説明

防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラ

【課題】長期間に亘って初期の防振性能を維持することができる防振アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明は、像振れ防止用レンズ(16)を、所定の制御中心位置を中心に並進移動させることにより像振れを防止する防振アクチュエータ(10)であって、固定部平面部(12b)を備えた固定部(12)と、可動部平面部(14b)を備え、像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部(14)と、固定部平面部と可動部平面部の間に挟持された3つの球状体(18)と、可動部を駆動する駆動手段(20,22)と、この駆動手段を制御して、像振れ防止用レンズを移動させ、画像を安定化させる制御手段(36)と、を有し、制御手段は、球状体と、固定部平面部又は可動部平面部との接触位置が変更されるように、制御中心位置をオフセットさせるオフセット設定手段(37)を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラに関し、特に、像振れ防止用レンズを、その光軸に直交する平面内で所定の制御中心位置を中心に並進移動させることにより像振れを防止する防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
特許第3206075号(特許文献1)には、振れ防止装置が記載されている。この振れ防止装置においては、振れ防止レンズが取り付けられたレンズ枠が複数のボールによって平行移動可能に支持されている。レンズ枠は、ギヤ等を介してX軸用、Y軸用のDCモータによってX軸方向、Y軸方向に夫々駆動される。振れ検出手段によって検出された振れに応じてレンズ枠を移動させることにより、フィルムに結像される画像が安定化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3206075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第3206075号に記載された振れ防止装置においては、レンズ枠がボールによって支持されているので、レンズ枠に作用する摺動抵抗が小さく、レンズ枠を滑らかに移動させることができるという利点がある。
【0005】
しかしながら、レンズ枠を支持するボールと、ボールが当接する平面は理論的には「点」で接触することとなり、実際にもボールと当接面は非常に小さい面積で接触している。従って、当接面に作用する単位面積当たりの荷重は非常に大きいものとなる。また、ボールが当接する平面は、潤滑剤を保持する能力が無く、ボールと当接面の間の良好な潤滑状態を維持することは困難である。このため、特許第3206075号に記載されているような、ボールによって可動部を支持するタイプの防振アクチュエータにおいては、ボールが当接する当接面に摩耗が生じやすいという問題がある。
【0006】
特に、モータ駆動により所定の撮像範囲を往復して移動される監視用のビデオカメラ等においては、同一パターンの振れが繰り返しビデオカメラに加えられることになる。このため、監視用のビデオカメラ等に組み込まれた防振アクチュエータにおいては、同一パターンの振れを補正するために可動部がほぼ同一の軌跡を描いて繰り返し移動され、これに応じてボールも当接面上の同じ軌跡を繰り返し転がることになる。これにより、作動時間の長い監視用のビデオカメラ等においては、当接面上には線状に窪んだ傷が付きやすいという問題がある。また、当接面に生じたこのような線状の傷を横断するようにボールが転がった場合には、傷によりボールの転がりが阻害され、可動部の振れに対する追従性が悪くなるという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、長期間に亘って摩耗しにくく、初期の防振性能を維持することができる防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、像振れ防止用レンズを、その光軸に直交する平面内で所定の制御中心位置を中心に並進移動させることにより像振れを防止する防振アクチュエータであって、固定部平面部を備えた固定部と、可動部平面部を備え、像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部と、固定部平面部と可動部平面部の間に挟持され、可動部を固定部に対して平行な平面内で移動可能に支持する少なくとも3つの球状体と、可動部を固定部に対して駆動する駆動手段と、この駆動手段を制御して、像振れ防止用レンズを移動させ、画像を安定化させる制御手段と、を有し、制御手段は、球状体と、固定部平面部又は可動部平面部との接触位置が変更されるように、制御中心位置をオフセットさせるオフセット設定手段を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、固定部の固定部平面部と可動部の可動部平面部の間に少なくとも3つの球状体が挟持され、可動部を固定部に対して平行な平面内で移動可能に支持する。制御手段は、駆動手段を制御して、可動部を固定部に対して駆動し、画像を安定化させる。オフセット設定手段は、球状体と、固定部平面部又は可動部平面部との接触位置が変更されるように、制御中心位置をオフセットさせる。
【0010】
