説明

防火用シート

【課題】燃焼時塩素や臭素等のハロゲンがスを発生せず、優れた難燃性、防火性を有すると共に、適度な強度と柔軟性、粘着性を持った防火用シート提供する。
【解決手段】アクリルニトリルブタジエンゴム及び/又はアクリルゴムからなるベースポリマー100質量部に対し、金属水和物100〜500質量部およびホウ酸塩化合物20〜200質量部を含有するゴム組成物を有する層がガラスクロスの少なくとも片面に形成されている防火用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塩素や臭素等のハロゲン系難燃剤を含有せず、優れた防火性を有する防火用シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物、洞道等において、多種類の電線、ケーブルが配線されているが、火災が発生した場合多大な被害を受ける例があり、ケーブル防災の要求は大きい。
ケーブル防災用の防火テープや防火シートの機能としては、通常の難燃性の他にテープやシート巻きで形成された防火層が燃焼により崩れ落ちることがなく、ケーブル被覆に粘着、固化して内部を保護することが望まれる。
また、OFケーブルの場合や、マンホール内を想定して平常においての耐油性も要求される。
【0003】
発明者は、ハロゲン系のポリマーと難燃剤を使用して良好な難燃性の防火用テープを提案している(例えば、下記特許文献1参照)が、ハロゲン系ポリマーやハロゲン系難燃剤を使わずに難燃性能を発現させるには、通常無機難燃性フィラーを大量に配合する必要があり、テープ、シートとしての物性、特に柔軟性に劣る点が懸念される。
【0004】
更に、人的及び環境対応の面から、燃焼時に塩素や臭素等のハロゲンガスを発生しないことが強く求められる。
【特許文献1】特公平2−10182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の従来の問題点に鑑み、塩素や臭素等のハロゲンを含有せず、優れた難燃性、防火性を有すると共に、適度な強度と柔軟性、粘着性を持った防火用シート、特に電線またはケーブル用の防火シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行ったところ、ベースポリマーとしてアクリルニトリルブタジエンゴム及び/又はアクリルゴムを必須成分とし、所定の無機フィラー類を配合することにより、ハロゲンガスを発生せず、燃焼時十分な難燃性能と固化性能を発揮し、シートとしての強度と柔軟性、粘着性が得られることを見いだし、この知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、
(1)アクリルニトリルブタジエンゴム及び又はアクリルゴムからなるベースポリマー100質量部に対し、金属水和物100〜500質量部およびホウ酸塩化合物20〜200質量部を含有するゴム組成物を有する層がガラスクロスの少なくとも片面に形成されていることを特徴とする防火用シート、
(2)前記ベースポリマーがアクリルニトリルブタジエンゴム100質量部であることを特徴とする(1)記載の防火用シート、
(3)前記ゴム組成物が非架橋であることを特徴とする(1)または(2)記載の防火用シート、および
(4)電線またはケーブル用であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の防火用シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防火用シートは、塩素や臭素等のハロゲン化合物を実質的に含有せず、燃焼時にダイオキシン等の有害ガスを発生することなく、そのうえ十分な難燃性能を有し、燃焼後でも燃焼残渣がガラスクロスと共に固化性能を発揮する。そして、防火用シートは、適度な強度と柔軟性、粘着性を持ち、特に、電線やケーブル用として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の防火用シートについて詳細に説明する。
まず、本発明のノンハロゲンの防火用シートのガラスクロス面に層形成されるゴム組成物を構成する各成分およびその量について説明する。
【0009】
(a)ベースポリマー
本発明に用いられるベースポリマーとしては、ゴム系のアクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)又はアクリルゴムである。これらはそれぞれ単独で用いることもできるが或いは両者を任意の割合でブレンドして用いてもよい。
