説明

開封保持性に優れた容器密封用蓋体

【課題】開封した状態を保持するのに十分なデッドホールド性を有する即席食品等の容器用に好適な蓋体を提供する。
【解決手段】紙シート204と、カール性プラスチック層201と、部分的易剥離層23とを有し、カール性プラスチック層201より紙シート204を下側にして容器にシールされる容器密封用蓋体2であって、外周縁に設けられた開封用タブ部と、その下面側に設けられたタブ部剥離用ハーフカット24dと、ハーフカット24dより中心側で蓋体2の下側に刻設された注湯口形成用環状ハーフカット24cとを有し、部分的易剥離層23は注湯口形成用環状ハーフカット24cを包囲するように設けられており、かつカール性プラスチック層201を形成するフィルムは弾性変形領域内の機械方向延伸を施した状態で紙シート204に接着されている容器密封用蓋体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開封保持性に優れ、即席食品等の容器に用いるのに好適な蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
カップラーメンや即席焼きそばのような即席食品を収容する容器の蓋体は、開封時に注湯が容易であるとともに、3分間程保持する間容易に封止できるようになっているのが好ましい。開封時に注湯が容易であるためには、開封した蓋体が強くカールして、開封状態が保持される必要がある。また再封が容易であるためには、蓋体の開封部(フラップ部)が蓋体の残留部又は容器本体と容易に係合して、フラップ部が封止状態に保持されることが必要である。
【0003】
開封保持性に関しては、特開2002-302154号(特許文献1)は、図26及び27に示すように、内容物を収容する容器本体1の上端フランジ部1aにシールされる蓋体200であって、開封用タブ部21と、開封用タブ部21の両側に設けられた引裂始点22a,22bとを有する蓋体を開示している。蓋体200は少なくともデッドホールド性付与紙シート及びシーラントフィルムを有する積層シートからなるので、開封用タブ部21を持ち上げると、図27に示すように、蓋体200は引裂始点22a,22bの延長線220a,220bに沿って引き裂かれ、帯状フラップ部3ができる。残留した蓋体2の側縁部2a,2b及び帯状フラップ部3の側縁部3a,3bは、紙シートの引裂面が露出しているので、ギザギザしている。従って、フラップ部3が立ち上がった状態で注湯した後、フラップ部3を再封すると、蓋体200のギザギザな側縁部2a,2bと帯状フラップ部3のギザギザな側縁部3a,3bとが係合し、フラップ部3はしっかり再封される。しかしながら、蓋体200はデッドホールド性付与層として紙シートのみを有するので、フラップ部3の立ち上がりが十分でないことがあることが分かった。
【0004】
特開2004-83099号(特許文献2)は、十分なフラップ部3の立ち上がりを確保するため、上面から順に主としてポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、紙シート、及びシーラントフィルムを有する積層シートからなる蓋体300を開示している。蓋体300はデッドホールド性に優れたPBTフィルムを有するので、特許文献1に記載の蓋体に比べて、フラップ部3のカール性に優れている。しかしながら、蓋体300はフラップ部3が紙シートより下面側の部分を全面に有するので、例えば蓋体300が紙シートより下面側に剛性の高い樹脂フィルム等を有する場合、フラップ部3の立ち上がりが十分でないことがあることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-302154号
【特許文献2】特開2004-83099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、開封した状態を保持するのに十分なデッドホールド性を有する即席食品等の容器用に好適な蓋体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、蓋体の開封により得られるフラップ部が大きなカール性を有するプラスチック層を全面に有し、全層部を全面に有さないように部分的易剥離層を設けると、大きなカール性による優れた開封保持性を達成することができることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の容器密封用蓋体は、紙シートと、カール性プラスチック層と、部分的易剥離層とを有し、前記カール性プラスチック層より前記紙シートを下側にして容器にシールされる容器密封用蓋体であって、外周縁に設けられた開封用タブ部と、前記開封用タブ部の下面側に設けられたタブ部剥離用ハーフカットと、前記タブ部剥離用ハーフカットより中心側で前記蓋体の下側に刻設された注湯口形成用環状ハーフカットとを有し、前記部分的易剥離層は前記注湯口形成用環状ハーフカットを包囲するように設けられており、前記カール性プラスチック層はカール性プラスチックフィルムからなり、かつ前記カール性プラスチックフィルムは弾性変形領域内の機械方向延伸を施した状態で前記紙シートに接着されており、もって前記蓋体はカール性を有することを特徴とする。
【0009】
前記部分的易剥離層は、前記タブ部剥離用ハーフカットから前記蓋体の中心を越える位置まで形成されているのが好ましい。前記蓋体には引き剥がし停止マークが設けられており、前記部分的易剥離層は、前記タブ部剥離用ハーフカットから前記引き剥がし停止マークの位置まで形成されているのが好ましい。
【0010】
注湯後湯切りする即席食品用容器に貼付される本発明の第二の容器密封用蓋体は、第一の蓋体の特徴の他に下記の特徴を有する。すなわち、この容器密封用蓋体は湯切り口形成用タブ部を有し、前記湯切り口形成用タブ部は一対の切れ目と、前記一対の切れ目の間に開放端を内側に向けて前記蓋体の下側に刻設された複数の実質的にU字状のハーフカットとを有し、各U字状ハーフカットは一対の直線部と、両直線部の連結部とからなり、前記切れ目及び前記U字状ハーフカットの先端はいずれも前記蓋体のシール部内に位置しており、前記U字状ハーフカットに囲まれた部分及び前記一対の直線部の先端から前記湯切り口形成用タブ部の開封方向に延在する各直線の間に湯切り口形成用部分的易剥離層が設けられており、前記U字状ハーフカットは前記蓋体の下面から前記部分的易剥離層までの深さを有し、かつ前記蓋体の易裂方向は前記切れ目の方向と実質的に一致しており、もって前記湯切り口形成用タブ部を持って前記蓋体を前記容器本体から引き剥がすと、前記切れ目及び前記U字状ハーフカットの先端から前記蓋体が引き裂かれ、前記湯切り口形成用部分的易剥離層より下面側の部分が容器本体の上端フランジ部に密着したまま残留し、複数の湯切り口が形成されるようになっている。
【0011】
前記湯切り口形成用部分的易剥離層は、前記U字状ハーフカットから前記湯切り口形成用タブ部用の引き剥がし停止マークの位置まで設けられているのが好ましい。
【0012】
前記U字状ハーフカットの一対の直線部は先に行くほど間隔が狭まるように傾斜しているのが好ましい。前記一対の切れ目の先端には先に行くほど間隔が広がるように傾斜した一対の線部が設けられているのが好ましい。
