間葉幹細胞またはその培養液を含む神経疾患の予防または治療用の組成物
【要約書】
本発明は、間葉幹細胞、間葉幹細胞の培養液、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、神経疾患の予防または治療のための医薬組成物及びそのための方法を提供する。
本発明は、間葉幹細胞、間葉幹細胞の培養液、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、神経疾患の予防または治療のための医薬組成物及びそのための方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉幹細胞、間葉幹細胞の培養液、間葉幹細胞の培養液に含まれた蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系刺激因子を含む、神経突起(neurites)の損傷に関連した、アルツハイマー病の予防または治療に関する。
また、本発明は、間葉幹細胞、間葉幹細胞の培養液、間葉幹細胞の培養液に含まれた蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系刺激因子を含む神経突起の損傷と関連した疾病の予防または治療に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、アミロイドベータ蛋白質の破壊的蓄積により脳細胞を破壊する脳疾患であって、主に老化と共に進み、言語障害及び認知障害をもたらす深刻な疾病である。アルツハイマー病は、段階別に進み、次第に記憶力、推理、判断力、言語、さらに非常に単純な業務能力までも破壊する。結局、感情の調節の喪失は、人間の生の破壊をもたらす。まだアルツハイマー病を根本的に治療する方法はなく、症状を緩和する薬物のみが臨床に使われている。しかし、患者にそれらの薬物の効果は制限的である。アルツハイマー病患者の半分程度が初期薬物治療から治癒されない。たとえ前記初期薬物治療が成功したとしても、症状の緩い緩和のみを示すだけである。したがって、 医療需要を満たす新たな治療法の開発が要求されており、アルツハイマー病の治療法の開発による経済的かつ社会的な効果は非常に大きいであろう。アルツハイマー病は、病気が進みつつ、脳の皮質と海馬体(hippocampus)とが消失すれば、再生が不可能であり、治療方法がほぼないものと知られている。
【0003】
アルツハイマー病についての研究は、二つの蛋白質、すなわち、タウ(tau)とアミロイド前駆体蛋白質(Amyloid Precursor Protein:APP)に焦点が合わせられてきた(Stuart M.及びMark P.M、Nature Medicine、第12巻 第4号、第392−393ページ、2006)。それらは、アルツハイマー病にかかった患者の脳で非正常的な形態に蓄積される。タウは、過剰燐酸化され、APPは、セクレターゼにより切断されてアミロイド・ベータ(Aβ)を生成し、アミロイド・ベータは、脳内にアミロイドプラークとして凝集される。プラークが蓄積された脳領域は、典型的にシナプスの数が減少し、神経突起が損傷される。これは、アミロイド・ベータがシナプスと神経突起(neurite)とを損傷させるということを暗示する(Mark P.M、Nature、第430号、第631−639ページ、2004)。
【0004】
アルツハイマー病の治療のために、病因メカニズムについての研究が活発に進められた。特に、アミロイドベータ蛋白質を生成するベータ・セクレターゼ及び/またはガンマ・セクレターゼの阻害剤を開発する研究、蓄積されたアミロイドベータ蛋白質を分解する蛋白質分解酵素についての研究、及びアセチルコリンの分解を担当するアセチルコリンエステラーゼの阻害剤を開発する研究が強力に進められている。また、アルツハイマー病が老化関連の慢性炎症性疾患であるため、炎症抑制剤を利用したアルツハイマー病の治療についての研究も進められている。
【0005】
脳内のアミロイド・ベータの量は、その生成反応と除去反応との均衡により決定される。したがって、 除去作用が減少すれば、アミロイド・ベータの量が増加する。アミロイド・ベータを分解する活性を有する酵素であるネプリリシン(NEP)の欠乏は、細胞外のアミロイドの蓄積を加速化させる(Kanae lijima−Andoら、J.Biol.Chem.,第283号、第27巻、第19066−19076ページ、2008)。
【0006】
神経細胞の細胞体から突出した神経突起の異常は、神経疾患と関連する。 前記神経疾患の例は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん(epilepsy)、多発性硬化症(multiple sclerosis)及び躁病(mania)である。特に、てんかんの場合、人間の脳の海馬体の神経細胞死と神経膠症(gliosis)とによって生じる。細胞死による神経突起の切断が起こる。多発性硬化症は、脳に生じる慢性自家免疫疾患であって、やはりNogo Aという神経突起の過成長の阻害蛋白質の異常により発病する。うつ病(depression)は、M6aという神経突起の過成長関連の蛋白質の異常により発病する脳疾患である。躁病の症状の緩和が、ラットで神経突起の過成長を促進する信号伝達経路を活性化した時、報告された。
【0007】
間葉幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)は、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、及び筋肉細胞のような中胚葉性細胞(mesodermal lineage cells)、または神経細胞のような外胚葉性細胞(ectodermal lineage cells)に分化する能力を有する多分化能幹細胞(multipotent stem cell)である。最近、間葉幹細胞が脳で神経膠細胞に分化する潜在力を有しており、間葉幹細胞を神経細胞に分化させる試みがあった(韓国公開特許第10−2004−0016785号公報、2004.2.25)。
【0008】
間葉幹細胞のうち、骨髄由来の間葉幹細胞は、患者から得られる。前記骨髄由来の間葉幹細胞が自家移植される場合、免疫拒否反応 がないので、患者に臨床的に使用される。しかし、骨髄由来の間葉幹細胞の採取は、色々な段階の施術が要求されるため、骨髄寄贈は時間消費的であり、精神的及び肉体的に苦痛であり、高価である。しかし、臍帯血由来の間葉幹細胞は、臍帯から簡単に得られ、臍帯血の保管産業が活発に開発されており、供与者が臍帯血インフラストラクチャ(infrastructure)を通じて容易に発見されるため、間葉幹細胞が容易に得られる。 さらに、他家由来の臍帯血から得た間葉幹細胞の場合にも、移植後に免疫反応を起こさず、免疫学的安定性を有する。
【0009】
本発明の明細書に引用される先行文献の内容は、いずれも本明細書に参照により導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2004−0016785号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Stuart M.及びMark P.M、Nature Medicine、第12巻 第4号、第392−393ページ、2006
【非特許文献2】Mark P.M、Nature、第430号、第631−639ページ、2004
【非特許文献3】Kanae lijima−Andoら、J.Biol.Chem.,第283号、第27巻、第19066−19076ページ、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来方法によれば、幹細胞を利用した神経疾患の治療のためには、幹細胞を神経細胞に分化させるステップが先決されるか、または幹細胞を神経細胞に分化させる物質を幹細胞と共に投与するステップが必要であった。
【0013】
本発明の一つ以上の具体例は、幹細胞を神経細胞に分化させるステップを含まない神経疾患の細胞治療方法を含む。
【0014】
本発明の一つ以上の具体例は、 幹細胞を含む神経疾患の予防及び治療のための組成物を含む。
【0015】
本発明の一つ以上の具体例は、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞及びミクログリア細胞(microglial cells)内のネプリリシンの発現誘導方法を含む。本発明の一つ以上の具体例は、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞及びミクログリア細胞(microglial cells)内のネプリリシンの発現誘導のためのキットを含む
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、間葉幹細胞、その培養液または前記培養液中に含まれる蛋白質をアミロイドベータが処理されたまたは処理されない神経細胞またはミクログリア細胞と共同培養する場合、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化及び神経突起の損傷が抑制され、神経細胞またはミクログリア細胞内のネプリリシンの発現が誘導されること発見した。
【発明の効果】
【0017】
間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を神経細胞またはミクログリア細胞と共同培養すれば、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性が抑制され、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化が抑制され、神経突起の損傷が抑制され、神経細胞またはミクログリア細胞内にネプリリシンの発現が誘導される。
【0018】
本発明の間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を含む組成物は、神経疾患の予防または治療用の効果的な細胞治療組成物として使われる。
【0019】
また、 間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を使用して、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞内のネプリリシンの発現誘導方法及びこのためのキットを提供する。
本発明の前記した特徴、他の特徴及び利点は、添付された図面を参照して、本発明の具体例として詳細に記述することで、さらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】アミロイド・ベータと24時間処理または処理しない生きている神経細胞の光学顕微鏡イメージを表す。
【図2】アミロイド・ベータが処理された神経細胞をヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養するための共同培養システムを示す図面である。
【図3】アミロイド・ベータ(Aβ42)による神経細胞死滅に対するヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と神経細胞の共同培養の効果を表す蛍光染色の結果を表す。
【図4】Aβ42による神経細胞死滅に対するヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と神経細胞の共同培養の効果を説明する、死滅神経細胞の百分率で示したグラフである。
【図5】Aβ42による神経細胞死滅に対するヒト骨髄由来の間葉幹細胞と神経細胞 の共同培養の効果を表す蛍光染色の結果を表す。
【図6】抗phosphor−tau抗体を利用して染色された神経細胞を表す。
【図7】Aβ42処理され、間葉幹細胞と共同培養され、 免疫蛍光染色を使用して染色された神経細胞を表す。
【図8】Aβ42処理され 、骨髄由来の間葉幹細胞または臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養された神経細胞中の、ネプリリシンの発現を表す。
【図9】Aβ42処理された神経細胞及びミクログリア細胞と間葉幹細胞とを共同培養された場合、 神経細胞及びミクログリア細胞中のネプリリシンの発現を表す。
【図10】Aβ42処理され、間葉幹細胞から分泌される蛋白質と共同培養された、死んだ神経細胞の百分率 を示すグラフである。
【図11】Aβ42及び間葉幹細胞から分泌された蛋白質と神経細胞の神経突起の長さを 示すグラフである。
【図12】ミクログリア細胞とUCB−MSCとを共同培養した後、UCB−MSCから分離された総RNAをテンプレートとして使用してRT−PCRした結果を表す。
【図13】IL−4の存在下で神経細胞及びミクログリア細胞を培養する場合、NEP発現が増加することを示すウェスタンブロッティング結果を表す。
【図14】Thio−S染色法を利用して染色された海馬体と皮質(cerebral cortex)とを含む脳組織中のアミロイドベータ蛋白質の沈着物 (plaque)のイメージを表す。
【図15】図14のイメージ中のアミロイド沈着物の総面積を示すグラフである。
【図16】実験に使われたマウスの脳で生成されたアミロイドベータ蛋白質の変化を示す免疫ブロッティング結果を表す。
【図17】正常及びアルツハイマー病を有するように形質転換されたマウスで、海馬体と皮質とを含む脳組織でNEP発現程度を示す図面である。
【図18】Quantity One(Bio−RAD)ソフトウェアを利用して測定した図17のNEPバンドの強度を示すグラフである。
【図19】間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスで、海馬体及び皮質を含む脳組織でNEP発現程度を示す図面である。
【図20】臍帯血間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスのミクログリア細胞でNEP発現を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の具体例によれば、間葉幹細胞を神経細胞に分化させず、アミロイド・ベータにより損傷した神経細胞と共同培養すれば、間葉幹細胞と神経細胞との直接的な接触なしにアミロイド・ベータにより誘発される神経細胞の損傷が抑制または回復される。また、本発明の発明者らは、間葉幹細胞の培養液や前記培養液中に含まれた特定の蛋白質を神経細胞と培養しても、アミロイド・ベータによる神経細胞の損傷が抑制または回復されるということを発見した。
【0022】
アミロイドベータ42(Aβ42)10μMを24時間神経細胞に処理(図1及び図3のCt+Aβ)した場合と、処理していない細胞(図3のCt)の場合とを比較する時、アミロイドベータを処理した場合、ほとんどの神経細胞が細胞死した。しかし、このように損傷した神経細胞をUCB(Umbilical Cord Blood)−由来間葉幹細胞と共同培養すれば、神経細胞の死滅が阻害し、神経細胞の成熟が増加した(図3のCt+Aβ+MSC及び図4)。前記のようなUCB−間葉幹細胞のアミロイド・ベータによる神経細胞の死滅抑制効果は、骨髄由来の間葉幹細胞でも観察される(図5の皮質/Aβ/BM−MSC)。Aβ42存在下で大脳皮質由来の神経細胞と間葉幹細胞とを24時間同じ培地で共同培養しても、図3のCt+Aβ+MSCに示したような結果が得られた。これは、神経細胞をMSCと共同培養する場合、Aβ42により損傷した神経細胞を復帰させ、Aβ42により神経細胞が予防できるということを表す。
【0023】
また、 Aβ42により急激に燐酸化されるタウ蛋白質の燐酸化が、タウ蛋白質・ヒト臍帯血間葉幹細胞の共同培養により燐酸化が抑制される(図6)。
【0024】
神経細胞の標識であるチューブリンβIII及びMAP2に対する抗体を使用して 神経細胞を観察した結果、Aβ42を処理した神経細胞では毒性により、神経突起が損傷して切断され、神経細胞形態が凝縮された。しかし、前記神経細胞と臍帯血由来の間葉幹細胞とを共同培養すれば、神経細胞中の神経突起が維持され、神経細胞の分化成熟が促進される(図7)。
【0025】
Aβ42を分解して除去する蛋白質であると知られたネプリリシン(NEP)の発現を観察した結果、NEPの発現は、Aβ42で処理された神経細胞では減少した。しかし、前記神経細胞を臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養すれば、NEPの発現が蛋白質とmRNAとのレベルで増加する(図8のA)。図8のBは、抗NEP抗体を利用して染色された神経細胞を表す。前記神経細胞にAβ42を処理すれば、赤く染色された部分が顕著に減少して、NEPの発現が神経細胞で減ることを表す。しかし、神経細胞と間葉幹細胞とを共同培養すれば、NEPの発現が増加した。かかる実験結果は、臍帯血由来の間葉幹細胞だけでなく、骨髄由来の間葉幹細胞でも 観察された(図8のC)。したがって、Aβ42で処理または処理されていない神経細胞を間葉幹細胞と共同培養する場合、前記神経細胞でNEPの発現は、mRNAレベルだけでなく、蛋白質レベルでも増加した。前記間葉幹細胞は、臍帯血由来の間葉幹細胞及び骨髄由来の間葉幹細胞を含む。
【0026】
また、臍帯血由来の間葉幹細胞が神経細胞(neurons)だけでなく、脳の大食細胞(macrophage)と呼ばれ、脳に蓄積された毒性物質、例えば、アルツハイマー病のAβを除去するものと知られたミクログリア細胞(microglial cells)でも、NEPの発現を誘導することを確認した(図9)。
【0027】
間葉幹細胞と神経細胞とを直接的な接触なしに共同培養することで、前記効果が表れたので、間葉幹細胞で分泌される物質により前記効果が表れたものと判断される。間葉幹細胞を単独に培養する場合に発現されないか、またはほぼ発現されないが、神経細胞と間葉幹細胞とを共同培養する場合、間葉幹細胞で発現が増加した分泌された蛋白質を分析した。その結果、総14個の蛋白質がAβ42により惹起された毒性の抑制と神経細胞分化成熟とに関与していることを確認した。14個の蛋白質は、アクチビンA、PF4(platelet factor 4)、デコリン、ガレクチン3、GDF15(growth differentiation factor 15)、グリピカン3、MFRP(membrane−type frizzled−related protein)、ICAM5(intercellular adhesion molecule 5)、IGFBP7(insulin−like growht factor binding protein 7)、PDGF−AA(platelet−derived growth factor−AA)、SPARCL1(secreted protein acidic and rich in cysteine)、トロンボスポンジン1、WISP1(wnt−1 induced secreted protein 1)及びプログラニュリンである。間葉幹細胞の代わりに、それらの蛋白質をそれぞれ神経細胞にAβ42と共に処理した結果、神経細胞の細胞死が顕著に減少し、Aβ42のみを処理した神経細胞に比べて、神経突起の長さが顕著に増加した(図10及び図11)。かかる意味において、前記14種の蛋白質は、さらに詳細に説明される 。
【0028】
アクチビンAは、インヒビンベータA(インヒビンβA:INHBA)とも知られている蛋白質のホモダイマーである。人間において、INHBAは、INHBA遺伝子によりコーディングされるものと知られる。INHBAはNCBI Accession No.:NP_002183(配列番号1)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0029】
血小板因子4(platelet factor 4:PF4)は、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド4(C-X-C motif ligand 4: CXCL4)とも知られている、CXCケモカインファミリに属する小さいサイトカインである。人間PF4遺伝子は、染色体4番に位置する。PF4はNCBI Accession No.:NP_002610(配列番号2)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0030】
デコリンは、平均分子量が約90ないし1約40kDaのプロテオグリカンである。デコリンは、小さいロイシンリッチプロテオグリカン(small leucine-rich proteoglycan:SLRP)ファミリに属し、コンドロイチン硫酸(chondrointin sulfate: CS)またはデルマタン硫酸(dermatan sulfate: DS)から構成されたグリコースアミノグリカン(glycosaminoglycan: GAG)を有するロイシン反復(leucine repeats)を含む蛋白質コアを含む。デコリンはNCBI Accession No.:NP_001911(配列番号3)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0031】
ガレクチン3は、LGAL3(lectin,galactoside−binding,soluble 3)とも知られており、ベータ・ガラクトシドに結合するレクチンの一種である。ガレクチン3は、例えば、NCBI Accession No.:NP_919308(配列番号4)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0032】
成長分化因子15(growth differentiation factor15:GDF15)は、マクロファージ阻害サイトカイン1(macrophage inhibitory cytokine 1: MIC1)とも知られている、傷組織及び疾病過程で炎症経路(inflammatory pathway)及び細胞死経路を調節する役割を行う形質転換成長因子ベータ(transforming growth factor beta)スーパーファミリに属する蛋白質である。GDF15は、例えば、NCBI Accession No.:NP_004855(配列番号5)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0033】
グリピカン3は、グリピカンファミリに属する蛋白質であり、GPC3とも知られている。グリピカン3は、例えば、NCBI Accession No.:NP_004475(配列番号6)のアミノ酸配列を有するものでありうる。グリピカンは、へパラン硫酸プロテオグリカン(heparin sulfate proteoglycan)のファミリであり、グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosylphosphatidylinositol: GPI)に共有結合を通じて細胞の表面に付着される。
【0034】
膜フリズル関連蛋白質(membrane frizzled−related protein:MFRP)は、例えば、NCBI Accession No.:NP_113621(配列番号7)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0035】
細胞間付着分子5(intercellular adhesion molecule 5:ICAM5)は、テレンセファリンとも知られたICAMファミリの一員である。ICAMは、タイプI経皮糖蛋白質(type 1 transmembrane glycoprotein)であり、2ないし9個の免疫グロブリン類似C2タイプドメイン(immunoglobulin pseudo C2 type domains)を含み、白血球付着LFA−1(lymphocyte function-associated antigen-1)蛋白質に結合する。ICAM5は、例えば、NCBI Accession No.:NP_003250(配列番号8)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0036】
インシュリン類似成長因子結合蛋白質7(insulin−like growth factor binding protein 7:IGFBP7)は、IGF(insulin-like growth factor)に特異的に結合するIGFBPファミリの一員である。IGFBP7は、IGFBP−rp1(IGF−binding protein−related protein1)とも知られている。IGFBP7は、例えば、NCBI Accession No.:NP_001544(配列番号9)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0037】
血小板由来成長因子AA(platelet−derived growth factor AA:PDGF−AA)は、PDGFの一員である。PDGF−AAは、二つのPDGFAとも知られているPDGFアルファポリペプチドを含むホモダイマー糖蛋白質である。PDGFは、細胞成長及び分裂を調節する蛋白質である。PDGFは、また、血管の形成に関与する。PDGFAは、例えば、NCBI Accession No.:XP_001126441(配列番号10)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0038】
分泌された酸性システインリッチ蛋白質類似蛋白質1(secreted protein acidic and rich in cysteines−like1:SPARCL1)は、例えば、NCBI Accession No.:NP_004675(配列番号11)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0039】
トロンボスポンジン1(thrombospondin 1: TSP1)は、ジスルファイド結合により連結されたホモトリマー蛋白質である。トロンボスポンジン1は、細胞と細胞、細胞とマトリックスとの相互作用を媒介する付着性の糖蛋白質である。トロンボスポンジン1は、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ラミニン及びタイプVコラーゲンに結合しうる。トロンボスポンジン1は、例えば、NCBI Accession No.:NP_003237(配列番号12)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0040】
WNT1誘導性信号伝達蛋白質1(WNT1 inducible signaling pathway protein 1:WISP1)は、CCN4とも知られており、WISP蛋白質サブファミリの一員であり、結合組織成長因子(connective tissue growth factor:CTGF)ファミリに属する。WNT1は、多様な発生過程を媒介するシステインリッチ、グリコシル化された信号蛋白質の一員である。CTGFファミリの構成員は、4個の保存されたシステインリッチドメイン:IGF結合ドメイン、vWFタイプCモジュール、トロンボスポンジンドメイン及びC−末端システインノット類似(knot−like)ドメインにより特徴付けられる。WISP1は、例えば、NCBI Accession No.:NP_003873(配列番号13)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0041】
プログラニュリン(PGN)は、グラニュリンの前駆体である。プログラニュリンは、高度に保存された12−システイングラニュリン/エピテリンモチーフの7.5反復(repeats)を有する単一の前駆体蛋白質であり、グラニュリン(granulin: GRN)は、前記プログラニュリンからカットされて分泌された、グリコシル化されたペプチドのファミリである。プログラニュリンは、プロエピテリン及びPC細胞由来成長因子ともいう。プログラニュリンは、例えば、NCBI Accession No.:NP_001012497(配列番号14)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0042】
また、インターロイキン−4(IL−4)の存在下で、ミクログリア細胞及び神経細胞をそれぞれ培養する場合、ミクログリア細胞及び神経細胞でそれぞれNEPの発現が増加することを確認した。また、アルツハイマー病を有するマウスにUCB−MSCまたはIL−4を投与する場合、アミロイド蛋白質プラークが減少することを確認した。また、アルツハイマー病を有するマウスにUCB−MSCまたはIL−4を投与する場合、海馬体及び/または皮質を含む脳組織でNEPの発現が増加することを確認した。また、アルツハイマー病を有したマウスにUCB−MSCまたはIL−4を投与する場合、脳組織のミクログリア細胞でNEPの発現が増加することを確認した。
【0043】
インターロイキン-4(IL−4)は、ナイーブヘルパーT細胞(Th0細胞)のTh2細胞への分化を誘導するサイトカインである。IL−4により活性化される場合、Th2細胞は、さらにIL−4を生産する。IL−4は、NCBI Accession No.:NP_000580(配列番号30)またはNP_067258のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0044】
