説明

間欠式フィルム成形方法および間欠式フィルム成形装置

【課題】
本発明は、プレス部からの熱負荷等の影響により成形部と成形部の間の間欠部および隣接する成形面に発生するシワを抑制できる間欠式フィルム成形装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の間欠式フィルム成形装置は、金型と、該金型の表面にフィルムを押圧するプレス装置と、該金型の表面からフィルムを離型し、次に成形するフィルムを金型表面に供給するための搬送装置と、を少なくとも含む間欠式フィルム成形装置であって、成形面より搬送方向下流側において、前記金型端辺近傍でフィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する把持手段を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばロール状に巻かれている状態の連続したフィルムを順次に巻き戻しながら成形装置に供給して、該フィルム表面に微細凹凸形状を間欠的にプレス成形をする成形方法と成形装置に関する。
【0002】
特に、プレス成形後のフィルムにおいて、成形部と成形部の間の間欠部でシワの少ない平面性の良好な状態を得ることのできる間欠式フィルム成型方法と間欠式フィルム成形装置に関する。
【背景技術】
【0003】
導光板、光拡散板、レンズ等の光学フィルムを製造する手段として、フィルムに表面に微細凹凸パターンを転写する方法が従来から知られており、例えば、ロール状の長尺のフィルムに対して、間欠的に微細凹凸パターンを形成する装置及び方法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
これらの装置および方法では、巻出ロールからプレス装置内へと供給したフィルムを微細凹凸パターン付き金型にプレス転写することにより、フィルム表面に凹凸パターンを形成する。プレス転写するときは、金型をフィルムのガラス転移点以上の温度まで加熱しておく。転写完了後は、プレスを継続しながら、金型を一定条件下で冷却する。フィルムのガラス転移点以下まで冷却が進めば、プレス圧力を開放するとともに、フィルムに一定の張力を付加するだけで金型より離型する。その後、フィルムを下流側へ送り、次に成形するフィルム成形面を金型表面に供給し、プレス転写を繰り返す。
【0005】
また、金型からフィルムを離型して供給する方法として、平行に配された剥離ロールと補助ロールとを転写後の金型表面で、フィルムを抱きつかせた状態で回転させながら、搬送下流側から上流側に、または上流側から下流側に直動させる装置・方法が提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【特許文献1】特開2005−199455号公報
【特許文献2】特開2005−310286号公報
【特許文献3】特開2008−105407号公報
【特許文献4】特開2008−105409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方法でフィルムの間欠成形、離型搬送を行った場合でも、成形面と成形面の間に間欠部が存在することは避けられず、成形部より受ける熱負荷等の影響で、間欠部にシワが入ることがある。特に厚みが薄いフィルムではこのシワが顕著となり、フィルムの特性や成形条件にも依存するが、一般的に厚みが0.05mm以下のフィルムでは外観上明らかに問題となる場合が多い。また、このシワは隣接する成形完了済みの領域の平面性を悪化させたり、巻き取りまでの搬送過程で搬送シワを発生させたりすることがあり、製品品質を下げる要因となる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、得られたものであって、連続したフィルムを順次に巻き戻しながら成形装置に供給して、該フィルム表面に金型表面の形状を間欠的にプレス成形する成形方法と成形装置に関するものであって、プレス部からの熱負荷等の影響により成形部と成形部の間の間欠部に発生するシワを抑制できる間欠式フィルム成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の間欠式フィルム成形方法は、下記(1)、(2)の方法からなるものである。
(1)金型表面の近傍に間欠的にフィルムを供給する供給工程と、該金型に該フィルムを接触させ押圧することによりフィルム表面に該金型表面の形状に対応する形状を成形する成形工程と、さらに、成形後の金型表面に貼り付いたフィルムを離型して搬送する離型工程とを少なくとも含む間欠式フィルム成形方法であって、前記成形工程において、成形中の領域より搬送方向下流側において、成形中の領域と1サイクル前に成形した領域との間で、フィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する間欠式フィルム成形方法。
(2)金型表面の近傍に間欠的にフィルムを供給する供給工程と、該金型に該フィルムを接触させ押圧することによりフィルム表面に該金型表面の形状に対応する形状を成形する成形工程と、さらに、成形後の金型表面に貼り付いたフィルムを離型して搬送する離型工程とを少なくとも含む間欠式フィルム成形方法であって、前記成形工程において、成形中の領域より搬送方向下流側において、1サイクル前に成形した領域の搬送方向上流側端辺を含むように、フィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する間欠式フィルム成形方法。
【0009】
また、上記(1)、(2)の本発明の間欠式フィルム成形方法において、好ましくは、下記(3)〜(6)の具体的方法を含むものである。
(3)前記把持が、前記フィルムの前記金型側の面とは逆側の面を吸着保持することである間欠式フィルム成形方法。
(4)前記把持が、前記フィルムの両側の面を挟むことである間欠式フィルム成形方法。
(5)前記成形工程において、前記把持された領域を前記金型に近接させる方向に移動させる間欠式フィルム成型方法。
(6)前記成形工程において、前記把持する領域のフィルムを冷却する間欠式フィルム成形方法。
