説明

防災用シェルター

【課題】地震や水害等のあらゆる災害の際に避難用として使用できる防災用シェルターを提供すること。
【解決手段】防災用シェルター1は、地震時及び水害時に、避難者Mが一時的に避難する避難用空間11を内部に有する。防災用シェルター1は、前記避難用空間(11)を形成する樹脂製のシェルター本体2と、このシェルター本体2に形成された出入口12と、この出入口12を開閉する扉部材16と、を有している。シェルター本体2の内底には、飲料水Wを貯蔵するバランサー水床3を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、崖崩れ、津波、洪水等の災害の際に、人命を安全に確保するために避難する防災用シェルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、東日本大震災、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震等の大規模の地震が発生し、崩れて来た屋根の下敷きになったり、崖崩れの土砂に埋もれたりして、尊い人命が失われている。その他、地震による津波や、大雨による洪水等の災害で、多くの人命が落されている。今後、地殻変動による同規模の大地震や、また、地球温暖化等の異常気象による大雨や集中豪雨によって河川の氾濫、土石流、土砂災害、山崩れ等の災害が発生するおそれがあることが指摘されており、災害時に人命を自ら各自で確保するための対策を準備しておくことが不可欠になっている。
【0003】
このような地震発生時に、倒壊した家屋に押し潰されて圧死したり、あるいは、家屋や瓦礫等の落下物の下敷きになるのを防止するための地震対策用の装置としては、例えば、特許文献1に開示された地震用シェルター(防災用シェルター)が知られている。
【0004】
その地震用シェルターは、スチールパイプ製の枠材と、枠材の端部が嵌合されるガイドパイプ部を有する継手と、継手に取り付けられ耐震強度を付与するための鉄板製の補強板と、枠材を継手へ固定させる固定手段と、を骨組として組立構築体からなる。その地震用シェルターは、金属製の骨組構造とすることで、地震時の倒壊する家屋に押し潰されるのを防止する強度を備えると共に、一時的に避難場所として使用可能にしている。
【0005】
その他、津波用として開発された防災用シェルターとしては、例えば、特許文献2に記載された津波防災シェルターが知られている。この津波防災シェルターは、一辺が80cmの正方形の鋼板18枚と、一辺が80cmの正三角形の鋼板8枚との合計26枚の鋼板をアーク溶接して連結し、中空状の二十六面体に形成されたシェルターである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−218673号公報(図1、図2及び図15)
【特許文献2】特開2006−46049号公報(特許請求の範囲、図1〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたような地震用シェルターは、組み立て及び分解が可能で、耐震強度を備えているものの、多数の金属製枠材、金属製継手、鉄板製補強板及び固定手段によって構築体を形成しているため、構成部品が多く、構造が複雑で、全体の重量が重く、津波等の水害に使用できないという問題点があった。
つまり、前記特許文献1の地震用シェルターは、金属製の枠材と保護板から主に構成されているので、地震用としては優れているものの、洪水等の水害時には、水没してしまうため、津波等の水害に使用できない。
【0008】
また、特許文献2に記載の津波防災シェルターも、特許文献1の地震用シェルターと同様に、構成部品の部品点数が多く、その全体が鋼板等の金属のみから形成されて重いため、組み立てる際の組立性が悪く、さらに、運搬する際に容易に運ぶことができず、運搬性が悪いという問題点があった。
また、特許文献2の津波防災シェルターは、一辺が80cmの底面中央部に重心移動重り3段が配置されてバランスを図っているものの、外周面が平板材で形成されているので、河川の氾濫時や津波の際に大きな波を受けたときや、土石流や瓦礫等の障害物が衝突したときに、抵抗を受け易いため、バランスを崩し易くなっている。
このため、その大きな波を受けたときや、障害物が衝突したときであっても、さらに安定した平な状態を保つことが可能で、あらゆる災害に対応することができる多機能的な防災用シェルターが要望されていた。
【0009】
そこで、本発明は、前記問題点を解消すべく発明されたものであり、地震や水害等のあらゆる災害の際に避難用として使用できる防災用シェルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明に係る防災用シェルターは、内部に避難用空間を有する防災用シェルターであって、前記避難用空間を形成する樹脂製のシェルター本体と、前記シェルター本体に形成された出入口と、前記出入口を開閉する扉部材と、を有し、前記シェルター本体の内底に、飲料水を貯蔵するバランサーを設けたことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、大きな地震や大きな津波があった際に、避難者は、防災用シェルターの扉部材を開けて出入口から避難用空間内に入って扉部材を閉めることにより、シェルター本体内に避難することができる。防災用シェルターは、全体が樹脂製のシェルター本体からなることによって、従来の金属製シェルターと比較して軽量であるため、移動及び搬送を容易に行うことができる。
防災用シェルターは、例えば、洪水や津波等の水害の際に、水上に浮かべると、床面にあるバランサーが、シェルター本体を水平な安定した状態を保つことができるので、水害の際の簡易型緊急用ボートや、避難筏としても使用することが可能である。また、防災用シェルターを地面上に配置した場合には、バランサー内に貯蔵された飲料水が、シェルター本体が横風等の横方向からの荷重を受けたとしても、飲料水の重さで防災用シェルターを安定した状態に保つ重心釣合い装置として機能する。
また、避難者は、地震や津波や洪水等のあらゆる災害時に、一時的に避難して身の安全を守る緊急避難用のシェルターとして使用することができると共に、避難時に、シェルター本体内の床下のバランサーに貯蔵された飲料水を飲むことができる。このため、防災用シェルターが津波によって海に流れた場合や、瓦礫や鉄骨等の下敷きのままの状態の場合であっても、避難者は、その飲料水を飲むことにより、長時間に亘って避難できるため、人命を確保することが可能となる。
その結果、防災用シェルターは、あらゆる災害の際に、多くの人命を救うことができる防災設備及び避難具として役立つことができる。
【0012】
また、防災用シェルターの前記バランサーは、前記シェルター本体の凹面状に形成された内底部と、前記内底部の周縁部に載設されて前記凹面状に形成された部位を閉塞する蓋体と、によってタンクを形成し、前記蓋体には、前記バランサー内に前記飲料水を出し入れするための水栓弁が設けられていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、バランサーは、シェルター本体の凹面状に形成された内底部と、内底部の周縁部に載設されて凹面状に形成された部位を閉塞する蓋体と、によってタンクが形成されていることにより、常に、そのタンク内に飲料水を常備して災害時のために備えておくことができる。その飲料水を使用する際には、水栓弁を開ければ、容易にタンク内から飲料水が出て来るので、飲料水を確保することができる。
【0014】
また、前記シェルター本体は、中空の球状体からなり、当該シェルター本体の外壁部が積層部材で形成されて、内壁部が緩衝材で形成されると共に、水上に配置された場合に、水面を浮遊可能に形成され、前記積層部材は、FRP樹脂と、ロービングクロスと、コア層と、ガラス繊維とが積層されてなることが好ましい。
