説明

防水栓付き電線およびその製造方法

【課題】一定の肉厚を確保しながら、防水栓の外径を小さくすることができ、それによりコネクタの小型化に貢献することのできる防水栓付き電線を提供する。
【解決手段】被覆電線1の端末部に、絶縁被覆3を皮剥きして芯線2を露出させた部分4と、その更に端末側に短い長さの絶縁被覆3aを残した部分とを形成し、芯線を露出させた部分の外周に直接ゴム等の弾性材料製の防水栓10を成形して、防水栓10を隣接する絶縁被覆3、3aと一体化させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水栓付き電線およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、防水コネクタを組み立てる場合、電線の端末部の外周にゴム製の防水栓を装着し、その電線の端末部に端子金具を接続し、その端子金具をコネクタハウジングの端子収容室に挿入すると同時に、電線の端末部に装着した防水栓を端子収容室に押し込んで、端子収容室の内壁面に防水栓を密着させる。そして、防水栓により、コネクタハウジングの内壁面と電線の隙間を塞いで、防水性能を確保するようにしている。
【0003】
従来、このように電線の端末部に防水栓を取り付けるに当たっては、図4(a)、(b)に示すように、単品で成形した防水栓100を、芯線2の端部から被覆電線1の端末の絶縁被覆3の外周に装着している。
【特許文献1】特開2004−288432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の防水栓100は、単品で成形して、被覆電線1の絶縁被覆3の外周に嵌めるものであったため、外径が大きくなりがちであり、コネクタハウジングの端子収容室の断面の大きさもそれだけ大きくなってしまい、コネクタを小型化する上での障害となっていた。
【0005】
そこで、防水栓100の肉厚を薄くして、外径を単純に小さくすることも考えられるが、薄肉化すると、防水栓100を電線1に取り付ける時や防水栓100をコネクタハウジングの端子収容室に押し込む時などに、防水栓100がまくれる等の問題を生じる可能性があるので、薄肉化には限度がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、一定の肉厚を確保しながら、防水栓の外径を小さくすることができ、それによりコネクタの小型化に貢献することのできる防水栓付き電線、および、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明の防水栓付き電線は、被覆電線の絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分の外周に、直接ゴム等の弾性材料製の防水栓が成形されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の防水栓付き電線であって、前記被覆電線の端末部に、前記絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分と、その更に端末側に短い長さの絶縁被覆を残した部分とが形成され、前記芯線を露出させた部分の外周に直接、前記ゴム等の弾性材料製の防水栓が成形され、該防水栓が隣接する絶縁被覆と一体化されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明の防水栓付き電線の製造方法は、被覆電線の長手方向の一部に、絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分を形成する皮剥き工程と、前記芯線を露出させた部分を金型内にセットし、射出成形することにより、前記芯線を露出させた部分の外周に直接、ゴム等の弾性材料製の防水栓を成形する成形工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明の発明は、請求項3に記載の防水栓付き電線の製造方法であって、前記皮剥き工程では、前記被覆電線の端末部に、前記絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分と、その更に端末側に短い長さの絶縁被覆を残した部分とを形成し、前記成形工程では、前記芯線を露出させた部分を金型内にセットし、射出成形することにより、前記芯線を露出させた部分の外周に直接、ゴム等の弾性材料製の防水栓を成形し、該防水栓を、隣接する絶縁被覆と一体化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、従来のように絶縁被覆の外周に防水栓を嵌めるのではなく、絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分の外周に直接防水栓を成形しているので、防水栓部分に性能を発揮する上で必要な一定の肉厚を確保しながら、防水栓の小径化を図ることができる。従って、コネクタハウジングの端子収容室に押し込む際にも、めくれ等の支障を生じることがない。また、芯線の外周に直接防水栓を成形するので、芯線間の隙間も、防水栓を構成する材料によって塞ぐことができ、芯線間の隙間を通しての水の侵入防止も図ることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、いわゆる中間皮剥き(両側に絶縁被覆を残して中間部を皮剥き)して芯線を露出させた部分に防水栓を成形したので、端末側の絶縁被覆が残された部分に端子金具のワイヤバレル(被覆加締片)を加締めることで、電線の端末に端子金具を通常通りに固定することができる。また、防水栓の両側に、防水栓と一体化された状態で絶縁被覆が存在するので、絶縁被覆の外周に防水栓を装着した従来の場合と同様の外観を呈することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、芯線の外周に直接防水栓が成形された防水栓付き電線を簡単に製造することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、電線の端末部に防水栓が装着された防水栓付き電線を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は実施形態の防水栓付き電線の構成図で、図1(a)は同防水栓付き電線の外観斜視図、図1(b)は同防水栓付き電線の縦断面図、図2(a)〜(c)は同防水栓付き電線の製造工程図、図3(a)は図1(b)のIIIa−IIIa矢視断面図、図3(b)は図1(b)のIIIb−IIIb矢視断面図である。
