説明

開閉式電子機器

【課題】 第1の筐体の端部と第2の筐体の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わっても、第1の筐体と第2の筐体との変形を防ぎ、第1の筐体と第2の筐体との少なくとも一方に搭載された電子部品が破損するのを防ぐことができる開閉式電子機器を提供する。
【解決手段】 キーボード2などの電子部品を搭載した第1ケース1と、表示パネル4などの電子部品を搭載した第2ケース3とを、開閉可能に連結するヒンジ部5を備え、このヒンジ部5のヒンジ保持部材16を第1ケース1に対して取り付けるための締結部材23に、コイルばね25によって緩衝機能をもたせて、ヒンジ保持部材16を第1ケース1に対して取り付けた。従って、第1ケース1の端部と第2ケース3の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わると、その負荷を締結部材23のコイルばね25による緩衝機能によって吸収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話機やPDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)などの開閉式電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、開閉式の携帯電話機においては、特許文献1に記載されているように、第1の筐体と第2の筐体とをヒンジ部で折り畳み自在に連結した構成のものが知られている。この種の携帯電話機は、第1の筐体の一端部における中間部に円筒状の第1保持部を形成し、第2の筐体の一端部における両側に円筒状の第2保持部を形成し、この第2保持部の間に第1保持部を配置し、この状態で第1保持部と第2保持部とに1本のヒンジ軸を連続させて挿入することにより、ヒンジ部を構成し、このヒンジ部を中心に第1の筐体と第2の筐体とが回動するように構成されている。
【特許文献1】特開2002−314659
【0003】
このような開閉式の携帯電話機では、第1の筐体と第2の筐体とのうち、一方の筐体にキーボードなどの電子部品が搭載され、その他方の筐体に表示パネルなどの電子部品が搭載されており、ヒンジ部を中心に第1の筐体と第2の筐体とを開いて使用する際、第1の筐体と第2の筐体とが180°の角度に開くと、表示パネルに表示された情報を見ながらキーボードの操作がしにくいため、一般に、第1の筐体と第2の筐体とが約165°の角度に開くように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような開閉式の携帯電話機においては、第1の筐体と第2の筐体とを約165°の角度に開いて使用しているときに、誤って落下させた場合に、第1の筐体と第2の筐体とが表裏反転して、ほぼ「へ」の字状、つまりヒンジ部から離れた位置の第1の筐体の端部と第2の筐体の端部とが、ヒンジ部よりも低い状態で落下すると、ヒンジ部を挟んで互いに離れた位置における第1の筐体の端部と第2の筐体の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わることになる。このため、ヒンジ部の剛性が第1の筐体および第2の筐体よりも高いと、第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ部を支点として撓み変形し、この撓み変形によって第1、第2の各筐体に搭載された電子部品が破損することがあるという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、第1の筐体の端部と第2の筐体の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わっても、第1の筐体と第2の筐体との変形を防ぎ、第1の筐体と第2の筐体との少なくとも一方に搭載された電子部品が破損するのを防ぐことができる開閉式電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、第1の筐体と、第2の筐体と、前記第1の筐体と前記第2の筐体との少なくとも一方に搭載された電子部品と、前記第1の筐体と前記第2の筐体とを開閉可能に連結するヒンジ部とを備えた開閉式電子機器において、少なくともいずれか一方の筐体に前記ヒンジ部を取り付けるための締結部材に、緩衝機能をもたせたことを特徴とする開閉式電子機器である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記ヒンジ部が、前記締結部材によって前記一方の筐体に対して取り付けられるヒンジ保持部材と、このヒンジ保持部材に回転可能に保持されて前記他方の筐体に対して取り付けられるヒンジ軸とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の開閉式電子機器である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記締結部材が、前記一方の筐体に対