溶液の調製方法であって、ブプレノルフィンまたはその生理的に許容できる塩もしくはエステルを水中に溶解する工程;得られた溶液を、エステル化度50%未満のペクチンの水溶液と混合する工程であって、混合液が、ブプレノルフィンまたはその該塩もしくはエステルを0.1〜10mg/mlおよびペクチンを5〜40mg/ml含む、工程;ならびに、所望であればこの溶液のpHを3〜4.2の値に調節する工程を含む、方法。
【請求項52】
得られた溶液が、鼻腔送達器具へ導入される、請求項51記載の方法。
【請求項53】
請求項16〜34または38〜50のいずれか1項記載の溶液を装填した、鼻腔送達器具。
【請求項54】
スプレー器具である、請求項53記載の器具。
【請求項55】
痛覚消失の誘導において使用する鼻腔送達器具の製造のための、請求項16〜34または38〜50のいずれか1項記載の溶液の使用。
【請求項56】
請求項16、19、または38のいずれか1項記載の水溶液を、患者に鼻腔内投与する工程を含む、痛覚消失をそれが必要な患者に誘導する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−174029(P2010−174029A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71698(P2010−71698)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【分割の表示】特願2003−577852(P2003−577852)の分割
【原出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(504355321)アルキメデス ディベロップメント リミテッド (1)
【Fターム(参考)】