説明

防眩性フィルム、偏光フィルム、光学フィルム及び画像表示装置

【課題】 写り込み防止(防眩性の確保)と白ぼけ防止を両立させると共に、鮮明性の確保とぎらつき(シンチレーション)防止の両立も可能とし、さらには反射防止層(AR層)を設ける場合であってもその反射防止機能を損なうことのない防眩性フィルム等を提供する。
【解決手段】 本発明に係る防眩性フィルム100は、微粒子1を含有する透光性樹脂21から形成された第1樹脂層101と、第1樹脂層101上に積層され、第1樹脂層101と反対側の表面が凹凸形状を有する透光性樹脂22から形成された第2樹脂層102とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の画像表示装置における画像の視認性低下を抑制するために用いられる防眩性フィルム、偏光フィルム、光学フィルム及びこれらのフィルムを用いた画像表示装置に関する。特に、本発明は、写り込み防止(防眩性の確保)と白ぼけ防止を両立させると共に、鮮明性の確保とぎらつき(シンチレーション)防止の両立も可能とし、さらには反射防止層(AR層)を設ける場合であってもその反射防止機能を損なうことのない防眩性フィルム、偏光フィルム、光学フィルム及びこれらのフィルムを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の画像表示装置は、蛍光灯などの室内照明からの光、窓から入射した太陽光、操作者の影などの外光が表面に写り込むことにより、画像の視認性が妨げられる。このため、従来より、画像表示装置の表面には、該表面での反射光を拡散して外光の正反射を抑制し、これにより外光の写り込みを防止する(防眩性を有する)ための防眩性フィルムが配置されている。
【0003】
図1は、従来提案されている各種の防眩性フィルムの概略構成を模式的に示す縦断面図である。図1(a)に示す防眩性フィルム100Aは、例えば、特許文献1で提案されている構成に相当するものであり、微粒子1を含有する透光性樹脂2からなる防眩層10Aが基材3上に形成されている。そして、微粒子1の一部を防眩層10Aの表面から突出させることにより、防眩層10Aの表面が凹凸形状を有する構成とされている。
【0004】
図1(a)に示す防眩性フィルム100Aによれば、防眩層10A表面の凹凸形状を適宜設計することによって反射光を拡散し外光の写り込みを抑制することが可能である。しかしながら、凹凸の程度によっては、光の拡散性が高くなり過ぎる結果、画像表示装置で黒色表示を行う際に表示画面が白っぽくなる、いわゆる白ぼけと称される現象が生じ、画像のコントラストが低下するという問題が生じる。この白ぼけを防止すると同時に外光の写り込みを防止する、すなわち、防眩性の確保と白ぼけ防止を両立させるには、凹凸形状を精度良く設計する必要がある。しかしながら、図1(a)に示す防眩性フィルム100Aは、防眩層10Aに含有された微粒子1の位置や個数等によって凹凸形状が決定される構成であるため、凹凸形状を精度良く設計することは難しく、現実的には防眩性の確保と白ぼけ防止を両立させることが困難であるという問題がある。
【0005】
図1(b)に示す防眩性フィルム100Bは、例えば、特許文献2で提案されている構成に相当するものであり、透光性樹脂2からなる防眩層10Bが基材3上に形成されている。そして、防眩層10Bの表面が凹凸形状を有する構成とされている。
【0006】
図1(b)に示す防眩性フィルム100Bによれば、防眩層10B表面の凹凸形状を適宜設計することによって反射光を拡散し外光の写り込みを抑制することが可能である。そして、図1(a)に示す防眩性フィルム100Aと異なり、微粒子の位置や個数等によって凹凸形状が決定される構成ではなく、例えば、エンボスローラ等による賦型によって凹凸形状を精度良く設計することができるため、防眩性の確保と白ぼけ防止を両立させることも比較的容易である。しかしながら、図1(b)に示す防眩性フィルム100Bは、微粒子を含有しないため、表面の凹凸によるレンズ効果を、微粒子による内部散乱によって緩和することができず、画像表示装置の表示画面にぎらつき(シンチレーション)が生じてしまうという問題がある。より具体的に説明すれば、このぎらつきは、表面凹凸の曲率によって形成されたレンズの焦点と画像表示装置の画素の位置とが一致するときに、画素が拡大されることによって発生すると考えられる。そして、レンズと画素との間に微粒子が介在すれば、画素から出射した光が微粒子によって散乱し、光の直進性が低下するため、ぎらつきを抑制することが可能である。しかしながら、図1(b)に示す防眩性フィルム100Bは、微粒子を含有しない構成であるため、微粒子による内部散乱が生じず、表面凹凸によって画素が拡大される結果、ぎらつきが生じてしまうという問題がある。
