説明

防磁装置及びそれを備えた電磁誘導加熱式調理器

【課題】様々な形状の保護対象領域に対応できる防磁装置及びそれを備えた電磁誘導加熱式調理器を提供する。
【解決手段】電磁誘導加熱式調理器1の内部に設けられる複数の電気部品を、加熱用コイル4で発生される磁界による磁束から保護するための防磁装置Sが、保護対象とする電気部品が設けられている複数の保護対象領域のうちの1以上の第1保護対象領域25と加熱用コイル4との間にそれぞれ介装される1以上の金属板19、及び、複数の保護対象領域のうちの他の1以上の第2保護対象領域26の周囲の一部又は全部を囲い且つ磁界による磁束と鎖交するようにそれぞれ配置される1以上の金属線20、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱式調理器の内部に設けられる複数の電気部品を、加熱用コイルで発生される磁界から保護するための防磁装置、及び、その防磁装置を備えた電磁誘導加熱式調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱式調理器は、電磁誘導により発熱体(鍋など)に渦電流を発生させる加熱用コイルと、その渦電流が流れることによってジュール熱を発生する金属製の発熱体(鍋)とを備える。このような電磁誘導加熱式調理器において、加熱用コイルで発生される磁界は、発熱体のみに作用して渦電流を流すのではなく、他の導電性の部品にも作用して渦電流を流す可能性がある。例えば、電磁誘導加熱式調理器の外形を形作る筐体の一部を、外観の清潔感などを出すために金属材料で形成した場合、加熱用コイルで発生される磁界が電磁誘導加熱式調理器の筐体に漏れると、上記金属材料の部分に渦電流が発生して筐体が高温になる可能性がある。
【0003】
一方で、特許文献1には、電磁誘導加熱式調理器の内部に設置された防磁装置、特に、電磁誘導加熱式調理器の下方筐体及び側方筐体への磁界の漏れを防止するための防磁装置が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の防磁装置は、電磁誘導加熱式調理器の下方筐体への磁界の漏れを防止するために加熱用コイルの下方に設けられるフェライトコア及び金属板と、電磁誘導加熱式調理器の側方筐体への磁界の漏れを防止するために発熱体の側部に設けられる被覆電線などの金属線とを備える。このように、従来の電磁誘導加熱式調理器に設けられる防磁装置は、電磁誘導加熱式調理器の下方筐体及び側方筐体への磁界の漏れを防止するためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−28020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁誘導加熱式調理器の下方筐体及び側方筐体への磁界の漏れを防止するのではなく、電磁誘導加熱式調理器の内部に設けられる複数の電気部品を、加熱用コイルで発生される磁界から保護することも要求されている。そのような要求に対して、電磁誘導加熱式調理器の内部の、加熱用コイルで発生される磁界の影響を受け易い部位に収容されている特定の電気回路基板の防磁を行うための防磁装置を構成することも想定できる。例えば、特定の電気回路基板と同じ大きさであり、その電気回路基板と加熱用コイルとの間に介装される金属板を備える防磁装置を想定できる。この場合、上記電気回路基板は、保護対象とする電気部品が設けられている保護対象領域と見なされる。
【0006】
しかし、電気回路基板の大きさ(即ち、防磁装置が保護するべき保護対象領域の大きさ)は、搭載する電気部品の大きさや数が変更されるとそれに応じて変更される。その場合、特定の電気回路基板を有効に防磁するために、防磁用の金属板の大きさもその都度変更しなければならない。従って、搭載する電気部品の大きさや数を、電磁誘導加熱式調理器の種類に応じて変更しようとした場合及び電磁誘導加熱式調理器のモデルチェンジなどに応じて変更しようとした場合、電気回路基板の形状を変更するのに要する手間や費用だけでなく、保護対象領域の形状変化に応じて防磁用の金属板の形状を変更するための手間や費用(例えば、金属板を加工するための新たな金型の製造費用など)も併せて必要になる。このような手間や費用はできるだけ低減されるべきである。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な形状の保護対象領域に対応できる防磁装置及びそれを備えた電磁誘導加熱式調理器を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る防磁装置の特徴構成は、電磁誘導加熱式調理器の内部に設けられる複数の電気部品を、加熱用コイルで発生される磁界から保護するための防磁装置であって、