ここで、強化プラスチックとは、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)樹脂といわれているガラス繊維強化プラスチックである。
【0015】
かかる構成によれば、シェルター本体は、中空の球状体からなることによって、多角形のものと比較して角及び平面な箇所が無い分、転動した際や、障害物あるいは波が衝突した際に、外圧や強い衝撃力を受けに難い形状をしていると共に、水に浮く構造をしている。このため、防災用シェルターは、従来の金属製のシェルターと比較して、軽量で転動し易いので、摺動させたり、移設させたりすることが容易にできると共に、地面上に設置する避難用シャルターとして使用可能にしたり、水面に浮く浮上型避難用カプセル(避難用ボート)として使用可能にする。つまり、防災用シェルターは、あらゆる災害時使用できる防護用カプセルとしての機能も果たす。
さらに、防災用シェルターは、シェルター本体の外壁部が、FRP樹脂と、ロービングクロスと、コア層と、ガラス繊維とが積層されてなる積層構造になっているため、鉄等の金属と比較して、軽くて、強度があり、耐久性、耐水性、耐候性、耐食性、耐燃性に優れている。その結果、この防災用シェルターは、家屋が倒壊して建材が落下してきたり、崖崩れで土砂や岩等が落ちてきたりした場合であっても、落下物によって避難者(利用者)が押し潰されるのを防護することが可能である。
【0016】
また、前記シェルター本体内には、上端部を前記シェルター本体の天井部に固定し、下端部を前記蓋体に固定した掴まりバーが設けられていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、防災用シェルターは、シェルター本体内に掴まりバーが設けられていることにより、防災用シェルターを地面上に配置して横風等を受けて揺れたり、または、水面上で波を受けて揺れたりした場合に、避難者が、その掴まりバーに掴まることができる。
【0018】
また、前記シェルター本体は、当該シェルター本体の外側底部を、床面上または地面上に配置され、略筒状に形成された平置台座の上側開口部上に係合することによって支持されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、シェルター本体は、床面上または地面上に配置された平置台座上に載置することによって、球状体の形状をしたシェルター本体を平置台座上に係合させた状態に維持することができるため、転がって移動するのを抑制することができる。
【0020】
また、前記シェルター本体には、当該シェルター本体の外周面に、連結部材を介してアンカーが連結されていることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、シェルター本体は、その外周面に連結部材を介してアンカーが連結されていることによって、例えば、防災用シェルターを地面に埋設または地面上に配置した場合に、アンカーを地面に固定することで、シェルター本体が移動しないようにしっかりと地面に固定することができる。また、防災用シェルターを水面上で使用する場合には、アンカーを川底等に沈ませて係止させたり、岸等に固定したりすることにより、防災用シェルターが水等の流れによって流れないようにすることができる。
【0022】
また、前記シェルター本体の上部には、前記避難空間と大気中とに連通する空気口と、当該空気口を開閉する空気口ハッチと、が設けられていることが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、シェルター本体は、避難空間内から大気中に連通する空気口が設けられていることによって、外気をシェルター本体内に取り入れることができる。このため、避難者は、防災用シェルター内に長期間にわたって避難することができる。また、空気口から水や海水や雨水等が浸入するような場合には、空気口ハッチによって空気口を閉塞することにより、水等の浸入を防ぐことができる。
【0024】
また、前記シェルター本体には、当該シェルター本体の上部に前記出入口及び前記扉部材が設けられると共に、当該シェルター本体内の前記出入口の周辺部には、梯子を着脱自在に設置するための梯子取付部が設けられていることが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、防災用シェルターは、シェルター本体の上部に出入口及び扉部材が設けられている場合、シェルター本体内の出入口の周辺部に設けられた梯子取付部に梯子を着脱自在に固定して、その梯子を利用することによって、防災用シェルター内外への出入りを容易に行えるようにすることができる。
【0026】
また、前記シェルター本体は、前記出入口以外の当該シェルター本体全体、または、当該シェルター本体の下部を地中に埋設されていることが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、防災用シェルターは、シェルター本体の出入口以外を地中に埋設したことにより、普段、邪魔にならない地中に設置することができる。そして、災害時には、地面から現れている扉部材を開けて、防災用シェルター内に逃げ込むことができる。
また、シェルター本体は、当該シェルター本体の下部を地中に埋設したことにより、球体形状の防災用シェルターが転動しないように土によって固定することができる。なお、防災用シェルターは、長期間土の中に入れたままにしたり、雨ざらしにしたりしても、腐ったり、錆びたりすることがない。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る防災用シェルターによれば、大地震の際には、出入口からシェルター本体内の避難用空間に入り込むことにより、シェルター本体によって落下して来る建造物や流動して来る障害物から避難者の身を守り、安全に避難することができる。また、防災用シェルターは、全体が樹脂製であるので、軽量であるため、移動性及び運搬性がよく、適宜な場所へ容易に移設することができる。さらに、防災用シェルターは、バランサーを有しているので、洪水や津波の際に水面に浮かべた場合、横方向から負荷を受けても、安定した状態に保つことができるため、簡易型避難用ボート及びカプセル状避難用筏としても使用できる。また、そのバランサーには、飲料水を貯蔵することができるので、例えば、防災用シェルターが津波によって海に流れた場合や、瓦礫等の下敷きになって長時間滞在した場合に、その飲料水を飲むことにより、長時間に亘って避難して人命を確保することができる。
このように、防災用シェルターは、地震、崖崩れ、土砂災害、洪水、津波等のあらゆる災害時に、人命を救うことがでる避難用小型シェルター、防災設備及び避難具として役立つことができる。
【0029】
本発明に係る防災用シェルターによれば、バランサーは、タンクの機能を果たすので、常に、そのタンク内に飲料水を常備して災害時に備えておくことができる。また、水栓弁を開弁すれば、タンク内の飲料水が放出されるので、緊急用貯蔵タンクとして使用することができる。
【0030】
本発明に係る防災用シェルターによれば、シェルター本体は、中空の球状体からなることによって、障害物あるいは波が衝突した際に、外圧や強い衝撃力を受けに難い(受け流す)形状をしていると共に、水に浮く構造をしているので、地面上に置いて使用する災害時用防護カプセルと使用したり、水面に浮く浮上型救命カプセルとして使用したりすることができる。
さらに、防災用シェルターは、シェルター本体の外壁部が、FRP樹脂と、ロービングクロスと、コア層と、ガラス繊維とが積層されてなる積層構造になっているため、軽くて、熱に強く、難燃性で、高い強度を備えている。その結果、この防災用シェルターは、倒壊して落下して来る建材や、崖崩れで落下して来る土砂や、岩等の落下物によって避難者(利用者)が押し潰されるのを防護することができる。
【0031】
本発明に係る防災用シェルターによれば、防災用シェルターは、シェルター本体内に掴まりバーがあることにより、防災用シェルターを地面上に配置して横風等を受けて揺れたり、または、水面上で波を受けて揺れたりした場合に、その掴まりバーに掴まることによって、避難者の体が移動するのを抑制するのに役立つ。
