説明

開閉弁

【課題】電磁石を動かして弁体を開閉移動させる開閉弁において、電磁石の導線を移動させるためのスペースを不要とし、導線の配線コストの低減を図る。
【解決手段】この開閉弁は、流路の開口部を有するケーシング10と、開口部を開閉する弁体50と、この弁体50に連結されたアーマチュア50と、電磁力によりアーマチュア50を吸着する吸着面41aを有するコア41と、コア41を励磁するための電磁コイル42と、コア41をアーマチュア50の方へ進退移動させる駆動手段20とを備えている。電磁コイル42は、固定的に設けられているとともに中央に貫通孔を有し、コア41は、電磁コイル42の貫通孔に通されてアーマチュア51の方へ移動可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガス管路などの流路を開閉する開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、通常時に電気的な制御によりガス管路の開閉を行い、かつ、停電時などの異常時にガス管路を安全に閉じることのできるモータ安全弁が開発されている(例えば、特許文献1,2参照)。このようなモータ安全弁は、一般に、流路を開閉する弁体と、流路を閉じる方向に弁体を付勢するスプリングと、弁体に連結されたアーマチュア(可動磁性体)と、このアーマチュアを吸着可能な電磁石と、この電磁石を進退駆動するモータとを備えている。そして、電磁石がアーマチュアを吸着することで流路が開かれ、モータの駆動により弁体の位置が制御されて流路の開度が調整される。さらに、停電時などの異常時には、電磁石によるアーマチュアの吸着が解除されて弁体により流路が閉じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−126684号公報
【特許文献2】特許第4420630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のモータ安全弁は、モータの駆動によって電磁石が移動する構造になっている。そのため、電磁石の導線もこの移動に追従して引っ掛かりなく変位できるようにしなければならない。すなわち、導線がスムーズに移動できるスペースを確保しなければならず、開閉弁の体積がその分大きくなるといった課題や、導線の配設作業の難度が増して導線の配線コストが増すといった課題が生じる。
【0005】
さらに、上記従来のモータ安全弁においては、一般に、電磁石の保持部材をケーシングの摺動ガイドに沿って摺動させて、電磁石が一定の経路で移動するように支持される。この摺動部分には摩耗粉が生じる。そのため、この摺動部分から電磁石とアーマチュアの吸着面まで何ら遮るものがなく空間がつながっていると、次のような課題が生じる。すなわち、アーマチュアが電磁石から離脱される際、その離脱振動によって、摩耗粉がアーマチュアの吸着面に降りかかり、その後のアーマチュアの吸着特性を劣化させるという課題である。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、電磁石の導線を移動させるためのスペースが不要であり、導線の配線コストの低減を図ることのできる開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、流路の開口部を有するケーシングと、前記開口部を開閉する弁体と、この弁体に連結されたアーマチュアと、電磁力により前記アーマチュアを吸着する吸着面を有するコアと、前記コアを励磁するための電磁コイルと、前記コアを前記アーマチュアの方へ進退移動させる駆動手段とを備えた開閉弁において、前記電磁コイルは、固定的に設けられているとともに中央に貫通孔を有し、前記コアは、前記電磁コイルの前記貫通孔に通されて前記アーマチュアの方へ移動可能に設けられていることを特徴とする。
【0008】
この請求項1に記載の発明においては、電磁石の電磁コイルが固定されたまま、電磁石のコアがアーマチュアの方へ進退移動して、アーマチュアを吸着し、また、アーマチュアの位置を変化させる。したがって、電磁コイルの導線を移動させるスペースの確保が必要なくなる。さらに、電磁コイルの導線の配線作業も容易になり、配線コストの低減を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記コアと前記電磁コイルの前記貫通孔との間には間隙が設けられ、前記コアまたは当該コアを保持する保持部材を摺動可能に支持する摺動ガイドが、前記コアの前記吸着面の逆側に設けられていることを特徴とする。
【0010】