【0007】
図1(c)に示す防眩性フィルム100Cは、例えば、特許文献3、4で提案されている構成に相当するものであり、防眩層10Cが基材3上に形成されている。防眩層10Cは、微粒子1aを含有する透光性樹脂2aからなる樹脂層10aと、微粒子1bを含有する透光性樹脂2bからなる樹脂層10bとが積層されて形成されている。そして、微粒子1bの一部を樹脂層10bの表面から突出させることにより、防眩層10Cの表面が凹凸形状を有する構成とされている。
【0008】
図1(c)に示す防眩性フィルム100Cによれば、防眩層10C表面の凹凸形状を適宜設計することによって反射光を拡散し外光の写り込みを抑制することが可能である。また、防眩層10Cが樹脂層10aと樹脂層10bとに分割されており、主として樹脂層10aに含有された微粒子1aで適切な内部散乱を生じさせるように設計する一方、樹脂層10bに含有された微粒子1bで凹凸形状が付与されるように設計することが可能であるため、図1(a)に示す防眩性フィルム100Aに比べれば設計上の制約は緩和されることになる。しかしながら、図1(a)に示す防眩性フィルム100Aと同様に、樹脂層10bに含有された微粒子1bの位置や個数等によって凹凸形状が決定される構成であるため、凹凸形状を精度良く設計することは難しく、現実的には防眩性の確保と白ぼけ防止を両立させることが困難であるという問題がある。また、樹脂層10a及び樹脂層10bの双方に微粒子を含有する構成であるため、ヘイズ値(拡散透過率/全光線透過率)が高くなって鮮明性(透過鮮明性)が著しく低下するという問題がある。
【0009】
図1(d)に示す防眩性フィルム100Dは、例えば、特許文献5で提案されている構成に相当するものであり、微粒子1を含有する透光性樹脂2からなる防眩層10Dが基材3上に形成されている。そして、防眩層10Dの表面に凹凸形状が賦型された構成とされている。
【0010】
図1(d)に示す防眩性フィルム100Dによれば、防眩層10D表面の凹凸形状を適宜設計することによって反射光を拡散し外光の写り込みを抑制することが可能である。そして、賦型によって凹凸形状を精度良く設計することができるため、防眩性の確保と白ぼけ防止を両立させることも比較的容易である。また、防眩層10Dに含有された微粒子1で適切な内部散乱を生じさせるように設計することにより、鮮明性を著しく低下させることなく、ぎらつきを防止することも可能である。しかしながら、図1(d)に示す防眩性フィルム100Dは、凹凸形状を賦型した箇所に微粒子1が存在し、図2に示すように、空気層と微粒子1との間に存在する透光性樹脂2の厚みtが局所的に極めて小さくなる場合がある。この場合、厚みtの部分の干渉(薄膜干渉)作用により、反射光に色ムラ等が生じてしまうという問題がある。また、厚みtがλ/2(λは外光の波長)の近傍であると、防眩性フィルム100Dの最表面での反射光と、微粒子1と透光性樹脂2との界面での反射光とが干渉して強めあい、反射率が増大して視認性の低下を招く場合があるという問題もある。
【0011】
また、例えば、特許文献6で提案されているように、防眩層10Dの凹凸形状表面に反射防止層(AR層)4を設ける場合(図3参照)にも、厚みtの部分の干渉作用によって、AR層4の光学設計が崩れ、局所的に反射防止効果が損なわれる場合があるという問題がある。
【特許文献1】特開2000−121809号公報
【特許文献2】特開2004−29672号公報
【特許文献3】特開2003−302506号公報
【特許文献4】特開2002−90508号公報
【特許文献5】特開2004−348156号公報
【特許文献6】特開2003−4904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、斯かる従来技術の問題点を解決するべくなされたものであり、写り込み防止(防眩性の確保)と白ぼけ防止を両立させると共に、鮮明性の確保とぎらつき(シンチレーション)防止の両立も可能とし、さらには反射防止層(AR層)を設ける場合であってもその反射防止機能を損なうことのない防眩性フィルム、偏光フィルム、光学フィルム及びこれらのフィルムを用いた画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するべく、本発明は、微粒子を含有する透光性樹脂から形成された第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に積層され、前記第1樹脂層と反対側の表面が凹凸形状を有する透光性樹脂から形成された第2樹脂層とを備えることを特徴とする防眩性フィルムを提供するものである。