前記14個の蛋白質は、人間由来だけでなく、他の哺乳動物由来の蛋白質も含む。例えば、齧歯類を含む。前記齧歯類には、マウスまたはラットが含まれる。
【0045】
最近、幹細胞を利用した組織再生の薬についての研究と共に、アルツハイマー病のような退行性脳疾患の治療の可能性が提起されたが、現在の利用可能な幹細胞の技術は、アルツハイマー病のように広範囲の脳記憶喪失に適用するのには十分ではない。しかし、 本発明者らは間葉幹細胞がアミロイドベータによる神経細胞毒性を減少させ、脳中にある神経幹細胞の分化及び増殖を促進させることを発見したしたがって、アルツハイマー病及びその他の神経疾患の治療用細胞組成物(cellular preparation)の開発に希望を持たせた。また、間葉幹細胞が分泌する複数の蛋白質がアルツハイマー病のような神経疾患の治療効果を有しており、前記疾患の予防及び治療において可能性を高めることを発見した。
【0046】
本発明は、間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中に含まれた蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を含む神経疾患の予防及び治療のための医薬組成物を提供する。前記神経疾患は、神経突起の損傷により引き起こされる神経疾患でありうる。前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症、躁病及びそれらの組み合わせありうる。
【0047】
神経心理検査を通じて軽度認知障害(mild cognitive impairment)を表す痴呆前段階症状(pre-dementia syndrome) 経心理検査を通じて診断される。1年間軽度認知障害を有した患者のdir12%がアルツハイマー病に進展するという報告がある。驚いたことに、軽度認知障害を有した患者がそのまま6年間放置されれば、約80%がアルツハイマー病に進展される。したがって、軽度認知障害と診断された患者に本発明の医薬組成物を投与すれば、アルツハイマー病への進行が防止されるか、遅延される。
【0048】
また、本発明は、間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を利用して、試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)でアミロイドベータによる神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞内のネプリリシンの発現誘導方法及びこのためのキットを提供する。前記キットは、神経細胞のの培養のために必要な成分をさらに含んでもよい。
【0049】
本発明の間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を含む医薬組成物は、さらにアルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症、躁病などの予防または治療効果のある他の活性成分と共に投与できる。
【0050】
前記医薬組成物は、有効成分以外に薬学的に許容される添加剤をさらに含み、薬学的分野で通常の方法によって、患者の身体内の投与に適した単位投与型の製剤に剤形化させることができる。かかる目的のために、 注射剤または局所投与用製剤のような非経口投与(parenteral administration)製剤が使われる。例えば、必要に応じて、水あるいはその他の薬剤学的に許容できる溶媒を使用した無菌性溶液、または懸濁液剤の注射剤のような非経口投与のための剤形が使われる。単位投与剤形(unit dosage formulation)は、例えば、薬剤学的に許容される担体あるいは媒体、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビークル(vehicle)、防腐剤及び合剤を使用して製造される。
【0051】
前記製剤は、通常の方法によって非経口的に投与される。前記非経口投与は、局部的または全身的投与を含む。前記局部的投与は、直接的に病変またはその周辺に投与すること、例えば、病変である脳または脊髄、その周辺またはその反対側部位に直接投与するのでありうる。前記全身的投与は、脊髄液、静脈または動脈に投与することを含む。前記脊髄液は、脳脊髓液を含む。前記動脈は、病変に血液を供給する部位でありうる。また、前記投与は、例えば、Douglas Kondziolka,Pittsburgh,Neurology,vol.55,pp.565−569,2000に記載された方法によって行われる。すなわち、まず、対象の頭蓋骨を約直径1cmの孔を設けるように切開した後、HBSS(Hank′s balanced salt solution)と混合された間葉幹細胞懸濁液を 注入するこの時、細胞懸濁液の注入は、長針のついた注射器と、脳の内部に目的とする細胞溶液を正位置に挿入するための枠(stereotactic frame)とを利用して行われる。
【0052】
前記間葉幹細胞の1日投与量は、1×104ないし1×107細胞/kg体重、例えば、5×105ないし5×106細胞/kg体重でありうる。投与回数は、1回または数回に分けて投与できる。しかし、本発明の間葉幹細胞、例えば、臍帯血由来の間葉幹細胞の実際投与量は、疾患のタイプ、疾患の重症度、選択された投与経路、患者の体重、年齢及び性別などの色々な関連因子を考慮して 決定されるべきであるものと理解される。
【0053】
本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0054】
前記方法において、投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記疾患を予防または治療するための有効量を投与するものでありうる。かかる有効な量は、前記疾患の条件によって変わりうるということは当業者に自明である。
【0055】
前記方法に使われた前記医薬組成物は、前記した 前記組成物と同じである。前記方法において、前記医薬組成物に含まれた前記間葉幹細胞は、患者本人から採取されたもの(autologous cells)だけでなく、他人または他の医療用の動物由来の細胞(allogeneic cells)から採集される。細胞は、冷凍保存したものであってもよい。本発明の治療方法は、 人間に限定されない。通常、間葉幹細胞は、人間以外の哺乳動物においてもされる。
【0056】
前記方法において、前記神経疾患は、アミロイドベータ、タウ蛋白質の過燐酸化、ネプリリシンの過少発現及び神経突起の損傷からなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患でありうる。前記神経疾患はアルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病から構成された群から選択されるものでありうる。
【0057】
本明細書において、アミロイドベータ(Aβ)とは、アルツハイマー病を有した患者の脳に存在するアミロイドプラークの主要成分を意味する。前記アミロイドベータ(Aβ)は、膜通過糖蛋白質であるアミロイド前駆体蛋白質(APP)のC−末端から由来したアミノ酸を含むペプチドでありうる。前記Aβは、APPからβ−及びγ−セクレターゼの連続作用により生成される。 例えば、前記Aβは、39ないし43個、例えば、40ないし42個のアミノ酸を含む。前記Aβは人間アミロイドA4蛋白質イソフォーム前駆体(amyloid beta A4 protein isoform precursor: APP)のNCBI Accession No.:NP_000475(配列番号19)のアミノ酸配列の672−713残基(Aβ42)または672−711残基(Aβ40)を含む。前記アミロイドベータ(Aβ)は、哺乳動物由来のものでありうる。例えば、人間またはマウス由来のものでありうる。本明細書において、“タウ蛋白質”とは、中枢神経系の神経細胞で発見された微小管関連蛋白質(microtubule-associated protein: MAP)を表す。タウ蛋白質は、チューブリンと相互作用して微小管を安定化させ、微小管のチューブリンアセンブリを促進する。脳組織には、6個の相異なるタウイソフォームを含むものと知られている。タウ蛋白質の過燐酸化は、アルツハイマー病の発生と関連したものと知られている。タウ蛋白質は、高い溶解性を有する微小管関連蛋白質である。人間では、タウ蛋白質は、非神経細胞に比べて主に神経細胞に存在する。タウ蛋白質の機能のうち一つは、軸索微小管(axonal microtubule)の安定化を調節するものである。タウ蛋白質は、例えば、NCBI Accession No.:NP_005901(配列番号20)のアミノ酸配列を有する微小管関連蛋白質タウイソフォーム2でありうる。前記タウ蛋白質は、哺乳動物由来のものでありうる。例えば、人間またはマウス由来のものでありうる。
【0058】
本明細書において、ネプリリシンは、多くの小さい分泌されたペプチドを分解する亜鉛依存性のメタロプロテアーゼ酵素である。ネプリリシンはアミロイドベタが神経組織において非正常的にミスフォールディング及び凝集される場合、アルツハイマー病を引き起こすアミロイドベータペプチドを分解する。ネプリリシンは、例えば、NCBI Accession No.:NP_000893(配列番号21)のアミノ酸配列を有しうる。前記ネプリリシンは、哺乳動物由来のものでありうる。例えば、人間またはマウス由来のものでありうる。
【0059】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法を提供する。
【0060】
前記方法において、 神経細胞のような神経組織は、試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)培養される。前記試験管内培養は、当業界に知られた間葉幹細胞及び/または神経細胞の培養培地で行われる。 前記間葉幹細胞と神経細胞のような神経組織とが互いに直接的な接触があるか、またはない状態で培養するものでありうる。例えば、 前記間葉幹細胞と神経細胞のような神経組織とがポアを有する膜により隔離された状態で培養されるものでありうる。前記膜は、前記間葉幹細胞の培養液中の生理活性物質が透過でき、細胞は透過できないポアサイズ及び配置を有するものでありうる。前記生理活性物質は、例えば、蛋白質、糖及び核酸でありうる。 前記膜は、前記膜の上部には、前記間葉幹細胞を培養し、膜の下部には、前記神経細胞を培養して、重力により前記生理活性物質が膜を透過して下部に移動できるように配置される。
【0061】
前記生体内培養は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を個体に投与するステップをさらに含む。前記投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記プラークの量を減少させるための有効量を投与するものでありうる。かかる有効な量は、選択される疾患の条件によって当業者が容易に選択できる。前記個体は、哺乳動物を含む。前記哺乳動物は、人間、マウスまたはラットを含む。
【0062】
神経組織中のアミロイドプラークの前記減少は、間葉幹細胞及びその培養液の不在下で神経細胞のような神経組織を培養したものに比べて、神経組織内のアミロイドプラークの量を減少させるものでありうる。
【0063】
本明細書において、“アミロイドプラーク(amyloid plaque)”とは、アミロイドベータを含む不溶性繊維蛋白質凝集体でありうる。前記アミロイドプラークは、細胞内、細胞膜上に及び細胞間の空間に存在しうる。
【0064】
本明細書に使われた前記”神経組織(neural tissues)”は、中枢神経系、例えば、脳組織を含む。前記脳組織は、 大脳組織(cerebral tissues)と海馬体とを含む。前記大脳組織は、大脳皮質(cerebral cortex)を含む。前記神経組織は、神経細胞(neural cells)だけでなく、神経組織自体を含む。前記神経細胞は、神経細胞(neuronal cells)及び/またはミクログリア細胞を含む。前記神経組織を培養することは、試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)で神経細胞(neuronal cells)及び/またはミクログリア細胞のような神経細胞(neural cells)を培養することを含む。
【0065】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、 神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法を提供する。
【0066】
前記培養は、神経細胞内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。
【0067】
神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の前記減少は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養したものに比べて、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の量を減少させるものでありうる。
【0068】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養するステップを含む、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させる方法を提供する。
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現の前記増加は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養したものに比べて、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させるものでありうる。
【0069】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経細胞の神経突起成長を増加させる方法を提供する。
【0070】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。前記神経細胞は、正常神経細胞または 損傷した、例えば、Aβにより誘導された損傷した、神経突起を有している神経細胞 でありうる。神経細胞の神経突起成長の前記増加は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、神経細胞の神経突起成長を増加させるものでありうる。
【0071】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0072】
前記方法において、投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記疾患を予防または治療するための有効量を投与するものでありうる。有効な量は、前記疾患の条件によって変わりうるということは当業者に自明である。
【0073】
前記方法に使われた前記医薬組成物は、前記した 説明した通りである。
【0074】
前記方法において、前記神経疾患は、アミロイドベータ、タウ蛋白質の過燐酸化、ネプリリシンの過少発現及び神経突起損傷からなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患でありうる。前記神経疾患は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病ありうる。
【0075】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経組織を培養するステップを含む、 神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法を提供する。
【0076】
前記方法において、神経細胞のような前記神経組織は、 試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)で培養される。前記生体内培養は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上を個体に投与するステップをさらに含む。前記投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記プラークの量を減少させるための有効量を投与するものでありうる。有効な量は、前記疾患の条件によって変わりうるということは当業者に自明である。例えば, アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つそれぞれは、約1ng/kg体重ないし約100mg/kg体重、例えば、約10ng/kg体重ないし約50mg/kg体重の量で投与される。 投与される形態は、水、培地、バッファまたは賦形剤のような添加剤をさらに含む。前記個体は、その神経組織からアミロイドプラークを減少させる必要がある任意の動物でありうる。前記動物は、哺乳動物を含む。前記哺乳動物は、人間、マウスまたはラットを含む。
【0077】
前記アミロイドプラークは、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、 その存在下で神経細胞を培養する場合に減少する。
【0078】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法を提供する。
【0079】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の前記減少は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、その存在下で神経細胞を培養する場合に減少する。
【0080】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養するステップを含む、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させる方法を提供する。
【0081】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養するものに比べて、その存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養する場合に増加する。
【0082】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経細胞の神経突起成長を増加させる方法を提供する。
【0083】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。前記神経細胞は、正常神経細胞または損傷した神経突起、例えば、Aβにより誘導された損傷した神経突起を有している神経細胞でありうる。神経細胞の神経突起の前記成長は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、その存在下で神経細胞を培養する場合に増加する。
【0084】
本明細書で使われる“間葉幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)”は、哺乳動物、例えば、人間, 胚嚢(human embryonic yolk sac)、胎盤(placenta)、臍帯(umbilical cord)、臍帯血(umbilical cord blood)、皮膚(skin)、末梢血液(peripheral blod)、骨髄(bone marrow)、脂肪組織(adipose tissue)、筋肉(muscle)、肝臓(liver)、神経組織(neural tissue)、骨膜(periosteum)、胎児膜(fetal membrane)、滑液膜(synovial membrane)、滑液(synovial fluid)、羊膜(amniotic membrane)、半月状軟骨(meniscus)、前十字靭帯(anterior cruciate ligament)、関節軟骨細胞(articular chondrocytes)、乳歯(deciduous teeth)、血管周囲細胞(pericyte)、支柱骨(trabecular bone)、膝蓋骨下脂肪塊(infra patellar fat pad)、脾臓(speen)、胸腺(thymus)及びその他の間葉幹細胞を含む組織からなる群から選択された一つ以上から分離された間葉幹細胞 または前記分離された間葉幹細胞培養させて増殖された間葉幹細胞でありうる。
【0085】
本明細書で使われる“臍帯血(umbilical cord blood)”は、人間を含む哺乳動物で、胎盤と胎児とを連結する臍帯静脈から採取された血液を表す。本明細書で使われる“臍帯血由来の間葉幹細胞(umbilical cord blood-derived MSC)”は、哺乳動物、例えば、人間の臍帯血から分離された間葉幹細胞及び前記分離された臍帯血由来の間葉幹細胞を培養して増殖された間葉幹細胞を意味する。
【0086】
本明細書で使われた用語“治療(treating)”は、まだ疾患または障害 を保有していると診断されていないが、かかる傾向がある動物、例えば、人間を含む哺乳動物の疾病または障害が発生することの予防;疾患の進展の抑制;及び疾患の軽減を意味する。
【0087】
本明細書で取り立てて定義されていない用語は、本発明が属する技術分野で通常的に使われる意味を有する。
【0088】
臍帯血から間葉幹細胞を含む単核細胞を分離するためには、あらゆる公知の方法,例えば、 韓国登録特許第489248号に記載された方法が 使用される。例えば、フィコール・ハイパック密度勾配分離法(Ficoll-Hypaque density gradient method)が使用されるが、これに制限されない。具体的に、分娩後に胎盤が剥離される前に、臍静脈(umbilical cord vein)から採取した臍帯血をフィコール・ハイパック勾配で遠心分離して単核細胞を収得した。前記 単核細胞を数回洗浄して不純物を除去する。このように分離された単核細胞は、間葉幹細胞の分離及び培養に利用するか、または超低温冷凍させて長期間保管後に使用できる。
【0089】
任意の知られた方法が前記臍帯血から間葉幹細胞を分離・培養するために使われる(韓国公開特許第2003−0069115号公報及びPittinger MFら、Science、284:143−7,1999;及びLazarus HMら、Bone Marrow Transplant、16:557−64,1995)。
【0090】
まず、採取された臍帯血を、フィコール・ハイパック濃度勾配を利用して遠心分離することで、造血母細胞(hematopoietic stem cell)及び間葉幹細胞を含む単核細胞を分離した後、数回洗浄して異物を除去する。適切な密度で単核細胞を培養容器で培養する。次に、前記単核細胞を増殖させて単一層を形成する。前記単核細胞のうち、位相差顕微鏡で観察される形態が同質性であり、かつ紡錘状(spindle-shaped)の長い形態の細胞の集落(colony)形態に増殖する細胞が間葉幹細胞である。前記成長された細胞を反復的にサブ培養して、必要なほどの細胞数を得る。
【0091】
本発明の組成物に含まれる細胞は 公知の方法によって冷凍保管される (Camposら、Cryobiology 35:921−924,1995)。冷凍時に使われる培地は、10%のジメチルスルホキシド(DMSO), 及び10ないし20%のFBS(fetal bovine serum),ヒト末梢血液または臍帯血の血漿または血清のうち一つを含む。前記細胞は、培地1mLに約1×106ないし5×106個の細胞が存在するように懸濁できる。
【0092】
前記細胞懸濁液を低温冷凍用のガラスまたはプラスチック材質のアンプルに分配し、それを密封して、予め温度条件が整えられたプログラム冷凍器に入れる。 したがって、例えば、−1℃/分で冷凍速度を調節する冷凍プログラムを利用して解凍間の細胞の損傷を最小化させる。一旦アンプルの温度が−90℃以下に達すれば、液体窒素タンク中に移動させて−150℃以下に維持させる。
【0093】
前記細胞を解凍するために、前記アンプルを液体窒素保存タンクから速かに37℃水槽に移動させる。アンプル内に解凍された細胞は、滅菌状態下で培養培地が入っている培養容器に 速く移動させる。
【0094】
本発明において、間葉幹細胞の分離・培養に使用される培養培地は、10%ないし30%のFBS,ヒト末梢血液または臍帯血の血漿または血清を含む当業界によく知られた任意の一般的な細胞培養用の培地でありうる。例えば、前記培養培地は、DMEM(Dulbecco′s modified eagle medium)、MEM(minimum essential medium),α−MEM、McCoys 5A培地、イーグルス基本培地(eagle′s basal medium)、CMRL(Connaught Medical Research Laboratory)培地、Glasgow最小必須培地、Ham′s F−12培地、IMDM(Iscove′s modified Dulbecco′s medium)、Liebovitz′ L−15培地、RPMI(Roswell Park Memorial Institute)1640培地であり、例えば、DMEMでありうる。前記細胞は、前記培地1mL当たり約5×103ないし2×104個の細胞が存在するように 懸濁される。
【0095】
また、本発明の前記細胞培養用の培地は、 一つ以上の補助成分を さらに含む。前記補助成分は、胎児牛 血清 、馬 血清 または人間 血清;及び微生物の汚染を防止するためのペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン(streptomycin sulfate)及びゲンタマイシン(gentamycin)のような抗生物質;アンホテリシンB(amphotericin B)及びナイスタチン(nystatin)のような抗真菌剤;及びそれらの混合物でありうる。
【0096】
臍帯血由来の間葉幹細胞は、組織や器官(organ)の移植で拒否反応を起こす最も重要な原因である組織適合抗原HLA−DR(class II)を発現しない(Le Blanc,KC,Exp Hematol,31:890−896,2003;及びTse WTら、Transplantation,75:389−397,2003)。移植後の免疫反応、例えば、移植された組織または器官の拒否を最小化できるため、自家由来の臍帯血及び他家由来の臍帯血が使われる。冷凍された細胞も使われる。
【0097】
本発明の間葉幹細胞の培養液は、哺乳動物、例えば、人間の骨髄由来の間葉幹細胞、臍帯血由来の間葉幹細胞、脂肪組織由来の幹細胞、胚嚢(embryonic yolk sac)由来の間葉幹細胞、胎盤由来の間葉幹細胞、皮膚由来の間葉幹細胞、末梢血液由来の間葉幹細胞、筋肉由来の間葉幹細胞、肝臓由来の間葉幹細胞、神経組織由来の間葉幹細胞、骨膜由来の間葉幹細胞、臍帯由来の間葉幹細胞、胎児膜由来の間葉幹細胞、滑液膜由来の間葉幹細胞、滑液由来の間葉幹細胞、羊膜由来の間葉幹細胞、半月状軟骨由来の間葉幹細胞、前十字靭帯由来の間葉幹細胞、関節軟骨細胞由来の間葉幹細胞、乳歯由来の間葉幹細胞、血管周囲細胞由来の間葉幹細胞、支柱骨由来の間葉幹細胞、膝蓋骨下脂肪塊由来の間葉幹細胞、脾臓由来の間葉幹細胞、胸腺由来の間葉幹細胞、及び間葉幹細胞が存在するその他の組織から分離及び/または培養された間葉幹細胞 を培養するために使われた培養溶液でありうる。
【0098】
前記培養培地は、例えば、FBSまたはヒト末梢血液または臍帯血の血漿または血清を含む細胞培養用の培地でありうる。前記細胞培養用の培地は、例えば、DMEM、MEM,α−MEM、McCoys 5A培地、イーグルス基本培地(Eagle‘s basal medium)、CMRL培地、Glasgow最小必須培地、Ham′s F−12培地、IMDM(Iscove‘s modified Dulbecco‘s medium)、Liebovitz′ L−15培地、及びRPMI 1640培地を含むが、これらに制限されるものではない。
【0099】
本発明の間葉幹細胞の培養液は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン, IL-4またはそれらのうち一つ以上の発現を誘導する因子から構成された群から選択された一つ以上を含む。
【0100】
本発明の医薬組成物は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、及びプログラニュリン、IL-4, または前記蛋白質のうち一つ以上を誘導する因子から構成された群から選択された一つ以上を活性成分として含む。
【0101】
