説明

開閉装置

【課題】通常の使用ではアームが筐体から外れにくく、開き方向に所定以上の力が加えられたときにはアームが筐体から外れることで、アームの破損を防止する開閉装置を提供する。
【解決手段】開口21が形成された筐体20に、回動式の蓋30が取り付けられている。蓋30からアーム40が延設され、筐体20のアーム孔23に挿通されている。アーム40には、通常使用時に筐体20の第1面27に当接する第1当接面44、過負荷時に第2面28に当接する第2当接面45、及び第1当接面44から傾斜して設けられた傾斜面48が形成されている。過負荷時には、第2当接面45が第2面28に押圧され、傾斜面48がアーム孔23の周縁24に押圧されて、アーム40が弾性変形する。第1面27と第1当接面44との当接、及び傾斜面48とアーム孔23の周縁24との当接が解除されて、アーム40が筐体20から抜き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋が筐体に対して一端側を中心に回動して開閉が行われる開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筐体に取り付けられた蓋が筐体に対して一端側を中心に回動して開閉が行われる開閉装置が知られている。このような回動式の開閉装置は、主として、機材の一部を外部から遮断して保護するため、そして、機材の一部を必要な時だけ外部からアクセス可能な状態にするために使用されている。回動式の開閉装置は、電子機器を初めとする様々な機材に使用されており、一例として、小物の収納容器、電子写真装置、及びカード挿入スロット等に使用されている。
【0003】
また、回動式の開閉装置は、インクジェットプリンタにおいて、インクカートリッジを装着するスロットを外部に対して遮断又は開放するためにも使用されている。スロットは、筐体に形成された開口の奥に設けられている。平常時には、蓋が開口に対して閉じられた状態となっており、スロットは外部から遮断されている。インクカートリッジの交換の際、ユーザはスロットにアクセスするために蓋を回動させて、蓋が開口に対して開かれた状態にする。インクカートリッジの交換後、ユーザは蓋を逆向きに回動させて、再び蓋が開口に対して閉じられた状態にする。
【0004】
開閉装置には、蓋の開きすぎを防止するアームを備えたものがある。一般的な構成では、アームは蓋から延設されており、アームの先端側が筐体に設けられた孔に挿入されている。蓋が閉じられた状態にあるとき、アームは筐体の内部に収容されている。蓋が開く向きに回動されると、アームは筐体の内部から部分的に脱抜されていく。アームの先端には突起等を有した係合部が形成されており、孔の周辺部位と係合するようになっている。係合部が孔の周辺部位と係合することで、アームは筐体の内部から完全には脱抜されず、蓋の回動が係止される。つまり、蓋は、所定の角度まで開かれると、それ以上開く向きに回動することはできず、蓋の開きすぎが防止される。
【0005】
また、特許文献1には、蓋が閉じられた位置から筐体面に沿ってスライドすることで、蓋の開く向きへの回動が阻止される開閉装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−225402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アームを備えた開閉装置において、蓋が最大まで開かれた状態で蓋に開く向きへの大きな力が加えられると、開閉装置を構成する部品が破損するおそれがある。蓋の設けられる位置や蓋が回動する向きによっては、蓋の回動が開閉装置が載置される載置面によって止められて、蓋の開きすぎが防止されることもある。しかしながら、蓋が開閉装置の上部に設けられている場合や、開閉装置がテーブルや台の端に置かれた場合には、蓋の回動が載置面によって止められないため、上述のような問題が起こりやすい。特に、突起等を有した係合部は、負荷によって破損しやすい。また、上述されたようなインクジェットプリンタには、アームが機械式センサとして機能しているものがある。そのような機種では、アームの位置によって蓋の開閉状態が判断されるため、アームの破損によって機器が正常に動作しなくなるおそれがある。
【0008】
