説明

防眩性反射防止フィルム及びそれを備える液晶ディスプレイ

【課題】ぎらつきを抑制し、黒濃度及び像鮮明度を高め、画像の視認性を向上させることができる液晶ディスプレイ用防眩性フィルム及びそれを備える液晶ディスプレイを提供する。
【解決手段】本発明の防眩性反射防止フィルムは、セルロース系材料よりなる透明基材上に、防眩性ハードコート層及び少なくとも低屈折率層を含む反射防止層をこの順で積層して構成され、前記防眩性ハードコート層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤及び透光性有機微粒子を含有する組成物の硬化物よりなり、前記活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤を含有するバインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差は0〜0.05であり、表面における算術平均粗さ(Ra)は0.01〜0.30μm及び凹凸の平均間隔(Sm)は10〜300μmである。さらに、全体ヘイズ値は10%以下であり、全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合は50%以上である。また、該低屈折率層は、分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物及び分子内に重合性二重結合をもつシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子とを含有する組成物の硬化皮膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に液晶ディスプレイの画像表示側の最表面に貼付して用いられる防眩性反射防止フィルム及びそれを備える液晶ディスプレイに関する。特に、耐擦傷性や耐摩耗性に優れ、高精細な画像を表示する液晶ディスプレイ上に設置したときにぎらつきを抑制し、黒濃度の低下及び像鮮明度の悪化を抑制した防眩性反射防止フィルム及びそれを備える液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用ゲーム機の発展やディスプレイの高精細化に伴い、液晶ディスプレイの表面強度の向上や表面反射光の低減により画像鮮明度を増加させようとする要求が高まってきている。
液晶ディスプレイ表面には、外部からの光を拡散させるために防眩性反射防止フィルムが配置されているのが一般的である。この防眩性反射防止フィルムは、最表層に極めて薄い反射防止層が設けられており、表面強度が弱いという問題がある。
この問題を解決しようとする試みとして、低屈折率層に含まれるフッ素含有共重合体のフッ素含有量を調節することで基材に対して優れた密着性を保持し、機械的強度を有する薄膜を形成する方法が挙げられている(例えば特許文献1を参照)。すなわち、係る反射防止材は、透明基材の上に、金属酸化物の透明導電性超微粒子が分散された導電性層、前記導電性層よりも屈折率の高い高屈折率層、並びに前記導電性層よりも屈折率の低い低屈折率層が積層された構造であり、前記低屈折率層としては、フッ素含有割合が60〜70%であるフッ素含有共重合体と、エチレン性不飽和基を有する重合性化合物とからなる樹脂組成物が望ましいことが開示されている。
また、液晶ディスプレイの防眩性反射防止フィルムにおいては、光が拡散して防眩作用を発現できるようにしているため、表面凹凸を大きくする必要がある。しかしながら、防眩性を高めるため凹凸が大きくなると、防眩層の曇価(ヘイズ値)が上昇し、これに伴い像鮮明度が低下するという問題があった。さらに、上記防眩性反射防止フィルムは、フィルム表面に、ぎらつき(シンチレーション)と呼ばれるきらきら光る輝きが発生し、表示画面の視認性が低下するという問題があった。
このような問題を解決しようとする試みとして、内部ヘイズに着目し、内部散乱効果に基づいてシンチレーションを抑制した防眩性フィルムが開示されている(例えば特許文献2を参照)。すなわち、係る防眩性フィルムは、透明支持体上に防眩層が設けられ、該防眩層のヘイズが4.0〜50%であって、そのヘイズが1.0〜40%の内部散乱と、3.0〜30%の表面散乱との合計により構成されることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−294904号公報(第11欄)
【特許文献2】特開2001−91707号公報(第2〜3欄、第8欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された反射防止材では、低屈折率層として、フッ素含有量を60〜70%に調節する必要があるため、低屈折率層の屈折率を大きく低下させることが困難となる問題があった。
また、特許文献2に記載された防眩性フィルムでは、防眩層表面の微細な凹凸についてその形状、間隔などが考慮されていないことから、防眩層表面における光の拡散を十分に制御することができなかった。このため、防眩性フィルムを液晶ディスプレイに使用した場合、防眩性フィルムの表面におけるぎらつきを十分に抑えることができず、要求される画像の視認性を得ることができなかった。さらに、防眩性フィルムのヘイズ値(トータルヘイズ又は全体ヘイズ)が具体的には15.0〜40.1%である(特許文献2の第8頁の表1に記載された実施例1〜4)。このため、防眩性フィルムは光透過性が悪く、その結果像鮮明度が劣り、画像の黒濃度が低下するという問題があった。特に、高精細な液晶ディスプレイの場合には画像の視認性が不足するという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的とするところは、耐擦傷性や耐摩耗性に優れ、ぎらつきを抑制することができると共に、黒濃度及び像鮮明度を高めることができ、画像の視認性を向上させることができる防眩性反射防止フィルム及びそれを備える液晶ディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の第1の発明の防眩性反射防止フィルムは、セルロース系材料よりなる透明基材上に、防眩性ハードコート層及び少なくとも低屈折率層を含む反射防止層がこの順で積層して構成されており、前記防眩性ハードコート層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤及び透光性有機微粒子を含有する組成物の硬化物よりなり、前記活性エネルギー線硬化型樹脂及び光重合開始剤を含有するバインダーの硬化物と透光性有機微粒子との屈折率差が0〜0.05に調整され、反射防止層の表面におけるJIS B 0601−1994に準拠して測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.30μm及び凹凸の平均間隔(Sm)が10〜300μmであると共に、全体ヘイズ値が10%以下で、かつ全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合が50%以上であり、さらに、前記低屈折率層は、分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物及び分子内に重合性二重結合をもつシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子とを含有する組成物(含フッ素硬化性塗液)の硬化皮膜であることを特徴とする。
【0006】
本発明の第2の発明の防眩性反射防止フィルムは、前記低屈折率層に、平均粒子径が10〜100nmである金属酸化物微粒子をさらに含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の第3の発明の防眩性反射防止フィルムは、前記低屈折率層が分子内に重合性二重結合をもつポリジオルガノシロキサン0.1〜20質量%をさらに含ませて硬化させたことを特徴とする。
【0008】
本発明の第4の発明の防眩性反射防止フィルムは、前記分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物が、下記式(I)で表される重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマーであることを特徴とする。
【化2】

【0009】
本発明の第5の発明の防眩性反射防止フィルムは、前記透光性有機微粒子は、(メタ)アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂又はそれらの架橋物であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第6の発明の防眩性反射防止フィルムは、前記防眩性ハードコート層の膜厚(A)に対する透光性有機微粒子の平均粒子径(a)の比a/Aが0.3〜1.5であることを特徴とする。
【0011】
本発明の第7の発明の液晶ディスプレイは、画像を表示する側の最表面に前記防眩性反射防止フィルムを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の発明の防眩性反射防止フィルムは、防眩性ハードコート層における活性エネルギー線硬化型樹脂及び光重合開始剤を含有するバインダーの硬化物と透光性有機微粒子との屈折率差が調整されるため、防眩性ハードコート層中における光の散乱を抑えて光の透過性を向上させることができ、像鮮明度及び画像の黒濃度の向上を図ることができる。また、反射防止層の表面における平均粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(Sm)が適切な範囲に設定されることにより、光の拡散が制御され、光の過剰な散乱が抑えられてぎらつきが抑制される。加えて、全体ヘイズ値が低く調整され、光の透過性が改善されて像鮮明度及び画像の黒濃度を良好なものにすることができる。しかも、全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合を規定して外部ヘイズ値を適度に調整することにより防眩性、ぎらつき及び像鮮明度とのバランスを向上させることができる。
従って、防眩性フィルムは、液晶ディスプレイに用いられたとき、ぎらつきを抑制することができると共に、黒濃度及び像鮮明度を高めることができ、画像の視認性を向上させることができる。さらに、低屈折率層の組成物に含まれるシランカップリング剤の(メタ)アクリロイルオキシ基と含フッ素化合物の重合性二重結合とが共重合することにより、中空シリカ微粒子が含フッ素化合物に一体的に結合し、含フッ素硬化性塗液から得られる硬化皮膜(=低屈折率層)の強度及び硬度を向上させ、皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させることができる。また、シランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子の含有量が従来より多いことから、形成される皮膜についてフッ素及び中空シリカ微粒子の中空部により低屈折率及び低反射率を発揮することができる。
【0013】
本発明の第2の発明の防眩性反射防止フィルムは、最表層に金属酸化物微粒子の突起が形成され、擦傷する素材や、磨耗する素材との接触面積を少なくすることができるため、耐スチールウール性や耐摩耗性が向上する。
【0014】