前記蛋白質のうち一つ以上を誘導する前記因子は、信号伝達体系の刺激因子及び任意の知られた因子ありうる。前記因子は。前記因子は次の例でありうるが、これらに制限されるものではない。ガレクチン3を誘導する因子はホルボール12−ミリステート13−アセテート(phorbol 12-myristate 13-acetate: PMA)及び変形されたリポ蛋白質から構成された群から選択された一つ以上を含む。前記PMAまたは前記リポ蛋白質は、蛋白質キナーゼC(PKC)、ミトーゲン活性化された蛋白質キナーゼ1,2(MAPK−1,2)及びp38キナーゼを経由して、ガレクチン3を誘導するものと知られている。PDGF−AAを誘導する因子は、Ets−1(avian erythroblastosis virus E26(v ets) oncogene homolog 1)及びリソホスファチジルコリンからなる群から選択された一つ以上を含む。リソホスファチジルコリンは、MAPK−1,2を経由してPDGF−AAを誘導するものと知られている。
【0102】
あらゆる引用文献は、参照として本明細書にそれ全体として含まれる。
【実施例】
【0103】
本発明を下記実施例を参照して、さらに詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するだけであり、本発明の範囲が下記実施例により限定されるものではない。
【0104】
実施例
実施例1:神経幹細胞の分離及び培養
本発明の実験に使われた神経幹細胞は、次のように分離した。 神経幹細胞は、胎生14日(以下、‘E14’と略称する)となるSprague−Dawleyラット(オリエントバイオ社製、韓国)の大脳皮質及び海馬体から分離した。まず、妊娠中であるラットの腹を切り、はさみと鉗子とを利用して胚芽を分離した。前記胚芽を切除用HBSS(Hank′s balanced salt solution)で洗浄した後、氷で冷たくなった(ice-cold)HBSSを含む皿に置いた。微細顕微鏡下で注射針と鉗子とを利用してE14胚芽の大脳皮質と海馬体とを分離した。前記分離した大脳皮質を無血清神経細胞培養液(serum free culture solution)で、ピペットで約10ないし20回ピペッティングして、細胞を単一細胞にした。前記単一細胞(single cells)をポリ−L−オルニチン(15μg/ml,Sigma,St.Louis,MO)で37℃で16時間処理した後、 2時間以上フィブロネクチン(1μg/ml,Sigma)でコーティングしたカバースリップに塗抹した。前記単一細胞(single cells)を20ng/mlのbFGF(basic fibroblast growth factor)とB27無血清補強剤(B−27 serum−free supplement)とが含まれた無血清NeurobasalTM(Gibco社製)培地下で、培養皿の底部の約70%を細胞が満たすまで(70ないし80%コンフルエンス(confluence))約2ないし4日間培養した。bFGFを除去し、4ないし6日間神経細胞分化を誘導させた。分化間に、前記細胞を5%のCO2培養器で37℃で培養しつつ、二日に一回ずつ培地とB27補強剤とを交換し、bFGFは毎日添加した。このように分化された神経細胞を以下の実施例で使用した。
【0105】
実施例2:臍帯血由来の間葉幹細胞の分離及び増幅
臍帯血サンプルは、産婦の同意を得て出産時に臍静脈から収得した。具体的に、44mLのCPDA−1(citrate phosphate dextrose anticoagulant−1)抗凝固剤(緑十字社製、韓国)を含む臍帯血収集バッグの16−ゲージの注射針を臍静脈に挿入して、臍帯血を重力により収集バッグに集めた。前記収集された臍帯血(umbilical cord blood: UCB)は、採取後48時間内に処理し、 単核細胞細胞の生存率は、90%以上であった。臍帯血収得物をフィコール・ハイパック勾配(密度:1.077g/mL,Sigma社製)で遠心分離して、単核細胞を収得した後、数回洗浄して不純物を除去した。10%ないし20%のFBS(HyClone社製)を含有した最小基本培地(α−MEM、Gibco BRL社製)を添加して、細胞を懸濁させた。前記細胞を適当な濃度で10%ないし20%のFBSを含有した最小基本培地に分注した後、5%の二酸化炭素が供給される37℃で細胞培養器で一週間に二回ずつ培地を交換して培養した。培養された細胞が単一層を形成すれば、位相差顕微鏡を利用して紡錘状に増殖された間葉幹細胞を確認した後、前記間葉幹細胞が十分に増殖されるまで継代培養を反復した。 臍帯血由来の間葉幹細胞(UCB-MSCs)は、10ないし20%のFBSを含有するα−MEMで培養した。
【0106】
実施例3:アミロイドベータ蛋白質の毒性
アルツハイマー病の発病のための理想的な環境を作るために、アルツハイマー病を引き起こすものと知られたアミロイドベータ(Aβ;amyloid−beta protein fragment 1−42(Sigma、A9810):以下、Aβ42ともいう)10μMを含むbFGFとB27とがない無血清NeurobasalTM培地中で、実施例1に記載されたように 分化させた神経細胞を培養した。 神経幹細胞を約3ないし4日分化させた後、神経幹細胞の形態学的特性を顕微鏡で観察した。神経細胞に分化されたことが確認されれば、前記神経細胞にアミロイドベータを24時間処理した。
【0107】
図1は、神経細胞の形態学的変化を測定するために、アミロイドベータと24時間処理または処理されない生きている神経細胞の光学顕微鏡イメージを表す。アミロイドベータの濃度が高いほど、神経細胞の死滅が増加した。図1において、対照群は、アミロイドベータが含まれていない無血清NeurobasalTM培地で神経細胞を培養したものであり、Aβ−1μM、Aβ−5μM及びAβ−10μMは、それぞれアミロイドベータを1μM、5μM及び10μMの濃度含む培地で、神経細胞を24時間培養した結果を示すものである。
【0108】
実施例4:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養が神経細胞死滅に及ぼす影響
アミロイド・ベータを処理した神経細胞とヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とを共同培養した時、アミロイド・ベータのような毒性物質により損傷した神経細胞を観察した。
【0109】
具体的に、E14胚芽の大脳皮質幹細胞及び海馬体幹細胞を前記実施例1のように分離し、分離された神経幹細胞を増殖させて神経細胞に分化させ、実施例3に示したようにアミロイド・ベータ10μMを処理した。アミロイド・ベータを処理してから12時間後、アミロイド・ベータが処理された神経細胞をアミロイド・ベータの存在下でヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間共同培養して、前記神経細胞をアミロイド・ベータの存在下で総24時間培養した。共同培養は、図2に示したような共同培養システムで行われた。図2は、アミロイド・ベータが処理された神経細胞をヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養するための共同培養システムを示す。図2に示したように、共同培養システム100は、上部チャンバー10と下部チャンバー40とを備え、前記上部チャンバー10の底部は、孔隙が約1μmのサイズである微細膜(microporous membrane)30を備える。上部チャンバー10には、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞20を培養し、下部チャンバー40には、大脳皮質幹細胞あるいは海馬体幹細胞から分化された神経細胞50を培養した。前記上部チャンバー10と下部チャンバー40とは分離可能であり、前記上部チャンバー10の底部の下部面と、下部チャンバー40の底部の上部面とは、約1mmの距離ほど離隔されている。共同培養は、下部チャンバー40と上部チャンバー10とで細胞をそれぞれ培養した後、上部チャンバー10を下部チャンバー40の培地に添加することで行われた。
【0110】
大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞にアミロイド・ベータ処理を行わずに培養したもの、大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞にアミロイド・ベータを処理したもの、アミロイド・ベータが処理されていない大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞に間葉幹細胞を共同培養したものも培養及び観察した。損傷した大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞及びヒト臍帯血由来の間葉幹細胞は、アミロイド・ベータを処理してから24時間後共同培養し、神経細胞の損傷程度を顕微鏡で観察 した。前記培養は、bFGFとB27とがない無血清NeurobasalTM培地(GIBCO)を使用して実施した。
【0111】
神経細胞にアミロイド・ベータを処理する時、誘導される細胞死滅程度を定量的に測定するために、蛍光染色分析により生きている細胞と死んだ細胞とを測定した。細胞毒性の分析は、動物細胞のためのLIVE/DEADTM生存性/細胞毒性分析キット(Sigma、L3224)を使用した。前記キットは、カルセインAMとエチジウムホモダイマーとを含み、カルセインAMは、生きている細胞を確認するのに使われ、エチジウムホモダイマーは、死んだ細胞を確認するために使われる。カルセインAMは、非蛍光性の細胞透過性の染料であり、生きている細胞内に入れば、細胞内のエステラーゼの触媒活性によるアセトキシメチルエステルの加水分解反応により、緑色蛍光物質であるカルセインに転換される。エチジウムホモダイマーは、生きている細胞膜は通過できないが、損傷した細胞膜は透過し、細胞内の核酸に結合して赤色蛍光を発する。
【0112】
前記共同培養システムの下部チャンバー40内で、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβ42を含有する培地中で培養して、Aβ42を直接神経細胞に処理した。生存/死亡細胞染色(live/dead staining)を通じて、死んだ細胞は、赤い色で染色され、生きている細胞は、緑色で観察した結果、Aβ42を10μMの濃度で24時間処理した細胞(図3のCt+Aβ)と、処理していない細胞(図3のCt)とを比較する時、Aβ42を処理した場合、緑色蛍光が顕著に減り、赤い蛍光染色部分が広範囲に観察された。これは、ほとんどの神経細胞がAβ42により細胞死したということを表す。しかし、このように損傷した神経細胞に、図2に示したような共同培養システムを利用して臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養すれば、神経細胞の死滅が防止され、神経細胞の成熟がさらに増加した(図3のCt+Aβ+MSC)。これは、Aβ42により既に損傷した神経細胞をUCB−MSCと共同培養する場合、損傷した神経細胞を損傷しない状態に復帰させるということを表す。また、図3において、Ct+Aβ+MSCは、Aβ42を10μMの濃度で含む無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間共同培養した結果である。また、下部チャンバー40で、10μMの濃度のAβ42存在下で、無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を培養すると共に、上部チャンバー10で、臍帯血由来の間葉幹細胞を24時間同じ培地で共同培養しても、図3のCt+Aβ+MSCに示したような結果が得られた。これは、神経細胞をUCB−MSCと共同培養する場合、Aβ42により既に損傷した神経細胞を損傷しない状態に復帰させるだけでなく、Aβ42により神経細胞が損傷しないように予防できるということを表す。
【0113】
図3において、Ctは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養した結果であり、Ct+Aβは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養した結果であり、Ct+Aβ+MSCは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間共同培養した結果であり、Ct+MSCは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間共同培養した結果を表す。
【0114】
図4は、図3の結果を死んだ細胞の百分率で表示したものである。図4において、Cortexは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を含まない培地で培養した対照群結果を表し、Cortex+Aβは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Cortex+Aβ+MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を10μMの濃度に含む培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、Cortex+MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。
【0115】
実施例5:ヒト骨髄由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養時に、神経細胞死滅に及ぼす影響
寄贈された骨髄から採取した骨髄由来の間葉幹細胞(BM−MSC)を使用して、実施例4のような方法で実験を行った。Aβが処理された神経細胞に骨髄由来の間葉幹細胞を共同培養すれば、実施例4の臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養した場合と同様に、神経細胞の死滅が抑制された(図5のCt+Aβ+BM−MSC)。
【0116】
図5は、Aβ42による神経細胞死滅についての神経細胞とヒト骨髄由来の間葉幹細胞との共同培養の効果を表す蛍光染色の結果である。図5において、Ctは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で培養した対照群結果を表し、Ct+Aβは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Ct+Aβ+BM−MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で12時間培養した後、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、Ct+BM−MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。
【0117】
実施例6:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養時に、タウ蛋白質の燐酸化に及ぼす影響
図6は、Aβ42により燐酸化されたtauに結合する抗体である 抗−phosphor−tau抗体を利用して神経細胞を 表すものであって、 tau蛋白質は、神経細胞の死亡を誘発する蛋白質と知られた。前記抗−phosphor−tau抗体とphosphor−tauとの結合を可視化するために、抗−phosphor−tau抗体は、赤い蛍光を有するCy3と接合させた。
【0118】
図6において、第1列は、Cy3が接合された抗−phosphor−tau抗体で染色した 神経細胞を表し、第2列は、4′,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した神経細胞を表す。図6の第1列において、Ctは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で培養した対照群結果を表し、Aβ42は、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Aβ42/MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。図6の第1列に示したように、神経細胞でタウ蛋白質は、Aβ42により急激に燐酸化されたが、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞の共同培養により脱燐酸化された(Aβ42及びAβ42/MSC参照)。
【0119】
図6の第2列に示したように、DAPI染色は、図6の第1列で抗−phosphor−tau抗体で染色されない 大脳皮質由来の神経細胞が維持されていることを表す。DAPI染色は、VECTASHIELDTM(VECTOR LABORATORIES社製)を使用し、DAPIが含まれた搭載媒質(mounting medium)を細胞のあるスライドガラスに顕微鏡観察直前に添加して使用した。
【0120】
実施例7:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養時に、免疫蛍光染色法を利用した分化された神経細胞分析
神経細胞の分化マーカーとして知られた微小管関連蛋白質(MAP2)とチューブリンβIIIとに特異的に結合する抗体を利用して、大脳皮質と海馬体幹細胞とから由来した神経細胞を染色した。
【0121】
免疫蛍光染色を 次の通りで行った。神経細胞を4%のパラホルムアルデヒドで、常温で20分間12ウェルプレートのウェルに固定し、0.1%のBSA/PBSで5分ずつ4回洗浄する。洗浄後、10%のNGS(normal goat serum)、0.3%のTriton X−100及び0.1%のBSA/PBSを含む溶液を添加し、常温で30分ないし45分間反応させて非特異反応を遮断させた。一次抗体を含む10%のNGS及び0.1%のBSA/PBS溶液を前記ウェルに添加し、4℃で一晩反応させた。0.1%のBSA/PBSで5分ずつ3回洗浄した。二次抗体及び二次抗体に結合する試薬を含む0.1%のBSA/PBS溶液を入れて常温で4分間反応させた後、0.1%のBSA/PBSで5分間4回洗浄した。一次抗体は、マウスで生産された単一クローン抗-チューブリンβIII (anti-tubulin βIII antibody)(Sigma)及びうさぎ多クローン抗-MAP2 (anti-microtubule associated protein 2 antibody)(chemicon)をそれぞれ1:500及び1:200に緩衝溶液中に希釈して準備した。二次抗体は、ビオチン化された抗−マウス抗体及びビオチン化された抗−うさぎ抗体(Vector)をそれぞれ1:200に緩衝溶液中に希釈して準備した。二次抗体に結合する試薬は、ジクロロトリアジニルフルオレセイン(dichlorotriazinyl fluorescein)(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して準備した。
【0122】
Aβ42を処理した神経細胞(大脳皮質及び海馬体由来の細胞)では、毒性により神経突起が切断され、神経細胞模様が凝縮された。一方、臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養した神経細胞では、神経突起が維持され、神経細胞の成熟が促進された(図7A, 7B及び7C)。
【0123】
図7は、Aβ42処理され、臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養し、抗チューブリンβIII及び抗MAP2及びウェスタンブロッティングを利用して、免疫蛍光染色法で 染色された神経細胞を表す。
【0124】
図7Aは、大脳皮質由来の神経細胞を表し、図7Bは、海馬体由来の神経細胞を表す。MAP2及びTubulinβIIIは、それぞれ抗MAP2及び抗チューブリンβIIIを利用して、免疫蛍光染色した結果を示す。対照群(control)は、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した対照群結果を表し、Aβ42は、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Aβ42/MSCは、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、MSCは、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。
【0125】
図7Cは、Aβ42処理された大脳皮質由来の神経細胞を臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養し、培養された神経細胞を抗MAP2抗体を利用してウェスタンブロッティングした結果を示す図面である。まず、培養された神経細胞の膜をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれた溶解バッファで、超音波破砕器を使用して 粉砕し、蛋白質を抽出した。抽出された蛋白質をSDS−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)に適用し、電気泳動して蛋白質サイズによって分離した。電気泳動後、分離された蛋白質を電気的性質を利用してニトロセルロース膜に移し、3%の脱脂粉乳が含まれたPBSに希釈された抗MAP2抗体(Millipore chem社製)を添加して反応させた。次いで、//ストレプトアビジン(streptavidin)に接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)が接合された抗うさぎ抗体を添加して反応させ、酵素の基質であるECL(Enhanced chemiluminescence)溶液を処理してX−rayフィルムで現像した。図7Cにおいて、対照群、Aβ、Aβ+MSC及びMSCは、前記した通りである。図7Cにおいて、200は、バンドに該当する分子量200kDaを表す。
【0126】
実施例8:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞による神経細胞及びミクログリア細胞内のネプリリシン発現の誘導
ネプリリシン(NEP)は、インシュリン分解酵素(IDE)と共に生体内でAβ42を分解して除去できる蛋白質と知られている。また、マウスでNEPをノックアウトさせれば、アルツハイマー病の症状が観察されることが報告された。本実施例では、前記実施例4ないし7で得られた神経細胞を収穫して溶解させた後、蛋白質を抽出した。蛋白質をSDS−PAGEで電気泳動して分離し、分離された蛋白質を抗ネプリリシン抗体を利用してウェスタンブロッティングして、NEP蛋白質の発現程度を測定した。また、NEP特異プライマーを利用して、NEPのmRNA発現程度をRT−PCRで測定した。また、抗NEP抗体で培養された細胞を染色した。
【0127】
まず、細胞を4%のパラホルムアルデヒドで常温で20分間12ウェルプレートのウェルに固定し、0.1%のBSA/PBSで5分ずつ4回洗浄する。洗浄後、10%のNGS、0.3%のTriton X−100及び0.1%のBSA/PBSを含む溶液を添加し、常温で30分ないし45分間反応させて、非特異反応を遮断させた。一次抗体を含む10%のNGS及び0.1%のBSA/PBS溶液を前記ウェルに添加し、4℃で一晩反応させた。0.1%のBSA/PBSで5分ずつ3回洗浄し、二次抗体及び二次抗体に結合する試薬を含む0.1%のBSA/PBS溶液を入れて、常温で40分間反応させた後、0.1%のBSA/PBSで5分間4回洗浄した。一次抗体は、マウスで生産された単一クローン抗-NEP(Sigma)を1:500に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体は、ビオチン化された抗マウス抗体(Vector)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体に結合する試薬としては、ストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。
【0128】
図8は、Aβ42処理されたラット由来の神経細胞と、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞またはヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とを共同培養する時、ラット由来の神経細胞でネプリリシンの発現程度を観察した結果である。
【0129】
図8のAの上端は、培養されたラットの大脳皮質由来の神経細胞を、ウェスタンブロッティングした結果を表す。Neuronは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した対照群結果を表し、Neuron+Aβは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Neuron+Aβ+MSCは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに共同培養した結果を表し、Neuron+MSCは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに共同培養した結果を表す。
【0130】
図8のAの下端は、培養されたラットの神経細胞から分離されたmRNAをテンプレートにしてRT−PCRした結果を表す。使われたPCRプライマーは、配列番号15及び16のラットのNEP遺伝子の特異的プライマーを使用し、β−actin遺伝子の特異的プライマーは、配列番号17及び18のプライマーを使用した。PCR結果、NEP遺伝子に対して422bp、β−actin遺伝子に対して300bpの増幅産物が得られた。Neuron,Neuron+Aβ,Neuron+Aβ+MSC及びNeuron+MSCは、前述した通りである。
図8のAに示したように、ラット由来の神経細胞にAβ42を処理した場合、NEPの発現は減り、Aβ42が処理されたラット由来の神経細胞をヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養する場合、NEPの発現が蛋白質とmRNA段階で増加することを確認した。これは、ヒト間葉幹細胞がラット由来の神経細胞を刺激して神経細胞のNEPの生成を増加させ、Aβ42毒性蛋白質を除去できることを証明する結果といえる。
【0131】
図8のBにおいて、Ct,Aβ,Aβ+MSC及びMSCは、前述したようなNeuron,Neuron+Aβ,Neuron+Aβ+MSC及びNeuron+MSCにそれぞれ対応する。
【0132】
細胞の染色過程は、次の通りである。細胞を4%のパラホルムアルデヒドで、常温で20分間12ウェルプレートのウェルに固定し、0.1%のBSA/PBSで5分ずつ4回洗浄する。洗浄後、10%のNGS、0.3%のTriton X−100及び0.1%のBSA/PBSを含む溶液を添加し、常温で30分ないし45分間反応させて、非特異反応を遮断させた。一次抗体を含む10%のNGS及び0.1%のBSA/PBS溶液を前記ウェルに添加し、4℃で一晩反応させた。0.1%のBSA/PBSで5分ずつ3回洗浄し、二次抗体及び二次抗体に結合する試薬を含む0.1%のBSA/PBS溶液を入れて常温で40分間反応させた後、0.1%のBSA/PBSで5分間4回洗浄した。一次抗体は、マウスで生産された単一クローン抗-NEP(Sigma) 抗体 を1:500に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体は、ビオチン化された抗マウス抗体(Vector)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体に結合する試薬としては、ストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。
【0133】
図8のBに示したように、神経細胞にAβ42を処理すれば、赤く染色された部分が顕著に減少して、NEPの発現がラット由来の神経細胞で減ったことを表す。しかし、前記神経細胞と人間由来の間葉幹細胞とを共同培養すれば、ラット由来の神経細胞でNEPの発現が再び回復された。
【0134】
また、図8のCは、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞(BM−MSC)を利用して同一実験を行って、ラット由来の神経細胞内のNEPの発現が増加することをRT−PCRで確認したものである。
【0135】