なお本発明におけるアクリルゴムは、モノマー成分の1つにアクリル酸エステルを有し、このアクリル酸エステルまたはそれを主体として共重合されて得られるゴム状弾性体をいい、熱可塑性樹脂の1種であるアクリル樹脂(例えば、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂など)を含まないものとする。ベースポリマーとしてアクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)及び/又はアクリルゴムを用いることで、防火用シートに優れた耐油性が得られる。そのうえ、柔軟性や粘着性を付与する作用も有する。
それに対して熱可塑性樹脂の1種であるアクリル樹脂(例えば、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂など)を使用した場合には、柔軟性の点で問題があり、使用することは困難である。
【0010】
(b)金属水和物(無機難燃性フィラー)
本発明のゴム組成物には、難燃性を確保する為に無機難燃性フィラーである金属水和物が配合される。これらの金属水和物は、環境問題に対応したノンハロゲンであり、難燃性を付加するために有用なものである。
本発明の樹脂組成物では、金属水和物の混合量は、ベースポリマー100質量部に対し100〜500質量部であり、好ましくは120〜400質量部、さらに好ましくは150〜300質量部である。混合量が少なすぎると、難燃性に問題があり、多すぎると加工性が悪くなり、機械特性が著しく低下したり、耐油性、耐低温性が悪化する。
一般に、金属水和物を大量に配合すると耐油性は大幅に低下するが、本発明のゴム組成物はベースゴムとの関係で耐油性の低下がなく、バランスの良い優れた物性を維持することができる。
【0011】
本発明に用いられる無機難燃性フィラーである金属水和物は、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、またはこれらの混合物が好ましい。
本発明においては、通常市販されている水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを使用することが可能である。水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムは、無処理のままでも、表面処理を施されていてもよい。表面処理としてはたとえば、脂肪酸処理、リン酸処理、チタネートやシランカップリング剤による処理などがあげられる。ベースゴムポリマーとの結合特性の点から、本発明においては、無処理のものか、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤を用いたものを使用するのが好ましい。
すでにシランカップリング剤処理をおこなった水酸化マグネシウムを入手することも可能である。シランカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとしては、具体的には、「キスマ5L」、「キスマ5N」、「キスマ5P」(いずれも商品名、協和化学(株)製)や、「ファインマグMO−E」(商品名、(株)TMG)などがあげられる。
また、無処理の水酸化マグネシウムとしては、例えば「キスマ5」(商品名、協和化学(株))、「マグニフィンH5」(商品名、アルベマール(株))などがあげられる。
水酸化アルミニウムとしては、例えば無処理の「日軽金B−103」、「日軽金B−703」(商品名、日本軽金属(株))、「ハイジライトH-42」「ハイジライトH-32」(商品名、昭和電工(株)製などがあげられる。 また、表面処理品としては「日軽金B−103S」、「日軽金B−703S」、「日軽金B−103T」、「日軽金B−703T」(商品名、日本軽金属(株))、「ハイジライトH-42S」「ハイジライトH-32S」「ハイジライトH-42T」「ハイジライトH-32ST」(商品名、昭和電工(株)製)等を挙げることができる。
【0012】
(c)ホウ酸塩化合物
本発明のゴム組成物には、燃焼時あるいは燃焼後に生じる燃焼残渣の固化保持性のためホウ酸塩化合物を混合する。
本発明の樹脂組成物では、ホウ酸塩化合物の混合量は、ベースポリマー100質量部に対し20〜200質量部であり、好ましくは30〜150質量部、さらに好ましくは35〜70質量部である。その量が少なすぎると、燃焼時固化性が発現せず、多すぎると加工性が悪くなり柔軟性を阻害する。