して前記ヒンジ部を取り付けるための締結部と、この締結部と前記一方の筐体との間に介在された緩衝部とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉式電子機器である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記締結部が、前記ヒンジ部の前記ヒンジ保持部材の一部を通して前記一方の筐体の一面から他面に貫通して突出する締結本体部と、この締結本体部の一端部に設けられた頭部と、前記締結本体部の他端部に設けられて前記緩衝部を前記締結本体部に対して取り付けるための緩衝取付部とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の開閉式電子機器である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記緩衝部が、前記締結部と前記一方の筐体との両者に弾接する弾性体であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の開閉式電子機器である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記弾性体の弾性範囲が前記ヒンジ部、前記第1の筐体、前記第2の筐体の各剛性範囲内に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の開閉式電子機器である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記弾性体が、ばね部材、または弾力を有する樹脂部材、もしくはそれらを組み合わせた部材であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の開閉式電子機器である。
【0013】
請求項8に記載の発明は、前記ヒンジ部が、前記第1の筐体と前記第2の筐体との両方に前記締結部材によってそれぞれ締結されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の開閉式電子機器である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、第1の筐体の端部と第2の筐体の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わると、その負荷を締結部材の緩衝機能によって吸収することができ、これにより第1の筐体と第2の筐体との変形を防ぐことができるので、第1の筐体と第2の筐体との少なくとも一方に搭載された電子部品が、第1の筐体と第2の筐体との変形によって破損するのを確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、図1〜図12を参照して、この発明を携帯電話機に適用した実施形態1について説明する。
ここで、図1はこの発明を適用した携帯電話機の実施形態1を示した概略斜視図、図2は図1のA−A矢視における断面図、図3は図1の携帯電話機において第1ケースの上部ケースを分解した状態を示した斜視図、図4は図1の携帯電話機において第1ケースの下部ケースと中ケースとを分解した状態を示した斜視図、図5は図4のヒンジ部付近における要部を示した拡大斜視図である。
【0016】
また、図6は図2においてヒンジ部付近を示した要部の拡大断面図、図7は図6において第2ケース側の端部に負荷が加わって実施形態1の機能が作用した状態を示した要部の拡大断面図、図8は図2の状態において第1ケースと第2ケースとの内部構成を概略的に示した図、図9は図8のヒンジ部付近を拡大して示した図、図10は図8の状態で第2ケース側の端部に負荷が加わって実施形態1の機能が作用した状態を示した図、図11は図10のヒンジ部付近を拡大して示した図、図12は図8において表裏反転させた状態で地面などの当接面に落下した状態を示した図である。
【0017】
この携帯電話機は、図1および図2に示すように、キーボード2を有する第1ケース1と表示パネル4を有する第2ケース3とを、ヒンジ部5によって折り畳み可能に連結し、このヒンジ部5を中心に第1、第2の各ケース1、3を回動させて折り畳んだ際(図示せず)に、第1ケース1のキーボード2と第2ケース3の表示パネル4とが互いに対面して重なり合うように構成されている。
【0018】
この場合、第1ケース1は、図1〜図4に示すように、上部ケース6と下部ケース7と中ケース8とを備えている。ここで例えば、上部ケース6と下部ケース7とは、合成樹脂で形成されており、中ケース8はマグネシウム合金などの金属で形成されている。この中ケース8には、図2および図4に示すように、回路基板9が取り付けられており、この回路基板9には、図2に示すように、携帯電話機の様々な機能を制御するために必要なICチップなどの各種の電子部品10が搭載されている。
【0019】