【0010】
また、上記課題を解決する本発明の間欠式フィルム成形装置は、下記(7)の装置からなるものである。
(7)金型と、該金型の表面にフィルムを押圧するプレス装置と、該金型の表面からフィルムを離型し、次に成形するフィルムを金型表面に供給するための搬送装置とを、少なくとも含む間欠式フィルム成形装置であって、金型表面より搬送方向下流側において、前記金型端辺近傍でフィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する把持手段を備えた間欠式フィルム成形装置。
【0011】
また、上記(7)の本発明の間欠式フィルム成形装置において、好ましくは、下記(8)〜(12)の具体的手段を備えたものである。
(8)前記把持手段が、前記フィルムのパスラインを挟んで前記金型側とは逆側の前記金型表面より搬送方向下流側の位置で前記フィルムを減圧することにより吸着保持する吸着保持手段である間欠式フィルム成形装置。
(9)前記吸着保持手段が、多孔質体と減圧手段とを少なくとも含むものである間欠式フィルム成形装置。
(10)前記把持手段が、前記金型表面より搬送方向下流側の位置に、前記フィルムのパスラインを挟んで対向に配された複数のロールにより構成されたものである間欠式フィルム成形装置。
(11)前記把持手段を前記金型に近接させる方向に移動させる駆動機構を有する間欠式フィルム成型装置。
(12)前記把持手段が、その内部に流体を循環する構造を有する間欠式フィルム成形装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の間欠式フィルム成形装置と成形方法によれば、下記とおり良好な成形面を得ることができる。
(i)上記(1)(2)(7)に記載の本発明の間欠式フィルム成形方法および装置によれば、幅方向にわたって把持して、フィルムの変形を防止することにより、プレス加圧中に成形面からの熱負荷によって発生しやすい間欠部および隣接する1サイクル前に成形完了済みの領域でのシワを抑制する。特に、シワの入りやすい厚みが0.05mm以下のフィルムを適用する場合において効果が大きい。
(ii)特に、上記(3)(8)に記載の本発明の間欠式フィルム成形方法および装置によれば、賦形面と逆側の面を把持するので製品面への傷、把持跡を防止する。
(iii)特に、上記(9)に記載の本発明の間欠式フィルム成形装置によれば、吸着孔の跡を抑制しつつ確実に間欠部でフィルムを把持してシワを抑制できる。
(iv)特に、上記(4)(10)に記載の本発明の間欠式フィルム成形方法および装置によれば、吸着レスの状態で、確実に間欠部でフィルムを把持するので吸着孔跡が発生することが全くない。
(v)特に、上記(5)、(11)に記載の本発明の間欠式フィルム成形方法および装置によれば、成形中で熱収縮による張力がかかるのを緩和することができ、間欠部および隣接する1サイクル前に成形完了済みの領域でのシワを防止できる。
(vi)特に、上記(6)、(12)に記載の本発明の間欠式フィルム成形方法および装置によれば、把持部で冷却しながら保持することにより、フィルムの熱収縮を抑制してシワを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、図面を参照しながら、好ましい実施の形態を詳細に説明する。
本発明の間欠式フィルム成形装置は、金型と、該金型の表面にフィルムを押圧するプレス装置と、該金型の表面からフィルムを離型し、次に成形するフィルムを金型表面に供給するため搬送装置と、を少なくとも含む間欠式フィルム成形装置において、金型表面より搬送方向下流側において、前記金型端辺近傍でフィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する把持手段を備えたことを特徴とする間欠式フィルム成形装置、である。
【0014】
図1に、かかる本発明の間欠式フィルム成形装置1をフィルム幅方向から見た概略断面図を示す。なお以下においては、金型3の表面3aに微細凹凸形状が加工されている場合について説明するが、それ以外の形状が加工されている場合においても同様である。
【0015】
図1に示すように、本発明の第1の間欠式フィルム成形装置1は、上記のプレス装置たるプレスユニット10と、上記の搬送装置たる巻出ユニット50と巻取ユニット60と、表面に微細凹凸形状が形成された金型3に密着したフィルムを離型し、次に成形するフィルムを供給するための離型供給ユニット20と、金型を加熱、冷却するためのヒーターユニット30と、冷却ユニット40とを備えて、さらに、成形面より搬送方向下流側において、前記金型端辺近傍でフィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する把持手段100を有している。
【0016】
間欠式フィルム成形装置1の動作としては、巻出ユニット50でロール状に巻き取られたフィルム2が、巻き出されて、プレスユニット10で金型3の微細凹凸形状が加工された表面3aに押しつけられて、フィルムの成形面2aに金型3の表面の形状に対応する形状、つまり金型3の微細凹凸形状とは逆パターンの微細凹凸形状が転写成形され、巻取ユニット60によりロール状に巻き取られつつ、次に転写成形されるフィルム2が巻出ユニット50から巻き出される。この動作を1サイクルとして、巻き出し、転写成形加工及び巻き取りが間欠的に順次に繰り返されて行われる。なお、成形加工は、加熱成形方式だけに限定されず、例えば、光を利用した成形方式によっても行うことができる。加熱成形方式によらない場合には、本発明の装置・方法において、温調装置たる加熱ユニット30や冷却ユニット40は必要ではない。
【0017】
本発明の特徴部分である把持手段100の一例について図面を用いて説明する。
図2にフィルム走行方向(巻取り側)から見た把持手段100を含む構成の概略断面図を示し、図3にフィルム幅方向から見た把持手段100を含む構成の概略断面図を示す。
【0018】