本発明の第3の発明の防眩性反射防止フィルムは、前記低屈折率層に、分子内に重合性二重結合をもつポリジオルガノシロキサンを含ませて硬化させたので、ポリジオルガノシロキサンは塗膜表面に配向され、表面のスリップ製を向上するため、耐スチールウール性や耐摩耗性が向上する。また、ポリジオルガノシロキサンは分子内に重合性二重結合をもつため、含フッ素化合物やシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子と結合し架橋するため、塗膜の強度を低下させることがないため、より効果的に耐スチールウール性や耐摩耗性が向上する。
【0015】
本発明の第4の発明の防眩性反射防止フィルムは、前記重合性二重結合をもつ含フッ素化合物が、前記式(I)で表される重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマーであり、含フッ素化合物が重合性不飽和基を2個以上有するため、皮膜に含まれる重合性二重結合と高度に架橋することができるため、得られる皮膜の強度及び硬度を向上させ、皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第5の発明の防眩性反射防止フィルムでは、樹脂の種類や組成によって透光性有機微粒子の屈折率を容易に調整することができる。
【0017】
本発明の第6の発明の防眩性反射防止フィルムでは、防眩性ハードコート層の膜厚(A)に対する透光性有機微粒子の平均粒子径(a)の比a/Aを規定したので、防眩性ハードコート層表面における凹凸を前記規定範囲となるように容易に設定することができる。
【0018】
本発明の第7の発明の液晶ディスプレイでは、画像を表示する側の最表面に前記の防眩性反射防止フィルムが備えられている。従って、液晶ディスプレイにおいて前記の効果を発揮することができ、特に高精細な液晶ディスプレイにおいてその効果を有効に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の形態と思われる実施形態について詳細に説明する。
本発明の防眩性反射防止フィルムは、セルロース系材料よりなる透明基材上に、防眩性ハードコート層、及び少なくとも低屈折率層を含んでなる反射防止層がこの順で積層して構成されている。
この防眩性反射防止フィルムは、液晶ディスプレイ、特に高精細な液晶ディスプレイの画像を表示する側の最表面に配置されて使用される。そして、バインダー(結合剤)と透光性微粒子を含有した防眩性ハードコート層におけるバインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差は0〜0.05に設定され、かつ可視領域における反射率が最低値となる最小反射率波長が450〜560nmの範囲に設定されている。なお、バインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差が0であるということは、バインダーの硬化物と透光性微粒子の屈折率が同じであることを意味する。
このように金属酸化物微粒子や分子内に重合性二重結合をもつポリジオルガノシロキサン0.1〜20質量%や重合性不飽和基を2個以上有する含フッ素多官能性モノマーを含むことで耐擦傷性や耐摩耗性に優れ、また、バインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差を小さくすることによって光の透過性を維持することができると同時に、最小反射率波長を制御することによって、黒色表示画像の際の黒のしまりに優れている。
【0020】
本発明の第1の発明の防眩性反射防止フィルムは、以下の要件〈ア〉〜〈カ〉を満足するものである。
〈ア〉セルロース系材料よりなる透明基材上に、防眩性ハードコート層及び少なくとも低屈折率層を含む反射防止層がこの順で積層して構成されている。
〈イ〉前記防眩性ハードコート層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤及び透光性有機微粒子を含有する組成物の硬化物よりなる。
〈ウ〉前記活性エネルギー線硬化型樹脂及び光重合開始剤を含有するバインダーの硬化物と透光性有機微粒子との屈折率差が0〜0.05に調整されている。
〈エ〉反射防止層の表面におけるJIS B 0601−1994に準拠して測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.30μm及び凹凸の平均間隔(Sm)が10〜300μmである。
〈オ〉全体ヘイズ値が10%以下で、かつ全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合が50%以上である。
〈カ〉前記低屈折率層は、分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物及び分子内に重合性二重結合をもつシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子とを含有する組成物(含フッ素硬化性塗液)の硬化皮膜である。
【0021】
次に、本発明の第1の発明の防眩性反射防止フィルムは、以下の各原材料を用いて構成されている。
〔一〕透明基材、〔二〕防眩性ハードコート層、〔三〕反射防止層、〔四〕低屈折率層
〔五〕活性エネルギー線硬化型樹脂、〔六〕光重合開始剤、〔七〕透光性有機微粒子
〔八〕分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物
〔九〕分子内に重合性二重結合をもつシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子
【0022】
〔一〕透明基材
透明基材を形成するセルロース系材料は、透明性が良いため光透過性に優れ、しかも光学異方性のない材料である。このため、液晶ディスプレイの表面に配置されて使用される防眩性フィルムの基材として最も好適なものである。係るセルロース系材料としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等の誘導体が使用できるが、特に光透過率が良い点からトリアセチルセルロースを使用することが最も好ましい。透明基材の厚さは通常10〜5000μm、好ましくは25〜1000μm、さらに好ましくは35〜500μmである。この厚さが10μmより薄い場合には、防眩性フィルムの取扱性が悪くなると共に、その強度も低下する傾向にある。一方、厚さが5000μmより厚い場合には、不必要に厚くなって防眩性フィルムの取扱性も悪くなり好ましくない。
【0023】
〔二〕防眩性ハードコート層
防眩性ハードコート層は、その表面に凹凸を有し、係る凹凸に光が反射して拡散され(表面拡散性)、防眩性を発現することができる機能を備えている。この防眩性ハードコート層は、活性エネルギー線硬化型樹脂及び光重合開始剤を含むバインダーに透光性有機微粒子を含有させた防眩性ハードコート層形成用組成物を硬化させることにより形成され、ハードコート層として所要の強度及び硬度を有している。ここで、バインダー又は防眩性ハードコート層形成用組成物中には、通常希釈溶剤が配合され、バインダー又は防眩性ハードコート層形成用組成物の粘度が調整される。
【0024】
〔五〕活性エネルギー線硬化型樹脂
活性エネルギー線硬化型樹脂は、その構成成分として重合性成分が必須であり、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。そのような重合性成分としては、単官能単量体、多官能単量体、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー及びビニル基や(メタ)アクリロイル基を有する重合体の中から1種又は2種以上が選択して用いられる。その他の成分としては、光分解型又は熱分解型の重合開始剤、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を含まないオリゴマー(以下、非重合性オリゴマーという)、ビニル基や(メタ)アクリロイル基を含まない重合体(以下、非重合性重合体という)、金属酸化物、界面活性剤、希釈溶剤、光増感剤、安定化剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、表面調整剤、粒子分散剤等が用いられる。
【0025】
前記単官能単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ペンタメチルピペリジル、(メタ)アクリル酸ヘキサヒドロフタル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルフタル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、フマル酸ジt−ブチル、フマル酸ジn−ブチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸ジエチル、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等が好ましい。
【0026】
前記多官能単量体としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、ウレタン変性(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2'−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
ウレタン変性(メタ)アクリレートは、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体とのウレタン化反応によって得ることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。
それらの中で、硬化物(被膜)の強度向上や入手の容易性の点から、ジ(メタ)アクリル酸ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヘキサメチレンジイソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとの付加体、イソホロンジイソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとの付加体、トリレンジイソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとの付加体、アダクト変性イソホロンジイソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとの付加体及びビウレット変性イソホロンジイソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとの付加体が好ましい。さらに、活性エネルギー線硬化型樹脂としては、厚膜化したとき可撓性が良い点からウレタンアクリレート樹脂を使用することが好ましい。
【0027】
〔七〕透光性有機微粒子
透光性有機微粒子は、〔二〕防眩性ハードコート層における光拡散機能、表面の凹凸形成による防眩機能等を発現するためのものである。この透光性有機微粒子は、例えば塩化ビニル、(メタ)アクリル単量体、スチレン及びエチレンから選択される少なくとも1種の単量体を重合した樹脂から形成される。