【0032】
本発明に係る防災用シェルターによれば、シェルター本体は、平置台座上に載置することによって、全体が球状をしていても、床面上または地面上に転動することなく安定した状態に配置することができる。
【0033】
本発明に係る防災用シェルターによれば、シェルター本体は、このシェルター本体に連結部材を介して連結されたアンカーを地面等に固定することにより、シェルター本体が洪水や津波等によって移動しないようにしっかりと固定することができる。
【0034】
本発明に係る防災用シェルターによれば、シェルター本体は、空気口が設けられていることによって、避難用空間内に大気を取り入れて空気の交換を行うことができるため、酸欠状態になるのを防止することができる。また、空気口ハッチを閉塞することにより、水や海水や雨水等が避難用空間に浸入するのを阻止することができる。
【0035】
本発明に係る防災用シェルターによれば、防災用シェルターは、出入口がシェルター本体の上部にあったとしても、出入口の周辺部の梯子取付部に梯子を着脱自在に固定していることによって、防災用シェルター内外への出入りする際に梯子に掴まって容易に出入りすることができる。
【0036】
本発明に係る防災用シェルターによれば、防災用シェルターは、シェルター本体の出入口以外を地中に埋設したことにより、球体形状の防災用シェルターが転動しないように土内にしっかりと固定することができると共に、シェルター本体を落下して来る建材や土砂等よって押し潰されない状態に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの一例を示す概略分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの一例を示す図であり、平置台座上に防災用シェルターを配置したときの状態を示す概略側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの一例を示す一部断面を有する正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの一例を示す図であり、出入口を開閉する扉部材を示す要部拡大斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの一例を示す図であり、出入口を開閉する扉部材の周縁部の構造を示す要部断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの扉部材を内側からロックするロック機構の一例を示す要部概略断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの扉部材を内側からロックするロック機構の一例を示す要部概略斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの空気口の一例を示す要部概略斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの一例を示す図であり、シェルター本体の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第1変形例を示す概略斜視図である。
【図11】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第2変形例を示す図であり、防災用シェルターを避難用ボートとして使用しているときの状態を示す概略正面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第2変形例を示す図であり、扉部材と出入口を示す要部概略分解斜視図である。
【図13】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第2変形例を示す図であり、ロック機構を示す要部概略拡大断面図である。
【図14】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第3変形例を示す概略断面図である。
【図15】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第4変形例を示す概略断面図である。
【図16】本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第5変形例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、図1〜図9を参照して、本発明に係る防災用シェルターを実施するための形態(以下「実施形態」という)を説明する。
【0039】
≪防災用シェルターの構成≫
図1に示すように、防災用シェルター1は、大地震や津波や崖崩れ等の災害時に、避難者M(図14参照)が、崩れて来た家屋の屋根や建材や土砂や瓦礫等の落下物の下敷きになったり、押し潰されたりするのを防護すると共に、さらに、津波や洪水等の水害時に、緊急用のカプセル状避難筏としても使用することが可能な災害用の避難器具(シェルター)である。防災用シェルター1は、内部が空洞な大型の略球体形状をしたものからなる。
【0040】
防災用シェルター1は、それぞれ後記する避難用空間11と、出入口12と、空気口15と、扉部材16と、シェルター本体2と、バランサー水床3(バランサー)と、把持部13と、ヒンジ部材14(図2参照)と、平置台座4と、掴まりバー5と、SOS発信装置(図示省略)と、を備えている。
【0041】
防災用シェルター1は、例えば、側面に出入口12、上部に空気口15を有し、直径が1200mm(4人用)〜2500mm(25人用)程度の略球状のドーム型の人員防護体であり、建物の屋内、屋外及び地中に配備することが可能な大きさに形成されている。
なお、本発明に係る防災用シェルター1は、河川の氾濫、土石流、津波等水害時及び船舶事故時の緊急用の避難筏や、大地震や崖崩れ、土砂災害等災害時に防災設備や、地下シェルターとして使用することも可能であるが、その一例として、大地震時に屋内及び屋外で使用する場合を例に挙げて説明する。
【0042】
防災用シェルター1は、地震発生時(または、予震発生時や、緊急地震速報装置のお知らせがあったとき)に直ぐに避難者Mが、その防災用シェルター1に入り込んで避難するシェルターであり、家屋内の床面や庭の片隅等の直ぐに逃げ込むことが可能な適宜な場所に予め配置しておく。また、防災用シェルター1は、地震発生時やその他の災害時に崖崩れや、土砂崩れや、頭上から落下物が落下する危険性が予想される場所(屋内及び屋外)に配置しておくことが望ましい。さらに、防災用シェルター1は、水に浮くように形成されているため、津波や、洪水時の河川の氾濫が予想される場所に配置してもよい。防災用シェルター1は、全体が略球状でコンパクトに形成されたことによって、地震、崖崩れ、水害等のあらゆる災害の際に、落下する建造物、岩、水等が衝突する強い衝撃力や外圧に耐えるのに適した中空状の球体形状をしている。
【0043】
<避難用空間の構成>
図1に示すように、避難用空間11は、防災用シェルター1の内部空間であって、避難者Mが地震発生時及び崖崩れ発生時に、緊急避難場所として使用したり、地震発生後及び崖崩れ発生後の一時的な避難場所として使用したりするためのキャビン状の空間である。避難用空間11は、シェルター本体2によって形成された略球状の内部空間からなる。
【0044】
≪出入口の構成≫
出入口12は、避難者Mが防災用シェルター1内の避難用空間11に出入りするための出入り口であり、後記する扉部材16によって開閉される。図4に示すように、出入口12は、例えば、シェルター本体2の側面部位の一箇所に円形に形成された孔からなり、出入口12の内周縁に全周に亘って環状に切欠形成された段差部12aを有している。