このように構成された本発明によれば、球状体と固定部平面部又は可動部平面部との接触位置が、オフセット設定手段により変更されるので、可動部が制御中心位置にある場合において、球状体と固定部平面部又は可動部平面部が、常に同じ位置で接触されるのが防止され、固定部平面部又は可動部平面部の摩耗を抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、オフセット設定手段は、可動部が光軸を中心に回動されるように、制御中心位置をオフセットさせる。
このように構成された本発明によれば、可動部が光軸を中心に回動されるように、制御中心位置がオフセットされるので、画像に悪影響を与えることなく制御中心位置をオフセットさせることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、駆動手段は、可動部が光軸を中心に回動された制御中心位置に、可動部を固定部に対して回動させることができるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、可動部を並進移動させ、画像を安定化させる駆動手段を、制御中心位置をオフセットさせる手段として兼用にすることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、オフセット設定手段は、制御中心位置を、時間の経過と共に連続的に移動させる。
このように構成された本発明によれば、制御中心位置が連続的に移動されるので、制御中心位置が同一の位置に留まる時間が非常に短く、固定部平面部又は可動部平面部の摩耗を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、オフセット設定手段は、制御中心位置を、段階的に移動させる。
このように構成された本発明によれば、オフセット設定手段は、所定の数の制御中心位置を切り換えるので、オフセット設定手段を簡便に構成することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、駆動手段は、概ね同一円周上に少なくとも3つ配置され、各駆動手段は、概ね円周方向の駆動力を発生するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、各駆動手段の駆動力を調整することにより、可動部を並進移動及び回転移動させることができると共に、各駆動手段が同一の駆動力を発生させるだけで、可動部を回転移動させることができる。
【0016】
また、本発明はレンズユニットであって、レンズ鏡筒と、このレンズ鏡筒の中に配置された撮像用レンズと、レンズ鏡筒に取り付けられた本発明の防振アクチュエータと、を有することを特徴としている。
また、本発明はカメラであって、本発明のレンズユニットと、このレンズユニットが取り付けられたカメラボディと、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防振アクチュエータ、及びそれを備えたレンズユニット、カメラによれば、長期間に亘って摩耗しにくく、初期の防振性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態によるビデオカメラの断面図である。
【図2】移動枠が制御中心位置にある防振アクチュエータの正面図である。
【図3】移動枠がオフセットされた第2の制御中心位置にある防振アクチュエータの正面図である。
【図4】図2のIV−IV線側面断面図である。
【図5】図2のV−V線側面断面図(a)、及び駆動用磁石の着磁の状態を示す斜視図(b)である。
【図6】駆動用磁石の移動とホール素子から出力される信号との関係を説明する図である。
【図7】駆動用磁石の移動とホール素子から出力される信号との関係を説明する図である。
【図8】コントローラにおける信号処理を示すブロック図である。
【図9】固定枠上に配置された駆動用、及び移動枠上に配置された駆動用磁石の位置関係を示す図である。
【図10】本発明の変形例におけるオフセット信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1乃至図9を参照して、本発明の実施形態によるビデオカメラを説明する。図1は本発明の実施形態によるビデオカメラの断面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態のビデオカメラ1は、レンズユニット2と、ビデオカメラ本体4と、を有する。レンズユニット2は、レンズ鏡筒6と、このレンズ鏡筒の中に配置された複数の撮像用レンズ8と、撮像用レンズのうちの像振れ補正用レンズ16を所定の平面内で移動させる防振アクチュエータ10と、レンズ鏡筒6の振動を検出する振動検出手段であるジャイロ34a、34b(図1には34aのみ図示)と、を有する。
【0021】
レンズユニット2は、ビデオカメラ本体4に取り付けられ、入射した光を撮像素子Eに結像させるように構成されている。
概ね円筒形のレンズ鏡筒6は、内部に複数の撮像用レンズ8を保持しており、一部の撮像用レンズ8を移動させることによりピント調整を可能としている。
【0022】
本発明の実施形態のビデオカメラ1は、ジャイロ34a、34bによって振動を検出し、検出された振動に基づいて防振アクチュエータ10を作動させて像振れ補正用レンズ16を移動させ、ビデオカメラ本体4内の撮像素子Eに合焦される画像を安定化させている。本実施形態においては、ジャイロ34a、34bとして、圧電振動ジャイロを使用している。なお、本実施形態においては、像振れ補正用レンズ16は、1枚のレンズによって構成されているが、画像を安定させるためのレンズは、複数枚のレンズ群であっても良い。
【0023】
