説明

防腐力増強剤

【課題】 防腐剤が低濃度であっても高い防腐力を発現させる防腐力増強剤、それを含有する防腐力増強組成物、及び防腐剤の防腐力増強方法を提供すること。
【解決手段】 (1)両親媒性ガラクトース誘導体(A)を有効成分として含有する、防腐剤の防腐力増強剤、(2)両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%及び防腐剤(B)0.01〜1.0質量%を含有する防腐力増強組成物、及び(3)防腐剤組成物中に、両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%と防腐剤(B)を共存させる防腐剤組成物の防腐力増強方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防腐剤が低濃度であっても高い防腐力を発現させる防腐力増強剤、それを含有する防腐力増強組成物、及び防腐剤の防腐力増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、医薬品、医薬部外品、食品等の製品には、製品の製造時や保存時における防腐防黴性を確保するために、従来よりパラオキシ安息香酸エステル類(略称、パラベン類)、安息香酸及びその塩類、サリチル酸及びその塩類、2−フェノキシエタノール、多価アルコール類等の防腐剤が配合されている。
これらの中でも特にパラベン類等は、化粧料等において有効性の高いものとして汎用されているが、肌の敏感な使用者の中には、これらの防腐剤に対して皮膚刺激感を訴える人が存在する。また、化粧料等の分野では、肌に優しくより安全性の高い製品を求める傾向が一層高まっていることから、パラベン類や2−フェノキシエタノール等の防腐剤の配合量を低減しようとする試みが行われている。
【0003】
例えば、1,2−ペンタンジオールと2−フェノキシエタノールを含む外用組成物(特許文献1)、糖アルコール類及び/又は糖類を有効成分とするカチオン荷電を有する殺菌力増強剤(特許文献2)、パラベン類と、1,2−ペンタンジオールや1,2−ヘキサンジオール等の1,2−アルカンジオール類とを組み合わせた防腐殺菌剤(特許文献3)、1,2−アルカンジオール類又はこれにパラベン類と2−フェノキシエタノール等を組み合わせた防腐殺菌剤(特許文献4)、五単糖又はその糖アルコールを有効成分とする抗菌防黴助剤(特許文献5)、防腐剤と1,2−デカンジオールを含有する防腐剤組成物(特許文献6)が提案されている。
また、1,3−プロパンジオールは、パラベン類等の防腐剤や抗菌性を持つグリセリン誘導体(例えばモノ脂肪酸グリセリンエステル、モノ脂肪酸ポリグリセリンエステル等)、低級アルコール等と組み合わせて用いることにより、これらの防腐剤、抗菌性化合物の配合量を低減できることが知られている(特許文献7)。
【0004】
このように、防腐剤の配合量低減について種々報告されているが、防腐剤と他物質との併用による防腐力の増強効果は未だ満足できるものではなく、防腐剤の総使用量を有意に低減できていないのが実情である。
また、パラベン類を界面活性剤と共存させると、一般に界面活性剤が水中で形成するミセル中にパラベン類が取り込まれ、その有効濃度が低下すること(不活化現象)が知られている。パラベン類の不活化現象はO/W型エマルション等の乳化系でも認められるが、この不活化現象を効果的に抑制する方法も未だ見出されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平10− 53510号公報
【特許文献2】特開平10−330793号公報
【特許文献3】特開平11−310506号公報
【特許文献4】特開平11−322591号公報
【特許文献5】特開2002−302404号公報
【特許文献6】特開2004−352688号公報
【特許文献7】特開2005−15401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、防腐剤が必要な防腐系において、防腐剤が低濃度であっても高い防腐力を発現させる防腐力増強剤、それを含有する防腐力増強組成物、及び防腐剤の防腐力増強方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、両親媒性ガラクトース誘導体が、それ単独では防腐力がないが、パラベン類等の防腐剤と併用することにより、防腐剤を不活化する界面活性剤が存在する系においても、防腐剤の防腐力を顕著に高め、防腐剤の配合量を大幅に低減することができ、その結果として、刺激性が低くかつ十分な防腐効果が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、
〔1〕両親媒性ガラクトース誘導体(A)を有効成分として含有する、防腐剤の防腐力増強剤、
〔2〕両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%、及び防腐剤(B)0.01〜1.0質量%を含有する防腐力増強組成物、及び
〔3〕防腐剤組成物中に、両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%と防腐剤(B)を共存させる防腐剤組成物の防腐力増強方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、両親媒性ガラクトース誘導体を防腐剤と共存させることで、パラベン類等の防腐剤の防腐力を著しく高めることができ、防腐剤の総使用量を有意に低減することができる。また、防腐剤濃度が低濃度であっても、また界面活性剤が共存しても十分な防腐力を発現させることができる。その結果、皮膚に対する刺激性が少ない製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(防腐力増強剤)