この請求項2に記載の発明においては、電磁石のコアは、電磁コイルと擦れ合うことなく、摺動ガイドの摺動支持によって一定の経路で進退移動することになる。したがって、このコアの進退移動に伴って摩耗粉が発生しても、この摩擦粉は電磁コイルの部分ではなく、摺動ガイドの部分に生じることになる。そして、この摺動ガイドが、コアの吸着面の逆側に離れて設けられているので、アーマチュアの離脱振動によって摩耗粉がアーマチュアの吸着面に降りかかってしまうことを少なくすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記コアまたは当該コアを保持する前記保持部材は、前記摺動ガイドに沿って摺動する摺動部位と、前記摺動部位より前記吸着面側に設けられた張出部位とを有し、前記張出部位の幅が前記摺動部位の幅より大きく形成されていることを特徴とする。
【0012】
この請求項3に記載の発明においては、摺動ガイドの部分からアーマチュアの吸着面まで通じる空間の途中で、上記の張出部位が遮りとなる。したがって、摺動ガイドの部分で生じた摩耗粉がアーマチュアの離脱振動によってアーマチュアの吸着面に降りかかってしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弁体に連結されたアーマチュアを電磁石によって吸着し、この吸着したアーマチュアを進退移動させて流路の開度を調整することができる。さらに、電磁石の電磁コイルが固定されるので、電磁コイルの導線の移動スペースを不要とすることができ、さらに、導線の配線作業が容易になり、配線コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ安全弁であって、縦断面図である。
【図2】同、モータ安全弁における弁吸着時を表した縦断面図である。
【図3】同、モータ安全弁における弁全開時を表した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るモータ安全弁(開閉弁)を示している。このモータ安全弁は、電気的な制御により開度が調整可能な状態でガスの流路11,12を開閉するとともに、停電時などの異常時にガスの流路11,12を自動的に閉じることができるものである。
【0016】
このモータ安全弁は、流路11,12の形成されたケーシング10と、各部品が装着されて上記のケーシング10に密閉的に嵌合される蓋材30と、流路11の開口部に設けられた弁座13に接触又は離間してこの開口部を開閉する弁体50と、弁軸52を介して弁体50と連結されたアーマチュア51と、弁体50を弁座13側へ付勢するスプリング54と、アーマチュア51を吸着可能な電磁石40と、この電磁石40のコア41をアーマチュア51の方へ進退移動させる駆動手段としてのモータ(たとえばシール負荷の生じないキャンドモータ)20等を備えている。
【0017】
蓋材30には、各部品を支持するための枠部材33,34が固定的に設けられ、一方の枠部材34に弁軸52を一定経路で進退移動させる摺動ガイド36が設けられている。
【0018】
電磁石40は、電磁力を発生させる電磁コイル42と、電磁コイル42により発生される磁束を通して電磁力を発生させるコア41とを備えている。電磁コイル42は、中央に貫通孔を有する筒状のボビンに導線を巻回してなり、固定的な枠部材33に固着されている。電磁コイル42の導線はリード線43を介して外部の制御回路101に接続されている。
【0019】
コア41は、磁性体からなり、たとえばU字形状で、一部が電磁コイル42のボビン貫通孔に通されている。コア41は、アーマチュア51側の端面が吸着面41aとして設定され、電磁力が発生された場合にアーマチュア51の端面(被吸着面)51aを吸着する。コア41と電磁コイル42の貫通孔との間には間隙が設けられ、コア41がアーマチュア51の方へ進退移動する際に両者が接触しないようになっている。このコア41は吸着面41aの逆側の部位が保持部材45に保持されている。
【0020】
保持部材45は、ねじ山を有した直線状の軸部45aと、この軸部45aよりも幅広に張り出して形成された張出部45bとを有している。張出部45bは、軸部45aの全周方向について軸部45aよりも幅広に形成されている。軸部45aは、コア41の吸着面41aの反対側に配置され、張出部45bは、軸部45aからコア41の吸着面41aへ通じる経路の途中に配置されている。
【0021】
蓋材30には、保持部材45の軸部45aを摺動させてアーマチュア51の方へ進退移動可能に支持する摺動ガイド32が設けられている。軸部45aは、この摺動ガイド32に進退移動可能に、かつ、回転が抑止されるように支持される。また、軸部45aのねじ山には、雄ねじの形成されたモータ20の回転軸21が螺合されている。このような構成によって、モータ20が回転駆動することで保持部材45が摺動ガイド32に沿って摺動して、コア41がアーマチュア51の方へ進退移動するようになっている。
【0022】