次に、図2乃至図5を参照して、防振アクチュエータ10の構成を説明する。図2は、移動枠が像振れ防止制御の中心である制御中心位置にある防振アクチュエータ10の正面図である。また、図3は、移動枠がオフセットされた第2の制御中心位置にある防振アクチュエータ10の正面図である。さらに、図4は図2のIV−IV線側面断面図であり、図5(a)は図2のV−V線側面断面図である。また、図5(b)は、駆動用磁石の着磁の状態を示す斜視図である。
【0024】
図2乃至図5に示すように、防振アクチュエータ10は、レンズ鏡筒6内に固定された固定部である固定枠12と、この固定枠12に対して移動可能に支持された可動部である移動枠14と、この移動枠14を支持する可動部支持手段である3つのスチールボール18(図4)と、を有する。さらに、防振アクチュエータ10は、固定枠12に取り付けられた3つの駆動用コイル20a、20b、20cと、移動枠14の、駆動用コイル20a、20b、20cに夫々対応する位置に取り付けられた3つの駆動用磁石22a、22b、22cと、を有する。
【0025】
また、図5(a)に示すように、防振アクチュエータ10は、各駆動用磁石22a、22b、22cの磁力によって移動枠14を固定枠12に吸着させるために、固定枠12に取り付けられた吸着用ヨーク26と、駆動用磁石の磁力を固定枠12の方に効果的に差し向けるように、駆動用磁石の裏側に取り付けられたバックヨーク28と、を有する。なお、駆動用コイル20a、20b、20c、及びこれらに対応する位置に取り付けられた3つの駆動用磁石22a、22b、22cは、移動枠14を、固定枠12に対して並進運動させ、且つ回転運動させることができる駆動手段を構成する。
【0026】
さらに、図5(a)に示すように、各駆動用コイル20a、20b、20cの巻線の内側には、磁気センサであるホール素子24a、24b、24cが配置されている(図5には24aのみ図示)。各ホール素子24a、24b、24cは、これらと夫々向き合うように配置されている各駆動用磁石22a、22b、22cの磁気を検出して、固定枠12に対する移動枠14の位置を検出するように構成されている。これらのホール素子24a、24b、24c及び駆動用磁石22a、22b、22cは、位置検出手段を構成する。
【0027】
また、図1に示すように、防振アクチュエータ10は、ジャイロ34a、34bによって検出された振動と、ホール素子24a、24b、24cによって検出された移動枠14の位置情報に基づいて、各駆動用コイル20a、20b、20cに流す電流を制御する制御手段であるコントローラ36を有する。さらに、コントローラ36には、移動枠14を制御する制御中心位置をオフセットさせるオフセット設定手段37が内蔵されている。
【0028】
防振アクチュエータ10は、移動枠14を、レンズ鏡筒6に固定された固定枠12に対して、撮像素子Eに平行な平面内で移動させ、これにより移動枠14に取り付けられた像振れ補正用レンズ16を移動させ、レンズ鏡筒6が振動しても撮像素子Eに結像される像が乱れることがないように駆動される。
【0029】
固定枠12は、概ねドーナツ板状の形状を有し、その上に3つの駆動用コイル20a、20b、20cが配置されている。図2に示すように、これら3つの駆動用コイル20a、20b、20cは、その中心が、レンズユニット2の光軸を中心とする同一円周上にそれぞれ配置されている。本実施形態においては、駆動用コイル20aは光軸の鉛直上方に配置され、駆動用コイル20b、20cは、駆動用コイル20aに対して中心角120゜ずつ間隔を隔てて配置されている。即ち、駆動用コイル20a、20b、20cは、光軸を中心とする円周上に等間隔に配置されている。また、駆動用コイル20a、20b、20cは、夫々、その巻線が角の丸い矩形状に巻かれ、この矩形の中心線が円周の半径方向と一致するように配置されている。
【0030】
移動枠14は、概ねドーナツ板状の形状を有し、固定枠12に対して平行に配置されている。移動枠14の中央の開口には、像振れ補正用レンズ16が取り付けられている。また、移動枠14上の円周の、各駆動用コイル20a、20b、20cに対応する位置には、長方形の駆動用磁石22a、22b、22cが夫々埋め込まれている。なお、本明細書において、駆動用コイルに対応する位置とは、駆動用コイルによって形成される磁界の影響が実質的に及ぶ位置を意味している。また、駆動用磁石の裏側、即ち、各駆動用コイルの反対側には、各駆動用磁石の磁束が、固定枠12の方に効率良く差し向けられるように、長方形のバックヨーク28が夫々取り付けられている。
【0031】
また、固定枠12の各駆動用コイルの裏側、即ち、移動枠14の反対側には、長方形の吸着用ヨーク26が夫々取り付けられている。移動枠14は、各駆動用磁石22a、22b、22cが、それに対応して取り付けられた吸着用ヨーク26に及ぼす磁力によって、固定枠12に吸着される。本実施形態においては、駆動用磁石の磁力線が、吸着用ヨーク26に効率良く到達するように、固定枠12を非磁性材料で構成している。
【0032】
次に、図5を参照して、駆動用磁石が及ぼす磁力について説明する。駆動用磁石22a、22b、22c、バックヨーク28及び吸着用ヨーク26は、夫々長方形の形状を有しており、各長辺、短辺が夫々重なり合うように配置されている。また、駆動用コイル20a、20b、20cは、その各辺が、長方形のバックヨーク28の各長辺、短辺と夫々平行になるように配置されている。さらに、各駆動用磁石は、その磁極の境界線である着磁境界線Cが、各駆動用磁石が配置されている円周の半径方向に一致するように向けられている。
【0033】