【0013】
前記切れ目の先端及び前記U字状ハーフカットの一対の直線部の先端は、前記蓋体のシール部の中心線に関して外周側に位置するのが好ましい。前記切れ目の先端及び前記U字状ハーフカットの一対の直線部の先端の前記シール部内における位置は、外周から前記シール部の幅の30〜50%の範囲内であるのがより好ましい。
【0014】
前記切れ目の各先端から開封方向に延びる直線に湯切り口形成用ハーフカットが設けられているのが好ましい。前記U字状ハーフカットの各先端から開封方向に延びる直線に沿って、前記蓋体の下側に湯切り口形成用ハーフカットが設けられているのが好ましい。
【0015】
注湯後湯切りする即席食品用容器に貼付される本発明の第三の容器密封用蓋体は、第一の蓋体の特徴の他に下記の特徴を有する。すなわち、この容器密封用蓋体は、(a) 前記開封用タブ部とほぼ対向する位置に複数の矩形状の湯切り口形成用ハーフカットが蓋体の下側に刻設されており、かつ(b) 前記部分的易剥離層が前記湯切り口形成用矩形状ハーフカットを包囲するように設けられている。
【0016】
第一〜第三の容器密封用蓋体はいずれも、前記カール性プラスチック層としてポリブチレンテレフタレートフィルムを有するのが好ましい。
【0017】
第一〜第三の容器密封用蓋体はいずれも、上面側からカール性プラスチック層、紙シート、接着層、剛性プラスチックフィルム及びシーラント層を有し、前記部分的易剥離層は前記接着層に設けられているのが好ましい。前記剛性フィルムは、一軸配向又は配向度が異なる二軸配向のポリエチレンテレフタレートフィルムからなるのが好ましい。前記部分的易剥離層は前記接着層の上面又は下面、もしくは前記接着層と同一面内にあるのが好ましい。前記部分的易剥離層の両側には、剥離面に紙シートが露出しないように、接着性プラスチック(例えばポリエチレン)フィルムが設けられているのが好ましい。
【0018】
前記カール性プラスチックフィルムは1〜3%の伸度の機械方向延伸を施した状態で前記紙シートと接着されているのが好ましい。前記カール性プラスチックフィルムは10〜20 kgf/m幅の張力を付与した状態で前記紙シートと接着されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の容器密封用蓋体は、開封により得られたフラップ部が大きなカール性を有するプラスチック層を全面に有し、全層部を全面に有さないので、大きなカール性による優れた開封保持性を利用することができる。そのため、開封時には注湯し易いようにフラップ部を大きく立ち上げた状態に保持することができる。さらに部分的易剥離層を紙シートより上面側に有するので、開封により得られたフラップ部に紙シートのギザギザな破断面が露出し、紙シートのギザギザな破断面の係合による優れた再封性も利用することができる。そのため、保温時にはフラップ部を元の位置まで戻すだけで蓋体としっかり係合させ、再封状態を確実に保持することができる。このように部分的易剥離層を紙シートより上面側に有する蓋体は開封保持性と再封性の両方に優れている。
【0020】
このような特徴を有する本発明の蓋体は、熱湯を注いで喫食するカップ麺等の即席食品用の蓋体として好適である。本発明の優れたカール性を有する蓋体を備えた食品用容器は、即席食品だけでなく、風味添加剤を収容するための小型の容器としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】カップラーメン容器に貼付した本発明の一実施例による容器密封用蓋体を示す斜視図である。
【図2】図1の蓋体を示す平面図である。
【図3】図2の蓋体の開封によりできたフラップ部を180°広げた状態を示す平面図である。
【図4】図2のA−A拡大断面図である
【図5】図4の部分Xを示す拡大断面図である。
【図6】図5のB−B拡大断面図である。
【図7】カップラーメン容器に貼付した図1の蓋体を開封した後再封した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明の別の実施例による蓋体を示す平面図である。
【図9】図8の蓋体を示す底面図である。
【図10】図8の蓋体の湯切り口形成用タブ部付近を示す部分拡大図である。
【図11】図8の蓋体の湯切り口形成用タブ部付近を示す別の部分拡大図である。
【図12】図8のC−C拡大断面図である。
【図13】図8のD−D拡大断面図である。
【図14】図8の湯切り口形成用タブ部を開封した状態を示す部分拡大図である。
【図15】本発明のさらに別の実施例による蓋体を示す平面図である。
【図16】図15の蓋体を示す底面図である。
【図17】図15のE−E拡大断面図である。
【図18】図15のF−F拡大断面図である。
【図19】インスタント焼きそば用容器に貼付した図15の蓋体の開封によりできたフラップ部を取り去った状態を示す斜視図である。
【図20】カップラーメン容器に貼付した本発明のさらに別の実施例による蓋体を示す斜視図である。
【図21】カップラーメン容器に貼付した本発明のさらに別の実施例による蓋体を示す斜視図である。
【図22】インスタント焼きそば用容器に貼付した本発明のさらに別の実施例による蓋体を示す斜視図である。
【図23】本発明の蓋体のさらに別の層構成を示す拡大断面図である。
【図24】本発明の蓋体のさらに別の層構成を示す拡大断面図である。
【図25】積層シートから複数の蓋体を打ち抜く様子を示す平面図である。
【図26】カップラーメン容器に貼付した従来の蓋体の例を示す斜視図である。
【図27】カップラーメン容器に貼付した図26の蓋体が開封された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の蓋体の構造を添付図面を参照して説明するが、特に断りがない限り図26及び27に示す部位と同じ部位には同じ参照番号を付与する。従って、図26及び27に示す蓋体の説明を参照されたい。
【0023】
[1] 蓋体の構造
(1) 第一の蓋体
図1〜3は本発明の第一の蓋体を示す。カップラーメン容器1に貼付される蓋体2は、開封用タブ部21と、タブ部21の下面側に設けられたタブ部剥離用ハーフカット24dと、タブ部剥離用ハーフカット24dより中心側で蓋体2の下側に刻設された注湯口形成用環状ハーフカット24cと、注湯口形成用環状ハーフカット24cを包囲するように設けられた部分的易剥離層23とを有する。
【0024】
注湯口形成用環状ハーフカット24cは注湯するのに十分な大きさを有すればよい。注湯口形成用環状ハーフカット24cは、注湯口が形成されるように環状であればよく、図2に示すような楕円状以外に矩形状、台形状等であってもよい。
【0025】
部分的易剥離層23は開封用タブ21に設けられたタブ部剥離用ハーフカット24dから蓋体2の中心Oを越える位置まで形成するのが好ましい。例えば図2に示すように、部分的易剥離層23を少なくとも引き剥がし停止マーク26の位置まで形成する。
【0026】
