説明

防振ユニット

【課題】部品点数、工数および材料コストを低減して、製品コストを抑制できる防振ユニットを提供すること。
【解決手段】ストッパゴム部材42の一側がダイヤフラム14の外縁に連なる。よって、これらを同時に加硫成形することができるので、部品点数を低減できる。また、ダイヤフラム14の外筒部材12への取り付けにより、同時にストッパゴム部材42も固定できるので、工数を低減できる。さらに、ストッパゴム部材42の一側がダイヤフラム14の外縁に連なるので、これらが軸方向視において重複することを回避でき、ゴム材料を効率的に使用できる。以上により、部品点数、工数および材料コストを低減して、防振ユニット1全体としての製品コストを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振ユニットに関し、特に、部品点数、工数および材料コストを低減して、製品コストを抑制できる防振ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンを支持固定しつつ、そのエンジン振動を車体へ伝達させないようにする防振ユニットとして、液封入式防振装置を備えるものが知られている。この防振ユニットは、液封入式防振装置がエンジン側ブラケット及び車体側ブラケットを介して、エンジンと車体との間に介設される。
【0003】
例えば、特許文献1には、下側取付具12(ボス部材)と上側取付具14(外筒筒部)との間を防振基体16で連結すると共に、防振基体16とダイヤフラム30との間に液封入室28を形成した防振装置本体18(液封入式防振装置)を、正面視矩形の枠状の第2ブラケット22(車体側ブラケット)を介して下側取付具12を車体側に取り付けると共に、側方に突出する第1ブラケット20(エンジン側ブラケット)を介して上側取付具14をエンジン側に取り付けて構成される倒立タイプの防振ユニットが開示される。
【0004】
この防振ユニットには、下側取付具12に対する上側取付具14の過大な相対変位を緩衝させつつ規制するストッパ機構として、第1ブラケット20にストッパゴム部84が装着される。ストッパゴム部84は、防振装置本体18の上面を覆うように設けられ第2ブラケット22の上壁部76に対向する第1ストッパゴム部86と、その第1ストッパゴム部86の縁部から下方へ延設され第1ブラケット20の筒状保持部46(被圧入部)と第2ブラケット22の縦壁部74(側壁部)との間に介設される第2ストッパゴム部88とを備える。
【0005】
なお、第2ストッパゴム部88の下端には、固定用ゴム片96が径方向内方へ向けて延設され、この固定用ゴム片96が、上側取付具14のフランジ部26と第1部ラケット20の筒状保持部46の下端46cとの間で挟持されることで、ストッパゴム部84が脱落や位置ズレなく固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−14080号公報(図1から図3、図14から図16、及び、段落0029,0036〜0038など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の防振ユニットでは、ストッパゴム部84を単体で加硫成形し、第1ブラケット20に被せて装着する構成なので、部品点数が増加する。また、防振ユニットの製造工程において、フランジ部26と筒状保持部46との間に固定用ゴム片96が適正に挟持されているかを確認して管理する必要があるため、工数が増加する。更に、防振装置本体18の上面を覆う第1ストッパゴム部86の一部が軸方向視においてダイヤフラム30の一部と重複するため、ゴム材料が非効率に使用される。このように、従来の防振ユニットでは、ストッパゴム部の装着に伴い、部品点数、工数および材料コストが増加して、その分、製品コストが嵩むという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、部品点数、工数および材料コストを低減して、製品コストを抑制できる防振ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
請求項1記載の防振ユニットによれば、ストッパゴム部材のストッパゴム上面部が車体側ブラケットの上面部に当接されることで、ボス部材に対する外筒部材の軸方向への相対変位が緩衝されつつ規制され、ストッパゴム部材のストッパゴム側壁部が車体側ブラケットの側壁部に当接されることで、ボス部材に対する外筒部材の軸直角方向への相対変位が緩衝されつつ規制される。
【0010】
この場合、ストッパゴム部材のストッパゴム上面部は、その一側がダイヤフラムの外縁に連なる、即ち、ストッパゴム部材とダイヤフラムとが一体に形成される。これにより、ストッパゴム部材とダイヤフラムとを同時に加硫成形することができるので、ダイヤフラムとは別にストッパゴム部材を単体で加硫成形する必要がある従来品と比較して、部品点数を低減できる。また、ダイヤフラムを外筒部材に取り付けることで、同時にストッパゴム部材も固定されるので、従来品のように固定用ゴム片が適正に挟持されているかを確認して管理する必要がないので、その分、工数を低減できる。さらに、ストッパゴム上面部がダイヤフラムの外縁に連なるので、従来品のようにストッパ部材の一部がダイヤフラムの一部と軸方向視において重複することを回避でき、ゴム材料を効率的に使用できる。以上により、請求項1によれば、部品点数、工数および材料コストを低減して、防振ユニット全体としての製品コストを抑制できる。
【0011】
請求項2記載の防振ユニットによれば、請求項1記載の防振ユニットの奏する効果に加え、外筒部材および環状取付部材が樹脂材料から形成され、外筒部材へのダイヤフラムの取り付けを、外筒部材に環状取付部材を超音波溶着により溶着することで、行うことができるので、作業性の向上を図ることができる。
【0012】
即ち、ストッパゴム部材のストッパゴム上面部がダイヤフラムの外縁に連なるので、環状取付部材の上面は、ゴム状弾性体により覆われる。そのため、例えば、環状取付部材を外筒部材に圧入する構造では、圧入治具を当接させる部分を、環状取付部材の上面に確保できず、その上面を覆うゴム状弾性体を直接押圧する必要が生じるため、その作業性が悪い。なお、圧入治具を当接させるために、ゴム状弾性体を部分的に省略して、環状取付部材の上面の一部を露出させた場合には、ストッパ機能を発揮させる際の緩衝作用が低下して、異音の発生を招く。
【0013】
請求項3記載の防振ユニットによれば、請求項2記載の防振ユニットの奏する効果に加え、環状取付部材が外筒部材の内周側に内嵌または外周側に外嵌される筒部を備えるので、かかる環状取付部材の筒部が内周側に内嵌された外筒部材の外周側または外筒部材の外周側に外嵌された環状取付部材の筒部の外周側に超音波溶着を施すことで、外筒部材と環状取付部材の筒部とを溶着することができる。即ち、ダイヤフラムと環状取付部材の環状部とが加硫接着される接着界面を避けて、超音波溶着を施すことができる。その結果、ダイヤフラムと環状取付部材の環状部との間の接着界面が超音波により剥がれることを抑制できる。