これにより、駆動用磁石22a、バックヨーク28及び吸着用ヨーク26は、磁気回路を構成し、図5(a)に矢印で示す磁力線が形成される。駆動用磁石22aは、対応する駆動用コイル20aに電流が流れると、円周の接線方向の駆動力を受ける。他の駆動用コイル20b、20cについても、同様の位置関係で対応する駆動用磁石22b、22c、バックヨーク28及び吸着用ヨーク26が配置されている。
【0034】
なお、本明細書において、着磁境界線Cとは、駆動用磁石の両端が夫々S極、N極となるように着磁されているとき、その着磁されている磁極の境界線を言うものとする。従って、本実施形態においては、着磁境界線Cは、長方形の駆動用磁石の各長辺の中点を通るように位置する。また、図5(b)に示すように、駆動用磁石22aは、その厚さ方向にも極性が変化しており、図5(b)において左下の角がS極、右下がN極、左上がN極、右上がS極になっている。
【0035】
次に、図6及び図7を参照して、移動枠14の位置検出を説明する。
図6及び図7は、駆動用磁石22aの移動とホール素子24aから出力される信号との関係を説明する図である。図6に示すように、ホール素子24aの感度中心点Sが、駆動用磁石22aの着磁境界線C上に位置する場合には、ホール素子24aからの出力信号はゼロである。移動枠14と共に駆動用磁石22aが移動され、ホール素子24aの感度中心点が駆動用磁石22aの着磁境界線上から外れると、ホール素子24aの出力信号が変化する。図6に示すように、駆動用磁石22aが着磁境界線Cに直交する方向、即ち、X軸方向に移動すると、ホール素子24aは、正弦波状の信号を発生する。従って、この移動量が微小である場合には、ホール素子24aは、駆動用磁石22aの移動距離にほぼ比例した信号を出力する。本実施形態において、駆動用磁石22aの移動距離が、駆動用磁石22aの長辺の長さの3%程度以内の場合には、ホール素子24aから出力される信号は、ホール素子24aの感度中心点Sと駆動用磁石22aの着磁境界線Cの間の距離にほぼ比例する。また、本実施形態では、防振アクチュエータ10は、通常作動領域においては各ホール素子の出力が距離にほぼ比例する範囲内で作動する。
【0036】
図7(a)乃至(c)に示すように、ホール素子24aの感度中心点S上に駆動用磁石22aの着磁境界線Cが位置する場合には、図7(b)のように駆動用磁石22aが回転移動した場合、図7(c)のように駆動用磁石22が着磁境界線Cの方向に移動した場合とも、ホール素子24aからの出力信号はゼロである。また、図7(d)乃至(f)に示すように、駆動用磁石22aの着磁境界線Cがホール素子24aの感度中心点Sから外れた場合には、感度中心点Sと着磁境界線Cの距離rに比例した信号がホール素子24aから出力される。従って、感度中心点Sから着磁境界線Cまでの距離rが同じであれば、図7(d)のように駆動用磁石22aが着磁境界線Cに直交する方向に移動した場合、図7(e)のように駆動用磁石22aが並進及び回転移動した場合、図7(f)のように任意の方向に並進移動した場合とも、何れも同じ大きさの信号がホール素子24aから出力される。
【0037】
ここでは、ホール素子24aについて説明したが、他のホール素子24b、24cも、それらに対応する駆動用磁石22b、22cとの位置関係に基づいて同様の信号を出力する。このため、各ホール素子24a、24b、24cによって検出された信号に基づいて、移動枠14が固定枠12に対して並進移動及び回転移動した位置を特定することができる。
【0038】
次に、図2乃至図4を参照して、スチールボール18による移動枠14の支持機構を説明する。
図2乃至図4に示すように、3つのスチールボール18は、固定枠12と移動枠14の間に夫々配置されている。3つのスチールボール18は、夫々、中心角120゜の間隔を隔てて配置され、各スチールボール18が、各駆動用コイルの間に位置するように配置されている。図4に示すように、移動枠14は駆動用磁石22によって固定枠12に吸着されるので、各スチールボール18は固定枠12と移動枠14の間に挟持されることになる。これにより、移動枠14は固定枠12に平行な平面上に支持され、各スチールボール18が挟持されながら転がることによって、移動枠14の固定枠12に対する任意の方向の並進運動及び回転運動が許容される。
【0039】
また、本実施形態においては、スチールボール18として鋼製の球体を使用しているが、スチールボール18は必ずしも球体でなくても良い。即ち、防振アクチュエータ10の作動中において固定枠12及び移動枠14と接触する部分が概ね球面の形状を有する形態であればスチールボール18として使用することができる。なお、本明細書において、このような形態を球状体という。また、球状体は、鋼製でなくても良く、樹脂等で形成することもできる。
【0040】
また、図4に示すように、固定枠12には、各スチールボール18を取り囲むように、円環状のボール落下防止壁12aが設けられている。このため、各スチールボール18は、各ボール落下防止壁12aで囲まれた内側の平面部分で固定枠12と接触する。各スチールボール18と接触する固定枠12の平面部分は、固定部平面部12bを構成する。
【0041】
同様に、移動枠14には、各スチールボール18を取り囲むように、円環状のボール落下防止壁14aが設けられている。このため、各スチールボール18は、各ボール落下防止壁14aで囲まれた内側の平面部分で移動枠14と接触する。各スチールボール18と接触する移動枠14の平面部分は、可動部平面部14bを構成する。
【0042】