蓋体2の層構成について説明する。図4に示す例では、蓋体2は、カール性プラスチック(PBT)フィルム201、押出ラミネーションされたポリエチレン層203a、接着層202、押出ラミネーションされたポリエチレン層203b、紙シート204、接着層205、押出ラミネーションされたポリエチレン層206、剛性プラスチック(PET)フィルム207、遮光性インク層208、接着層209、押出ラミネーションされたポリエチレン層210、及びシーラント層211からなる。部分的易剥離層23は接着層202の一部として形成されている。注湯口形成用環状ハーフカット24c及びタブ部剥離用ハーフカット24dは、蓋体2の下面からシーラント層211、ポリエチレン層210、接着層209、遮光性インク層208、剛性プラスチックフィルム207、ポリエチレン層206、接着層205、紙シート204を貫通して接着層202に到達している。
【0027】
図5に示す例では、カール性プラスチック(PBT)フィルム201と紙シート204との間の一対のポリエチレン層203a,203bの間に接着層202が形成されており、接着層202の一部が部分的易剥離層23となっている。部分的易剥離層23は、図6に示すように、点状の剥離性樹脂125が接着層202に均一に分布した構造を有する。しかし、部分的易剥離層はこれに限定的されることなく、接着層202の上面側又は下面側に薄膜状に塗布された剥離性樹脂層でも良い。
【0028】
開封用タブ部21を引き上げると、図3に示すように、部分的易剥離層23によりカール性プラスチック(PBT)フィルム201が紙シート204より下面側の部分から分離する。残留する蓋体2の側にギザギザな破断面2cができるとともに、フラップ部3にもギザギザな破断面3cができる。そのため図7に示すように、フラップ部3を再封したとき、蓋体2のギザギザな破断面2cとフラップ部3のギザギザな破断面3cとがしっかり係合し、フラップ部3の再封を確実にする。
【0029】
また部分的易剥離層23の領域では、フラップ部3の全層部31の周囲には実質的にカール性プラスチックフィルム201からなるカール性部分32のみが付くので、フラップ部3のカール性は非常に大きい。従って、蓋体2を開封したままの状態で、カップラーメン容器1は注湯するのに十分な間口を有することになる。このように部分的易剥離層23を紙シート204より上面側に有する蓋体2は開封保持性と再封性の両方に優れている。
【0030】
(2) 第二の蓋体
図8〜11は本発明の第二の蓋体を示す。図8〜11において図1〜3と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この蓋体2は、(a) 開封用タブ部21とほぼ対向する位置に湯切り口形成用タブ部27を有し、(b) タブ部27に一対の切れ目28a,28bと、両切れ目28a,28bの間にほぼ等間隔に蓋体2の下側に刻設された複数の実質的にU字状のハーフカット29とを有し、(c) U字状ハーフカット29に囲まれた部分及びU字状ハーフカット29の一対の傾斜部291,291の先端から湯切り口形成用タブ部27の開封方向に延在する各直線292,292の間に湯切り口形成用部分的易剥離層23cが設けられている以外、第一の蓋体と実質的に同じであり、インスタント焼きそば用容器1に貼付するものである。
【0031】
各切れ目28a,28bは直線状でも良いが、引裂性を向上するために、蓋体2の外周縁から延びる各直線部280a,280bと、各直線部280a,280bから拡開する方向に傾斜した各先端部281a,281bとからなるのが好ましい。
【0032】
各U字状ハーフカット29は、先に行くほど間隔が狭まるように傾斜している一対の傾斜部291,291と、それらの連結部290とからなり、開放端を内側に向けて実質的にU字状に形成されているのが好ましく、これにより引裂性が向上する。但し一対の傾斜部291,291は平行な直線状であってもよい。U字状ハーフカット29の数は1〜6個が好ましく、2〜5個がより好ましい。
【0033】
図10に示すように、十分な熱シール性を確保するために、先端傾斜部281a,281b及び傾斜部291,291はいずれも蓋体2のシール部25内に位置していなければならない。
【0034】
連続した積層シート20を打ち抜いて蓋体2を高速で製造する場合の公差は約1mm程度であるので、一対の切れ目28a,28bの先端傾斜部281a,281bの先端、及び各U字状ハーフカット29の傾斜部291,291の先端は蓋体2のシール部25の中心線25aより外周側であるのが好ましく、外周側からシール部25の幅d10の30〜50%の範囲内であるのがより好ましく、外周からシール部25の幅d10の30〜40%の範囲内であるのが特に好ましい。また湯切り口形成用タブ部27を持って蓋体2を剥離した時に、帯片部11の密着性を損なわないようにする観点から、U字状のハーフカット29の連結部290は、シール部25内に位置しているのが好ましい。
【0035】
湯切り時間を短縮するには、湯切り口12の幅d11をできるだけ広くするのが望ましいが、そうするとシール部25から剥離する蓋体部分の面積が大きくなり、開封抵抗が大きくなる。開封抵抗は剥離開始の時が最大であり、シール部25との剥離域が大きいと、大きな初期開封抵抗を感じることになる。そこで図10に示すように、拡開方向に傾斜した各先端部281a,281b、及び先に行くほど間隔が狭まる傾斜部291、291により、シール部25からの剥離域が次第に大きくなるので、大きな初期抵抗を感じることなく、スムーズな湯切り口形成用タブ部27の開封を行うことができる。
【0036】
各先端傾斜部281a,281b及び各傾斜部291の長さは0.5〜3mmであるのが好ましい。図11に示すように、先端傾斜部281a,281bと直線部280a,280bとの角度θと、傾斜部291と直線292との角度θ’はいずれも120°〜170°であるのが好ましく、同じであっても良い。これらの角度がこの範囲外であると、蓋体2が易裂性を有していても、各先端傾斜部281a,281b及び各傾斜部291から、その易引裂方向に沿って直線的に引き裂けないおそれがある。
【0037】
傾斜部291,291の先端間の間隔d12は、U字状ハーフカット29の幅d6より0.5〜3mm狭いのが好ましい。具体的には、容器内の即席食品が焼きそばである場合、傾斜部291,291の先端の間隔d12は6〜8mmであるのが好ましく、湯切り口12の幅d11は4〜7mmであるのが好ましい。
【0038】
図8〜11に示す例では、U字状ハーフカット29の幅d6、各切れ目28a,28bとU字状ハーフカット29との間隔d7、及びU字状ハーフカット29同士の間隔d8はそれぞれ3〜10 mmであるのが好ましい。
【0039】
図8に示すように、切れ目28a,28bの各先端から延びる直線282、282に湯切り口形成用ハーフカット283を刻設するのが好ましい。さらに図9に示すように、U字状ハーフカット29の各傾斜部291の先端から延びる直線292に湯切り口形成用ハーフカット293を刻設するのが好ましい。湯切り口形成用ハーフカット283、293を刻設することにより、蓋体2の引裂性が向上する。但し上述のように蓋体2のシール性の観点から、図10に示すように、U字状ハーフカット29の各傾斜部291の先端と、湯切り口形成用ハーフカット293の開始端293'は、シール部25内において、僅かに離隔していなければならない。各傾斜部291,291の各先端と、湯切り口形成用ハーフカット293の開始端293'との距離d9は1〜10 mmであるのが好ましく、2〜5mmであるのがより好ましい。各湯切り口形成用ハーフカット283、293の終端は、上端フランジ部から数cmにするのが好ましい。