図4及び図5に示すように、段差部12aは、断面視して略L字状に切欠形成され、扉部材16を閉塞した際に、扉部材16の周縁部16aの切欠部16bに設けられたシール材Oに圧縮した状態に圧接して出入口12を密閉させて完全防水にする。段差部12aには、シール材Oが半分露出した状態で、このシール材Oが接着剤を介在して嵌着される環状溝12bが形成されている。
環状溝12bは、例えば、Oリングまたはゴムチューブからなる環状のシール材Oを装着される溝である。
【0045】
≪扉部材の構成≫
図4及び図5に示すように、前記扉部材16は、出入口12を、水が浸入しないように密閉した状態に閉めることが可能な開閉体であり、シェルター本体2の内側及び外側から開閉し、ロック・アンロックできるようになっている。この扉部材16は、円形の開閉板部材16cと、開閉板部材16cの周縁に形成された切欠部16bと、開閉板部材16cの中央部に設けられた覗き窓16dと、覗き窓16dの周縁に設けられた窓枠ゴム16eと、開閉板部材16cの外側寄りに設けられた取手16fと、扉部材16を閉塞状態にロックするロック機構19と、ヒンジ部材14と、を備えて構成されている。扉部材16は、出入口12を密閉状態にすることによって、防災用シェルター1を、水及び障害物から保護するカプセル状態にすることが可能なドアハッチである。
【0046】
前記周縁部16aは、開閉板部材16cの内側周縁部位であって扉部材16を閉塞した際に、防災用シェルター1の出入口12に内嵌するようになっている。
切欠部16bは、周縁部16aの避難用空間11側に形成され、扉部材16を閉塞した際に、段差部12aに対して対向した位置に形成されている。
開閉板部材16cは、例えば、出入口12をシェルター本体2の外側から覆うようにして閉塞する樹脂製の厚板部材であり、後記するヒンジ部材14を中心として回動自在に軸支されている。
【0047】
≪覗き窓及び取手の構成≫
覗き窓16dは、シェルター本体2内外から内外部を視認できるようにすると共に、太陽光を取り入れて避難用空間11を明るくするための透明な強化ガラス、あるいは、透明な強化プラスチック等の透明部材で形成されている。
窓枠ゴム16eは、覗き窓16dの周縁とシェルター本体2の窓孔とを水密状態に嵌着させるためのシール部材であり、接着剤によって覗き窓16dに接着されている。
取手16fは、開閉板部材16cを回動させる際に手で持つための摘みであり、開閉板部材16cに設けられたロック機構19寄りの位置に配置されている。この取手16fは、例えば、ビニール製のロープ状部材からなる。
【0048】
≪ヒンジ部材の構成≫
図4に示すように、ヒンジ部材14は、開閉板部材16cをシェルター本体2に対して開閉自在に回動させるための連結部材であり、ロック機構19とは反対の位置に配置された蝶番からなる。このヒンジ部材14は、シェルター本体2に固定され、軸棒挿入管を有する第1蝶番片14aと、開閉板部材16cに固定され、軸棒挿入管を有する第2蝶番片14bと、第1蝶番片14aの軸棒挿入管と第2蝶番片14bの軸棒挿入管とに挿入して回動自在に連結する軸棒部材14cと、から構成されている。
【0049】
≪ロック機構の構成≫
図4、図6、図7に示すように、ロック機構19は、シェルター本体2の内側から扉部材16を密閉状態にロックするためのハッチ止め部材であり、防災用シェルター1の内側に設けられている。ロック機構19は、扉部材16の周縁部16aの近傍に設けられた第1係合部19aと、この第1係合部19aに対して対向した状態でシェルター本体2に設置された第2係合部19bと、第1係合部19a及び第2係合部19bに係合、離脱してロック状態、アンロック状態にするロック部材19cと、から主に構成されている。
【0050】
第1係合部19aは、扉部材16の内側面に接着剤によって固着される平板部19dと、この平板部19dに一体成形されたコ字状部19eとからなる。第1係合部19aと第2係合部19bは、扉部材16において、ヒンジ部材14とは反対である対称位置に配置されている。
【0051】
なお、第1係合部19a、第2係合部19bは、図6及び図7に示すように、少なくとも、後記する鎌形部19hが挿入、離脱できるものでればよく、以下、それぞれが一体形状の場合を例に挙げて説明する。
第2係合部19bは、平板部19fと、コ字状部19gとを一体形成してなり、平板部19fをシェルター本体2の外壁部2aに接着剤で固着されている。
【0052】
ロック部材19cは、第1係合部19aと第2係合部19bとを連結することによって、扉部材16で出入口12を閉塞した状態でシェルター本体2に固定してロック状態及びアンロック状態にするための部材である。このロック部材19cは、前記鎌形部19hと、この鎌形部19hの基端部に連設された操作レバー部19iと、この操作レバー部19iを回動自在に軸支する軸支部19jと、から構成されている。
【0053】
鎌形部19hは、第1係合部19aのコ字状部19e、及び、第2係合部19bのコ字状部19gに係合することによって、扉部材16をロック状態にし、それらから離脱することにより、アンロック状態にする鎌形状(楔形状)のフック部材である。鎌形部19hは、楔形状に形成されていることにより、操作レバー部19iを操作した際に、楔の原理により扉部材16を内側に引き込む方向に力がコ字状部19gに働き、ガタツキなく締め付けることができる。
【0054】
操作レバー部19iは、防災用シェルター1の内側にいる者が扉部材16を出入口12に閉塞した状態にロックするとき、あるいは、そのロック状態を解除する際に、操作する棒状部材である。この操作レバー部19iは、先端部に鎌形部19hが設けられ、中央部に軸支部19jが設けられている。図6及び図7に示すように、操作レバー部19iは、例えば、矢印a方向に操作すると、この軸支部19jを中心として鎌形部19hが矢印b方向に回動して、第1係合部19a及び第2係合部19bに挿入されてロック状態になるようになっている。
【0055】
≪空気口の構成≫
図1に示すように、空気口15は、防災用シェルター1外の外気を避難用空間11内に流入させるための空気取入口用の窓であり、例えば、防災用シェルター1の上部の二箇所に設けられている。空気口15は、後記するシェルター本体2の内壁部2bから外壁部2aに貫通して形成された内径が30mm程度の孔に、空気口ハッチ17を嵌入してなる。空気口15は、例えば、避難用空間11内から空気口ハッチ17を開閉操作することによって、大気中に連通するようになっている。
【0056】
≪空気口ハッチの構成≫
図8に示すように、前記空気口ハッチ17は、空気口15を密閉した状態に閉めることが可能な開閉体であり、シェルター本体2(図1参照)に穿設された孔(図示省略)に内嵌された円筒部材17aと、この円筒部材17aの上部に一体形成された鍔部材17bと、円筒部材17a内に回動自在に軸支された弁体17cと、弁体17cに連結された弁体操作部材17dと、からなる。
【0057】
円筒部材17aは、上端部がシェルター本体2(図1参照)の孔の上部に配置され、下端部が避難用空間11(図1参照)内に突出した状態に配置されている。
鍔部材17bは、シェルター本体2の外側の孔の周縁部に接着剤で固定されている。
弁体17cは、円筒部材17aを閉塞する円板状の部材からなり、下面に弁体操作部材17dが垂下した状態に連結されている。弁体17cは、例えば、その弁体操作部材17dを上側に押すと、弁体17cが軸支部(図示省略)を中心として回動して開弁し、弁体操作部材17dを下側に下降させると、弁体17cが軸支部(図示省略)を中心として回動して閉弁するようになっている。その弁体17cは、空気口15内に雨水、海水等の水が入ると、水の重さで自動的に閉弁するように構成されている。
【0058】
≪シェルター本体の構成≫
図1及び図3に示すように、シェルター本体2は、防災用シェルター1の本体主要部及び避難用空間11を形成する部材であり、合成樹脂によって中空状の球体形状に形成されている。シェルター本体2は、このシェルター本体2の外周面を形成する積層部材21と、この積層部材21の避難用空間11側の面に固着され、シェルター本体2の内壁面を形成する緩衝材22と、によって形成されている。