【0014】
請求項4記載の防振ユニットによれば、請求項3記載の防振ユニットの奏する効果に加え、外筒部材が、下端側に位置する大径筒部と、その大径筒部よりも小径に形成され上端側に位置する小径筒部とを備え、大径筒部がエンジン側ブラケットの被圧入部に圧入されると共に、環状取付部材の筒部が、外筒部材の小径筒部の内周側に内嵌されるので、外筒部材の小径筒部の外周面とエンジン側ブラケットの被圧入部の内周面との間に空間を形成することができる。これにより、外筒部材の小径筒部の外周側から超音波溶着を施す際には、ホーンの作業空間を確保することができるので、超音波溶着の作業性の向上を図ることができる。
【0015】
また、これにより、エンジン側ブラケットの被圧入部の上端面を、外筒部材の小径筒部の上端面よりも下方に位置させる(即ち、車体側ブラケットの上面部から離間する方向へ後退させる)必要がなく、かかるエンジン側ブラケットの被圧入部の上端面を、外筒部材の小径筒部の上端面(又は環状取付部材の上端面)と同等の位置に配置することができる。これにより、ストッパ機能を発揮する際には、ストッパゴム部材のストッパゴム上面部の受圧面積を確保して、その耐久性の向上を図ることができる。また、外筒部材の小径筒部の上端面(又は環状取付部材の上端面)とエンジン側ブラケットの被圧入部の上端面との両者で、車体側ブラケットの上面部からの反力を分担することができるので、これら外筒部材(又は環状取付部材)及びエンジン側ブラケットの耐久性の向上を図ることができる。
【0016】
請求項5記載の防振ユニットによれば、請求項4記載の防振ユニットの奏する効果に加え、環状取付部材は、環状部の外縁部分が筒部から径方向外方へ張り出して形成され、この筒部から径方向外方へ張り出して形成された環状部の外縁部分の下面が、外筒部材の小径筒部の上端面に当接されるので、超音波溶着を施す際の作業性の向上を図ることができると共に、ストッパ機能の発揮に伴う溶着部分の破損を防止できる。
【0017】
即ち、外筒部材の小径筒部の内周側に環状取付部材の筒部を内嵌させる(挿入する)際には、その筒部から径方向外方へ張り出して形成された環状部の外縁部分が、外筒部材の小径筒部の上端面に当接されることで、筒部の挿入方向位置を位置決めすることができ、その分、作業性の向上を図ることができる。
【0018】
また、このように、筒部から径方向外方へ張り出して形成された環状部の外縁部分が、外筒部材の小径筒部の上端面に当接されることで、ボス部材に対する外筒部材の軸方向の相対変位が、車体側ブラケットの上面部によって規制される際には、その規制時の反力を、環状取付部材の環状部の外縁部分と外筒部材の小径筒部の上端面との係合部分で受けることができる。よって、その分、環状取付部材の筒部と外筒部材の小径筒部との溶着部分に作用する力を低減できる。
【0019】
請求項6記載の防振ユニットによれば、請求項1から5のいずれか1項に記載の防振ユニットの奏する効果に加え、液封入式防振装置が、液封入室を外部に連通させる減圧兼注入用孔と、その減圧兼注入用孔を封止する封止手段とを備えるので、エンジン側ブラケットの被圧入部に外筒部材を圧入した後に、液封入式防振装置の組み立て(液封入室への液体の充填)を行うことができ、その結果、組立設備の小型化と製造工程の効率化とを図ることができる。
【0020】
即ち、請求項6では、ダイヤフラムとストッパゴム部材とが一体に形成されるので、液封入式防振装置を液中で組み立てた後、かかる液封入式防振装置の外筒部材をエンジン側ブラケットの被圧入部に圧入するには、その圧入時、ストッパゴム部材が邪魔にならないように折り畳んでおくことが必要となり、工数が嵩む。一方、先に、エンジン側ブラケットの被圧入部に外筒部材を圧入しておき、その後、これらに仕切り部材やダイヤフラムなどを液中で組み付ける場合には、エンジン側ブラケットも液中に沈める必要が生じ、液体を貯留する貯留槽が大型化する。一方、請求項6によれば、エンジン側ブラケットの被圧入部に外筒部材を圧入した後、仕切り部材やダイヤフラム等を大気中で組み付け、真空引きにより、液封入室に液体を充填できるので、ストッパゴム部材を折り畳む工程を不要として、製造工程の効率化を図ることができ、また、液中での作業がないので、貯留槽を不要として、組立設備の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は、本発明の第1実施の形態における防振ユニットの上面図であり、(b)は、図1(a)の矢印Ib方向から視た防振ユニットの正面図である。
【図2】図1(a)のII−II線における防振ユニットの断面図である。
【図3】(a)は、ダイヤフラム及びストッパゴム部材の斜視図であり、(b)は、環状取付部材の斜視図である。
【図4】(a)は、図3(a)の矢印IVa方向視におけるダイヤフラム及びストッパゴム部材の下面図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるダイヤフラム及びストッパゴム部材の断面図である。
【図5】仕切り部材の上面図である。
【図6】(a)は、図5の矢印VIa方向視における仕切り部材の側面図であり、(b)は、図5のVIb−VIb線における仕切り部材の断面図である。
【図7】(a)は、第1成形体の断面図であり、(b)は、エンジン側ブラケット及び第1成形体の断面図である。
【図8】(a)は、第1ユニットの断面図であり、(b)は、第1ユニットの部分拡大断面図である。
【図9】第2実施の形態における防振ユニットの断面図である。
【図10】(a)は、ダイヤフラムの上面図であり、(b)は、図10(a)のXb−Xb線における環状取付部材の断面図である。
【図11】(a)は、環状取付部材の上面図であり、(b)は、図11(a)のXIb−XIb線における環状取付部材の断面図である。
【図12】第1ユニットの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照して、防振ユニット1の全体構成について説明する。
【0023】
図1(a)は、本発明の第1実施の形態における防振ユニット1の上面図であり、図1(b)は、図1(a)の矢印Ib方向から視た防振ユニット1の正面図である。また、図2は、図1(a)のII−II線における防振ユニット1の断面図である。なお、図2は、軸Oを含む断面に対応する。また、図2では、ボルトを断面視せずに図示する。
【0024】