蓋が開く向きへ所定以上の力が掛かったときに係合部の係合が解除されるようにすることで、部品の破損を防止することができる。係合が解除されると、アームは筐体の内部から完全に脱抜された状態となる。その際、ユーザは再びアームを筐体の内部にセットする必要がある。通常の使用で係合が簡単に解除されてしまうと、ユーザは頻繁にアームを筐体の内部にセットすることになる。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アームを備えた開閉装置において、通常の使用ではアームが筐体から外れにくく、開き方向に所定以上の力が加えられたときにはアームが筐体から外れることで、アームの破損を防止する開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明は、蓋が筐体の開口に対して一端側を中心に回動し、上記筐体に対して閉じられた第1位置から、当該開口を開放する第2位置まで回動可能な開閉装置である。上記筐体は、上記開口の周辺に孔が設けられており、当該孔の内側に、上記筐体の奥部に向けられた第1面、及び上記蓋の回動中心側とは反対向きに向けられた第2面が形成されたものである。上記蓋は、第1位置及び第2位置へ回動して上記開口を開閉する本体と、当該本体から延出されて上記孔に挿通されており、表裏面が上記蓋の回動方向に平行な平板形状のアームと、を有するものである。上記アームは、上記平板形状の側縁に形成されており、通常使用時に上記第1面と当接して、上記本体が第2位置より開く向きへ回動することを制止する第1当接面と、上記アームの厚み方向中央よりも片側に形成されており、上記本体が開く向きへの所定以上の力が加わった際に、上記第2面と当接する第2当接面と、上記第1当接面から上記アームの先端側に連続して設けられており、上記第1当接面に対して傾斜された傾斜面と、を有している。上記本体が開く向きへの所定以上の力によって上記アームが上記蓋の回動中心側へ移動し、上記傾斜面が上記孔の周縁から押圧され、且つ上記第2当接面が上記第2面から押圧されて、上記アームを弾性変形させる。上記アームの弾性変形によって、上記孔の周縁と上記傾斜面との当接、及び上記第2面と上記第2当接面との当接が解除されて、上記アームが上記筐体から抜き出される。
【0011】
蓋の本体が第2位置にあるとき、第1当接面が第1面と当接している。蓋が開く向きに所定以上の力が作用した際、第2当接面が第2面と当接することで、アームが回動中心側へ移動しすぎてアームと筐体との係合が簡単に解除されてしまうことを防止する。
【0012】
蓋が開く向きに所定以上の力が作用するとき、アームが回動中心側へ移動することで、第2当接面が第2面によって押圧され、傾斜面が孔の周縁によって押圧された状態となる。上記2つの押圧力が、アームを捻れさせるモーメントとして作用し、アームが弾性変形される。アームの弾性変形により、孔の周縁と傾斜面との当接、及び第2面と第2当接面との当接が解除されてアームが筐体から抜き出される。
【0013】
(2) 上記第1当接面は、上記アームが脱抜される向きにおいて、上記第1面と当接し、
上記第2当接面は、上記蓋の回動中心側へ向かう向きにおいて、上記第2面と当接してもよい。
【0014】
(3) 上記蓋の回動中心である軸線方向から見て、上記第1面に沿った第1仮想直線と上記第2面に沿った第2仮想直線とによって、上記第1面及び上記第2面がそれぞれ面する空間側になされる角が鋭角であってもよい。
【0015】
第1面と第2面とがこのような位置関係に形成されることで、第1当接面及び第2当接面は、第1面及び第2面と確実に当接することができる。
【0016】
(4) 上記アームが延出する長手方向が、上記蓋の回動方向に沿った円弧状であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、通常の使用ではアームが筐体から外れにくく、また、開く向きに所定以上の力が加えられたときにはアームが筐体から外れるため、アームの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の斜視図である(A)は、蓋30が閉位置にある状態を示すものである。(B)は、蓋30が開位置にある状態を示すものである。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、図1(B)の蓋30周辺を拡大した要部拡大図である。
【図4】図4は、蓋30周辺を拡大した正面図であって、蓋30が開位置にある状態を示すものである。なお、内側筐体部材25及び蓋30以外の構成要素が省略されている。
【図5】図5は、蓋30を複合機10から取り外した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、蓋30が開位置にあるときの係合部41を示す斜視図である。なお、アーム40以外の構成要素が省略されている。