【0059】
図9に示すように、積層部材21は、多数の合成樹脂を積層した多層構造に形成されて強化された強化部材であり、シェルター本体2の外壁部2aを形成している。積層部材21は、例えば、FRP樹脂21a、ロービングクロス21b、FRP樹脂21a、コア層21cと、FRP樹脂21a、ガラス繊維21dの順に積層された複合材からなる。つまり、積層部材21は、ロービングクロス21b、コア層21c及びガラス繊維21dの三種類の合成樹脂の各表面側及び各裏面側にFRP樹脂21aを配置した多層構造になっている。積層部材21は、その厚さが約10mm程度になっている。その積層部材21の表面は、コーティング材21eによって覆われている。
【0060】
FRP樹脂21aは、いわゆる強化プラスチックといわれる合成樹脂であり、金属材料よりも比強度が強く、軽量で、耐熱性、難燃性及び耐食性に優れた素材である。このFRP樹脂21a,21a間には、ガラス繊維21d等の相違する3種類の合成樹脂が順に中に入れて積層し、強度をさらに向上させた複合材料である。このため、この積層部材21で形成されたシェルター本体2は、衝撃に対して強く、折れ難い、壊れ難い、変形し難、腐らない構造の防災用シェルター1にすることが可能となる。なお、FRP樹脂21aは、これに替えてCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)樹脂を使用してもよい。
【0061】
ロービングクロス21bは、縦糸及び横糸にロービングを用いて平織りして製織した織物であり、ガラスクロスと同様に縦方向及び横方向に対して強度を有している。
コア層21cは、プラスチックやカーボングラファイト等の複数の薄い合成樹脂材料を積層して形成された芯材である。
【0062】
図9に示すように、ガラス繊維21dは、ガラスを溶解して牽引して極細い繊維状にした材料であり、積層部材21の耐衝撃性、耐熱性、強度及び軽量化を向上させて、積層部材21の厚みを薄くしても強度を保持することができるようにするための部材である。
コーティング材21eは、シェルター本体2の外周面2fを覆う部材であり、塗料からなる。このコーティング材21eは、例えば、ゲルコートコーテイングまたはゲルコート塗装といわれるものからなり、積層部材21の外壁部2aの表面に塗装することにより、外壁部2aの凹凸をなくして光沢のある綺麗な面に仕上げることができると共に、紫外線による劣化を防止し、外壁部2aに傷が付くのを防止する機能も果たす。なお、コーティング材21eの色は、遠くからでも発見し易い、例えば、蛍光色等の目立つ色が望ましい。
【0063】
緩衝材22は、外壁部2aの積層部材21の内面全体に固着され内壁部2bを形成する内装部材であり、例えば、軟質で、衝撃を吸収するクッション性と、高熱及び低温が避難用空間11に伝わるのを遮断する断熱性と、に優れた材料である発泡スチロール、ウレタン、あるいは、樹脂製段ボール等からなる。緩衝材22は、例えば、厚さが約10mm程度の球面状に形成された厚板部材からなり、シェルター本体2の避難者M(図14参照)が衝突しても、そのときの衝撃を吸収できるようになっている。また、緩衝材22は、断熱材としての機能も果たすため、冬季や寒冷地において、避難者Mを寒さから守り、屋外で使用することも可能であり、また、雪崩用の避難具としても、使用可能となっている。
【0064】
≪バランサー水床の構成≫
図3に示すように、バランサー水床3(バランサー)は、防災用シェルター1内に避難した避難者Mが載る床の部位と、シェルター本体2の内底に設けられて防災用シェルター1の重心のバランスを取るためのバランサー装置と、飲料水Wを貯蔵するタンクTと、の機能を果たす部位である。このバランサー水床3は、シェルター本体2の凹面状に形成された内底部2cと、内底部2cの周縁部位に載設されて凹面状に形成された部位を閉塞する蓋体31と、蓋体31とシェルター本体2の内壁部2bとの間の空間33と、この空間33内に飲料水Wを入れて貯蔵されてなるタンクTと、その飲料水Wを排水及び給水するための水栓弁32と、蓋体31の上面に敷設されたカーペット34と、蓋体31と内底部2cとの接続部位を補強するための補強部材35と、を備えている。
【0065】
蓋体31は、内底部2cを閉塞する円板状の樹脂製平板部材からなり、周縁がシェルター本体2の内壁部2bに圧接した状態で載設されて、タンクTの上蓋を構成している。蓋体31の周縁は、例えば、接着剤で内壁部2bに固着されると共に、補強部材35により、その接着部分が補強されている。蓋体31は、この蓋体31の上面に、バランサー水床3内に飲料水Wを出し入れするための水栓弁32と、前記掴まりバー5と、が設けられ、その上面全体にカーペット34が敷設されてウォータベッド状になっている。
【0066】
≪水洗コック及び空間の構成≫
図3に示すように、水栓弁32は、栓を開くと、タンクT内の飲料水Wが放出されて、避難時に飲むことができる栓であり、例えば、水栓コックからなる。また、この水栓弁32から飲料水WをタンクT内に注入できるようになっている。このほか、防災用シェルター1には、飲料水Wを供給する専用の供給口や、飲料水Wを排出する排出口を設けて、飲料水Wを交換し易くしてもよい。
その飲料水Wは、いつでも飲むことができるようにするために、所定期間ごとに、定期的に交換しておくことが望ましい。飲料水Wは、シェルター本体2の内底部2cにあるタンクT(空間33)内に貯蔵されるので、防災用シェルター1の重心用錘としての役目を果たす。
空間33は、シェルター本体2の内底部2cを蓋体31で閉塞したことによって形成された密閉空間であり、この空間33に飲料水Wを入れることにより、タンクTが形成されている。
【0067】
≪把持部の構成≫
図1及び図2に示すように、把持部13は、避難者M(図14参照)が、防災用シェルター1を移動させるときに、手で握って引っ張ったり、持ち上げたりするための部位である。把持部13は、例えば、シェルター本体2の外壁部2aの膝の高さ程度の位置に設置された略コ字状の樹脂製部材からなる。この把持部13は、外壁部2aの適宜な複数個所に設けられている。
【0068】
≪掴まりバーの構成≫
掴まりバー5は、シェルター本体2が揺れた際に、避難用空間11内に避難している避難者M(図14参照)が掴まるための棒状柱である。掴まりバー5は、上端がシェルター本体2の天井部2eに固定され、下端部が蓋体31の上面に固定されて、垂直に設けられている。掴まりバー5は、外径が30mm程度の鉄製の棒状部材または鋼管からなる。
【0069】
≪平置台座の構成≫
図1及び図2に示すように、平置台座4は、防災用シェルター1を載置するように形成された支持台であり、円筒状のリング部材からなる。この平置台座4は、内径がシェルター本体2の外径よりも小さく形成された合成樹脂製の部材からなり、屋内の床面上または地面上に配置されて防災用シェルター1を安定した状態に支持する。
【0070】
≪SOS発信装置の構成≫
SOS(GPS)発信装置(図示省略)は、災害時に防災用シェルター1内に一時的に緊急避難した避難者Mが、外部に対して救助の要請を知らせるための発信装置である。SOS発信装置は、内壁部2bに設置されている。SOS発信装置は、携帯電話であっても構わない。
【0071】
≪防災用シェルターの作用≫
次に、図1〜図9を参照して本発明の実施形態に係る防災用シェルター1の作用を、実験結果を交えながら使用手順に沿って説明する。
【0072】
防災用シェルター1は、例えば、始めから地震等が来た場合を見込んで、直ぐに、防災用シェルター1内に逃げ込むことが可能な適宜な場所に配置して置くことが望ましい。防災用シェルター1を配置して置く場所としては、例えば、屋内の床の上、あるいは、自宅の庭等の屋外の平らな地面上に平置台座4を置いて、その上に防災用シェルター1を載置して置く。
【0073】