【0014】
斯かる発明によれば、第1樹脂層と第2樹脂層とを独立して制御可能であり、設計の自由度が向上する。具体的には、微粒子を含有しない第2樹脂層の凹凸形状を、例えば、エンボスローラ等による賦型によって精度良く設計することができるため、防眩性の確保と白ぼけ防止を両立させることが可能である。そして、第1樹脂層に含有された微粒子によって、ぎらつきを抑制するための最低限の内部散乱を生じさせるように設計することにより、鮮明性の確保とぎらつき防止を両立させることが可能である。さらに、第2樹脂層の凹凸形状には微粒子が存在しないため、空気層と微粒子との間に存在する透光性樹脂の厚みに起因した干渉作用が生じることもなく、凹凸形状表面に反射防止層(AR層)を設ける場合であってもその反射防止機能を損なうことがない。以上のように、本発明に係る防眩性フィルムは、写り込み防止(防眩性の確保)と白ぼけ防止を両立させると共に、鮮明性の確保とぎらつき(シンチレーション)防止の両立も可能とし、さらには反射防止層(AR層)を設ける場合であってもその反射防止機能を損なうことがないという優れた効果を奏するものである。
【0015】
なお、本発明に係る防眩性フィルムを従来の一般的な偏光フィルムに積層することにより、防眩性を有する偏光フィルムを得ることが可能である。すなわち、ポリビニルアルコール(PVA)フィルムの両面にトリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の保護フィルムを貼り合わせた一般的な偏光フィルムを構成する保護フィルム(TACフィルム等)を基材とし、この基材上に、第1樹脂層及び第2樹脂層(防眩性フィルム)を積層して、防眩性を有する偏光フィルムを得ることが可能である。
【0016】
しかしながら、本発明に係る防眩性フィルムを用いた防眩性を有する偏光フィルムとしては、ポリビニルアルコールフィルムと、前記ポリビニルアルコールフィルムの一方の面に積層された前記防眩性フィルムと、前記ポリビニルアルコールフィルムの他方の面に積層された保護フィルムとを備えることを特徴とする偏光フィルムとすることが好ましい。
【0017】
斯かる発明によれば、防眩性フィルム自体が、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム(偏光子)の保護フィルムとしての機能を奏するため、従来の一般的な偏光フィルムのように、PVAフィルムの両面にTACフィルム等の保護フィルムを貼り合わせる必要が無い。従って、製造プロセスの簡略化や薄型化を図ることができると共に、偏光子の保護機能と防眩性とを兼ね備えた偏光フィルムを得ることが可能である。なお、本発明における偏光フィルムは、防眩性フィルムとPVAフィルムとを独立別個に作製して両者を接着材等を用いて貼り合わせる構成に限らず、PVAフィルムを基材として、この基材上に第1樹脂層及び第2樹脂層を塗工等によって順次形成する構成を含むものである。また、本発明におけるポリビニルアルコールフィルムの他方の面に積層された保護フィルムとしては、一般的なTACフィルムを用いることができる他、第1樹脂層や第2樹脂層を形成する透光性樹脂からなるフィルムを用いることも可能である。
【0018】
好ましくは、前記第1樹脂層及び/又は前記第2樹脂層を形成する透光性樹脂は、無溶剤樹脂とされる。
【0019】
斯かる好ましい構成によれば、吸水性を有するポリビニルアルコールフィルムに防眩性フィルムを積層する際に(特に、PVAフィルムを基材として第1樹脂層及び第2樹脂層を塗工等によって積層する際に)、第1樹脂層及び/又は第2樹脂層の加熱乾燥工程が不要となるため、製造プロセスを簡略化できるという利点が得られる。
【0020】
また、本発明は、前記防眩性フィルム或いは前記偏光フィルムが積層されていることを特徴とする光学フィルムとしても提供される。前記防眩性フィルムや前記偏光フィルムを積層する対象としては、これらフィルムの光学特性を阻害しない限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、位相差フィルムや輝度向上フィルム等を例示することができる。