また、この回路基板9の上方に位置する上部ケース6内には、図2〜図4に示すように、キーボード2が設けられている。このキーボード2は、テンキー、モードキーなどの通信機能に必要な各種のキーを備え、この各キーが上部ケース6の上側に露出するように構成されている。さらに、この回路基板9の下側に位置する下部ケース7内には、図2に示すように、電池パック11や補助回路基板などの各種の電子部品12が配置されている。
【0020】
第2ケース3は、図1〜図4に示すように、第1ケース1の上部ケース6に対面する内側ケース13と、その反対側に位置する外側ケース14とを備えている。この第2ケース3の内部には、図2に示すように、パネル基板15が設けられている。また、このパネル基板15には、表示パネル4が内側ケース13の開口部13aに対応して外部に露出した状態で設けられている。この表示パネル4は、液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルなどの平面型の表示パネルからなり、電気光学的に情報を表示するように構成されている。
【0021】
ヒンジ部5は、図1〜図4に示すように、第1ケース1と第2ケース2とを回動可能に連結するためのものであり、第1ケース1側に取り付けられる一対のヒンジ保持部材16と、この一対のヒンジ保持部材16にそれぞれ回転可能に保持されて第2ケース3側に取り付けられる一対のヒンジ軸17とを備えている。
【0022】
ヒンジ保持部材16は、剛性の高い金属からなり、図4および図5に示すように、第1ケース1の中ケース8に対して取り付けられる固定部18と、第2ケース3側に配置されてヒンジ軸17を回転可能に保持する軸受部19とを備えている。ヒンジ軸17は、図6および図7に示すように、ヒンジ保持部材16の軸受部19に回転可能に取り付けられ、この状態で両端部が第2ケース3に取り付けられるように構成されている。この場合、一対のヒンジ軸17のうち、一方は丸棒状に形成されており(図示せず)、他方は円筒状に形成されてその内側を接続ケーブル27が挿通するように構成されている。
【0023】
また、第1ケース1の上部ケース6には、図3に示すように、一対のヒンジ保持部材16の各軸受部19を覆う一対の軸受カバー部20が上方に突出して設けられている。また、ヒンジ部5側に位置する第2ケース3の端部には、図3および図4に示すように、一対の軸受カバー部20が挿入して配置される取付凹部21が設けられている。この取付凹部21の両側に位置する第2ケース3の内部には、ヒンジ軸17の両端部が挿入して取り付けられている(図6参照)。
【0024】
ところで、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16は、図4〜図7に示すように、緩衝機能を有する締結部材23によって第1ケース1の中ケース8に取り付けられている。すなわち、この締結部材23は、図6および図7に示すように、第1ケース1の中ケース8にヒンジ保持部材16を取り付けための締結部24と、この締結部24と中ケース8との間に介在された緩衝部であるコイルばね25とを備えている。
【0025】
締結部24は、図6および図7に示すように、ヒンジ保持部材16の固定部18に設けられた取付孔18aを通して中ケース8の貫通孔に上面側から下面側に貫通して突出する例えば丸棒状の締結本体部24aと、この締結本体部24aの上端部に設けられた頭部24bと、中ケース8の下方に突出した締結本体24aの下端部に設けられてコイルばね25を締結本体部24aに対して取り付けるための緩衝取付部24cとを備えている。緩衝部であるコイルばね25は、図6および図7に示すように、締結部24の緩衝取付部24cと中ケース8との両者に弾接するように構成されている。
【0026】
すなわち、このコイルばね25は、図6に示すように、中ケース8と緩衝取付部24cとの間に配置され、この状態でコイルばね25のばね力(弾性力)によって緩衝取付部24cを中ケース8の下側に押し下げて、締結部24の頭部24bを引き下げることにより、締結部24の頭部24bがヒンジ保持部材16の固定部18を中ケース8の上面に押し付けてヒンジ保持部材16を中ケース8に弾力性(緩衝性)をもって取り付けるように構成されている。この場合、コイルばね25は、その弾性範囲がヒンジ部5、第1ケース1の中ケース8、および第2ケース3の各剛性範囲内に設定されている。つまり、ヒンジ部5に負荷が加わった場合、ヒンジ部5、中ケース8、第2ケース3よりも先にコイルばね25が圧縮変形する構造になっている。
【0027】
これにより、この携帯電話機では、ヒンジ部5のヒンジ軸17を中心に第1ケース1と第2ケース3とを回動させて折り畳む(図示せず)と、第1ケース1のキーボード2と第2ケース3の表示パネル4とが互いに対面して重なり合い、逆に第1ケース1と第2ケース2とを回動させて開くと、図1に示すように、第1ケース1のキーボード2と第2ケース3の表示パネル4とが上方に露出した状態で、ほぼ165°の角度に開くように構成されている。
【0028】
次に、このような携帯電話機を使用する場合について説明する。
