説明

防カビ構造

【課題】天井等の内側の表面に二酸化チタンを含む層を形成し、この二酸化チタンを含む層の表面だけでなく、背面においてもカビや雑菌が発生しないようにする。
【解決手段】天井3の室の内側の表面31に、防カビ層1とプライマー層6と二酸化チタンを含む層2とを形成し、室内には水銀灯5を設ける。二酸化チタンを含む層2の表面は、二酸化チタンによる超親水性及び光触媒効果により、水滴やカビ等が発生しない。また防カビ層1により、二酸化チタンが接触しないので光触媒効果が期待できないプライマー層6の裏面においてもカビ等の発生を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば天井の内側の表面に、防カビ層と、二酸化チタンを含む層とを塗装し、これに紫外線を照射する防カビ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品工場や風呂場等の湿気の高い場所では、室温に比べて温度が低い天井や壁の表面に水滴が付きやすく、また表面に付着した水分と、天井仕上材や空気中のホコリ等とが結合して、カビや雑菌が繁殖する原因となっていた。このまま放っておくと、カビや雑菌を含んだ水滴が落ちて衛生的に悪いものとなってしまう。またカビや雑菌の繁殖によって、天井等が変色したりシミが付いたりする。
【0003】
この湿気を除去するために、空調換気設備を取付ける方法があるが、機器及び運転に費用が掛かり、また機器に取付けてあるフィルターの清掃や、定期保守点検も必要となっていた。さらに食品工場等では、食品等に直接風が当たらないようにしたり、ホコリを空気中に舞わないようにしたりするなどの厳しい条件が課されるので、空調換気設備の使用が困難になる場合もあった。
【0004】
そこでカビや雑菌の発生や、水滴が落ちるのを防止する手段が提案されている。この手段は、図3に示すように、ガラス板からなる基材の表面に、下地膜を介して酸化チタン層を形成し、この酸化チタン層の表面に、さらに親水性のオーバーコート層を形成したものである(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−239047号公報(1〜4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述した特許文献1に記載の構造には、改良すべき次の問題点があった。すなわちこの構造は、酸化チタン層の表面に形成されたオーバーコート層が親水性であるため、確かにこのオーバーコート層には水滴がつかない。また酸化チタン層に紫外線が照射されることで光触媒効果が発生し、このオーバーコート層の表面においては、カビや雑菌の発生を防止できる。しかしながら、ガラス板からなる基材を、そのまま室の内側材として使用することは、強度及び費用の点で困難である。またガラス板からなる基材を、天井等に貼り付けて使用する場合には、基材の裏面には酸化チタン層が形成されていないので、光触媒効果が発生しない。したがって天井から侵入した湿気等によって、基材の裏面においては、カビ等の発生を防止することができない。
【0006】
そこで、ガラス板を省いて直接天井に酸化チタンとオーバーコート層を塗装することが考えられる。ところが天井等の室の内側材が、有機質である木材等を使用している場合には、この室の内側材に酸化チタン層を直接塗装すると、紫外線による光触媒効果によって、天井材自体が酸化分解してしまう。このため天井等の表面には、光触媒効果が及ばない水ガラス等の無機質からなる下地層(以下「プライマー」という。)を塗装し、酸化チタン層は、このプライマーの上に塗装する必要がある。したがってこの場合も、プライマーの裏面には光触媒効果が発生しないために、プライマーの裏面におけるカビや雑菌の発生を防止することができない。
【0007】
すなわち酸化チタン層による光触媒効果を利用する従来の手段は、いずれも酸化チタン層の表面におけるカビや雑菌の発生を防止することを目的としており、酸化チタン層と直接接触していない背面におけるカビや雑菌の発生を防止することは想定していなかった。しかるに酸化チタン層と直接接触していない背面も、天井裏等から侵入した水分や湿気等によって、カビや雑菌が発生しやすく、この部分にカビや雑菌が生じた場合は、塗装が剥がれたり、シミが浮き出たりするという問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、二酸化チタンを含む層の表面における水滴やカビ等の発生を防止するだけでなく、この二酸化チタンを含む層の背面においても、カビ等の発生を防止することができる防カビ構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく本発明による防カビ構造の特徴は、防カビ層と二酸化チタンを含む層とをこの順序で室の内側の表面に形成し、上記室の内側には、紫外線を含む光源を備えていることにある。また上記防カビ層は、可視光線を反射する色であることが望ましい。さらに上記紫外線を含む光源は、水銀灯であることがより望ましい。
【0010】
ここで「防カビ層」とは、カビの発生を防止する成分を含む塗料により形成された層を意味し、例えばカビの発生を防止する成分としては、チアベンダゾール、デヒドロ酢酸、5‐クロル‐2‐メチル‐4‐イソチアゾリオン‐3‐オン、パラクロロメタキシレノール、トリクロサン等が該当する。「二酸化チタンを含む層」とは、紫外線の照射によって、光触媒効果を生じさせる二酸化チタンを含有した層を意味する。
【0011】