【0021】
さらに、本発明は、前記防眩性フィルム、前記偏光フィルム或いは前記光学フィルムを備えることを特徴とする画像表示装置としても提供される。画像表示装置の種類は特に限定されるものではないが、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ等を例示することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、写り込み防止(防眩性の確保)と白ぼけ防止を両立させると共に、鮮明性の確保とぎらつき(シンチレーション)防止の両立も可能とし、さらには反射防止層(AR層)を設ける場合であってもその反射防止機能を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図4は、本発明の一実施形態に係る防眩性フィルムの概略構成を模式的に示す縦断面図である。図4に示すように、本実施形態に係る防眩性フィルム100は、微粒子1を含有する透光性樹脂21から形成された第1樹脂層101と、第1樹脂層101上に積層され、第1樹脂層101と反対側の表面が凹凸形状を有する透光性樹脂22(微粒子は含有しない)から形成された第2樹脂層102とを備えている。そして、第1樹脂層101及び第2樹脂層102が防眩層10を形成している。なお、本実施形態では、防眩層10が基材3上に形成された防眩性フィルム100とされているが、本発明はこれに限るものではなく、第1樹脂層101上に第2樹脂層102が積層された防眩層10のみからなる防眩性フィルムとすることも無論可能である。
【0025】
微粒子1の種類としては、特に限定されるものではなく、所謂アンチグレア処理に用いられる一般的なものを用いることができる。例えば、特開2003−66207号公報に記載のような、ポリメチルメタクリレート、シリカ、ポリスチレン、金属酸化物等からなる微粒子を例示することができる。
【0026】
微粒子1の寸法は、0.1〜100μm程度にすることが好ましい。0.1μmより小さいと内部散乱によるぎらつき防止効果が消失し、100μmより大きいとヘイズ値が著しく高くなって鮮明性の低下を招くからである。
【0027】
透光性樹脂21及び透光性樹脂22の種類としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、紫外線や電子線等のエネルギー線で硬化するエネルギー線硬化型の樹脂(例えば、特開2002−90508号公報に記載のような紫外線硬化型樹脂)が用いられる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系等の樹脂を例示することができる。また、熱硬化型、熱可塑型、水分硬化型の樹脂等を用いることも可能である。
【0028】
透光性樹脂21及び透光性樹脂22としては、両者の界面での反射による視認性の低下を防止するという観点より、屈折率が互いに同一か或いは近似した材料を用いることが好ましい。また、化学的親和性向上により、界面の密着性の確保を容易にするという観点より、化学組成が互いに同一か或いは近似した材料を用いることが好ましい。
【0029】
以上の構成を有する防眩性フィルム100の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のような工程で作製することが可能である。すなわち、先ず最初に、基材3上に微粒子1を含有する透光性樹脂21(本実施形態では透光性樹脂21を含む樹脂液)を塗工し、加熱乾燥させた後、エネルギー線を照射して硬化させ、第1樹脂層101を形成する。次に、第1樹脂層101上に透光性樹脂22(本実施形態では透光性樹脂22を含む樹脂液)を塗工し、加熱乾燥させた後、エネルギー線を照射して硬化させ、第2樹脂層102を形成する。最後に、第2樹脂層102の第1樹脂層101と反対側の表面に凹凸形状を賦型し、これにより防眩性フィルム100が作製される。なお、凹凸形状の賦型方法としては、特に限定されるものではないが、生産性の観点より、好ましくは、エンボスローラによるエンボス加工が用いられる。
【0030】
なお、防眩性フィルム100の他の製造方法としては、後述するように、透光性樹脂21及び/又は透光性樹脂22として無溶剤樹脂を用いることにより、上記製造方法における透光性樹脂21及び/又は透光性樹脂22の加熱乾燥工程を省略した方法を採用することも可能である。