【0040】
蓋体2を易引裂性を有する積層シート20により形成する場合、その易引裂方向を蓋体2の引裂方向と実質的に一致させるのが好ましい。これにより、湯切り口形成用タブ部27を持って蓋体2を剥離する時に、蓋体2は一対の切れ目28a,28bの先端及び各U字状ハーフカット29の先端から易引裂方向に沿って容易に直線的に引き裂かれる。また蓋体2が易引裂性を有する場合、湯切り口形成用ハーフカット283、293を省略することができる。
【0041】
図12に示す例では、蓋体2は図4に示す積層シート20と同じ層構成を有し、部分的易剥離層23cは、紙シート204と剛性プラスチックフィルム207との間の一対のポリエチレン層206a,206bの間の接着層205の一部として設けられている。U字状ハーフカット29は、蓋体2の下面からシーラント層211、押出ラミネーションされたポリエチレン層210、接着層209、遮光性インク層208、剛性プラスチック(PET)フィルム207及び押出ラミネーションされたポリエチレン層206bを貫通し、接着層205に到達している。
【0042】
図13に示すように、湯切り口形成用ハーフカット283は、蓋体2の上面から紙シート204の一部に到達しているのが好ましく、紙シート204の厚さの少なくとも約30%に相当する深さに達しているのがより好ましい。湯切り口形成用ハーフカット293は、U字状ハーフカット29と同じく、蓋体2の下面から接着層205に到達しているのが好ましい。
【0043】
湯切り口形成用タブ部27を持って蓋体2をハッチングで示した部分10だけ容器本体1から剥がすと、図14に示すように複数の湯切り口12が得られ、U字状ハーフカット29により囲まれた部分及びその延長部分からなる帯片部11は、部分的易剥離層23cにより剛性プラスチック(PET)フィルム207より下面側の部分が容器本体1の上端フランジ部1aに密着したまま残留する。
【0044】
図10に示すように、蓋体2には、容器内の即席食品(焼きそば等)が漏れずに効率よく湯切りができる位置に、剥離限界を示すマーク260を設けるのが好ましい。マーク260の位置は、湯切り口12の長さが約1〜5cmとなるように設定するのが好ましい。部分的易剥離層23cの長さは、形成すべき湯切り口12の長さとほぼ同じにすればよい。
【0045】
(3) 第三の蓋体
図15及び16は本発明の第三の蓋体を示す。図15及び16において図1〜3と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この蓋体2は、(a) 開封用タブ部21とほぼ対向する位置に複数の湯切り口形成用矩形状ハーフカット294が蓋体2の下側に刻設されており、(b) 部分的易剥離層23が湯切り口形成用矩形状ハーフカット294を包囲するように設けられている以外、第一の蓋体と同じである。
【0046】
図17に示す例では、蓋体2は図4に示すものと同じ層構成を有し、部分的易剥離層23は、カール性プラスチックフィルム201と紙シート204との間の一対のポリエチレン層203a,203bの間の接着層202の一部として設けられている。また図17及び18に示すように、湯切り口形成用矩形状ハーフカット294も蓋体2の下面から接着層202に到達している。
【0047】
このため焼きそばを喫食する場合、蓋体2の開封を保持した状態で熱湯を注ぎ、次いで蓋体2を閉めた状態で所定時間保持した後、開封用タブ21を持って蓋体2をさらに開封方向に引っ張ると、図19に示すように、部分的易剥離層23により、カール性プラスチックフィルム201が紙シート204より下面側の部分から全て分離し、湯切り口12を形成できる。
【0048】
(4) その他の例
第一〜第三の蓋体の形状は図示のものに限定されず、本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。
【0049】
図20は、開封用タブ部21のうち上端フランジ部1aの外縁に相当する位置に、スリット状貫通孔221を設けた蓋体2を示す。この蓋体2は、スリット状貫通孔221以外第一の蓋体と同じである。この蓋体2を備えた容器では、開封した蓋体2を元の閉鎖位置に戻した時に、スリット状貫通孔221に上端フランジ部1aを係合させられるので、再封性が向上する。スリット状貫通孔221の代わりに切れ目を設けてもよい。
【0050】
図21は、蓋体2にスリット状貫通孔221及び別のタブ部222を設けた例を示す。この蓋体2は、スリット状貫通孔221及びタブ部222以外第一の蓋体と同じである。スリット状貫通孔221にタブ部222を係合させることにより、蓋体2の開封を保持できる。
【0051】
図22に示す蓋体2は、四角いインスタント焼きそば用容器1に貼付するものであり、開封用タブ部21と湯切り口形成用タブ部27がほぼ対角線上の角部に設けられている。蓋体2の構造自体は第二の蓋体と同じである。
【0052】
第二及び第三の蓋体の排湯機能に関しては、特開平2000-109141号に記載のように、湯切り口を有する領域に部分的易剥離層を設け、蓋体2の下側に部分的易剥離層に到達する湯切り口形成用の複数の円形ハーフカットを刻設した構成としてもよい。
【0053】
[2] 蓋体の層構成
本発明の蓋体2の層構成は限定的ではないが、図12に示す例以外の好ましい層構成例について説明する。図23に示す積層シート20は、剛性プラスチックフィルム207を有さない以外図4に示す積層シート20と同じである。図24に示す積層シート20は、遮光性付与層として遮光性インク層208の代わりにアルミニウム箔212を有する以外図4に示す例と同じである。
【0054】
以下、各層について詳述する。
(1) カール性プラスチックフィルム
本発明の蓋体2は、紙シート204の外側にカール性プラスチックフィルム201を有する。カール性プラスチックフィルム201としては、ポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等からなるフィルムが挙げられる。PBTフィルム及びPETフィルムは市販品として安価に入手できる。特にPBTフィルムはデッドホールド性、保香性、ガスバリア性及び耐熱性に優れているので好ましい。
【0055】
PBTフィルムは、基本的に1,4-ブタンジオールとテレフタル酸とからなる飽和ポリエステルフィルムである。但し熱収縮性等の物性を損なわない範囲で、1,4-ブタンジオール以外のジオール成分、又はテレフタル酸以外のカンボン酸成分を共重合成分として含んでいてもよい。そのようなジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンメタノール等が挙げられる。またジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸等が挙げられる。PBTフィルムを構成するPBT樹脂の具体例としては、例えば東レ(株)から商品名「トレコン」として市販されているホモPBT樹脂を挙げることができる。