【0017】
この実施形態の防水栓付き電線は、図1に示すように、被覆電線1の絶縁被覆3を皮剥きして芯線2を露出させた部分4の外周に直接、ゴム等の弾性材料製の防水栓10を成形したものである。具体的には、被覆電線1の端末部に、絶縁被覆3を皮剥きして芯線2を露出させた部分4と、その更に端末側に短い長さの絶縁被覆3aを残した部分とを形成し、芯線を露出させた部分4の外周に直接、ゴム等の弾性材料製の防水栓10を射出成形して、防水栓10を、隣接する絶縁被覆3、3aと一体化させたものである。なお、防水栓10の外周には、コネクタハウジングの端子収容室に挿入した際に、端子収容室の内壁面との密着性を増す環状のリップ11が設けられている。
【0018】
この防水栓付き電線を製造するには、図2(a)に示すように、まず、皮剥き工程で、被覆電線1の端末部に、絶縁被覆3を皮剥きして芯線2を露出させた部分4と、その更に端末側に短い長さの絶縁被覆3aを残した部分とを形成する。つまり、中間皮剥きして芯線2を露出させた部分4を作る。
【0019】
次に、成形工程では、図2(b)示すように、まず、電線1を金型20にセットする。上下金型21、22の合わせ面には、電線1を通す溝部分24と、防水栓10を形成するためのキャビティ23とが設けられており、芯線2を露出させた部分4を、下型22のキャビティ23の位置にセットする。そして、上型21を型締めして、キャビティ23内に材料を充填して射出成形する。それにより、芯線を露出させた部分4の外周に直接防水栓10を成形すると同時に、防水栓10と隣接する絶縁被覆3、3aとを一体化させる。そして、成形後は、図2(c)に示すように、金型20を開いて、成形品を取り出す。以上により、実施形態の防水栓付き電線を作製することができる。
【0020】
このように芯線2の外周に直接防水栓10を成形した場合、図3(a)に示すように、防水栓10を形成していない部分は芯線2間に隙間が存在するが、図3(a)に示すように、防水栓10を形成した部分は、防水栓10を構成するゴム等の材料の浸透によって、芯線2間に隙間を塞ぐことができる。
【0021】
本実施形態の防水栓付き電線は、上述したように、絶縁被覆の外周に防水栓を嵌めるのではなく、絶縁被覆3を皮剥きして芯線2を露出させた部分4の外周に直接防水栓10を成形しているので、防水栓10部分に、性能を発揮する上で必要な一定の肉厚を確保しながら、防水栓10の小径化を図ることができる。従って、コネクタハウジングの端子収容室に押し込む際にも、めくれ等の支障を生じることがない。また、芯線2の外周に直接防水栓10を成形するので、芯線2間の隙間も、防水栓10を構成する材料によって塞ぐことができ、芯線2間の隙間を通しての水の侵入防止も図ることができる。
【0022】
また、上述したように、中間剥きして芯線を露出させた部分4に防水栓10を成形した場合は、端末側の絶縁被覆3aが残された部分に端子金具のワイヤバレル(被覆加締片)を加締めることで、電線の端末に端子金具を通常通りに固定することができる。
【0023】
また、防水栓10の両側に、防水栓10と一体化された状態で絶縁被覆3、3aが存在するので、絶縁被覆3の外周に防水栓を装着した従来の場合と同様の外観を呈することになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態の防水栓付き電線の構成図で、(a)は同防水栓付き電線の外観斜視図、(b)は同防水栓付き電線の縦断面図である。
【図2】(a)〜(c)は同防水栓付き電線の製造工程図である。
【図3】(a)は図1(b)のIIIa−IIIa矢視断面図、(b)は図1(b)のIIIb−IIIb矢視断面図である。
【図4】従来の防水栓を電線に装着した状態を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 被覆電線
2 芯線
3,3a 絶縁被覆
4 芯線を露出させた部分
10 防水栓
20 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分の外周に直接ゴム等の弾性材料製の防水栓が成形されていることを特徴とする防水栓付き電線。
【請求項2】
請求項1に記載の防水栓付き電線であって、
前記被覆電線の端末部に、前記絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分と、その更に端末側に短い長さの絶縁被覆を残した部分とが形成され、前記芯線を露出させた部分の外周に直接、前記ゴム等の弾性材料製の防水栓が成形され、該防水栓が隣接する絶縁被覆と一体化されていることを特徴とする防水栓付き電線。
【請求項3】
被覆電線の長手方向の一部に、絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分を形成する皮剥き工程と、
前記芯線を露出させた部分を金型内にセットし、射出成形することにより、前記芯線を露出させた部分の外周に直接、ゴム等の弾性材料製の防水栓を成形する成形工程と、を備えることを特徴とする防水栓付き電線の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の防水栓付き電線の製造方法であって、
前記皮剥き工程では、前記被覆電線の端末部に、前記絶縁被覆を皮剥きして芯線を露出させた部分と、その更に端末側に短い長さの絶縁被覆を残した部分とを形成し、
前記成形工程では、前記芯線を露出させた部分を金型内にセットし、射出成形することにより、前記芯線を露出させた部分の外周に直接、ゴム等の弾性材料製の防水栓を成形し、該防水栓を、隣接する絶縁被覆と一体化させることを特徴とする防水栓付き電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−259663(P2009−259663A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108450(P2008−108450)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】