まず、この携帯電話機を折り畳んだ状態から開く場合には、図6に示すように、締結部材23の緩衝部であるコイルばね25のばね力によって締結部24の頭部24bがヒンジ保持部材16の固定部18を中ケース8の上面に押し付けてヒンジ保持部材16を中ケース8に弾力性をもって取り付けることにより、ヒンジ部5のヒンジ軸17を中心に第1ケース1と第2ケース2とが回動して、図8および図9に示すように、第1ケース1側と第2ケース3側とがほぼ165°の角度に開く。
【0029】
この状態で、図10に示すように、ヒンジ部5から離れた位置の第2ケース3側の端部に、第1ケース1側と第2ケース3側とを開く方向に向けて負荷(図10に矢印Fで示す)が加わると、図7および図11に示すように、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16における固定部18が締結部材23の締結部24の頭部24bを押し上げて、コイルばね25を圧縮させる。これにより、コイルばね25がそのばね力(弾性力)によって負荷を吸収するので、第2ケース3側が撓み変形せずに、コイルばね25が圧縮した分だけ、第2ケース3側が更に回動して開くことになる。
【0030】
すなわち、この締結部材23は、第1ケース1側と第2ケース3側とにその両者を開く方向に向けて負荷が加わると、図11に示すように、ヒンジ保持部材16の固定部18がコイルばね25のばね力(弾性力)に抗して締結部材23の締結部24の頭部24bを押し上げ、これに伴って締結部24の緩衝取付部24cが引き上げられるので、コイルばね25が第1ケース1側の中ケース8に押し付けられて圧縮する。
【0031】
このときには、コイルばね25の弾性範囲がヒンジ部5、第1ケース1の中ケース8、および第2ケース3の各剛性の範囲内に設定されていることにより、コイルばね25が圧縮するときに、先ずコイルばね25が負荷を吸収するので、第1ケース1側と第2ケース3側とがヒンジ部5のヒンジ軸17を中心に回動してほぼ165°以上の角度に開き、これによりヒンジ部5のヒンジ軸17を支点として第2ケース3側が撓み変形するのを防いでいる。
【0032】
この場合、例えば、第1ケース1側と第2ケース3側とをほぼ165°の角度に開いて使用しているときに、誤って携帯電話機を表裏反転した状態で落下し、図12に示すように、ヒンジ部5から離れた位置の第1ケース1側の端部と第2ケース3側の端部とが、ヒンジ部5よりも低い状態で、地面や床などの当接面Sに衝突した場合にも、上記と同様、第1ケース1側と第2ケース3側とを開く方向に向けて負荷が加わることになる。
【0033】
このときにも、前記のように、コイルばね25が負荷に応じて圧縮するので、このコイルばね25によって負荷を吸収することができ、これにより第1ケース1側と第2ケース3側とがヒンジ部5を中心に回動してほぼ165°以上の角度に開くことになるので、ヒンジ部5のヒンジ軸17を支点として第1ケース1側と第2ケース3側とが撓み変形するのを防ぐことができる。
【0034】
このように、この携帯電話機によれば、キーボード2などの電子部品を搭載した第1ケース1と、表示パネル4などの電子部品を搭載した第2ケース3とを、開閉可能に連結するヒンジ部5を備え、このヒンジ部5のヒンジ保持部材16を第1ケース1に対して取り付けるための締結部材23に、コイルばね25によって緩衝機能をもたせて、ヒンジ保持部材16を取り付けているので、ヒンジ部5から離れた位置の第1ケース1の端部と第2ケース3の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わると、その負荷を締結部材23のコイルばね25による緩衝機能によって吸収することができ、これにより第1ケース1と第2ケース3との撓み変形を防ぐことができ、第ケース1と第2ケース3の各内部に組み込まれた各種の電子部品が破損するのを確実に防ぐことができる。
【0035】
この場合、ヒンジ部5は、締結部材23によって第1ケース1に対して取り付けられるヒンジ保持部材16と、このヒンジ保持部材16に回転可能に保持されて第2ケース3に対して取り付けられるヒンジ軸17とを備えていることにより、ヒンジ部5の構造が簡単で、このヒンジ部5のヒンジ軸17を中心に第1ケース1と第2ケース3とを円滑に且つ確実に回動させることができ、これにより第1ケース1と第2ケース3とを良好に折り畳むことができると共に、折り畳んだ状態から開くことができる。
【0036】
また、締結部材23は、第1ケース1の中ケース8にヒンジ部5のヒンジ保持部材16を取り付けための締結部24と、この締結部24と第1ケース1の中ケース8との間に介在された緩衝部であるコイルばね25とを備えているので、このコイルばね25のばね力(弾力性)によって、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16を第1ケース1の中ケース8に弾力性をもって取り付けることができる。
【0037】