そのような透光性樹脂微粒子としては、前記本発明の第5の発明のように、屈折率の調整が容易な点から(メタ)アクリル樹脂、スチレン−アクリル単量体共重合樹脂(以下単にスチレン−アクリル共重合樹脂という)又はそれらの架橋物であることが好ましい。スチレン−アクリル共重合樹脂の場合には、両単量体の共重合組成を変化させることにより、屈折率を任意に調整することができる点で、より好ましい。さらに、スチレン−アクリル共重合樹脂又は(メタ)アクリル樹脂(屈折率1.49)のほか、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂(屈折率1.54)、ポリエチレン樹脂、メラミン樹脂(屈折率1.57)、ポリカーボネート樹脂等を含む樹脂より透光性有機微粒子を形成することも可能である。
【0028】
また、〔七〕透光性有機微粒子は、〔二〕防眩性ハードコート層中及びその表面における光の拡散又は散乱を均一に行うために、粒子径の揃った単分散なものであることが好ましい。透光性有機微粒子の平均粒子径は、その機能を十分に発揮させるために、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜10μmである。この平均粒子径が0.1μm未満の場合、防眩性ハードコート層表面における防眩性が不十分となる傾向がある。その一方、20μmを超える場合、防眩性ハードコート層のヘイズ値が高くなり過ぎ、透明性が損なわれる傾向にある。ここで、前記平均粒子径はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算し、得られた粒子数分布から算出される値である。なお、コールターカウンター法は、電気抵抗を利用した粒子径測定法であり、粒子が細孔を通過する際に生じる2電極間の電気抵抗の変化を測定して平均粒子径を測定する方法である。
【0029】
前記本発明の第6の発明のように、〔二〕防眩性ハードコート層の膜厚(A)に対する〔七〕透光性有機微粒子の平均粒子径(a)の比a/Aは0.3〜1.5であることが好ましく、0.5〜1.5がより好ましい。この比a/Aが0.3未満であるときには、防眩性ハードコート層表面に所望の凹凸を形成するために添加する透光性有機微粒子の量が増加し、ヘイズ値が上昇するために像鮮明度が低下する傾向にある。その一方、1.5を超えるときには、防眩性ハードコート層表面の凹凸が大きくなり過ぎるために、ヘイズ値が大きくなって像鮮明度が悪化し、ぎらつきも強くなって好ましくない。
透光性有機微粒子の含有量は、〔五〕活性エネルギー線硬化型樹脂100質量部に対して通常1〜70質量部、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは3〜50質量部、最も好ましくは10〜40質量部である。透光性有機微粒子の含有量が1質量部より少ない場合には、透光性有機微粒子の機能を十分に発揮することができず、満足できる防眩性が得られなくなる。その一方、70質量部より多い場合には、防眩性ハードコート層のヘイズ値が高くなり過ぎ、防眩性フィルムを液晶ディスプレイ表面に設置した際、白化等が生じて画像認識性が低下する。
【0030】
〔六〕光重合開始剤
光重合開始剤は、〔五〕活性エネルギー線硬化型樹脂に紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合を開始させるためのもので、公知の化合物が用いられる。係る光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−アミロキシムエステル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、α−アミロキシムエステル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、テトラメチルチュウラムモノサルファイド等が挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。この含有量が0.01質量部未満の場合には、防眩性ハードコート層形成用組成物から得られる硬化物(被膜)が完全には硬化し難く、硬化が不十分となるため好ましくない。一方、20質量部を超える場合には、硬化は十分であるが、それ以上の効果は望めず、不必要に多い量であって無駄になる。
【0031】
〔希釈溶剤〕
前記バインダー又は防眩性ハードコート層形成用組成物の調製に用いられる希釈溶剤は、バインダー又は防眩性ハードコート層形成用組成物の粘度を調整するために用いられ、非重合性のものであれば特に制限されない。係る希釈溶剤により、主に防眩性ハードコート層形成用組成物を〔一〕透明基材上に容易に塗布することができる。
希釈溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブタノール等が挙げられる。
【0032】
〔非膨潤性溶剤〕
さらに、防眩性ハードコート層の表面を欠陥がなく均一な塗布面とするために、〔七〕透光性有機微粒子の非膨潤性溶剤を使用することが好ましい。非膨潤性溶剤とは、透光性有機微粒子を膨潤させない溶剤のことを意味する。この非膨潤性溶剤としてはアルコール系溶剤が好ましく、その添加量は全溶剤量中10〜60質量%であることが好ましい。この添加量が10質量%未満である場合、均一な防眩性ハードコート層を形成することが困難な状況となる。一方、60質量%を超える場合、透光性有機微粒子の分散性が悪化し、均一な〔二〕防眩性ハードコート層を形成することが困難となる。
以上の防眩性ハードコート層形成用組成物を〔一〕透明基材上に塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、透明支持体上に防眩性ハードコート層を積層することができる。
【0033】
〔三〕反射防止層
反射防止層は、少なくとも〔四〕低屈折率層を含んで構成され、反射防止の効果をさらに高めるために、前記低屈折率層と〔二〕防眩性ハードコート層の間に、低屈折率層の屈折率及び防眩性ハードコート層の屈折率よりも高い屈折率となる高屈折率層を設けることができる。高屈折率層は、屈折率が1.50以上であることが好ましく、その膜の厚さは、50〜500nmであることが好ましい。高屈折率層に含まれる無機材料は、例えば酸化亜鉛微粒子、酸化ジルコニウム微粒子、酸化インジウム−スズ微粒子(ITO微粒子)、酸化アンチモン微粒子(ATO微粒子)などが挙げられる。
【0034】
前記〈カ〉の要件である〔四〕低屈折率層は、〔八〕分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物及び〔九〕分子内に重合性二重結合をもつシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子とを含有する組成物(=含フッ素硬化性塗液)の硬化皮膜である。より詳しくは、電子線等の高エネルギー線により含フッ素硬化性塗液を重合硬化したり、熱分解型重合開始剤や光重合開始剤の存在下に含フッ素硬化性塗液を重合硬化したりすることにより低屈折率層が得られる。
フッ素原子(本発明では単にフッ素ともいう)は分極率が非常に小さいため、フッ素含有モノマーは分子の凝集力が小さくなって成膜後に低表面エネルギー性を得ることができる反面、成膜性に乏しいという性質を有している。ここで成膜性とは、合成樹脂フィルム等の基材上にフッ素含有モノマーを塗布したとき、はじかれずに含フッ素硬化皮膜(以下、単に皮膜ともいう)が形成される性質を表し、具体的には溶媒で希釈した溶液を基材に塗布し、加熱して溶媒を除去した段階で一定の厚みをもって均一な皮膜を形成できるものが成膜性良好と判断される。例えばトリフルオロメチル基が配向したときの臨界表面張力は6dyn/cmであるのに対してテトラフルオロエチレン基では18dyn/cmとなるように、フッ化メチレン基又はフッ化メチン基の形でフッ素を導入することにより成膜性は改善される。また、分子の凝集力を増大させるという観点からは、高分子化するという手法も有効である。従って、前記成膜性を有し、〔八〕分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物としては、〔八の1〕フッ素原子がフッ化メチレン基又はフッ化メチン基として分子中に導入された構造を有する含フッ素モノマーや、〔八の2〕溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマー等が挙げられる。
【0035】
前記〔八の1〕フッ素原子がフッ化メチレン基又はフッ化メチン基として分子中に導入された構造を有する含フッ素モノマーは、フッ素原子のほぼ全量がフッ化メチレン基又はフッ化メチン基として分子中に導入されたモノマーである限り、公知の全てのモノマーが使用可能である。すなわち、重合性二重結合が1個(単官能)のモノマー又は2個以上(多官能)のモノマーのいずれであってもよく、それらの混合物であってもよい。これらの含フッ素化合物は、含フッ素硬化性塗液を硬化させて得られる皮膜の強度及び硬度を高めることができ、皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させることができる。前記含フッ素化合物の中では、架橋構造を形成でき、硬化した皮膜の強度や硬度が高い点から、含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0036】
前記本発明の第4の発明のように、前記〔八〕分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物が、下記式(I)で表される重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマーであることが好ましい。
【化3】

この含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2−ジフルオロプロパン、1,4−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン、1,6−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプタン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロドデカン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,7−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、2,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,7,8−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5−テトラフルオロデカン、1,2,8,9−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,9,10−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,10,11−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,11,12−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン、1,10−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−1,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,9,10−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,11,12−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等が挙げられる。使用に際しては、これらは単独又は混合物として用いられる。