ホウ酸塩化合物は、燃焼時の高温化で溶融し、燃焼残渣をガラス状に固化させ、ワレ、脱落の発生を抑える働きがある。したがって、燃焼後も基材であるガラスクロスとの一体化が良好で、飛び火が防げ、延焼防止効果も大きい。また、難燃性を高める働きもある。
【0013】
本発明に用いられるホウ酸塩化合物としては、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、無水ホウ酸等がある。
本発明で用いることのできるホウ酸亜鉛として、具体的には例えば、「アルカネックスFRC−500(2ZnO/3B・3.5HO)」、「FRC−600」(いずれも商品名、水澤化学(株)製)、「ファイヤーブレイクZB」(商品名、リオテイントジャパン製)などがある。また、ホウ酸カルシウムとしては、例えば「UBP」(商品名)、キンセイマテック(株)製が、また、無水ホウ酸として「Boric Oxide」(商品名、U.S.Borax Inc.製)がある。
【0014】
本発明のゴム組成物には、ベースポリマーを適度に軟質化するために軟化剤を適宜混合することできる。
軟化剤はベースゴムポリマーとの相溶性が良いものであれば特に限定されないが、エーテル・エステル系軟化剤、トリメリット酸系軟化剤、ポリエステル系可塑剤が好ましく、例えば市販品では、アデカサイザーRS700、トリメックスT−08、アデカサイザーPN606等を挙げることができる。
軟化剤の混合量は、特に限定されるものではないが、ベースポリマー100質量部に対し、好ましくは5〜20質量部である。その量が少なすぎると、加工性、柔軟性が悪くなり、多すぎると難燃性を阻害する。
【0015】
本発明のゴム組成物には、防火組成物に一般的に使用されている各種の添加剤、例えば酸化防止剤、難燃助剤、防カビ剤、加工助剤、着色剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0016】
本発明のゴム組成物は、非架橋のものを好ましく使用することができる。
非架橋のゴム組成物を使用することにより、柔軟性、粘着性が良好であり、ガラスクロスに塗工した場合基材との密着性が良好となり、燃焼時ガラスクロスに密着してそのまま固化する点にも寄与する。また、架橋していない場合には、廃却時に再利用が可能となる。
本発明のゴム組成物をガラスクロスに形成するには、適宜従来公知の方法を適用することができ、例えばゴム組成物を溶剤に溶解し、その後コーターでガラスクロスの片面または両面にコーティングし、乾燥して本発明の防火用シートを製造することができる。
【0017】
次に、本発明の防火用シートの基材となるガラスクロスについて説明する。
ガラスクロスは耐熱性、難燃性、機械的強度に優れ防火用シートの基材として好適である。このガラスクロスは使用する糸のサイズや織り方、質量によってさまざまな種類があるが、シート状で巻き付けやすく、破けにくい機械的強度があれば良い。
このため、特に制限はないが、例えば、平織りで厚さは0.1〜0.35mm程度、質量は100g/m2〜400g/m2程度のものを好ましく使用することができ、「H201M」(厚さ0.18mm、質量208g/m2)、「H340F」(厚さ0.28mm、質量330g/m2)、(商品名、ユニチカグラスファイバー(株)製)や「WF150 100 BS6」(厚さ0.22mm、質量144g/m2)、「WF350 100 BS6」(厚さ0.33mm、質量328g/m2)、(商品名、日東紡(株)製)などがある。
【0018】
本発明の防火用シートの製造方法を説明する。
ベースポリマーに金属水和物およびホウ酸塩化合物、さらに必要に応じて前記した軟化剤や他の添加剤を加え、加熱混練する。混練方法としては、ゴム、プラスチックなどで通常用いられる方法であれば満足に使用でき、装置としては例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーあるいは各種のニーダーなどが用いられる。この工程により、各成分が均一に分散されたゴム組成物を得ることができる。
得られたゴム組成物を溶剤で溶解した後、例えばコーターにてガラスクロスの片面又は両面にコーティングし、乾燥し、ガラスクロス面にゴム組成物の層を形成する。
本発明の防火用シートには、さらに延焼防止効果を付与するために、巻き始めと巻き終わりとなる部分に、長さ方向の片側に熱膨張性部材を設けてもよい。この熱膨張性部材も塩素や臭素等のハロゲンを含有しない材料で構成することが好ましい。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