すなわち、締結部24は、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16における固定部18の取付孔18aを通り、第1ケース1の中ケース8の上面側から下面側に貫通して突出する例えば丸棒状の締結本体部24aと、この締結本体部24aの上端部に設けられた頭部24bと、中ケース8の下方に突出した締結本体24aの下端部に設けられてコイルばね25を締結本体部24aに対して取り付けるための緩衝取付部24cとを備えていることにより、コイルばね25のばね力によってヒンジ保持部材16の固定部18を第1ケース1の中ケース8に弾力性をもたせて確実に取り付けることができる。
【0038】
また、緩衝部は、コイルばね25であり、その弾性範囲がヒンジ部5、第1ケース1、第2ケース3の各剛性の範囲内に設定されているので、第1ケース1の端部と第2ケース3の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わった際、第1ケース1と第2ケース3とが撓み変形する前に、その負荷をコイルばね25のばね力(弾性力)によって吸収することができ、これにより第1ケース1と第2ケース3とが撓み変形するのを確実に防ぐことができる。
【0039】
(実施形態2)
次に、図13〜図15を参照して、この発明を携帯電話機に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図12に示された実施形態1と同一部分には、同一符号を付して説明する。
ここで、図13はこの発明を適用した携帯電話機の実施形態2においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付ける際における要部を拡大して示した分解斜視図である。
【0040】
また、図14は図13においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付けた状態を示した要部の拡大断面図、図15は図14の状態で第2ケース側の端部に負荷が加わって実施形態2の機能が作用した状態を示した要部の拡大断面図である。また、この図15は説明のために、主要部分および主要部品について記載した図面でもある。
この携帯電話機は、締結部材23の緩衝部として板ばね30を用いた構成であり、これ以外は実施形態1と同じ構成になっている。
【0041】
すなわち、締結部材23の緩衝部である板ばね30は、金属板をほぼU字形状に折り曲げ、その互いに対向する両側部に締結部24の締結本体部24aが順に挿入する挿入孔30aを設けた構成になっている。この板ばね30は、図14に示すように、中ケース8の下側に突出した締結部24の締結本体部24aの下部が板ばね30の各挿入孔30aに挿入されて、板ばね30の下部側が緩衝取付部24cに弾接して取り付けられ、この状態で板ばね30の上部側が中ケース8の下面に弾接するように構成されている。
【0042】
これにより、板ばね30は、そのばね力(弾性力)によって締結部24の緩衝取付部24cを中ケース8の下側に押し下げて、締結部24の頭部24bを引き下げることにより、この頭部24bがヒンジ保持部材16の固定部18を中ケース8の上面に押し付けて、ヒンジ保持部材16を中ケース8に弾力性(緩衝性)をもって取り付けるように構成されている。この場合にも、板ばね30は、その弾性範囲がヒンジ部5、第1ケース1の中ケース8、および第2ケース3の各剛性範囲内に設定されている。
【0043】
このような携帯電話機においても、キーボード2などの電子部品を搭載した第1ケース1と、表示パネル4などの電子部品を搭載した第2ケース3とを、開閉可能に連結するヒンジ部5を備え、このヒンジ部5のヒンジ保持部材16を第1ケース1に対して取り付けるための締結部材23に、板ばね30によって緩衝機能をもたせて、ヒンジ保持部材16を取り付けているので、実施形態1と同様、ヒンジ部5から離れた位置の第1ケース1の端部と第2ケース3の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わると、その負荷を締結部材23の板ばね30による緩衝機能によって吸収することができ、これにより第1ケース1と第2ケース3との撓み変形を防ぐことができ、第ケース1と第2ケース3の各内部に組み込まれた各種の電子部品が破損するのを確実に防ぐことができる。
【0044】
すなわち、図14に示す状態で、ヒンジ部5から離れた位置の第2ケース3の端部に、第1ケース1と第2ケース3とを開く方向に向けて負荷が加わると、図15に示すように、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16における固定部18が、板ばね30のばね力に抗して締結部材23の締結部24の頭部24bを押し上げて、板ばね30を圧縮させる。これにより、板ばね30が負荷を吸収するので、第2ケース3が撓み変形せずに、板ばね30が圧縮した分だけ、第2ケース3が更に回動して開くことになる。
【0045】
このときには、板ばね30の弾性範囲がヒンジ部5、第1ケース1の中ケース8、および第2ケース3の各剛性範囲内に設定されているので、板ばね30が圧縮するときに、第1ケース1と第2ケース3とがヒンジ部5ヒンジ軸17を中心に回動してほぼ165°以上の角度に開き、これによりヒンジ部5のヒンジ軸17を支点として第2ケース3が撓み変形するのを防ぐことができる。