移動や移設する場合は、例えば、二人でシェルター本体2の外壁部2aの複数箇所にある把持部13をそれぞれ手で持ってシェルター本体2を摺動させて移動させ、さらに、シェルター本体2を持ち上げて平置台座4の上に載せて、シェルター本体2の外側底部2dを、平置台座4の上側開口部4a上に係合させて支持させる。
【0074】
シェルター本体2を摺動させる場合、シェルター本体2の外側底部2dが、球面状に形成されているので、摺動抵抗が小さく、全体が合成樹脂製で軽量であるため、容易に移動させることが可能である。このように、防災用シェルター1は、二人いれば容易に移動させたり、移設したりすることができる。
【0075】
例えば、大きな予震が発生したときや、緊急地震速報装置のお知らせがあったときには、一般に、大地震が発生するまでに10秒〜数十秒程度の時間がある。大きな地震の予震やお知らせがあった場合、避難者Mは、出入口12から避難用空間11に入り込んで避難する。
【0076】
防災用シェルター1内に入った避難者Mは、図8に示す空気口ハッチ17の弁体操作部材17dを押し上げることにより、弁体17cが開弁して大気中の空気をシェルター本体2内に取り入れることができる。弁体操作部材17dを引っ張れば、弁体17cが空気口ハッチ17を密閉した状態に閉弁させて、雨水や海水等の浸入防止することができる。
【0077】
大地震で家屋が倒壊して建材等が防災用シェルター1上に落下しても、また、崖崩れで土砂や瓦礫等が防災用シェルター1上に落下しても、シェルター本体2が強度を有するので、防災用シェルター1内の避難者Mが下敷きになって押し潰されるのを防護することができる。つまり、防災用シェルター1は、瓦礫等の障害物が当たっても壊れることなく、さらに、水等が浸入することがない防水性を備えたカプセル状になっているため、防災用シェルター1内に避難した避難者Mをあらゆる災害から守ることができる。
【0078】
図9に示すように、シェルター本体2は、外壁部2aがFRP樹脂21a、ロービングクロス21b、コア層21c、ガラス繊維21dからなる積層部材21によって形成されているので衝撃性、強弾性、耐腐食性及び強度を備え、折れない、割れない、変形しない、腐らない、浮くという性質を備えている。さらに、シェルター本体2は、その内壁部2bが、衝撃を吸収するクッション性と、熱及び低温が対する断熱性とを備えた緩衝材22からなるので、保温効果や緩衝性にも優れている。
【0079】
シェルター本体2の強度を試すために、先が鋭利な5kgの鉄塊と、100Kgの鉄柱を高さ2mの位置からそれぞれ投下する衝撃テストを実際に行った。その結果、シェルター本体2の表面には、僅かに傷が付いただけで、鉄塊及び鉄柱が貫通も、刺さりも、窪みもせず、跳ね飛ばした。
また、防災用シェルター1は、衝撃試験計算上、シェルター本体2の上面に45Kgにコンパネを載せ、さらに、そのコンパネ上に20Kgの土のう300個の6tの荷重を負荷しても耐えることができる強度を備えている。
【0080】
このように、防災用シェルター1は、強度、耐衝撃性、緩衝性等を備えていると共に、外形が球体であるので、瓦礫、鉄骨等の障害物や風雨や水等が当たったとしても、その負荷を受け流し易い形状をしているため、衝撃力を受け難い。
このような防災用シェルター1内に逃げ込んだ避難者Mは、避難用空間11が前記した強度を有するカプセル状のシェルター本体2に被われているので、衝撃を直接受けることが無い。衝撃を受けたとしても、防災用シェルター1が揺れるだけで、凹んだり、割れたり、水が浸入して来ることはない。
【0081】
図1に示す防災用シェルター1は、揺れた際や、波のある水上に流された際に、タンクT内の飲料水Wが重心を安定化させる役目も果たすので、揺れを抑制することができる。
防災用シェルター1は、喩え、土砂等によって押されて移動したり、転倒したりしたとしても、内壁部2b全体が緩衝材22で形成されているので、避難者Mが避難用空間11内で内壁面に衝突しても、衝撃が緩衝材22で吸収されるため、ケガをすることがない。
したがって、この防災用シェルター1内に避難した避難者Mは、あらゆる災害に対して身を守ることが可能である。また、防災用シェルター1は、あらゆる災害に耐えることができる強度を有する球状シェルターであるため、あらゆる災害時の人命救助や避難用シェルターとして使用することが可能である。
【0082】
また、バランサー水床3上のカーペット34は、ウォータベットとして使用することもできる。水栓弁32を操作すれば、タンクT内の飲料水Wを飲むことができるため、防災用シェルター1内に長時間に亘って避難することも可能である。
【0083】
地震が静まって、防災用シェルター1内から脱出する場合は、図6及び図7に示すように、防災用シェルター1内にあるロック機構19の操作レバー部19iを操作して扉部材16を外方向に押せば、出入口12が開放され、防災用シェルター1外に出ることができる。また、地震が続くようであれば、防災用シェルター1内にしばらくの間避難していれば安全である。
【0084】
家屋の倒壊や崖崩れ等により、防災用シェルター1の上に家屋の建材や土砂等の落下物があって、防災用シェルター1内から出ることができない生き埋めの状態の場合には、SOS発信装置(図示省略)を操作して救助信号を発信し、助けを呼ぶことによって、早期に救助されることが可能となる。このようにして、避難者Mは、大地震時に自分自身の身体を防災用シェルター1によって守ることが可能となる。
【0085】
[第1変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。図10は、本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第1変形例を示す斜視図である。
【0086】
前記実施形態で説明した防災用シェルター1(図1参照)は、図10に示す防災用シェルター1Aのように、扉部材16Aの下方に位置するシェルター本体2の外周面2fにリング状板部材24を設けても構わない。
【0087】
このリング状板部材24は、避難者M(図14参照)が扉部材16Aからシェルター本体2内に入り込む際に、足を掛ける踏み台となる部材であり、FRP樹脂等に合成樹脂製の厚板状部材からなる。リング状板部材24は、例えば、接着剤によってシェルター本体2の外周面2fに水平に固定されている。リング状板部材24は、上面から下面に向けてボルト等からなる突起物24aが適宜な間隔で複数設置されている。この突起物24aは、ロープ等を縛り付けて防災用シェルター1Aが、移動するのを防止するための部材である。
【0088】
また、図10に示すように、扉部材16Aに設けられて扉部材16を開閉するための取手16Afは、コ字型のものであってもよく、その形状は特に限定されない。取手16Afは、避難者Mが手で掴んで扉部材16Aを押引して開閉できるものであればよい。扉部材16Aには、その取手16Afを下側に配置して、ヒンジ部材14Aを上側に配置し、上下方向に向けて開閉するようにしてもよい。
【0089】
また、空気口15Aは、長円形に形成された空気口ハッチ17Aに、複数のパイプ状部材15Aaを内嵌したものであっても構わない。この場合、パイプ状部材15Aaの避難用空間11側には、中空状のパイプ状部材15Aaを開閉する弁体(図示省略)が設けられている。つまり、空気口15Aは、避難用空間11と大気中とを連通し、水等が浸入しないように閉塞できるものであれば、その構造は特に限定されない。
【0090】
[第2変形例]
図11は、本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第2変形例を示す図であり、防災用シェルターを避難用ボートとして使用しているときの状態を示す概略図である。図12は、本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第2変形例を示す図であり、扉部材と出入口を示す要部概略分解斜視図である。図13は、本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第2変形例を示す図であり、ロック機構を示す要部拡大概略断面図である。