【0031】
また、第2樹脂層102を形成する透光性樹脂22を含む樹脂液が比較的低粘度である場合には、第1樹脂層101上に前記樹脂液を塗工した後、該樹脂液の第1樹脂層101と反対側の表面にエンボスローラ等を接触させ、これと同時に基材3側からエネルギー線を照射して硬化させることにより、第2樹脂層102の表面に凹凸形状を賦型する方法を採用しても良い。
【0032】
一方、第2樹脂層102を形成する透光性樹脂22を含む樹脂液が比較的高粘度である場合には、第1樹脂層101上に前記樹脂液を塗工した後、該樹脂液の第1樹脂層101と反対側の表面にエンボスローラ等を接触させて賦型した後、得られたフィルムの少なくとも一方の面側からエネルギー線を照射して硬化させることにより、第2樹脂層102の表面に賦型された凹凸形状を固定化する方法を採用することが可能である。
【0033】
また、第1樹脂層101上に、第2樹脂層102を形成する透光性樹脂22を含む樹脂液を塗工し、エネルギー線を弱く照射(ハーフキュア)して柔らかい状態で形成された第2樹脂層102に凹凸形状を賦型した後、再びエネルギー線を照射してフルキュアし、凹凸形状を固定化する方法を採用することも可能である。
【0034】
また、以下のような製造方法を採用することも可能である。すなわち、まずエンボスローラ上に第2樹脂層102を形成する透光性樹脂22を含む樹脂液を直接塗工すると共に、該樹脂液のエンボスローラと反対側の表面からエネルギー線を照射して硬化させることにより、凹凸形状が賦型された第2樹脂層102を形成する。その直後に、第1樹脂層101を形成する透光性樹脂21を第2樹脂層102上に塗工し、前記と同様にエネルギー線を照射して硬化させることにより第1樹脂層101を形成する。そして、第1樹脂層101及び第2樹脂層102をエンボスローラから剥離させてフィルム化する。このようにして得られたフィルムを接着材等を用いて基材3に貼り合わせるという製造方法である。
【0035】
さらには、後述するように、第1樹脂層101及び第2樹脂層102が、PVAフィルム(偏光子)の保護フィルムとしての機能を奏する場合には、以下のような製造方法を採用することも可能である。すなわち、押し出しやキャスティング等、適宜な方法を用いて、予め微粒子1を含んだ熱可塑型樹脂をフィルム化(第1樹脂層101を形成)し、基材3(好適には偏光子としてのPVAフィルム)に接着材等を用いて貼り合わせる。そして、第1樹脂層101上に第2樹脂層102を形成するという製造方法である。或いは、予め第1樹脂層101及び第2樹脂層102を形成しておき、この積層体を基材3(好適には偏光子としてのPVAフィルム)に接着材等を用いて貼り合わせるという製造方法を採用することも可能である。
【0036】
本実施形態に係る防眩性フィルム100によれば、防眩性の確保と白ぼけ防止を両立させるように、第2樹脂層102の凹凸形状を賦型によって精度良く設計することが可能である。また、第1樹脂層101に含有された微粒子1の寸法や個数、微粒子1と透光性樹脂21との屈折率の差などを適宜調整し、ぎらつきを抑制するための最低限の内部散乱を生じさせるように設計することにより、鮮明性の確保とぎらつき防止を両立させることが可能である。
【0037】
なお、本実施形態における基材3としては、特に限定されるものではなく、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムや、ポリアクリレート等の一般的なフィルムを用いることができる。そして、TACフィルム、PVAフィルム及びTACフィルムの積層体からなる偏光フィルムの一方のTACフィルムを基材3とし、該TACフィルム上に第1樹脂層101及び第2樹脂層102を積層することによって防眩性を備えた偏光フィルムを得ることも可能である。
【0038】
しかしながら、基材3としてPVAフィルムを用い、このPVAフィルムの他方の面(第1樹脂層101が形成された面と反対側の面)に、TACフィルム等の保護フィルムを積層した偏光フィルムとすることが好ましい。この偏光フィルムは、第1樹脂層101及び第2樹脂層102が、PVAフィルム(偏光子)の保護フィルムとしての機能を奏するため、従来の一般的な偏光フィルムのように、PVAフィルムの両面にTACフィルムを貼り合わせる必要が無い。従って、防眩性を備えた偏光フィルムの製造プロセスの簡略化や薄型化を図ることが可能である。なお、この防眩性を備えた偏光フィルムにおいて、第1樹脂層101は直接PVAフィルムに接触するため、柔軟性を有する樹脂材料で形成する一方、第2樹脂層102は外表面となるため、ハードコート性を有する樹脂材料から形成することが好ましい。