【図7】図7は、係合部41周辺を示す斜視図である。(A)は、蓋30が開位置にあるときの状態を示す。(B)は、蓋30に所定以上の第1向き90の力が作用している状態を示す。なお、内側筐体部材25及びアーム40以外の構成要素が省略されている。
【図8】図8は係合部41周辺を示す正面図である。(A)は、蓋30が開位置にあるときの状態を示す。(B)は、蓋30に所定以上の第1向き90の力が作用している状態を示す。なお、内側筐体部材25及びアーム40以外の構成要素が省略されている。
【図9】図9は、図8(A)の、A−A切断線における断面図である。
【図10】図10は、アーム40が湾曲されて、アーム孔23から脱抜される様子を示す正面図である。なお、内側筐体部材25及びアーム40以外の構成要素が省略されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(図1(A)の状態)を基準として上下方向15が定義され、蓋30が設けられている側を手前側(正面)として前後方向13が定義され、複合機10を手前側(正面)から見て左右方向14が定義される。
【0020】
[複合機10の概要]
図1に示される複合機10(本発明の開閉装置の一例)は、筐体20(本発明の筐体の一例)の内部に、インクジェット記録方式のプリンタ部11(図2)が収容されたものである。筐体20は、複数の部材によって構成されているが、複合機10の外部からは、複合機10の側面を形成する外側筐体部材26のみが視認可能である。
【0021】
複合機10の正面右側には、蓋30が取り付けられている。蓋30の裏側において、筐体20の一部である内側筐体部材25(図1(B),3,4)によって開口21(本発明の開口の一例)が形成されている。蓋30は、開口21に対して開閉自在に取り付けられている。図1(B),3,4においては省略されているが、開口21の奥部には、後述されるインクカートリッジ64(図2)を装着するためのスロット63(図2)が設けられている。複合機10の正面中央には、記録用紙61が積載された給紙トレイ12(図1(B))が装着されている。給紙トレイ12は、複合機10に対して前後方向13に挿抜可能となっている。
【0022】
複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有しているが、プリント機能以外の機能の有無は任意である。なお、本実施形態において、複合機10はプリンタ機能として片面画像記録機能のみ有しているが、複合機10は両面画像記録機能を有していてもよい。
【0023】
[プリンタ部11]
図2に示されるように、プリンタ部11は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙61に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ部11は、インク供給装置62を備えている。インク供給装置62には、スロット63が設けられている。スロット63には、インクカートリッジ64が装着され得る。スロット63には、その一面が外部に開放された装着口65が設けられている。インクカートリッジ64は、装着口65を介してスロット63に挿入され、或いはスロット63から抜き出される。
【0024】
インクカートリッジ64には、プリンタ部11で使用可能なインクが貯留されている。スロット63に装着された状態において、インクカートリッジ64と、記録部66のキャリッジ67に設けられた記録ヘッド68とがインクチューブ69で接続されている。記録ヘッド68にはサブタンク(不図示)が設けられている。サブタンクは、インクチューブ69を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。キャリッジ67が左右方向14(紙面に対して垂直な方向)に移動する中で、記録ヘッド68は、インクジェット記録方式によって、サブタンクから供給されたインクをノズル(不図示)から選択的に吐出する。
【0025】
給紙トレイ12から給紙ローラ70によって搬送路71へ送給された記録用紙は、搬送ローラ対72によってプラテン73上へ搬送される。記録ヘッド68は、プラテン73上を通過する記録用紙61に対してインクを選択的に吐出する。これにより、画像が記録用紙61に記録される。プラテン73を通過した記録用紙61は、排出ローラ対74によって、搬送路71の最下流側に設けられた排紙トレイ75に排出される。
【0026】
[蓋30]