図1及び図2に示すように、防振ユニット1は、自動車のエンジン(図示せず)を支持固定しつつ、そのエンジンの振動が車体(図示せず)へ伝達されることを抑制するための装置であり、ボス部材11と外筒部材12との間が防振基体13により連結された防振装置10と、その防振装置10の外筒部材12を保持すると共にエンジン側に取り付けられるエンジン側ブラケット20と、防振装置10のボス部材11が固定されると共に車体側に取り付けられる車体側ブラケット30とを備える。
【0025】
防振装置10は、軸O方向を鉛直方向に一致させた縦姿勢に配置されると共にボス部材11側を下方とした倒立状態に配置され、正面視枠状に形成される車体側ブラケット30によって周囲が取り囲まれる。エンジン側ブラケット20は、防振装置10の側方から径方向外方(軸O直角方向、図1(a)上方)へ向けて水平に張り出される。
【0026】
防振ユニット1が自動車のエンジンを車体に支持固定した状態(いわゆる1W状態)では、エンジンの重量により、防振基体13が圧縮変形され(即ち、外筒部材12がボス部材11へ近接変位され)、その分、防振装置10の上端側(ダイヤフラム14側)と車体側ブラケット30の上面部33との間に所定の隙間が形成される。この場合、ダイヤフラム14が仕切り部材15と反対側へ向けて膨張される。なお、図1及び図2では、エンジンを支持固定する前の状態(無負荷状態)が図示される。
【0027】
防振装置10は、車体側ブラケット30を介して車体側に取り付けられるボス部材11と、エンジン側ブラケット20を介してエンジン側に取り付けられる筒状の外筒部材12と、これら両部材11,12を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体13とを主に備える。ボス部材11は、アルミニウム合金から上窄まりの断面略円錐台形状に形成され、下面側(図2下側)が車体側ブラケット30の底面部31にボルトにより締結固定される。
【0028】
外筒部材12は、樹脂材料から上下端(図2上側および下側)が開口した筒状に形成され、ボス部材11の上方(図2上側)に同軸状に配設される。なお、外筒部材12は、段差を有して構成されており、その段差の下側(図2下側)に大径の大径筒部12aが、段差の上側(図2上側)に小径の小径筒部12bが、それぞれ形成される。また、大径筒部12bの下端側には、径方向外方へ張り出すフランジ状の張出部12cが形成される。外筒部材12は、大径筒部12aがエンジン側ブラケット20の被圧入部21に軸O方向に圧入され、張出部12cがエンジン側ブラケット20の被圧入部21の下端面に当接された状態で、保持される。
【0029】
防振基体13は、ゴム状弾性体から軸O回りに対称な下窄まりの断面略円錐台形状に形成され、ボス部材11の外面と外筒部材12(大径筒部12a及び段差の部分)の内壁面との間に加硫接着される。防振基体13の外筒部材12側の端部には、膜状のゴム膜が連なり、そのゴム膜により外筒部材12の小径筒部12bの内壁面が覆われる。
【0030】
外筒部材12の上端側(図2上側)には、ダイヤフラム14が密着(水密)状態で装着される。これにより、ダイヤフラム14の下面側と防振基体13の上面側との間に液体が封入される液封入室16が形成される。液封入室16には、エチレングリコールなどの不凍性の液体(図示せず)が封入される。仕切り部材15は、液封入室16を防振基体13側の第1液室16Aとダイヤフラム側の第2液室16Bとに仕切る部材であり、その外周側には、第1液室16Aと第2液室16Bとを連通させる流路であるオリフィス17が形成される。
【0031】
なお、液封入室16への液体の充填は、防振ユニット1(防振装置10)を組み立てた後、減圧兼注入用孔44c(図4参照)を介して液封入室16内を真空引きにより減圧して負圧とした後、その負圧を利用して、減圧兼注入用孔44cから液封入室16内へ液体を注入することで行われる。
【0032】
ダイヤフラム14は、仕切り部材15側に膨張した部分球状を有し軸O周りに対称な膜状に形成され、その外周縁には、防振装置10の上面側およびエンジン側ブラケット20の被圧入部21の外周側を覆うストッパゴム部材42が連なる。即ち、これらダイヤフラム14及びストッパゴム部材42は、ゴム状弾性体から一体に形成される。
【0033】
なお、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42は、樹脂材料から軸O方向視環状に形成される環状取付部44に加硫接着される。この環状取付部44が外筒部材12の上端側に内嵌され超音波溶着により連結されることで、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42が外筒部材12に取着される。
【0034】
仕切り部材15は、外周側に位置するオリフィス形成部51と、そのオリフィス形成部51の内周面側に一体に形成される変位規制部52と、オリフィス形成部51の下端側に配設されると共に変位規制部52と所定間隔を隔てて対向する変位規制部53と、それら一対の変位規制部52,53の対向面間に遊動可能に収納される弾性仕切り膜54とを備える。
【0035】
エンジン側ブラケット20は、平板状の被圧入部21と、その被圧入部21の一側(図1(a)右上側)角部から斜め方向に延設されるブロック状の延設部22とを備え、これらがアルミニウム合金から一体に形成される。被圧入部21には、上面視円形の圧入穴が穿設され、この圧入穴に外筒部材12が軸O方向に圧入されることで、防振装置10(外筒部材12)がエンジン側ブラケット20に保持される。
【0036】
なお、被圧入部21に穿設される圧入穴は、軸O方向に沿って内径が略一定とされる。よって、被圧入部21の強度を確保すると共にその製造コストの削減を図りつつ、外筒部材12と環状取付部材44とを超音波溶着により溶着する工程において、その溶着部分の外周側に超音波溶着を行うホーンを挿入するための空間を形成することができる(図8(a)参照)。
【0037】
車体側ブラケット30は、防振装置10のボス部材11が締結固定される底面部31と、その底面部31から立設され防振装置10を挟んで対向する一対の側壁部32と、それら一対の側壁部32の立設上端を互いに連結すると共に底面部31と防振装置10を挟んで対向する上面部33とを備え、これらがアルミニウム合金から一体に形成される。この正面視枠状に形成された車体側ブラケット30が、防振装置10の周囲を取り囲むことで、大振幅の振動入力時に、ボス部材11に対する外筒部材12の所定以上の相対変位が規制される。
【0038】
なお、エンジン側ブラケット20には、被圧入部21及び延設部22の複数箇所(本実施の形態では3箇所)に取付穴h1が穿設され、それら各取付穴h1に挿通されたボルトによりエンジン側に締結固定される。また、車体側ブラケット30には、底面部31の複数箇所(本実施の形態では3箇所)に取付穴h2が穿設され、それら各取付穴h2に挿通されたボルトにより車体側に締結固定される。
【0039】