[実施例1〜8および比較例1〜5]
表1〜2に示すベースポリマーと各配合剤(材料)をニーダーで混合し混和物とし、ロールで板取り後、溶剤とともに撹拌機で溶解した後、バーコーターにて厚さ0.28mmのガラスクロス(「H340F」、(商品名、ユニチカグラスファイバー製)の両面にコーティングし、乾燥し、厚さ0.4mmの防火用シートを得た。
[比較例5]
また比較例5の場合は、溶剤とともに撹拌機で溶解し均一な組成物とできなかったので、他の実施例、比較例に使用したのと同じガラスクロスに比較例5の混和物を熱プレスにより圧着して、厚さ0.4mmの防火用シートを得た。
表1〜2における組成を示す数値の単位は質量部である。比較例5以外は溶剤はトルエンを用い、その配合量は混和物と同量であるが、乾燥後のシートには含まれない為、表示していない。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
以下に、各実施例および比較例で用いた表1〜2に記載の材料(1)〜(10)について説明する。
(1)アクリルゴム 「トアアクロンPS220」(商品名、(株)トウペ製)
(2)アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)
「クライナック3345」(商品名、バイエル社製)
(3)水酸化アルミニウム 「日軽金B−103」(商品名、日本軽金属(株)製)
(4)水酸化マグネシウム 「キスマ5A」(商品名、協和化学(株)製)
(5)ホウ酸亜鉛 「ファイヤーブレイクZB」(商品名、リオテイントジャパン製)
(6)軟化剤A(エーテル・エステル系)
「アデカサイザーRS700」(商品名、旭電化工業(株)製)
(7)軟化剤B(トリメリット酸系)
「トリメックスT-08」(商品名、花王(株)製)
(8)軟化剤C(パラフィン系)
「ダイアナプロセスPW-380」(商品名、出光興産(株)製)
(9)エチレンプロピレンゴム(EPDM)
「EPT3045」(商品名、三井化学(株)製)
(10)アクリル樹脂(EEA)
「エバフレックス-EEA A-703」(商品名、三井・デュポンポリケミカル(株)製)
【0023】
上記の実施例1〜8および比較例1〜5において作製した防火用シートについて、以下の評価を行い、その結果を表3〜4に記載した。
(1)巻き付け安定性A
径約30mm×長さ300mmのケーブル1本を防火用シートで重なり部分50mmとなるように巻きつけ、両端をφ1mm銅線で固定し、ケーブル巻き付け品Aを得た。
この時、防火用シートがケーブルへの追従ができ、固定部を含め破れがないものを「○」、追従性が悪い或いは破れが発生したものは「×」とした。
(2)巻き付け安定性B
径約30mm×長さ300mmのケーブル2本を並べ、これを防火用シートで重なり部分50mmとなるように巻きつけ、両端をφ1mm銅線で固定し、ケーブル巻き付け品Bを得た。
この時、防火用シートがケーブルへの追従ができ、固定部を含め破れがないものを「○」、追従性が悪い或いは破れが発生したものは「×」とした。
(3)難燃性A
上記(1)のケーブル巻き付け品Aを試料とし、JIS C 3005の傾斜試験により燃焼を行った。燃焼時間は10分間とし、炎を取り去った後15秒以内で自然に消えた場合を「○」、消えなかった場合を「×」とした。
(4)難燃性B
上記(2)のケーブル巻き付け品Bを試料とし、JIS C 3005の傾斜試験に準拠し燃焼を行った。但し、接炎は2本のケーブルの中間のシート部分で重なりのない箇所、燃焼時間は連続10分間とし、炎を取り去った後15秒以内で自然に消えた場合を「○」、消えなかった場合を「×」とした。
(5)燃焼残渣安定性A
上記難燃性Aの燃焼試験で消えた後、燃焼残渣が固化して落下がなければ「○」、落下があれば「×」とした。また、固化がより強固なものを「◎」とした。
(6)燃焼残渣安定性B
上記難燃性Bの燃焼試験で消えた後、燃焼残渣が固化して落下がなければ「○」、落下があれば「×」とした。また、固化がより強固なものを「◎」とした。
(7)耐油性
前記と同様のケーブル巻き付け品Aを試料とし、JIS C 2320に定められた絶縁油1号相当の油に40℃で10日間浸漬し、試験後試料にわれ、ふくれ、剥がれ等の異常がないものを「○」、何らかの異常のあったものを「×」とした。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