【0091】
前記実施形態では、図1等に示すように、地面上や、屋内の床面上に配置して使用する場合を説明したが、図11に示すように、防災用シェルター1Bは、浮力があり、避難用空間11内に水が浸入するのを防止する完全防水になっているため、津波や河川の氾濫や大雨や洪水等の水害時に、避難用ボート(避難用カプセル型筏)としても使用できる。
【0092】
この場合、防災用シェルター1B内には、水害時に海に流されることなどを考慮して、SOS発信装置や、津波の際に避難者Mを掴まりバー5に固定させるためのベルトや、種々の際に利用できるロープや、防災用シェルター1Bが流されるのを抑制するイカリ等を常時、配備しておくことが望ましい。
なお、防災用シェルター1Bをボートとして使用する場合には、シェルター本体2の内底の中央部に配置されたバランサー水床3が防災用シェルター1Bの重心を安定化させる錘の役目を果たすため、津波、おおしけ、嵐の水上での防災用シェルター1を安定化させることができる。
【0093】
図12に示すように、出入口12Bは、この出入口12Bの周縁部に、外側に向けて突出した円環状の出入口枠12Baを有するものであってもよい。
出入口枠12Baは、扉部材16Bが閉塞時に外嵌する環状部位であり、略円筒状に形成されている。出入口枠12Baは、先端面及び外側基端部に、リング状の防水ゴムチューブからなるシール材O1,O2が接着剤によって固定されている。
出入口枠12Baの先端面に設置されるシール材O1は、例えば、一本のゴム製の中空部材からなり、扉部材16Bを閉めた際に、扉部材16Bの内側周縁部16Baが当接する。出入口枠12Baの外側基端部に設置されるシール材O2は、例えば、二本のゴム製の中空部材を外周方向に二重に並べて配置してなり、扉部材16Bを閉めた際に、扉部材16Bの周縁部先端面16Bbが当接する。
【0094】
扉部材16Bは、出入口12Bを、水が浸入しないように密閉した状態に閉めることが可能な開閉体であり、シェルター本体2の内側及び外側から開閉できるようになっている。この扉部材16Bは、円形の開閉板部材16Bcと、開閉板部材16Bcの周縁に形成された扉枠部16Bdと、開閉板部材16Bcの中央部に設けられた覗き窓16Beと、覗き窓16Beの周縁に設けられた窓枠ゴム材16Bfと、開閉板部材16Bcの外側寄りに設けられた取手16Bgと、扉部材16Bを閉塞状態にロックするロック機構19B(図13参照)と、ヒンジ部材14Bと、を備えて構成されている。扉部材16Bは、出入口12Bを密閉状態にすることによって、防災用シェルター1Bを、水及び瓦礫等の障害物から保護するカプセル状態にすることが可能なドアハッチである。
【0095】
図13に示すように、内側周縁部16Baは、開閉板部材16Bcの内側周縁部位であって扉部材16Bを閉塞した際に、シール材O1が当接して密閉状態にする部位である。
周縁部先端面16Bbは、扉枠部16Bdの先端面であり、扉部材16Bを閉塞した際に、シール材O2を介してシェルター本体2の外壁部2aに密着した状態で圧接される。
開閉板部材16Bcは、例えば、出入口12Bをシェルター本体2の外側から覆うようにして閉塞する板部材であり、後記するヒンジ部材14Bを中心として回動するように軸支されている。
【0096】
図12に示すように、扉枠部16Bdは、開閉板部材16Bcの内側周縁部16Baに一体形成された円筒状の部位であり、出入口枠12Baの外周部に外嵌及び離間可能に配置されている。
取手16Bgは、開閉板部材16Bcを回動させる際に手で持つための摘みであり、シェルター本体2の外面から外側に向けて突出した側面視してコ字状の部材からなる。
【0097】
図13に示すように、ロック機構19Bは、シェルター本体2内から扉部材16Bを密閉状態にロックするための部材であり、扉部材16Bに設けられた係止部19Baと、この係止部19Baに掛止、離脱する掛止部19Bbと、掛止部19Bbを係止部19Baに対してロック状態、アンロック状態にする操作部19Bcと、この操作部19Bcを回動自在に軸支する軸支部19Bdと、から構成されている。
図11に示すように、把持部13Bは、避難者Mが防災用シェルター1B内に出入りする際に、足を載せる踏み台になるように、出入口12Bの下側の外壁部2aに水平に横設してもよい。
【0098】
次に、図12を参照して防災用シェルター1Bを避難用ボートとして使用する場合について説明する。
特に、海岸に近いゼロメートル地帯では、大雨や津波等の水害時に、家屋等が浸水した場合等に、避難用ボートとして防災用シェルター1Bを使用する。この場合、出入口12Bから防災用シェルター1B内に入り込む。防災用シェルター1Bは、筏のように水上を流れる。この場合、一端を把持部13Bに固定したロープ8の他端に設けたアンカー7を水底等に固定させて、防災用シェルター1が流されるのを防止するようにしてもよい。
そして、SOS発信装置をONしてSOSの信号を発信させて、救助されるのを待つ。
【0099】
シェルター本体2の自重90Kg、タンクT内の飲料水25Kg、大人4人相当の重さ土のう200Kgの合計315Kgの防災用シェルター1Bを海上から5mの高さの位置から海面に投下させる実験を行った。この際、シェルター本体2は、歪みも、割れも、窪みも形成されなかった。また、その防災用シェルター1Bは、重さ300Kgの重りを載せても、バランサー水床3によって水平に保たれると共に、シェルター本体2の2/3以上が海面上に出た状態で浮いた状態に保つことができた。
このため、防災用シェルター1Bは、津波、河川の氾濫、土石流、崖崩れ等にも耐えることができると共に、雨水や海水等がシェルター本体2内に浸入することがない。よって、避難者M(図14参照)は、防災用シェルター1B内に避難している限り、津波や障害物等が避難者Mに当たることがないため、身を守ることができる。
【0100】
[第3変形例]
図14は、本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第3変形例を示す概略断面図である。
また、図14に示すように、防災用シェルター1Cは、出入口12よりも下方のシェルター本体2の下部部位を地中に埋設して固定してもよい。この場合、地面の球面状を窪みを掘ってシェルター本体2を載置する。このようにすれば、前記実施形態で使用した平置台座4(図2参照)が不要となるので、便利である。
【0101】
この場合、図14に示すように、シェルター本体2には、このシェルター本体2の外周面2fに、連結部材71を介してアンカー7を連結してもよい。アンカー7は、防災用シェルター1Cが、津波や土石流や濁流によって流されたり、移動したりするのを防止するために、地面や岩やコンクリートに突き刺して固定する部材である。アンカー7は、地面等に打ち込まれる棒状部位7aと、連結部材71を連結する連結部7bと、を一体形成してなる。連結部材71は、鎖あるいは綱からなる。
【0102】
また、シェルター本体2内の床面のカーペット34の上方には、避難者Mが防災用シェルター1内に潜り入り込んだ際に、腰を掛ける椅子の役目や、クッションとしての役目を果たす浮輪9を配置してもよい。この場合、浮輪9は、例えば、空気を入れて密閉したドーナツ形の中空体からなり、外径がシェルター本体2の内壁部2bに当接する大きさに形成されたビニール製のものからなる。なお、浮輪9は、水面に浮くので避難用浮輪または救助用浮輪としても使用可能である。
【0103】
把持部13Cには、ロープ8の一端を縛り付けてもよい。ロープ8は、例えば、地上において、防災用シェルター1Cを木や柱等の固定物に連結したり、海上において、防災用シェルター1Cを他の船舶や、固定物等の種々のものに連結したり、救助用ロープとしても使用することが可能である。
【0104】
[第4変形例]
図15は、本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第4変形例を示す概略断面図である。
