説明

関節リウマチを治療するためのVX−702の使用

本発明は、治療の必要がある被験者における関節リウマチ(RA)を治療する方法および組成物に関する。本発明は、組成物および剤形を含むキットおよび医薬パックにも関する。具体的には、本発明はp38MAPK阻害剤のVX−702をそれが必要な患者に投与することを含む、RAを治療する方法を提供する。さらに本発明は、VX−702およびRA治療に有用な1種または複数の他の治療剤を投与することを含む、RAを治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は関節リウマチを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチ(RA)は、滑膜の過形成および関節の破壊に至る、冒された関節における慢性でかつ進行性の炎症過程および全身性の免疫異常により特徴づけられる。腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1β(IL−1β)、IL−6およびIL−8などの、炎症を起したリウマチ性滑液中に多く産生されるサイトカインは、RAの病理生理学において決定的な役割を演ずる。RAの病因における炎症誘発性サイトカインの重要性は、TNF−αおよびIL−1βの特異的阻害剤の臨床的有効性により目立たされる(非特許文献1)。
【0003】
関節リウマチの治療は、新規な疾患改善抗リウマチ薬(DMARD)の導入以来劇的変化を遂げた。しかしながら、メトトレキサート、金化合物、抗マラリア剤、シクロスポリンA、レフルノミド、アザチオプリン、スルファサラジンおよびd−ペニシラミンなどの従来のDMARDは、全て毒性を伴い、メトトレキサートが依然として米国および欧州においてRA患者のための治療の標準であるが、50%未満の改善という応答がしばしば観察される。
【0004】
TNF−αを阻害する治療は、従来のDMARDに比較して有利な毒性プロファイルを有することが初期データにより示唆された。しかしながら、これらの治療剤の長期間使用は、感染(例えば結核)およびリンパ腫の危険性増大ならびに全身性エリテマトーデスの危険性増大などの毒性についての懸念を生じさせた(非特許文献2)。メトトレキサートと組み合わせた、注射により投与される現在利用可能な抗TNF剤であるエタネルセプト(ENBREL(登録商標))による治療は、35%の臨床的寛解をもたらした(Kremer、前掲)。しかしながら、注射を受けることの不便性および重症の感染を発症することを含む抗TNF療法の副作用ならびに活動的な感染を解消できないことは、従来のDMARD治療剤および抗TNF剤に替わるものが関節リウマチ患者の治療にとって必要とされていることを示す(Kremer、前掲の非特許文献1)。
【0005】
p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路は、内皮細胞における血管細胞付着分子(VCAM)および細胞内付着分子(ICAM)の上方制御、好中球におけるMAC−1の増大した発現およびL−セレクチンの減少した発現、Th1リンパ球の活性化、ならびに単球/マクロファージによるサイトカイン産生の上方制御などの、RA発症に決定的に重要な多数の細胞過程に関与している。それに加えて、p38MAPKは骨損失に直接関与する破骨細胞の分化を制御している。
【0006】
このように、RAを治療するための、さらなる治療法、投与計画および医薬組成物に対する必要性が存在する。特に、RAを治療するp37MAPK阻害剤を含む治療法、投与計画および医薬組成物に対する必要性がある。
【非特許文献1】Kremer、Rational use of new and existing disease−modifying agents in rheumatoid arthritis. Ann. Intern. Med. 第134巻、695〜706頁、2001年
【非特許文献2】Gabrielら、A clinical and economic review of disease−modifying antirheumatic drugs. Pharmacoeconomics 第19巻、715〜28頁、2001年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はp38MAPK阻害剤のVX−702をそれが必要な患者に投与することを含む、RAを治療する方法を提供する。
【0008】
他の実施形態において、本発明は、VX−702およびRA治療に有用な1種または複数の他の治療剤を投与することを含む、RAを治療する方法を提供する。
【0009】
他の実施形態において、本発明は、VX−702および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
他の実施形態において、本発明はVX−702またはその医薬組成物を含む医薬パックを提供する。さらなる実施形態において、本発明は、VX−702またはその医薬組成物およびRA治療に有用な1種または複数の他の治療剤を含む医薬パックを提供する。
【0011】
他の実施形態において、本発明は、VX−702またはその医薬組成物、およびRAを治療するためにVX−702を使用するための指示書を含むキットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、酵素p38MAPKの経口的に利用し得る特異的および可逆的阻害剤VX−702を投与することによりRAを治療する投薬および方法に関する。VX−702は次の構造を有する:
【0013】
【化1】

健康な被験者におけるVX−702の5組の1相試験、ならびにステント術をするまたはしない経皮冠動脈処置を予定されていた不安定狭心症(UAP)を有する被験者において、VX−702の安全性および耐用性を評価する1組の2a相試験を実施した。VX−702の多回投薬試験を28日までの間実施した。20mg/日までの投薬は、健康な被験者においては中程度ないし良好で耐えられた。大部分の有害事象は、軽度または中程度のもので、過酷な事象は殆んどなかった。UAPのある被験者は40mg/日までのVX−702で5日間処置され、有害事象は軽度から中程度の苦しさであった。
【0014】
一実施形態において、本発明はVX−702、または薬学的に許容されるその塩を、RAを治療するのに有効な量で、薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0015】
一実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩は、医薬組成物中1mgから20mgの量で提供される。他の実施形態において、本発明は、医薬組成物中に2.5mgから15mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、医薬組成物中に2.5mgから12.5mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。さらに他の実施形態において、本発明は、医薬組成物中に約4、5、6、7、8、9、10または11mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。さらに他の実施形態において、本発明は、医薬組成物中に4,5,6,7,8,9,10または11mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、医薬組成物中に約5〜10mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。さらに他の実施形態において、本発明は、医薬組成物中に5〜10mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、約5mgまたは10mgのVX−702の医薬組成物を提供する。さらに他の実施形態において、本発明は、5mgまたは10mgのVX−702の医薬組成物を提供する。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、約1mgから約40mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。さらなる実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、VX−702として約30mgから約40mgである。さらに他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩は、約20mgから約30mgのVX−702の量で存在する。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mgまたは40mgである。