本発明の防腐力増強剤は、両親媒性ガラクトース誘導体(A)を有効成分として含有する。ここで、「防腐力増強剤」とは、その化合物自体には防腐力が全くないか、又はあっても僅かであるにもかかわらず、防腐剤と共存させることにより、防腐剤の防腐力を高める作用のあるものをいう。
また、本発明において、「防腐力」とは、細菌、黴、酵母等の汚染微生物全てに対する防御力を意味し、防黴の概念を包含する。
【0010】
本発明の両親媒性ガラクトース誘導体(A)とは、親水性と疎水性の両方の性質を有するガラクトース誘導体をいい、具体的には、末端にガラクトース残基を有する天然ガラクト脂質やその類縁体、末端にガラクトース残基を有するアルキルグリコシド等の合成ガラクト脂質等が挙げられる。
末端にガラクトース残基を有する天然ガラクト脂質やその類縁体としては、例えば、モノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)、スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)等のグリセロ糖脂質、ガラクトシルセラミド、ラクトシルセラミド等のグリコシルセラミド類、及び特開平6−80545号公報に記載された、3−(オクチルオキシ)−2−ヒドロキシプロピル−β−D−ガラクトピラノシド、3−(N,N−ジブチルアミノ)−2−ヒドロキシプロピル−β−D−ガラクトピラノシド等、及びそれらの混合物が挙げられる。
なお、グリセロ糖脂質とは、グリセロールの骨格構造を基にする糖脂質で、加水分解により糖及び脂質を生ずるものである〔Trends in Glycoscience and Glycotechnology, Vol.12, No.66, pp.241-253(Forum: Carbohydrates Coming of Age, July 2000)「光合成生物のグリセロ糖脂質−その生合成と進化的起源−」参照〕。
【0011】
これらの中では、特に下記式(1)で表されるアルキルガラクトシドが好ましい。
R−O−(G)n (1)
(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数6〜26の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Gは、ガラクトース残基を示し、nは、1〜20の整数を示す。)
上記式(1)で表されるアルキルガラクトシドは、炭素数6〜26のアルキル基に1以上のガラクトース残基がα−配置もしくはβ−配置でグリコシド結合した化合物である。
【0012】
上記式(1)中、Rのアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよく、その炭素数は8〜22が好ましく、10〜20がより好ましい。具体的にはn−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、イソステアリル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2―オクチルドデシル基、2−デシルテトラデシル基等が挙げられる。
これらの中では、防腐助剤としての効果の観点から、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、2―オクチルドデシル基が好ましい。
Gのガラクトース残基には、ピラノース型、フラノース型、又はそれらの混合物のいずれもが含まれる。
nは、好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜6の整数である。(G)nは、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、その他のオリゴサッカライドであってもよく、その結合様式は、マルトース型であっても、トレハロース型であってもよい。
【0013】
上記式(1)で表されるアルキルガラクトシドの好適例としては、α,β−n−デシルガラクトシド、α,β−n−ドデシルガラクトシド、α,β−n−テトラデシルガラクトシド、α,β−n−ヘキサデシルガラクトシド、α,β−2−ヘキシルデシルガラクトシド、α,β−2―オクチルドデシルガラクトシド等が挙げられる。これらのアルキルガラクトシドは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記式(1)で表されるアルキルガラクトシドは、D−ガラクトースをアセチル化−ハロゲン化−アルコール縮合化−脱アセチル化する方法〔堀了平、池上佳彦、「糖誘導体の合成並びに薬剤学的研究(第5報)、Alkyl Galactosides 並びに Alkyl Glucoside 類の合成」、薬学雑誌、Vol.79、No.1、p80-83(1959)参照〕、及び後記の製造例に示す方法等により製造することができる。
【0014】
(防腐力増強組成物及び防腐力増強方法)