保護対象とする電気部品が設けられている複数の保護対象領域のうちの1以上の第1保護対象領域と前記加熱用コイルとの間にそれぞれ介装される1以上の金属板、及び、前記複数の保護対象領域のうちの他の1以上の第2保護対象領域の周囲の一部又は全部を囲い且つ前記磁界による磁束と鎖交するようにそれぞれ配置される1以上の金属線、を備える点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、金属板と金属線とで、保護対象領域を加熱用コイルで発生される磁界から保護できる。具体的には、保護対象領域のうちの第1保護対象領域は金属板で有効に保護される。また、加熱用コイルで発生される磁界による磁束と鎖交するように、上記第2保護対象領域の周囲の一部又は全部に配置される金属線には、その鎖交磁束を打ち消して弱めようとするような磁界を発生させる起電力(逆起電力)が生じる。そのため、金属線に囲われている第2保護対象領域は、加熱用コイルで発生される磁界から金属線で有効に保護される。つまり、定まった形状の保護対象領域がある場合、その保護対象領域(即ち、第1保護対象領域)を、定まった形状に形成されている金属板で有効に保護できる。加えて、既定の形状の金属板によって有効の保護できないような形状の保護対象領域が発生しても、金属線の形状を変更して第2保護対象領域の周囲の一部又は全部を囲うことができるので、その保護対象領域(即ち、第2保護対象領域)を有効に金属線で保護できる。
従って、様々な形状の保護対象領域に対応できる防磁装置を提供できる。
【0010】
本発明に係る防磁装置の別の特徴構成は、前記保護対象とする電気部品のうちの幾つかが搭載される基板を前記第1保護対象領域と前記第2保護対象領域とに区分して、前記磁界から保護する点にある。
【0011】
保護対象とする電気部品のうちの幾つかが搭載される基板の形状は、搭載される電気部品の種類、数、大きさなどに応じて様々に変化し得る。
本特徴構成によれば、保護対象とする電気部品のうちの幾つかが搭載される基板を金属板のみで有効に保護できない場合であっても、金属板で有効に保護できない領域(即ち、第2保護対象領域)を、第2保護対象領域の周囲の一部又は全部を囲う金属線を用いて有効に保護できる。つまり、基板全体を金属板と金属線との組み合わせによって磁界から有効に保護できる。
【0012】
本発明に係る防磁装置の更に別の特徴構成は、前記金属線は前記第1保護対象領域及び前記第2保護対象領域の周囲に配置される点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、金属線が第2保護対象領域だけでなく第1保護対象領域も囲う。つまり、金属線を鎖交する磁束(即ち、第1保護対象領域及び第2保護対象領域に作用する磁束)は、逆起電力が生じている金属線によって生じる磁界によって弱められる。その結果、金属板及び金属線によって、第1保護対象領域を加熱用コイルで発生される磁界から二重に保護できる。
【0014】
本発明に係る防磁装置の更に別の特徴構成は、前記金属線と前記金属板とは電気的に接続されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、金属線と金属板とが電気的に接続されているので、金属板は、金属線によって形成される、第2保護対象領域の周囲の一部又は全部を囲う部分の一部を構成する。つまり、金属板は、金属線の一部として作用し、第2保護対象領域の保護にも寄与できる。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る電磁誘導加熱式調理器の特徴構成は、
上記防磁装置と、
金属製の発熱体と、
電磁誘導により前記発熱体に渦電流を発生させる前記加熱用コイルと、
交流電源から供給される交流電流を整流する整流回路部と、
前記整流回路部によって整流された後の電流を所定の高周波電流に変換して前記加熱用コイルに供給するインバータ回路部と、
前記交流電源と前記整流回路部との間の電気回路の途中に設けられて、所定の周波数範囲のノイズを除去するフィルタ回路部と、を備え、
前記金属板は前記第1保護対象領域としての前記フィルタ回路部と前記加熱用コイルとの間に介装される点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、フィルタ回路部が金属板によって有効に保護されるので、フィルタ回路部において新たなノイズが重畳されないようにできる。その結果、所定の周波数範囲のノイズが交流電源へは出ないような電磁誘導加熱式調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】炊飯器の縦断面図である。