含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、公知の方法により製造される。例えば相当する含フッ素エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との開環反応や、相当する含フッ素多価アルコール又は前記開環反応で中間体として得られる水酸基(ヒドロキシル基)を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸クロライドとのエステル化反応により製造される。
【0037】
また、前記〔八の2〕溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーとしては、含フッ素エチレン性モノマーに由来する主鎖を有し、架橋硬化のための反応性基をもつものである。溶媒可溶性の溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール、2−ブタノール等のアルコール系溶媒等が好ましい。反応性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基等が挙げられる。このような溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは高分子量であるため、フッ素を含有しながらも成膜性が良好で、成膜後に反応性基を利用して架橋硬化することで溶媒不溶な硬化層を得ることができる。
係る溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは、重合性二重結合をもつ基の含有率が通常1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%であり、また質量(重量)平均分子量が通常1〜500,000、好ましくは3〜200,000である。具体的な含フッ素反応性ポリマーとしては、再公表特許WO02/018457号公報に開示されているものが挙げられる。
【0038】
前記〔九〕分子内に重合性二重結合をもつシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子は、例えば下記式(II)で示されるシランカップリング剤などによって変性されている。なお、本発明ではアクリルとメタクリルとの双方を(メタ)アクリルと称する。
ZR1(OR23 ・・・(II)
(式中、Zは(メタ)アクリロイルオキシ基であり、R1は炭素数1〜4のアルキレン基であり、R2は水素原子、メチル基又はエチル基である。)
前記式(II)で示されるシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子は、その中に空気を含んでいることから、含フッ素硬化性塗液の硬化により形成される皮膜について低屈折率化及び低反射率化を図ることができるとともに、シリカ微粒子という無機微粒子により皮膜の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させることができる。
前記シランカップリング剤としては、例えばγ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が用いられる。
【0039】
変性以前の中空シリカ微粒子は、シリカ(二酸化珪素SiO2)がほぼ球状に形成され、その外殻内に中空部(球状空洞)を有する微粒子であり、その平均粒子径は10〜100nm程度である。この中空シリカ微粒子の外殻の厚さは、1〜50nm程度であり、中空シリカ微粒子に占める中空部の割合は10〜60%である。また、中空シリカ微粒子の屈折率は、1.1〜1.4という低い屈折率である。
【0040】
前記シランカップリング剤による中空シリカ微粒子の変性は、以下のようにして行われる。まず、例えば有機溶媒中に分散された中空シリカ微粒子に対して前記のシランカップリング剤を加えて混合し、この混合物に蒸留水を加えて通常の加水分解反応及び縮合反応を行なう。その際、中空シリカ微粒子の固形分としては1〜70質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。この場合、前記シランカップリング剤を加える順序は特に限定されない。混合する蒸留水の配合量は、シランカップリング剤に対して質量で3〜5倍であることが望ましい。加水分解反応及び縮合反応させるための操作は、撹拌しながら常圧下で3〜7時間にわたり、有機溶媒の還流を行なうことにより行なわれる。
上述の中空シリカ微粒子の変性時に用いられる有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶媒は単独又は2種類以上混合して使用することができる。得られた変性中空シリカ微粒子は遠心分離等によって単離することも可能ではあるが、有機溶媒が存在する状態のまま、後の工程に供することもできる。
【0041】
このように変性して得られた中空シリカ微粒子(〔九〕変性中空シリカ微粒子という)の含有量は、前記〔八〕含フッ素化合物との合計量中に20〜60質量%であり、40〜60質量%であることが望ましい。この含有量が20質量%未満の場合には、変性中空シリカ微粒子の含有量が少なく、得られる皮膜の低屈折率化及び低反射率化を十分に図ることができなくなるとともに、耐擦傷性及び耐摩耗性が低下する。一方、60質量%を越える場合には、過剰の変性中空シリカ微粒子が含フッ素化合物と反応できず、その重合体が残存し、かえって含フッ素硬化皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が低下する傾向を示す。前記変性中空シリカ微粒子のシランカップリング剤に含まれる(メタ)アクリロイルオキシ基と含フッ素化合物の重合性二重結合とが共重合して結合される結果、変性中空シリカ微粒子の機能と含フッ素化合物の機能とが相乗的に、かつ持続して発現される。
【0042】
前記〔九〕変性中空シリカ微粒子についてさらに説明すると、平均粒子径5〜100nm、比表面積50〜1000m2/gである中空シリカ微粒子の表面を前記シランカップリング剤によって表面処理して製造される。具体的には、中空シリカ微粒子表面のシラノール基と前記シランカップリング剤との加水分解反応により、中空シリカ微粒子表面にオルガノシリル基(モノオルガノシリル、ジオルガノシリル又はトリオルガノシリル基)が結合するとともに、その表面に多数の珪素原子に直接結合した有機基を有する。
変性中空シリカ微粒子は、前記シランカップリング剤によって変性されているため、従来のシリカ微粒子又は中空シリカ微粒子にはない優れた効果を発揮することができる。この優れた効果は、主として変性中空シリカ微粒子が前記〔八〕含フッ素化合物との相溶性に優れていることに基づいている。このため、変性中空シリカ微粒子を含フッ素化合物と混合した場合、変性中空シリカ微粒子の凝集を抑制することができ、白化がなく、透明性に優れた皮膜を得ることができる。さらに皮膜中では、シランカップリング剤と含フッ素化合物の重合性二重結合基が化学結合して強固な膜となるため、皮膜の耐擦傷性及び耐摩耗性を飛躍的に向上させることができる。また、変性中空シリカ微粒子は、その内部に中空部(球状空洞)を含んでいるため、含フッ素化合物と組み合わせた塗液を硬化した皮膜は、従来の皮膜よりも低屈折率及び低反射率となる。
【0043】
この〔九〕変性中空シリカ微粒子の原料となる中空シリカ微粒子は、前述のようにシリカ(二酸化珪素SiO2)がほぼ球状に形成され、その外殻内に中空部(球状空洞)を有する微粒子であって、具体的には以下の第1から第4工程を経て製造することができる。
すなわち、第1工程では、珪酸塩の水溶液又は酸性珪酸液と、アルカリ可溶の無機化合物水溶液とを、pH10以上のアルカリ水溶液又は必要に応じて種粒子が分散されたpH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加し、シリカとシリカ以外の無機化合物のモル比が0.3〜1.0の範囲にある核粒子分散液を調製する。
次いで、第2工程では、前記核粒子分散液にシリカ源を添加して、核粒子表面に第1シリカ被覆層を形成させる。
次に、第3工程では、前記第1シリカ被覆層を形成させた分散液に酸を加え、核粒子を構成する元素の一部又は全部を除去する。
最後に、第4工程では、第3工程で得られた中空シリカ微粒子の分散液に、アルカリ水溶液と、有機珪素化合物又はその部分加水分解物を添加し、中空シリカ微粒子に第2シリカ被覆層を形成する。
さらに、前記第4工程で得られた中空シリカ微粒子分散液を200℃で少なくとも5時間水熱処理する第5工程を加えることが好ましい。この水熱処理により外殻が緻密化された中空シリカ微粒子を得ることができる。外殻が緻密化されることにより、水分が吸着しにくくなり、中空シリカ微粒子の耐水性を向上させることができ、その結果、中空シリカ微粒子を変性して得られる変性中空シリカ微粒子と〔八〕含フッ素化合物とを組み合わせた含フッ素硬化性塗液を硬化して得られる皮膜の耐水性を向上させることができる。このような第5工程における水熱処理の温度の上限は、280℃であることが好ましい。280℃を越えても中空シリカ微粒子の外殻がそれ以上さらに緻密化することもなく、かえって中空シリカ微粒子が凝集することがある。また、水熱処理の時間は水熱処理温度によっても異なるが、5時間以上20時間以下が好ましく、10時間以上20時間以下がさらに好ましい。水熱処理の時間が5時間未満の場合には、外殻を十分に緻密化できないため好ましくない。その一方、20時間を越える場合には、中空シリカ微粒子の外殻がそれ以上さらに緻密化することもなく、中空シリカ微粒子の生産性が低下するため、工業上好ましくない。
【0044】
〔九〕変性中空シリカ微粒子の製造方法においては、シリカ濃度が1〜70質量%のオルガノゾルを調製し、30〜300℃の範囲で、前記シランカップリング剤とアルカリ触媒を加え、シリカ配合量に対して水分量が0.1〜50質量%の条件で中空シリカ微粒子に前記シランカップリング剤を反応させる。オルガノゾルの製造方法は、水を分散媒として調製された中空シリカ微粒子からなるシリカゾルを、溶媒置換して、オルガノゾルとする。溶媒置換する際の溶媒の種類としては、有機溶媒が用いられる。有機溶媒の種類については、前記シランカップリング剤による中空シリカ微粒子の表面被覆に悪影響を与えるものでない限り格別に限定されるものではない。このような有機溶媒の例としては、アルコール類、グリコール類、エステル類、ケトン類、窒素化合物類、芳香族類などの溶媒を使用することができる。通常は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールが選ばれる。
【0045】
前記シランカップリング剤の添加量は、中空シリカ微粒子100質量部に対して、通常1〜50質量部であり、3〜25質量部が好適である。この添加量が1質量部未満では未処理の中空シリカ微粒子の割合が高くなり、50質量部を越えるとシランカップリング剤が過剰となり、経済的ではない。