図1に示されるように、筐体20には、蓋30が取り付けられている。蓋30は、下端33側を中心に上端32側が第1向き90(図1(A))に回動して、開口21に対して閉じられた閉位置(本発明の第1位置の一例、図1(A)の位置)から、筐体20に対して所定の角をなすように開かれた開位置(本発明の第2位置の一例、図1(B)の位置)まで姿勢変化可能である。また、蓋30は、下端33側を中心に上端32側が第1向き90とは反対向きの第2向き91(図1(B))に回動して、開位置から閉位置に復帰することができる。
【0027】
図3,4,5に示されるように、蓋30は、概ね平板状の本体31(本発明の本体の一例)と本体31の裏面34(図3,5)から延設された平板状のアーム40とを有する。本体31とアーム40とは一体成形されており、例えば熱可塑性樹脂によって製造されていてもよい。アーム40の先端には突起状の係合部41(図5,6)が形成されている。
【0028】
左右方向14の両端部周辺において、本体31は裏面34側に湾曲されている。すなわち、本体31は、上端32又は下端33側から見て略コの字状の形状を有している。本体31の上端32周辺において、裏面34から突起35が突出されている。突起35は、蓋30が閉位置にあるとき、後述される筐体20の係止部(不図示)によって係止される。突起35及び係止部は、自重や外部からの振動によって蓋30が閉位置から開位置に姿勢変化することを防止するものである。
【0029】
湾曲された本体31の左右方向14の両端部周辺から、内側に向かって回動用凸部36(図5)が突出されている。回動用凸部36は、長さ数ミリ程度の突起である。図5に示される角度からは、1つしか確認することはできないが、回動用凸部36は、下端33近くにおいて、左右方向14に一対をなすように対向配置されている。回動用凸部36は、後述される張り出し部29(図3)に形成された2つの回動用凹部(不図示)にそれぞれ挿入されている。
【0030】
アーム40は、本体31の裏面34において、左右方向14の右端付近から延設されている。アーム40は、左右方向14に薄平な平板であり、本体31の下端33側に湾曲されて円弧をなしている。左右方向14からの平面視において円弧の接線と直交する方向の寸法(以下、単に幅と称される。)は、アーム40の基端(本体31側)において最も長く、先端側に向かって短くなっている。アーム40は、後述される内側筐体部材25のアーム孔23(図3,4)に挿通されており、蓋30の回動を案内すると同時に、蓋30の開きすぎを防止するものである。
【0031】
図5,6に示されるように、アーム40の先端には、係合部41が形成されている。係合部41は、アーム40の円弧の外周側に向けて突出する突起状である。
【0032】
図6に示されるように、係合部41において、左右方向14の右側の面(本発明の表裏面の一方)からリブ42が突出されている。係合部41は、リブ42によって、アーム40の他の部分よりも左右方向14に厚みを有している。リブ42は、直線状に形成された2つの側面43を有する。直線状に形成された2つの側面43のうち、アーム40が延出する第3向き92に沿った側面43によって、第2当接面45が形成されている。詳細は後述されるが、第2当接面45は、内側筐体部材25の第2面28と当接して、アーム40を湾曲させる力を生ずるものである。
【0033】
左右方向14からの平面視における係合部41の側縁(本発明における平板形状の側縁に相当)のうち、第3向き92の基端側には、第1当接面44が形成されている。第1当接面44は、蓋30が開位置にあるとき、後述される内側筐体部材25の第1面27に当接するものである。第1当接面44から連続して、第3向き92の先端側に傾斜面48が形成されている。
【0034】
傾斜面48は、係合部41の側縁に沿って形成された縦長の面であり、係合部41の概ね左端に形成されている。アーム40が開位置にあるとき、第1当接面44及び傾斜面48は、共に、前後方向13の後方ほど上下方向15の上方に位置するように傾斜されている。傾斜面48の傾斜は、第1当接面44の傾斜よりも緩やかである。つまり、前後方向13において、傾斜面48は、第1当接面44に対して傾斜されている。
【0035】
図6に示されるように、アーム40の右側の面と第2当接面45との連続部分には、アール46が形成されていてもよい。すなわち、アーム40の右側の面と第2当接面45とが連続する部分が、曲面状に形成されていてもよい。アール46は、後述される第2面28が第2当接面45を押圧する力に対して、係合部41の剛性を高くするためのものである。
【0036】