【図2】炊飯器の構成を示すブロック図である。
【図3】炊飯器の一部分についての縦断面図である。
【図4】防磁装置の平面図である。
【図5】炊飯器の別の構成を示すブロック図である。
【図6】炊飯器の別の構成を示すブロック図である。
【図7】炊飯器の別の構成を示すブロック図である。
【図8】防磁装置の別の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して第1実施形態の防磁装置及びそれを備えた電磁誘導加熱式調理器について説明する。本実施形態では、電磁誘導加熱式調理器として炊飯器を例示する。
図1は、炊飯器の縦断面図である。図2は、炊飯器の構成を示すブロック図である。図3は、炊飯器の一部分についての縦断面図である。図4は、防磁装置の平面図である。
炊飯器1は、熱を発生する金属製の発熱体(鍋)3を有する。炊飯器1の内部には、発熱体3を収容する保護材2が設けられている。保護材2は、非導電性材料で形成される。保護材2よりも外側には、電磁誘導により発熱体3に渦電流を発生させる加熱用コイル4が設けられている。具体的には、加熱用コイル4は、発熱体3の底部、具体的には、保護材2と、炊飯器1の外部への磁界の漏れを防止する目的で設置されるフェライトコア5との間に設けられている。加熱用コイル4に高周波電流が流されたとき、加熱用コイル4によって発生される磁界によって発熱体3に渦電流が発生し、その渦電流が流れることにより発生するジュール熱によって発熱体3は発熱する。また、保護材2よりも外側には、炊飯器1を構成する電気部品として、フィルタ回路部10、整流回路部12、インバータ回路部13、インバータ駆動回路部14、マイクロコンピュータ部15を含む主制御回路部7、カレントトランス部17、安定化電源回路部16、操作表示回路部8、ファン6、温度センサ11などが設けられている。本実施形態において、フィルタ回路部10及びカレントトランス部17はフィルタ回路基板18に搭載される。整流回路部12、インバータ回路部13、インバータ駆動回路部14及び安定化電源回路部16はIH基板22に搭載される。マイクロコンピュータ部15を含む主制御回路部7は主制御回路基板21に搭載される。操作表示回路部8は操作表示回路基板9に搭載される。
【0020】
フィルタ回路部10は、交流電源(例えば、商用電源)23と、その交流電源23から供給される交流電流を整流する整流回路部12との間の電気回路の途中に設けられて、例えばインバータ回路部13などで発生する所定の周波数範囲のノイズを除去する。本実施形態では、図4に例示するように、フィルタ回路部10は、コイル10aとコンデンサ10bとを有する回路で構成される。整流回路部12は、例えばダイオードブリッジ回路などで構成される。炊飯器1にフィルタ回路部10を設けることで、炊飯器1の内部の電気回路に発生した所定の周波数範囲の高周波ノイズが交流電源23の方へ出て行くのを抑制できる。
【0021】
インバータ回路部13は、整流回路部12によって整流された後の電流を所定の高周波電流に変換して加熱用コイル4に供給する。インバータ回路部13は、高周波のスイッチング素子としてIGBTなどのスイッチング素子を有する。インバータ駆動回路部14は、インバータ回路部13が有する上記スイッチング素子をオン、オフ制御することにより加熱用コイル4への通電をオン/オフ制御する。インバータ駆動回路部14の入力側にはマイクロコンピュータ部15が接続され、インバータ駆動回路部14の出力側には上記インバータ回路部13が接続される。インバータ駆動回路部14の動作はマイクロコンピュータ部15によって制御される。
【0022】
カレントトランス部17は、交流電源23からの入力電流を検出する。カレントトランス部17の検出結果はマイクロコンピュータ部15に伝達される。
安定化電源回路部16は、交流電源23から所定の安定化電源を生成する。本実施形態では、安定化電源回路部16は、インバータ駆動回路部14及びファン6などを動作させるための電圧(例えば、20V)とマイクロコンピュータ部15及び温度センサ11などを動作させるための電圧(例えば、5V)とを生成している。ファン6は炊飯器1の内部を冷却するために設けられており、マイクロコンピュータ部15によって動作が制御される。検知部11aと回路部11bとで構成される温度センサ11は発熱体3の温度を検出するために設けられており、その検出結果はマイクロコンピュータ部15に伝達される。
【0023】