把持手段100は吸着板101とこれに連結された空圧ユニット200から構成される。吸着板101はフィルム側の表面に複数の孔104が形成されている。孔104は吸着板101の内部に加工された穴102を介して、図1に示すように空圧ユニット200に連絡されている。空圧ユニット200は切換弁108a〜cを介して、コンプレッサ106、真空ポンプ107、リークライン105に連結されて、切換弁108a〜cの開閉を制御してそれぞれ経路を切り替えられるものである。また、吸着板101のフィルム幅方向の端部にシリンダー103a、103bと連結されて、金型表面と離間する方向に吸着板101を移動させるようにしておくことが好ましい。なお、上記では吸着保持する機構の例を示したが、フィルムを幅方向に把持できるものであれば良く、上記機構に限られるものではない。
【0019】
フィルムを把持する時は、吸着孔104を真空ポンプ107と連通されてフィルムを吸引して保持する。この時、前記フィルムのパスライン(押圧成形時にフィルムが存在する場所)を挟んで前記金型側とは逆側で、金型表面より搬送方向下流側の位置でフィルムを吸着保持することが、成形面に対して非接触で保持でき、傷などにより成形面の品位を低下させることが無くなるので好ましい。
【0020】
フィルムがプレス成形される場合、成形面およびその近傍でフィルムは熱負荷を受けることが多い。フィルムの受ける熱負荷は通常、金型の加熱により発生するものであるが、紫外光等の光を利用した成形方式ではフィルムやその表面の樹脂層の光吸収による影響もありえる。一般的に熱負荷を受けたフィルムは収縮してシワが入りやすい。成形面と成形面の間の間欠部は、成形領域端辺での熱負荷および収縮の影響を受け、シワが入ることが多い。さらに、間欠部の領域が狭い場合、既に1サイクル前に成形完了済みの領域にもシワが入り、外観品位の低下を招く。本発明の把持手段100を備えた成形装置を適用すれば、成形中において、間欠部を金型と接する逆側の面から把持してフィルムの変形を防止することにより、成形領域端辺からの熱負荷による該間欠部でのシワを抑制できる。
【0021】
なお、フィルムの把持を解除する時は、コンプレッサ106と吸着孔104を連通させて、エアー等のガスを吹き出し、その後、コンプレッサと遮断し、リークラインと連通させ大気圧状態にする。
【0022】
また、フィルムを離型したり、供給するために離型供給ユニット20を金型表面で平行移動させる時等は、必要に応じて、シリンダー103a、103bを駆動して吸着板101を金型3と離間する方向へ移動させれば良い。
【0023】
また、前記吸着保持手段は、吸着板101を多孔質体とし、減圧手段たる真空ポンプ107を接続して構成しても良い。多孔質体を適用することにより、吸引部がフィルムの幅方向にわたって分散されるために孔の跡が抑制され、品質上好ましい。多孔質体としては金属、セラミックス、樹脂のいずれでも良く、フィルム材質や製品用途等によって使い分けると良い。例えば、傷つきやすいフィルム材質であれば、多孔質体を樹脂製にすることがフィルムの傷防止の観点から好ましい。また、多孔質体の摩耗による製品への汚染が懸念される場合は、金属やセラミックスで構成するのが好ましい。なお、金属ではステンレス、アルミ、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム等や、もしくはこれらを含む合金を適用できる。また、セラミックスではアルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素等を適用できる。樹脂ではポリエチレン、ポリプロピレン等を適用できる。但し、材質は上記にあげた材質に限られるものではなく、多孔質体に加工できるものであれば良い。
【0024】
また、吸着板101は必ずしも板形状に限られるものではない。円筒形状や円柱形状でも良く、表面で幅方向にわたって吸着保持できる機構であれば良い。
【0025】
上記の構成において、製品面に吸着跡が残る場合は、別の把持手段として、図4に示すとおり、金型表面より搬送方向下流側において、フィルムのパスラインを挟んで対向に配された複数のロールにより構成される把持手段を用いるのが好ましい。
【0026】
把持手段110はフィルムを挟んで対向するように並行に配された把持ロールA111、把持ロールB112から構成される。把持ロールA111はフィルム幅方向両端で保持されている。さらに、幅方向端部でシリンダー113a、113bと連結されて、把持ロールA111を金型表面と離間する方向に移動させる構成が好ましい。また、把持ロールB112はブレーキを自在に制御できるよう電磁ブレーキ114が片端に接続されている。
【0027】
フィルムを把持する時は、把持ロールA111と把持ロールB112でフィルムをニップして、ほぼ線接触で保持する。吸着保持機構を用いないので吸着跡が問題となることは無い。なお、把持ロールB112はブレーキをかけて回転しないように保持することが好ましい。また、フィルムを離型したり、供給するために離型供給ユニット20を金型表面で平行移動させる時などは、必要に応じて、シリンダー113a、113bを駆動して把持ロールA111を金型表面と離間する方向へ移動させれば良い。
【0028】
また、把持手段を自動で前記金型に近接させる方向に移動させる駆動機構を有するものであることが好ましい。
【0029】
図5は、把持手段100がブラケット120、ボールネジ121を介してモーター駆動部122と連結された状態をフィルム幅方向からみた概略断面図である。
【0030】
プレス成形中では、熱負荷等により成形面およびその近傍でフィルムが収縮して、把持部と金型との間でフィルムに張力がかかる。フィルムの熱特性、弾性特性にもよるがこの張力によりフィルムが歪んでシワを誘発することがある。このフィルムに張力がかかるタイミングで、上記の移動機構を駆動して把持部を金型側へ近接させてフィルムを弛ませることにより、張力を緩和し、歪みを防止する。
【0031】
上記の把持手段の移動機構としてボールネジとモーターを組み合わせたものを例示したが、空圧シリンダーや電磁シリンダー等、直動できる機構を有していれば良い。但し、収縮率の異なる複数のフィルムを適用する場合では、移動量を制御できる組み合わせが好ましい。