「防カビ層と、二酸化チタンを含む層とを、この順序で室の内側の表面に形成し」とは、この防カビ層と、二酸化チタンを含む層との両者だけに限らず、これら両者の外側部分、中間部分あるいは内側部分に、他の層を有する場合も含む。「室」とは、天井、側壁等によって囲まれた一つの空間を意味し、例えば部屋や工場又は風呂場が該当する。また「紫外線を含む光源」とは、ほぼ1〜380nmの短い波長を含む光源を意味し、例えば水銀灯、メタルハイドランプ、ブラックライト、殺菌灯等が該当する。「可視光線を反射する色」とは、ほぼ380〜770nmの波長である可視光線を反射させる色を意味し、例えば白色が該当する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による防カビ構造は、天井等の室の表面に、まず防カビ層を形成し、その表面に二酸化チタンを含む層を形成することにある。したがって二酸化チタンを含む層の表面においては、紫外線を含む光源を照射することにより、二酸化チタンの光触媒効果による、カビ等の発生の防止と、超親水性による水滴の発生とを防止できる。また二酸化チタンを含む層は、有機質である天井等の室の表面に、直接形成することが出来ず、無機質であるプライマー層を介する必要がある。しかしながら、プライマー層を形成すると、この裏面と天井等の室の表面部分には、二酸化チタンが接しない。従って光触媒効果が発生しないためにカビ等が発生する。そこで、天井等の室の表面と、プライマー層との間に防カビ層を設けることで、天井裏からの湿気等により、このプライマー層の裏面にカビ等が発生することを防止することができる。
【0013】
また水銀灯等の光源は、紫外線だけでなく可視光線も多量に含む。そこで、防カビ層を例えば白色のような可視光線を反射する色にすれば、光源に含まれる紫外線によって、二酸化チタンに触媒効果を発揮させると共に、可視光線をこの白色の防カビ層で反射させて、室内の照明の補助光として有効活用することができる。なお紫外線は、光触媒効果で消費するため、反射光にはあまり含まれない。従って、この反射光を補助光として使用する場合には、人体や商品等の紫外線による影響は少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に図1〜図2を参照しつつ、本発明による防カビ構造の最良の実施形態について説明する。図1に示す防カビ構造は、食品工場の、室の天井3の表面31に、防カビ層1と二酸化チタンを含む層2とを形成し、室の上方に設けた支持フレーム4に、4個の水銀灯5を上方に向けて取り付けたものになっている。
【0015】
次に図2を参照しつつ、防カビ層1と二酸化チタンを含む層2との施工について説明する。まず、室の天井3の内側の表面31に、防カビ層1を形成する場合の前処理として、この天井の内側の表面にカビ殺菌処理を行い、このカビ殺菌処理を行った後に、カビ再発生防止処理を行う。ここでカビ殺菌処理は、株式会社パルカ社製の商品「カビバイバイ‐R剤」等の殺菌剤を、天井3の内側の表面31に噴霧する。またカビ再発生防止処理は、同じく株式会社パルカ社製の商品「カビバイバイ‐B剤」等を使用して、塗布する。そしてこの前処理を行った天井3の内側の表面31に、白色の防カビ層1を塗装する。次いでその表面に、透明の水ガラスを塗布してプライマー層6を形成し、さらにその表面に、二酸化チタンを含む溶液を塗布して乾燥させ、二酸化チタンを含む層2を形成させる。
【0016】
ここで白色の防カビ層1は、株式会社パルカ社製の商品T−Iを、約0.05mmの厚さに塗装し形成したものである。またプライマー層6は、有限会社SEC社製の商品エクシブコートを、0.04mmの厚さに塗布する。なおプライマー層6を設けることによって、二酸化チタンが光触媒効果による天井材の有機物を酸化分解することを防止する。また二酸化チタンを含む溶液は、例えば有限会社ケイエヌ企画の商品「チタン・ネクスト21」を、約0.2mmの厚さに塗布する。
【0017】
なお水銀灯5の替わりに、メタルハイドランプ等の紫外線を含む光源を用いてもよく、これらの光源は、床面に設置したり、側壁に取り付けてもよい。また本発明による防カビ層1と二酸化チタンを含む層2は、天井3に限らず、室の側壁32に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明による防カビ構造は、二酸化チタンを含む層の表面だけでなく、背面側のカビの発生等を防止することができるので、建築に関する産業に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】室の天井の内側に、防カビ層と二酸化チタンを含む層とを形成した場合の概略縦断面図である。
【図2】防カビ層と、二酸化チタンを含む層との断面図である。
【図3】従来の防カビ手段の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 防カビ層
2 二酸化チタンを含む層
3 天井
31 天井の表面
4 支持フレーム
5 水銀灯(光源)
6 プライマー層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
防カビ層と、二酸化チタンを含む層とを、この順序で室の内側の表面に形成し、
上記室の内側には、紫外線を含む光源を備えている
ことを特徴とする防カビ構造。
【請求項2】
請求項1において、上記防カビ層は、可視光線を反射する色であることを特徴とする防カビ構造。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかにおいて、上記紫外線を含む光源は、水銀灯であることを特徴とする防カビ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−327192(P2007−327192A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157153(P2006−157153)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(506193110)株式会社パルカ (1)
【Fターム(参考)】