次いで、図3及び図4を参照して、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42の詳細構成について説明する。上述したように、本実施の形態では、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42が一体に形成される。
【0040】
図3(a)は、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42の斜視図であり、図3(b)は、環状取付部材44の斜視図である。また、図4(a)は、図3(a)の矢印IVa方向視におけるダイヤフラム14及びストッパゴム部材42の下面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線におけるダイヤフラム14及びストッパゴム部材42の断面図である。なお、図4(a)及び図4(b)では、ストッパゴム部材42の一部の図示が省略される。
【0041】
図3及び図4に示すように、ストッパゴム部材42は、ダイヤフラム14の外縁に一側が連なり径方向外方へ向けて延設されるストッパゴム上面部42aと、そのストッパゴム上面部42aの他側から下方へ向けて垂下されるストッパゴム側壁部42bとを備える。なお、ストッパゴム上面部42a及びストッパゴム側壁部42bは、軸Oを挟んでダイヤフラム14の両側に一対が形成される。
【0042】
ストッパゴム上面部42aは、防振装置10の外筒部材12の上端側およびエンジン側ブラケット20の被圧入部21の上端側に配設される平板状の部位であり、ボス部材11に対して外筒部材12が軸O方向へ変位する際に、車体側ブラケット30の上面部31に当接される。ストッパゴム上面部42aの上面には、車体側ブラケット20の上面部31へ向けて複数の突起が突設される。
【0043】
ストッパゴム側壁部42bは、エンジン側ブラケット20の被圧入部21と車体側ブラケット30の側壁部32との間に配設される平板状の部位であり、ボス部材11に対して外筒部材12が軸O直角方向へ変位する際に、車体側ブラケット30の側壁部32に当接される。ストッパゴム側壁部42bの側面には、車体側ブラケット20の側壁部32へ向けて複数の突起が突設される。
【0044】
このように、本実施の形態では、ストッパゴム部材42のストッパゴム上面部42aの一側が、ダイヤフラム14の外縁に連なり、ストッパゴム部材42とダイヤフラム14とが一体に形成される。これにより、ストッパゴム部材42とダイヤフラム14とを同時に加硫成形することができるので、ダイヤフラムとは別にストッパゴム部材を単体で加硫成形する必要がある従来品と比較して、部品点数を低減できる。
【0045】
また、ダイヤフラム14を外筒部材12に取り付けることで、同時にストッパゴム部材42を固定(装着)することができる(図8(a)参照)。即ち、従来品のように固定用ゴム片が適正に挟持されているかを確認して管理する必要がないので、その分、工数を低減できる。
【0046】
さらに、ストッパゴム上面部42aがダイヤフラム14の外縁に連なるので、従来品のようにストッパ部材の一部がダイヤフラムの一部と軸方向視において重複することを回避できる。即ち、重複部分のゴム材料が無駄とならず、ゴム材料を効率的に使用できる。
【0047】
環状取付部材44は、上面視(軸O方向視)環状の平板状に形成される環状部44aと、その環状部44aの下面から垂下され筒状に形成される筒部44bとを備える。環状部44a及び筒部44bは、軸O周りに対称な形状に形成され、環状部44aの内径が筒部44bの内径よりも小さくされると共に環状部44aの外径が筒部44bの外径より大きくされることで、軸Oを含む断面形状がT字状に形成される。なお、環状部44aの外径は、外筒部材12の小径筒部12bの外径と略同一に形成される。
【0048】
ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42は、環状部44aの上面、内周面および下面と、筒部44bの内周面の一部とに加硫接着される。また、筒部44bが外筒部材12の小径筒部12bに上端側から内嵌され、これら筒部44b及び小径筒部12bが超音波溶着により溶着されることで、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42が外筒部材12に取着される(図2参照)。
【0049】
このように、環状取付部材44を外筒部材12と共に樹脂材料から形成し、これら外筒部材12と環状取付部材44との連結(接合)を、超音波溶着により行うことで、ダイヤフラム14を外筒部材12へ取り付ける際の作業性の向上を図ることができると共に、異音の発生を抑制することができる。
【0050】
即ち、本実施の形態では、ストッパゴム部材42のストッパゴム上面部42aがダイヤフラム14の外縁に連なるので、環状取付部材44の上面は、ゴム状弾性体(ダイヤフラム14又はストッパゴム上面部42a)により覆われる。
【0051】
そのため、例えば、環状取付部材44を外筒部材12の小径筒部12bに圧入固定する(即ち、環状取付部材44の筒部44bの外径を、外筒部材12の小径筒部12bの内径よりも若干大きくして、それを締め代として圧入固定する)構造では、環状取付部材44を外筒部材12へ押し込む際に使用する圧入時具の当接する部分(領域)を、環状取付部材44の上面に確保できず、その上面を覆うゴム状弾性体を直接押圧する必要が生じる。よって、作業性が悪い。
【0052】
一方で、圧入治具を当接させるために、ゴム状弾性体を部分的に省略して、環状取付部材44の上面の一部を露出させた場合には、その分、ストッパ機能を発揮させるためのゴム状弾性体の体積が減少する。よって、ストッパ機能を発揮する際の緩衝作用が低下して、異音の発生を招く。
【0053】
この場合、環状取付部材44は、環状部44aの下面から垂下される筒状の筒部44bを備えので、後述するように、その環状取付部材44の筒部44bが内周側に内嵌された外筒部材12の小径筒部12bの外周側に超音波溶着を施すことで、外筒部材12の小径筒部12bと環状取付部材44の筒部44bとを溶着することができる(図8(a)参照)。即ち、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42が環状取付部材44に加硫接着される接着界面を避けて、超音波溶着を施すことができる。その結果、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42と環状取付部材44との間の接着界面が超音波により剥がれることを抑制できる。
【0054】