[筐体20]
図1,3に示される筐体20は、複数の部材が組み合わせられて構成されている。図3に示されるように、例えば、筐体20は、内部空間を有する枠状の内側筐体部材25と、複合機10の側面を構成する外側筐体部材26とを含むものである。
【0037】
図3,4に示される内側筐体部材25は、給紙トレイ12よりも左右方向14の右側に配置されている。内側筐体部材25の内部空間が複合機10の前面に露出されている。内側筐体部材25の内部空間が複合機10の前面に露出されることで、開口21が形成されている。開口21は矩形の孔であり、外部からスロット63に繋がる通路を形成している。
【0038】
外側筐体部材26は、内側筐体部材25を含む複合機10の構成部材を左右方向14及び前後方向13に取り囲んでいる。すなわち、複合機10の側面を形成している。ただし、複合機10の前面において、給紙トレイ12及び開口21が存在する部分は外側筐体部材26によってカバーされていない。内側筐体部材25及び外側筐体部材26は、例えば熱可塑性樹脂によって製造されてもよい。
【0039】
開口21の下方には、開口21よりも前後方向13の前方に張り出された張り出し部29(図3)が形成されている。上述された通り、張り出し部29の左右方向14の両端には、不図示の2つの回動用凹部が形成されている。本体31は、略コの字状に湾曲された左右方向14の両端部周辺が、張り出し部29を左右方向14の外側から覆うように配置されている。回動用凸部36は、それぞれ回動用凹部に挿入されている。すなわち、本体31が張り出し部29に嵌め込まれた状態になっている。これにより、本体31は、2つの回動用凸部36を結んだ仮想直線を中心に回動することができる。なお、図3,4に示される向きからは視認できないが、開口21の上下方向15の上方には、上述された突起35を係止する係止部が形成されている。
【0040】
開口21の左右方向14の右側には、アーム孔23(本発明の孔の一例)が形成されている。アーム孔23は、縦長形状の矩形の孔である。アーム孔23の左右方向14の寸法は、アーム40の係合部41の厚みよりも長く、上下方向15の寸法は、アーム40の最大の幅、すなわち最基端側における幅よりも長い。アーム孔23にはアーム40が挿通されている。アーム40は、アーム孔23の左右方向14の概ね右側に寄るように位置している。
【0041】
図7に示されるように、複合機10の内側において、内側筐体部材25におけるアーム孔23の周辺には、互いに交差する平面である第1面27及び第2面28が形成されている。図7に示される角度からは確認できないが、アーム40が内側筐体部材25に挿通されている部分がアーム孔23である。第1面27は、アーム孔23の奥部、詳細には、前後方向13の後方であって上下方向15のやや下方を向けられている。第2面28は、蓋30の回動中心とは反対側、つまり、上下方向15の上方を向けられている。第1面27は、アーム孔23の周囲を構成する枠のうち、上下方向15の上方の枠と左右方向14の右側の枠に沿って形成されている。第2面28は、アーム孔の周囲を構成する枠のうち、左右方向14の右側の枠において、第1面27と交差して形成されている。
【0042】
第1面27と第2面28とがなす角は、鋭角である。つまり、左右方向14から見て、第1面27に沿って引かれた直線(本発明の第1仮想直線)と第2面28に沿って引かれた直線(本発明の第2仮想直線)とが鋭角をなす。これにより、蓋30が開位置にあるときに、係合部41と、第1面27及び第2面28とが確実に係合された状態となる。
【0043】
図9に示されるように、上下方向15の上方から見て、第1面27は、左右方向14の右側ほど前後方向13の前方に位置するように傾斜されている。詳細は後述されるが、この傾斜は、蓋30が開かれる際、第1当接面44を摺動させて、第2当接面45と第2面28とが当接する位置まで係合部41を案内するものである。
【0044】
[蓋30及び筐体20の動作]
蓋30が閉位置にあるとき、すなわち、図1(A)の状態において、アーム40は、大部分がアーム孔23の内部に収容されている。また、蓋30の突起35は、係止部によって係止されている。係止部が突起35を係止する力を上回る第1向き90の力が蓋30に作用すると、突起35の係止が解除されて、蓋30は下端33側を中心に第1向き90に回動する。蓋30が開位置まで回動すると、図7(A),図8(A)に示されるように、係合部41がアーム孔23の周辺まで移動して、第1当接面44が第1面27と当接した状態となる。通常の使用時には、この位置において蓋30の回動が制止される。