NEPとβ−actinとのRT−PCRは、図8のAで説明した//ものと 同様プライマーを使用して、 同様条件で行った。図8のCにおいて、レーン1は、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した対照群結果を表し、レーン2及び3は、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞(BM−MSC1及びBM−MSC2)と12時間さらに共同培養した結果を表す。ここで、BM−MSC1及びBM−MSC2は、相異なる供与者から得た細胞を表す。 図8Cに示した結果は、ラットの大脳皮質由来の神経細胞をヒト骨髄由来の間葉幹細胞と共同培養する場合、mRNAレベルでラットの大脳皮質由来の神経細胞でNEP発現の増加を表す。さらに、ウェスタンブロッティング及び免疫ブロッティング結果、蛋白質レベルでもBM−MSCをラット由来の神経細胞と共同培養する場合、前記神経細胞でNEPの発現が増加することが確認された。
【0136】
脳には、神経細胞だけでなく、ミクログリア細胞(microglial cell)があるが、ミクログリア細胞は、脳の大食細胞と呼ばれ、脳に蓄積された毒性物質を除去する細胞と知られている。 前記ミクログリア細胞は、アルツハイマー病でAβを除去する。 最近、報告によれば、ミクログリア細胞でネプリリシンの発現が減少すれば、アルツハイマー病の進行が促進されるという報告があった。したがって、ヒト臍帯血細胞によりNEPの発現の回復は、免疫蛍光染色法を使用して神経細胞及びミクログリア細胞で確認した(図9)。図9は、Aβ42処理された神経細胞と間葉幹細胞とを共同培養した後、ネプリリシンの発現程度を神経細胞とミクログリア細胞とで確認した結果である。
【0137】
図9の第1列は、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに共同培養した後、神経細胞マーカーであるMAP2とNEPとにそれぞれ特異的に結合する抗体で二重染色した結果を表す図面である。染色過程は、MAP2に対する1次抗体としてうさぎ由来の抗MAP2抗体、前記一次抗体に結合する二次抗体としてビオチン化された抗うさぎ抗体、及びMAP2に対する二次抗体に結合する試薬としてストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を使用し、NEPに対する一次抗体としてマウス単一クローン抗NEP体抗(anti-NEP antibody)(Sigma)、二次抗体としてビオチン化された抗マウス抗体(Vector)、及び二次NEPに対する抗体に結合する試薬としてストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を使用した点を除いては、前記図8のBと同じ過程により染色した。図9の第1列において、MAP2とNEPとは、同じ細胞を抗MAP2と抗NEP抗体とでそれぞれ染色した結果を表し、MAP2+NEPは、同じ細胞を抗MAP2と抗NEP抗体とでそれぞれ染色した結果のイメージを重なったイメージを表す。DAPIは、図6の第2列と同じ過程によりDAPI染色した結果を表す。
【0138】
図9の第1列に示したように、MAP2及びNEP いずれも染色されることからみて、前記細胞は、MAP2及びNEPをいずれも発現するものと確認された。また、イメージ重複結果(MAP2+NEP)、MAP2及びNEPは、いずれも同じ領域で発現されるものと確認され、これは、前記神経細胞がMAP2及びNEPいずれも発現するということを表す。DAPI染色結果、神経細胞で染色され、これは、前記神経細胞が正常に維持されていることを表す。
【0139】
図9の第2列は、大脳皮質由来の神経細胞(neuron)の代わりに、ミクログリア細胞を使用し、MAP2及びNEPに対して染色する代わりに、ミクログリア細胞のマーカーであるCD40及びNEPに対して染色した点を除いては、図9の第1列と同様 に実験した結果を表した図面である。CD40に対する染色は、CD40に対する一次抗体としてヤギ由来の抗CD40抗体、前記一次抗体に結合する二次抗体としてビオチンが接合された抗ヤギ抗体、及び二次抗体に結合する試薬としてストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。
【0140】
図9の第2列に示したように、CD40及びNEPでいずれも染色されることからみて、前記ミクログリア細胞は、CD40及びNEPをいずれも発現するものと確認された。また、イメージ重複結果(CD40+NEP)、CD40及びNEPは、いずれも同じ領域で発現されるものと確認され、これは、前記ミクログリア細胞がCD40及びNEPいずれも発現するということを表す。DAPI染色結果、ミクログリア細胞で染色され、これは、前記ミクログリア細胞が正常に維持されていることを表す。
【0141】
図9の第1列及び第2列の結果から、 神経細胞とミクログリア細胞とを臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養する場合、Aβで処理された神経細胞とミクログリア細胞とでいずれもNEPの発現が誘導されるということが確認された。
【0142】
実施例9:間葉幹細胞が分泌して、Aβ42の毒性を抑制する分泌蛋白質の同定及び効果検証
実施例4ないし8の結果、Aβ42で処理された神経細胞を間葉幹細胞と直接的な接触のない状態で共同培養する場合、前記神経細胞でAβ42の毒性活性が抑制されるということが確認された。これは、間葉幹細胞から分泌された物質が前記神経細胞に相互作用して、Aβ42の毒性活性を抑制するものと予測できる。
【0143】
本実施例では、間葉幹細胞から分泌された物質のうち、Aβ42の毒性活性を抑制する物質を探索して確認した。
【0144】
(1)間葉幹細胞由来のAβ42の毒性活性を抑制する物質探索
まず、細胞を次のような色々な条件で培養した。
培養群1:大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
培養群2:大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
培養群3:大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに共同培養した。
培養群4:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
培養群5及び6:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞を無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
【0145】
次いで、前記培養群1ないし6から培地を収穫し、培地中のサイトカイン及び蛋白質を分析及び比較して、幹細胞を単独に培養する場合に発現されないか、またはほぼ発現されないが、幹細胞と神経細胞とを共同培養する場合、発現が増加したサイトカインまたは蛋白質を選別した。サイトカインの分析は、RayBioTM Human Cytokine Antibody Array I G series(RayBiotech,Inc)を使用して行われ、蛋白質の分析は、RayBioTMHuman Cytokine Antibody Array I G series/Biotin Label Based Antibody Array I G series(RayBiotech,Inc)を使用して行われた。前記二つのアレイは、総54,504種類の蛋白質を分析できる。
【0146】
分析結果、得られたデータを比較して、幹細胞を単独で培養する場合に発現されないか、またはほぼ発現されないが、幹細胞と神経細胞とを共同培養する場合、発現が増加した蛋白質を選別した。その結果、下記のような14種類の蛋白質が確認された:
アクチビンA、血小板因子4(PF4)、デコリン、ガレクチン3、成長分化因子15(GDF15)、グリピカン3、膜タイプのフリズル関連蛋白質(MFRP)、細胞間付着分子5(ICAM5)、インシュリン類似成長因子結合蛋白質7(IGFBP7)、血小板由来成長因子AA(PDGF−AA)、分泌された酸性システインリッチ蛋白質1(SPARCL1)、トロンボスポンジン1(TSP1)、WNT1誘導性分泌された蛋白質1(WISP1)及びプログラニュリン(PGN)であった。
前記14種類の蛋白質がAβ処理された神経細胞で毒性を抑制し、神経細胞の分化と成熟とを促進するものと推定した。
【0147】
(2)探索された14種の蛋白質の活性確認
探索された14種の蛋白質の組み替え蛋白質を購入した(R&D SYSTEMS社製)。次いで、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ及び前記14種の蛋白質それぞれをアクチビンA 25ng/ml、PF4 25ng/ml、ガレクチン3 3ng/ml、デコリン100ng/ml、GDF15 50ng/ml、グリピカン3 50ng/ml、MFRP 50ng/ml、ICAM5 50ng/ml、IGFBP7 30ng/ml、PDGF−AA 50ng/ml、SPARCL1 50ng/ml、TSP1 50ng/ml、WISP1 50ng/ml及びプログラニュリン50ng/mlの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地に添加し、24時間培養した。培養後、死んだ細胞と生存可能な細胞とは、LIVE/DEADTM生存性/細胞毒性分析キット(Sigma,L3224)を使用した蛍光染色を通じて測定した。測定された死んだ細胞と生存可能な細胞との数に基づいて、Aβにより誘導された神経細胞の細胞死程度を計算した。細胞死は、全体の細胞数に対する死んだ細胞の割合で計算した。
【0148】
図10は、間葉幹細胞の培養時に分泌される蛋白質と、Aβ42処理された神経細胞とを培養する時、百分率で表示した神経細胞死を表した図面である。図10において、Cortexは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養したものであり、Cortex+Aβは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養したものであり、Cortex+Aβ+MSCは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間共同培養したものであり、Cortex+MSCは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間共同培養した結果を表す。Aβは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42及び前記14種の蛋白質それぞれを前記した濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で24時間培養したものである(図10において、p<0.03,p<0.01は、t−test結果、誤差範囲がそれぞれ3%及び1%未満であるということを表す)。
【0149】
図10に示したように、14個の蛋白質それぞれは、Aβ42による神経細胞の細胞死を抑制した。細胞死の抑制程度は、Cortex+Aβ+MSC、ガレクチン3、WISP1及びMFRPの順に高かった。これは、臍帯血由来の幹細胞の共同培養、すなわち、14個の蛋白質の組み合わせで最も強い抑制効果があるということを暗示する。
【0150】
また、14個の蛋白質が神経細胞の成熟に及ぼす影響を調べるために、培養された神経細胞の神経突起の長さを測定した。培養条件は、図10に示したように培養した。神経突起の長さ測定は、100個の細胞を各培養群当たりランダムに選択し、i−solutionソフトウェア(iMTechnology社製)を利用して神経突起の長さを測定した。
【0151】
図11は、間葉幹細胞の培養時に分泌される蛋白質と、Aβ42処理された神経細胞とを培養する時、神経細胞の神経突起の長さを測定した結果である。図11において、培養群は、図10に示した通りであり、 神経突起の長さは、平均長を表す。図11に示したように、14個の蛋白質それぞれは、単独または組み合わせてAβ42処理された神経細胞に比べて神経突起の長さを顕著に増加させた。
【0152】
実施例10:間葉幹細胞から分泌されて、ミクログリア細胞でネプリリシンの発現を誘導するサイトカインの同定
本実施例では、実施例4に説明されたような共同培養システム100を使用した。下部チャンバー40にミクログリア細胞、BV2細胞を培養し、上部チャンバー10には、臍帯血由来の間葉幹細胞(UCB−MSC)を培養した。BV2細胞は、培養されたマウスミクログリア細胞をv−raf/v−myc組み替えレトロウイルスで感染させて不滅化されたものであって、活性化されたミクログリア細胞の特性を発現する。共同培養は、下部チャンバー40で5%のFBS含有DMEM培地でBV2細胞を培養した後、5%のFBS含有α−MEM培地で培養された臍帯血由来の間葉幹細胞を上部チャンバー10に添加し、培地を無血清DMEM培地に交換した。無血清DMEM培地で24時間共同培養した。その後、上部チャンバー10のMSCを回収して、トリゾール試薬を使用して総RNAを得て、得られた総RNAをテンプレートにしてRT−PCRを行った。使われたプライマーは、IL−4(配列番号22及び23)、IL−6(配列番号24及び25)、IL−8(配列番号26及び27)及びMCP−1(monocyte chemoattractant protein−1)(配列番号28及び29)遺伝子を特異的に増幅させるプライマーを使用した。PCR対照群として、配列番号17及び18のプライマーを使用してβ−アクチンを増幅した。対照群としては、BV2細胞と共同培養されていないものを除いては、同じ条件で培養されたUCB−MSCを使用した。
【0153】
図12は、ミクログリア細胞とUCB−MSCとを共同培養した後、UCB−MSCから分離された総RNAをテンプレートにしてRT−PCRした産物を示す図面である。図12に示したように、ミクログリア細胞とUCB−MSCとを共同培養する場合、UCB−MSCでIL−4,IL−6,IL−8及びMCP−1の発現が増加した。
【0154】
IL−4,IL−6,IL−8及びMCP−1それぞれの存在下で、ミクログリア細胞、BV2細胞、神経細胞及びSH−SY5Y細胞(ATCC社製)を培養し、BV2細胞及びSH−SY5Y細胞を回収した。回収された細胞を溶解し、細胞溶解物から蛋白質をサイズ別に分離した後、抗NEP抗体を使用してウェスタンブロッティングした。その結果、IL−4の存在下でBV2細胞及びSHY−5Y細胞を培養する場合、IL−4の不在下で培養する場合に比べて、NEPの発現が経時的に増加した。SH−SY5Y細胞は、SK−N−SHから由来したトリスクローンされたニューロブラストーマである。SH−SY5Y細胞は、神経細胞を表す。
【0155】
図13は、IL−4の存在下で神経細胞及びミクログリア細胞を培養する場合、NEPの発現が増加することを表すウェスタンブロッティング結果を示す図面である。図13のAは、ミクログリア細胞であるBV2細胞を、10ng/ml IL−4を含むDMEM培地で24時間培養した結果である。図13のBは、神経細胞であるSH−SY5Y細胞を、10ng/ml IL−4を含むα−MEM培地で24時間培養した結果である。
【0156】
実施例11:アルツハイマー病の形質転換マウスの海馬体及び皮質内の臍帯血由来の間葉幹細胞の投与によるアミロイド蛋白質プラークの減少(チオフラビンS染色法及び免疫ブロッティング)
治療効果の増進のために、アルツハイマー病の形質転換マウス10ヶ月齢にPBS、PBS中の1×104の臍帯血間葉幹細胞、及びPBS中のIL−4(Peprotech社製)200μg/kgそれぞれを、定位フレーム(stereotactic frame)を利用して海馬体に投与した。10日が経過してからマウスを犠牲にした後、脳組織を海馬体と皮質とから得た。得た脳組織を切片に作り、チオ硫酸塩(Sigma社製)の染色を通じてアミロイドベータ蛋白質の沈着程度を染色した結果を確認した。プラークを確認するために、50%のエタノールに溶かしたSigma社製のチオフラビン溶液に組織を5分間反応させた。反応後、組織の切片を50%のエタノール及び水で5分間洗浄した。この組織の切片を蛍光顕微鏡下で観察して、組織内のアミロイド蛋白質プラークを確認した。
【0157】
図14は、海馬体と皮質とを含む脳組織で、アミロイドベータ蛋白質の沈着を、Thio−S染色法を利用して確認結果を示す図面である。図14に示したように、臍帯血間葉幹細胞の投与群とIL−4投与群とで、アミロイドベータ蛋白質の沈着が顕著に減少するということが分かった。図14において、PBS、MSC及びIL−4は、それぞれPBS、臍帯血由来の間葉幹細胞及びインターロイキン−4を投与した群を表す。
【0158】
図15は、図14の染色写真でアミロイドの沈着の総面積を示す図面である。沈着面積は、Metamorphoソフトウェア(Molecular devices社製)を利用して測定した。図15に示したように、MSC及びIL−4投与群で対照群に比べてアミロイド沈着が顕著に減少した。
【0159】
図16は、実験に使われたマウスの脳で生成されたアミロイドベータ蛋白質の変化を示す免疫ブロッティング結果を表す。図16の結果は、次のような過程により得られた。まず、 マウスの海馬体及び皮質を含む脳組織を得て、超音波破砕器(Branson社製)を利用して蛋白質抽出物を得た。次いで、前記抽出物に対して電気泳動を実施して、蛋白質をサイズによって分離した。分離された蛋白質を、電位差を利用してニトロセルロース膜に移した後、Aβ42を特異的に検出できる抗体を使用して免疫ブロッティングを行った。染色は、クマシーブルーを使用して染色した。図16に示したように、Aβ42蛋白質は、PBS投与群に比べて臍帯血間葉幹細胞の投与群とIL−4投与群とでその量が顕著に減少するということが分かった。図16において、Litterは、littermateを表すものであって、形質転換マウスの正常同腹子を表し、APP/PS1 miceは、アルツハイマー病の形質転換マウスを表す。また、PBS、MSC及びIL−4は、それぞれPBS、MSC及びIL−4を投与した群を表す。
【0160】
実施例12:臍帯血間葉幹細胞及びIL−4がネプリリシンの発現に及ぼす影響
(1)正常及びアルツハイマー病の形質転換動物の脳組織でのネプリリシン蛋白質の発現
それぞれ6,9,12及び18ヶ月間飼育された正常マウスと、アルツハイマー病の形質転換マウスとの脳組織を得た後、実施例11と同じ方法で蛋白質抽出物を得て電気泳動で分離した。分離された蛋白質をニトロセルロール膜に移した後、抗ネプリリシン抗体(R&D systems社製)と反応させてNEP蛋白質の発現如何を分析した。
【0161】
図17は、正常及びアルツハイマー病の形質転換マウスで、海馬体と皮質とを含む脳組織でNEPの発現程度を示す図面である。図17に示したように、ネプリリシンの発現は、アルツハイマー病の形質転換マウスの脳で減少した。図17において、Litter及びAPP/PS1 miceは、図16に示したものと同一である。また、レーン6,9,12及び18は、それぞれ6,9,12及び18ヶ月(M:month)を飼育した群を表す。
【0162】
図18は、 Quantity One(Bio−RAD社製)ソフトウェアを利用して測定した図17のNEPバンドの強度を示す図面である。 バンドの強度は、 、相対的なバンド強度を表す。図18に示したように、ネプリリシンの発現は、正常マウスに比べて、アルツハイマー病の形質転換マウスの脳で減少した。
【0163】
(2)臍帯血間葉幹細胞及びIL−4がネプリリシンの発現に及ぼす影響
アルツハイマー病の形質転換マウス10ヶ月齢に、PBS、PBS中の1×104の臍帯血間葉幹細胞、及びPBS中のIL−4200μg/kg体重を海馬体に投与し、10日が経過してからマウスを犠牲にした後、海馬体及び皮質を含む脳組織を得た。得られた各脳組織で蛋白質抽出物を得た後、電気泳動して免疫ブロッティングによりネプリリシンの発現量を分析した。
【0164】
図19は、間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスで、海馬体及び皮質を含む脳組織でNEPの発現程度を示す図面である。染色は、クマシーブルーを使用して染色した(下段)。図19に示したように、(1)で観察した結果のように、PBS投与群のネプリリシンの発現は、正常的なマウスに比べて減少したが、臍帯血間葉幹細胞とIL−4投与群では、その発現量が正常マウスに比べて類似して発現された。
【0165】
実施例13:臍帯血間葉幹細胞及びIL−4がミクログリア細胞におけるネプリリシンに及ぼす影響
実施例8において、間葉幹細胞、神経細胞及びミクログリア細胞をそれぞれ共同培養する場合、神経細胞及びミクログリア細胞でそれぞれネプリリシンが過発現されることを確認した。
本実施例では、動物モデルでかかる効果を確認した。実施例12に記載のPBS投与群、臍帯血間葉幹細胞投与群及びIL−4投与群の脳の海馬体組織を実施例8に記載の図8のBの染色過程と同一に染色した。染色は、抗NEP抗体及びミクログリア細胞のマーカーである抗CD40抗体(Santacruz Biotechnology社製)に重複染色して統合した。抗NEP抗体の染色の場合、2次抗体及びそれに結合する試薬は、実施例8に記載された通りであり、抗CD40抗体の染色の場合、2次抗体及びそれに結合する試薬は、実施例8と同じものを使用した。
【0166】
図20は、臍帯血間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスのミクログリア細胞で、NEPの発現を示す図面である。図20に示したように、動物モデルに臍帯血間葉幹細胞及びIL−4を投与する場合、ミクログリア細胞でネプリリシンの過発現が誘導された。
【0167】
本発明は、例示的な具体例を参照して説明されたが、形態及び細部事項における多様な変化が特許請求の範囲に定義されたような本発明の精神及び範囲から逸脱せずに行われるということは当業者に理解されるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、間葉幹細胞、間葉幹細胞の培養液、間葉幹細胞の培養液に含まれた蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系刺激因子を含む、神経突起(neurites)の損傷に関連した、アルツハイマー病の予防または治療に関する。
また、本発明は、間葉幹細胞、間葉幹細胞の培養液、間葉幹細胞の培養液に含まれた蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系刺激因子を含む神経突起の損傷と関連した疾病の予防または治療に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病は、アミロイドベータ蛋白質の破壊的蓄積により脳細胞を破壊する脳疾患であって、主に老化と共に進み、言語障害及び認知障害をもたらす深刻な疾病である。アルツハイマー病は、段階別に進み、次第に記憶力、推理、判断力、言語、さらに非常に単純な業務能力までも破壊する。結局、感情の調節の喪失は、人間の生の破壊をもたらす。まだアルツハイマー病を根本的に治療する方法はなく、症状を緩和する薬物のみが臨床に使われている。しかし、患者にそれらの薬物の効果は制限的である。アルツハイマー病患者の半分程度が初期薬物治療から治癒されない。たとえ前記初期薬物治療が成功したとしても、症状の緩い緩和のみを示すだけである。したがって、 医療需要を満たす新たな治療法の開発が要求されており、アルツハイマー病の治療法の開発による経済的かつ社会的な効果は非常に大きいであろう。アルツハイマー病は、病気が進みつつ、脳の皮質と海馬体(hippocampus)とが消失すれば、再生が不可能であり、治療方法がほぼないものと知られている。
【0003】
アルツハイマー病についての研究は、二つの蛋白質、すなわち、タウ(tau)とアミロイド前駆体蛋白質(Amyloid Precursor Protein:APP)に焦点が合わせられてきた(Stuart M.及びMark P.M、Nature Medicine、第12巻 第4号、第392−393ページ、2006)。それらは、アルツハイマー病にかかった患者の脳で非正常的な形態に蓄積される。タウは、過剰燐酸化され、APPは、セクレターゼにより切断されてアミロイド・ベータ(Aβ)を生成し、アミロイド・ベータは、脳内にアミロイドプラークとして凝集される。プラークが蓄積された脳領域は、典型的にシナプスの数が減少し、神経突起が損傷される。これは、アミロイド・ベータがシナプスと神経突起(neurite)とを損傷させるということを暗示する(Mark P.M、Nature、第430号、第631−639ページ、2004)。
【0004】
アルツハイマー病の治療のために、病因メカニズムについての研究が活発に進められた。特に、アミロイドベータ蛋白質を生成するベータ・セクレターゼ及び/またはガンマ・セクレターゼの阻害剤を開発する研究、蓄積されたアミロイドベータ蛋白質を分解する蛋白質分解酵素についての研究、及びアセチルコリンの分解を担当するアセチルコリンエステラーゼの阻害剤を開発する研究が強力に進められている。また、アルツハイマー病が老化関連の慢性炎症性疾患であるため、炎症抑制剤を利用したアルツハイマー病の治療についての研究も進められている。
【0005】
脳内のアミロイド・ベータの量は、その生成反応と除去反応との均衡により決定される。したがって、 除去作用が減少すれば、アミロイド・ベータの量が増加する。アミロイド・ベータを分解する活性を有する酵素であるネプリリシン(NEP)の欠乏は、細胞外のアミロイドの蓄積を加速化させる(Kanae lijima−Andoら、J.Biol.Chem.,第283号、第27巻、第19066−19076ページ、2008)。
【0006】
神経細胞の細胞体から突出した神経突起の異常は、神経疾患と関連する。 前記神経疾患の例は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん(epilepsy)、多発性硬化症(multiple sclerosis)及び躁病(mania)である。特に、てんかんの場合、人間の脳の海馬体の神経細胞死と神経膠症(gliosis)とによって生じる。細胞死による神経突起の切断が起こる。多発性硬化症は、脳に生じる慢性自家免疫疾患であって、やはりNogo Aという神経突起の過成長の阻害蛋白質の異常により発病する。うつ病(depression)は、M6aという神経突起の過成長関連の蛋白質の異常により発病する脳疾患である。躁病の症状の緩和が、ラットで神経突起の過成長を促進する信号伝達経路を活性化した時、報告された。
【0007】
間葉幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)は、骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、及び筋肉細胞のような中胚葉性細胞(mesodermal lineage cells)、または神経細胞のような外胚葉性細胞(ectodermal lineage cells)に分化する能力を有する多分化能幹細胞(multipotent stem cell)である。最近、間葉幹細胞が脳で神経膠細胞に分化する潜在力を有しており、間葉幹細胞を神経細胞に分化させる試みがあった(韓国公開特許第10−2004−0016785号公報、2004.2.25)。
【0008】
間葉幹細胞のうち、骨髄由来の間葉幹細胞は、患者から得られる。前記骨髄由来の間葉幹細胞が自家移植される場合、免疫拒否反応 がないので、患者に臨床的に使用される。しかし、骨髄由来の間葉幹細胞の採取は、色々な段階の施術が要求されるため、骨髄寄贈は時間消費的であり、精神的及び肉体的に苦痛であり、高価である。しかし、臍帯血由来の間葉幹細胞は、臍帯から簡単に得られ、臍帯血の保管産業が活発に開発されており、供与者が臍帯血インフラストラクチャ(infrastructure)を通じて容易に発見されるため、間葉幹細胞が容易に得られる。 さらに、他家由来の臍帯血から得た間葉幹細胞の場合にも、移植後に免疫反応を起こさず、免疫学的安定性を有する。
【0009】
本発明の明細書に引用される先行文献の内容は、いずれも本明細書に参照により導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2004−0016785号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Stuart M.及びMark P.M、Nature Medicine、第12巻 第4号、第392−393ページ、2006
【非特許文献2】Mark P.M、Nature、第430号、第631−639ページ、2004
【非特許文献3】Kanae lijima−Andoら、J.Biol.Chem.,第283号、第27巻、第19066−19076ページ、2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来方法によれば、幹細胞を利用した神経疾患の治療のためには、幹細胞を神経細胞に分化させるステップが先決されるか、または幹細胞を神経細胞に分化させる物質を幹細胞と共に投与するステップが必要であった。
【0013】
本発明の一つ以上の具体例は、幹細胞を神経細胞に分化させるステップを含まない神経疾患の細胞治療方法を含む。