環状取付部材44には、図4(a)に示すように、軸O方向視半円形状の複数(本実施の形態では5個)の突部が径方向内方へ向けて突設され、それら各突部の内の1個の突部に減圧兼注入用孔44cが形成される。なお、これら複数の突部の内の減圧兼注入用孔44cが形成される突部は、環状部44a及び筒部44bが部分的に突出することで形成され、他の突部は、筒部44bのみが部分的に突出することで形成される。
【0055】
減圧兼注入用孔44cは、液封入室16内を真空引きにより減圧する際に使用される貫通孔であり、環状取付部材44(環状部44a及び筒部44b)を貫通する貫通孔として形成される。この減圧兼注入用孔44cにより、液封入室16内と外部とが連通される(図9参照)。
【0056】
このように、環状取付部材44は、軸方向視環状に形成され、その環状取付部材44の内周縁にダイヤフラム14が加硫接着されると共に、減圧兼注入用孔44cは、環状取付部材44の内周縁よりも径方向外方側(図4(b)左側)に配設される。よって、ダイヤフラム14の外縁を全周にわたって環状取付部材44の内周縁に確実に加硫接着できると共に、減圧兼注入用孔44cがダイヤフラム14の可動部分(膜部分)に形成されることを回避できる。その結果、ダイヤフラム14の耐久性の向上を図ることができる。
【0057】
なお、減圧兼注入孔44cは、液封入室16内を減圧し、液体の液封入室16への充填が完了した後、図示しない封止手段(例えば、硬球やリベットなどの公知の手段)により封止される(非連通状態とされる、図8(b)参照)。
【0058】
また、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42(ストッパゴム上面部42a)は、減圧兼注入用孔44cに対応する領域が上面視円形に部分的に凹欠される。即ち、減圧兼注入用孔44cの外部側(図4(b)上側)の開口の周囲には、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42が配設されず、環状取付部材44における環状部44aの平坦面状の上面が露出される。
【0059】
このように、環状取付部材44は、減圧兼注入用孔44cが開口される上面が平坦面として形成されるので、液封入室16内を減圧する工程および液体を充填する工程において、減圧兼注入用孔44cにパイプを装着する際には、その周囲のシールを、環状取付部材44の上面の平坦面を座面として利用することで、シールを確実に行うことができる。
【0060】
即ち、減圧兼注入孔44cを、従来品のように、外筒部材12の側面に設けた場合には、外筒部材12の外面が円筒状に湾曲しているため、寸法公差や作業者の技能などに起因して、パイプ側に設けられたシールリップを外筒部材12の外面に隙間なく密着させることが困難である。これに対し、本実施の形態では、シール対象面が平坦面とされるので、パイプ側に設けられたシールリップを隙間なく密着させることができる。
【0061】
次いで、図5及び図6を参照して、仕切り部材15の詳細構成について説明する。図5は仕切り部材15の上面図である。図6(a)は、図5の矢印VIa方向視における仕切り部材15の側面図であり、図6(b)は、図5のVIb−VIb線における仕切り部材15の断面図である。
【0062】
仕切り部材15のオリフィス形成部51には、略フランジ状の張出壁51a,51bが径方向外方へ張り出して形成されており、これら張出壁51a,51bが、外筒部材12の内壁面を覆うゴム膜に密着することで、第1液室16Aと第2液室16Bとを連通させる流路であるオリフィス17が形成される(図2参照)。また、オリフィス形成部51は、図6(b)に示すように、上下の張出壁51a,51bを接続する縦壁51cを備え、この縦壁24によってオリフィス17を周方向に分断する。
【0063】
変位規制部52,53は、弾性仕切り膜54を受け止めてその変位を規制する板状の部位であり、軸Oから放射直線状に延設される複数本(本実施の形態では4本)のリブ52a,53aにより複数の開口が形成された格子形状に形成される。即ち、リブ52a,53aによる変位規制部52,53の格子形状は互いに同一とされる。
【0064】
変位規制部52は、オリフィス形成部51の内周面に一体に形成され、ダイヤフラム14に対面する側に配設される。変位規制部53は、オリフィス形成部51の張出壁51a,51bと同等の外径を有する円板状に形成され、防振基体13に対面する側に配設される。弾性仕切り膜54は、ゴム状弾性体から円板状に形成され、中央において最大の膜厚を有すると共に、その中央における最大の膜厚が変位規制部52,53の対向面間の間隔よりも若干小さくされる。
【0065】
オリフィス形成部51の張出壁51bと変位規制部53とには、同じ周方向位置に切欠き51d,53dがそれぞれ開口形成され、これら両切欠き51d,53dによる開口を介して、オリフィス17の一端が第1液室16A(図2参照)に連通される。一方、オリフィス形成部51の張出壁51aには、切欠き51eが開口形成され、この切欠き51eによる開口を介して、オリフィス17の他端が第2液室16B(図2参照)に連通される。なお、切欠き51eは、変位規制部52と同じ位置まで延設される。
【0066】
ここで、仕切り部材15は、防振装置10の組立状態において(図8(a)及び図8(b)参照)、切欠き51eが、環状取付部材44の減圧兼注入用孔44cの直下に位置する(減圧兼注入用孔44cに対面する)ように、周方向位置が位置決めされる(図8(b)参照)。
【0067】
なお、本実施の形態では、図6(a)及び図6(b)に二点鎖線により仮想的に示すように、防振装置10の組立状態において、環状取付部材44の減圧兼注入用孔44cの軸を延長した仮想線Pは、切欠き51eの周方向長さ(図6(a)左右方向寸法)の略中央に位置すると共に、切欠き51の径方向長さ(図6(b)左右方向寸法)の略中央から軸O側に若干ずれて位置する。
【0068】
次いで、図7及び図8を参照して、防振ユニット1の製造方法について説明する。図7(a)は、第1成形体の断面図であり、図7(b)は、エンジン側ブラケット20及び第1成形体の断面図である。図8(a)は、第1ユニットの断面図であり、図8(b)は、第1ユニットの部分拡大断面図である。
【0069】
防振ユニット1の製造に際しては、まず、ボス部材11と外筒部材12との間を防振基体13により連結した第1成形体と、ダイヤフラム14及びストッパゴム部材42が一体に形成され環状取付部材44が連結された第2成形体(図3(a)及び図4参照)と、弾性仕切り膜54(図6(b)参照)とをそれぞれ加硫成形する。また、仕切り部材15を組み立てる(即ち、変位規制部52,53の対向間に弾性仕切り膜54を収納し、オリフィス形成部51に変位規制部53を接合する。図5及び図6参照)。
【0070】
これら第1成形体および第2成形体を加硫成形すると共に、仕切り部材15を組み立てた後は、図7(a)に示すように、第1成形体の外筒部材12内に、仕切り部材15を嵌め入れる。仕切り部材15を第1成形体へ嵌め入れた後は、その第1成形体(外筒部材12の大径筒部12a)を、エンジン側ブラケット20の被圧入部21に圧入する。