【0046】
この場合においても、例えば、第1ケース1と第2ケース3とをほぼ165°の角度に開いて使用しているときに、誤って携帯電話機を表裏反転した状態で落下し、ヒンジ部5から離れた位置の第1ケース1の端部と第2ケース3の端部とがヒンジ部5よりも低い状態で、地面や床などの当接面Sに衝突した場合にも、上記と同様、第1ケース1と第2ケース3とを開く方向に向けて負荷が加わることになる。
【0047】
このときにも、前記のように、板ばね30が負荷に応じて圧縮するので、この板ばね30によって負荷を吸収することができ、これにより第1ケース1と第2ケース3とがヒンジ部5を中心に回動してほぼ165°以上の角度に開くことになるので、ヒンジ部5のヒンジ軸17を支点として第1ケース1と第2ケース3とが撓み変形するのを防ぐことができる。
【0048】
(実施形態3)
次に、図16〜図18を参照して、この発明を携帯電話機に適用した実施形態3について説明する。この場合にも、図1〜図12に示された実施形態1と同一部分に、同一符号を付して説明する。
ここで、図16はこの発明を適用した携帯電話機の実施形態3においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付ける際における要部を拡大して示した分解斜視図である。
【0049】
また、図17は図16においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付けた状態を示した要部の拡大断面図、図18は図17の状態で第2ケース側の端部に負荷が加わって実施形態3の機能が作用した際の説明用の拡大断面図である。
この携帯電話機は、締結部材23の緩衝部としてゴムなどの弾性部材35を用いた構成であり、これ以外は実施形態1と同じ構成になっている。
【0050】
すなわち、締結部材23の緩衝部である弾性部材35は、例えばゴムやエラストマーなどの弾性を有する合成樹脂からなり、全体がほぼ円柱状に形成され、その中心部に締結部24の締結本体部24aが挿入する挿入孔35aが設けられた構成になっている。この弾性部材35は、図17に示すように、中ケース8の下側に突出した締結部24の締結本体部24aの下部が弾性部材35の挿入孔35aに挿入されて、弾性部材35の下面が緩衝取付部24cに弾接して取り付けられ、この状態で弾性部材35の上面が中ケース8の下面に弾接するように構成されている。
【0051】
これにより、弾性部材35は、その弾性力によって締結部24の緩衝取付部24cを中ケース8の下側に押し下げて、締結部24の頭部24bを弾力的に引き下げることにより、この頭部24bがヒンジ保持部材16の固定部18を中ケース8の上面に押し付けて、ヒンジ保持部材16を中ケース8に弾力性(緩衝性)をもって取り付けるように構成されている。この場合にも、弾性部材35は、その弾性範囲がヒンジ部5、第1ケース1の中ケース8、および第2ケース3の各剛性範囲内に設定されている。
【0052】
このような携帯電話機においても、キーボード2などの電子部品を搭載した第1ケース1と、表示パネル4などの電子部品を搭載した第2ケース3とを、開閉可能に連結するヒンジ部5を備え、このヒンジ部5のヒンジ保持部材16を第1ケース1に対して取り付けるための締結部材23に、弾性部材35によって緩衝機能をもたせて、ヒンジ保持部材16を取り付けているので、実施形態1と同様、ヒンジ部5から離れた位置の第1ケース1の端部と第2ケース3の端部とにその両者を開く方向に負荷が加わると、その負荷を締結部材23の緩衝機能によって吸収することができ、これにより第1ケース1と第2ケース3との撓み変形を防ぐことができ、第ケース1と第2ケース3の各内部に組み込まれた各種の電子部品が破損するのを確実に防ぐことができる。
【0053】
すなわち、図17に示す状態で、ヒンジ部5から離れた位置の第2ケース3の端部に、第1ケース1と第2ケース3とを開く方向に向けて負荷が加わると、図18に示すように、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16における固定部18が、弾性部材35の弾性力に抗して締結部材23の締結部24の頭部24bを押し上げて、弾性部材35を圧縮させる。これにより、弾性部材35が負荷を吸収するので、第2ケース3が撓み変形せずに、弾性部材35が圧縮した分だけ、第2ケース3が更に回動して開くことになる。
【0054】
このときにも、弾性部材35の弾性範囲がヒンジ部5、第1ケース1の中ケース8、および第2ケース3の各剛性範囲内に設定されているので、弾性部材35が圧縮変形するときに、第1ケース1と第2ケース3とがヒンジ部5のヒンジ軸17を中心に回動してほぼ165°以上の角度に開き、これによりヒンジ部5のヒンジ軸17を支点として第2ケース3が撓み変形するのを防ぐことができる。
【0055】