【0056】
PETフィルムは、基本的にエチレングリコールとテレフタル酸とからなる飽和ポリエステルフィルムである。但しPETフィルムの特性を損なわない範囲で、エチレングリコール以外のジオール成分、又はテレフタル酸以外のカンボン酸成分を共重合成分として含んでいてもよい。そのようなジオール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンメタノール等が挙げられ、またジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸等が挙げられる。PETフィルムは、例えば東レ(株)の「ルミラー」や、東洋紡績(株)の「東洋紡エステルフィルム」や、ユニチカ(株)の「エンブレットPC」等のように、通常二軸延伸フィルムとして市販されている。
【0057】
ポリエステルフィルムは、単一樹脂成分からなるものに限定されず、複数の樹脂成分からなるものでもよい。樹脂成分の組合せとしては、複数のポリエステル樹脂の組合せの他に、一種又は二種以上のポリエステル樹脂に、その特性を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を添加したものが挙げられる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリアミド(PA);ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルサルフォン(PES);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリカーボネート;ポリウレタン;フッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。例えばカール性プラスチックフィルム201としてPBTフィルムを用いる場合、フィルム原料であるPBT樹脂がポリエチレンを含有していると、フィルム製造時の成膜性が向上し、膜厚の均一性に優れたPBTフィルムが得られる。他の熱可塑性樹脂を含有する場合、その割合はポリエステルフィルム全体を100質量%として、5〜20質量%であるのが好ましく、5〜15質量%であるのがより好ましく、5〜10質量%であるのが特に好ましい。従って特に断りがない限り、本明細書において使用する用語「PETフィルム」及び「PBTフィルム」はそれぞれ、PET又はPBTの単体のみならず、PET又はPBT+他の熱可塑性樹脂からなる組成物を含むものと理解すべきである。
【0058】
カール性プラスチックフィルム201は、即席食品用容器の用途に応じて、可塑剤、酸化肪止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、染料や顔料等の着色剤、流動性の改善のための潤滑剤、無機充填剤等の添加剤を適宜含有しても良い。
【0059】
カール性プラスチックフィルム201の厚さは実用的には約5〜50μmであるのが好ましい。カール性プラスチックフィルム201の厚さを約5μm未満とするのは技術的に困難である。またカール性プラスチックフィルム201の厚さを約50μm超にするとコスト高になる。好ましくは10〜30μmである。約5〜50μmの厚さのPBTフィルムは十分なデッドホールド性、保香性及びガスバリア性を有する。
【0060】
PBTフィルムの熱収縮率は、MD(機械方向)及びTD(幅方向)ともに2%以下であるのが好ましい。熱収縮率はPBTフィルムを150℃に10分間加熱することにより測定したものである。熱収縮率が2%以下のPBTフィルムは、空冷インフレーション成形法により製造できる。PBTフィルムを空冷インフレーション成形法により製造する方法として、例えばWO 2004/026558に記載の方法を挙げることができる。
【0061】
カール性プラスチックフィルム201に多数の実質的に平行な線状痕及び/又は多数の微細孔を形成すると、蓋体2の直線易裂性が向上する。
【0062】
(2) 透明樹脂コーティング層
PBTフィルム201の上面に透明樹脂コーティング層を設けると、PBTフィルム201は、微細な表面凹凸が吸収されて透明性及び高鮮映性を獲得する。そのため、PBTフィルム201を通して見える印刷層が美麗かつ鮮明になる。透明樹脂は水溶性又は非水溶性のいずれでもよいが、有機溶剤を使用しなくて済む点で水溶性のものが好ましい。水溶性透明樹脂として、例えばポリビニルアルコール、セルロース系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。ポリビニルアルコールはアニオン、カチオン、アセタール等により変性されていても良く、またエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル部分ケン化物等でも良い。ポリビニルアルコールの重合度は1000以下であるのが好ましい。
【0063】
非水溶性透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、紫外線硬化性不飽和アクリル樹脂、紫外線硬化性不飽和エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0064】
透明樹脂コーティング層の厚さは限定的ではないが、1〜5μmが好ましく、2〜4μmがより好ましい。透明樹脂コーティング層の厚さが1μm未満であると、印刷の鮮明性の向上が不十分であり、また5μm超とするとコスト高になる。
【0065】
(3) 紙シート
紙シート204は、デッドホールド性付与層として機能する。紙の種類は限定されず、合成紙も含む。紙シート204の目付は、約60〜120 g/m2とするのが好ましく、約75〜110 g/m2とするのがより好ましい。紙シート204の目付が約60 g/m2未満であると、紙シートの腰が弱すぎて、十分なデッドホールド性を付与することができない。一方、紙シート204の目付を約120 g/m2超にしても、コスト高になるだけで、さらなるデッドホールド性の向上は認められない。
【0066】
(4) 剛性プラスチックフィルム
剛性プラスチックフィルム207は好ましくはPETフィルムからなる。蓋体2の直線易裂性を高めるために、PETフィルムとして一軸配向又は配向度が異なる二軸配向のPETフィルムを用いるのが好ましい。配向度が異なる二軸配向のPETフィルムは、「エンブレットPC」(ユニチカ(株))として市販されている。また剛性プラスチックフィルム207に多数の実質的に平行な線状痕及び/又は多数の微細孔を形成すると、蓋体2の直線易裂性が向上する。蓋体2の直線易裂性の方向は開封用ハーフカット24a,24bと平行であるのが好ましい。その厚さは必要に応じて適宜設定すれば良い。
【0067】
(5) 遮光性付与層