【0045】
一方、第1当接面44が第1面27と当接した状態から所定以上の第1向き90の力が作用すると、係合部41は、第1面27に沿って上下方向15の下方に移動する。その際、第1当接面44は、図9に示される第1面27の傾斜のため、第1面27を第4向き93に摺動する。こうして、係合部41は、第2当接面45と第2面28とが当接する位置まで案内される。
【0046】
第2当接面45と第2面28とが当接した状態が、図7(B),図8(B)に示される。図7(B)に示されるように、第2当接面45は、第2面28と当接している。また、図8(B)に示されるように、第1当接面44は、第1面27と当接した位置から僅かに上下方向15の下方にずらされており、傾斜面48の一部がアーム孔23の周縁24に当接した状態となっている。
【0047】
第1当接面44が第1面27と当接した状態において、蓋30に作用する第1向き90の力が大きくなるほど、係合部41が上下方向15の下方に移動しようとする力も大きくなる。第2当接面45は、アーム40における左右方向14の概ね右側に形成されている。したがって、第2面28が、反作用によって第2当接面45を押圧する力の一部は、係合部41の上端側を左右方向14の左側に傾斜させる第5向き94(図10)の力(モーメント)として作用する。同様に、傾斜面48も、反作用によってアーム孔23の周縁24から押圧され、その力の一部は第5向き94に作用する。
【0048】
つまり、第2当接面45と傾斜面48との2箇所において、第5向き94の力が作用して、アーム40が湾曲される。係合部41の上端側が左右方向14の左側に傾斜されることで、傾斜面48が左右方向14の左側にずらされて、アーム孔23の周縁24との当接が解除される。傾斜面48は、その状態でアーム孔23の周縁24を第1向き90に摺動する。つまり、傾斜面48の周辺部がアーム孔23の外側に移動する、
【0049】
傾斜面48がアーム孔23の周縁24を摺動している状態が図10に示される。アーム40は湾曲されており、傾斜面48は、周縁24を第1向き90(紙面手前側)に摺動している。
【0050】
傾斜面48の周辺部に続いて、リブ42がアーム孔23の外側に移動する。傾斜面48がアーム孔23の外側に移動するにつれて、係合部41傾斜が大きくなる。それにより、第2面28と第2当接面45とのなす角が大きくなり、両者の当接が解除される。リブ42は、第1面27及び第2面28の左側に外されて、アーム孔23を挿通可能となる。以上の流れによって、アーム40は、アーム孔23から完全に脱抜される。
【0051】
アーム孔23から脱抜されたアーム40は、ユーザが再びアーム孔23にセットすることができる。ユーザは、手指によってアーム40の係合部41を第5向き94に湾曲させた状態を維持しながら、アーム40をアーム孔23に挿入する。以上の手順によって、アーム40は、再びアーム孔23に挿通された状態となる。
【0052】
[実施形態の作用効果]
本発明においては、通常の使用ではアーム40が筐体20から外れにくく、また、蓋30に第1向き90の所定以上の力が作用したときにはアーム40が筐体20から外れるため、アーム40の破損を防止することができる。
【0053】
また、傾斜面48と第2当接面の2箇所においてアームを湾曲させる力が作用するため、アーム40を無理なく湾曲させることができる。
【0054】
また、アーム40の左右方向14の右側の面と第2接触面45との連続部分には、アール46が形成されているため、第2接触面45を押圧する力に対する剛性が高くされている。したがって、蓋30に第1向き90の大きな力が作用して第2当接面45が第2面28から力を受けたとしても、係合部41が破損することを防止することができる。
【0055】
また、第1面27の傾斜のため、係合部41は、第2当接面45が第2面28と当接する位置まで案内される。つまり、第2当接面45と第2面28とを確実に当接させることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る蓋30は、製造が容易であり、剛性が高い。
【0057】
[変形例]
係合部41の形状は上述された実施形態に限定されるものではなく、第1当接面44及び第2当接面45は、上述された実施形態と同等の機能を有するものあれば異なる形状又は配置によって形成されていてもよい。例えば、第2当接面45は、必ずしもリブ42によって形成されている必要はない。同様に、内側筐体部材25の第1面27及び第2面28についても、上述された実施形態と異なる形状や配置によって形成されていてもよい。