この場合においても、例えば、第1ケース1と第2ケース3とをほぼ165°の角度に開いて使用しているときに、誤って携帯電話機を表裏反転した状態で落下し、ヒンジ部5から離れた位置の第1ケース1の端部と第2ケース3の端部とがヒンジ部5よりも低い状態で、地面や床などの当接面Sに衝突した場合にも、上記と同様、第1ケース1と第2ケース3とを開く方向に向けて負荷が加わることになる。
【0056】
このときにも、前記のように、弾性部材35が負荷に応じて圧縮するので、この弾性部材35によって負荷を吸収することができ、これにより第1ケース1と第2ケース3とがヒンジ部5を中心に回動してほぼ165°以上の角度に開くことになるので、ヒンジ部5のヒンジ軸17を支点として第1ケース1と第2ケース3とが撓み変形するのを防ぐことができる。
【0057】
なお、前記実施形態1〜3では、緩衝部の例として、コイルばね25、板ばね30、弾性部材35を用いた場合について述べたが、これに限らず、例えば、粘弾性流体やダンパ装置を用いても良く、また上記のばね部材と弾性部材とを組み合わせたものでも良く、またこれらを粘弾性流体やダンパ装置と組み合わせたものでも良い。
【0058】
また、前記実施形態1〜3において、締結本体部24aに雄ねじ部を設け、締結取付部24cに雌ねじ部を設け、弾性体部材25、30、35の組み込み時の初期圧縮量を可変できる構造とすることにより、第2ケース3の先端に負荷が加わった際の第1ケース1に対する開き角度を調整できるようにして良い。
さらに、緩衝部は、前記実施形態1〜3の締結本体部24a自体にその機能をもたせるように構成しても良い。
【0059】
また、前記実施形態1〜3では、コイルばね25、板ばね30、弾性部材35などの緩衝部を中ケース8と締結部24の緩衝取付部24cとの両方に直接弾接させた場合について述べたが、これに限らず、例えば緩衝部と中ケース8との間、および緩衝部と緩衝取付部24cとの間にワッシャなどのスペーサ部材を介在させて、コイルばね25、板ばね30、弾性部材35などの緩衝部を中ケース8と締結部24の緩衝取付部24cとの両方に間接的に弾接させるように構成しても良い。
【0060】
また、前記実施形態1〜3では、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16を締結部材23によって第1ケース1に対して取り付けるように構成した場合について述べたが、これに限らず、例えばヒンジ部5のヒンジ保持部材16を締結部材23によって第2ケース2に対して取り付けるように構成しても良い。この場合には、ヒンジ部5のヒンジ軸17を第1ケース1に対して取り付けるように構成すれば良い。
【0061】
また、これに限らず、例えば、図19に示す変形例のように、ヒンジ部5のヒンジ保持部材16を2組用意し、一方のヒンジ保持部材16を締結部材23によって第1ケース1側に対して取り付け、他方のヒンジ保持部材16を締結部材23によって第2ケース3側に対して取り付け、この状態で2組のヒンジ保持部材16にヒンジ軸17をそれぞれ回転可能に取り付けて、第1ケース1と第2ケース3とを折り畳み可能に連結した構成でも良い。このように構成すれば、第1ケース1側と第2ケース3側との両方に締結部材23が設けられているので、実施形態1〜3よりも、約2倍の緩衝効果がある。
【0062】
さらに、前記実施形態1〜3では、第1ケース1にキーボード2などの電子部品を搭載し、第2ケース3に表示パネル4などの電子部品を搭載した携帯電話機について述べたが、これに限らず、例えば第1ケースにキーボードと表示パネルとの両方を搭載し、第2ケースに電子部品を搭載せずに蓋ケースとした携帯電話機にも適用することができる。
【0063】
なおまた、前記実施形態1〜3およびその各変形例では、携帯電話機に適用した場合について述べたが、必ずしも携帯電話機である必要はなく、例えばカメラ、PDA(パーソナル・デジタル・アシスタント)、ノート型パソコン、ウェアラブパソコン、電卓、電子辞書などの各種の開閉式の電子機器に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明を適用した携帯電話機の実施形態1を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A矢視における断面図である。
【図3】図1の携帯電話機において第1ケースの上部ケースを分解した状態を示した斜視図である。
【図4】図1の携帯電話機において第1ケースの下部ケースと中ケースとを分解した状態を示した斜視図である。
【図5】図4のヒンジ部付近における要部を示した拡大斜視図である。
【図6】図2においてヒンジ部付近を示した要部の拡大断面図である。
【図7】図6において第2ケース側の端部に負荷が加わってコイルばねが圧縮された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図8】図2の状態において第1ケースと第2ケースとの内部構成を概略的に示した図である。
【図9】図8のヒンジ部付近を拡大して示した図である。
【図10】図8の状態で第2ケース側の端部に負荷が加わってコイルばねが圧縮された状態を示した図である。
【図11】図10のヒンジ部付近を拡大して示した図である。