前記アルカリ触媒の種類は特に限定されず、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン化合物などが好適に使用される。これらアルカリは水溶液の形で添加しても良い。アルカリ触媒の添加量は、特に制限されずアルカリ触媒の種類にもよるが、中空シリカ微粒子が分散されているオルガノゾルに対して望ましくは20〜2000ppmである。この添加量が20ppm未満の場合には、中空シリカ微粒子表面でのシラン化合物の反応が十分に進行しない場合がある。他方、2000ppmを越える場合には、余剰のアルカリにより、中空シリカ微粒子をバインダーに分散させた際の分散性が低下する場合があり、またアルカリ触媒が組成物中に残存することによる弊害が発生する。
反応液中の水分量は、シリカ配合量に対して好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。水分量が10〜50質量%の範囲にあれば、中空シリカ微粒子表面とシランカップリング剤が反応して効果的に表面処理が行なわれる。水分量が10質量%未満では表面処理効率が低く、安定した表面処理が行なわれず、50質量%を越えるとシランカップリング剤同士が反応する傾向が強まり、結果的に中空シリカ微粒子の表面処理が不十分になる。
中空シリカ微粒子にシランカップリング剤を反応させるときの反応温度については、30℃未満では、反応速度が遅く、実用的ではない。他方、オルガノゾルの溶媒の沸点を越える場合には、溶媒の蒸発により、水分割合の増加などを招く場合があって好ましくないが、圧力容器を使用して反応を行う場合には300℃までの温度で反応させることができる。この反応温度は、40℃から溶媒の沸点未満の温度範囲が好適である。
また、中空シリカ微粒子にシランカップリング剤を反応させるときの反応時間については、0.1時間未満では、十分に反応が進行しない場合があり、実用的ではない。他方、100時間を越えて反応させても、収率等に向上は見られず、それ以上の反応の継続は必要がない。この反応時間は、好適には3〜30時間である。表面処理された中空シリカ微粒子は必要に応じてさらに前記と同様な方法を用いて有機溶媒置換を行っても良い。
【0046】
また、〔九〕変性中空シリカ微粒子の平均粒子径は、5〜100nmが好適である。平均粒子径がこの範囲にある変性中空シリカ微粒子は、含フッ素硬化性塗液の硬化後に透明な皮膜を得ることができる。平均粒子径が5nm未満の変性中空シリカ微粒子は製造が難しい。他方、100nmを越える場合には、光の散乱が大きくなり、薄膜においては反射が大きくなり、反射防止機能を発揮できなくなる。変性中空シリカ微粒子のより好ましい平均粒子径範囲は、30〜80nmである。
変性中空シリカ微粒子の比表面積は、溶媒中又は造膜中の変性中空シリカ微粒子の分散性及び安定性を得るうえで50〜1000m2/gの範囲が好ましい。比表面積が50m2/g未満の場合には、低屈折率の変性中空シリカ微粒子を得ることが難しくなる。他方、1000m2/gを越える場合には、変性中空シリカ微粒子の分散安定性が低下して望ましくない。変性中空シリカ微粒子のより好ましい比表面積の範囲は、50〜200m2/gである。
変性中空シリカ微粒子において、変性処理により中空シリカ微粒子に結合した前記シランカップリング剤の量は、熱質量測定法(TG)により簡便に知ることができる。この熱質量測定法(Thermogravimetry Analysis)とは、試料の雰囲気温度の上昇(又は下降)による試料の質量変化を温度に対して測定するものであり、温度変化に対する質量変化曲線はTG曲線と呼ばれている。
変性中空シリカ微粒子については、200〜500℃の温度範囲での熱質量測定において、2質量%以上の質量減少を示すことが好ましい。熱質量減少が2質量%未満の変性中空シリカ微粒子を配合してなる含フッ素硬化皮膜では、白化が発生するとともに、耐擦傷性及び耐摩耗性ともに不十分になる。熱質量減少については、温度範囲200〜500℃において3質量%以上の熱質量減少を示すものがさらに好ましい。但し、熱質量減少が10質量%を越えると、粒子間の反応が起こりやすくなるため、変性中空シリカ微粒子のゾルとしての安定性、及び含フッ素硬化性塗液としての安定性が低下して好ましくない。
【0047】
なお、含フッ素硬化皮膜の耐水性は、その皮膜の反射率で評価することができる。耐水性のない皮膜は、皮膜上に水滴を30分間放置しておくと、水分が吸着し、屈折率が上昇するため、結果として皮膜表面における光の反射率が上昇する。5時間以上の水熱処理を施した中空シリカ微粒子を用いて得られた含フッ素硬化皮膜では、皮膜上に水滴を30分間放置しても、放置前後での皮膜表面における光の反射率変化を、0.3%以下に抑えることができる。
【0048】
含フッ素硬化性塗液には、さらに成膜性を有しない下記式(III)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
【化4】

上記の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、自身が成膜性を発揮しないものの、前記成膜性を有する〔八〕含フッ素化合物に親和性を示し、その成膜性を低下させることがない。そのため、含フッ素硬化性塗液は優れた成膜性を発揮することができる。また、成膜性を有しない式(III)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、高い防汚性を発現することができる成分である。さらに、含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは重合性二重結合をもつため、前記含フッ素化合物と共重合反応を行ない、それらの機能を導入した含フッ素硬化皮膜(低屈折率層)となる。
係る含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、その分子末端にトリフルオロメチル基(CF3−)をもつ炭素数10のフルオロアルキル基(Rf)を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に配向される。特に含フッ素硬化皮膜中であってもトリフルオロメチル基が表面に十分に配向される。従って、得られる含フッ素硬化皮膜は、防汚性、低屈折率性等の特性を発揮することができる。
これに対し、炭素数9以下のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、末端のトリフルオロメチル基が表面に十分に配向されず、その効果が得られない。炭素数11以上のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、製造や入手が困難である。つまり、炭素数10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルのみが他の鎖長のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと比較しても特異的な機能を発揮できるのである。
前記式(III)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして具体的には、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。これらの含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは単独で、或いは混合物として用いることができる。
前記式(III)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、前記含フッ素化合物と変性中空シリカ微粒子との合計量100質量部に対して0.5〜30質量部であることが好ましい。この含有量が0.5質量部未満の場合には含フッ素硬化皮膜表面の防汚性が低下し、30質量部を越える場合には透明均一で良好な含フッ素硬化皮膜を得ることが困難となる傾向にある。
【0049】
前記本発明の第2の発明のように、前記〔四〕低屈折率層には、平均粒子径が10〜100nmである金属酸化物微粒子をさらに含むことが望ましい。
前記金属酸化物微粒子としては、例えばフッ化ランタン、フッ化マグネシウム、フッ化セリウム、中空酸化珪素微粒子、コロイダル酸化珪素微粒子、そして酸化アルミニウムが用いられる。特に酸化アルミニウムは、耐摩耗性及び耐擦傷性の向上の点で好ましい。 これら微粒子の平均粒子径は、低屈折率層の厚さを大きく越えないことが好ましく、通常0.1μm以下、特に好ましくは10〜100nmである。平均粒子径が0.1μmを越えると光の散乱が生じる等、低屈折率層の光学性能が不本意な方向へ変化するため好ましくない。また、微粒子の屈折率や層中での含有率などに起因する透明性への影響も重要であり、透明性を低下させるような屈折率、含有率は好ましくない。
この金属酸化物微粒子の配合量は、低屈折率層形成用組成物中、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0050】
前記本発明の第3の発明のように、前記〔四〕低屈折率層には、分子内に重合性二重結合をもつポリジオルガノシロキサン0.1〜20質量%をさらに含ませて硬化させたものであることが望ましい。
前記分子内に重合性二重結合をもつポリジオルガノシロキサンは、重合性反応基を1分子中に好ましくは少なくとも3つ以上、より好ましくは4〜20有する化合物であり、一般式(IV)で表される。
【化5】

前記一般式(IV)中のA及びBは、直鎖状または分岐状の有機基であり、アルキル鎖(炭素数1〜30)、パーフルオロアルキル鎖(炭素数1〜10)、アリールアルキル鎖、脂肪族乃至芳香族(ポリ)エステル鎖(該有機鎖の部分的な分子量100〜3000)、脂肪族乃至芳香族(ポリ)エーテル鎖(該有機鎖の部分的な分子量100〜3000)または脂肪族乃至芳香族(ポリ)ウレタン鎖(該有機鎖の部分的な分子量100〜3000)からなる群より選出される少なくとも1種の骨格を有しており、該有機基中には重合性反応基が導入されていてもよく、分子内においてAとBは同一でも異なっていてもよく、A同士またはB同士においても同一でも異なっていてもよい。更に、重合性反応基は、合成の簡便さからB(両末端)に導入されている方がより好ましい。
また、一般式(IV)中のcは、ポリシロキサン骨格の長さをc+1の形で表すものであり、3〜250、好ましくは6〜100の整数である。
【0051】
導入する重合性反応基としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基などが挙げられ、特に(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。重合性反応基とポリシロキサン骨格との間の結合方式としては、従来公知の結合方式、例えば(ポリ)エーテル型、(ポリ)エステル型、(ポリ)ウレタン型、(ポリ)エステル型と(ポリ)ウレタン型とを組み合わせた結合方式、(ポリ)エーテル型と(ポリ)ウレタン型とを組み合わせた結合方式、(ポリ)エステル型と(ポリ)エーテル型とを組み合わせた結合方式等の全てが利用可能である。
【0052】
例えばポリエステル型とポリウレタン型とを組み合わせた結合方式の場合、ポリジオルガノシロキサン分子の構造は、下記の一般式(V)に示されているような基本骨格を有し、ポリシロキサン部位からのびる側鎖のうち、3つ以上の側鎖の末端には、重合性反応基が結合している。
【化6】

前記一般式(V)中のXは、3〜250の整数、好ましくは6〜100の整数であり、Y及びZはY+Zが3以上、好ましくはY+Zが4〜20であることを満たすような整数であり、m及びnはいずれも1〜10の整数であり、mとnが同じでも異なっていてもよいが、同じである場合の方が簡便に調製できる点で好ましい。