【0032】
さらに、把持手段の内部に流体を循環する構造を有することが好ましい。
【0033】
図6は、冷媒流路を備えた吸着板131の構造をフィルム走行方向から見た断面図で例示したものである。冷媒の循環装置は図示していないが、吸着板131の内部に加工された冷媒流路132と連通した構造となっている。冷媒流路を追加した以外は、上記の図2で示した吸着板の構造と同じである。フィルムは成形面より受ける熱負荷に対抗して、把持部で冷却しながら保持することにより、フィルムの収縮を抑制してシワを防止する。
【0034】
冷媒としては伝熱効率及び取扱いの観点から、水が好ましく、フィルムの成形温度条件にもよるが20℃〜30℃の範囲で制御するのが良い。20℃以下では構造部材が結露する可能性があり、また、30℃以上では冷却の効果が発現しにくい。また、冷媒循環以外の方式として、冷却したガスを吹き付ける等の方法もあり、フィルムを冷却できる機構であればいかなるものでも良い。
【0035】
以下に、把持手段以外の装置構造について図1を用いて説明する。
【0036】
プレスユニット10は、加圧プレート(上)14aが支柱11をガイドにして昇降移動できるように、プレスシリンダー12に連結されている。支柱11はフレーム(上)16aとフレーム(下)16bに挟まれるように配設されている。加圧プレート(上)14aの下面には温調プレート(上)15aが取り付けられている。一方、加圧プレート(下)14bの上面には温調プレート(下)15bが取り付けられている。各温調プレートには、それぞれ、加熱ユニット30、冷却ユニット40が配管、配線等を介して接続されている。そして、金型3は温調プレート(下)15bの上側表面に取り付けられて、下側温調プレートを介して、加熱、冷却制御される。なお、金型3は温調プレート(上)15aの下面に取り付けられてもよい。
【0037】
プレスシリンダーは、図示していない油圧ポンプとオイルタンクに接続されており、油圧ポンプにより加圧プレート(上)14aの昇降動作および、加圧力の制御を行う。また、本実施形態では油圧方式のプレスシリンダーを適用しているが、加圧力を制御できる機構であれば、いかなるものでもよい。
【0038】
圧力範囲は0.1MPa〜20MPaの範囲で制御できることが好ましく、さらに好ましくは、1MPaで〜10MPaの範囲で制御できることが好ましい。20MPa以上では金型を破損、変形させる可能性がある。0.1MPa以下では十分に樹脂が流動せず、パターン形状どおりの賦形ができない可能性がある。
【0039】
プレスシリンダーの昇圧速度は0.01MPa/s〜10MPa/sの範囲で制御できることが好ましく、さらに好ましくは、0.05MPa/s〜5MPa/sの範囲で制御できることが好ましい。10MPa/s以上の速い昇圧時は樹脂の変形が追従せず、パターン形状どおりの賦形ができない可能性がある。また、0.01Pa/s以下の遅い昇圧では成形に時間がかかり、生産性が極端に低下する。
【0040】
また、フィルムにある程度の厚みムラがあっても全面でムラなく成形できるように、温調プレートを用いる場合には、温調プレート(上)15aとフィルム2の間に130℃以上の耐熱温度を有した弾性板17を設置することが好ましい。該弾性板17としては、例えば、厚みが0.3mm〜1.0mmのエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴム等を好ましく用いることができ、さらに好ましくは表面に易滑処理を施したものがよい。ここで、耐熱温度とはその温度で24時間放置したときの引張り強さの変化率が10%を超えるときの温度をいう。
【0041】
本発明に用いられる金型3について説明する。金型の転写面は、微細なパターンを有するものであり、金型に該パターンを形成する方法としては、機械加工、レーザー加工、フォトリソグラフィ、電子線描画方法等がある。ここで、金型に形成される「微細凹凸形状」とは、高さ10nm〜1mm、周期10nm〜1mmで周期的に繰り返された凸形状である。凸形状の高さはより好ましくは1μm〜100μmであり、周期はより好ましくは1μm〜100μmである。また、凸形状の例としては、三角錐、円錐、四角柱、レンズ形状等に代表される任意の形状の突起物が離散状、ドット状で配されたものや、断面が三角、四角、台形、半円、楕円等に代表される任意の形状の突起物がストライプ状に配されたもの等がある。金型の材質としては、所望のプレス時の強度、パターン加工精度、フィルムの離型性が得られるものであればよく、例えば、ステンレス、ニッケル、銅等を含んだ金属材料、シリコーン、ガラス、セラミックス、樹脂、もしくは、これらの表面に離型性を向上させるための有機膜を被覆させたものが好ましく用いられる。該金型の微細なパターンは、フィルム表面に付与したい微細な凹凸パターンに対応して形成されているものである。
【0042】
離型供給ユニット20は、金型表面近傍をフィルムを抱きつかせるように把持しながら搬送方向に往復移動して、成形後に金型に貼り付いたフィルムを離型し、次に成形するフィルムを供給するものである。フィルムの特性や金型表面のパターン形状によっては必ずしも必要ではないが、金型表面の破損防止、フィルムへの離型跡防止の観点で備えたほうが好ましい。
【0043】
図7に、離型供給ユニット20をフィルム搬送方向の巻き取り側から見た概略断面図を示す。離型ユニットは金型表面近傍をフィルムを抱きつかせるように把持しながら搬送方向に往復移動する剥離ロール21と補助ロール22が連結されたユニットから構成される。そして、剥離ロール21は成形後に金型に貼りついたフィルムを剥離するだけのものではなく、金型表面に供給されたるフィルムの表面を回転しながらフィルム搬送方向に移動することによりフィルムのしわ伸ばしを行う機能も有する。ここで、剥離ロール21には剥離ロール回転手段23が接続されている。そして、図示しない上位制御器からの指令により正回転/逆回転のどちらの方向にも指定の回転数で動作できるように回転制御器28が接続されている。例えば、剥離ロール回転手段としてサーボモーターを、回転制御器としてサーボアンプを組み合わせた構成が好ましい。また、剥離ロール21が回転しながら、金型3の表面に略平行にスムーズに移動できるように、図示しない直動ガイドが加圧プレート(下)14bの上面に取り付けられている。