【0039】
また、上記防眩性を備えた偏光フィルムにおいて、第1樹脂層101を形成する透光性樹脂21及び/又は第2樹脂層102を形成する透光性樹脂22は、無溶剤樹脂とするのが好ましい。これにより、吸水性を有するPVAフィルムからなる基材3上に第1樹脂層101及び第2樹脂層102を塗工等によって積層する際に、第1樹脂層101及び/又は第2樹脂層102の加熱乾燥工程が不要となるため、製造プロセスを簡略化できるという利点が得られる。
【0040】
無溶剤樹脂としては、例えば、ポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エン・チオール系等の樹脂を例示することができる。中でも、硬化速度や硬化物の物性の選択の範囲が広いという点より、アクリル系のモノマーやプレポリマーが好適に用いられる。アクリル系のプレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられ、求める特性(硬化前の作業性、硬化物の光学物性や機械物性等)に応じて種々選択すればよい。
【0041】
なお、本発明は、防眩性フィルム100(基材3のない第1樹脂層101及び第2の樹脂層102のみからなる構成も含む)或いは前記偏光フィルムが積層されていることを特徴とする光学フィルムとしても提供される。防眩性フィルム100や前記偏光フィルムを積層する対象としては、これらフィルムの光学特性を阻害しない限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、位相差フィルムや輝度向上フィルム等を例示することができる。
【0042】
以下、実施例及び比較例を示すことにより、本発明の特徴をより一層明らかにする。
【0043】
実施例(図4に示す構成に対応)、比較例1(図1(a)に示す構成に対応)、比較例2(図1(b)に示す構成に対応)、比較例3(図1(c)に示す構成に対応)及び比較例4(図1(d)に示す構成に対応)の各防眩性フィルムについて、ぎらつき、鮮明性、ヘイズ、反射防止層(AR層)を積層したときの色ムラ、写り込み(防眩性)及び白ぼけを評価した。なお、これら各項目は、以下に示す基準によって評価した。
【0044】
(1)ぎらつき
防眩性フィルムを表面処理していない偏光板(厚み185μm)に接着し、これをさらに厚み1.1mmのガラス板に貼り合わせてサンプルとした。このサンプルをバックライト上に置かれた格子パターン上に載置した。なお、格子パターンは、開口部90μm×20μm、縦線幅20μm、横線幅40μmのものを用いた。格子パターンから樹脂層までの距離は1.3mm、バックライトから格子パターンまでの距離は1.5mmに固定した。そして、防眩性フィルム側から、ぎらつき状態を下記の基準で目視評価した。
○:ぎらつきが殆ど無い状態
△:ぎらつきはあるが気にならず、実用上問題ないレベル
×:ぎらつきがひどく、実用上問題あるレベル
【0045】
(2)鮮明性(透過鮮明性)
JIS K7105に準じ、スガ試験機製写像鮮明性測定装置により、0.5mm幅の光学くしで測定した。数値が高いほど鮮明性が高いことを意味する。
【0046】
(3)ヘイズ値
JIS K7105に準じ、スガ試験機製ヘイズメーターを用いて測定した。
【0047】
(4)反射防止層(AR層)を積層したときの色ムラ
防眩性フィルムを構成する最外面の樹脂層上に、特開2003−344608号公報に記載された屈折率1.43の反射防止層を約100nmの厚みで積層した。そして、基材の裏面(樹脂層が形成された面と反対側の面)に、三菱レイヨン製黒色アクリル板(厚み2.0mm)を粘着剤によって貼り合わせ、裏面での光の反射を無くした。以上のようにして作製したサンプルの反射防止層側から蛍光灯の光を直接反射させ、微細な反射色の変化を下記の基準で目視評価した。
○:色ムラが殆ど見られない
△:若干の色ムラが見られるが、実用上問題ないレベル
×:色ムラが強く、実用上問題あるレベル
【0048】
(5)写り込み(防眩性)
防眩性フィルムの基材の裏面(樹脂層が形成された面と反対側の面)に、三菱レイヨン製黒色アクリル板(厚み2.0mm)を粘着剤によって貼り合わせ、裏面での光の反射を無くした。以上のようにして作製したサンプルの樹脂層側から蛍光灯の光を直接反射させ、サンプル表面に写り込んだ蛍光灯の像のイメージを下記の基準で目視評価した。