【0017】
本明細書で使用される、VX−702の具体的に挙げた量または投薬量は、VX−702の遊離塩基形の量または投薬量を意味する。VX−702の特定量の「薬学的に許容される塩」が挙げられたとき(例えば、「5mgのVX−702、または薬学的に許容されるその塩」)、薬学的に許容される塩の量は、VX−702の遊離塩基形のその特定量とVX−702のモル基準で等価であるその量である。
【0018】
VX−702の遊離塩基形の所与の量と等価のVX−702の薬学的に許容される塩の量は、当業者により容易に決定される。興味ある特定のVX−702の塩形の分子量を求めてこの塩形の分子量をVX−702の遊離塩基形の分子量で割れば、塩の遊離塩基に対する重量比(塩/遊離塩基)が得られる。次に遊離塩基形の特定量にこの比を乗ずればVX−702の塩形の等価の量が得られる。
【0019】
本発明の他の実施形態は、被験者に有効量のVX−702または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む、それを必要とする被験者のRAを治療する方法を提供する。一般的に、VX−702または薬学的に許容されるその塩は、薬学的に許容される担体を含む医薬組成物で投与される。
【0020】
本明細書で使用する用語「RAを治療する」、「RAを治療すること」、または「RAの治療」は、RAの症状の重症度を軽減することを意味する。一実施形態において、RAの症状の重症度は、疾患症状の医師および/または被験者の評価により測定され得る。これらの評価には、とりわけ、腫脹したおよび/もしくは圧痛のある関節の数の減少、疼痛の被験者評価、運動障害の被験者自己評価、全般的健康状態、疾患の医師および/もしくは被験者の全体的評価、ならびに/または臨床検査により測定される急性期反応が含まれてよい。
【0021】
一実施形態において、疾患症状の評価は、例えば臨床試験においては、RAにおける改善の米国リウマチ学会(ACR)の予備定義(ACR20)により測定される。
【0022】
他の実施形態において、疾患症状の評価は、例えば臨床試験においては、ヨーロッパ対リウマチ連盟(EULAR)応答判定基準により測定される。RA疾患症状の他の評価も知られており、VX−702によるRAの治療を評価するために使用することができる。
【0023】
一実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約1mg/日と20mg/日の間である。特別の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、少なくとも約1mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約2.5mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約4mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約5mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約6mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約7mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約8mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約9mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約10mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約12.5mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約15mg/日である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約20mg/日である。
【0024】
さらに他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約20mg/日以下である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約15mg/日以下である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約12.5mg/日以下である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約10mg/日以下である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約5mg/日以下である。他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、約2.5mg/日以下である。
【0025】
VX−702を投与するための好ましい投薬量範囲を提供するために、これらの下方および上方の量を組み合わせることができることが理解されるべきである。例えば、一実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩は、約2.5mgから約12.5mgの量である。
【0026】
任意のこれらの実施形態において、VX−702の量は、1日に1回で投与される。あるいは、VX−702の量は、1日に2回で(すなわち、BID;q12h)または1日に3回で(すなわち、TID;q8h)投与される。
【0027】
他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩は、1週間に1回、1週間に2回、3日毎にまたは1日おきに投与される。さらなる実施形態において、1週間に1回、1週間に2回、3日毎にまたは1日おきに投与されるVX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、1日当たり約2.5mgから約40mgである。さらに他の実施形態において、VX−702または薬学的に許容されるその塩の量は、1日当たり約2.5mgから約20mgである。
【0028】
特別の実施形態において、本発明は、2.5〜12.5mg/日のVX−702、または薬学的に許容されるその塩を、前記被験者に1日に1回投与することを含む、被験者のRAを治療する方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、5〜10mg/日のVX−702、または薬学的に許容されるその塩を、前記被験者に1日に1回投与することを含む、被験者のRAを治療する方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、5または10mg/日のVX−702、または薬学的に許容されるその塩を、前記被験者に1日に1回投与することを含む、被験者のRAを治療する方法を提供する。