【0044】
一方、補助ロール22は図3(a)に示す剥離ロール21の外表面に沿うように旋回できる構造をなっている。補助ロールを旋回させる手段としては、電磁モーター、空圧を利用したアクチュエータ等、補助ロールを剥離ロールの周辺でその外周に沿って昇降移動させうるものであればいかなるものでもよい。そして、補助ロールの両端はロール軸心を中心に自在に回転できるように取り付けられている。
【0045】
また、剥離ロールと補助ロールのユニットにリニア駆動モーター等のユニット直動手段29が連結されている。ユニット直動手段は剥離ロール回転駆動手段と動作の同期を取れるものがスムーズな動作を得る上で好ましく、サーボモーター駆動が適しているが、電磁アクチュエータや空圧アクチュエータ等でも良い。フィルムを剥離する場合は、剥離ロールを回転させながら、ユニット直動手段を駆動して、離型ユニットを巻出側へ移動させながら剥離を行う。なお、フィルムと剥離ロールとの摩擦力が十分に高い場合等は、摩擦力とフィルム張力のみで離型ユニットの直進力が得られるのでユニット直動手段29が無くても良い。
【0046】
さらにまた、金型の表面凹凸パターンが極めて微細である等、剥離ロールとの接触により損傷しやすい場合には、図2に示す剥離ロールと金型表面の距離(クリアランス)Hは0.1mm〜5mmが良く、より好ましくは0.1mm〜1mmである。
【0047】
また、剥離ロール、補助ロールに冷却水循環機構等を付加して、各ロールを一定温度に温調しても良い。フィルムは離型直後では温度が高いため、直後に接する剥離ロール、補助ロールを一定に温調しておくことが好ましい。また、離型時および離型直後のフィルムの温度を下げる効果もあり、プレス成形後の安定した搬送、巻取りにも有効である。
【0048】
一方、補助ロールのフィルム接触部は、上記の剥離ロールと同じ表面材質のものでも良いが、特に、用いるフィルムとの摩擦抵抗が高い場合はロール表面上でしわを誘発する可能性があるので、表面をすべり性の高いフッ素樹脂や金属を適用することが好ましい。
【0049】
次に、加熱ユニット30について説明する。加熱ユニット30は、温調プレート(上)、(下)15a、15bをアルミ合金とし、プレート内に鋳込んだ電熱ヒーターにより制御するものが良い。また、温調プレート内に鋳込んだ銅あるいはステンレス配管、もしくは、機械加工により加工した穴の内部に温調された熱媒体を流すことにより加熱制御するものでも良い。さらには両者を組み合わせた装置構成でもよい。
【0050】
熱媒体としては、バーレルサーム(松村石油(株))、NeoSK−OIL(綜研テクニックス(株))等が良く、また、100℃以上に加熱された水を循環させてもよい。そして、効率良く伝熱できるように、配管内部のレイノズル数が1.0×10〜12×10の範囲になることが好ましい。
【0051】
また、鋳込みヒーター、カートリッジヒーター等にする場合は、温調プレートを分割制御できることが好ましい。
【0052】
温調プレートは昇温中、降温中、一定温調中のすべてにおいて、レンジで10℃以内、さらに好ましくは5℃以内の温度分布におさまることが好ましい。
【0053】
また、金型に直接、熱媒配管ラインを加工し、金型を直接温調するようにしてもよい。
【0054】
次に、冷却ユニット40について説明する。冷却ユニットは温調プレート(上)(下)15a、15bに鋳込んだ銅あるいはステンレス配管、もしくは機械加工により加工した穴の内部に温調された冷媒体を流すことにより冷却制御する。
【0055】
冷媒体としては、水が最適であるが、エチレングリコール溶液などでもよい。温度は10℃〜50℃の範囲が好ましく、効率良く伝熱できるように、配管内でのレイノズル数が1.0×10〜12×10の範囲になることが好ましい。
【0056】
上記のフィルム搬送装置たる巻出ユニット50、巻取ユニット60について説明する。巻出ユニット50は巻出ロール回転手段51と、搬送ロール52a〜52dと、引出バッファ部53と、フィルム固定部54から構成される。巻取ユニット60は巻取ロール回転手段61と、搬送ロール62a〜62dと、巻取バッファ部63と、搬送駆動ロール64と、フィルム固定部65から構成される。
【0057】
引出バッファ部53、巻取バッファ部63はそれぞれボックス55、66とこれらに接続された吸引排気手段56、67から構成される。吸引排気手段56、67は真空ポンプ等、エアーを吸引、排気できるものであれば良く、ボックス内のエアーを排気することにより、ボックス内に挿入されたフィルムの表裏面で圧力差を与えることにより、一定の張力を付与するとともにボックス内でフィルムを弛ませて保持する。ボックス内に挿入されるフィルムの長さは、フィルムを成形する前後で間欠的に搬送するフィルム長さ分が適当である。さらに、ボックス55、66内にはセンサー57a、57b、68a、68bが取り付けられている。センサーは所定位置でフィルムを検知できるものであればよい。上記した離型ユニットによりフィルムが離型、搬送されて、ボックス内でセンサー検知位置からフィルムが外れたときに、上下流の巻出ロール回転手段51、あるいは巻取ロール回転手段61を駆動して、フィルムを巻き出し、あるいは巻き取り、常に、ボックス内で所定位置にフィルムを弛ましておくことができる。
【0058】
また、フィルム固定部54、65は表面に吸引孔が形成された平板であることが好ましいが、さらに、クリップでフィルムを挟む機構のもの、あるいは、これらを組み合わせたものでもよい。
【0059】
フィルム固定部54、65は、プレス動作を行うときは両方とも作動させる。そして、フィルムを離型するときはフィルム固定部54を作動させてフィルムを固定し、フィルム固定部65が開放させることが好ましい。また、フィルムを上流から下流に送るときは、フィルム固定部54、65を両方とも開放する。
【0060】