本発明の防腐力増強組成物は、両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%と防腐剤(B)0.01〜1.0質量%を含有する。また、本発明の防腐力増強方法は、両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%を、防腐剤(B)と共存させることが特徴である。
ここで、「防腐力増強組成物」とは、防腐剤が配合された組成物であって、前記両親媒性ガラクトース誘導体(A)の添加によって防腐剤の防腐力が高められる組成物をいう。
【0015】
本発明において防腐剤(B)とは、微生物の増殖を抑制し、製品の微生物的変質を防止する目的で、化粧料、医薬品、医薬部外品、洗浄剤、食品等に添加されるものをいい、一般に防腐剤として使用されるものの他に、抗菌又は殺菌性能を有する物質を含む。
用いることができる防腐剤(B)には特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。例えば、パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン類)の他、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、p−トルエンスルホン酸及びそれらの塩類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン類)は、炭素数1〜4のアルキル基を有する低級アルキルエステル類であって、パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、パラオキシ安息香酸エチル(エチルパラベン)、パラオキシ安息香酸ブチル(ブチルパラベン)等が含まれる。安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、p−トルエンスルホン酸の塩類としては、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩が挙げられる。
これらの防腐剤(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
これらの防腐剤(B)の中では、両親媒性ガラクトース誘導体(A)との併用による防腐力向上の観点から、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸、安息香酸アルカリ金属塩、フェノキシエタノールが好ましい。中でも、防腐剤の少量適用及び皮膚低刺激性の観点から、特に、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等のパラオキシ安息香酸エステル、及び2−フェノキシエタノールから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0017】
また、抗菌又は殺菌性能を有する物質としては、グリセリン誘導体、アルカンジオール、低級アルコール等が挙げられる。
グリセリン誘導体としては、モノ脂肪酸グリセリンエステル、モノ脂肪酸ポリグリセリンエステル、及びモノアルキルグリセリルエーテルが挙げられる。
モノ脂肪酸グリセリンエステルとしては、炭素数6〜14、好ましくは炭素数8〜12の飽和脂肪酸のモノグリセリンエステルが好ましく、例えば、モノカプリル酸グリセリンエステル、モノカプリン酸グリセリンエステル、モノラウリン酸グリセリンエステル等が挙げられる。
モノ脂肪酸ポリグリセリンエステルとしては、炭素数6〜14、好ましくは炭素数8〜12の飽和脂肪酸のポリグリセリン(重合度2〜12、好ましくは重合度3〜10)のエステルが好ましく、例えば、モノラウリン酸ペンタグリセリンエステル、モノラウリン酸デカグリセリンエステルが挙げられる。
モノアルキルグリセリルエーテルとしては、例えば、モノオクチルグリセリルエーテル、モノ−2−エチルヘキシルグリセリルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、特にモノカプリル酸グリセリンエステル、モノカプリン酸グリセリンエステル、モノラウリン酸デカグリセリンエステル、モノラウリン酸ペンタグリセリンエステル、モノオクチルグリセリルエーテルが好ましい。
【0018】
アルカンジオールとしては、炭素数2〜12のものが好ましく、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。これらの中では、特に炭素数2〜6のものが好ましい。
低級アルコールとしては、炭素数1〜4のものが好ましく、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、各種ブタノール等が挙げられる。
【0019】
本発明の防腐力増強組成物及び防腐力増強方法における、両親媒性ガラクトース誘導体(A)の含有量は、0.01〜30質量%であり、好ましくは0.05〜5質量%、特に好ましくは0.05〜2質量%である。
防腐力増強組成物における防腐剤(B)の配合量は、商品の特徴、必要とされる防腐力に応じて適宜決定することができるが、通常0.01〜1.0質量%、好ましくは0.05〜0.8質量%である。本発明においては、防腐剤(B)を両親媒性ガラクトース誘導体(A)と組み合わせることにより、適切な防腐力を維持しつつ、防腐剤の大幅な削減が可能となる。従って、本発明の防腐力増強組成物は、肌の敏感な人でも安心かつ安全に使用することができる。
【0020】