【0029】
実施例1でより詳細に記載したように、VX−702はヒトで試験され、RAを治療するために、すなわち、RAの症状の重症度を軽減するのに有効であることが見出された。5mgまたは10mgのVX−702を1日に1回12週間投与された被験者は、プラセボを投与された被験者に比較して、治療第12週に彼らの症状における改善を示した。有害事象は概して軽度から中程度であった。
【0030】
本発明の方法は、RAに対する1種または複数の追加の治療剤の投与も含んでよい。VX−702とともに使用することができる追加の治療剤は、非ステロイド抗炎症薬(NSAID;例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、インドメタシンおよびセレコキシブ)、抗炎症性ステロイド(例えば、コルチゾンまたはプレドニゾン)の局所注射および/もしくは経口投与、メトトレキサート、金化合物の経口投与および/もしくは筋肉内注射、抗マラリア剤(例えば、ヒドロキシクロロキン)、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、スルファサラジン、d−ペニシラミン、シクロホスファミドおよびミコフェノレートまたはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。したがって、他の実施形態において、本発明は、VX−702およびRAに対する1種または複数の追加の治療剤を投与することを含む方法を提供する。
【0031】
一実施形態において、VX−702とともに使用することができる追加の治療剤はメトトレキサートである。さらなる実施形態において、メトトレキサートは1週間に約1mgから約30mgの量で投与される。さらに他の実施形態において、メトトレキサートは1週間に約2.5mgから約30mgの量で投与される。他の実施形態において、メトトレキサートは1週間に約5mgから約20mgの量で投与される。さらに他の実施形態において、メトトレキサートは1週間に約5mgから約10mgの量で投与される。他の実施形態において、メトトレキサートは1週間に2回、1週間に1回、2週間毎に1回または月に1回投与される。さらなる実施形態において、メトトレキサートは、1週間に1回投与される。通常、メトトレキサートは、丸薬もしくは液剤として経口的に投与することができ、または静脈内に投与することができる。VX−702およびメトトレキサートに加えて1種または複数の治療剤を使用することもできる。
【0032】
他の実施形態において、追加の治療剤は生物薬剤を含む。さらなる実施形態において、腫瘍壊死因子α(TNFα)アンタゴニスト、インターロイキン−1α(IL−1α)アンタゴニスト、CD28アンタゴニストおよびCD20アンタゴニストから1種または複数の生物薬剤が選択される。さらに他の実施形態において、エタネルセプト(ENBRELTM)、アダリムマブ(HUMIRATM)、インフリキシマブ(REMICADETM)、アナキンラ(KINERETTM)、アバタセプト(ORENCIATM)リツキシマブ(RITUXANTM)、およびセルトリツマブペゴール(CIMZIATM)からなる群から1種または複数の生物薬剤が選択される。VX−702および1種または複数の生物薬剤に加えて1種または複数の治療剤を使用することもできる。
【0033】
熟練した開業医により認識されるように、VX−702は経口投与されることが好ましい。RAに対する追加の治療剤の幾つかは、経口投与することができるか、または静脈内、筋肉内、非経口的、または炎症部位への局所的注射などの別の方式で投与することができる。しかしながら、本発明において、本発明の方法および組合せが、何らかの特定の剤形または投与計画に限定されることはない。したがって、本発明による組合せの各成分は、個別に、一緒にして、またはそれらの任意の組合せで投与することができる。
【0034】
本発明の方法は、a)VX−702およびRAに対する1種または複数の治療剤の組合せ;またはb)2種以上の剤形のVX−702;の投与または共投与を含むことができる。共投与は同一剤形または異なる剤形の各阻害剤を投与することを含む。異なる剤形で投与されるとき、阻害剤は殆んど同時または他の剤形の投与の近くの任意の時期を含む異なる時期に投与することができる。別々の剤形はいかなる順序で投薬してもよい。すなわち、任意の剤形を他の剤形に先立って、それと一緒に、またはその後で投与することができる。
【0035】
VX−702、および任意の1種または複数の追加の治療剤は、別々の剤形で製剤化することができる。あるいは、一人の患者に投与される剤形の数を減らすために、VX−702および任意の追加の薬剤を任意の組合せで一緒に製剤化することができる。任意の別々の剤形は、同時にまたは異なる時期に投与することができる。剤形は、生物学的効果が有利になる時期の内に投与すべきであるということは理解されるべきである。
【0036】
本発明で使用する用語「薬学的に許容される塩」は、確実な医学的判定の範囲内で、ヒトおよび低級動物の組織と接触して、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなく使用するのに適しており、妥当な利益/危険性比で釣り合いのとれた塩のことを指す。「薬学的に許容される塩」は、受容者に投与して本発明の化合物を提供し得る任意の無毒性塩を意味する。
【0037】
薬学的に許容される塩は当技術分野において周知である。例えば、S. M. Bergeらは、引用により本明細書に組み込むJ. Pharmaceutical Sciences、1977年、第66巻、1〜19頁で、薬学的に許容される塩を詳細に説明している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、適当な無機および有機酸ならびに塩基から誘導される塩を含む。薬学的に許容される無毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸 および過塩素酸などの無機酸または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸とアミノ基とで形成される塩、あるいはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することによる塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重硫酸、ホウ酸、酪酸、カンファー酸、カンファースルホン酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ジグルコン酸、ドデシル硫酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グリセロリン酸、グルコン酸、ヘミ硫酸、へプタン酸、ヘキサン酸、ヨウ化水素酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、ラクトビオン酸、乳酸、ラウリン酸、ラウリル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、ペクチン酸、過硫酸、3−フェニルプロピオン酸、リン酸、ピクリン酸、ピバリン酸、プロピオン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデカン酸、吉草酸等の塩が挙げられる。適当な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびN(C1−4アルキル)の塩が含まれる。
【0038】