日光や紫外線による即席食品の変質を防止するために、蓋体2は遮光性インク層208又はアルミニウム箔212を有する。遮光性インク208は、例えばカーボンブラックのような黒色もしくは暗色の顔料又は染料を含むインクであれば、特に限定されない。遮光性インク層208は、焼却処理時に環境への悪影響がないという利点を有するとともに、密封した容器内の金属系異物の探知を金属探知機により行うことができるという利点もある。従って、即席食品の安全性がいっそう高まるだけでなく、金属探知機の利用により検査コストを著しく低減できる。アルミニウム箔212は優れた遮光性、ガスバリア性、保香性等を有する。
【0068】
遮光性インク層208の厚さはインク中の黒色顔料又は染料の濃度に依存するが、一般に紫外線及び可視光線を十分に遮断できる程度であれば良い。アルミニウム箔212の厚さは3〜15μmが好ましく、7〜12μmがより好ましい。
【0069】
(6) シーラント層
容器本体1の上端フランジ部1aに熱シールする層はシーラントフィルム211又はホットメルト層である。シーラントフィルム211は、ポリエチレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム等により形成できる。また蓋体2を容器本体1から容易に剥離できるように、シーラントフィルム211はイージーピール性を有するのが好ましい。そのために、シーラントフィルム211は比較的弱い熱接着性を有するのが好ましい。ホットメルトは公知のものを用いることができる。
【0070】
シーラントフィルム211として、例えば紙シート204側から順にポリエチレンベースフィルムと低分子量ポリエチレンフィルムとを有する積層フィルムを使用できる。このポリエチレンベースフィルムの厚さは約10〜40μmが好ましく、約20〜30μmがより好ましい。また低分子量ポリエチレンフィルムの厚さは約5〜20μmが好ましく、約7〜15μmがより好ましい。このような積層ポリエチレンフィルムは、例えば760FD(東レ合成フイルム(株)製)として市販されている。またシーラントフィルム211としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)とポリエチレンとの混合物からなるフィルムも使用できる。この混合物からなるフィルムにおいて、ポリエチレンとしては線状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。この混合物からなるフィルムの厚さも約10〜40μmが好ましく、約20〜30μmがより好ましい。またホットメルト層の厚さは10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
【0071】
シーラントフィルム211として、エチレンと炭素数3〜18のα-オレフィンとを共重合して得られた直鎖状エチレン・α-オレフィン共重合体[密度(JIS K6922):0.870〜0.910 g/cm、MFR(JIS K6921、190℃、2.16kg荷重):1〜100 g/10分]及びポリスチレンを含む樹脂組成物からなるシーラントフィルム(特開2004-26190号)が挙げられる。このシーラントフィルムからなる熱シール層を有する蓋体2を容器本体1に熱シールすると、密封性と易開封性を両立できる。
【0072】
蓋体2に優れた直線引裂性を付与するために、シーラントフィルム211に、多数の実質的に平行な線状痕及び/又は多数の微細孔を形成してもよい。
【0073】
(7) 接着層
接着層に特に制限はないが、接着性を有するフィルム状のプラスチックからなるのが好ましい。例えば紙シート204の上面に文字や図柄等の印刷層を有する場合、カール性プラスチックフィルム201と紙シート204を接着する層202及び203(203a、203b)には透明接着剤を用いるのが好ましい。透明接着剤は透明性を有するものである限り特に制限されないが、例えばポリウレタン樹脂(例えば商品名「ロックボンドRU-40」、ロックペイント(株)製)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVA)、ポリビニルアセタール系樹脂(例えばポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB等)、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。
【0074】
紙シート204より下層の接着層205、206(206a、206b)、208及び209には、ホットメルト、押出ラミネーションしたポリエチレン等が使用できる。
【0075】
(8) 部分的易剥離層
部分的易剥離層23を形成する材料は、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、硝化綿等である。必要により少量のシリコーン、ワックス等を添加してもよい。易剥離層は上記材料を含むインキを紙シート204又はPBTフィルム201に印刷することにより形成できる。部分的易剥離層23は接着層の上面又は下面に塗布することにより形成しても良いが、図5に示すように点状の的易剥離性樹脂を接着層内に均一に分布させても良い。部分的易剥離層23は各ハーフカット24c、24d、29、283、293及び294と精確に位置決めされていなければならないので、蓋体2の原反(積層シート20)を形成する際に、紙シート204又はプラスチックフィルム201の印刷層と整合させてグラビア印刷等の方法により作製するのが好ましい。
【0076】
[3] 各フィルムの予備加工
(1) 線状痕の形成
蓋体2の易裂性を高めるために、カール性プラスチックフィルム201、剛性プラスチックフィルム207及びシーラントフィルム211の少なくとも一つに、以下に述べる方法により多数の実質的に平行な線状痕を形成してもよい。
【0077】
フィルム強度と良好な直線的易裂性を両立するために、線状痕の深さは各フィルムの厚さの1〜40%であるのが好ましく、具体的には0.1〜10μmであるのが好ましい。線状痕の幅は0.1〜10μmであるのが好ましく、線状痕同士の間隔は10〜200μmであるのが好ましい。
【0078】
各フィルム201、207及び211に線状痕を形成するには、例えばWO 03/091003に開示の方法を採用することができる。この方法では、多数のモース硬度5以上の微粒子を表面に有するロール又はプレートに、連続走行するフィルムを押し付けながら摺接させることにより、フィルムに多数の実質的に平行な線状痕を形成する。微粒子としてはダイヤモンド微粒子が好ましい。フィルムをロール又はプレートに押し付ける手段としては、空気を吹き付ける手段、又はフィルムに摺接するブラシが好ましい。この方法により得られた線状痕はフィルムを貫通していないため、線状痕を形成したPETフィルムを剛性プラスチックフィルム207として用いても、十分な保香性及びガスバリア性を確保することができる。
【0079】
線状痕は各フィルム201、207及び211の少なくとも片面に全体的に形成するのが好ましい。これにより、各フィルム201、207及び211は、フィルム自体の配向性に関わらず一方向の直線的易裂性が付与され、任意の部位から線状痕に沿って直線的に裂くことができる。
【0080】
(2) 微細孔の形成
蓋体2の易裂性を高めるために、カール性プラスチックフィルム201、剛性プラスチックフィルム207及びシーラントフィルム211の少なくとも一つに、以下に述べる方法により多数の微細孔を全面に形成してもよい。