【0014】
本発明の一つ以上の具体例は、 幹細胞を含む神経疾患の予防及び治療のための組成物を含む。
【0015】
本発明の一つ以上の具体例は、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞及びミクログリア細胞(microglial cells)内のネプリリシンの発現誘導方法を含む。本発明の一つ以上の具体例は、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞及びミクログリア細胞(microglial cells)内のネプリリシンの発現誘導のためのキットを含む
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、間葉幹細胞、その培養液または前記培養液中に含まれる蛋白質をアミロイドベータが処理されたまたは処理されない神経細胞またはミクログリア細胞と共同培養する場合、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化及び神経突起の損傷が抑制され、神経細胞またはミクログリア細胞内のネプリリシンの発現が誘導されること発見した。
【発明の効果】
【0017】
間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を神経細胞またはミクログリア細胞と共同培養すれば、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性が抑制され、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化が抑制され、神経突起の損傷が抑制され、神経細胞またはミクログリア細胞内にネプリリシンの発現が誘導される。
【0018】
本発明の間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を含む組成物は、神経疾患の予防または治療用の効果的な細胞治療組成物として使われる。
【0019】
また、 間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を使用して、アミロイドベータにより誘発された神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞内のネプリリシンの発現誘導方法及びこのためのキットを提供する。
本発明の前記した特徴、他の特徴及び利点は、添付された図面を参照して、本発明の具体例として詳細に記述することで、さらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】アミロイド・ベータと24時間処理または処理しない生きている神経細胞の光学顕微鏡イメージを表す。
【図2】アミロイド・ベータが処理された神経細胞をヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養するための共同培養システムを示す図面である。
【図3】アミロイド・ベータ(Aβ42)による神経細胞死滅に対するヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と神経細胞の共同培養の効果を表す蛍光染色の結果を表す。
【図4】Aβ42による神経細胞死滅に対するヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と神経細胞の共同培養の効果を説明する、死滅神経細胞の百分率で示したグラフである。
【図5】Aβ42による神経細胞死滅に対するヒト骨髄由来の間葉幹細胞と神経細胞 の共同培養の効果を表す蛍光染色の結果を表す。
【図6】抗phosphor−tau抗体を利用して染色された神経細胞を表す。
【図7】Aβ42処理され、間葉幹細胞と共同培養され、 免疫蛍光染色を使用して染色された神経細胞を表す。
【図8】Aβ42処理され 、骨髄由来の間葉幹細胞または臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養された神経細胞中の、ネプリリシンの発現を表す。
【図9】Aβ42処理された神経細胞及びミクログリア細胞と間葉幹細胞とを共同培養された場合、 神経細胞及びミクログリア細胞中のネプリリシンの発現を表す。
【図10】Aβ42処理され、間葉幹細胞から分泌される蛋白質と共同培養された、死んだ神経細胞の百分率 を示すグラフである。
【図11】Aβ42及び間葉幹細胞から分泌された蛋白質と神経細胞の神経突起の長さを 示すグラフである。
【図12】ミクログリア細胞とUCB−MSCとを共同培養した後、UCB−MSCから分離された総RNAをテンプレートとして使用してRT−PCRした結果を表す。
【図13】IL−4の存在下で神経細胞及びミクログリア細胞を培養する場合、NEP発現が増加することを示すウェスタンブロッティング結果を表す。
【図14】Thio−S染色法を利用して染色された海馬体と皮質(cerebral cortex)とを含む脳組織中のアミロイドベータ蛋白質の沈着物 (plaque)のイメージを表す。
【図15】図14のイメージ中のアミロイド沈着物の総面積を示すグラフである。
【図16】実験に使われたマウスの脳で生成されたアミロイドベータ蛋白質の変化を示す免疫ブロッティング結果を表す。
【図17】正常及びアルツハイマー病を有するように形質転換されたマウスで、海馬体と皮質とを含む脳組織でNEP発現程度を示す図面である。
【図18】Quantity One(Bio−RAD)ソフトウェアを利用して測定した図17のNEPバンドの強度を示すグラフである。
【図19】間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスで、海馬体及び皮質を含む脳組織でNEP発現程度を示す図面である。
【図20】臍帯血間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスのミクログリア細胞でNEP発現を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の具体例によれば、間葉幹細胞を神経細胞に分化させず、アミロイド・ベータにより損傷した神経細胞と共同培養すれば、間葉幹細胞と神経細胞との直接的な接触なしにアミロイド・ベータにより誘発される神経細胞の損傷が抑制または回復される。また、本発明の発明者らは、間葉幹細胞の培養液や前記培養液中に含まれた特定の蛋白質を神経細胞と培養しても、アミロイド・ベータによる神経細胞の損傷が抑制または回復されるということを発見した。
【0022】
アミロイドベータ42(Aβ42)10μMを24時間神経細胞に処理(図1及び図3のCt+Aβ)した場合と、処理していない細胞(図3のCt)の場合とを比較する時、アミロイドベータを処理した場合、ほとんどの神経細胞が細胞死した。しかし、このように損傷した神経細胞をUCB(Umbilical Cord Blood)−由来間葉幹細胞と共同培養すれば、神経細胞の死滅が阻害し、神経細胞の成熟が増加した(図3のCt+Aβ+MSC及び図4)。前記のようなUCB−間葉幹細胞のアミロイド・ベータによる神経細胞の死滅抑制効果は、骨髄由来の間葉幹細胞でも観察される(図5の皮質/Aβ/BM−MSC)。Aβ42存在下で大脳皮質由来の神経細胞と間葉幹細胞とを24時間同じ培地で共同培養しても、図3のCt+Aβ+MSCに示したような結果が得られた。これは、神経細胞をMSCと共同培養する場合、Aβ42により損傷した神経細胞を復帰させ、Aβ42により神経細胞が予防できるということを表す。
【0023】
また、 Aβ42により急激に燐酸化されるタウ蛋白質の燐酸化が、タウ蛋白質・ヒト臍帯血間葉幹細胞の共同培養により燐酸化が抑制される(図6)。
【0024】
神経細胞の標識であるチューブリンβIII及びMAP2に対する抗体を使用して 神経細胞を観察した結果、Aβ42を処理した神経細胞では毒性により、神経突起が損傷して切断され、神経細胞形態が凝縮された。しかし、前記神経細胞と臍帯血由来の間葉幹細胞とを共同培養すれば、神経細胞中の神経突起が維持され、神経細胞の分化成熟が促進される(図7)。
【0025】
Aβ42を分解して除去する蛋白質であると知られたネプリリシン(NEP)の発現を観察した結果、NEPの発現は、Aβ42で処理された神経細胞では減少した。しかし、前記神経細胞を臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養すれば、NEPの発現が蛋白質とmRNAとのレベルで増加する(図8のA)。図8のBは、抗NEP抗体を利用して染色された神経細胞を表す。前記神経細胞にAβ42を処理すれば、赤く染色された部分が顕著に減少して、NEPの発現が神経細胞で減ることを表す。しかし、神経細胞と間葉幹細胞とを共同培養すれば、NEPの発現が増加した。かかる実験結果は、臍帯血由来の間葉幹細胞だけでなく、骨髄由来の間葉幹細胞でも 観察された(図8のC)。したがって、Aβ42で処理または処理されていない神経細胞を間葉幹細胞と共同培養する場合、前記神経細胞でNEPの発現は、mRNAレベルだけでなく、蛋白質レベルでも増加した。前記間葉幹細胞は、臍帯血由来の間葉幹細胞及び骨髄由来の間葉幹細胞を含む。
【0026】
また、臍帯血由来の間葉幹細胞が神経細胞(neurons)だけでなく、脳の大食細胞(macrophage)と呼ばれ、脳に蓄積された毒性物質、例えば、アルツハイマー病のAβを除去するものと知られたミクログリア細胞(microglial cells)でも、NEPの発現を誘導することを確認した(図9)。
【0027】
間葉幹細胞と神経細胞とを直接的な接触なしに共同培養することで、前記効果が表れたので、間葉幹細胞で分泌される物質により前記効果が表れたものと判断される。間葉幹細胞を単独に培養する場合に発現されないか、またはほぼ発現されないが、神経細胞と間葉幹細胞とを共同培養する場合、間葉幹細胞で発現が増加した分泌された蛋白質を分析した。その結果、総14個の蛋白質がAβ42により惹起された毒性の抑制と神経細胞分化成熟とに関与していることを確認した。14個の蛋白質は、アクチビンA、PF4(platelet factor 4)、デコリン、ガレクチン3、GDF15(growth differentiation factor 15)、グリピカン3、MFRP(membrane−type frizzled−related protein)、ICAM5(intercellular adhesion molecule 5)、IGFBP7(insulin−like growht factor binding protein 7)、PDGF−AA(platelet−derived growth factor−AA)、SPARCL1(secreted protein acidic and rich in cysteine)、トロンボスポンジン1、WISP1(wnt−1 induced secreted protein 1)及びプログラニュリンである。間葉幹細胞の代わりに、それらの蛋白質をそれぞれ神経細胞にAβ42と共に処理した結果、神経細胞の細胞死が顕著に減少し、Aβ42のみを処理した神経細胞に比べて、神経突起の長さが顕著に増加した(図10及び図11)。かかる意味において、前記14種の蛋白質は、さらに詳細に説明される 。
【0028】
アクチビンAは、インヒビンベータA(インヒビンβA:INHBA)とも知られている蛋白質のホモダイマーである。人間において、INHBAは、INHBA遺伝子によりコーディングされるものと知られる。INHBAはNCBI Accession No.:NP_002183(配列番号1)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0029】
血小板因子4(platelet factor 4:PF4)は、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド4(C-X-C motif ligand 4: CXCL4)とも知られている、CXCケモカインファミリに属する小さいサイトカインである。人間PF4遺伝子は、染色体4番に位置する。PF4はNCBI Accession No.:NP_002610(配列番号2)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0030】
デコリンは、平均分子量が約90ないし1約40kDaのプロテオグリカンである。デコリンは、小さいロイシンリッチプロテオグリカン(small leucine-rich proteoglycan:SLRP)ファミリに属し、コンドロイチン硫酸(chondrointin sulfate: CS)またはデルマタン硫酸(dermatan sulfate: DS)から構成されたグリコースアミノグリカン(glycosaminoglycan: GAG)を有するロイシン反復(leucine repeats)を含む蛋白質コアを含む。デコリンはNCBI Accession No.:NP_001911(配列番号3)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0031】
ガレクチン3は、LGAL3(lectin,galactoside−binding,soluble 3)とも知られており、ベータ・ガラクトシドに結合するレクチンの一種である。ガレクチン3は、例えば、NCBI Accession No.:NP_919308(配列番号4)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0032】
成長分化因子15(growth differentiation factor15:GDF15)は、マクロファージ阻害サイトカイン1(macrophage inhibitory cytokine 1: MIC1)とも知られている、傷組織及び疾病過程で炎症経路(inflammatory pathway)及び細胞死経路を調節する役割を行う形質転換成長因子ベータ(transforming growth factor beta)スーパーファミリに属する蛋白質である。GDF15は、例えば、NCBI Accession No.:NP_004855(配列番号5)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0033】
グリピカン3は、グリピカンファミリに属する蛋白質であり、GPC3とも知られている。グリピカン3は、例えば、NCBI Accession No.:NP_004475(配列番号6)のアミノ酸配列を有するものでありうる。グリピカンは、へパラン硫酸プロテオグリカン(heparin sulfate proteoglycan)のファミリであり、グリコシルホスファチジルイノシトール(glycosylphosphatidylinositol: GPI)に共有結合を通じて細胞の表面に付着される。
【0034】
膜フリズル関連蛋白質(membrane frizzled−related protein:MFRP)は、例えば、NCBI Accession No.:NP_113621(配列番号7)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0035】
細胞間付着分子5(intercellular adhesion molecule 5:ICAM5)は、テレンセファリンとも知られたICAMファミリの一員である。ICAMは、タイプI経皮糖蛋白質(type 1 transmembrane glycoprotein)であり、2ないし9個の免疫グロブリン類似C2タイプドメイン(immunoglobulin pseudo C2 type domains)を含み、白血球付着LFA−1(lymphocyte function-associated antigen-1)蛋白質に結合する。ICAM5は、例えば、NCBI Accession No.:NP_003250(配列番号8)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0036】
インシュリン類似成長因子結合蛋白質7(insulin−like growth factor binding protein 7:IGFBP7)は、IGF(insulin-like growth factor)に特異的に結合するIGFBPファミリの一員である。IGFBP7は、IGFBP−rp1(IGF−binding protein−related protein1)とも知られている。IGFBP7は、例えば、NCBI Accession No.:NP_001544(配列番号9)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0037】
血小板由来成長因子AA(platelet−derived growth factor AA:PDGF−AA)は、PDGFの一員である。PDGF−AAは、二つのPDGFAとも知られているPDGFアルファポリペプチドを含むホモダイマー糖蛋白質である。PDGFは、細胞成長及び分裂を調節する蛋白質である。PDGFは、また、血管の形成に関与する。PDGFAは、例えば、NCBI Accession No.:XP_001126441(配列番号10)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0038】
分泌された酸性システインリッチ蛋白質類似蛋白質1(secreted protein acidic and rich in cysteines−like1:SPARCL1)は、例えば、NCBI Accession No.:NP_004675(配列番号11)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0039】
トロンボスポンジン1(thrombospondin 1: TSP1)は、ジスルファイド結合により連結されたホモトリマー蛋白質である。トロンボスポンジン1は、細胞と細胞、細胞とマトリックスとの相互作用を媒介する付着性の糖蛋白質である。トロンボスポンジン1は、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ラミニン及びタイプVコラーゲンに結合しうる。トロンボスポンジン1は、例えば、NCBI Accession No.:NP_003237(配列番号12)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0040】
WNT1誘導性信号伝達蛋白質1(WNT1 inducible signaling pathway protein 1:WISP1)は、CCN4とも知られており、WISP蛋白質サブファミリの一員であり、結合組織成長因子(connective tissue growth factor:CTGF)ファミリに属する。WNT1は、多様な発生過程を媒介するシステインリッチ、グリコシル化された信号蛋白質の一員である。CTGFファミリの構成員は、4個の保存されたシステインリッチドメイン:IGF結合ドメイン、vWFタイプCモジュール、トロンボスポンジンドメイン及びC−末端システインノット類似(knot−like)ドメインにより特徴付けられる。WISP1は、例えば、NCBI Accession No.:NP_003873(配列番号13)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0041】
プログラニュリン(PGN)は、グラニュリンの前駆体である。プログラニュリンは、高度に保存された12−システイングラニュリン/エピテリンモチーフの7.5反復(repeats)を有する単一の前駆体蛋白質であり、グラニュリン(granulin: GRN)は、前記プログラニュリンからカットされて分泌された、グリコシル化されたペプチドのファミリである。プログラニュリンは、プロエピテリン及びPC細胞由来成長因子ともいう。プログラニュリンは、例えば、NCBI Accession No.:NP_001012497(配列番号14)のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0042】
また、インターロイキン−4(IL−4)の存在下で、ミクログリア細胞及び神経細胞をそれぞれ培養する場合、ミクログリア細胞及び神経細胞でそれぞれNEPの発現が増加することを確認した。また、アルツハイマー病を有するマウスにUCB−MSCまたはIL−4を投与する場合、アミロイド蛋白質プラークが減少することを確認した。また、アルツハイマー病を有するマウスにUCB−MSCまたはIL−4を投与する場合、海馬体及び/または皮質を含む脳組織でNEPの発現が増加することを確認した。また、アルツハイマー病を有したマウスにUCB−MSCまたはIL−4を投与する場合、脳組織のミクログリア細胞でNEPの発現が増加することを確認した。
【0043】
インターロイキン-4(IL−4)は、ナイーブヘルパーT細胞(Th0細胞)のTh2細胞への分化を誘導するサイトカインである。IL−4により活性化される場合、Th2細胞は、さらにIL−4を生産する。IL−4は、NCBI Accession No.:NP_000580(配列番号30)またはNP_067258のアミノ酸配列を有するものでありうる。
【0044】
前記14個の蛋白質は、人間由来だけでなく、他の哺乳動物由来の蛋白質も含む。例えば、齧歯類を含む。前記齧歯類には、マウスまたはラットが含まれる。
【0045】
最近、幹細胞を利用した組織再生の薬についての研究と共に、アルツハイマー病のような退行性脳疾患の治療の可能性が提起されたが、現在の利用可能な幹細胞の技術は、アルツハイマー病のように広範囲の脳記憶喪失に適用するのには十分ではない。しかし、 本発明者らは間葉幹細胞がアミロイドベータによる神経細胞毒性を減少させ、脳中にある神経幹細胞の分化及び増殖を促進させることを発見したしたがって、アルツハイマー病及びその他の神経疾患の治療用細胞組成物(cellular preparation)の開発に希望を持たせた。また、間葉幹細胞が分泌する複数の蛋白質がアルツハイマー病のような神経疾患の治療効果を有しており、前記疾患の予防及び治療において可能性を高めることを発見した。
【0046】
本発明は、間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中に含まれた蛋白質及び/または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を含む神経疾患の予防及び治療のための医薬組成物を提供する。前記神経疾患は、神経突起の損傷により引き起こされる神経疾患でありうる。前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症、躁病及びそれらの組み合わせありうる。
【0047】
神経心理検査を通じて軽度認知障害(mild cognitive impairment)を表す痴呆前段階症状(pre-dementia syndrome) 経心理検査を通じて診断される。1年間軽度認知障害を有した患者のdir12%がアルツハイマー病に進展するという報告がある。驚いたことに、軽度認知障害を有した患者がそのまま6年間放置されれば、約80%がアルツハイマー病に進展される。したがって、軽度認知障害と診断された患者に本発明の医薬組成物を投与すれば、アルツハイマー病への進行が防止されるか、遅延される。
【0048】
また、本発明は、間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を利用して、試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)でアミロイドベータによる神経細胞毒性の抑制、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化抑制、神経突起の損傷抑制及び神経細胞内のネプリリシンの発現誘導方法及びこのためのキットを提供する。前記キットは、神経細胞のの培養のために必要な成分をさらに含んでもよい。
【0049】
本発明の間葉幹細胞、その培養液、前記培養液中の蛋白質または前記蛋白質の発現を誘導する信号伝達体系の刺激因子を含む医薬組成物は、さらにアルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症、躁病などの予防または治療効果のある他の活性成分と共に投与できる。
【0050】
前記医薬組成物は、有効成分以外に薬学的に許容される添加剤をさらに含み、薬学的分野で通常の方法によって、患者の身体内の投与に適した単位投与型の製剤に剤形化させることができる。かかる目的のために、 注射剤または局所投与用製剤のような非経口投与(parenteral administration)製剤が使われる。例えば、必要に応じて、水あるいはその他の薬剤学的に許容できる溶媒を使用した無菌性溶液、または懸濁液剤の注射剤のような非経口投与のための剤形が使われる。単位投与剤形(unit dosage formulation)は、例えば、薬剤学的に許容される担体あるいは媒体、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビークル(vehicle)、防腐剤及び合剤を使用して製造される。
【0051】
前記製剤は、通常の方法によって非経口的に投与される。前記非経口投与は、局部的または全身的投与を含む。前記局部的投与は、直接的に病変またはその周辺に投与すること、例えば、病変である脳または脊髄、その周辺またはその反対側部位に直接投与するのでありうる。前記全身的投与は、脊髄液、静脈または動脈に投与することを含む。前記脊髄液は、脳脊髓液を含む。前記動脈は、病変に血液を供給する部位でありうる。また、前記投与は、例えば、Douglas Kondziolka,Pittsburgh,Neurology,vol.55,pp.565−569,2000に記載された方法によって行われる。すなわち、まず、対象の頭蓋骨を約直径1cmの孔を設けるように切開した後、HBSS(Hank′s balanced salt solution)と混合された間葉幹細胞懸濁液を 注入するこの時、細胞懸濁液の注入は、長針のついた注射器と、脳の内部に目的とする細胞溶液を正位置に挿入するための枠(stereotactic frame)とを利用して行われる。
【0052】
前記間葉幹細胞の1日投与量は、1×104ないし1×107細胞/kg体重、例えば、5×105ないし5×106細胞/kg体重でありうる。投与回数は、1回または数回に分けて投与できる。しかし、本発明の間葉幹細胞、例えば、臍帯血由来の間葉幹細胞の実際投与量は、疾患のタイプ、疾患の重症度、選択された投与経路、患者の体重、年齢及び性別などの色々な関連因子を考慮して 決定されるべきであるものと理解される。
【0053】
本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0054】
前記方法において、投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記疾患を予防または治療するための有効量を投与するものでありうる。かかる有効な量は、前記疾患の条件によって変わりうるということは当業者に自明である。
【0055】
前記方法に使われた前記医薬組成物は、前記した 前記組成物と同じである。前記方法において、前記医薬組成物に含まれた前記間葉幹細胞は、患者本人から採取されたもの(autologous cells)だけでなく、他人または他の医療用の動物由来の細胞(allogeneic cells)から採集される。細胞は、冷凍保存したものであってもよい。本発明の治療方法は、 人間に限定されない。通常、間葉幹細胞は、人間以外の哺乳動物においてもされる。
【0056】
前記方法において、前記神経疾患は、アミロイドベータ、タウ蛋白質の過燐酸化、ネプリリシンの過少発現及び神経突起の損傷からなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患でありうる。前記神経疾患はアルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病から構成された群から選択されるものでありうる。
【0057】