本発明は、本明細書で開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も考慮する。そのような四級化により、水または油に可溶性もしくは分散性の生成物を得ることができる。代表的アルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等が含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適宜、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオンなどの対イオンを使用して形成される無毒性アンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンが含まれる。
【0039】
上記の本発明の薬学的に許容される組成物は、薬学的に許容される担体、助剤または媒体をさらに含み、それらで本発明で使用されるものは、所望の特定の剤形に適した、溶媒、希釈剤、または他の液体媒体、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等の任意の全てのものを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E. W. Martin (Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980年)には、薬学的に許容される組成物を製剤化するときに使用される種々の担体およびそれを調製するために知られた技法が開示されている。任意の従来の担体媒質は、何らかの望ましくない生物学的効果を生ずるか、またはそうでなければ薬学的に許容される組成物の何らかの他の成分と有害な様式で相互作用するなど、本発明の化合物と不適合性である場合を例外として、その使用は本発明の範囲内であると考えられる。
【0040】
薬学的に許容される担体として役立ち得る材料の幾つかの例には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、もしくはソルビン酸カリウムなどの緩衝物質、植物性飽和脂肪酸の部分的グリセリド、水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイド状シリカ、トリケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖類、コーンスターチおよびバレイショデンプンなどのデンプン;セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよびセルロースアセテートなどのセルロース誘導体;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび座剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油;オリーブ油;コーン油およびダイズ油などの油;プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;アガー;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液が挙げられるが、これらに限定されず、同様にラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の無毒性適合性潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、着香および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤も、製剤化する者の判断にしたがって組成物中に存在し得る。
【0041】
本発明の組成物および方法で使用される化合物は、選択的生物学的特性を向上させるために適当な官能基を懸垂することにより改質することもできる。そのような改質は当技術分野において知られており、所与の生体系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)中への生物学的浸透を増大させ、経口的利用性を増大させ、溶解性を増大させて注射による投与を可能にし、代謝を変化させかつ排泄速度を変化させるものが含まれる。
【0042】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物は、哺乳類、特に人類への薬剤投与のために製剤化される。
【0043】
本発明のそのような医薬組成物は(本発明の方法、組合せ、キットおよびパックで使用するための組成物も同様に)、経口的に、非経口的に、舌下で、吸入スプレイにより、局所的に、直腸内に、鼻腔内に、バッカルで、膣内にまたは埋め込み貯蔵室により投与することができる。本明細書で使用する用語「非経口的」は、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、滑液包内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、損傷部内、頭蓋内への注射または注入技法を含む。組成物は経口的または静脈内に投与されることが好ましい。組成物は経口的に投与されることがより好ましい。
【0044】
本発明のおよび本発明による組成物の無菌注射形態は水性または油性懸濁液剤であってよい。これらの懸濁液剤は、適当な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して、当技術分野で知られている技法により製剤化することができる。無菌注射製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射溶液剤もしくは懸濁液剤、例えば、1,3−ブタンジイオール中の溶液剤などであってもよい。使用することができる許容される媒体および溶媒の中に、水、リンゲル溶液および等張塩化ナトリウム溶液がある。それに加えて、無菌の不揮発性油が溶媒または懸濁媒質として従来から使用されている。この目的には、合成モノ−またはジグリセリドを含むいかなるブランドの不揮発性油も利用できる。オレイン酸などの脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブ油またはヒマシ油などの、特にそれらのポリオキシエチル化型で、天然の薬学的に許容される油として、注射液の調製に有用である。これらの油溶液剤または懸濁液剤は、ある種の長鎖アルコール希釈剤、または乳濁液剤および懸濁液剤を含む薬学的に許容される剤形の製剤化に普通に使用されるカルボキシメチルセルロースもしくは類似の分散剤などの分散剤も含んでよい。ツイーン、スパンスおよび他の乳化剤または薬学的に許容される固体、液体もしくは他の剤形の製造に普通に使用されるバイオアベイラビリティー増強剤も、製剤化の目的に使用することができる。
【0045】
VX−702および1種または複数の追加の治療剤を含む本発明の組成物中に、VX−702および追加の薬剤は、単独療法投与計画で通常投与される投薬量の約10%から100%、およびより好ましくは約10%から80%の間の投薬量レベルで存在すべきである。
【0046】
本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、水性懸濁もしくは溶液剤を含むがこれらに限定されない任意の経口的に許容される剤形で、経口投与することができる。経口用の錠剤の場合に、一般的に使用される担体は、ラクトースおよびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も通常添加される。カプセル形態での経口投与にとって有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液剤が経口使用に必要とされるとき、有効成分は乳化および懸濁剤と組み合わされる。所望であれば、ある種の甘味剤、着香剤または着色剤も添加してよい。許容される液体剤形は、乳濁液剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。
