説明

長繊維によって補強された金属からなる連結ロッドを製造する製造方法

本発明は連結ロッドを製造する製造方法に関する。この製造方法は、長繊維(5)により補強された金属材料から形成される本体(1)を、長繊維(5)が本体の長手軸線(X)に沿って主として延在するように形成し、短繊維により補強された金属材料からなるエンドピースを形成するとともに、エンドピースを摩擦撹拌溶接によって本体の端部に溶接することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維によって補強された金属からなる連結ロッドを製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連結ロッドの本体を本体の軸線に沿って延びる長繊維によって補強することは公知である。例えば、特許文献1は連結ロッドを開示しており、その連結ロッドにおいては、本体が長繊維から形成されたコアを含んでいる。繊維は一緒に集められて束を形成し、この束が銅の拡散にさらされる。このようにして強固にされた繊維の束は続いてモールド内で混合され、モールド成形された例えばアルミニウム製の連結ロッドの中央コアを形成する。かかる補強体は、連結ロッドの応力軸線に沿って延在しているので非常に良好な性能を示す。
【0003】
対照的に、長繊維を連結ロッドのエンドピース内に、またはエンドピースの周りに組付けることは技術的により困難であるとともに、このようにしてエンドピースに組付けられた特定の長繊維が長手方向に対して直交して及ぶ力を受ける場合には、本体を補強することほど効果的ではないことが分かっている。
【0004】
したがって、前述した文献における連結ロッドのエンドピースは金属のみから形成されていて、長繊維による補強の恩恵を受けていない。したがって、これらエンドピースは、エンドピースが受ける応力およびそれら応力によって生じる変形に耐えるのに適した一様な材料から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】仏国特許第2502036号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、長繊維で補強された本体を有する連結ロッドを製造する製造方法を提供することであり、この製造方法は、連結ロッドの本体とエンドピースとの間において特定の量の連続性を付与する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、連結ロッドを製造する製造方法であって、長繊維によって補強される金属材料からなる本体を、前記長繊維が前記本体の長手軸線に主として沿って向けられるように形成し、短繊維によって補強される金属材料からエンドピースを形成するとともに、摩擦混合溶接技術を利用して前記エンドピースを前記本体の端部に溶接することを含む、製造方法を提供する。
【0008】
長繊維は本体を補強するのに特に有利であり、短繊維はエンドピースを顕著に補強できるとともに、エンドピースを構成する材料の概ね均一な性質を保持できる。提案される溶接技術は「摩擦撹拌溶接」としても知られていて、本体とエンドピースとの間において緊密な接合作用をもたらし、短繊維を備えた領域と、長繊維を備えた領域との間において連続的な移行部を形成する。
【0009】
したがって、本発明によって提供される手段によると、連結ロッドの各領域に適切な長さの繊維を用いることによって、すべての部位において補強された連結ロッドを形成できるようになるとともに、これら領域間に連続性を呈するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の特定の実施形態における連結ロッドの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、本発明の特定の実施形態における連結ロッドを製造途中の状態にて示した概略断面図である、唯一の図面についての以下の説明を踏まえるとより良く理解されうる。
【0012】
図面を参照すると、連結ロッドは本体1を備えており、その主要部が図面から分かる。本体は、この実施例では高強度アルミニウムから形成されたスリーブ2を備えている。スリーブ2は、円筒状であるとともにカラー4において終端している主要部3を有している。長繊維5からなるシートが主要部3の外側面に配置されており、この繊維は、この実施例では本体の長手軸線Xに対して平行に延在する炭化ケイ素繊維である。スリーブ2はモールド成形されるのが好ましく、長繊維5がモールド内に挿入され、それにより金属がそれら繊維の間に浸透できるようになり、したがってスリーブ2と長繊維5との間における高度の密着性が保証される。また、円筒状または円錐状のブランク周りのシートとして配置された金属製の鞘にコーティングされたセラミック繊維を用いてもよく、そしてこの組立体が熱間圧縮にさらされる。繊維とスリーブとの間に密着性をもたらすための他の方法は、例えば接着剤または合成樹脂の使用によって実施される。
【0013】
この実施例において長繊維5は、それら繊維を保護するように作用する円筒状のカバー6により被覆されている。長繊維がカラー4の近傍まで延在している点に留意されたい。
【0014】
さらに、エンドピース10が形成される。この実施例ではアイレットの形態を有するエンドピースが、短繊維、例えば炭化ケイ素の繊維で補強されたアルミニウムから形成される。エンドピースは、本体1のカラー4に対して相補形状のカラー11を備えている。エンドピース10の材料における短繊維の存在は、図面において象徴的に示されている。
【0015】
エンドピース10を本体に嵌合し、これら2つの要素を、摩擦混合溶接(friction−mixing welding)技術を利用して、カラーの間の境界面を介して一緒に溶接する。この技術は、高速回転されるとともに、一緒に組付けられるべき2つの要素を擦る、特別なツール20を利用することに留意されたい。それら要素に対するツールの摩擦によって、それら要素の材料が軟化し、材料がペースト状態に変わる。そうするとツールが、一緒に溶接されるべきそれら部品間の境界面における接合面を貫通するとともに、金属の鍛造処理と押出処理との組合せによって、2つの要素の材料を一緒に緊密に混合する。
【0016】
かかる溶接処理は、スリーブ2の材料内のエンドピース10の材料において局所的な混合を生じさせ、それによりエンドピース10の材料内に存在する補強用短繊維がスリーブ2の材料へと局所的に拡散し、そうすることによりそれら2つの要素間に連続性を付与するようになる。
【0017】
当然ながら、他方のエンドピースも同様の処理を利用してスリーブの他端に組付ける必要がある。
こうすることによって、本体が長繊維によって補強されるとともにエンドピースが短繊維によって補強されていて、短繊維領域と長繊維領域との間の移行部が連続的(progressive)である連結ロッドが提供される。
【0018】
本発明は前述した記載に限定されず、特許請求の範囲によって定まる範囲内に含まれるいかなる変形物をも包含する。
特に、前述した金属は高強度アルミニウム、例えば7000系であるものの、本発明は、他の金属材料、例えばチタンまたはマグネシウムから形成された本体およびエンドピースにも適用される。
【0019】
スリーブの金属材料それ自体は、エンドピースの短繊維と適合性のある短繊維を含んでいてもよい。
最後に、エンドピースに溶接される前に連結ロッドの本体が完全に形成されると述べたものの、スリーブが長繊維補強部を受容する前にエンドピースをスリーブに溶接してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結ロッドを製造する製造方法であって、
長繊維(5)によって補強される金属材料からなる本体(1)を、前記長繊維(5)が前記本体の長手軸線(X)に主として沿って向けられるように形成し、
短繊維によって補強される金属材料からエンドピースを形成するとともに、
摩擦混合溶接技術を利用して前記エンドピースを前記本体の端部に溶接することを含む、製造方法。
【請求項2】
前記本体がカラー(4)において終端するスリーブ(2)を備えるとともに、前記長繊維(5)を担持する円筒状主要部(3)をさらに備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記スリーブ(2)の主要部が円筒状のカバー(6)によって被覆される、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記本体の金属材料がアルミニウムであり、前記長繊維が炭化ケイ素からなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記エンドピースの金属材料がアルミニウムであり、前記短繊維が炭化ケイ素からなる、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−514164(P2012−514164A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542859(P2011−542859)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/FR2009/001452
【国際公開番号】WO2010/072915
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511154180)メシエ−ブガッティ−ドウティ (26)
【Fターム(参考)】