以上のように、炊飯器1の内部には、加熱用コイル4が設けられ、及び、他にも上述のような複数の電気部品が設けられている。尚、これら電気部品が、加熱用コイル4によって発生する磁界の影響下に置かれると、炊飯器1の内部の電気回路中にノイズが生じる可能性がある。
そこで、本実施形態において、炊飯器1が備える防磁装置Sは、後述するように、保護対象とする電気部品が設けられている複数の保護対象領域のうちの1以上の第1保護対象領域25と加熱用コイル4との間にそれぞれ介装される1以上の金属板19、及び、複数の保護対象領域のうちの他の1以上の第2保護対象領域26の周囲の、第2保護対象領域26の周囲の一部又は全部を囲い且つ加熱コイルで発生される磁界による磁束と鎖交するようにそれぞれ配置される1以上の金属線20、を備える。
【0024】
以下に本実施形態の防磁装置Sの構成について説明する。
図1〜図4に示すように、フィルタ回路基板18にはフィルタ回路部10が搭載されている。フィルタ回路基板18は、本来、フィルタ回路部10を構成する電気部品(コイル10a、コンデンサ10bなど)を搭載するためのものである。よって、加熱用コイル4で発生される磁界からフィルタ回路部10を保護するための金属板19が、フィルタ回路部10と加熱用コイル4との間に介装されている。金属板19の既定の形状は、少なくともフィルタ回路部10を構成する電気部品を、加熱用コイル4で発生される磁界から有効に保護できる形状、大きさになっている。
【0025】
本実施形態では、フィルタ回路基板18にはカレントトランス部17も搭載されている。フィルタ回路部10を構成するコイル10a及びコンデンサ10bなど、並びに、カレントトランス部17は共に比較的大きな部品であるので、1つの基板上にまとめることで炊飯器1への収納効率を上げることができる。フィルタ回路部10及びカレントトランス部17を共に搭載する必要のある本実施形態のフィルタ回路基板18は、フィルタ回路部10のみを搭載すればよい従来のフィルタ回路基板よりも大きくなる。そのため、フィルタ回路部10のみを搭載すればよいフィルタ回路基板の全体を保護するために予め作製されている既定の金属板19の大きさは、フィルタ回路部10及びカレントトランス部17を共に搭載する必要のある本実施形態のフィルタ回路基板18よりも小さくなる。つまり、フィルタ回路部10のみを搭載すればよいフィルタ回路基板の全体を保護するために作製された金属板19を、本実施形態のフィルタ回路基板18で用いる場合、従来と大きさの変わらないフィルタ回路部10の領域は金属板19で有効に保護できるものの、新たに設けられるカレントトランス部17の領域は金属板19で有効に保護できない。
【0026】
ところで、本実施形態の防磁装置Sは、保護対象とする電気部品が設けられている複数の保護対象領域のうちの1以上の第1保護対象領域25と加熱用コイル4との間にそれぞれ介装される1以上の金属板19、及び、複数の保護対象領域のうちの他の1以上の第2保護対象領域26の周囲の、第2保護対象領域26の周囲の全部を囲い且つ加熱用コイル4で発生される磁界による磁束と鎖交するようにそれぞれ配置される1以上の金属線20、を備える。つまり、図3及び図4に例示するフィルタ回路基板18において、フィルタ回路基板18上のフィルタ回路部10が設けられている領域を第1保護対象領域25と見なし、及び、フィルタ回路基板18上のカレントトランス部17が設けられている領域を第2保護対象領域26と見なすことができる。
【0027】
フィルタ回路部10と加熱用コイル4との間には金属板19が介装され、カレントトランス部17の周囲の全部を囲い且つ加熱用コイル4で発生される磁界による磁束と鎖交するように金属線20が配置される。つまり、加熱用コイル4で発生される磁界による磁束と鎖交するように配置される金属線20には、その鎖交磁束を打ち消して弱めようとするような磁界を発生させる起電力(逆起電力)が生じる。そのため、金属線20に囲われているカレントトランス部17(第2保護対象領域26)は、加熱用コイル4で発生される磁界による磁束から金属線20で有効に保護される。本実施形態では、金属板19と同一面上に金属線20を配置しているが、金属板19と金属線20とが同一面上になくてもよい。また、本実施形態では、金属線20の巻き数を約2回としているが、巻き数は適宜変更可能である。
【0028】