【0047】
あるいは、本発明の医薬組成物は、直腸内投与のための座剤の形態で投与することができる。これらは、室温で固体であるが直腸内温度で液体である適当な非刺激性の賦形剤と薬剤とを混合することにより調製することができ、したがって直腸内で融解して薬剤を放出するであろう。そのような材料は、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールを含む。
【0048】
本発明の医薬組成物は、局所的に投与することもできる。
【0049】
当技術分野で認められているように、医薬組成物は、リポソームの形態で投与することもできる。
【0050】
本発明の出願人は、VX−702は経口的に生体利用可能であることを示した。したがって、本発明の好ましい医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。
【0051】
本発明に関係するVX−702の投与は、長期および短期治療法として使用することができる。単回剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される受容者および特定の投与様式に依存して変わるであろう。典型的製剤は、約0.5%から約95%(w/w)の活性化合物を含むであろう。そのような製剤は約5%から約90%(w/w)の活性化合物を含むことが好ましい。
【0052】
患者の状態が改善すれば、必要ならば、本発明の化合物、組成物または組合せの維持量を投与することができる。その結果、投与の投薬量もしくは頻度またはその両方を、症状の関数として、改善された状態が維持されるレベルに減少させてよく、症状が所望のレベルに軽減されたとき、治療は終了すべきである。しかしながら、患者は疾患症状のいかなる回帰においても、長期を基本とする間歇的治療を必要とする可能性がある。
【0053】
いかなる特定の患者にとっても、特別の投薬量および治療計画は、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性、食事性、投与時期、排泄速度、薬剤の組合せ、および治療する医師の判断ならびに治療されている特定の疾患の重症度を含む種々の要因に依存するであろうということも理解されるべきである。
【0054】
医薬組成物は、単一の包装、通常ブリスターパック中に治療の全コースを含む「患者パック」または「医薬パック」として患者に処方することもできる。薬剤師が原末の供給から医薬の患者への供給を分割する伝統的処方に対して、患者パックは、患者が、伝統的処方では通常得られない、患者パック中に含まれる包装挿入紙を常に入手する方法を有するという利点を有する。包装挿入紙の含まれることは、患者の医師の指示遵守を改善することが示されている。
【0055】
包装内に本発明の正しい使用を患者に説明する挿入紙を含む、単一の患者パックまたは各製剤の患者パックによる本発明の組合せの投与は、本発明の望ましい付加的特徴であることが理解されるであろう。
【0056】
本発明のさらなる態様により、パックは、少なくともVX−702(本発明による投薬量の)および本発明の組合せの使用についての指示を含む情報挿入紙を含んでいる。本発明のいかなる組成物、剤形、治療計画または他の実施形態も、医薬パック中で提供することができる。本発明の別の実施形態において、医薬パックは、本明細書中に記載した1種または複数の追加の治療剤をさらに含む。1種または複数の追加の治療剤は、同一パックでまたは別のパックで提供してもよい。一実施形態において、追加の治療剤はメトトレキサートである。
【0057】
この他の態様は、VX−702の単独または複数の医薬製剤;貯蔵中および投与に先立つ間医薬製剤を入れておく容器;およびRAの治療に効果的な様式で薬剤投与を実行するための指示を含む、患者がRA治療で使用する包装されたキットを包含する。
【0058】
他の実施形態において、包装されたキットは、RAを治療するために有用な追加の治療剤を含む1種または複数の医薬製剤をさらに含む。したがって、本発明は、投薬量のVX−702および1種もしくは複数の追加の治療剤の同時または逐次投与のためのキットを提供する。通常、そのようなキットは、例えば、薬学的に許容される担体中の(および医薬製剤の1種または複数の中の)各化合物および任意選択の追加の薬剤の組成物ならびに同時または逐次投与のために書かれた指示を含むであろう。一実施形態において、追加の治療剤はメトトレキサートである。
【0059】
他の実施形態において、自己投与のための1種または複数の剤形;貯蔵中および使用に先立つ間剤形を入れておくための、好ましくは密封された収納手段;および患者が薬剤投与を実行するための指示を含む包装されたキットが提供される。指示は、通常、包装挿入紙、ラベルおよび/またはキットの他の要素に書かれている指示であろうし、また1種または複数の剤形は本明細書中に記載されているものである。各剤形は、各剤形を個々の仕切りもしくは区域中で他の剤形と分離して金属箔プラスチックラミネートのシート中などに個々に収納することができ、または剤形はプラスチックボトル中などの単一容器中に収納することができる。本発明のキットは、個々のキットの要素すなわち剤形、収納手段、および使用のための書かれた指示を包装する手段も通常含むであろう。そのような包装手段は、厚紙もしくは紙の箱、プラスチックまたはフォイルの小袋その他の形態を取ることができる。
【0060】
本発明によるキットは、任意の組成物、剤形、治療計画、または医薬パックなどの本発明の任意の態様を一体にすることができる。
【0061】
本発明によるパックおよびキットは、複数の組成物および剤形を任意選択で含む。したがって、本発明の内に含まれるものは、1種の組成物または2種以上の組成物を含むパックおよびキットであろう。
【0062】
ある代表的実施形態が以下に叙述され説明されるが、本発明の化合物は、当業者に一般的に利用可能な適当な出発物質を使用して、上で一般的に記述された方法にしたがって調製することができることは認識されるであろう。
【0063】
本発明がより十分に理解されるために、次の実施例を説明する。この実施例は例示のためだけのものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
中程度または重症のRAを有する315名の被験者における、ランダム化したプラセボ対照の多回投薬盲検用量漸増試験で、VX−702を検討した。
【0065】
被験者は、各100〜105名のほぼ等サイズの3群に分割した。一つの群で被験者は、1日1回5mgのVX−702または1日に2回2.5mg(合計5mg/日)のVX−702を12週間投与された。他の群は、1日に1回10mgのVX−702を12週間投与された。もう一つの群の被験者は、1日に1回プラセボを12週間投与された。
【0066】
試験で使用された組成物は、次の通りである。
【0067】
【表1】