実施例1は、アクリルゴムベースで水酸化アルミニウムとホウ酸塩の混合量が少なめな例である。フィラ−が少ないため柔軟性良好でケーブルへの巻き付け性は良く、難燃性Aは0〜5秒で消炎、難燃性Bも5〜10秒で消炎、燃焼残渣も崩れることなく、耐油性も良好であった。
実施例2は、アクリルゴムベースで、水酸化アルミニウムを中量配合し、ホウ酸塩は少なめ、軟化剤としてエーテル・エステル系を配合した例であるが、ケーブルへの巻き付け性は良好であり、難燃性Aは0秒で消炎、難燃性Bも0〜5秒で消炎、燃焼残渣も崩れることなく、耐油性も良好であった。
実施例3は、アクリルゴム70質量部とNBR30質量部を混合し、水酸化アルミニウムとホウ酸塩を中量配合し、軟化剤としてエーテル・エステル系を配合した例であるが、ケーブルへの巻き付け性は良好であり、難燃性A、Bとも0秒で消炎、燃焼時固化性は強く、耐油性も良好であった。
実施例4は、実施例3と同様にゴム成分を併用した例であるが、ポリマーをアクリルゴム30質量部とNBR70質量部とした例である。実施例3と同様に良好な結果を示すものであった。
【0027】
実施例5は、実施例4と同様であるが、ポリマーをNBRベースとした例である。実施例2と同様に良好であった。
実施例6は、NBRベースで無機難燃性フィラーとして水酸化マグネシウムを配合した例であるが、ケーブルへの巻き付け性は良好であり、難燃性A、Bとも0秒で消炎、燃焼時固化性は強く、耐油性も良好であった。
実施例7は、NBRベースで無機難燃性フィラーとして水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウム両方配合し、軟化剤としてトリメリット酸系を用いた。ケーブルへの巻き付け性は良好であり、難燃性A、Bとも0秒で消炎、燃焼時固化性は強く、耐油性も良好であった。
実施例8は、NBRベースで水酸化アルミニウムとホウ酸塩を多めに配合し軟化剤としてエーテル・エステル系を配合している。ケーブル巻き付け性は問題なく、難燃性A、Bとも0秒で消炎、燃焼時固化性は強く、耐油性も良好であった。
【0028】
これに対し、比較例1は、アクリルゴムベースであるが、無機難燃性フィラーの配合量が50質量部と少ない例であり、難燃性A、難燃性Bの試験で15秒以内に消炎せず、延焼した。
比較例2は、NBRベースで無機難燃性フィラー200質量部として難燃性は良好であったが、ホウ酸塩の配合がなく、燃焼時の固化性が弱く、燃焼残渣の落下が見られた。
比較例3は、無機難燃性フィラーの配合量が700質量部と多すぎる例であり、フィラー量が多すぎて硬くなり、ケーブル巻き付け時の追従性が悪く両端の固定部付近で破れが発生した。
比較例4は、ベースポリマーをエチレン・プロピレンゴムとし、無機難燃性フィラーとホウ酸塩は適量配合し、軟化剤はエチレン・プロピレンゴムと相溶性の良いパラフィン系とした例である。ケーブル巻き付け性、難燃性は良好であったが、耐油性試験で、割れが発生した。
比較例5は、アクリル樹脂のEEAをベースポリマーとして無機難燃性フィラーの配合量を配合した例であり、ポリマーがプラスチックのため硬くて粘着性がなく、合わせ目が開いており、ケーブルへの追随性が悪かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルニトリルブタジエンゴム及び/又はアクリルゴムからなるベースポリマー100質量部に対し、金属水和物100〜500質量部およびホウ酸塩化合物20〜200質量部を含有するゴム組成物を有する層がガラスクロスの少なくとも片面に形成されていることを特徴とする防火用シート。
【請求項2】
前記ベースポリマーがアクリルニトリルブタジエンゴム100質量部であることを特徴とする請求項1記載の防火用シート。
【請求項3】
前記ゴム組成物が非架橋であることを特徴とする請求項1または2記載の防火用シート。
【請求項4】
電線またはケーブル用であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の防火用シート。

【公開番号】特開2008−150479(P2008−150479A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339099(P2006−339099)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(599150274)エフコ株式会社 (7)
【出願人】(000165996)株式会社古河テクノマテリアル (23)
【Fターム(参考)】