本明細書において、アミロイドベータ(Aβ)とは、アルツハイマー病を有した患者の脳に存在するアミロイドプラークの主要成分を意味する。前記アミロイドベータ(Aβ)は、膜通過糖蛋白質であるアミロイド前駆体蛋白質(APP)のC−末端から由来したアミノ酸を含むペプチドでありうる。前記Aβは、APPからβ−及びγ−セクレターゼの連続作用により生成される。 例えば、前記Aβは、39ないし43個、例えば、40ないし42個のアミノ酸を含む。前記Aβは人間アミロイドA4蛋白質イソフォーム前駆体(amyloid beta A4 protein isoform precursor: APP)のNCBI Accession No.:NP_000475(配列番号19)のアミノ酸配列の672−713残基(Aβ42)または672−711残基(Aβ40)を含む。前記アミロイドベータ(Aβ)は、哺乳動物由来のものでありうる。例えば、人間またはマウス由来のものでありうる。本明細書において、“タウ蛋白質”とは、中枢神経系の神経細胞で発見された微小管関連蛋白質(microtubule-associated protein: MAP)を表す。タウ蛋白質は、チューブリンと相互作用して微小管を安定化させ、微小管のチューブリンアセンブリを促進する。脳組織には、6個の相異なるタウイソフォームを含むものと知られている。タウ蛋白質の過燐酸化は、アルツハイマー病の発生と関連したものと知られている。タウ蛋白質は、高い溶解性を有する微小管関連蛋白質である。人間では、タウ蛋白質は、非神経細胞に比べて主に神経細胞に存在する。タウ蛋白質の機能のうち一つは、軸索微小管(axonal microtubule)の安定化を調節するものである。タウ蛋白質は、例えば、NCBI Accession No.:NP_005901(配列番号20)のアミノ酸配列を有する微小管関連蛋白質タウイソフォーム2でありうる。前記タウ蛋白質は、哺乳動物由来のものでありうる。例えば、人間またはマウス由来のものでありうる。
【0058】
本明細書において、ネプリリシンは、多くの小さい分泌されたペプチドを分解する亜鉛依存性のメタロプロテアーゼ酵素である。ネプリリシンはアミロイドベタが神経組織において非正常的にミスフォールディング及び凝集される場合、アルツハイマー病を引き起こすアミロイドベータペプチドを分解する。ネプリリシンは、例えば、NCBI Accession No.:NP_000893(配列番号21)のアミノ酸配列を有しうる。前記ネプリリシンは、哺乳動物由来のものでありうる。例えば、人間またはマウス由来のものでありうる。
【0059】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法を提供する。
【0060】
前記方法において、 神経細胞のような神経組織は、試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)培養される。前記試験管内培養は、当業界に知られた間葉幹細胞及び/または神経細胞の培養培地で行われる。 前記間葉幹細胞と神経細胞のような神経組織とが互いに直接的な接触があるか、またはない状態で培養するものでありうる。例えば、 前記間葉幹細胞と神経細胞のような神経組織とがポアを有する膜により隔離された状態で培養されるものでありうる。前記膜は、前記間葉幹細胞の培養液中の生理活性物質が透過でき、細胞は透過できないポアサイズ及び配置を有するものでありうる。前記生理活性物質は、例えば、蛋白質、糖及び核酸でありうる。 前記膜は、前記膜の上部には、前記間葉幹細胞を培養し、膜の下部には、前記神経細胞を培養して、重力により前記生理活性物質が膜を透過して下部に移動できるように配置される。
【0061】
前記生体内培養は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を個体に投与するステップをさらに含む。前記投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記プラークの量を減少させるための有効量を投与するものでありうる。かかる有効な量は、選択される疾患の条件によって当業者が容易に選択できる。前記個体は、哺乳動物を含む。前記哺乳動物は、人間、マウスまたはラットを含む。
【0062】
神経組織中のアミロイドプラークの前記減少は、間葉幹細胞及びその培養液の不在下で神経細胞のような神経組織を培養したものに比べて、神経組織内のアミロイドプラークの量を減少させるものでありうる。
【0063】
本明細書において、“アミロイドプラーク(amyloid plaque)”とは、アミロイドベータを含む不溶性繊維蛋白質凝集体でありうる。前記アミロイドプラークは、細胞内、細胞膜上に及び細胞間の空間に存在しうる。
【0064】
本明細書に使われた前記”神経組織(neural tissues)”は、中枢神経系、例えば、脳組織を含む。前記脳組織は、 大脳組織(cerebral tissues)と海馬体とを含む。前記大脳組織は、大脳皮質(cerebral cortex)を含む。前記神経組織は、神経細胞(neural cells)だけでなく、神経組織自体を含む。前記神経細胞は、神経細胞(neuronal cells)及び/またはミクログリア細胞を含む。前記神経組織を培養することは、試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)で神経細胞(neuronal cells)及び/またはミクログリア細胞のような神経細胞(neural cells)を培養することを含む。
【0065】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、 神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法を提供する。
【0066】
前記培養は、神経細胞内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。
【0067】
神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の前記減少は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養したものに比べて、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の量を減少させるものでありうる。
【0068】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養するステップを含む、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させる方法を提供する。
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現の前記増加は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養したものに比べて、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させるものでありうる。
【0069】
また、本発明は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経細胞の神経突起成長を増加させる方法を提供する。
【0070】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。前記神経細胞は、正常神経細胞または 損傷した、例えば、Aβにより誘導された損傷した、神経突起を有している神経細胞 でありうる。神経細胞の神経突起成長の前記増加は、間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、神経細胞の神経突起成長を増加させるものでありうる。
【0071】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0072】
前記方法において、投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記疾患を予防または治療するための有効量を投与するものでありうる。有効な量は、前記疾患の条件によって変わりうるということは当業者に自明である。
【0073】
前記方法に使われた前記医薬組成物は、前記した 説明した通りである。
【0074】
前記方法において、前記神経疾患は、アミロイドベータ、タウ蛋白質の過燐酸化、ネプリリシンの過少発現及び神経突起損傷からなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患でありうる。前記神経疾患は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病ありうる。
【0075】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経組織を培養するステップを含む、 神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法を提供する。
【0076】
前記方法において、神経細胞のような前記神経組織は、 試験管内(in vitro)または生体内(in vivo)で培養される。前記生体内培養は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上を個体に投与するステップをさらに含む。前記投与は、局部または全身投与でありうる。前記投与は、前記プラークの量を減少させるための有効量を投与するものでありうる。有効な量は、前記疾患の条件によって変わりうるということは当業者に自明である。例えば, アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つそれぞれは、約1ng/kg体重ないし約100mg/kg体重、例えば、約10ng/kg体重ないし約50mg/kg体重の量で投与される。 投与される形態は、水、培地、バッファまたは賦形剤のような添加剤をさらに含む。前記個体は、その神経組織からアミロイドプラークを減少させる必要がある任意の動物でありうる。前記動物は、哺乳動物を含む。前記哺乳動物は、人間、マウスまたはラットを含む。
【0077】
前記アミロイドプラークは、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、 その存在下で神経細胞を培養する場合に減少する。
【0078】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法を提供する。
【0079】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の前記減少は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、その存在下で神経細胞を培養する場合に減少する。
【0080】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養するステップを含む、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させる方法を提供する。
【0081】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養するものに比べて、その存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養する場合に増加する。
【0082】
また、本発明 は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養するステップを含む、神経細胞の神経突起成長を増加させる方法を提供する。
【0083】
前記培養は、神経組織内のアミロイドプラークを減少させる方法で説明した通りである。前記神経細胞は、正常神経細胞または損傷した神経突起、例えば、Aβにより誘導された損傷した神経突起を有している神経細胞でありうる。神経細胞の神経突起の前記成長は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらの発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上の不在下で神経細胞を培養するものに比べて、その存在下で神経細胞を培養する場合に増加する。
【0084】
本明細書で使われる“間葉幹細胞(mesenchymal stem cell: MSC)”は、哺乳動物、例えば、人間, 胚嚢(human embryonic yolk sac)、胎盤(placenta)、臍帯(umbilical cord)、臍帯血(umbilical cord blood)、皮膚(skin)、末梢血液(peripheral blod)、骨髄(bone marrow)、脂肪組織(adipose tissue)、筋肉(muscle)、肝臓(liver)、神経組織(neural tissue)、骨膜(periosteum)、胎児膜(fetal membrane)、滑液膜(synovial membrane)、滑液(synovial fluid)、羊膜(amniotic membrane)、半月状軟骨(meniscus)、前十字靭帯(anterior cruciate ligament)、関節軟骨細胞(articular chondrocytes)、乳歯(deciduous teeth)、血管周囲細胞(pericyte)、支柱骨(trabecular bone)、膝蓋骨下脂肪塊(infra patellar fat pad)、脾臓(speen)、胸腺(thymus)及びその他の間葉幹細胞を含む組織からなる群から選択された一つ以上から分離された間葉幹細胞 または前記分離された間葉幹細胞培養させて増殖された間葉幹細胞でありうる。
【0085】
本明細書で使われる“臍帯血(umbilical cord blood)”は、人間を含む哺乳動物で、胎盤と胎児とを連結する臍帯静脈から採取された血液を表す。本明細書で使われる“臍帯血由来の間葉幹細胞(umbilical cord blood-derived MSC)”は、哺乳動物、例えば、人間の臍帯血から分離された間葉幹細胞及び前記分離された臍帯血由来の間葉幹細胞を培養して増殖された間葉幹細胞を意味する。
【0086】
本明細書で使われた用語“治療(treating)”は、まだ疾患または障害 を保有していると診断されていないが、かかる傾向がある動物、例えば、人間を含む哺乳動物の疾病または障害が発生することの予防;疾患の進展の抑制;及び疾患の軽減を意味する。
【0087】
本明細書で取り立てて定義されていない用語は、本発明が属する技術分野で通常的に使われる意味を有する。
【0088】
臍帯血から間葉幹細胞を含む単核細胞を分離するためには、あらゆる公知の方法,例えば、 韓国登録特許第489248号に記載された方法が 使用される。例えば、フィコール・ハイパック密度勾配分離法(Ficoll-Hypaque density gradient method)が使用されるが、これに制限されない。具体的に、分娩後に胎盤が剥離される前に、臍静脈(umbilical cord vein)から採取した臍帯血をフィコール・ハイパック勾配で遠心分離して単核細胞を収得した。前記 単核細胞を数回洗浄して不純物を除去する。このように分離された単核細胞は、間葉幹細胞の分離及び培養に利用するか、または超低温冷凍させて長期間保管後に使用できる。
【0089】
任意の知られた方法が前記臍帯血から間葉幹細胞を分離・培養するために使われる(韓国公開特許第2003−0069115号公報及びPittinger MFら、Science、284:143−7,1999;及びLazarus HMら、Bone Marrow Transplant、16:557−64,1995)。
【0090】
まず、採取された臍帯血を、フィコール・ハイパック濃度勾配を利用して遠心分離することで、造血母細胞(hematopoietic stem cell)及び間葉幹細胞を含む単核細胞を分離した後、数回洗浄して異物を除去する。適切な密度で単核細胞を培養容器で培養する。次に、前記単核細胞を増殖させて単一層を形成する。前記単核細胞のうち、位相差顕微鏡で観察される形態が同質性であり、かつ紡錘状(spindle-shaped)の長い形態の細胞の集落(colony)形態に増殖する細胞が間葉幹細胞である。前記成長された細胞を反復的にサブ培養して、必要なほどの細胞数を得る。
【0091】
本発明の組成物に含まれる細胞は 公知の方法によって冷凍保管される (Camposら、Cryobiology 35:921−924,1995)。冷凍時に使われる培地は、10%のジメチルスルホキシド(DMSO), 及び10ないし20%のFBS(fetal bovine serum),ヒト末梢血液または臍帯血の血漿または血清のうち一つを含む。前記細胞は、培地1mLに約1×106ないし5×106個の細胞が存在するように懸濁できる。
【0092】
前記細胞懸濁液を低温冷凍用のガラスまたはプラスチック材質のアンプルに分配し、それを密封して、予め温度条件が整えられたプログラム冷凍器に入れる。 したがって、例えば、−1℃/分で冷凍速度を調節する冷凍プログラムを利用して解凍間の細胞の損傷を最小化させる。一旦アンプルの温度が−90℃以下に達すれば、液体窒素タンク中に移動させて−150℃以下に維持させる。
【0093】
前記細胞を解凍するために、前記アンプルを液体窒素保存タンクから速かに37℃水槽に移動させる。アンプル内に解凍された細胞は、滅菌状態下で培養培地が入っている培養容器に 速く移動させる。
【0094】
本発明において、間葉幹細胞の分離・培養に使用される培養培地は、10%ないし30%のFBS,ヒト末梢血液または臍帯血の血漿または血清を含む当業界によく知られた任意の一般的な細胞培養用の培地でありうる。例えば、前記培養培地は、DMEM(Dulbecco′s modified eagle medium)、MEM(minimum essential medium),α−MEM、McCoys 5A培地、イーグルス基本培地(eagle′s basal medium)、CMRL(Connaught Medical Research Laboratory)培地、Glasgow最小必須培地、Ham′s F−12培地、IMDM(Iscove′s modified Dulbecco′s medium)、Liebovitz′ L−15培地、RPMI(Roswell Park Memorial Institute)1640培地であり、例えば、DMEMでありうる。前記細胞は、前記培地1mL当たり約5×103ないし2×104個の細胞が存在するように 懸濁される。
【0095】
また、本発明の前記細胞培養用の培地は、 一つ以上の補助成分を さらに含む。前記補助成分は、胎児牛 血清 、馬 血清 または人間 血清;及び微生物の汚染を防止するためのペニシリンG、硫酸ストレプトマイシン(streptomycin sulfate)及びゲンタマイシン(gentamycin)のような抗生物質;アンホテリシンB(amphotericin B)及びナイスタチン(nystatin)のような抗真菌剤;及びそれらの混合物でありうる。
【0096】
臍帯血由来の間葉幹細胞は、組織や器官(organ)の移植で拒否反応を起こす最も重要な原因である組織適合抗原HLA−DR(class II)を発現しない(Le Blanc,KC,Exp Hematol,31:890−896,2003;及びTse WTら、Transplantation,75:389−397,2003)。移植後の免疫反応、例えば、移植された組織または器官の拒否を最小化できるため、自家由来の臍帯血及び他家由来の臍帯血が使われる。冷凍された細胞も使われる。
【0097】
本発明の間葉幹細胞の培養液は、哺乳動物、例えば、人間の骨髄由来の間葉幹細胞、臍帯血由来の間葉幹細胞、脂肪組織由来の幹細胞、胚嚢(embryonic yolk sac)由来の間葉幹細胞、胎盤由来の間葉幹細胞、皮膚由来の間葉幹細胞、末梢血液由来の間葉幹細胞、筋肉由来の間葉幹細胞、肝臓由来の間葉幹細胞、神経組織由来の間葉幹細胞、骨膜由来の間葉幹細胞、臍帯由来の間葉幹細胞、胎児膜由来の間葉幹細胞、滑液膜由来の間葉幹細胞、滑液由来の間葉幹細胞、羊膜由来の間葉幹細胞、半月状軟骨由来の間葉幹細胞、前十字靭帯由来の間葉幹細胞、関節軟骨細胞由来の間葉幹細胞、乳歯由来の間葉幹細胞、血管周囲細胞由来の間葉幹細胞、支柱骨由来の間葉幹細胞、膝蓋骨下脂肪塊由来の間葉幹細胞、脾臓由来の間葉幹細胞、胸腺由来の間葉幹細胞、及び間葉幹細胞が存在するその他の組織から分離及び/または培養された間葉幹細胞 を培養するために使われた培養溶液でありうる。
【0098】
前記培養培地は、例えば、FBSまたはヒト末梢血液または臍帯血の血漿または血清を含む細胞培養用の培地でありうる。前記細胞培養用の培地は、例えば、DMEM、MEM,α−MEM、McCoys 5A培地、イーグルス基本培地(Eagle‘s basal medium)、CMRL培地、Glasgow最小必須培地、Ham′s F−12培地、IMDM(Iscove‘s modified Dulbecco‘s medium)、Liebovitz′ L−15培地、及びRPMI 1640培地を含むが、これらに制限されるものではない。
【0099】
本発明の間葉幹細胞の培養液は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン, IL-4またはそれらのうち一つ以上の発現を誘導する因子から構成された群から選択された一つ以上を含む。
【0100】
本発明の医薬組成物は、アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、及びプログラニュリン、IL-4, または前記蛋白質のうち一つ以上を誘導する因子から構成された群から選択された一つ以上を活性成分として含む。
【0101】
前記蛋白質のうち一つ以上を誘導する前記因子は、信号伝達体系の刺激因子及び任意の知られた因子ありうる。前記因子は。前記因子は次の例でありうるが、これらに制限されるものではない。ガレクチン3を誘導する因子はホルボール12−ミリステート13−アセテート(phorbol 12-myristate 13-acetate: PMA)及び変形されたリポ蛋白質から構成された群から選択された一つ以上を含む。前記PMAまたは前記リポ蛋白質は、蛋白質キナーゼC(PKC)、ミトーゲン活性化された蛋白質キナーゼ1,2(MAPK−1,2)及びp38キナーゼを経由して、ガレクチン3を誘導するものと知られている。PDGF−AAを誘導する因子は、Ets−1(avian erythroblastosis virus E26(v ets) oncogene homolog 1)及びリソホスファチジルコリンからなる群から選択された一つ以上を含む。リソホスファチジルコリンは、MAPK−1,2を経由してPDGF−AAを誘導するものと知られている。
【0102】
あらゆる引用文献は、参照として本明細書にそれ全体として含まれる。
【実施例】
【0103】
本発明を下記実施例を参照して、さらに詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するだけであり、本発明の範囲が下記実施例により限定されるものではない。
【0104】
実施例
実施例1:神経幹細胞の分離及び培養
本発明の実験に使われた神経幹細胞は、次のように分離した。 神経幹細胞は、胎生14日(以下、‘E14’と略称する)となるSprague−Dawleyラット(オリエントバイオ社製、韓国)の大脳皮質及び海馬体から分離した。まず、妊娠中であるラットの腹を切り、はさみと鉗子とを利用して胚芽を分離した。前記胚芽を切除用HBSS(Hank′s balanced salt solution)で洗浄した後、氷で冷たくなった(ice-cold)HBSSを含む皿に置いた。微細顕微鏡下で注射針と鉗子とを利用してE14胚芽の大脳皮質と海馬体とを分離した。前記分離した大脳皮質を無血清神経細胞培養液(serum free culture solution)で、ピペットで約10ないし20回ピペッティングして、細胞を単一細胞にした。前記単一細胞(single cells)をポリ−L−オルニチン(15μg/ml,Sigma,St.Louis,MO)で37℃で16時間処理した後、 2時間以上フィブロネクチン(1μg/ml,Sigma)でコーティングしたカバースリップに塗抹した。前記単一細胞(single cells)を20ng/mlのbFGF(basic fibroblast growth factor)とB27無血清補強剤(B−27 serum−free supplement)とが含まれた無血清NeurobasalTM(Gibco社製)培地下で、培養皿の底部の約70%を細胞が満たすまで(70ないし80%コンフルエンス(confluence))約2ないし4日間培養した。bFGFを除去し、4ないし6日間神経細胞分化を誘導させた。分化間に、前記細胞を5%のCO2培養器で37℃で培養しつつ、二日に一回ずつ培地とB27補強剤とを交換し、bFGFは毎日添加した。このように分化された神経細胞を以下の実施例で使用した。
【0105】
実施例2:臍帯血由来の間葉幹細胞の分離及び増幅
臍帯血サンプルは、産婦の同意を得て出産時に臍静脈から収得した。具体的に、44mLのCPDA−1(citrate phosphate dextrose anticoagulant−1)抗凝固剤(緑十字社製、韓国)を含む臍帯血収集バッグの16−ゲージの注射針を臍静脈に挿入して、臍帯血を重力により収集バッグに集めた。前記収集された臍帯血(umbilical cord blood: UCB)は、採取後48時間内に処理し、 単核細胞細胞の生存率は、90%以上であった。臍帯血収得物をフィコール・ハイパック勾配(密度:1.077g/mL,Sigma社製)で遠心分離して、単核細胞を収得した後、数回洗浄して不純物を除去した。10%ないし20%のFBS(HyClone社製)を含有した最小基本培地(α−MEM、Gibco BRL社製)を添加して、細胞を懸濁させた。前記細胞を適当な濃度で10%ないし20%のFBSを含有した最小基本培地に分注した後、5%の二酸化炭素が供給される37℃で細胞培養器で一週間に二回ずつ培地を交換して培養した。培養された細胞が単一層を形成すれば、位相差顕微鏡を利用して紡錘状に増殖された間葉幹細胞を確認した後、前記間葉幹細胞が十分に増殖されるまで継代培養を反復した。 臍帯血由来の間葉幹細胞(UCB-MSCs)は、10ないし20%のFBSを含有するα−MEMで培養した。
【0106】
実施例3:アミロイドベータ蛋白質の毒性
アルツハイマー病の発病のための理想的な環境を作るために、アルツハイマー病を引き起こすものと知られたアミロイドベータ(Aβ;amyloid−beta protein fragment 1−42(Sigma、A9810):以下、Aβ42ともいう)10μMを含むbFGFとB27とがない無血清NeurobasalTM培地中で、実施例1に記載されたように 分化させた神経細胞を培養した。 神経幹細胞を約3ないし4日分化させた後、神経幹細胞の形態学的特性を顕微鏡で観察した。神経細胞に分化されたことが確認されれば、前記神経細胞にアミロイドベータを24時間処理した。
【0107】
図1は、神経細胞の形態学的変化を測定するために、アミロイドベータと24時間処理または処理されない生きている神経細胞の光学顕微鏡イメージを表す。アミロイドベータの濃度が高いほど、神経細胞の死滅が増加した。図1において、対照群は、アミロイドベータが含まれていない無血清NeurobasalTM培地で神経細胞を培養したものであり、Aβ−1μM、Aβ−5μM及びAβ−10μMは、それぞれアミロイドベータを1μM、5μM及び10μMの濃度含む培地で、神経細胞を24時間培養した結果を示すものである。
【0108】
実施例4:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養が神経細胞死滅に及ぼす影響
アミロイド・ベータを処理した神経細胞とヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とを共同培養した時、アミロイド・ベータのような毒性物質により損傷した神経細胞を観察した。
【0109】
具体的に、E14胚芽の大脳皮質幹細胞及び海馬体幹細胞を前記実施例1のように分離し、分離された神経幹細胞を増殖させて神経細胞に分化させ、実施例3に示したようにアミロイド・ベータ10μMを処理した。アミロイド・ベータを処理してから12時間後、アミロイド・ベータが処理された神経細胞をアミロイド・ベータの存在下でヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間共同培養して、前記神経細胞をアミロイド・ベータの存在下で総24時間培養した。共同培養は、図2に示したような共同培養システムで行われた。図2は、アミロイド・ベータが処理された神経細胞をヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養するための共同培養システムを示す。図2に示したように、共同培養システム100は、上部チャンバー10と下部チャンバー40とを備え、前記上部チャンバー10の底部は、孔隙が約1μmのサイズである微細膜(microporous membrane)30を備える。上部チャンバー10には、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞20を培養し、下部チャンバー40には、大脳皮質幹細胞あるいは海馬体幹細胞から分化された神経細胞50を培養した。前記上部チャンバー10と下部チャンバー40とは分離可能であり、前記上部チャンバー10の底部の下部面と、下部チャンバー40の底部の上部面とは、約1mmの距離ほど離隔されている。共同培養は、下部チャンバー40と上部チャンバー10とで細胞をそれぞれ培養した後、上部チャンバー10を下部チャンバー40の培地に添加することで行われた。