被験者は、年齢が18〜75歳の間(両端を含む)で、ACR改定診断基準により6カ月以上の期間活性RAを有する者でなければならなかった。被験者は、ランダム化時に2mg/dlを超えるC反応性タンパク質(CRP)血清レベル、8以上の(28中で)腫脹関節数および10以上の(28中で)圧痛関節数を有していなければならなかった。被験者は、先立つ疾患改善抗リウマチ薬(DMARD)療法による治療を受けていないか、またはDMARD療法に対する不適切な応答を有していないことが必要であった。被験者がTNFに対する抗体もしくは結合性タンパク質(抗TNF)または組換えIL−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)での先立つ治療を受けていた場合には、被験者は、耐容性の理由で治療を中断していてもよかったが、不適切な応答の理由で治療を中断していてはならなかった。被験者は、ランダム化に先立つ少なくとも1カ月間DMARD療法(スルファサラジンまたはヒドロキシクロロキンは例外として)も中断していなければならなかった。被験者は、彼らがランダム化に先立つ少なくとも1カ月間一定投薬量で治療されていた場合には、1種のNSAIDおよび/またはプレドニゾン(≦10mg/日)を受けていてもよかった。
【0068】
試験における被験者の安全性評価も実施した。それらは、生命徴候(血圧、心拍数、呼吸数および体温を含む)の測定;臨床検査評価(血液学、化学、および検尿);クレアチニンクレアランス;有害事象;ホルターモニタリングおよび心電図(ECG)(12誘導)を含む身体検査を含むものであった。
【0069】
治療に対する応答は、ACR(例えば、ACR20)またはEULAR診断基準における変化により評価した。治療に対する応答は、第2、4、6、8、10および12週に測定した。安全性評価もこれらの時点で実施した。ホルターモニタリングおよびECGは全時点では実施しなかった。試験終了後の4週間、治療に対する応答および安全性評価を被験者について実施した。
【0070】
RAにおける改善のACR予備定義(ACR20
要求されること:圧痛関節数における改善≧20%
腫脹関節数における改善≧20%
および次の5項目中3項目における少なくとも20%の改善
被験者の疼痛評価
被験者の総合評価
医師の総合評価
被験者の自己評価による運動障害
急性期反応物(CRPまたはESR)
疾患活性度測定 評価方法
圧痛関節数 ACR圧痛関節数、28関節の評価。関節計数は、身体検査における圧迫および関節操作により評価される圧痛の幾つかの異なった様相をスコア付けすることにより行うものとする。次に種々のタイプの圧痛についての情報を単一の圧痛対非圧痛の二分法にまとめるものとする。
腫脹関節数 ACR腫脹関節数、28関節の評価。関節を腫脹または非腫脹のいずれかに分類する。
被験者の疼痛評価 水平姿勢での疼痛VAS(0〜100mm)を被験者の現在の疼痛レベルを評価するために使用する。
被験者の総合評価 被験者による彼らの関節炎の全体的評価を0〜10のスケールで記録する。
医師の総合評価 医師による被験者の疾患活性度の評価を0〜10のスケールで記録する。
被験者の自己評価による身体障害 RA被験者における身体機能を測定するHAQ自己評価機器が許容可能、有効で信頼性があり、RA試行において変化に鋭敏であることが実証されている。
急性期反応物 ウェスターグレン血沈速度またはC反応性タンパク質レベル。
【0071】
ACR50およびACR70応答は、ACR20応答に対して記載したのと同じ診断基準で、それぞれ≧50%および≧70%の改善が必要である。
【0072】
EULAR応答診断基準
EULARは、引用によりその全体を本明細書に組み込むFransenら、Clinical and Experimental Rheumatology、第23巻(Suppl. 39):93〜99頁、2005年に記載されている。EULARは、腫脹関節、圧痛関節、急性期反応および全般的健康からの情報をリウマチ性炎症の1つの連続的尺度に組み合わせた、RA疾患活性の臨床指数である疾患活性スコア(DAS)に基づく。DAS28は、元のDASに類似の指数であって、28の関節での圧痛関節数(範囲は0〜28)、28の関節での腫脹関節数(範囲は0〜28)、血沈速度(ESR)および視覚によるアナログスケールの任意選択総合的健康評価(範囲は0〜100)からなる。
【0073】
安全性の結果
VX−702は耐容性がよく、有害事象のための治療中断率は低くて、プラセボ群で見られる率と同程度であった。有害事象のための早期中断は、プラセボ投与患者の2%、5mgVX−702の患者の3%、および10mgVX−702の患者の5%で起こった。治療中断に至った最も普通の有害事象は、各2名の患者に見られ次のようであった:胃腸炎、吐き気/嘔吐、発疹および腎障害(血清クレアチニン上昇)。肝機能試験における上昇のために中断した患者はいなかった。独立した重症の有害事象は、プラセボ処置患者の2%、およびVX−702治療患者の4〜7%で報告された。胃腸炎は2名以上の患者で報告された唯一の重症有害事象であった。
【0074】
最も普通の有害事象は通常の率の軽度または中程度のものであり、VX−702治療患者の10%に対してプラセボ受容者の5%に見られた感染(上部呼吸器感染、胃腸炎、鼻咽頭炎その他);VX−702治療患者の8%に対してプラセボ受容者の6%に見られた胃腸疾患(吐き気、嘔吐、下痢);VX−702治療患者の約9%に見られた皮膚疾患(発疹、ざ瘡、そう痒)であった。
【0075】
肝機能検査を含む臨床検査数値に基づく臨床的に重要な影響で明確なものはなかった。治療中の各来院で、VX−702治療患者の2〜4%およびプラセボ受容者の1〜2%が、正常の上限を超えるALT値を示した。治療中断が必要になったであろう、正常の上限の3倍を超えてALT上昇が進んだ患者はいなかった。
【0076】
集中的ホルター(検査中に6回/患者で実施する24ないし72時間連続心電図(EKG)モニタリング)は、プラセボ受容患者とVX−702受容患者との間で、心室異所性の活動率に何らの相違も示さず、VX−702治療での不整脈の増大傾向を示さなかった。ディジタル心電図は、QT間隔に最小の増加を示し、治療終了時に約400ミリ秒のベースラインQTcF(Fridericia補正QT)から、プラセボ患者は平均−0.6ミリ秒の変化を示し、一方VX−702患者は5および10mg群でQTcFにおいてそれぞれ平均3および6ミリ秒の増大を示した。検査中どの時点においても、QTcFで60ミリ秒を超える最大増大を示した患者はいなかった。
【0077】
関節リウマチの兆候および症状に対する効果
研究の最終分析結果は、VX−702治療でACR20応答率において投薬量依存性の統計的有意の増大があったことを示し、プラセボ受容者の28%、5mgVX−702治療患者の36%、およびVX−702治療患者の40%がACR20応答を達成した(p=0.02;増大する投薬量応答に対するJonckheere−Terpstra検定)。それに加えて、プラセボ受容者の32%、5mgの702治療患者の40%、および10mgVX−702治療患者の44%がEULAR(中程度または良好)応答を達成した(p=0.02)。下表に、投薬量依存性の統計的有意の効果も、DAS28、ACR20、EULAR、DAS28における改善率(%)、圧痛関節における変化率(%)、腫脹関節における変化率(%)について示したが、朝のこわばりにおける減少も示す。
【0078】
【表2】

引用した全ての文献は参照により本明細書に組み込む。
【0079】
本発明の多数の実施形態を記載したが、本発明者らの基本的実施例は、本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために変更することができることは明らかである。それ故、本発明の範囲は、上の実施例により提示された特定の実施形態によるよりも付記した請求項により定義されるものであることは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節リウマチを治療するのに有効な量のVX−702または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項2】