【0058】
また、上述された実施形態において、係合部41の付け根部分がアーム40の他の部分よりも曲がりやすくされていてもよい。係合部41の付け根部分が曲がりやすくされることで、蓋30に第1向き90の力が作用した際に、係合部41が傾斜しやすくなり、係合部41の係合がスムーズに解除される。
【0059】
例えば、係合部41の付け根部分を曲がりやすくするため、係合部41周辺の幅が他の部分と比較して狭く形成されてもよい。あるいは、係合部41の周辺には、部分的に弾性係数の高い材料が使用されていてもよい。弾性係数の高い材料には、当業者が最適なものを選択することができる。その一例として、例えばフィラーを多く含んだ樹脂が使用されてもよい。
【0060】
また、係合部41周辺を曲がりやすくするため、係合部41の付け根部分の厚みが薄くされてもよい。あるいは、係合部41の付け根部分が湾曲しやすくするためにスリットが設けられてもよい。また、上述された方法のうちの複数が組み合わせられて使用されてもよい。
【0061】
また、本発明に係る開閉装置は、必ずしも複合機10のようなプリント機能を備えた機器として構成される必要はなく、蓋やアームは、必ずしもインクカートリッジ64を装着するスロット63に対して使用される必要はない。例えば、本発明は、上述されたように小物の収納容器、電子写真装置、及びカード挿入スロット等に使用されてもよい。つまり、機材の一部を外部に対して遮断及び開放することが求められるあらゆる機材が、本発明に係る開閉装置として構成されうるものである。
【符号の説明】
【0062】
10・・・複合機(開閉装置)
20・・・筐体
21・・・開口
23・・・アーム孔(孔)
24・・・周縁
27・・・第1面
28・・・第2面
30・・・蓋
31・・・本体
40・・・アーム
44・・・第1当接面
45・・・第2当接面
48・・・傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋が筐体の開口に対して一端側を中心に回動し、上記筐体に対して閉じられた第1位置から、当該開口を開放する第2位置まで回動可能な開閉装置であって、
上記筐体は、上記開口の周辺に孔が設けられており、当該孔の内側に、上記筐体の奥部に向けられた第1面、及び上記蓋の回動中心側とは反対向きに向けられた第2面が形成されたものであり、
上記蓋は、第1位置及び第2位置へ回動して上記開口を開閉する本体と、当該本体から延出されて上記孔に挿通されており、表裏面が上記蓋の回動方向に平行な平板形状のアームと、を有するものであり、
上記アームは、
上記平板形状の側縁に形成されており、通常使用時に上記第1面と当接して、上記本体が第2位置より開く向きへ回動することを制止する第1当接面と、
上記アームの厚み方向中央よりも片側に形成されており、上記本体が開く向きへの所定以上の力が加わった際に、上記第2面と当接する第2当接面と、
上記第1当接面から上記アームの先端側に連続して設けられており、上記第1当接面に対して傾斜された傾斜面と、を有しており、
上記本体が開く向きへの所定以上の力によって上記アームが上記蓋の回動中心側へ移動し、上記傾斜面が上記孔の周縁から押圧され、且つ上記第2当接面が上記第2面から押圧されて、上記アームを弾性変形させ、
上記アームの弾性変形によって、上記孔の周縁と上記傾斜面との当接、及び上記第2面と上記第2当接面との当接が解除されて、上記アームが上記筐体から抜き出される開閉装置。
【請求項2】
上記第1当接面は、上記アームが脱抜される向きにおいて、上記第1面と当接し、
上記第2当接面は、上記蓋の回動中心側へ向かう向きにおいて、上記第2面と当接する請求項1に記載の開閉装置。
【請求項3】
上記蓋の回動中心である軸線方向から見て、上記第1面に沿った第1仮想直線と上記第2面に沿った第2仮想直線とによって、上記第1面及び上記第2面がそれぞれ面する空間側になされる角が鋭角である請求項1又は2に記載の開閉装置。
【請求項4】
上記アームが延出する長手方向が、上記蓋の回動方向に沿った円弧状である請求項1から3のいずれかに記載の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−250405(P2012−250405A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123954(P2011−123954)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】