図2は、本実施形態に係るモータ安全弁の弁吸着時を表した縦断面図、図3は、このモータ安全弁の弁全開時を表した縦断面図である。上記のように構成されたモータ安全弁においては、図2に示すように、モータ20の駆動により電磁石40のコア41がアーマチュア51と接触する位置まで降下した状態で、電磁コイル42に電流が流される。それによって、コア41にアーマチュア51が吸着される。このとき、U字状のコア41とアーマチュア51によって閉じた磁気回路が形成されるので、磁束の漏れが少なくなって効率的に強い吸着力が得られている。
【0023】
そして、図3に示すように、この状態でモータ20が駆動して電磁石40のコア41が上昇することで、弁体50が弁座13から離間して流路11が開かれる。図3は、流路11の全開時を表しているが、モータ20の駆動量の制御により弁体50と弁座13との距離(開度)が任意に調整可能になっている。
【0024】
本実施形態に係るモータ安全弁にあっては、上記のように、アーマチュア51を移動させる際、電磁石40の電磁コイル42が固定されたまま、コア41が移動するように構成されている。したがって、電磁石40のリード線43が変位せず、その移動スペースの確保が不要となり、また、リード線43の配線コストの低減を図ることができる。また、アーマチュア51を移動させる際、電磁コイル42を移動させる必要がないので、モータ20の負荷がその分低減して消費電力の低減を図ることができる。
【0025】
また、本実施形態に係るモータ安全弁においては、流路が開いている状態で停電などの異常が発生すると、電磁石40に流れる電流が停止してその電磁力が解かれる。そして、図1に示すように、コア41からアーマチュア51が離脱してスプリング54の付勢力により弁体50が弁座13に押し付けられて流路が安全に閉じられる。
【0026】
このとき、一般には、コア41には弁体50の離脱振動が生じて、摺動ガイド32の部分に生じていた摩耗粉が振り落とされることがある。しかしながら、本実施形態に係るモータ安全弁にあっては、摺動ガイド32がアーマチュア51の反対側に離れて設けられており、さらに、保持部材45の張出部45bがこれらの間の空間を遮っていることで、この摩耗粉がアーマチュア51に降りかかってしまうことが回避される。したがって、その後のアーマチュア51の吸着作用に悪影響が及ぼされてしまうことが回避される。
【0027】
なお、上述の実施形態では、コア41を移動させる駆動手段としてモータ20を示したが、ソレノイドアクチュエータなど種々の駆動手段を適用してもよい。また、コアの形状や電磁コイルの配置なども種々に変更可能である。また、コアの保持部材をコアと一体的な構成としてもよい。また、上記実施形態では、ガスの流路を開閉するモータ安全弁に本発明を適用した例を示したが、開閉弁により流れが制御される流体はガスに制限されない。
【符号の説明】
【0028】
10 ケーシング
11,12 流路
13 弁座
20 モータ(駆動手段)
21 回転軸
30 蓋材
32 摺動ガイド
33,34 枠部材
40 電磁石
41 コア
41a 吸着面
42 電磁コイル
45 保持部材
45a 軸部(摺動部位)
45b 張出部(張出部位)
50 弁体
51 アーマチュア
52 弁軸
54 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の開口部を有するケーシングと、前記開口部を開閉する弁体と、この弁体に連結されたアーマチュアと、電磁力により前記アーマチュアを吸着する吸着面を有するコアと、前記コアを励磁するための電磁コイルと、前記コアを前記アーマチュアの方へ進退移動させる駆動手段とを備えた開閉弁において、
前記電磁コイルは、固定的に設けられているとともに中央に貫通孔を有し、
前記コアは、前記電磁コイルの前記貫通孔に通されて前記アーマチュアの方へ移動可能に設けられていることを特徴とする開閉弁。
【請求項2】
前記コアと前記電磁コイルの前記貫通孔との間には間隙が設けられ、
前記コアまたは当該コアを保持する保持部材を摺動可能に支持する摺動ガイドが、前記コアの前記吸着面の逆側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の開閉弁。
【請求項3】
前記コアまたは当該コアを保持する前記保持部材は、前記摺動ガイドに沿って摺動する摺動部位と、前記摺動部位より前記吸着面側に設けられた張出部位とを有し、
前記張出部位の幅が前記摺動部位の幅より大きく形成されていることを特徴とする請求項2に記載の開閉弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−36559(P2013−36559A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173786(P2011−173786)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】