搬送駆動ロール64は図示しないがモーター等の回転駆動手段に連結されて、フィルム搬送時にはニップロール64aが搬送駆動ロール64に近接し、フィルムを挟み、搬送駆動ロール64にてトルク制御を行いながらフィルムを一定張力のもとで搬送する。
【0061】
次に、本発明の第1および第2の間欠式フィルム成形方法を説明する。
本発明の第1の間欠式フィルム成形方法は、金型表面の近傍に間欠的にフィルムを供給する供給工程と、該金型に該フィルムを接触させ押圧することによりフィルム表面に金型表面の形状に対応する形状を成形する成形工程と、さらに、成形後の金型表面に貼り付いたフィルムを離型して搬送する離型工程とを少なくとも含む間欠式フィルム成形方法であって、前記成形工程において、成形中の領域より搬送方向下流側において、成形中の領域と1サイクル前に成形した領域との間でフィルム幅方向にわたって、前記フィルムを把持するものである。
【0062】
本発明の第2の間欠式フィルム成形方法は、金型表面の近傍に間欠的にフィルムを供給する供給工程と、該金型に該フィルムを接触させ押圧することによりフィルム表面に金型表面の形状に対応する形状を成形する成形工程と、さらに、成形後の金型表面に貼り付いたフィルムを離型して搬送する離型工程とを少なくとも含む間欠式フィルム成形方法であって、前記成形工程において、成形中の領域より搬送方向下流側において、1サイクル前に成形した領域の搬送方向上流側端辺を含むようにフィルム幅方向にわたって、前記フィルムを把持するものである。
【0063】
上記の第1および第2の一連のフィルム成形動作を、間欠式フィルム成形装置1を用いて実施する形態を図8〜10を参照しながら説明する。図8〜10はプレス部の動作のみをフィルム幅方向から見た断面概略図であり、成形工程を図8に、離型工程を図9に、供給工程を図10に示す。一連の成形動作は以下のプロセス(A)〜(H)の流れで成形するものである。なお、あらかじめ、金型3をプレスユニット10にセットした後、フィルム2を巻出ユニット50にセットし、フィルム2の巻出部を引き出し、ガイドロールを経由し、プレスユニット内の金型の表面に沿わせ、さらに、離型ユニット20を経由して、巻取ユニット60で巻き取っている状態とする。また、加熱ユニットを作動させて、温調プレート(上)15a、温調プレート(下)15bをともに成型温度まで上昇させておく。なお、(A)〜(C)が成形工程、(D)(E)が離型工程、(F)〜(H)が供給工程である。
【0064】
(A)プレス部の動作を図8(a)に示す。プレスユニット10を作動させて、温調プレート(上)15aを下降させて、金型3の表面と温調プレート(上)との間にフィルムを挟むようにプレスを開始する。温度、プレス圧力、昇圧速度、加圧時間等の条件は、フィルムの材質、転写形状、特に凹凸のアスペクト比等に依存する。概ね、成形温度は100〜180℃、プレス圧力は1〜10MPa、成形時間が1秒〜60秒、昇圧速度は0.05MPa/s〜1MPa/sの範囲で設定される。同時に、吸着板101でフィルムを幅方向にわたって把持する。成形面端辺からの熱負荷によりシワの入りやすい間欠部を把持することにより、該間欠部でのシワを抑制できる。特に、フィルムの厚みが薄い場合は、シワが入りやすいので、本発明の方法が効果的である。また、図示するように前記フィルムを挟んで前記金型とは逆側の面からフィルムを吸着保持することにより、成形面に対して非接触で保持でき、傷などにより成形面の品位を低下させることが無くなるので好ましい。さらに、図8(a)では金型と逆側の面から吸着保持する機構を例示したが、吸着孔跡が顕著に発生する場合は、図4に示した両面からのロールニップ機構を用いることが吸着孔跡を解消できるので好ましい。さらに、成形条件やフィルム特性にもよるが、間欠部での熱負荷が大きい場合には、図5に示す機構を用いて、把持部を冷却しながら保持して、熱収縮によるシワを抑制することが好ましい。
【0065】
(B)次のプレス部の動作を図8(b)に示す。熱負荷等により成形面およびその近傍でフィルムが収縮して、吸着板101による把持領域と金型との間でフィルムに張力がかかることがあるため、フィルム特性、成形条件によっては、ボールネジ121とモーター122の組み合わせ等で構成される直動機構により金型3側に把持部を移動させることが好ましい。フィルムの熱特性、弾性特性にもよるがこの張力によりフィルムが歪んでシワを誘発することがある。このフィルムに張力がかかるタイミングで、上記の移動機構を駆動して把持部を金型側へ近接させてフィルムを弛ませることにより、張力を緩和し、歪みを防止する。さらに、把持する領域のフィルムを強制的に冷却すれば、熱収縮によるフィルム変形をさらに抑制できるので、シワ防止に効果がある。
【0066】
(C)次のプレス部の動作を図8(c)に示す。プレス成形中において、冷却ユニットを作動させて、温調プレート(上)15a、温調プレート(下)15bを降温させる。なお、冷却中もプレス加圧を継続していることが好ましい。冷却温度は金型表面の温度がフィルムを離型するのに十分に冷却されるように設定される。例えば、金型3の表面温度がフィルムのガラス転移点以下まで冷却を行うのが良い。この間もフィルムの把持は継続しておく。
【0067】
(D)次のプレス部の動作を図9(d)に示す。冷却完了後、プレス圧力を開放して、温調プレート(上)15aを離型ユニット20がプレス装置内を水平移動させるのに十分なスペースを確保できるように上昇させる。また、吸着板101で真空ポンプと遮断し、圧空ラインと接続することによりフィルム吸着状態を解除する。その後、大気圧に戻して、離型ユニット20が水平移動できるスペースを確保するために、吸着板101を上方へ移動させる。同時に、補助ロール旋回手段を駆動して、補助ロール22を剥離ロール21の上部まで旋回移動させて、フィルム2を剥離ロール21、補助ロール22に抱きつかせる。
【0068】
(E)次のプレス部の動作を図9(e)に示す。剥離ロール回転手段により剥離ロール21を回転させると同時に、ユニット直動手段29により剥離ロール21、補助ロール22を相対位置を維持したまま搬送上流側(矢印A方向)へ移動させてフィルムを離型する。この時、フィルムが剥離ロール表面で滑らないように回転によるロール周速と直動速度が同じとなるように同期を取ることが好ましい。