図15に示すように、防災用シェルター1Dは、シェルター本体2の上部に設けた出入口12Dを残してそれ以外の全体を地中に埋設しても構わない。
この場合、出入口12Dを開閉する扉部材16Dは、シェルター本体2の上部に設置されて、上下方向に開閉するように形成し、取手16Dfを設ける。
【0105】
出入口12Dの内側周縁部には、梯子6と掴まりバー5Dとを設ける。梯子6は、シェルター本体2の上部部位に形成された出入口12Dから避難者Mが避難用空間11に出入りする際に、手で掴まって、足を掛けながら出入りするために使用する部材である。この梯子6は、例えば、ロープ状部材や、鎖状部材によって形成された綱梯子からなり、シェルター本体2の天井面に着脱自在に設置できるようになっている。このため、シェルター本体2内の出入口12Dの周辺部には、梯子6を着脱自在に掛止するための梯子取付部23が設けられている。
梯子取付部23は、例えば、シェルター本体2の出入口12Dの周辺部の内壁部2bに固着され、梯子6の掛止部6aが掛止されるフック23aを備えてなる。
【0106】
また、掴まりバー5Dは、シェルター本体2内に斜めに設けても構わない。その場合、掴まりバー5Dは、上端をシェルター本体2の天井面に固定し、下端をカーペット34及び蓋体31を貫通して内底部2cに固定する。
このようにすれば、避難者Mが梯子6を使って登り降りする際に、斜めの掴まりバー5Dに足を掛けることができ、出入口12Dから出入りし易くなる。
【0107】
このように、防災用シェルター1Dを自宅の庭等の地中に埋設しておくことにより、普段、防災用シェルター1Dを使用しないときでも、邪魔にならず、いざ、地震等の災害が発したときに、直ぐに逃げ込むことができる。また、防災用シェルター1Dを地中に埋設したことにより、津波や洪水等で流されることもない。さらに、大きな落下物が落ちて来たり、家屋が倒壊したりしても、その落下物や家屋が地面上に倒れるため、防災用シェルター1Dが落下物によって押し潰されることがない。
【0108】
[第5変形例]
図16は、本発明の実施形態に係る防災用シェルターの第5変形例を示す概略側面図である。
図16に示すように、前記防災用シェルター1Eは、家等の建物Hの下の地下に出入口12E以外のこのシェルター本体2の略全体を地中に埋設して、地下シェルターとして使用してもよい。
この場合、自宅等の建物H内の床面H1に出入口12Eに連通する避難穴H2を掘って、この避難穴H2から出入口12Eを通って避難用空間11内に出入りできるようになっている。このようにすれば、建物H内にいた避難者Mは、地震があった際に直ぐに逃げ込むことができる。防災用シェルター1Eは、床面H1よりも下にあるので、地上が壊滅的な危害を受けたり、大きな建築材が落下して来たりしても、押し潰されることがない。
【0109】
一般に、地下シェルターを設ける場合は、工事費が高価で、設置作業も大掛かりになる。これに対して、本発明の埋め込み型の防災用シェルター1は、一般の地下シェルターの十分の一以下の値段で設置することができると共に、小型で簡易形状であるため、設置工数も少なく短時間で設置することが可能である。
【0110】
≪その他の変形例≫
例えば、防災用シェルター1は、家族の人数等に合わせて、家族全員が防災用シェルター1内に入ることが可能な適宜な大きさのものにしてもよい。例えば、防災用シェルター1は、左右の幅を長くして、平面視して長円形あるいは楕円形にしてもよい。
【0111】
その他、防災用シェルター1には、緊急避難用備品を袋にまとめて入れておくことが望ましい。緊急避難用備品は、例えば、懐中電灯、ラジオ、乾電池、保存食、携帯酸素、医療品、携帯トイレ等の防災用品である。
【符号の説明】
【0112】
1,1A〜1E 防災用シェルター
2 シェルター本体
2a 外壁部
2b 内壁部
2c 内底部
2d 外側底部
2e 天井部
2f 外周面
3 バランサー水床(バランサー)
4 平置台座
5 掴まりバー
6 梯子
11 避難用空間
12 出入口
15 空気口
16 扉部材
21 積層部材
21a FRP樹脂
21b ロービングクロス
21c コア層
21d ガラス繊維
22 緩衝材
23 梯子取付部
31 蓋体
32 水栓弁
T タンク
W 飲料水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に避難用空間を有する防災用シェルターであって、
前記避難用空間を形成する樹脂製のシェルター本体と、
前記シェルター本体に形成された出入口と、
前記出入口を開閉する扉部材と、を有し、
前記シェルター本体の内底に、飲料水を貯蔵するバランサーを設けたことを特徴とする防災用シェルター。
【請求項2】
前記バランサーは、前記シェルター本体の凹面状に形成された内底部と、
前記内底部の周縁部に載設されて前記凹面状に形成された部位を閉塞する蓋体と、によってタンクを形成し、
前記蓋体には、前記バランサー内に前記飲料水を出し入れするための水栓弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防災用シェルター。
【請求項3】
前記シェルター本体は、中空の球状体からなり、当該シェルター本体の外壁部が積層部材で形成されて、内壁部が緩衝材で形成されると共に、水上に配置された場合に、水面を浮遊可能に形成され、
前記積層部材は、FRP樹脂と、ロービングクロスと、コア層と、ガラス繊維とが積層されてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防災用シェルター。
【請求項4】
前記シェルター本体内には、上端部を前記シェルター本体の天井部に固定し、下端部を前記蓋体に固定した掴まりバーが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の防災用シェルター。
【請求項5】
前記シェルター本体は、当該シェルター本体の外側底部を、床面上または地面上に配置され、略筒状に形成された平置台座の上側開口部上に係合することによって支持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の防災用シェルター。
【請求項6】
前記シェルター本体には、当該シェルター本体の外周面に、連結部材を介してアンカーが連結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の防災用シェルター。
【請求項7】
前記シェルター本体の上部には、前記避難空間と大気中とに連通する空気口と、
当該空気口を開閉する空気口ハッチと、
が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の防災用シェルター。
【請求項8】
前記シェルター本体には、当該シェルター本体の上部に前記出入口及び前記扉部材が設けられると共に、
当該シェルター本体内の前記出入口の周辺部には、梯子を着脱自在に設置するための梯子取付部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の防災用シェルター。
【請求項9】
前記シェルター本体は、前記出入口以外の当該シェルター本体全体、または、当該シェルター本体の下部を地中に埋設したことを特徴とする請求項8に記載の防災用シェルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−36180(P2013−36180A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171304(P2011−171304)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(503397812)コスモパワー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】