また、一般式(V)中のR1は、直鎖状アルキル基(炭素数1〜30)、パーフルオロアルキル基(炭素数1〜10)、アリールアルキル基、ポリエステル基(該側鎖の部分的な分子量200〜2000であり、Si原子にはアルキル鎖を介して結合している)、ポリエーテル基(該側鎖の部分的な分子量200〜2000であり、Si原子にアルキル鎖を介して結合している)、ポリウレタン基(該側鎖の部分的な分子量200〜2000であり、Si原子にアルキル鎖を介して結合している)のいずれかであり、分子内においてR1は同一でも異なっていてもよいが、調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。また、使用における樹脂との相溶性などの観点から、R1はメチル基である場合が最も汎用的で好ましい。
一般式(V)中のR2は、炭素数3〜30、好ましくは3〜15の直鎖または分岐鎖であり、該鎖上にはウレタン結合を少なくとも2つ以上有し、該ウレタン結合を介してポリシロキサン骨格及びR3と結合しており(ただし、R3はポリジオルガノシロキサン1分子中に3つ以上含まれるように結合している)、分子内においてR2は同一でも異なっていてもよいが、調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。
一般式(V)中のR3は、ポリエステル骨格、好ましくは3つ以上のエステル結合を含むポリエステル骨格を有する部位であり、末端には前述のような重合性反応基、好ましくは(メタ)アクリロイル基が結合しており、分子内においてR3は同一でも異なっていてもよいが、調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。また、使用における樹脂との相溶性などの観点から、R3は3以上のカプロラクトンからなるポリカプロラクトン骨格を有する場合が最も汎用的で好ましい。
一般式(V)中のR4は、水素、フッ素、メチル基のいずれかであり、分子内においてR4は同一でも異なっていてもよいが、調製が簡便であることから同一である方がより好ましい。
【0053】
次に、前記のようなポリエステル型とポリウレタン型とを組み合わせた結合方式を用いた場合の、より具体的な例を、その製造方法の一例と共にいくつか記載する。ただし、下記の製造方法例は、本発明の効果が得られるポリジオルガノシロキサンが下記の例に限定されることを意味するものではない。
例えば従来公知の方法により得られる一般式(VI)で表されるポリジメチルシロキサン、一般式(VII)で表されるトリイソシアネート、及びエチレングリコールモノメタクリレートを用いたε−カプロラクトンの開環重合により調製される重合性反応基含有ポリエステル(VIII)を1:2:4のモル比で用いて、従来公知のウレタン結合形成反応により、一般式(IX)で表されるポリジメチルシロキサン化合物が得られる。
この時、トリイソシアネート(VII)中へポリジメチルシロキサン(VI)を加えていき、ポリジメチルシロキサン(VI)の両末端にウレタン結合を形成させた後に、重合性反応基含有ポリエステル(VII)とのウレタン結合形成を行なうことで、副生成物(例えばポリジメチルシロキサン(VI)とトリイソシアネート(VII)のみからなる副生成物や、重合性反応基含有ポリエステル(VIII)とトリイソシアネート(VII)のみからなる副生成物など)の生成を抑えて高収率で目的のポリジメチルシロキサン化合物(IX)を得ることができる。
ここで、一般式(VI)及び一般式(IX)中のdは15〜20の整数であり、eは1〜5の整数であり、一般式(VII)及び一般式(IX)中のfは4〜8の整数であり、一般式(VIII)及び一般式(IX)中のgは3〜5の整数である。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【0054】
この他にも、例えば従来公知の方法により得られた一般式(X)で表されるポリジメチルシロキサン、一般式(XI)で表されるジイソシアネート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートを用いたε−カプロラクトンの開環重合により調製される重合性反応基含有ポリエステル(XII)を1:2:2のモル比で用いて、従来公知のウレタン結合形成反応により、一般式(XIII)で表されるポリジメチルシロキサン化合物が得られる。この時、ジイソシアネート(XI)中へポリジメチルシロキサン(X)を加えていき、ポリジメチルシロキサン(X)の両末端にウレタン結合を形成させた後に、重合性反応基含有ポリエステル(XII)とのウレタン結合形成を行なうことで、副生成物(例えばポリジメチルシロキサン(X)とジイソシアネート(XI)のみからなる副生成物や、重合性反応基含有ポリエステル(XII)とジイソシアネート(XI)のみからなる副生成物など)の生成を抑えて高収率で目的のポリジメチルシロキサン化合物(XIII)を得ることができる。
ここで、一般式(X)及び一般式(XIII)中のhは25〜35の整数であり、iは1〜5の整数であり、一般式(XI)及び一般式(XIII)中のjは5〜10の整数であり、一般式(XIII)及び一般式(XIII)中のkは3〜5の整数である。
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【0055】
更に、例えば上記の2例を組み合わせて一般式(X)で表されるポリジメチルシロキサン、トリイソシアネート(VII)、重合性反応基含有ポリエステル(XII)から、12のアクリロイロキシ基を有するポリジメチルシロキサンを得ることも出来る。
また、この他にも、重合性反応基を有するポリエステル部分とポリウレタン部分を結合させた後にシロキサン骨格へ導入する方法や、重合性反応基の導入を最後に行なう方法などにより合成することも可能である。
【0056】
通常、前記一般式(IV)で表される分子内に重合性二重結合をもつポリジオルガノシロキサンは、単独ないし2種以上組み合わせて使用することができる。
また、重合性反応基を1分子中に1〜2つ有するオルガノポリシロキサン、例えば片末端メタクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロアルキル基及び片末端にメタアクリロキシ基を有するポリシロキサンや両末端メタクリロキシ変性ポリジメチルシロキサンと、本発明の特定の構造を有するポリジオルガノシロキサンとを組み合わせて使用することもできる。
【0057】
また、前記含フッ素硬化性塗液中には、塗液の粘度調整や塗布後の表面レベリングのために、反応を阻害しない限り、希釈溶媒を含有させても良い。該希釈溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。さらに、含フッ素硬化性塗液中には、フッ素含有量を調整する等の目的で、フッ素を含有しない多官能(メタ)アクリル酸エステル、例えばペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を60質量%以下の割合で混合して使用することができる。この配合量が60質量%を越える場合には皮膜の屈折率の上昇を招き、例えば防眩性反射防止フィルムとして使用するとき好ましくない。
【0058】
前記含フッ素硬化性塗液を重合硬化する際に用いられる光重合開始剤は、前述の防眩性ハードコート層を形成する際に用いられた〔六〕光重合開始剤と同種の光重合開始剤が使用される。この光重合開始剤の含フッ素硬化性塗液に対する配合割合は、含フッ素硬化性塗液中の固形分に対し、0.1〜20質量%であることが好ましい。光重合開始剤の配合割合が0.1質量%未満の場合には含フッ素硬化性塗液の重合硬化が不十分となり、20質量%を越える場合には重合硬化後の皮膜の屈折率が上昇するため好ましくない。
【0059】
〔四〕低屈折率層は、電子線等の高エネルギー線により含フッ素硬化性塗液を重合硬化したり、熱分解型重合開始剤や光重合開始剤の存在下に含フッ素硬化性塗液を重合硬化したりすることにより得られる。これらの中では、光重合開始剤を添加した含フッ素硬化性塗液を基材表面に塗布し、形成された皮膜に不活性ガス雰囲気下で紫外線照射を照射して重合硬化させる方法が好ましい。
【0060】
各層の形成方法は特に限定されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、ハケ塗り法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、リバースコート法、キスコート法、コンマコート法等公知のいかなる方法も採用される。塗布に際しては、密着性を向上させるために、予め透明基材フィルム表面にコロナ放電処理等の前処理を施すことができる。
【0061】
前記〔五〕活性エネルギー線硬化型樹脂を硬化させるための活性エネルギー線の照射に用いられる活性エネルギー線源としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の線源等が使用される。
そして、〔二〕防眩性ハードコート層を形成させるための活性エネルギー線の照射量は、紫外線の波長365nmでの積算光量として、50〜5000mJ/cm2であることが好ましい。照射量が50mJ/cm2未満のときには、防眩性ハードコート層形成用組成物の硬化が不十分となるため好ましくない。一方、5000mJ/cm2を超えるときには、活性エネルギー線硬化型樹脂が着色する傾向を示すため好ましくない。
【0062】
前記〔四〕低屈折率層を形成するための含フッ素硬化性塗液の活性エネルギー線の照射量は、10mJ/cm2以上が好ましく、100mJ/cm2以上がさらに好ましい。照射量の上限は、この種の紫外線照射における常法に従って決定される。照射線量が10mJ/cm2より少ない場合には重合硬化後に得られる皮膜に十分な硬度が得られない。また、重合硬化後にさらに紫外線照射による後硬化を行なってもよい。紫外線照射時の酸素濃度は、重合硬化時及び後硬化時とも、窒素、アルゴン等の不活性ガスを吹き込む等により1000ppm以下に抑えることが良好な重合硬化性を得るために好ましい。
【0063】
前記〔四〕低屈折率層の厚さは特に制限されないが、可視光波長の1/4(約100nm)であると干渉効果により表面反射が減少し、透過率が向上するため好ましい。この膜厚が50nm未満又は200nmを越える場合には、減反射効果が低下する。
【0064】
前記〔四〕低屈折率層の屈折率は、好適な反射防止効果を得るという観点からは、低い方が好ましいが、あまり低過ぎると反射光が着色するため好ましくない。従って、反射防止と、着色防止とを考慮すれば、該低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.50であることが好ましく、特に反射防止効果に重点をおいた場合には、1.30〜1.45であることがより好ましい。
【0065】
このようにして得られる本発明の防眩性反射防止フィルムにおいて、画像鮮明性を向上させるために前記〈ウ〉の要件であるバインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差が0〜0.05に調整されている。なお、この屈折率差は、好ましくは0〜0.03、さらに好ましくは0〜0.01に設定される。バインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差をこのような範囲に設定することにより、防眩性ハードコート層の内部における光の散乱を抑制することができ、光の透過性を向上させることができる。この屈折率差が0.05より大きい場合、防眩性ハードコート層の内部における光の散乱が大きくなり、光の透過が阻害されて画像鮮明性が悪化する。