【0069】
(F)次のプレス部の動作を図10(f)に示す。ユニット直動手段29はブレーキをかけてユニットが移動しないように保持した状態で、剥離ロール回転手段により剥離ロール21を回転し、間欠送り分、巻き取り側(搬送方向下流側)へフィルム送りを行う。この間欠フィルム送りの動作は、剥離ロールの回転をフリーの状態にして、巻き取り側(搬送方向下流側)にある搬送駆動ロールを回転することにより行うことも可能である。
【0070】
(G)次のプレス部の動作を図10(g)に示す。その後、剥離ロール回転手段23により剥離ロール21を上記離型の時と逆方向に回転させると同時に、ユニット直動手段29により剥離ロール21、補助ロール22を相対位置を維持したまま搬送下流側(矢印B方向)へ直動させて金型表面にフィルムを供給する。この時、フィルムが剥離ロール表面で滑らないように回転によるロール周速と直動速度が同じとなるように同期を取ることが好ましい。
【0071】
(I)次のプレス部の動作を図10(h)に示す。フィルムの金型表面への供給が完了し、剥離ロール21、補助ロール22のユニットが巻き取り側端部(搬送方向下流側)に到達すると、吸着板101を下降させ、フィルムを吸着して幅方向に把持する。そして、補助ロールを旋回して元の位置まで戻し、図8(a)からの動作を繰り返す。
【0072】
上記の一連のフィルム成形動作により、成形部端辺からの熱負荷に対して、間欠部の幅方向を把持して変形を抑制しているので、該間欠部あるいは隣接する既に1サイクル前に成形済みの領域における熱収縮起因のシワを防止できる。
【0073】
上記の間欠部を把持した状態を上面から見た概略図を図11、12に示す。成形工程においては把持部150でフィルムを幅方向にわたって把持する。図11は成形工程において、成形面151より搬送方向下流側(矢印B)に外側において、成形面151と1サイクル前の成形面152の間(間欠部)でフィルム幅方向にわたって、前記フィルムを把持するものである。間欠部での変形を防止し、シワ発生を抑制する。また、図12は成形工程において、成形面151より搬送方向下流側(矢印B)に外側において、1サイクル前の成形面152の搬送方向上流側端辺を含むようにフィルム幅方向にわたって、前記フィルムを把持するものである。いずれの方法にしても、間欠部及び1サイクル前の成形面152の上流側端部での変形を防止して、シワ発生を抑制する。特に図12に示す方法では製品部を直接把持するので製品部でのシワよる品位低下を防止する効果が高い。
【0074】
本発明の方法、装置に適用されるシート状基材はガラス転移温度Tgが好ましくは40〜180℃のものであり、より好ましくは50℃〜160℃であり、最も好ましくは50℃〜120℃である熱可塑性樹脂を主たる成分とするシートである。ガラス転移温度Tgが40℃を下回ると成形品の耐熱性が低くなり、形状が経時変化するため好ましくない。またTgが180℃を上回ると成形温度を高くせざるを得ないものとなり、エネルギー的に非効率であり、またシートの加熱、冷却時の体積変動が大きくなり、シートがインプリントモールドに噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの転写精度が低下したり、部分的にパターンが欠けて欠点となる場合がある等の理由により好ましくない。
【0075】
本発明に適用される熱可塑性樹脂を主たる成分としたシート状基材は、具体的に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂ポリエーテル系樹脂、ポリエステルアミド系樹脂、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、あるいはポリ塩化ビニル系樹脂などからなるものである。このなかで共重合するモノマー種が多様であり、かつそのことによって材料物性の調整が容易であるなどの理由から特にポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂またはこれらの混合物から選ばれる熱可塑性樹脂から主として形成されていることが好ましく、上述の熱可塑性樹脂が50重量%以上からなることがさらに好ましい。
【0076】
本発明に適用するシート状基材は上述の樹脂の単体からなるシートであっても構わないし、複数の樹脂層からなる積層体であってもよい。この場合、単体シートと比べて、易滑性や耐摩擦性などの表面特性や、機械的強度、耐熱性を付与することができる。このように複数の樹脂層からなる積層体とした場合はシート全体が前述の用件を満たすことが好ましいが、シート全体としては前記要件を満たしていなくても、少なくとも前述の要件を満たす層が表層に形成されていれば容易に表面を形成することができる。
【0077】
また、本発明に適用するシート状基材の好ましい厚さ(厚み、膜厚)としては、0.01〜1mmの範囲であることが好ましい。0.01mm未満では成形するのに十分な厚みがなく、また1mmを越えるとシートの剛性により搬送が一般に難しい。なお、厚みが0.05mm以下のフィルムでは成形工程での成形面と成形面の間欠部でシワが入りやすく、上記で説明した本発明の装置および方法がシワ抑制に有効である。
【0078】
以上では、フィルムを熱可塑性樹脂として説明したが、本発明は光硬化性樹脂を基材として適用した公知の間欠式成形装置及び方法にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明の間欠式フィルム成形装置の一実施態様をフィルム幅方向から見た概略図である。
【図2】図2は、本発明の間欠式フィルム成形装置の一実施態様において、吸着保持によりフィルムを把持する把持手段を含む構成をフィルム走行方向(巻取り側)から見た概略図である。
【図3】図3は、本発明の間欠式フィルム成形装置の一実施態様において、吸着保持によりフィルムを把持する把持手段を含む構成をフィルム幅方向から見た概略図である。
【図4】図4は、本発明の間欠式フィルム成形装置の一実施態様において、ロールによりフィルムを把持する把持手段を含む構成をフィルム走行方向(巻取り側)から見た概略図である。