【0071】
これにより、図7(b)に示すように、第1成形体がエンジン側ブラケット20に保持される。この場合、仕切り部材15は、エンジン側ブラケット20に対する相対的な周方向位置が所定位置(即ち、オリフィス形成部51の切欠き51eが軸O方向視において減圧兼注入用孔44cに重なる位置、図9参照)に設定される。
【0072】
なお、本実施の形態では、外筒部材12の上端側に取り付けられる環状取付部材44に減圧兼注入用孔44cが形成される(図8(b)参照)。よって、減圧兼注入用孔44cによって仕切り部材15の配設位置が制限されることを抑制できる。即ち、減圧兼注入用孔44cが従来品のように外筒部材12の側面に形成される場合には、その減圧兼注入用孔44cの形成位置よりも下方(ボス部材11側)へ仕切り部材15を配設することができないため、防振装置10の軸O方向への大型化を招く。これに対し、本実施の形態では、環状取付部材44に減圧兼注入用孔44cが形成されることで、仕切り部材15の配設位置が制限されず、ボス部材11に近接する位置に配設することができる。
【0073】
また、減圧兼注入用孔44cが従来品のように外筒部材12の側面に形成される場合には、外筒部材12をエンジン側ブラケット20に圧入した後は、液封入室16内の減圧および液体の充填を行うことができない。これに対し、環状取付部材44に減圧兼注入用孔44cが形成されることで、エンジン側ブラケット20に外筒部材12を圧入した後であっても、液封入室16内の減圧および液体の充填を行うことができる(図7(b)及び図8(a)参照)。
【0074】
エンジン側ブラケット20に第1成形体を保持させた後は、その第1成形体の上端側に第2成形体を取り付け(即ち、第1成形体における外筒部材12の小径筒部12bに、第2成形体における環状取付部材44の筒部44bを内嵌させ)、これら小径筒部12bと筒部44bとを超音波溶着により溶着する。これにより、図8(a)に示すように、防振基体13とダイヤフラム14との間に液封入室16(図2参照)が形成される。
【0075】
この超音波溶着を施す工程においては、環状取付部材44の断面形状がT字状に形成されるので(図4(b)参照)、外筒部材12の小径筒部12bの内周側に環状取付部材44の筒部44bを挿入する際には、その筒部44bから径方向外方へ張り出して形成された環状部44aの外縁部分を、外筒部材12の小径筒部12bの上端面に当接させることができる。これにより、図8(a)に示すように、筒部44bの挿入方向(軸O方向)位置を位置決めすることができ、その分、作業性の向上を図ることができる。
【0076】
環状取付部材44が外筒部材12に挿入された状態では、図8(a)に示すように、外筒部材12の小径筒部12bの外周面とエンジン側ブラケット20の被圧入部21(圧入穴)の内周面との間に空間が形成される。よって、この空間を利用して、ホーンを移動させることができるので、その作業性の向上を図ることができる。なお、この超音波溶着を施す工程では、ストッパゴム部材42を上方に折り返すことで、上記空間を周方向に連続して露出させることができる。
【0077】
また、このように、外筒部材12の小径筒部12bの外周面とエンジン側ブラケット20の被圧入部21(圧入穴)の内周面との間に空間を形成することができれば、エンジン側ブラケット20の被圧入部21の上端面を、外筒部材12の小径筒部12bの上端面よりも下方に位置させておく必要がなく、かかるエンジン側ブラケット20の被圧入部21の上端面を、図8(a)に示すように、環状取付部材44の環状部44aの上面と同等の位置(即ち、車体側ブラケット30の上面部33に近接する位置)に配置することができる。
【0078】
これにより、ボス部材11に対して外筒部材12が軸O方向へ相対変位して、ストッパゴム部材42のストッパゴム上面部42aが、車体側ブラケット30の上面部33に当接される際には、エンジン側ブラケット20の被圧入部21の上端面と環状取付部材44の環状部44aの上面との両面を利用して、ストッパゴム部材42のストッパゴム上面部42aの受圧面積を確保することができる。その結果、ストッパゴム部材42の耐久性の向上を図ることができる。
【0079】
同様に、かかるストッパ機能の発揮時には、エンジン側ブラケット20の被圧入部21の上端面と環状取付部材44の環状部44aの上面との両面で、車体側ブラケット30の上面部33からの反力を均等に分担することができる。よって、上面部33からの反力を、外筒部材12、環状取付部材44及びエンジン側ブラケット20のそれぞれに分散させて、その耐久性の向上を図ることができる。
【0080】
ここで、環状取付部材44は、上述のように、筒部44bから径方向外方へ張り出して形成された環状部44aの外縁部分を、外筒部材12の小径筒部12bの上端面に当接させた状態(即ち、環状部44aの外縁部分が、小径筒部12bの上端面に係合した状態)で、外筒部材12の小径筒部12bに溶着される。よって、ボス部材11に対する外筒部材12の軸方向の相対変位が、車体側ブラケット30の上面部33によって規制される際には、その規制時の反力を、環状取付部材44の環状部44aの外縁部分と外筒部材12の小径筒部12bの上端面との係合部分で受けることができる。よって、その分、環状取付部材44の筒部44bの外周面と外筒部材12の小径筒部12bの内周面との間の溶着部分に作用する力を低減できる。その結果、溶着部分の破損を抑制できる。
【0081】
液封入室16を形成した後は、減圧兼注入用孔44cを介して、液封入室16内を真空引きにより所定の負圧状態に達するまで減圧した後、その負圧を利用して、減圧兼注入用孔44cから液体を注入することで、液体を液封入室16に充填する。
【0082】
この場合、減圧兼注入用孔44cは、軸O方向視において仕切り部材15の切欠き51eに重なる位置(対面する位置)に配置されるので(図6(a)及び図6(b)参照)、液封入室16内を真空引きする工程においては、第2液室16B内の空気の吸引と共に、第1液室16A内の空気を、オリフィス17を介して、効率的に吸引することができ、また、液封入室16内へ液体を充填する工程においては、第2液室16B内への液体の充填と共に、第1液室16A内へ、オリフィス17を介して、効率的に液体を送り込むことができる。
【0083】
液封入室16への液体の充填が完了した後は、図8(b)に示すように、減圧兼注入用孔44cを鉄鋼材料や樹脂材料などからなる硬球B(封止手段)により封止する。これにより、図8(b)に示す第1ユニット(即ち、防振装置10がエンジン側ブラケット20により保持されたもの)が形成される。
【0084】