【図12】図8において表裏反転させた状態で地面などの当接面に落下した状態を示した図である。
【図13】この発明を適用した携帯電話機の実施形態2においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付ける際における要部を拡大して示した分解斜視図である。
【図14】図13においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付けた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図15】図14の状態で第2ケース側の端部に負荷が加わって板ばねが圧縮された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図16】この発明を適用した携帯電話機の実施形態3においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付ける際における要部を拡大して示した分解斜視図である。
【図17】図16においてヒンジ部のヒンジ保持部材を第1ケースの中ケースに取り付けた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図18】図17の状態で第2ケース側の端部に負荷が加わって弾性部材が圧縮された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図19】この発明を適用した携帯電話機の変形例において表裏反転させた状態で地面などの当接面に落下した状態を示した図である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1ケース
2 キーボード
3 第2ケース
4 表示パネル
5 ヒンジ部
6 上部ケース
7 下部ケース
8 中ケース
9 回路基板
16 ヒンジ保持部材
17 ヒンジ軸
18 固定部
19 軸受部
23 締結部材
24 締結部
24a 締結本体部
24b 頭部
24c 緩衝取付部
25 コイルばね
30 板ばね
35 弾性部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、第2の筐体と、前記第1の筐体と前記第2の筐体との少なくとも一方に搭載された電子部品と、前記第1の筐体と前記第2の筐体とを開閉可能に連結するヒンジ部とを備えた開閉式電子機器において、
少なくともいずれか一方の筐体に対して前記ヒンジ部を取り付けるための締結部材に、緩衝機能をもたせたことを特徴とする開閉式電子機器。
【請求項2】
前記ヒンジ部は、前記締結部材によって前記一方の筐体に対して取り付けられるヒンジ保持部材と、このヒンジ保持部材に回転可能に保持されて前記他方の筐体に対して取り付けられるヒンジ軸とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の開閉式電子機器。
【請求項3】
前記締結部材は、前記一方の筐体に対して前記ヒンジ部を取り付けるための締結部と、この締結部と前記一方の筐体との間に介在された緩衝部とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉式電子機器。
【請求項4】
前記締結部は、前記ヒンジ部の前記ヒンジ保持部材の一部を通して前記一方の筐体の一面から他面に貫通して突出する締結本体部と、この締結本体部の一端部に設けられた頭部と、前記締結本体部の他端部に設けられて前記緩衝部を前記締結本体部に対して取り付けるための緩衝取付部とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の開閉式電子機器。
【請求項5】
前記緩衝部は、前記締結部と前記一方の筐体との両者に弾接する弾性体であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の開閉式電子機器。
【請求項6】
前記弾性体は、その弾性範囲が前記ヒンジ部、前記第1の筐体、前記第2の筐体の各剛性範囲内に設定されていることを特徴とする請求項5に記載の開閉式電子機器。
【請求項7】
前記弾性体は、ばね部材、または弾力を有する樹脂部材、もしくはそれらを組み合わせた部材であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の開閉式電子機器。
【請求項8】
前記ヒンジ部は、前記第1の筐体と前記第2の筐体との両方に前記締結部材によってそれぞれ締結されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の開閉式電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−93464(P2010−93464A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260268(P2008−260268)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】