次に、図8を参照して、防振アクチュエータ10による像振れ防止制御を説明する。図8は、コントローラ36における信号処理を示すブロック図である。コントローラ36は、以下に説明する機能を果たすアナログ及び/又はデジタル回路により構成することができる。図8に示すように、レンズユニット2の振動は、2つのジャイロ34a、34bによって時々刻々検出され、コントローラ36に内蔵されたバッファーアンプ38a、38bに夫々入力される。本実施形態においては、ジャイロ34aはレンズユニット2のヨーイング運動の角速度を、ジャイロ34bはピッチング運動の角速度を夫々検出するように構成され、配置されている。各バッファーアンプ38a、38bから出力された信号は積分回路40a、40bに夫々入力され、ここで、振れ角速度の信号が、振れ角度の信号に変換される。振れ角度信号は光学特性補正回路42に入力され、ここで、レンズユニット2の振れ角度に対して必要な像振れ補正用レンズ16のX方向、Y方向の移動量を示すレンズ位置指令信号Dx、Dyに変換される。レンズ位置指令信号に従って像振れ補正用レンズ16を時々刻々移動させることにより、レンズユニット2が振動した場合にも、ビデオカメラ本体4内の撮像素子Eに合焦される像は乱れることなく安定化される。
【0043】
レンズ位置指令信号Dx、Dyは、演算回路44b、44cに夫々入力される。演算回路44b、44cは、レンズ位置指令信号に基づいて、各駆動用コイル20b、20cに対するコイル位置指令信号を生成するように構成されている。コイル位置指令信号は、像振れ補正用レンズ16をレンズ位置指令信号で指定された位置へ移動させたときの、各駆動用コイル20a、20b、20cとそれに対応した駆動用磁石22a、22b、22cの位置関係を表す信号である。すなわち、各駆動用磁石が、各駆動用コイルに対するコイル位置指令信号によって指令された位置に移動されると、その結果、像振れ補正用レンズ16は、レンズ位置指令信号によって指令された位置へ移動される。本実施形態においては、駆動用コイル20aが光軸の鉛直上方に設けられているので、駆動用コイル20aに対するコイル位置指令信号raは、レンズ位置指令信号のX方向成分Dxと等しくなる。一方、駆動用コイル20b、20cに対するコイル位置指令信号rb、rcは、レンズ位置指令信号のX方向成分Dx及びY方向成分Dyに基づいて、演算回路44b、44cによって生成される。演算回路44b、44cにおける信号処理については後述する。
【0044】
コイル位置指令信号ra、rb、rcは、コイル駆動回路46a、46b、46cに夫々入力される。コイル駆動回路46a、46b、46cの出力は、駆動用コイル20a、20b、20cに夫々接続され、これにより各駆動用コイルに駆動電流が流される。
【0045】
一方、各駆動用磁石の各駆動用コイルに対する移動量は、ホール素子24a、24b、24cによって測定される。ホール素子24a、24b、24cによって測定された移動量は、位置検出回路48a、48b、48cに入力される。位置検出回路48a、48b、48cの出力は、各コイル位置指令信号ra、rb、rcから差し引かれる。即ち、各コイル駆動回路46a、46b、46cは、各コイル位置指令信号ra、rb、rcと、各位置検出回路48a、48b、48cから出力された位置信号との差に比例した電流を各駆動用コイル20a、20b、20cに流す。従って、コイル位置指令信号と各位置検出回路からの出力に差がなくなると、即ち、各駆動用磁石がコイル位置指令信号によって指令された位置に到達すると、各駆動用コイルには電流が流れなくなり、駆動用磁石に作用する駆動力がゼロになる。
【0046】
また、各位置検出回路48a、48b、48cには、コントローラ36に内蔵されたオフセット設定手段37から出力されるオフセット信号が入力されるように構成されている。これにより、各位置検出回路48a、48b、48cの出力信号は、ホール素子24a、24b、24cによって実際に検出された位置に対して、オフセット信号分シフトした値になる。なお、オフセット設定手段37は、例えば、オフセット信号を記憶したメモリと、メモリに記憶されたオフセット信号をアナログ信号に変換するD/A変換器により構成することができる。
【0047】
次に、図9を参照して、移動枠14を並進運動させる場合における、レンズ位置指令信号とコイル位置指令信号との関係を説明する。図9は、固定枠12上に配置された駆動用コイル20a、20b、20c、及び移動枠14上に配置された駆動用磁石22a、22b、22cの位置関係を示す図である。まず、3つの駆動用コイル20a、20b、20cは、その中心点が、点Qを原点とする半径Rの円周上の点Sa、Sb、Sc上に夫々配置されている。また、各ホール素子24a、24b、24cも、それらの感度中心点Sが点Sa、Sb、Sc上に位置するように夫々配置されている。さらに、移動枠14が、図2に示すオフセットされていない制御中心位置にある場合には、像振れ補正用レンズ16の中心と撮像用レンズ8の光軸が一致し、各駆動用コイルに対応した各駆動用磁石の着磁境界線Cの中点も夫々点Sa、Sb、Sc上に位置し、各着磁境界線Cは、点Qを中心とする円の半径方向に向けられる。移動枠14は、この動作中心位置を中心に並進移動され、像振れ防止制御が実行される。
【0048】
次に、点Qを原点とする水平軸線をX軸、鉛直軸線をY軸とし、図9に実線で示すように、画像安定化用レンズ16の中心点Q1が、Y軸方向にDy、X軸方向に−Dx並進移動された場合を考える。移動枠14をこのように移動させると、各駆動用磁石22a、22b、22cの着磁境界線Cは、図9に一点鎖線で示された位置に移動される。ここで、駆動用磁石22aの着磁境界線Cと点Saとの間の距離をra、駆動用磁石22bの着磁境界線Cと点Sbとの間の距離をrb、駆動用磁石22cの着磁境界線Cと点Scとの間の距離をrcとする。この距離ra、rb、rcは、画像安定化用レンズ16をY軸方向にDy、X軸方向に−Dx移動させたとき、各ホール素子24a、24b、24cによって検出される移動距離に該当する。これらの距離ra、rb、rcは、X軸方向、Y軸方向の移動距離Dx、Dyに対して一意的に決定されるものである。従って、画像安定化用レンズ16をX軸方向、Y軸方向に夫々Dx、Dy移動させるためには、これに対応した距離ra、rb、rcをコイル位置指令信号として与えればよい。