本発明の防腐力増強剤、防腐力増強組成物は、防腐力を必要とする各種の広範な組成物、製品に有効に適用できる。かかる組成物、製品としては、基礎化粧料,メーキャップ化粧料、毛髪用化粧料等の化粧料、皮膚外用剤等の医薬品、医薬部外品、洗浄剤、食品等が挙げられる。
また、その使用目的に応じて、一般に配合される他の成分、例えば液体又は固体油分、高級脂肪酸、アルコール類、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、保湿剤、着色剤、香料等を、本発明の目的を阻害しない範囲内で適宜添加することができる。
本発明の防腐力増強剤、防腐力増強組成物の使用形態に特に制限はなく、水溶液系、可溶化系、乳化系、ゲル系、ペースト系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等の各種形態で利用できる。
【実施例】
【0021】
製造例1(α,β−n−ドデシルガラクトシドの製造)
D−ガラクトースとn−ドデシルアルコールを、触媒量のパラトルエンスルホン酸1水和物の存在下で、加熱、減圧条件で脱水しながら反応させた。得られた混合物をシリカゲルカラムにより精製し、ガラクトース縮合度1〜3のn−ドデシルガラクトシドを得た。ゲル浸透クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、1H−NMRによる分析の結果、得られたα,β−n−ドデシルガラクトシドの平均糖縮合度は1.48であり、成分中のn−ドデシルモノガラクトシドの組成は、ピラノシド/フラノシド=83/17、そのうちピラノシドのα/β比は75/25であった。
【0022】
製造例2(α,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドの製造)
製造例1と同様にして、ヘキシルデシルアルコールを原料として、α,β−ヘキシルデシルガラクトシドを得た。
【0023】
実施例1及び比較例1〜2(防腐剤組成物)
製造例1で得られたα,β−n−ドデシルガラクトシドを用いて、下記表1に示した処方(質量%)の防腐剤組成物(pH6.5)を調製し、下記の抗菌性試験を行った。結果を表1に示す。
【0024】
抗菌性試験
下記に示す菌種を用いて、108CFU/ml(菌数又は胞子数)となるように生理食塩水に懸濁した菌液0.005mLを108CFU/mlとなるように被験組成物5mLに接種し、30℃で一定期間保温した際の菌数の経時的な変化をコロニーカウント法により算出し、抗菌性を4段階で評価した。
【0025】
使用した菌種:
スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus IFO13276)
エシェリア コリ(Escherichia coli IFO3972)
シュードモナス エアルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa IFO13275)
抗菌性評価基準:
◎:抗菌性が十分に高い(菌数が104オーダー以上減少)
○:抗菌性が高い(菌数が103〜102オーダー減少)
△:抗菌性が低い(菌数が102〜101オーダー減少)
×:抗菌性がない(菌数がほとんど変化なし又は増加)
【0026】
【表1】

【0027】
表1より、両親媒性を有するα,β−n−ドデシルガラクトシドは、単独では抗菌性がないが、防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)との併用により、防腐力を増強したことが分る。
【0028】
実施例2及び比較例3〜6(防腐剤組成物)
製造例2で得られたα,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドを用いて、下記表2に示した処方(質量%)の防腐剤組成物(pH6.5)を調製し、実施例1と同様の抗菌性試験を行った。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2より、両親媒性を有するα,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドは、単独では抗菌性がないが、防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)との併用により、非イオン界面活性剤〔ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油〕により不活化されたパラオキシ安息香酸メチルの防腐力を特異的に増強したことが分る。
【0031】
実施例3及び比較例7〜9(防腐剤組成物)
製造例2で得られたα,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドを用いて、下記表3に示した処方(質量%)の防腐剤組成物(pH6.5)を調製し、下記の防腐性試験を行った。結果を表3に示す。
【0032】
防腐性試験
下記に示す菌種を用いて、108CFU/ml(菌数又は胞子数)となるように生理食塩水に懸濁した菌液0.005mLを108CFU/mlとなるように被験組成物50gに接種し、30℃で28日間保存した際の菌数の経時的な変化をコロニーカウント法により算出し、防腐剤組成物の防腐性を4段階で評価した。
【0033】
使用した菌種:
スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus IFO13276)
エシェリア コリ(Escherichia coli IFO3972)