【図5】図5は、本発明の間欠式フィルム成形装置の一実施態様において、フィルム把持手段を前記金型に近接させる方向に移動せしめる構成をフィルム幅方向から見た概略図である。
【図6】図6は、本発明の間欠式フィルム成形装置の一実施態様において、流体循環機構を備えたフィルム把持手段を含む構成をフィルム走行方向(巻取り側)から見た概略図である。
【図7】図7は、本発明の間欠式フィルム成形装置の一実施態様において、フィルムの離型供給機構をフィルム搬送方向の巻き取り側から見た概略図である。
【図8】図8は、本発明の間欠式フィルム成形方法の一実施態様において、成形工程のプレス部の動作をフィルム幅方向から見た概略図である。
【図9】図9は、本発明の間欠式フィルム成形方法の一実施態様において、離型工程のプレス部の動作をフィルム幅方向から見た概略図である。
【図10】図10は、本発明の間欠式フィルム成形方法の一実施態様において、供給工程のプレス部の動作をフィルム幅方向から見た概略図である。
【図11】図11は、本発明の間欠式フィルム成形方法の一実施態様において、成形工程で成形面間欠部を把持している状態をプレス部上面から見た概略図である。
【図12】図12は、本発明の間欠式フィルム成形方法の一実施態様において、成形工程で成形面間欠部を把持している状態をプレス部上面から見た概略図である。
【符号の説明】
【0080】
1:本発明の間欠式フィルム成形装置
2:フィルム
3:金型
10:プレスユニット
20:離型供給ユニット
30:ヒーターユニット
40:冷却ユニット
50:巻出ユニット
60:巻取ユニット
100:把持手段
101:吸着板
103a、b:シリンダー
104:孔
105:リークライン
106:コンプレッサ
107:真空ポンプ
108a、b、c:切換弁
110:把持手段
111:把持ロールA
112:把持ロールB
113a、b:シリンダー
114:電磁ブレーキ
120:ブラケット
121:ボールネジ
122:モーター駆動部
131:吸着板
132:冷媒流路
150:把持部
151、152:成形面
200:空圧ユニット
A:巻出側方向
B:巻取側方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型表面の近傍に間欠的にフィルムを供給する供給工程と、
該金型に該フィルムを接触させ押圧することによりフィルム表面に該金型表面の形状に対応する形状を成形する成形工程と、
成形後の金型表面に貼り付いたフィルムを離型して搬送する離型工程と、を少なくとも含む間欠式フィルム成形方法であって、
前記成形工程において、成形中の領域より搬送方向下流側において、成形中の領域と1サイクル前に成形した領域との間で、フィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する間欠式フィルム成形方法。
【請求項2】
金型表面の近傍に間欠的にフィルムを供給する供給工程と、
該金型に該フィルムを接触させ押圧することによりフィルム表面に該金型表面の形状に対応する形状を成形する成形工程と、
成形後の金型表面に貼り付いたフィルムを離型して搬送する離型工程と、を少なくとも含む間欠式フィルム成形方法であって、
前記成形工程において、成形中の領域より搬送方向下流側において、1サイクル前に成形した領域の搬送方向上流側端辺を含むように、フィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する間欠式フィルム成形方法。
【請求項3】
前記把持が、前記フィルムの前記金型側の面とは逆側の面を吸着保持することである請求項1または2に記載の間欠式フィルム成形方法。
【請求項4】
前記把持が、前記フィルムの両側の面を挟むことである請求項1または2に記載の間欠式フィルム成形方法。
【請求項5】
前記成形工程において、前記把持された領域を前記金型に近接させる方向に移動させる請求項1〜4のいずれかに記載の間欠式フィルム成型方法。
【請求項6】
前記成形工程において、前記把持する領域のフィルムを冷却する請求項1〜5のいずれかに記載の間欠式フィルム成形方法。
【請求項7】
前記1〜6のいずれかに記載の成形方法によって前記金型表面の形状に対応する形状が成形されたフィルム。
【請求項8】
金型と、
該金型の表面にフィルムを押圧するプレス装置と、
該金型の表面からフィルムを離型し、次に成形するフィルムを金型表面に供給するための搬送装置と、を少なくとも含む間欠式フィルム成形装置であって、
前記金型表面より搬送方向下流側において、前記金型端辺近傍でフィルム幅方向にわたって前記フィルムを把持する把持手段を備えた間欠式フィルム成形装置。
【請求項9】
前記把持手段が、前記フィルムのパスラインを挟んで前記金型側とは逆側の該金型表面より搬送方向下流側の位置で前記フィルムを減圧することにより吸着保持する吸着保持手段である請求項8に記載の間欠式フィルム成形装置。
【請求項10】
前記吸着保持手段が、多孔質体と減圧手段とを少なくとも含むものである請求項9に記載の間欠式フィルム成形装置。
【請求項11】
前記把持手段が、前記金型表面より搬送方向下流側の位置に、前記フィルムのパスラインを挟んで対向に配された複数のロールにより構成されたものである請求項8に記載の間欠式フィルム成形装置。
【請求項12】
前記把持手段を前記金型に近接させる方向に移動させる駆動機構を有する請求項8〜11のいずれかに記載の間欠式フィルム成型装置。
【請求項13】
前記把持手段が、その内部に流体を循環する構造を有する請求項8〜12のいずれかに記載の間欠式フィルム成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−105314(P2010−105314A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281124(P2008−281124)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】