【0110】
大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞にアミロイド・ベータ処理を行わずに培養したもの、大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞にアミロイド・ベータを処理したもの、アミロイド・ベータが処理されていない大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞に間葉幹細胞を共同培養したものも培養及び観察した。損傷した大脳皮質及び海馬体由来の神経細胞及びヒト臍帯血由来の間葉幹細胞は、アミロイド・ベータを処理してから24時間後共同培養し、神経細胞の損傷程度を顕微鏡で観察 した。前記培養は、bFGFとB27とがない無血清NeurobasalTM培地(GIBCO)を使用して実施した。
【0111】
神経細胞にアミロイド・ベータを処理する時、誘導される細胞死滅程度を定量的に測定するために、蛍光染色分析により生きている細胞と死んだ細胞とを測定した。細胞毒性の分析は、動物細胞のためのLIVE/DEADTM生存性/細胞毒性分析キット(Sigma、L3224)を使用した。前記キットは、カルセインAMとエチジウムホモダイマーとを含み、カルセインAMは、生きている細胞を確認するのに使われ、エチジウムホモダイマーは、死んだ細胞を確認するために使われる。カルセインAMは、非蛍光性の細胞透過性の染料であり、生きている細胞内に入れば、細胞内のエステラーゼの触媒活性によるアセトキシメチルエステルの加水分解反応により、緑色蛍光物質であるカルセインに転換される。エチジウムホモダイマーは、生きている細胞膜は通過できないが、損傷した細胞膜は透過し、細胞内の核酸に結合して赤色蛍光を発する。
【0112】
前記共同培養システムの下部チャンバー40内で、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβ42を含有する培地中で培養して、Aβ42を直接神経細胞に処理した。生存/死亡細胞染色(live/dead staining)を通じて、死んだ細胞は、赤い色で染色され、生きている細胞は、緑色で観察した結果、Aβ42を10μMの濃度で24時間処理した細胞(図3のCt+Aβ)と、処理していない細胞(図3のCt)とを比較する時、Aβ42を処理した場合、緑色蛍光が顕著に減り、赤い蛍光染色部分が広範囲に観察された。これは、ほとんどの神経細胞がAβ42により細胞死したということを表す。しかし、このように損傷した神経細胞に、図2に示したような共同培養システムを利用して臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養すれば、神経細胞の死滅が防止され、神経細胞の成熟がさらに増加した(図3のCt+Aβ+MSC)。これは、Aβ42により既に損傷した神経細胞をUCB−MSCと共同培養する場合、損傷した神経細胞を損傷しない状態に復帰させるということを表す。また、図3において、Ct+Aβ+MSCは、Aβ42を10μMの濃度で含む無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間共同培養した結果である。また、下部チャンバー40で、10μMの濃度のAβ42存在下で、無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を培養すると共に、上部チャンバー10で、臍帯血由来の間葉幹細胞を24時間同じ培地で共同培養しても、図3のCt+Aβ+MSCに示したような結果が得られた。これは、神経細胞をUCB−MSCと共同培養する場合、Aβ42により既に損傷した神経細胞を損傷しない状態に復帰させるだけでなく、Aβ42により神経細胞が損傷しないように予防できるということを表す。
【0113】
図3において、Ctは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養した結果であり、Ct+Aβは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養した結果であり、Ct+Aβ+MSCは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間共同培養した結果であり、Ct+MSCは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で、大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間共同培養した結果を表す。
【0114】
図4は、図3の結果を死んだ細胞の百分率で表示したものである。図4において、Cortexは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を含まない培地で培養した対照群結果を表し、Cortex+Aβは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Cortex+Aβ+MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を10μMの濃度に含む培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、Cortex+MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42を含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。
【0115】
実施例5:ヒト骨髄由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養時に、神経細胞死滅に及ぼす影響
寄贈された骨髄から採取した骨髄由来の間葉幹細胞(BM−MSC)を使用して、実施例4のような方法で実験を行った。Aβが処理された神経細胞に骨髄由来の間葉幹細胞を共同培養すれば、実施例4の臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養した場合と同様に、神経細胞の死滅が抑制された(図5のCt+Aβ+BM−MSC)。
【0116】
図5は、Aβ42による神経細胞死滅についての神経細胞とヒト骨髄由来の間葉幹細胞との共同培養の効果を表す蛍光染色の結果である。図5において、Ctは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で培養した対照群結果を表し、Ct+Aβは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Ct+Aβ+BM−MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で12時間培養した後、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、Ct+BM−MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。
【0117】
実施例6:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養時に、タウ蛋白質の燐酸化に及ぼす影響
図6は、Aβ42により燐酸化されたtauに結合する抗体である 抗−phosphor−tau抗体を利用して神経細胞を 表すものであって、 tau蛋白質は、神経細胞の死亡を誘発する蛋白質と知られた。前記抗−phosphor−tau抗体とphosphor−tauとの結合を可視化するために、抗−phosphor−tau抗体は、赤い蛍光を有するCy3と接合させた。
【0118】
図6において、第1列は、Cy3が接合された抗−phosphor−tau抗体で染色した 神経細胞を表し、第2列は、4′,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した神経細胞を表す。図6の第1列において、Ctは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で培養した対照群結果を表し、Aβ42は、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Aβ42/MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、MSCは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。図6の第1列に示したように、神経細胞でタウ蛋白質は、Aβ42により急激に燐酸化されたが、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞の共同培養により脱燐酸化された(Aβ42及びAβ42/MSC参照)。
【0119】
図6の第2列に示したように、DAPI染色は、図6の第1列で抗−phosphor−tau抗体で染色されない 大脳皮質由来の神経細胞が維持されていることを表す。DAPI染色は、VECTASHIELDTM(VECTOR LABORATORIES社製)を使用し、DAPIが含まれた搭載媒質(mounting medium)を細胞のあるスライドガラスに顕微鏡観察直前に添加して使用した。
【0120】
実施例7:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とアミロイド・ベータを処理した神経細胞との共同培養時に、免疫蛍光染色法を利用した分化された神経細胞分析
神経細胞の分化マーカーとして知られた微小管関連蛋白質(MAP2)とチューブリンβIIIとに特異的に結合する抗体を利用して、大脳皮質と海馬体幹細胞とから由来した神経細胞を染色した。
【0121】
免疫蛍光染色を 次の通りで行った。神経細胞を4%のパラホルムアルデヒドで、常温で20分間12ウェルプレートのウェルに固定し、0.1%のBSA/PBSで5分ずつ4回洗浄する。洗浄後、10%のNGS(normal goat serum)、0.3%のTriton X−100及び0.1%のBSA/PBSを含む溶液を添加し、常温で30分ないし45分間反応させて非特異反応を遮断させた。一次抗体を含む10%のNGS及び0.1%のBSA/PBS溶液を前記ウェルに添加し、4℃で一晩反応させた。0.1%のBSA/PBSで5分ずつ3回洗浄した。二次抗体及び二次抗体に結合する試薬を含む0.1%のBSA/PBS溶液を入れて常温で4分間反応させた後、0.1%のBSA/PBSで5分間4回洗浄した。一次抗体は、マウスで生産された単一クローン抗-チューブリンβIII (anti-tubulin βIII antibody)(Sigma)及びうさぎ多クローン抗-MAP2 (anti-microtubule associated protein 2 antibody)(chemicon)をそれぞれ1:500及び1:200に緩衝溶液中に希釈して準備した。二次抗体は、ビオチン化された抗−マウス抗体及びビオチン化された抗−うさぎ抗体(Vector)をそれぞれ1:200に緩衝溶液中に希釈して準備した。二次抗体に結合する試薬は、ジクロロトリアジニルフルオレセイン(dichlorotriazinyl fluorescein)(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して準備した。
【0122】
Aβ42を処理した神経細胞(大脳皮質及び海馬体由来の細胞)では、毒性により神経突起が切断され、神経細胞模様が凝縮された。一方、臍帯血由来の間葉幹細胞を共同培養した神経細胞では、神経突起が維持され、神経細胞の成熟が促進された(図7A, 7B及び7C)。
【0123】
図7は、Aβ42処理され、臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養し、抗チューブリンβIII及び抗MAP2及びウェスタンブロッティングを利用して、免疫蛍光染色法で 染色された神経細胞を表す。
【0124】
図7Aは、大脳皮質由来の神経細胞を表し、図7Bは、海馬体由来の神経細胞を表す。MAP2及びTubulinβIIIは、それぞれ抗MAP2及び抗チューブリンβIIIを利用して、免疫蛍光染色した結果を示す。対照群(control)は、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した対照群結果を表し、Aβ42は、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Aβ42/MSCは、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに培養した結果を表し、MSCは、大脳皮質または海馬体由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに培養した結果を表す。
【0125】
図7Cは、Aβ42処理された大脳皮質由来の神経細胞を臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養し、培養された神経細胞を抗MAP2抗体を利用してウェスタンブロッティングした結果を示す図面である。まず、培養された神経細胞の膜をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれた溶解バッファで、超音波破砕器を使用して 粉砕し、蛋白質を抽出した。抽出された蛋白質をSDS−ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)に適用し、電気泳動して蛋白質サイズによって分離した。電気泳動後、分離された蛋白質を電気的性質を利用してニトロセルロース膜に移し、3%の脱脂粉乳が含まれたPBSに希釈された抗MAP2抗体(Millipore chem社製)を添加して反応させた。次いで、//ストレプトアビジン(streptavidin)に接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)が接合された抗うさぎ抗体を添加して反応させ、酵素の基質であるECL(Enhanced chemiluminescence)溶液を処理してX−rayフィルムで現像した。図7Cにおいて、対照群、Aβ、Aβ+MSC及びMSCは、前記した通りである。図7Cにおいて、200は、バンドに該当する分子量200kDaを表す。
【0126】
実施例8:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞による神経細胞及びミクログリア細胞内のネプリリシン発現の誘導
ネプリリシン(NEP)は、インシュリン分解酵素(IDE)と共に生体内でAβ42を分解して除去できる蛋白質と知られている。また、マウスでNEPをノックアウトさせれば、アルツハイマー病の症状が観察されることが報告された。本実施例では、前記実施例4ないし7で得られた神経細胞を収穫して溶解させた後、蛋白質を抽出した。蛋白質をSDS−PAGEで電気泳動して分離し、分離された蛋白質を抗ネプリリシン抗体を利用してウェスタンブロッティングして、NEP蛋白質の発現程度を測定した。また、NEP特異プライマーを利用して、NEPのmRNA発現程度をRT−PCRで測定した。また、抗NEP抗体で培養された細胞を染色した。
【0127】
まず、細胞を4%のパラホルムアルデヒドで常温で20分間12ウェルプレートのウェルに固定し、0.1%のBSA/PBSで5分ずつ4回洗浄する。洗浄後、10%のNGS、0.3%のTriton X−100及び0.1%のBSA/PBSを含む溶液を添加し、常温で30分ないし45分間反応させて、非特異反応を遮断させた。一次抗体を含む10%のNGS及び0.1%のBSA/PBS溶液を前記ウェルに添加し、4℃で一晩反応させた。0.1%のBSA/PBSで5分ずつ3回洗浄し、二次抗体及び二次抗体に結合する試薬を含む0.1%のBSA/PBS溶液を入れて、常温で40分間反応させた後、0.1%のBSA/PBSで5分間4回洗浄した。一次抗体は、マウスで生産された単一クローン抗-NEP(Sigma)を1:500に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体は、ビオチン化された抗マウス抗体(Vector)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体に結合する試薬としては、ストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。
【0128】
図8は、Aβ42処理されたラット由来の神経細胞と、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞またはヒト臍帯血由来の間葉幹細胞とを共同培養する時、ラット由来の神経細胞でネプリリシンの発現程度を観察した結果である。
【0129】
図8のAの上端は、培養されたラットの大脳皮質由来の神経細胞を、ウェスタンブロッティングした結果を表す。Neuronは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した対照群結果を表し、Neuron+Aβは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む培地で24時間培養した結果を表し、Neuron+Aβ+MSCは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに共同培養した結果を表し、Neuron+MSCは、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間さらに共同培養した結果を表す。
【0130】
図8のAの下端は、培養されたラットの神経細胞から分離されたmRNAをテンプレートにしてRT−PCRした結果を表す。使われたPCRプライマーは、配列番号15及び16のラットのNEP遺伝子の特異的プライマーを使用し、β−actin遺伝子の特異的プライマーは、配列番号17及び18のプライマーを使用した。PCR結果、NEP遺伝子に対して422bp、β−actin遺伝子に対して300bpの増幅産物が得られた。Neuron,Neuron+Aβ,Neuron+Aβ+MSC及びNeuron+MSCは、前述した通りである。
図8のAに示したように、ラット由来の神経細胞にAβ42を処理した場合、NEPの発現は減り、Aβ42が処理されたラット由来の神経細胞をヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養する場合、NEPの発現が蛋白質とmRNA段階で増加することを確認した。これは、ヒト間葉幹細胞がラット由来の神経細胞を刺激して神経細胞のNEPの生成を増加させ、Aβ42毒性蛋白質を除去できることを証明する結果といえる。
【0131】
図8のBにおいて、Ct,Aβ,Aβ+MSC及びMSCは、前述したようなNeuron,Neuron+Aβ,Neuron+Aβ+MSC及びNeuron+MSCにそれぞれ対応する。
【0132】
細胞の染色過程は、次の通りである。細胞を4%のパラホルムアルデヒドで、常温で20分間12ウェルプレートのウェルに固定し、0.1%のBSA/PBSで5分ずつ4回洗浄する。洗浄後、10%のNGS、0.3%のTriton X−100及び0.1%のBSA/PBSを含む溶液を添加し、常温で30分ないし45分間反応させて、非特異反応を遮断させた。一次抗体を含む10%のNGS及び0.1%のBSA/PBS溶液を前記ウェルに添加し、4℃で一晩反応させた。0.1%のBSA/PBSで5分ずつ3回洗浄し、二次抗体及び二次抗体に結合する試薬を含む0.1%のBSA/PBS溶液を入れて常温で40分間反応させた後、0.1%のBSA/PBSで5分間4回洗浄した。一次抗体は、マウスで生産された単一クローン抗-NEP(Sigma) 抗体 を1:500に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体は、ビオチン化された抗マウス抗体(Vector)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。二次抗体に結合する試薬としては、ストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。
【0133】
図8のBに示したように、神経細胞にAβ42を処理すれば、赤く染色された部分が顕著に減少して、NEPの発現がラット由来の神経細胞で減ったことを表す。しかし、前記神経細胞と人間由来の間葉幹細胞とを共同培養すれば、ラット由来の神経細胞でNEPの発現が再び回復された。
【0134】
また、図8のCは、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞(BM−MSC)を利用して同一実験を行って、ラット由来の神経細胞内のNEPの発現が増加することをRT−PCRで確認したものである。
【0135】
NEPとβ−actinとのRT−PCRは、図8のAで説明した//ものと 同様プライマーを使用して、 同様条件で行った。図8のCにおいて、レーン1は、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した対照群結果を表し、レーン2及び3は、ラットの大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト骨髄由来の間葉幹細胞(BM−MSC1及びBM−MSC2)と12時間さらに共同培養した結果を表す。ここで、BM−MSC1及びBM−MSC2は、相異なる供与者から得た細胞を表す。 図8Cに示した結果は、ラットの大脳皮質由来の神経細胞をヒト骨髄由来の間葉幹細胞と共同培養する場合、mRNAレベルでラットの大脳皮質由来の神経細胞でNEP発現の増加を表す。さらに、ウェスタンブロッティング及び免疫ブロッティング結果、蛋白質レベルでもBM−MSCをラット由来の神経細胞と共同培養する場合、前記神経細胞でNEPの発現が増加することが確認された。
【0136】
脳には、神経細胞だけでなく、ミクログリア細胞(microglial cell)があるが、ミクログリア細胞は、脳の大食細胞と呼ばれ、脳に蓄積された毒性物質を除去する細胞と知られている。 前記ミクログリア細胞は、アルツハイマー病でAβを除去する。 最近、報告によれば、ミクログリア細胞でネプリリシンの発現が減少すれば、アルツハイマー病の進行が促進されるという報告があった。したがって、ヒト臍帯血細胞によりNEPの発現の回復は、免疫蛍光染色法を使用して神経細胞及びミクログリア細胞で確認した(図9)。図9は、Aβ42処理された神経細胞と間葉幹細胞とを共同培養した後、ネプリリシンの発現程度を神経細胞とミクログリア細胞とで確認した結果である。
【0137】
図9の第1列は、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに共同培養した後、神経細胞マーカーであるMAP2とNEPとにそれぞれ特異的に結合する抗体で二重染色した結果を表す図面である。染色過程は、MAP2に対する1次抗体としてうさぎ由来の抗MAP2抗体、前記一次抗体に結合する二次抗体としてビオチン化された抗うさぎ抗体、及びMAP2に対する二次抗体に結合する試薬としてストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を使用し、NEPに対する一次抗体としてマウス単一クローン抗NEP体抗(anti-NEP antibody)(Sigma)、二次抗体としてビオチン化された抗マウス抗体(Vector)、及び二次NEPに対する抗体に結合する試薬としてストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を使用した点を除いては、前記図8のBと同じ過程により染色した。図9の第1列において、MAP2とNEPとは、同じ細胞を抗MAP2と抗NEP抗体とでそれぞれ染色した結果を表し、MAP2+NEPは、同じ細胞を抗MAP2と抗NEP抗体とでそれぞれ染色した結果のイメージを重なったイメージを表す。DAPIは、図6の第2列と同じ過程によりDAPI染色した結果を表す。
【0138】
図9の第1列に示したように、MAP2及びNEP いずれも染色されることからみて、前記細胞は、MAP2及びNEPをいずれも発現するものと確認された。また、イメージ重複結果(MAP2+NEP)、MAP2及びNEPは、いずれも同じ領域で発現されるものと確認され、これは、前記神経細胞がMAP2及びNEPいずれも発現するということを表す。DAPI染色結果、神経細胞で染色され、これは、前記神経細胞が正常に維持されていることを表す。
【0139】
図9の第2列は、大脳皮質由来の神経細胞(neuron)の代わりに、ミクログリア細胞を使用し、MAP2及びNEPに対して染色する代わりに、ミクログリア細胞のマーカーであるCD40及びNEPに対して染色した点を除いては、図9の第1列と同様 に実験した結果を表した図面である。CD40に対する染色は、CD40に対する一次抗体としてヤギ由来の抗CD40抗体、前記一次抗体に結合する二次抗体としてビオチンが接合された抗ヤギ抗体、及び二次抗体に結合する試薬としてストレプトアビジンに接合されたジクロロトリアジニルフルオレセイン(DTAF,Jackson immuno Research)を1:200に緩衝溶液中に希釈して使用した。
【0140】
図9の第2列に示したように、CD40及びNEPでいずれも染色されることからみて、前記ミクログリア細胞は、CD40及びNEPをいずれも発現するものと確認された。また、イメージ重複結果(CD40+NEP)、CD40及びNEPは、いずれも同じ領域で発現されるものと確認され、これは、前記ミクログリア細胞がCD40及びNEPいずれも発現するということを表す。DAPI染色結果、ミクログリア細胞で染色され、これは、前記ミクログリア細胞が正常に維持されていることを表す。
【0141】
図9の第1列及び第2列の結果から、 神経細胞とミクログリア細胞とを臍帯血由来の間葉幹細胞と共同培養する場合、Aβで処理された神経細胞とミクログリア細胞とでいずれもNEPの発現が誘導されるということが確認された。
【0142】
実施例9:間葉幹細胞が分泌して、Aβ42の毒性を抑制する分泌蛋白質の同定及び効果検証
実施例4ないし8の結果、Aβ42で処理された神経細胞を間葉幹細胞と直接的な接触のない状態で共同培養する場合、前記神経細胞でAβ42の毒性活性が抑制されるということが確認された。これは、間葉幹細胞から分泌された物質が前記神経細胞に相互作用して、Aβ42の毒性活性を抑制するものと予測できる。
【0143】
本実施例では、間葉幹細胞から分泌された物質のうち、Aβ42の毒性活性を抑制する物質を探索して確認した。
【0144】
(1)間葉幹細胞由来のAβ42の毒性活性を抑制する物質探索
まず、細胞を次のような色々な条件で培養した。
培養群1:大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを含まない無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
培養群2:大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
培養群3:大脳皮質由来の神経細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で12時間培養した後、ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間さらに共同培養した。
培養群4:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞を、Aβを10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
培養群5及び6:ヒト臍帯血由来の間葉幹細胞を無血清NeurobasalTM培地で24時間培養した。
【0145】
次いで、前記培養群1ないし6から培地を収穫し、培地中のサイトカイン及び蛋白質を分析及び比較して、幹細胞を単独に培養する場合に発現されないか、またはほぼ発現されないが、幹細胞と神経細胞とを共同培養する場合、発現が増加したサイトカインまたは蛋白質を選別した。サイトカインの分析は、RayBioTM Human Cytokine Antibody Array I G series(RayBiotech,Inc)を使用して行われ、蛋白質の分析は、RayBioTMHuman Cytokine Antibody Array I G series/Biotin Label Based Antibody Array I G series(RayBiotech,Inc)を使用して行われた。前記二つのアレイは、総54,504種類の蛋白質を分析できる。
【0146】
分析結果、得られたデータを比較して、幹細胞を単独で培養する場合に発現されないか、またはほぼ発現されないが、幹細胞と神経細胞とを共同培養する場合、発現が増加した蛋白質を選別した。その結果、下記のような14種類の蛋白質が確認された:
アクチビンA、血小板因子4(PF4)、デコリン、ガレクチン3、成長分化因子15(GDF15)、グリピカン3、膜タイプのフリズル関連蛋白質(MFRP)、細胞間付着分子5(ICAM5)、インシュリン類似成長因子結合蛋白質7(IGFBP7)、血小板由来成長因子AA(PDGF−AA)、分泌された酸性システインリッチ蛋白質1(SPARCL1)、トロンボスポンジン1(TSP1)、WNT1誘導性分泌された蛋白質1(WISP1)及びプログラニュリン(PGN)であった。
前記14種類の蛋白質がAβ処理された神経細胞で毒性を抑制し、神経細胞の分化と成熟とを促進するものと推定した。
【0147】
(2)探索された14種の蛋白質の活性確認
探索された14種の蛋白質の組み替え蛋白質を購入した(R&D SYSTEMS社製)。次いで、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ及び前記14種の蛋白質それぞれをアクチビンA 25ng/ml、PF4 25ng/ml、ガレクチン3 3ng/ml、デコリン100ng/ml、GDF15 50ng/ml、グリピカン3 50ng/ml、MFRP 50ng/ml、ICAM5 50ng/ml、IGFBP7 30ng/ml、PDGF−AA 50ng/ml、SPARCL1 50ng/ml、TSP1 50ng/ml、WISP1 50ng/ml及びプログラニュリン50ng/mlの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地に添加し、24時間培養した。培養後、死んだ細胞と生存可能な細胞とは、LIVE/DEADTM生存性/細胞毒性分析キット(Sigma,L3224)を使用した蛍光染色を通じて測定した。測定された死んだ細胞と生存可能な細胞との数に基づいて、Aβにより誘導された神経細胞の細胞死程度を計算した。細胞死は、全体の細胞数に対する死んだ細胞の割合で計算した。
【0148】
図10は、間葉幹細胞の培養時に分泌される蛋白質と、Aβ42処理された神経細胞とを培養する時、百分率で表示した神経細胞死を表した図面である。図10において、Cortexは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養したものであり、Cortex+Aβは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を24時間培養したものであり、Cortex+Aβ+MSCは、Aβ42を10μMの濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と10μMの濃度のAβ42存在下で12時間共同培養したものであり、Cortex+MSCは、Aβ42を含まない無血清NeurobasalTM培地で大脳皮質由来の神経細胞を12時間培養した後、臍帯血由来の間葉幹細胞と12時間共同培養した結果を表す。Aβは、大脳皮質由来の神経細胞を、Aβ42及び前記14種の蛋白質それぞれを前記した濃度に含む無血清NeurobasalTM培地で24時間培養したものである(図10において、p<0.03,p<0.01は、t−test結果、誤差範囲がそれぞれ3%及び1%未満であるということを表す)。
【0149】
図10に示したように、14個の蛋白質それぞれは、Aβ42による神経細胞の細胞死を抑制した。細胞死の抑制程度は、Cortex+Aβ+MSC、ガレクチン3、WISP1及びMFRPの順に高かった。これは、臍帯血由来の幹細胞の共同培養、すなわち、14個の蛋白質の組み合わせで最も強い抑制効果があるということを暗示する。
【0150】
また、14個の蛋白質が神経細胞の成熟に及ぼす影響を調べるために、培養された神経細胞の神経突起の長さを測定した。培養条件は、図10に示したように培養した。神経突起の長さ測定は、100個の細胞を各培養群当たりランダムに選択し、i−solutionソフトウェア(iMTechnology社製)を利用して神経突起の長さを測定した。
【0151】
図11は、間葉幹細胞の培養時に分泌される蛋白質と、Aβ42処理された神経細胞とを培養する時、神経細胞の神経突起の長さを測定した結果である。図11において、培養群は、図10に示した通りであり、 神経突起の長さは、平均長を表す。図11に示したように、14個の蛋白質それぞれは、単独または組み合わせてAβ42処理された神経細胞に比べて神経突起の長さを顕著に増加させた。
【0152】
実施例10:間葉幹細胞から分泌されて、ミクログリア細胞でネプリリシンの発現を誘導するサイトカインの同定
本実施例では、実施例4に説明されたような共同培養システム100を使用した。下部チャンバー40にミクログリア細胞、BV2細胞を培養し、上部チャンバー10には、臍帯血由来の間葉幹細胞(UCB−MSC)を培養した。BV2細胞は、培養されたマウスミクログリア細胞をv−raf/v−myc組み替えレトロウイルスで感染させて不滅化されたものであって、活性化されたミクログリア細胞の特性を発現する。共同培養は、下部チャンバー40で5%のFBS含有DMEM培地でBV2細胞を培養した後、5%のFBS含有α−MEM培地で培養された臍帯血由来の間葉幹細胞を上部チャンバー10に添加し、培地を無血清DMEM培地に交換した。無血清DMEM培地で24時間共同培養した。その後、上部チャンバー10のMSCを回収して、トリゾール試薬を使用して総RNAを得て、得られた総RNAをテンプレートにしてRT−PCRを行った。使われたプライマーは、IL−4(配列番号22及び23)、IL−6(配列番号24及び25)、IL−8(配列番号26及び27)及びMCP−1(monocyte chemoattractant protein−1)(配列番号28及び29)遺伝子を特異的に増幅させるプライマーを使用した。PCR対照群として、配列番号17及び18のプライマーを使用してβ−アクチンを増幅した。対照群としては、BV2細胞と共同培養されていないものを除いては、同じ条件で培養されたUCB−MSCを使用した。
【0153】
図12は、ミクログリア細胞とUCB−MSCとを共同培養した後、UCB−MSCから分離された総RNAをテンプレートにしてRT−PCRした産物を示す図面である。図12に示したように、ミクログリア細胞とUCB−MSCとを共同培養する場合、UCB−MSCでIL−4,IL−6,IL−8及びMCP−1の発現が増加した。
【0154】
IL−4,IL−6,IL−8及びMCP−1それぞれの存在下で、ミクログリア細胞、BV2細胞、神経細胞及びSH−SY5Y細胞(ATCC社製)を培養し、BV2細胞及びSH−SY5Y細胞を回収した。回収された細胞を溶解し、細胞溶解物から蛋白質をサイズ別に分離した後、抗NEP抗体を使用してウェスタンブロッティングした。その結果、IL−4の存在下でBV2細胞及びSHY−5Y細胞を培養する場合、IL−4の不在下で培養する場合に比べて、NEPの発現が経時的に増加した。SH−SY5Y細胞は、SK−N−SHから由来したトリスクローンされたニューロブラストーマである。SH−SY5Y細胞は、神経細胞を表す。
【0155】
図13は、IL−4の存在下で神経細胞及びミクログリア細胞を培養する場合、NEPの発現が増加することを表すウェスタンブロッティング結果を示す図面である。図13のAは、ミクログリア細胞であるBV2細胞を、10ng/ml IL−4を含むDMEM培地で24時間培養した結果である。図13のBは、神経細胞であるSH−SY5Y細胞を、10ng/ml IL−4を含むα−MEM培地で24時間培養した結果である。
【0156】
実施例11:アルツハイマー病の形質転換マウスの海馬体及び皮質内の臍帯血由来の間葉幹細胞の投与によるアミロイド蛋白質プラークの減少(チオフラビンS染色法及び免疫ブロッティング)
治療効果の増進のために、アルツハイマー病の形質転換マウス10ヶ月齢にPBS、PBS中の1×104の臍帯血間葉幹細胞、及びPBS中のIL−4(Peprotech社製)200μg/kgそれぞれを、定位フレーム(stereotactic frame)を利用して海馬体に投与した。10日が経過してからマウスを犠牲にした後、脳組織を海馬体と皮質とから得た。得た脳組織を切片に作り、チオ硫酸塩(Sigma社製)の染色を通じてアミロイドベータ蛋白質の沈着程度を染色した結果を確認した。プラークを確認するために、50%のエタノールに溶かしたSigma社製のチオフラビン溶液に組織を5分間反応させた。反応後、組織の切片を50%のエタノール及び水で5分間洗浄した。この組織の切片を蛍光顕微鏡下で観察して、組織内のアミロイド蛋白質プラークを確認した。
【0157】
図14は、海馬体と皮質とを含む脳組織で、アミロイドベータ蛋白質の沈着を、Thio−S染色法を利用して確認結果を示す図面である。図14に示したように、臍帯血間葉幹細胞の投与群とIL−4投与群とで、アミロイドベータ蛋白質の沈着が顕著に減少するということが分かった。図14において、PBS、MSC及びIL−4は、それぞれPBS、臍帯血由来の間葉幹細胞及びインターロイキン−4を投与した群を表す。
【0158】
図15は、図14の染色写真でアミロイドの沈着の総面積を示す図面である。沈着面積は、Metamorphoソフトウェア(Molecular devices社製)を利用して測定した。図15に示したように、MSC及びIL−4投与群で対照群に比べてアミロイド沈着が顕著に減少した。
【0159】
図16は、実験に使われたマウスの脳で生成されたアミロイドベータ蛋白質の変化を示す免疫ブロッティング結果を表す。図16の結果は、次のような過程により得られた。まず、 マウスの海馬体及び皮質を含む脳組織を得て、超音波破砕器(Branson社製)を利用して蛋白質抽出物を得た。次いで、前記抽出物に対して電気泳動を実施して、蛋白質をサイズによって分離した。分離された蛋白質を、電位差を利用してニトロセルロース膜に移した後、Aβ42を特異的に検出できる抗体を使用して免疫ブロッティングを行った。染色は、クマシーブルーを使用して染色した。図16に示したように、Aβ42蛋白質は、PBS投与群に比べて臍帯血間葉幹細胞の投与群とIL−4投与群とでその量が顕著に減少するということが分かった。図16において、Litterは、littermateを表すものであって、形質転換マウスの正常同腹子を表し、APP/PS1 miceは、アルツハイマー病の形質転換マウスを表す。また、PBS、MSC及びIL−4は、それぞれPBS、MSC及びIL−4を投与した群を表す。
【0160】
実施例12:臍帯血間葉幹細胞及びIL−4がネプリリシンの発現に及ぼす影響
(1)正常及びアルツハイマー病の形質転換動物の脳組織でのネプリリシン蛋白質の発現
それぞれ6,9,12及び18ヶ月間飼育された正常マウスと、アルツハイマー病の形質転換マウスとの脳組織を得た後、実施例11と同じ方法で蛋白質抽出物を得て電気泳動で分離した。分離された蛋白質をニトロセルロール膜に移した後、抗ネプリリシン抗体(R&D systems社製)と反応させてNEP蛋白質の発現如何を分析した。
【0161】
図17は、正常及びアルツハイマー病の形質転換マウスで、海馬体と皮質とを含む脳組織でNEPの発現程度を示す図面である。図17に示したように、ネプリリシンの発現は、アルツハイマー病の形質転換マウスの脳で減少した。図17において、Litter及びAPP/PS1 miceは、図16に示したものと同一である。また、レーン6,9,12及び18は、それぞれ6,9,12及び18ヶ月(M:month)を飼育した群を表す。
【0162】
図18は、 Quantity One(Bio−RAD社製)ソフトウェアを利用して測定した図17のNEPバンドの強度を示す図面である。 バンドの強度は、 、相対的なバンド強度を表す。図18に示したように、ネプリリシンの発現は、正常マウスに比べて、アルツハイマー病の形質転換マウスの脳で減少した。
【0163】
(2)臍帯血間葉幹細胞及びIL−4がネプリリシンの発現に及ぼす影響
アルツハイマー病の形質転換マウス10ヶ月齢に、PBS、PBS中の1×104の臍帯血間葉幹細胞、及びPBS中のIL−4200μg/kg体重を海馬体に投与し、10日が経過してからマウスを犠牲にした後、海馬体及び皮質を含む脳組織を得た。得られた各脳組織で蛋白質抽出物を得た後、電気泳動して免疫ブロッティングによりネプリリシンの発現量を分析した。
【0164】
図19は、間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスで、海馬体及び皮質を含む脳組織でNEPの発現程度を示す図面である。染色は、クマシーブルーを使用して染色した(下段)。図19に示したように、(1)で観察した結果のように、PBS投与群のネプリリシンの発現は、正常的なマウスに比べて減少したが、臍帯血間葉幹細胞とIL−4投与群では、その発現量が正常マウスに比べて類似して発現された。
【0165】
実施例13:臍帯血間葉幹細胞及びIL−4がミクログリア細胞におけるネプリリシンに及ぼす影響
実施例8において、間葉幹細胞、神経細胞及びミクログリア細胞をそれぞれ共同培養する場合、神経細胞及びミクログリア細胞でそれぞれネプリリシンが過発現されることを確認した。
本実施例では、動物モデルでかかる効果を確認した。実施例12に記載のPBS投与群、臍帯血間葉幹細胞投与群及びIL−4投与群の脳の海馬体組織を実施例8に記載の図8のBの染色過程と同一に染色した。染色は、抗NEP抗体及びミクログリア細胞のマーカーである抗CD40抗体(Santacruz Biotechnology社製)に重複染色して統合した。抗NEP抗体の染色の場合、2次抗体及びそれに結合する試薬は、実施例8に記載された通りであり、抗CD40抗体の染色の場合、2次抗体及びそれに結合する試薬は、実施例8と同じものを使用した。
【0166】
図20は、臍帯血間葉幹細胞及びIL−4が投与されたマウスのミクログリア細胞で、NEPの発現を示す図面である。図20に示したように、動物モデルに臍帯血間葉幹細胞及びIL−4を投与する場合、ミクログリア細胞でネプリリシンの過発現が誘導された。
【0167】
本発明は、例示的な具体例を参照して説明されたが、形態及び細部事項における多様な変化が特許請求の範囲に定義されたような本発明の精神及び範囲から逸脱せずに行われるということは当業者に理解されるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む神経疾患の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項2】
前記間葉幹細胞は、人間の胚嚢、胎盤、臍帯、臍帯血、皮膚、末梢血液、骨髄、脂肪組織、筋肉、肝臓、神経組織、骨膜、胎児膜、滑液膜、滑液、羊膜、半月状軟骨、前十字靭帯、関節軟骨細胞、乳歯、血管周囲細胞、支柱骨、膝蓋骨下脂肪塊、脾臓及び胸腺を含む間葉幹細胞が存在する組織から分離された間葉幹細胞 及び/またはそれから増殖された間葉幹細胞からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記間葉幹細胞は、臍帯血由来の間葉幹細胞または骨髄由来の間葉幹細胞である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記培養液は、アクチビンA、 PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記神経疾患は、神経組織内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の損傷、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病からなる群から選択される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む神経疾患の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項8】
前記神経疾患は、神経細胞内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の異常、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病からなる群から選択される請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む、アミロイドベータによる神経細胞毒性を抑制するためのキット。
【請求項11】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化を抑制するためのキット。
【請求項12】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞及び/またはミクログリア細胞内にネプリリシンの発現を誘導するためのキット。
【請求項13】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、アミロイドベータによる神経細胞毒性を抑制するためのキット。
【請求項14】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化を抑制するためのキット。
【請求項15】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞及び/またはミクログリア細胞内にネプリリシンの発現を誘導するためのキット。
【請求項16】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法。
【請求項17】
前記神経疾患は、神経細胞内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の異常、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法。
【請求項20】
前記神経疾患は、神経細胞内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の異常、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症、躁病及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項19に記載の方法。
【請求項22】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のアミロイドプラークの量を減少させるステップを含む、神経細胞内のアミロイドプラークを減少させる方法。
【請求項23】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させるステップを含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法。
【請求項24】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞のネプリリシンの発現を増加させるステップを含む、神経細胞のネプリリシン発現を増加させる方法。
【請求項25】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞の神経突起の成長を増加させるステップを含む、神経細胞の神経突起の成長を増加させる方法。
【請求項26】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のアミロイドプラークの量を減少させるステップを含む、神経細胞内のアミロイドプラークを減少させる方法。
【請求項27】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させるステップを含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法。
【請求項28】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養して、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させるステップを含む、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させる方法。
【請求項29】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞の神経突起の成長を増加させるステップを含む、神経細胞の神経突起の成長を増加させる方法。
【請求項1】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む神経疾患の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項2】
前記間葉幹細胞は、人間の胚嚢、胎盤、臍帯、臍帯血、皮膚、末梢血液、骨髄、脂肪組織、筋肉、肝臓、神経組織、骨膜、胎児膜、滑液膜、滑液、羊膜、半月状軟骨、前十字靭帯、関節軟骨細胞、乳歯、血管周囲細胞、支柱骨、膝蓋骨下脂肪塊、脾臓及び胸腺を含む間葉幹細胞が存在する組織から分離された間葉幹細胞 及び/またはそれから増殖された間葉幹細胞からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記間葉幹細胞は、臍帯血由来の間葉幹細胞または骨髄由来の間葉幹細胞である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記培養液は、アクチビンA、 PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記神経疾患は、神経組織内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の損傷、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病からなる群から選択される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む神経疾患の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項8】
前記神経疾患は、神経細胞内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の異常、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病からなる群から選択される請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む、アミロイドベータによる神経細胞毒性を抑制するためのキット。
【請求項11】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化を抑制するためのキット。
【請求項12】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞及び/またはミクログリア細胞内にネプリリシンの発現を誘導するためのキット。
【請求項13】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、アミロイドベータによる神経細胞毒性を抑制するためのキット。
【請求項14】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化を抑制するためのキット。
【請求項15】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上を含む、神経細胞及び/またはミクログリア細胞内にネプリリシンの発現を誘導するためのキット。
【請求項16】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法。
【請求項17】
前記神経疾患は、神経細胞内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の異常、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症及び躁病からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせから構成された群から選択された一つ以上を含む医薬組成物を個体に投与するステップを含む、個体の神経疾患を予防または治療する方法。
【請求項20】
前記神経疾患は、神経細胞内のアミロイドベータプラークの形成、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化、神経突起の異常、神経細胞内のネプリリシンの発現減少及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上により誘発される疾患である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記神経疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、てんかん、多発性硬化症、躁病及びそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項19に記載の方法。
【請求項22】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のアミロイドプラークの量を減少させるステップを含む、神経細胞内のアミロイドプラークを減少させる方法。
【請求項23】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させるステップを含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法。
【請求項24】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞のネプリリシンの発現を増加させるステップを含む、神経細胞のネプリリシン発現を増加させる方法。
【請求項25】
間葉幹細胞及びその培養液からなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞の神経突起の成長を増加させるステップを含む、神経細胞の神経突起の成長を増加させる方法。
【請求項26】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のアミロイドプラークの量を減少させるステップを含む、神経細胞内のアミロイドプラークを減少させる方法。
【請求項27】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させるステップを含む、神経細胞内のタウ蛋白質の燐酸化の程度を減少させる方法。
【請求項28】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞またはミクログリア細胞を培養して、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させるステップを含む、神経細胞またはミクログリア細胞のネプリリシンの発現を増加させる方法。
【請求項29】
アクチビンA、PF4、デコリン、ガレクチン3、GDF15、グリピカン3、MFRP、ICAM5、IGFBP7、PDGF−AA、SPARCL1、トロンボスポンジン1、WISP1、プログラニュリン、IL−4、それらのうち一つ以上の発現を誘導する因子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された一つ以上の存在下で神経細胞を培養して、神経細胞の神経突起の成長を増加させるステップを含む、神経細胞の神経突起の成長を増加させる方法。
【図2】
【図4】
【図10】
【図11】
【図15】
【図18】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【図4】
【図10】
【図11】
【図15】
【図18】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2012−508733(P2012−508733A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536252(P2011−536252)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006712
【国際公開番号】WO2010/056075
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511119053)メディポスト カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006712
【国際公開番号】WO2010/056075
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511119053)メディポスト カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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