つまり、図3に例示するように、第1保護対象領域25としてのフィルタ回路部10に作用する破線で示す磁束は金属板19で有効に遮蔽でき、第2保護対象領域26としてのカレントトランス部17に作用する一点鎖線で示す磁束は金属線20によって弱められる。このように、本実施形態の防磁装置Sにおいて、金属線20の配置状態は、第2保護対象領域26の周囲の全部を囲うように容易に変化させることができるので、金属板19によって有効の保護できないような形状の保護対象領域が発生しても、その保護対象領域(即ち、第2保護対象領域26)を有効に金属線20で保護できる。特に、金属線20の形状は自在に変形させることができるため、炊飯器1の内部の適当な空間に金属線20を曲げながら設置できるという利点や、保護対象領域が様々な形状であってもその形状に応じて金属線20を適宜変形させた上で設置できるという利点がある。
【0029】
更に、本実施形態では、金属線20は、カレントトランス部17(第2保護対象領域26)だけでなくフィルタ回路部10(第1保護対象領域25)も囲う。つまり、金属線20を鎖交する磁束(図3において破線及び一点鎖線で示す全ての磁束)は、逆起電力が生じている金属線20によって生じる磁界によって弱められる。その結果、フィルタ回路部10は、金属板19及び金属線20によって二重に保護されることになる。また、更に、金属線20は、圧着端子24などによって金属板19に対して電気的に接続されている。特に、金属線20の両端は金属板19の別々の箇所に対して電気的に接続されている。その結果、金属板19は、金属線20によって形成される、第2保護対象領域26の周囲の全部を囲う部分の一部を構成する。つまり、金属板19は、金属線20の一部として作用し、カレントトランス部17の保護にも寄与できる。
【0030】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の炊飯器の構成を示すブロック図である。第2実施形態の炊飯器は、フィルタ回路基板にフィルタ回路部とカレントトランス部と安定化電源回路部とが搭載されている他は、第1実施形態の炊飯器と同様である。以下に、第2実施形態の炊飯器の構成について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0031】
図5に示すように、本実施形態では、フィルタ回路基板18には、フィルタ回路部10に加えてカレントトランス部17及び安定化電源回路部16が搭載されている。安定化電源回路部16を構成する電解コンデンサ(図示せず)は比較的大きな部品であるので、1つの基板上にまとめることで炊飯器1への収納効率を上げることができる。
本実施形態でも、第1実施形態で説明した例と同様に、フィルタ回路基板18上のフィルタ回路部10が設けられている領域を第1保護対象領域25と見なし、フィルタ回路基板18上のカレントトランス部17が設けられている領域を第2保護対象領域26と見なし、フィルタ回路基板18上の安定化電源回路部16が設けられている領域を第2保護対象領域26と見なすことができる。本実施形態では図示しないが、第1実施形態と同様に、金属板19がフィルタ回路部10と加熱用コイル4との間には介装される。
【0032】
また、カレントトランス部17の周囲の一部又は全部を囲い且つ加熱用コイル4で発生される磁界による磁束と鎖交するように金属線20が配置され、並びに、安定化電源回路部16の周囲の一部又は全部を囲い且つ加熱用コイル4で発生される磁界による磁束と鎖交するように金属線20が配置される。この場合、カレントトランス部17の周囲に配置される金属線20と、安定化電源回路部16の周囲に配置される金属線20とは、同一の金属線20で構成してもよく、或いは、別個の金属線20で構成してもよい。更に、カレントトランス部17の周囲に配置される金属線20と、安定化電源回路部16の周囲に配置される金属線20とを別個の金属線20で構成する場合、各金属線20の巻き数は、それぞれで要求される磁界の遮蔽効果の大きさに応じて適宜設定可能である。例えば、カレントトランス部17の周囲に配置される金属線20を図4に例示したような約2回巻きにて構成し、安定化電源回路部16の周囲に配置される金属線20を約3回巻きなどにて構成してもよい。巻き数が多くなるほど、金属線20に生じる逆起電力が大きくなるため、鎖交磁束を打ち消そうとする磁界が大きくなる。
【0033】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の炊飯器の構成を示すブロック図である。第3実施形態の炊飯器は、主制御回路基板21にマイクロコンピュータ部と温度センサの回路部とが搭載され、加えて、主制御回路基板21に防磁装置が設けられている他は、第1実施形態の炊飯器と同様である。以下に、第3実施形態の炊飯器の構成について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0034】