【0049】
ここで、各距離ra、rb、rcの正の方向を図9に矢印a、b、cで示すように定義すると、ra、rb、rcと、Dx、Dyの関係は次の(数式1)で与えられる。

図8において説明した各演算回路44b、44cは、夫々上記数式1の第2、第3式に対応する演算を実行して、コイル位置指令信号rb、rcを生成している。
【0050】
次に、移動枠14を回転運動させる場合におけるコイル位置指令信号を説明する。移動枠14を回転運動させるには、各コイル位置指令信号として同一の値を与えればよい。即ち、移動枠14を角度θ[rad]だけ時計回りに回転させるための各コイル位置指令信号は、

このように、各駆動用磁石が各駆動用コイルに対して同一距離接線方向に移動されることにより、移動枠14は、像振れ補正用レンズ16の光軸と撮像用レンズ8の光軸が一致した状態を保持しながら、光軸を中心に回転される。
【0051】
次に、図1及び図8を参照して、本発明の実施形態によるビデオカメラ1の作用を説明する。まず、ビデオカメラ1の手ブレ防止機能の起動スイッチ(図示せず)をオンにすることにより、レンズユニット2に備えられた防振アクチュエータ10が作動される。レンズユニット2に取り付けられたジャイロ34a、34bは、所定周波数帯域の振動を時々刻々検出し、コントローラ36に出力する。ジャイロ34aはレンズユニット2のヨーイング方向の角速度の信号を出力し、ジャイロ34bはピッチング方向の角速度の信号を出力する。入力された各角速度信号は、バッファーアンプ38a、38b、積分回路40a、40b、光学特性補正回路42を経てレンズ位置指令信号Dx、Dyに変換される。光学特性補正回路42から時系列で出力されるレンズ位置指令信号によって指令される位置に、像振れ補正用レンズ16を時々刻々移動させることによって、ビデオカメラ本体4の撮像素子Eに合焦される像が安定化される。
【0052】
光学特性補正回路42から出力された水平方向のレンズ位置指令信号Dxは、コイル駆動回路46aを介して、駆動用コイル20aに対するコイル位置指令信号raとして出力される。また、演算回路44bには、水平方向のレンズ位置指令信号Dx及び鉛直方向のレンズ位置指令信号Dyが入力され、数式1の第2式に基づいて駆動用コイル20bに対するコイル位置指令信号rbが生成される。同様に、演算回路44cには、レンズ位置指令信号Dx、Dyが入力され、数式1の第3式に基づいて駆動用コイル20cに対するコイル位置指令信号rcが生成される。
【0053】
一方、駆動用コイル20aに対応するホール素子24aは位置検出回路48aに検出信号を出力する。位置検出回路48aの出力信号は、駆動用コイル20aに対するコイル位置指令信号raから差し引かれ、これらの差に比例した電流が、コイル駆動回路46aを介して駆動用コイル20aに出力される。同様に、ホール素子24bの検出信号とコイル位置指令信号rbの差に比例した電流がコイル駆動回路46bを介して駆動用コイル20bに出力され、ホール素子24cの検出信号とコイル位置指令信号rcの差に比例した電流がコイル駆動回路46cを介して駆動用コイル20cに出力される。
【0054】
各駆動用コイルに電流が流れることにより、電流に比例した磁界が発生する。この磁界により各駆動用コイルに対応して配置された各駆動用磁石は夫々、コイル位置指令信号ra、rb、rcによって指定された位置に近づく方向の駆動力を受け、移動枠14が移動される。駆動用磁石が、この駆動力によってコイル位置指令信号により指定された位置に到達すると、コイル位置指令信号とホール素子の検出信号が一致するので駆動回路の出力はゼロとなり、駆動力もゼロになる。また、外乱、又は、コイル位置指令信号の変化等により、各駆動用磁石がコイル位置指令信号により指定された位置から外れると、再び各駆動用コイルに電流が流され、各駆動用磁石はコイル位置指令信号によって指定された位置に戻される。
【0055】
以上の作用が時々刻々繰り返されることにより、各駆動用磁石を有する移動枠14に取り付けられた像振れ補正用レンズ16が、レンズ位置指令信号に追従するように移動される。これにより、ビデオカメラ本体4の撮像素子Eに合焦される像が安定化される。
【0056】
次に、図2、図3及び図8を参照して、コントローラ36に内蔵されたオフセット設定手段37の作用を説明する。
本実施形態においては、オフセット設定手段37は、所定の正の値、0、所定の負の値のオフセット信号を、所定時間ごとに切り換えて発生するように構成されている。図8に示すように、オフセット設定手段37のオフセット信号は位置検出回路48a、48b、48cに夫々入力される。位置検出回路48a、48b、48cはオフセット信号が入力されると、オフセット信号分、その出力が夫々シフトされる。
【0057】
移動枠14が、図2に示すオフセットされていない制御中心位置にあり、レンズ位置指令信号Dx、Dyが共に0である場合においては、上述したように、各コイル位置指令信号、及び位置検出回路48a、48b、48cの出力信号は、何れも0となる。この状態において、オフセット設定手段37の出力するオフセット信号が0から所定の値に変化すると、位置検出回路48a、48b、48cの各出力信号は、0から所定の値に変化する。これにより、各駆動用コイル20a、20b、20cには、コイル駆動回路46a、46b、46cを介して駆動電流が流れる。ここで、各位置検出回路48a、48b、48cの出力信号のシフト量は夫々等しいので、各駆動用コイル20a、20b、20cには、夫々同一の電流が流れる。