VX−702の約1mgから約20mgの量で、VX−702または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項3】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の約2.5mgから約15mgの量で存在する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の約2.5mgから約12.5mgの量で存在する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の約4mgから約11mgの量で存在する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mgまたは11mgの量で存在する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の約5mgから約10mgの量で存在する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の5mgまたは10mgの量で存在する、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
VX−702の約1mgから約40mgの量で、VX−702または薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の約30mgから約40mgの量で存在する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、VX−702の約20mgから約30mgの量で存在する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
治療の必要がある被験者における関節リウマチを治療する方法であって、前記患者における前記関節リウマチを治療するのに有効な量で、VX−702または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法。
【請求項13】
前記量が、ACR20により測定される関節リウマチの症状の重症度を軽減するのに有効なものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
治療の必要がある被験者における関節リウマチを治療する方法であって、1日当たり約1mgから約20mgの量で、VX−702または薬学的に許容されるその塩を該被験者に投与することを含む方法。
【請求項15】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の約2.5mgから約15mgである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の約2.5mgから約12.5mgである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の約4mgから約11mgである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mgまたは11mgである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の約5mgから約10mgである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の5mgまたは10mgである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
治療の必要がある被験者における関節リウマチを治療する方法であって、1日当たり約1mgから約40mgの量で、VX−702または薬学的に許容されるその塩を該被験者に投与することを含む方法。
【請求項22】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の約30mgから約40mgである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、VX−702の約20mgから約30mgである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、1日に1回、2回または3回投与される、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、1日に1回または2回投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、1日に1回投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、1日に1回、2回または3回投与される、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、1日に1回または2回投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
VX−702または薬学的に許容されるその塩が、1日に1回投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
VX−702、または薬学的に許容されるその塩が、1週間に1回、1週間に2回、3日毎にまたは1日おきに投与される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項31】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、1日当たり約2.5mgから約40mgである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
VX−702または薬学的に許容されるその塩の前記量が、1日当たり約2.5mgから約20mgである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記VX−702または薬学的に許容されるその塩が、医薬組成物として投与される、請求項12から20または24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記VX−702または薬学的に許容されるその塩が、医薬組成物として投与される、請求項21から23または27から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
治療の必要がある被験者における関節リウマチを治療する方法であって、1日当たり5mgから10mgの量でVX−702を該被験者に投与することを含む方法。
【請求項36】
前記VX−702が1日に1回または1日に2回投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記VX−702が1日に1回投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
関節リウマチのための1種または複数の追加の治療剤を投与することを含む、請求項12から20、24から26、33、または35から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記1種または複数の追加の治療剤が、非ステロイド抗炎症薬、抗炎症性ステロイド、メトトレキサート、金化合物、抗マラリア剤、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、スルファサラジン、d−ペニシラミン、シクロホスファミドおよびミコフェノレートからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記1種または複数の追加の治療剤がメトトレキサートである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記メトトレキサートが1週間当たり約2.5mgから約30mgの量で投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記メトトレキサートが1週間当たり約5mgから約10mgの量で投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記メトトレキサートが1週間に1回投与される、請求項40から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