図6に示すように、本実施形態では、主制御回路基板21には、マイクロコンピュータ部15に加えて温度センサ11の回路部11bが搭載されている。炊飯器1の小型化などを目的とした場合、炊飯器1に収容されている主制御回路基板21などを加熱用コイル4に近づけて配置することもある。その場合、主制御回路基板21などを、加熱用コイル4で発生する磁界から保護する必要も生じる。本実施形態では、主制御回路基板21上のマイクロコンピュータ部15が設けられている領域を第1保護対象領域25と見なし、主制御回路基板21上の温度センサ11の回路部11bが設けられている領域を第2保護対象領域26と見なす。本実施形態では図示しないが、図3及び図4などに例示したのと同様に、金属板19がマイクロコンピュータ部15と加熱用コイル4との間には介装される。また、温度センサ11の回路部11bの周囲の一部又は全部を囲い且つ加熱用コイル4で発生される磁界による磁束と鎖交するように金属線20が配置される。その結果、金属線20を鎖交する磁束は、逆起電力が生じている金属線20によって生じる磁界によって弱められるため、温度センサ11の回路部11bを金属線20で有効に保護できる。特に、温度センサ11の回路部11bの配置箇所は必要に応じて変更される可能性がある。そのような場合、前もって加熱用コイル4で発生する磁界の影響を予測することは困難である。従って、金属線20は、温度センサ11の回路部11bを有効に保護するために、容易に形状変更や追加できるという点で有利である。
【0035】
また、図6に示す例では、フィルタ回路部10を保護するためにも金属板19が設置され、カレントトランス部17を保護するためにも金属線20が設置されている。つまり、防磁装置Sは、フィルタ回路部10とマイクロコンピュータ部15とのそれぞれを第1保護対象領域25として別個の金属板19で保護し、カレントトランス部17と温度センサ11の回路部11bとのそれぞれを第2保護対象領域26として別個の金属線20で保護している。
【0036】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の炊飯器の構成を示すブロック図である。第4実施形態の炊飯器は、フィルタ回路部と交流電源との間の電気回路上に設けられている電気部品を保護するための防磁装置が設けられている点で上記第1実施形態と異なっている。以下に、第4実施形態の炊飯器の構成について説明するが、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0037】
図7に示すように、本実施形態では、フィルタ回路部10と交流電源23との間の電気回路上に、電気部品としての電流ヒューズ27とバリスタ28とが設けられている。バリスタ28は、印加電圧に応じて電気抵抗値が大幅に変化する素子である。例えば、バリスタ28に通常の低い電圧が印加されている状態ではバリスタ28の電気抵抗値は大きいためバリスタ28に電流は殆ど流れない。一方で、バリスタ28に大きな電圧が印加されるとバリスタ28の電気抵抗値は大幅に低下してバリスタ28に大きな電流が流れる。その結果、本実施形態では、電流ヒューズ27にも大きな電流が流れるため、電流ヒューズ27で電気回路が切断され、下流側のフィルタ回路部10などが保護される。これら電流ヒューズ27及びバリスタ28は、フィルタ回路部10と共にフィルタ回路基板18に搭載されている。本実施形態では、カレントトランス17はフィルタ回路基板18に搭載されていない。
【0038】
本実施形態でも、フィルタ回路基板18上のフィルタ回路部10が設けられている領域を第1保護対象領域25と見なす。そして、フィルタ回路部10と加熱用コイル4との間には金属板19が介装される。加えて、フィルタ回路基板18上の電流ヒューズ27及びバリスタ28が設けられている領域を第2保護対象領域26と見なす。そして、電流ヒューズ27及びバリスタ28の周囲の一部又は全部を囲い且つ加熱用コイル4で発生される磁界による磁束と鎖交するように金属線20が配置される。従って、第1保護対象領域25としてのフィルタ回路部10と、第2保護対象領域26としての電流ヒューズ27及びバリスタ28とが、金属板19と金属線20とを備える防磁装置Sによって、加熱用コイル4で発生された磁界による磁束から有効に保護される。