【0081】
微細孔は、0.5〜100μmの平均開口径及び約500個/cm2以上の分布密度を有するのが好ましい。微細孔の分布密度が約500個/cm2未満であると、引裂性が不十分である。フィルム強度の観点から、微細孔の分布密度は1×103〜1×104個/cm2であるのがより好ましく、1×103〜5×103個/cm2であるのが特に好ましい。
【0082】
各フィルム201、207及び211に微細孔を形成するのに、例えば日本国特許第2063411号及び特開2002-59487号に開示の方法を採用することができる。例えば日本国特許第2063411号の方法では、鋭い角部を有する多数のモース硬度5以上の微粒子が表面に付着した第一のロール(上記線状痕形成用ロールと同じ)と、表面が平滑な第二のロールとの間を均一な押圧力を受けながらフィルムが通過するので、フィルムに微細孔が多数形成される。第二ロールとしては、Niメッキ、Crメッキ等を施した鉄系ロール、ステンレス系ロール、特殊鋼ロール等を用いることができる。
【0083】
微細孔をシーラントフィルム211に形成する場合、微細孔は貫通孔又は未貫通孔のいずれでも良い。微細孔をカール性プラスチックフィルム201又は剛性プラスチックフィルム207に設ける場合、容器の密封性の観点から微細孔は未貫通孔であるのが好ましい。第一ロール及び第二ロール間の押圧力を調節することにより、貫通孔及び未貫通孔の一方又は両方を形成することができる。
【0084】
[4] 蓋体の製造方法
(1) 積層シートの製造方法
例えば図4に示す積層シート20を形成する場合、長尺の紙シート204の上面に部分的易剥離層23を含む接着層を形成するとともに、下面に接着層を形成し、上面側にカール性プラスチックフィルム201を積層するとともに、下面側に剛性プラスチックフィルム207と遮光性インク層208とシーラントフィルム211との積層フィルムを積層する。各フィルム207又は211には、必要に応じて予め多数の実質的に平行な線状痕及び/又は多数の微細孔を設けても良い。各フィルム207又は211の易裂性方向は長尺紙シート204の長手方向と一致させる。
【0085】
カール性プラスチックフィルム201を紙シート204に積層する場合、カール性プラスチックフィルム201に弾性変形領域(1〜3%の伸度)内のMD方向延伸を施した状態で紙シート204に接着するのが好ましい。これにより、積層シート20にカール性を付与できる。
【0086】
1〜3%の延伸を行うには、カール性プラスチックフィルム201に10〜20 kgf/m幅の張力をかければよい。カール性プラスチックフィルム201を延伸せずに紙シート204と接着する場合、カール性プラスチックフィルム201にかける張力は5kgf/m幅以下である。弾性変形可能に延伸できる樹脂としては、PBTが好適である。
【0087】
カール性プラスチックフィルム201に張力をかけながら紙シート204と接着してなる積層シート20は、カール性プラスチックフィルム201に反るカール性を有するので、カール性プラスチックフィルム201を外側にして巻回する。これにより、巻き戻したときに積層シート20は実質的にカールしない(もちろん積層シート20は経時的にはカールする)。積層シート20はしばらく平坦なままであるので、蓋体2への打ち抜き/熱シールの作業に支障がない。熱シールした蓋体2を容器本体1から剥離すると、蓋体2はカールした状態になる。
【0088】
カール性プラスチックフィルム201としてPBTフィルムを用いる場合、PBTの形状記憶性を利用して積層シート20にカール形状を記憶させることができる。カール形状を記憶したPBT積層シート20を作製するには、例えばWO 2004/026577に記載の2通りの方法を採用することができる。
【0089】
第一の方法は、(a) PBTフィルムを含む積層シート20を、カール形状に保持しながらPBTのガラス転移温度Tg以下の温度T1で賦形処理(冷間加工)し、(b) 賦形積層シート20を、Tgを超える温度T2で平坦な形状に変形し、(c) Tg以下の温度T3まで冷却して平坦な形状に固定することからなる。また第二の方法は、(a) (i) PBTフィルムを含む積層シート20をカール形状に保持しながらTg超〜融点未満の温度T4で賦形処理するか、(ii) PBTフィルムをカール形状に保持しながら温度T4で賦形処理した後、紙シート204を含むフィルム積層体と積層することによりカール形状を有する積層シート20を作製し、(b) 賦形積層シート20をTg以下の温度T5まで冷却してカール形状に固定し、(c) 賦形積層シート20をTg超〜T4未満の温度T6で平坦な形状に変形し、(d) Tg以下の温度T7まで冷却して平坦な形状に固定することからなる。これらの方法で作製した形状記憶PBT積層シート20は平坦であるが、それから打ち抜き加工/熱シールした蓋体2はカール性を回復しているので、容器本体1から剥離すればカールする。
【0090】
(2) 打ち抜き/ハーフカット加工
図25に示すように、積層シート20をカール性プラスチックフィルム201側を上にして載置し、複数のパンチにより打ち抜き/ハーフカット加工を行うと、一度に複数の蓋体2を製作することができる。打ち抜き/ハーフカット加工自体は公知の方法により行うことができる。U字状ハーフカット29、及び湯切り口形成用ハーフカット283,293,294の方向は、長尺紙シートの長手方向と一致させる。打ち抜き加工とハーフカット加工は同時に行っても、連続的に行っても良い。
【0091】
以上の通り、図面を参照して本発明を説明したが、本発明はそれらに限定されず本発明の趣旨を変更しない限り種々の変更を加えることができる。例えば部分的易剥離層の層内の位置は、剥離した一方が大きなカール性を有する限りどこにあっても良い。
【符号の説明】
【0092】
1・・・容器本体
1a・・・上端フランジ部
2,200,300・・・蓋体
2c・・・紙シートのギザギザな破断面
20・・・積層シート
201・・・カール性プラスチックフィルム
202,203,203a,203b,205,206,206a,206b,209,210・・・接着層
204・・・紙シート
207・・・剛性プラスチックフィルム
208・・・遮光性インク層
211・・・シーラントフィルム
212・・・アルミニウム箔
21・・・開封用タブ部
221・・・スリット状貫通孔
222・・・別の開封用タブ部
23,23c・・・部分的易剥離層
24c・・・注湯口形成用環状ハーフカット
24d・・・タブ部剥離用ハーフカット
25・・・シール部
25a・・・シール部の中心線
26,260・・・マーク
27・・・湯切り口形成用タブ部
28a,28b・・・切れ目
280a,280b・・・切れ目の直線部
281a,281b・・・切れ目の先端傾斜部
282・・・延長線
283・・・湯切り口形成用ハーフカット
29・・・U字状ハーフカット
290・・・連結部
291・・・傾斜部
292・・・延長線
293・・・湯切り口形成用ハーフカット
293'・・・湯切り口形成用ハーフカットの開始端
294・・・湯切り口形成用矩形状ハーフカット
3・・・フラップ部
31・・・フラップ部の全層部
32・・・カール性部分