シュードモナス エアルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa IFO13275)
アスペルギウス ニガー(Aspergillus niger IFO6341)
ぺニシリウム シトリナム(Penicillium citrinum IFO 6352)
クラドスポリウム クラドスポロイデス(Cladosporium cladosporoides IFO6348)
【0034】
防腐性評価基準:
◎:高い防腐性を有する
○:防腐性を有する
△:ほとんど防腐性を有しない
×:全く防腐性を有しない
【0035】
【表3】

【0036】
表3より、両親媒性を有するα,β―2−ヘキシルデシルガラクトシドだけが防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)の防腐力を増強したことが分る。
【0037】
実施例4、5、及び比較例10、11(防腐剤組成物)
製造例2で得られたα,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドを用いて、下記表4に示した処方(質量%)の防腐剤組成物(pH6.5)を調製し、実施例1と同様の抗菌性試験を行った。結果を表4に示す。
【0038】
【表4】

【0039】
表4より、両親媒性を有するα,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドが、非イオン界面活性剤(エマレックスRWIS−160)により不活化された防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)の防腐力を増強したことが分る。
【0040】
実施例6及び比較例12〜14
製造例2で得られたα,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドを用いて、下記表5に示した処方(質量%)の乳液を下記方法により製造し、得られた乳液についてpH6.5、30℃で14日間、実施例3と同様の防腐性試験を行った。結果を表5に示す。
【0041】
(乳液の製造)
室温にて成分(10)を成分(9)に溶解させた溶液を、成分(11)〜(15)、(17)及び(18)を加熱し均一溶解させた水溶液に添加し、これを成分(1)〜(8)及び(16)を加熱溶解した溶液の中に徐々に添加してホモミキサーにて攪拌、冷却して乳液とした。
【0042】
【表5】

【0043】
表5より、両親媒性を有するα,β―2−ヘキシルデシルガラクトシドが乳液の防腐力を増強したことが分る。また、得られた乳液は、皮膚に対する刺激性が少ないものであった。
【0044】
実施例7及び比較例15
製造例2で得られたα,β−2−ヘキシルデシルガラクトシドを用いて、下記表6に示した処方(質量%)の乳液を下記方法により製造し、得られた乳液についてpH6.5、30℃で14日間、実施例3と同様の防腐性試験を行った。結果を表6に示す。
(クリームの製造)
室温にて成分(12)を成分(11)に溶解させた溶液を、成分(13)〜(18)及び(20)を加熱し均一溶解させた水溶液に添加し、これを成分(1)〜(10)及び(19)を加熱溶解した溶液の中に徐々に添加してホモミキサーにて攪拌、冷却して乳液とした。
【0045】
【表6】

【0046】
表6より、両親媒性を有するα,β―2−ヘキシルデシルガラクトシドを含む実施例7の乳液は強い防腐力を有していたことが分る。また、得られた乳液は、皮膚に対する刺激性が少ないものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性ガラクトース誘導体(A)を有効成分として含有する、防腐剤の防腐力増強剤。
【請求項2】
両親媒性ガラクトース誘導体(A)が、下記式(1)
R−O−(G)n (1)
(式中、Rは、置換されていてもよい炭素数6〜26の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Gは、ガラクトース残基を示し、nは、1〜20の整数を示す。)
で表されるアルキルガラクトシドである請求項1に記載の防腐力増強剤。
【請求項3】
前記式(1)で表されるアルキルガラクトシドが、α,β−n−デシルガラクトシド、α,β−n−ドデシルガラクトシド、α,β−n−テトラデシルガラクトシド、α,β−n−ヘキサデシルガラクトシド、α,β−2−ヘキシルデシルガラクトシド、α,β−2―オクチルドデシルガラクトシドから選ばれる1種以上である請求項2に記載の防腐力増強剤。
【請求項4】
両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%、及び防腐剤(B)0.01〜1.0質量%を含有する防腐力増強組成物。
【請求項5】
防腐力増強組成物が、化粧料、医薬品、医薬部外品、洗浄剤、食品のいずれかに適用されるものである請求項4に記載の防腐力増強組成物。
【請求項6】
防腐剤組成物中に、両親媒性ガラクトース誘導体(A)0.01〜30質量%と防腐剤(B)を共存させる防腐剤組成物の防腐力増強方法。


【公開番号】特開2006−241064(P2006−241064A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58634(P2005−58634)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】