第1ユニットを形成した後は、防振装置10の防振基体13を軸O方向に圧縮させつつ、かかる防振装置10を、車体側ブラケット30の底面部31及び上面部33の対向面間に配置し、防振装置10のボス部材11と車体側ブラケット30の底面部31とをボルトにより締結固定する。これにより、防振ユニット1の製造が完了する(図1及び図2参照)。
【0085】
次いで、図9から図12を参照して、第2実施の形態における防振ユニット201について説明する。第1実施の形態では、ダイヤフラム14とストッパゴム部材42とが一体に形成される場合を説明したが、第2実施の形態におけるストッパゴム部材242は、ダイヤフラム214と別体に形成される。なお、上記第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0086】
図9は、第2実施の形態における防振ユニット201の断面図である。第2実施の形態における防振装置210は、ストッパゴム部材242が、ダイヤフラム214とは別体の部品として形成される。即ち、ストッパゴム部材242は、ストッパ側壁部42bが第1実施の形態の場合と同様に形成される一方、ストッパ上面部242aが一対のストッパ側壁部42bを接続する一枚の平板状の部位として形成される。ストッパゴム上面部242aは、防振装置210及びエンジン側ブラケット20(被圧入部21)の上面側(図9上側)に載置される。
【0087】
また、外筒部材212が鉄鋼材料から構成され、その上端部に縮径加工(かしめ加工)が施されることで、環状取付部材44を保持する。なお、外筒部材212は、素材が異なる点を除き、かしめ加工を施す前の各部位の構成は、第1実施の形態における各部位(大径筒部12a、小径筒部12b及び張出部12c)の構成と同様であるので、それらと同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0088】
次いで、図10及び図11を参照して、ダイヤフラム214及び環状取付部材244について説明する。図10(a)は、ダイヤフラム214の上面図であり、図10(b)は、図10(a)のXb−Xb線におけるダイヤフラム214の断面図である。また、図11(a)は、環状取付部材244の上面図であり、図11(b)は、図11(a)のXIb−XIb線における環状取付部材244の断面図である。
【0089】
図10及び図11に示すように、ダイヤフラム214は、仕切り部材15側に膨張した部分球状を有し軸O周りに対称な膜状に形成され、環状取付部材244の上面および内周面に加硫接着される。環状取付部材244は、鉄鋼材料から上面視(軸O方向視)環状の平板形状に形成され、上面視半円形状の突部が、径方向内方へ向けて突設される。この突部に、減圧兼注入用穴244cが形成される。
【0090】
ダイヤフラム214の外径は、環状取付部材244の外径よりも小さくされる。これにより、環状取付部材244の上面には、その外縁部に、上面視環状に露出された領域(即ち、かしめ固定時に、外筒部材212の縮径変形(折り返し変形)された上端部が係合するための領域)が形成される。
【0091】
また、環状取付部材244の外径は、仕切り部材15の外径と略同一とされる。即ち、外筒部材212内に嵌め入れられた状態では、環状取付部材244の外周面が、外筒部材212の小径筒部12bの内壁面を覆うゴム膜に密着される。
【0092】
減圧兼注入用孔244cの形成位置は、ダイヤフラム214の外縁よりも径方向内方側(軸O側)に配置される。よって、外筒部材212の上端部をかしめ固定した後においても、減圧兼注入用孔244cにパイプを装着して、液封入室16内の減圧および液体の充填が可能とされる。
【0093】
また、ダイヤフラム214は、減圧兼注入用孔244cに対応する領域が上面視半円形に部分的に凹欠される。即ち、減圧兼注入用孔244cの開口の周囲には、ダイヤフラム214が配設されず、環状取付部材244の平坦面状の上面が露出される。よって、第1実施の形態の場合と同様に、環状取付部材244の上面を座面として利用でき、パイプを装着する際のシール性の向上を図ることができる。
【0094】
次いで、図12を参照して、防振ユニット201の製造方法について説明する。図12は、第1ユニットの部分拡大断面図である。防振ユニット201の製造に際しては、まず、第1実施の形態の場合と同様に、第1成形体を加硫成形すると共に、仕切り部材15を組み立てる。一方、第2実施の形態では、ダイヤフラム214とストッパゴム部材242とを別部品として加硫成形する。
【0095】
次いで、第1成形体の外筒部材212内に、仕切り部材15を嵌め入れた後、環状取付部材244を嵌め入れて、外筒部材212(小径筒部12b)の上端側にダイヤフラム214を取り付ける。この場合、環状取付部材244は、仕切り部材15に対する相対的な周方向位置が所定位置(即ち、第1実施の形態における場合と同様に、オリフィス形成部51の切欠き51eが軸O方向視において減圧兼注入用孔244cに重なる位置、図12参照)に設定される。
【0096】
ダイヤフラム214を外筒部材212の上端側に取り付けた後は、かかる外筒部材212の小径筒部12bの上端側に縮径加工(かしめ加工)を施して、その小径筒部12bの縮径された部分により、環状取付部材244をかしめ固定する。
【0097】
これにより、防振基体13とダイヤフラム214との間に液封入室16が形成されるので、減圧兼注入用孔244cを介して、液封入室16内を真空引きにより所定の負圧状態に達するまで減圧した後、その負圧を利用して、減圧兼注入用孔244cから液体を注入することで、液体を液封入室16に充填する。
【0098】
この場合、減圧兼注入用孔244cは、第1実施の形態における場合と同様に、軸O方向視において仕切り部材15の切欠き51eに重なる位置(対面する位置)に配置されるので、液封入室16内を真空引きする工程および液体を充填する工程において、第1液室16A内の空気の吸引、及び、第1液室16A内への液体の充填を、オリフィス17を介して、効率的に行うことができる。
【0099】
液封入室16への液体の充填が完了した後は、図12に示すように、減圧兼注入用孔244cを鉄鋼材料や樹脂材料などからなる硬球B(封止手段)により封止する。これにより、防振装置210が形成されるので、かかる防振装置210(外筒部材212の大径筒部12a)を、エンジン側ブラケット20の被圧入部21に圧入すると共に、防振装置210及び被圧入部21の所定位置にストッパゴム部材242を装着する。その結果、図12に示す第1ユニット(即ち、防振装置210がエンジン側ブラケット20により保持され、ストッパゴム部材242が装着されたもの)が形成される。
【0100】
第1ユニットを形成した後は、第1実施の形態における場合と同様に、防振装置210を、車体側ブラケット30の底面部31及び上面部33の対向面間に配置し、防振装置10のボス部材11と車体側ブラケット30の底面部31とをボルトにより締結固定する。これにより、防振ユニット1の製造が完了する(図9参照)。