3c・・・紙シート層のギザギザな破断面
10・・・湯切り口形成用タブ部付近で剥離する部分(ハッチング部分)
11・・・帯片部
12・・・湯切り口
125・・・剥離性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙シートと、カール性プラスチック層と、部分的易剥離層とを有し、前記カール性プラスチック層より前記紙シートを下側にして容器にシールされる容器密封用蓋体であって、外周縁に設けられた開封用タブ部と、前記開封用タブ部の下面側に設けられたタブ部剥離用ハーフカットと、前記タブ部剥離用ハーフカットより中心側で前記蓋体の下側に刻設された注湯口形成用環状ハーフカットとを有し、前記部分的易剥離層は前記注湯口形成用環状ハーフカットを包囲するように設けられており、前記カール性プラスチック層はカール性プラスチックフィルムからなり、かつ前記カール性プラスチックフィルムは弾性変形領域内の機械方向延伸を施した状態で前記紙シートに接着されており、もって前記蓋体はカール性を有することを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項2】
請求項1に記載の容器密封用蓋体において、前記部分的易剥離層は、前記タブ部剥離用ハーフカットから前記蓋体の中心を越える位置まで形成されていることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の容器密封用蓋体において、前記蓋体には引き剥がし停止マークが設けられており、前記部分的易剥離層は前記タブ部剥離用ハーフカットから前記引き剥がし停止マークの位置まで形成されていることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、前記蓋体は前記開封用タブ部の他に湯切り口形成用タブ部を有しており、前記湯切り口形成用タブ部は一対の切れ目と、前記切れ目の間に開放端を内側に向けて前記蓋体の下側に刻設された複数の実質的にU字状のハーフカットとを有し、各U字状ハーフカットは一対の直線部と、両直線部の連結部とからなり、前記切れ目及び前記U字状ハーフカットの先端はいずれも前記蓋体のシール部内に位置しており、前記U字状ハーフカットに囲まれた部分及び前記一対の直線部の先端から前記湯切り口形成用タブ部の開封方向に延在する各直線の間に湯切り口形成用部分的易剥離層が設けられており、前記U字状ハーフカットは前記蓋体の下面から前記部分的易剥離層までの深さを有し、かつ前記蓋体の易裂方向は前記切れ目の方向と実質的に一致しており、もって前記湯切り口形成用タブ部を持って前記蓋体を前記容器本体から引き剥がすと、前記切れ目及び前記U字状ハーフカットの先端から前記蓋体が引き裂かれ、前記湯切り口形成用部分的易剥離層より下面側の部分が容器本体の上端フランジ部に密着したまま残留し、複数の湯切り口が形成されるようになっていることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項5】
請求項4に記載の容器密封用蓋体において、前記湯切り口形成用部分的易剥離層は、前記U字状ハーフカットから前記湯切り口形成用タブ部用の引き剥がし停止マークの位置まで設けられていることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の容器密封用蓋体において、前記U字状ハーフカットの一対の直線部は先に行くほど間隔が狭まるように傾斜していることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、前記一対の切れ目の先端には先に行くほど間隔が広がるように傾斜した一対の線部が設けられていることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、前記切れ目の先端及び前記U字状ハーフカットの一対の直線部の先端は、前記蓋体のシール部の中心線に関して外周側に位置することを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項9】
請求項8に記載の容器密封用蓋体において、前記切れ目の先端及び前記U字状ハーフカットの一対の直線部の先端の前記シール部内における位置は、外周から前記シール部の幅の30〜50%の範囲内であることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、前記切れ目の各先端から開封方向に延びる直線に湯切り口形成用ハーフカットが設けられてとともに、前記U字状ハーフカットの各先端から開封方向に延びる直線に沿って、前記蓋体の下側に湯切り口形成用ハーフカットが設けられていることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、(a) 前記開封用タブ部とほぼ対向する位置に複数の矩形状の湯切り口形成用ハーフカットが蓋体の下側に刻設されており、(b) 前記部分的易剥離層は、前記湯切り口形成用矩形状ハーフカットを包囲するように設けられていることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、前記カール性プラスチック層はポリブチレンテレフタレートフィルムからなることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、上面側からカール性プラスチック層、紙シート、接着層、剛性プラスチックフィルム及びシーラント層を有し、前記部分的易剥離層は前記接着層の上面又は下面、もしくは前記接着層と同一面内にあることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項14】
請求項13に記載の容器密封用蓋体において、前記剛性フィルムは、一軸配向又は配向度が異なる二軸配向のポリエチレンテレフタレートフィルムからなることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、前記カール性プラスチックフィルムに1〜3%の伸度の機械方向延伸を施した状態で前記紙シートと接着してなることを特徴とする容器密封用蓋体。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の容器密封用蓋体において、前記カール性プラスチックフィルムに10〜20 kgf/m幅の張力を付与した状態で前記紙シートと接着してなることを特徴とする容器密封用蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−263010(P2009−263010A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154344(P2009−154344)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【分割の表示】特願2005−512032(P2005−512032)の分割
【原出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000123631)
【Fターム(参考)】