また、本発明の防眩性反射防止フィルムの拡散照明(積分球)方式によって測定した反射率が最低値となる最小反射率波長は、450nmから560nm、好ましくは460nmから550nm、さらに好ましくは470nmから540nmの範囲のいずれかに設定されている。最小反射率波長をこのような範囲に設定することにより、防眩性反射防止フィルムの反射色が制御され黒色に近くなり、黒色表示画像の際の黒のしまりが良好となる。
【0066】
また、前記〈オ〉の要件として全体ヘイズ値が10%以下で、かつ全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合が50%以上とした。
このように全体ヘイズ値を低く調整することにより、光の透過性が改善されて像鮮明度及び画像の黒濃度を良好なものにすることができる。さらに、全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合を規定して外部ヘイズ値を適度に調整することにより、防眩性、ぎらつき及び像鮮明度とのバランスを向上させることができる。
【0067】
さらに、本発明の防眩性反射防止フィルムの反射を示す反射率は、5%以下であることが好ましく、3.5%以下であることがより好ましい。この視感度反射率は、拡散照明方式(積分球)の測定装置を備えた分光光度計を用いて反射率(%)を測定することによって得られる。
加えて、本発明の防眩性反射防止フィルムにおいて、光拡散性を発現するためには、防眩性反射防止フィルム表面の凹凸形状を調整する必要がある。すなわち、防眩性反射防止フィルム表面の凹凸形状に関し、前記〈エ〉の要件である防眩性反射防止フィルム表面におけるJIS B 0601−1994に規定される算術平均粗さ(Ra)は0.01〜0.30μmであり、凹凸の平均間隔(Sm)が10〜300μmである。なお、算術平均粗さは、0.01〜0.20μmであることが好ましく、0.05〜0.15μmであることが最も好ましい。さらに防眩性反射防止フィルム表面の凹凸のRaをこのような範囲に設定することにより、防眩性反射防止フィルムを画像表示のためのディスプレイ上に配置した場合に適度な光拡散性を保持し、またぎらつきがなく、ディスプレイの良好な視認性を確保することが可能となる。
【実施例】
【0068】
以下に、製造例、実施例、及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。
なお、各例における表面粗さ、ヘイズ値、像鮮明度の値、ぎらつき、黒濃度及び視感度反射率については、下記に示す方法により測定した。
【0069】
(1)耐摩耗性の評価
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端に、広く市販されているネル布をシリコンゴム製のクッションを介して設置し、500gfの荷重下でフィルム表面を摩耗した。被摩耗体であるフィルムは、適当な粘着剤を介してガラス板に貼り付けた状態で用いた。摩耗面に傷が入ったところで終了とし、耐久した摩耗回数をもって評価結果とした。
(2)耐擦傷性の評価
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端に、#0000のスチールウールを固定し、2.5N(250gf)及び1N(100gf)の荷重をかけて、被擦傷体であるフィルムの表面上を10往復摩擦した後の表面の傷を目視で観察し、下記の4段階で評価した。
◎:ほぼ傷なし
○:傷5〜15本
△:傷15〜30本
×:傷31本以上
また、フィルムは、(1)耐摩耗性の評価の場合と同様、適当な粘着剤を介した状態で試験される。
【0070】
(3)表面粗さ
(株)小坂研究所製、表面粗さ測定機、サーフコーダSE500を使用し、走査範囲4mm、走査速度0.2mm/sの条件で、JIS B 0601−1994の規定に準拠して算術平均粗さRa(μm)、凹凸の平均間隔Sm(μm)及び十点平均粗さRz(μm)を測定した。
(4)ヘイズ値
ヘイズメーター〔日本電色工業(株)製、NDH2000〕を使用し、光学特性としてのヘイズ値(%)を測定した。なお、内部ヘイズ値は、防眩性ハードコート層表面に水滴を落とし、そこにガラスを押し当てて測定したヘイズ値である。
(5)像鮮明度の値
JIS K 7105−1981に基づく像鮮明度測定装置〔スガ試験機(株)製の写像性測定器、ICM−1T)を用いて2mmの幅を有する光学くしを通して(5-1)像鮮明度の値(%)及び(5-2)60°反射で測定される像鮮明度の値(%)を測定した。
(6)ぎらつき
高精細液晶ディスプレイとしての高精細液晶タッチパネルの画像表示側の最表面に防眩性フィルムを置き、目視にてぎらつきを測定し、下記の3段階で評価した。
3:ぎらつきなし、2:ぎらつき若干あり、1:ぎらつきあり。
(7)黒濃度
ガラスに貼り付けた防眩性フィルムのサンプル裏面に黒粘着フィルムを貼り合せ、蛍光灯が写り込む状態での黒さを評価した。
○:黒さが際だつ、△:若干白い部分があるが全体として黒い、×:全体に白い。
(8)視感度反射率
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで荒し、積分球反射率測定装置のついた分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best50〕を用いて反射率(%)を測定し、その値を視感度で補正した値とした。
【0071】
[製造例1、無機微粒子として変性中空シリカゾルの調製]
以下の第1工程から第5工程に従って変性中空シリカゾルを調製した。
〔1〕第1工程として、平均粒子径5nmのシリカ(SiO2)の濃度が20質量%のシリカゾルと純水とを混合して反応母液を調製し、80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同反応母液にSiO2として1.17質量%の珪酸ナトリウム水溶液と、アルミナ(Al23)として0.83質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを同時に添加した。その間、反応母液の温度を80℃に保持した。反応母液のpHは、珪酸ナトリウム及びアルミン酸ナトリウムの添加直後12.5に上昇し、その後ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応母液を室温まで冷却し、限外濾過膜で濾過して固形分濃度20質量%のSiO2・Al23一次粒子分散液(核粒子分散液)を調製した。
〔2〕次いで、第2工程として、このSiO2・Al23一次粒子分散液に純水を加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5質量%の硫酸ナトリウム水溶液を添加した。続いて、SiO2として濃度1.17質量%の珪酸ナトリウム水溶液と、Al23として濃度0.5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを添加して複合酸化物微粒子分散液(核粒子に第1シリカ被覆層を形成した微粒子分散液)を得た。そして、これを限外濾過膜で濾過して固形分濃度13質量%の複合酸化物微粒子分散液とした。
〔3〕第3工程として、この複合酸化物微粒子分散液に純水を加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lとを加えながら限外濾過膜でアルミニウム塩を分離し、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(I)の水分散液を得た。
〔4〕第4工程として、該シリカ系微粒子(I)の水分散液と、純水、エタノール及び28質量%アンモニア水との混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2の濃度28質量%)を添加してシリカ被膜(第2シリカ被覆層)を形成した。続いて、純水5Lを加えながら、限外濾過膜で濾過して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(II)の分散液を調製した。
〔5〕最後に第5工程として、再びシリカ系微粒子(II)の分散液を200℃にて11時間水熱処理を施した。その後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で濾過して固形分濃度20質量%に調整した。そして、限外濾過膜を用いて、この分散液の分散媒をエタノールに置換し、固形分濃度20質量%のオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nmで、比表面積が110m2/gの中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(中空シリカゾルA)であった。
該中空シリカゾルA(シリカ固形分濃度20質量%)200gを用意し、限外濾過膜にて、メタノールへの溶媒置換を行い、SiO2分が20質量%のオルガノゾル100g(水分量はSiO2分に対して0.5質量%)を
調製した。そこへ、28質量%アンモニア水溶液を前記オルガノゾル100gに対してアンモニアとして100ppmとなるように加えて十分に混合し、さらにγ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔信越化学(株)製、商品名:KBM5103〕3.6gを添加し、反応液とした。これを50℃に加温し、撹拌しながら50℃で6時間加熱を行なった。加熱終了後、反応液を常温まで冷却し、さらにロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールへ溶媒置換を行い、SiO2濃度20質量%の被覆中空微粒子からなるオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nm、屈折率1.25、空隙率40〜45%で、比表面積が130m2/g、熱質量測定法(TG)による質量減少割合が3.6%の変性中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾルであった。
【0072】
[製造例2、低屈折率層用組成物の調製]
前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾルを固形分換算で50質量部、1,10−ジアクリロイルオキシ−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン(フッ素含有率53質量%)〔共栄社化学(株)製、商品名「16−FDA」〕50質量部、光重合開始剤〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア907〕を5質量部、重合性反応基を有さないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン添加剤(商品名「BYK−300」、ビック・ケミー(株)製)を10重量部及びイソプロピルアルコール2000質量部を混合し、低屈折率層用組成物(含フッ素硬化性塗液)を得た。
【0073】
《実施例1》