【0039】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態において、防磁装置Sが備える金属板19及び金属線20の形状は適宜変更可能である。例えば、図4の改変例としての図8に示すように、フィルタ回路基板18を、フィルタ回路部10が設けられる第1保護対象領域25とカレントトランス部17が設けられる第2保護対象領域26とを区分して、金属板19が第1保護対象領域25としてのフィルタ回路部10を保護するために設置され、金属線20が第2保護対象領域26としてのカレントトランス部17のみの周囲に設置されてもよい。更に、図4では金属線20が第2保護対象領域26としてのカレントトランス部17の周囲の全部を囲うような形状であったが、図8に示すように金属線20が第2保護対象領域26としてのカレントトランス部17の周囲の一部を囲うような形状であってもよい。
【0040】
<2>
上記実施形態において、金属線20の形状は、図4及び図8に例示したように曲線を描く弧状及び環状に曲げられた形状に限定されず、部分的に角ばって折り曲げられたような形状であってもよい。
また、金属線20は、金属板19に対して電気的に接続されていなくてもよい。例えば、金属線20のみを独立して設けてもよく、或いは、金属線20をアースなどに接続する状態で設けてもよい。また更に、金属線20の一端のみが金属板19に対して電気的に接続されていてもよい。
【0041】
<3>
上記実施形態では、幾つかの基板に搭載された電気部品を加熱用コイル4で発生される磁界から保護するための防磁装置Sの例を示したが、上述しない他の電気部品を保護するような防磁装置Sを構成してもよい。また、上記実施形態で説明した複数の電気部品の設置位置は適宜変更可能である。
更に、電磁誘導加熱式調理器として炊飯器1を例示したが、他の様々な電磁誘導加熱式調理器に対して防磁装置Sを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、電磁誘導加熱式調理器の内部に設けられる複数の電気部品を、加熱用コイルで発生される磁界から保護するための防磁装置、及び、その防磁装置を備えた電磁誘導加熱式調理器に利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 炊飯器(電磁誘導加熱式調理器)
4 加熱用コイル
10 フィルタ回路部
11 温度センサ
11a センサ部
11b 回路部
12 整流回路部
13 インバータ回路部
15 マイクロコンピュータ部
16 安定化電源回路部
17 カレントトランス部
18 フィルタ回路基板
19 金属板
20 金属線
21 主制御回路基板
23 交流電源
25 第1保護対象領域
26 第2保護対象領域
S 防磁装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導加熱式調理器の内部に設けられる複数の電気部品を、加熱用コイルで発生される磁界から保護するための防磁装置であって、
保護対象とする電気部品が設けられている複数の保護対象領域のうちの1以上の第1保護対象領域と前記加熱用コイルとの間にそれぞれ介装される1以上の金属板、及び、前記複数の保護対象領域のうちの他の1以上の第2保護対象領域の周囲の一部又は全部を囲い且つ前記磁界による磁束と鎖交するようにそれぞれ配置される1以上の金属線、を備える防磁装置。
【請求項2】
前記保護対象とする電気部品のうちの幾つかが搭載される基板を前記第1保護対象領域と前記第2保護対象領域とに区分して、前記磁束から保護する請求項1記載の防磁装置。
【請求項3】
前記金属線は前記第1保護対象領域及び前記第2保護対象領域の周囲に配置される請求項1又は2記載の防磁装置。
【請求項4】
前記金属線と前記金属板とは電気的に接続されている請求項1〜3の何れか一項に記載の防磁装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の防磁装置と、
金属製の発熱体と、
電磁誘導により前記発熱体に渦電流を発生させる前記加熱用コイルと、
交流電源から供給される交流電流を整流する整流回路部と、
前記整流回路部によって整流された後の電流を所定の高周波電流に変換して前記加熱用コイルに供給するインバータ回路部と、
前記交流電源と前記整流回路部との間の電気回路の途中に設けられて、所定の周波数範囲のノイズを除去するフィルタ回路部と、を備え、
前記金属板は前記第1保護対象領域としての前記フィルタ回路部と前記加熱用コイルとの間に介装される電磁誘導加熱式調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−103248(P2011−103248A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258214(P2009−258214)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】