【0101】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0102】
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0103】
上記第1実施の形態では、環状取付部材44の筒部44bを、外筒部材12の小径筒部12bに内嵌し、外筒部材12の小径筒部12bの外周側から超音波溶着を施すことで、両者を溶着する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、環状取付部材44の筒部44bを、外筒部材12の小径筒部12bに外嵌し、環状取付部材44の筒部12bの外周側から超音波溶着を施すことで、両者を溶着する構成としても良い。なお、この場合には、減圧兼注入用孔44cは、環状部44aのみに設ける。
【0104】
上記各実施の形態では、減圧兼注入用孔44c,244cを封止する封止手段の一例として、硬球Bを用いる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の封止手段を採用することは当然可能である。他の封止手段としては、リベットが例示される。なお、硬球Bの材質は限定されない。例えば、硬球Bを樹脂材料から形成しても良い。
【0105】
上記各実施の形態では、切欠き51eが、環状取付部材44,244の減圧兼注入用孔44c,244cの直下に位置する(軸O方向視において減圧兼注入用孔44c,244cに重なる)場合を説明した。この場合、上記各実施の形態における切欠き51eと減圧兼注入用44c,244cの位置関係は一例を示すものであって、軸O方向視において、少なくとも切欠き51eの形成領域上に、減圧兼注入用孔44c,244cの軸を通過し貫通方向に伸びる仮想線Pが位置すれば足りる。
【符号の説明】
【0106】
1,201 防振ユニット
10,210 防振装置(液封入式防振装置)
11 ボス部材
12 外筒部材
12a 大径筒部
12b 小径筒部
13 防振基体
14,214 ダイヤフラム
15 仕切り部材
51d,53d 切欠き(第1出入口)
51e 切欠き(第2出入口)
16 液封入室
16A 第1液室
16B 第2液室
17 オリフィス
20 エンジン側ブラケット
21 被圧入部
30 車体側ブラケット
31 底面部
32 側壁部
33 上面部
42 ストッパゴム部材
42a ストッパゴム上面部
42b ストッパゴム側壁部
44 環状取付部材
44a 環状部
44b 筒部
44c 減圧兼注入用孔
B 硬球(封止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の外筒部材と、前記外筒部材の下端側に位置するボス部材と、前記ボス部材および外筒部材を連結すると共にゴム状弾性体から構成される防振基体と、前記外筒部材の上端側に取り付けられて前記防振基体との間に液封入室を形成すると共にゴム状弾性体から構成されるダイヤフラムと、前記液封入室を前記防振基体側の第1液室および前記ダイヤフラム側の第2液室に仕切る仕切り部材と、前記第1液室および第2液室を連通させるオリフィスとを有する液封入式防振装置と、
前記液封入式防振装置の外筒部材が圧入される被圧入部を有し、エンジン側に連結されるエンジン側ブラケットと、
前記液封入式防振装置のボス部材が固定される底面部と、その底面部から立設され前記液封入式防振装置を挟んで対向する一対の側壁部と、それら一対の側壁部を互いに連結すると共に前記底面部と前記液封入式防振装置を挟んで対向する上面部とを有し、車体側に連結される車体側ブラケットと、
前記車体側ブラケットの側壁部と前記エンジン側ブラケットの被圧入部との間に介設されると共にゴム状弾性体から構成されるストッパゴム部材と、を備えた防振ユニットにおいて、
前記ストッパゴム部材は、前記ダイヤフラムの外縁に一側が連なると共に前記エンジン側ブラケットの被圧入部の上端側に配設されるストッパゴム上面部と、前記ストッパゴム上面部の他側から垂下され前記車体側ブラケットの側壁部と前記エンジン側ブラケットの被圧入部との間に配設されるストッパゴム側壁部とを備えることを特徴とする防振ユニット。
【請求項2】
前記ダイヤフラムが加硫接着されると共に樹脂材料から軸方向視環状に形成される環状取付部材を備え、
前記外筒部材は、樹脂材料から筒状に形成され、
前記外筒部材に前記環状取付部材が超音波溶着により溶着されることで、前記外筒部材の上端側に前記ダイヤフラムが取り付けられることを特徴とする請求項1記載の防振ユニット。
【請求項3】
前記環状取付部材は、前記ダイヤフラムが加硫接着される環状部と、前記環状部の下面側に接続される筒状に形成され前記外筒部材の内周側に内嵌または外周側に外嵌される筒部とを備え、
前記環状取付部材の筒部が内周側に内嵌された前記外筒部材の外周側または前記外筒部材の外周側に外嵌された前記環状取付部材の筒部の外周側に超音波溶着を施すことで、前記外筒部材と前記環状取付部材の筒部とが溶着されることを特徴とする請求項2記載の防振ユニット。
【請求項4】
前記外筒部材は、下端側に位置する大径筒部と、前記大径筒部よりも小径に形成され上端側に位置する小径筒部とを備え、前記大径筒部が前記エンジン側ブラケットの被圧入部に圧入され、
前記環状取付部材は、前記筒部が前記外筒部材の小径筒部の内周側に内嵌されることを特徴とする請求項3記載の防振ユニット。
【請求項5】
前記環状取付部材は、前記環状部の外縁部分が前記筒部から径方向外方へ張り出して形成され、前記筒部から径方向外方へ張り出して形成された環状部の外縁部分の下面が、前記外筒部材の小径筒部の上端面に当接されることを特徴とする請求項4記載の防振ユニット。
【請求項6】
前記液封入式防振装置は、前記液封入室を外部に連通させる減圧兼注入用孔と、その減圧兼注入用孔を封止する封止手段とを備え、前記減圧兼注入用孔を介して前記液封入室内を減圧した後、前記減圧兼注入用孔から液体を注入することで、前記液体を前記液封入室に充填し、前記減圧兼注入用孔を前記封止手段により封止することで製造され、
前記環状取付部材に前記減圧兼注入用孔が配設されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の防振ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−100866(P2013−100866A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244966(P2011−244966)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】