【0058】
数式2に示したように、各駆動用コイル20a、20b、20cに同一の電流が流れた場合には、移動枠14は並進移動されず、所定角度の回転移動のみが発生する。即ち、移動枠14は像振れ補正用レンズ16の光軸の位置を維持したまま、光軸を中心に回動される。これにより移動枠14は、図3に示すオフセットされた制御中心位置に回動される。移動枠14が図3に示す位置に移動されると、ホール素子24a、24b、24cの出力信号が、オフセット設定手段37によるオフセット信号を打ち消すように変化するので、各位置検出回路48a、48b、48cの出力は0となり、各駆動用コイル20a、20b、20cに流れる電流も0になる。
【0059】
移動枠14が図3に示すオフセットされた制御中心位置に移動された状態で、レンズ位置指令信号Dx、Dyが入力されると、移動枠14はオフセットされた制御中心位置を中心に並進移動され、撮像素子E上の画像が安定化される。一方、オフセット設定手段37の出力するオフセット信号が、逆の極性に変化された場合には、移動枠14は、図2に示すオフセットされていない制御中心位置から光軸を中心に反時計回りに回動されたオフセットされた制御中心位置(図示せず)に移動される。
【0060】
オフセット設定手段37により、所定時間ごとに制御中心位置をオフセットさせることによって、制御中心位置におけるスチールボール18と、固定部平面部12b及び可動部平面部14bとの接触点が変化される。これにより、固定部平面部12b及び可動部平面部14bの摩耗が低減される。
【0061】
なお上記の説明においては、簡単のために、各レンズ位置指令信号が0の状態において、オフセット信号を切り換えているが、各レンズ位置指令信号が0でない状態、即ち、防振アクチュエータ10による防振制御中にオフセット信号を切り換えることもできる。
【0062】
次に、制御中心位置をオフセットさせることによる防振制御への影響を説明する。
本実施形態においては、オフセット設定手段37により、制御中心位置は約±1deg(π/180rad)オフセットされる。また、本実施形態においては、各スチールボール18は光軸から半径方向に約12mm離れた位置に配置されているので、このオフセットにより、各スチールボール18と固定部平面部12b、可動部平面部14bの接触位置は約0.2mm円周方向に移動される。各スチールボール18と固定部平面部12b、可動部平面部14bの接触面積は十分に小さいので、約0.2mmの接触位置の移動により、固定部平面部12b、及び可動部平面部14bの摩耗は、効果的に抑制される。
さらに、各コイル位置指令信号ra、rb、rcは、上述したように、数式1により計算される。数式1においては、レンズ位置指令信号Dx、Dyの係数として、cos(0)、cos(-π/2)、cos(2π/3)、cos(π/6)、cos(4π/3)、cos(5π/6)が使用されている。ここで、制御中心位置が1deg(π/180rad)オフセットされた場合における数式1の各係数の値の変化量を表1に示す。

表1

【0063】
表1に示すように、数式1中の係数の値の変化量は、何れも0.02以下であり、約±1degのオフセットがコイル位置指令信号に与える影響は小さく、約2%になることが予想される。従って、制御中心位置がオフセットされた場合においても、オフセットされていない場合と同様の制御により、十分な精度で移動枠14を移動させることができる。
【0064】
或いは、制御中心位置がオフセットされた場合における正確なコイル位置指令信号の計算式を導き、制御中心位置がオフセットされた場合にはその計算式に基づいて防振制御が実行されるようにコントローラ36を構成しても良い。このようにコントローラを構成することにより、オフセット量を大きく設定した場合にも精度良く防振制御を実行することができる。
【0065】
本発明の実施形態のビデオカメラによれば、スチールボールと固定部平面部又は可動部平面部との接触位置が、オフセット設定手段により変更されるので、移動枠が制御中心位置にある場合において、スチールボールと固定部平面部又は可動部平面部が、常に同じ位置で接触されるのが防止され、固定部平面部又は可動部平面部の摩耗を抑制することができる。
また、本実施形態のビデオカメラによれば、移動枠が像振れ防止用レンズの光軸を中心に回動されるように制御中心位置がオフセットされるので、撮像中に制御中心位置をオフセットさせた場合においても画像に殆ど悪影響を与えることがない。
【0066】
さらに、本実施形態のビデオカメラによれば、3つの駆動用コイルと駆動用磁石により、画像を安定化させるための像振れ防止用レンズの並進移動、及び制御中心位置をオフセットさせるための回転移動の両方を実行することができる。
また、本実施形態のビデオカメラによれば、オフセット設定手段は、3種類の一定の電圧を段階的に切り換えるだけで制御中心位置をオフセットさせることができるので、オフセット設定手段を簡便に構成することができる。
【0067】
また、上述した実施形態においては、オフセット設定手段は、正、負、0のオフセット信号を切り換えて出力し、段階的に3種類の制御中心位置が切り換えられていたが、変形例として、制御中心位置を時間の経過と共に連続的に移動させても良い。この変形例は、監視用のビデオカメラ等、長時間連続して撮像を行うカメラに好適である。
【0068】