ウレタンアクリレート〔分子量1400、60℃における粘度が2500〜4500Pa・s、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕100質量部、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア(Irg.)2959〕3質量部及びメチルイソブチルケトン(MIBK)83.4質量部を混合してバインダーを調製し、それに透光性有機微粒子として架橋アクリル−スチレン共重合樹脂の微粒子〔積水化成品(株)製、XX−09V、粒子径の揃った単分散な微粒子、平均粒子径(a)は5.0μm〕30質量部を混合して防眩性ハードコート層形成用組成物を調製した。
この防眩性ハードコート層形成用組成物を、透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上にロールコーターにて乾燥膜厚が8.5μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。なお、上記乾燥膜厚が実質的に防眩性ハードコート層の膜厚(A)である。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量400mJ/cm2)、硬化させて防眩性ハードコート層を作製した。前記バインダーを硬化させて得られた硬化物の屈折率は1.500であり、透光性微粒子の屈折率は1.498であった。従って、バインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差は、0.002であった。
さらに、得られた防眩性ハードコート層形成用組成物上に、前記製造例2にて得られた塗液をマイクログラビアコーターにて塗布、乾燥後、紫外線を照射して硬化し、反射防止層を形成し、防眩性反射防止フィルムを得た。得られた反射防止層の表面における算術平均粗さ(Ra)は0.14μm、凹凸の平均間隔(Sm)は150μm及び防眩性フィルムの全体ヘイズ値は2.2%であった。
【0074】
《実施例2》
前記製造例2に示した低屈折率層用組成物の調製において、アルミナ微粒子1重量部を混合した液を使用し、それ以外は、前記実施例1に準じてフィルムを作成した。得られた防眩性反射防止層の表面における表面における算術平均粗さ(Ra)は0.14μm、凹凸の平均間隔(Sm)は150μm及び防眩性フィルムの全体ヘイズ値は2.2%であった。
【0075】
《実施例3》
前記製造例2に示した低屈折率層用組成物の調製に記載の重合性反応基を有さないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン添加剤(商品名「BYK−300」、ビック・ケミー(株)製)の変わりに、重合性反応基(アクリロイロキシ基)を4つ有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン添加剤(商品名「BYK−UV 3570」ビック・ケミー(株)製)を同質量部加え、さらに、アルミナ微粒子1重量部を混合した液を使用し、それ以外は、前記実施例1に準じてフィルムを作成した。得られた防眩性反射防止層の表面における表面における算術平均粗さ(Ra)は0.14μm、凹凸の平均間隔(Sm)は150μm及び防眩性フィルムの全体ヘイズ値は2.2%であった。
【0076】
《実施例4》
前記製造例2に示した低屈折率層用組成物の調製に記載の重合性反応基を有さないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン添加剤(商品名「BYK−300」、ビック・ケミー(株)製)の変わりに、重合性反応基(アクリロイロキシ基)を4つ有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン添加剤(商品名「BYK−UV 3570」ビック・ケミー(株)製)を同質量部加え、さらに、アルミナ微粒子1重量部、1,2,9,10−テトラアクリロイルオキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカンを50質量部混合した液を使用し、それ以外は、前記実施例1に準じてフィルムを作成した。得られた防眩性反射防止層の表面における表面における算術平均粗さ(Ra)は0.14μm、凹凸の平均間隔(Sm)は150μm及び防眩性フィルムの全体ヘイズ値は2.2%であった。
【0077】
《比較例1》
ウレタンアクリレート〔日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕100質量部、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア(Irg.)2959〕3質量部及びメチルイソブチルケトン(MIBK)130質量部を混合してバインダーを調製し、それに透光性微粒子として無機微粒子であるシリカ粒子(富士シリシア化学(株)製、サイロスフェアC−1504、平均粒子径4.0μm)30質量部を混合して防眩性ハードコート層形成用組成物を調製した。
この防眩性ハードコート層形成用組成物を、透明基材として厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上にロールコーターにて乾燥膜厚が5.0μmとなるように塗布し、80℃で2分間乾燥した。その後、120W高圧水銀灯〔日本電池(株)製〕により紫外線を照射し(積算光量400mJ/cm2)、硬化させて防眩性フィルムを作製した。前記バインダーを硬化させて得られた硬化物の屈折率は1.500であり、透光性微粒子の屈折率は1.410であった。従って、バインダーの硬化物と透光性微粒子との屈折率差は、0.090であった。
さらに、得られた防眩性ハードコート層上に、前記製造例2にて得られた塗液をマイクログラビアコーターにて塗布、乾燥後、紫外線を照射して硬化し、防眩性反射防止フィルムを得た。得られた防眩性反射防止層の表面における算術平均粗さ(Ra)は0.20μm、凹凸の平均間隔(Sm)は200μm及び防眩性フィルムの全体ヘイズ値は30.0%であった。
【0078】
以上の実施例1〜4及び比較例1で得られた防眩性反射防止フィルムについて、耐擦傷性、耐摩耗性、表面粗さ、ヘイズ値、像鮮明度の値、ぎらつき、黒濃度及び視感度反射率を測定し、それらの結果を表1に示した。
【表1】

【0079】
表1より明らかなように、実施例1〜4の防眩性反射防止フィルムは、防眩性ハードコート層におけるバインダーの硬化物と透光性有機微粒子との屈折率差が調整されるため、防眩性ハードコート層中における光の散乱を抑えて光の透過性を向上させることができ、像鮮明度及び画像の黒濃度の向上が図られることが確認された。また、反射防止層の表面における平均粗さ(Ra)及び凹凸の平均間隔(Sm)が適切な範囲に設定されたため、光の拡散が制御され、光の過剰な散乱が抑えられてぎらつきが抑制されていた。加えて、全体ヘイズ値が低く調整され、光の透過性が改善されて像鮮明度及び画像の黒濃度を良好なものにすることができた。しかも、全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合を規定して外部ヘイズ値を適度に調整したので、防眩性、ぎらつき及び像鮮明度とのバランスを向上させることができた。そのため、液晶ディスプレイに用いられたとき、ぎらつきを抑制することができると共に、黒濃度及び像鮮明度を高めることができ、画像の視認性を向上させることができ、特に高精細な液晶ディスプレイにおいてその効果を有効に発揮する。さらに、低屈折率層の組成物に含まれるシランカップリング剤の(メタ)アクリロイルオキシ基と含フッ素化合物の重合性二重結合とが共重合することにより、中空シリカ微粒子が含フッ素化合物に一体的に結合し、含フッ素硬化性塗液から得られる低屈折率層の強度及び硬度を向上させ、皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させることができることが確認された。
これに対し、比較例1は、バインダーの硬化物と透光性有機微粒子との屈折率差が大きく、光の散乱が抑えられず、光の透過性も低かった。また、反射防止層の表面における平均粗さ(Ra)が大きいため、光が拡散し、光が過剰に散乱してぎらつきが生じ、全体ヘイズ値も大きいため、光の透過性が悪く、像鮮明度も黒濃度も悪かった。さらに、全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合も適正でないことも、防眩性やぎらつきの問題に寄与していると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系材料よりなる透明基材上に、防眩性ハードコート層及び少なくとも低屈折率層を含んでなる反射防止層がこの順で積層して構成されており、前記防眩性ハードコート層は、活性エネルギー線硬化型樹脂、光重合開始剤及び透光性有機微粒子を含有する組成物の硬化物よりなり、前記活性エネルギー線硬化型樹脂及び光重合開始剤を含有するバインダーの硬化物と透光性有機微粒子との屈折率差が0〜0.05に調整され、反射防止層の表面におけるJIS B 0601−1994に準拠して測定される算術平均粗さ(Ra)が0.01〜0.30μm及び凹凸の平均間隔(Sm)が10〜300μmであると共に、全体ヘイズ値が10%以下で、かつ全体ヘイズ値に対する内部ヘイズ値の割合が50%以上であり、さらに、前記低屈折率層は、分子内に重合性二重結合をもつ含フッ素化合物及び分子内に重合性二重結合をもつシランカップリング剤によって変性された中空シリカ微粒子とを含有する組成物の硬化皮膜であることを特徴とする防眩性反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層が平均粒子径10〜100nmの金属酸化物微粒子をさらに含ませたものであることを特徴とする請求項1に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項3】
前記低屈折率層が分子内に重合性二重結合をもつポリジオルガノシロキサン0.1〜20質量%をさらに含ませて硬化させたものであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項4】
前記重合性二重結合をもつ含フッ素化合物が、下記式(I)で表される重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防眩性反射防止フィルム。
【化1】

【請求項5】
前記透光性有機微粒子が(メタ)アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂又はそれらの架橋物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項6】
前記防眩性ハードコート層の膜厚(A)に対する透光性有機微粒子の平均粒子径(a)の比a/Aが0.3〜1.5であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の防眩性反射防止フィルム。
【請求項7】
画像を表示する側の最表面に請求項1〜6のいずれか1項に記載の防眩性反射防止フィルムを備えていることを特徴とする液晶ディスプレイ。

【公開番号】特開2009−157234(P2009−157234A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337437(P2007−337437)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】