○:蛍光灯の像のイメージが全く分からない
△:蛍光灯の像のイメージはぼやけているが、微かに輪郭が確認できる
×:蛍光灯の像のイメージを明確に視認できる
【0049】
(6)白ぼけ
防眩性フィルムの基材の裏面(樹脂層が形成された面と反対側の面)に、三菱レイヨン製黒色アクリル板(厚み2.0mm)を粘着剤によって貼り合わせ、裏面での光の反射を無くした。以上のようにして作製したサンプルの樹脂層側から、図5に示すように、蛍光灯の光をサンプルの法線Aと30°の角度を成す方向から入射させ(入射光線B)、この入射光線Bに対して方位角180°の方向から拡散反射光Cを目視観察(すなわち、法線Aと入射光線Bとを含む面内を通る拡散反射光Cを目視観察)し、白ぼけの程度を下記の基準で評価した。
○:白ぼけが殆ど無い状態
△:白ぼけはあるが気にならず、実用上問題ないレベル
×:白ぼけがあり、実用上問題あるレベル
【0050】
表1に評価結果を示す。なお、表1における「AR積層」の欄は、反射防止層(AR層)を積層したときの色ムラの評価結果を意味する。
【表1】

【0051】
表1に示すように、比較例1及び3の防眩性フィルムは、白ぼけを防止することができたものの、写り込みを防止することができなかった。また、表1には示していないが、写り込みを防止するように凹凸形状を設計した場合には、逆に白ぼけを防止することができなかった。つまり、比較例1及び3の防眩性フィルムでは、写り込み防止(防眩性の確保)と白ぼけ防止を両立させることができなかった。
【0052】
また、比較例2の防眩性フィルムでは、ぎらつきを防止することができず、比較例4の防眩性フィルムでは、AR層を積層した場合に若干の色ムラが生じた。
【0053】
これに対し、実施例の防眩性フィルムは、全ての項目について良好な結果を得ることが可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、従来提案されている各種の防眩性フィルムの概略構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、従来提案されている防眩性フィルムの一部分の概略構成を模式的に示す拡大縦断面図である。
【図3】図3は、従来提案されている他の防眩性フィルムの一部分の概略構成を模式的に示す拡大縦断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る防眩性フィルムの概略構成を模式的に示す縦断面図である。
【図5】図5は、防眩性フィルムの白ぼけ評価方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・微粒子
3・・・基材
21・・・透光性樹脂
22・・・透光性樹脂
100・・・防眩性フィルム
101・・・第1樹脂層
102・・・第2樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を含有する透光性樹脂から形成された第1樹脂層と、
前記第1樹脂層上に積層され、前記第1樹脂層と反対側の表面が凹凸形状を有する透光性樹脂から形成された第2樹脂層とを備えることを特徴とする防眩性フィルム。
【請求項2】
ポリビニルアルコールフィルムと、
前記ポリビニルアルコールフィルムの一方の面に積層された請求項1に記載の防眩性フィルムと、
前記ポリビニルアルコールフィルムの他方の面に積層された保護フィルムとを備えることを特徴とする偏光フィルム。
【請求項3】
前記第1樹脂層及び/又は前記第2樹脂層を形成する透光性樹脂は、無溶剤樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
請求項1に記載の防眩性フィルム或いは請求項2又は3に記載の偏光フィルムが積層されていることを特徴とする光学フィルム。
【請求項5】
請求項1に記載の防眩性フィルム、請求項2又は3に記載の偏光フィルム或いは請求項4に記載の光学フィルムを備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−101912(P2007−101912A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291945(P2005−291945)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】