関節リウマチのための1種または複数の追加の治療剤を投与することを含む、請求項21から23、27から32、または34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記1種または複数の追加の治療剤が、非ステロイド抗炎症薬、抗炎症性ステロイド、メトトレキサート、金化合物、抗マラリア剤、シクロスポリン、レフルノミド、アザチオプリン、スルファサラジン、d−ペニシラミン、シクロホスファミドおよびミコフェノレートからなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記1種または複数の追加の治療剤がメトトレキサートである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記メトトレキサートが1週間当たり約2.5mgから約30mgの量で投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記メトトレキサートが1週間当たり約5mgから約10mgの量で投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記メトトレキサートが1週間に1回投与される、請求項46から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記1種または複数の追加の治療剤が1種または複数の生物薬剤から選択される、請求項38または44に記載の方法。
【請求項51】
前記1種または複数の生物薬剤が、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)アンタゴニスト、インターロイキン−1α(IL−1α)アンタゴニスト、CD28アンタゴニストおよびCD20アンタゴニストからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記1種または複数の生物薬剤が、エタネルセプト(ENBRELTM)、アダリムマブ(HUMIRATM)、インフリキシマブ(REMICADETM)、アナキンラ(KINERETTM)、アバタセプト(ORENCIATM)、リツキシマブ(RITUXANTM)、およびセルトリツマブペゴール(CIMZIATM)からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1から8のいずれか一項に記載の、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物、または請求項12から20、24から26、33、もしくは35から39のいずれか一項に記載の方法を実施するための、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物もしくは剤形を含む医薬パック。
【請求項54】
VX−702または薬学的に許容されるその塩を含む組成物または剤形、およびメトトレキサートまたはその医薬組成物を含む、請求項53に記載の医薬パック。
【請求項55】
請求項9から11のいずれか一項に記載のVX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物、または請求項21から23、27から32、34、もしくは40から52のいずれか一項に記載の方法を実施するための、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物もしくは剤形を含む医薬パック。
【請求項56】
VX−702または薬学的に許容されるその塩を含む組成物または剤形、およびメトトレキサートまたはその医薬組成物を含む、請求項55に記載の医薬パック。
【請求項57】
請求項1から8のいずれか一項に記載の、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物、または請求項12から20、24から26、33、もしくは35から39のいずれか一項に記載の方法を実施するための、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物もしくは剤形を含むキット。
【請求項58】
VX−702または薬学的に許容されるその塩を含む組成物または剤形、およびメトトレキサートまたはその医薬組成物を含む、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
請求項9から11のいずれか一項に記載の、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物、または請求項21から23、27から32、34、もしくは40から52のいずれか一項に記載の方法を実施するための、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む組成物もしくは剤形を含むキット。
【請求項60】
VX−702または薬学的に許容されるその塩を含む組成物または剤形、およびメトトレキサートまたはその医薬組成物を含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む複数の組成物もしくは剤形を含む、請求項53の記載のパックまたは請求項57に記載のキット。
【請求項62】
VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む複数の組成物もしくは剤形、およびメトトレキサートもしくはその医薬組成物を含む複数の組成物もしくは剤形を含む、請求項54の記載のパックまたは請求項58に記載のキット。
【請求項63】
VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む複数の組成物もしくは剤形を含む、請求項55に記載のパックまたは請求項59に記載のキット。
【請求項64】
VX−702を含む複数の組成物もしくは剤形、VX−702もしくは薬学的に許容されるその塩を含む複数の組成物もしくは剤形、およびメトトレキサートもしくはその医薬組成物を含む複数の組成物もしくは剤形を含む、請求項56に記載のパックまたは請求項60に記載のキット。
【請求項65】
VX−702または薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物。
【請求項66】
約1mgから約40mgのVX−702、約10%から約20%の二リン酸カルシウム、約10%から約20%の微結晶性セルロース、約0.1%から約1.0%のラウリル硫酸ナトリウム、約0.1%から約2.5%のクロスカルメロースナトリウム、約0.0%から約1%のコロイド状二酸化ケイ素、約0.1%から約5%のステアリン酸マグネシウムおよび約10%から約70%のラクトース一水和物を含む、請求項65に記載の組成物。


【公表番号】特表2009−529529(P2009−529529A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558385(P2008−558385)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/005882
【国際公開番号】WO2007/103468
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】