例えば、図10に示すように、オフセット信号が時間と共に三角波状に変化するようにオフセット設定手段を構成することができる。この場合には、制御中心位置は、オフセットのない状態(図10におけるt1)から少しずつ時計回りに移動され、オフセット量が約1degに到達(t2)すると、反時計回りの移動が開始され、オフセットのない状態(t3)に復帰される。更に、制御中心位置は反時計回りに移動され、オフセット量が約−1degに到達(t4)すると、時計回りの移動が開始され、オフセットのない状態(t5)に復帰される。この変形例においては、制御中心位置の1周期の移動が約10分間で行われ、この移動が繰り返される。このように、制御中心位置がオフセットされる速度はきわめて遅く設定されているため、制御中心位置の移動が防振制御に悪影響を与えることはない。
【0069】
このように構成された変形例によれば、制御中心位置が連続的に移動されるので、制御中心位置が同一の位置に留まる時間が非常に短く、固定部平面部又は可動部平面部の摩耗をより効果的に抑制することができる。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態では、本発明の防振アクチュエータをビデオカメラに適用していたが、本発明は、デジタルカメラ、フィルムカメラ等、静止画又は動画撮像用の任意のカメラに適用することができる。また、本発明を、これらのカメラのカメラ本体と共に使用されるレンズユニットに適用することもできる。
【0071】
また、上述した実施形態においては、3つの制御中心位置が所定時間ごとに切り換えられていたが、例えば、本発明を静止画撮影用に適用する場合には、制御中心位置の切換を、手振れ防止機能がオンにされたとき、又はカメラの電源がオンにされたとき行うように構成しても良い。
【符号の説明】
【0072】
1 本発明の実施形態のビデオカメラ
2 レンズユニット
4 ビデオカメラ本体
6 レンズ鏡筒
8 撮像用レンズ
10 防振アクチュエータ
12 固定枠(固定部)
12a ボール落下防止壁
12b 固定部平面部
14 移動枠(可動部)
14a ボール落下防止壁
14b 可動部平面部
16 像振れ補正用レンズ
18 スチールボール(球状体)
20a、20b、20c 駆動用コイル
22a、22b、22c 駆動用磁石
24a、24b、24c ホール素子
26 吸着用ヨーク
28 バックヨーク
34a、34b ジャイロ
36 コントローラ(制御手段)
37 オフセット設定手段
38a、38b バッファーアンプ
40a、40b 積分回路
42 光学特性補正回路
44b、44c 演算回路
46a、46b、46c コイル駆動回路
48a、48b、48c 位置検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像振れ防止用レンズを、その光軸に直交する平面内で所定の制御中心位置を中心に並進移動させることにより像振れを防止する防振アクチュエータであって、
固定部平面部を備えた固定部と、
可動部平面部を備え、上記像振れ防止用レンズが取り付けられた可動部と、
上記固定部平面部と上記可動部平面部の間に挟持され、上記可動部を上記固定部に対して平行な平面内で移動可能に支持する少なくとも3つの球状体と、
上記可動部を上記固定部に対して駆動する駆動手段と、
この駆動手段を制御して、上記像振れ防止用レンズを移動させ、画像を安定化させる制御手段と、を有し、
上記制御手段は、上記球状体と、上記固定部平面部又は上記可動部平面部との接触位置が変更されるように、上記制御中心位置をオフセットさせるオフセット設定手段を有することを特徴とする防振アクチュエータ。
【請求項2】
上記オフセット設定手段は、上記可動部が光軸を中心に回動されるように、上記制御中心位置をオフセットさせる請求項1記載の防振アクチュエータ。
【請求項3】
上記駆動手段は、上記可動部が光軸を中心に回動された上記制御中心位置に、上記可動部を上記固定部に対して回動させることができるように構成されている請求項2記載の防振アクチュエータ。
【請求項4】
上記オフセット設定手段は、上記制御中心位置を、時間の経過と共に連続的に移動させる請求項1乃至3の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項5】
上記オフセット設定手段は、上記制御中心位置を、段階的に移動させる請求項1乃至3の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項6】
上記駆動手段は、概ね同一円周上に少なくとも3つ配置され、上記各駆動手段は、概ね上記円周方向の駆動力を発生するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の防振アクチュエータ。
【請求項7】
レンズ鏡筒と、
このレンズ鏡筒の中に配置された撮像用レンズと、
上記レンズ鏡筒に取り付けられた請求項1乃至6の何れか1項に記載の防振アクチュエータと、
を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項8】
請求項7記載のレンズユニットと、
このレンズユニットが取り付けられたカメラボディと、
を有することを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−81060(P2011−81060A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231293(P2009−231293)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】