説明

防食塗料およびこれを塗布した金属材料

【課題】腐食性物質に対する遮蔽性および柔軟性に優れた塗膜を形成でき、防食性と耐久性を具備する防食塗料を提供する。
【解決手段】多価フェノールにエポキシ基を有するレゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂又はフロログルシノールトリグリシジルエーテル樹脂等のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、充填剤、及び硬化剤を含むことを特徴とする防食塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食性と耐久性に優れる防食塗料に関する。更には、硫化水素、塩化水素などの腐食性物質が存在する環境に好適に使用できる防食塗料並びに該防食塗料を備えた金属材料に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製プラントや石油化学プラントなどをはじめとする化学装置においては、装置を所望により数年間という長時間にわたって連続運転する場合があるが、例えば硫化水素や塩化水素などの腐食性物質に晒される装置の内面を、少なくともそのような連続運転期間に亘って腐食から守るということが重要である。
【0003】
そのような防食方法として良く用いられる方法としては、例えば、装置の金属材料表面に金属溶射による防食被膜を施したり、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂を用いた防食コーティングを施すことが行われる。
【0004】
金属溶射は、酸素アセチレン炎のような高温の燃焼炎、或いはアーク放電などにより、溶射しようとする金属を溶融させ、圧縮空気により溶融金属微粒子(酸化被膜に覆われている)を防食しようとする金属構造体(基材)の表面に吹き付け、基材の表面上に皮膜を形成させるものである。このようにして形成された被膜の構造は、溶射粒子が部分的に溶融した部分、酸化皮膜などを挟んで密着している部分、溶融が不完全であった金属粒子が存在する部分などが存在する不均一な構造となっている。更には、溶射被膜の内部には多くの気孔が存在するため、気孔を介在して腐食物質が基材の表面まで到達し腐食の要因となるだけではなく、溶射膜の破損や剥離の要因にもなる。
【0005】
樹脂系の防食コーティングは、施工が比較的容易であり、コスト的にも安価であることから、使用環境に応じて種々の樹脂が選定され、広く用いられている。しかしながら、樹脂系のコーティング材の場合も、硫化水素などの腐食性物質が塗膜を透過することにより、塗膜と基材との接着性が低下したり、基材に腐食が発生したりする原因となる。また、使用環境において樹脂が劣化することなどにより、塗膜自体に多少なりとも収縮や膨張が生じ、塗膜の亀裂や剥離の原因となる。このため、腐食性物質の遮蔽性を改善したり、基材との接着性や皮膜の耐久性を向上させるための開発が行われている(例えば、特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開平8−267661号公報
【特許文献2】特開平10−259355号公報
【特許文献3】特開2004−322573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属溶射は比較的高温の環境においても適用可能であるが、コストが高いため実際の適用は限られているのが現状である。
【0007】
樹脂系の防食コーティングにおいては、腐食性物質の遮蔽性を向上させるためには、例えば塗膜自体のガラス転移温度を高くすることが考えられるが、ガラス転移温度の高い塗膜は収縮、膨張などが生じた場合それを吸収する作用が弱くなるので、塗膜の剥がれや亀裂、膨れなどが発生しやすくなるという問題が生じる。一方、塗膜を収縮や膨張を吸収できるように柔軟性を持たせようとすると、腐食性物質の遮蔽性が悪くなると言う問題が生じる。このようなことから、硫化水素、塩化水素などを含有する湿潤状態の環境下において塗膜の耐久性と防食性を両立させることは難しく、装置の内部を解放せずに長期間の連続運転を行う石油精製プラントや石油化学プラントなどへの適用において、満足するものが得られていないのが現状である。
本発明は、このような状況の下に腐食性物質に対する遮蔽性および柔軟性に優れた塗膜を形成でき、防食性と耐久性を具備する防食塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために、塗膜における腐食性物質の遮蔽(透過)性や塗膜の柔軟性に関して鋭意検討したところ、特定のエポキシ樹脂と充填材、硬化剤及び硬化促進剤を用いることにより、腐食性物質の遮蔽性と耐久性に優れた防食コーティングを与えることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、充填剤、及び硬化剤を含む防食塗料。
[2] 多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂が、レゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂又はフロログルシノールトリグリシジルエーテル樹脂である上記[1]に記載の防食塗料。
[3] 多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂との配合比が、重量比で9:1〜4:6である、上記[1]又は[2]に記載の防食塗料。
[4] 充填剤の少なくとも一部が、表面に存在する水酸基の少なくとも一部が多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂により修飾されている充填剤及び/又は表面に存在する水酸基の少なくとも一部がビスフェノールF型エポキシ樹脂により修飾されている充填剤である、上記[1][3]のいずれかに記載の防食塗料。
[5] 充填剤が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の防食塗料。
[6] 金属材料の表面に、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の防食塗料の硬化膜を備えた金属材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のエポキシ樹脂を用いているため、塗膜における腐食性物質の遮蔽性と塗膜の柔軟性とに優れ、防食性と耐久性に優れた、硫化水素などの腐食性物質が存在する環境に好適に使用できる防食塗料、及び該防食塗料を備えた金属構造体を提供できる。
また、本発明によれば、充填剤とエポキシ樹脂との親和性を向上させているので、この面からも、腐食性物質の遮蔽性と塗膜の柔軟性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)エポキシ樹脂
本発明で使用するエポキシ樹脂は、多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂、及びビスフェノーF型エポキシ樹脂の2種類のエポキシ樹脂を用いることが重要である。
多価フェノールにエポキシ樹脂を有するエポキシ樹脂としては、多価フェノールのOH基の全てにエポキシ基を含む有機基が導入されたエポキシ樹脂が好ましく、例えばレゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂、フロログルシノールトリグリシジルエーテル樹脂等が挙げられる。特に、レゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂が入手の容易さ等から好ましい。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂が好ましい。
【0012】
多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂は、塗膜の緻密性を向上させることに寄与し、ビスフェノールF型エポキシ樹脂は、屈曲した分子構造であるため塗膜に対して柔軟性を付与することに寄与する。従って、これらのエポキシ樹脂を適切な比率で混合して用いることにより、硫化水素、塩化水素などの腐食性物質の透過性が低くなり防食性が向上する。加えて、温度変化や塗膜の劣化などによる塗膜の膨張・収縮を吸収することができるため耐久性が向上する
多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との配合比は、重量比で、9:1〜4:6が好ましく、7:3〜4:6であることがより好ましい。
【0013】
また、上記の2種類のエポキシ樹脂は、それぞれ予め充填剤と混合されている混合物として用いることが好ましい。特には、エポキシ樹脂と充填剤が混合された混合物であって、且つ該混合物中の充填剤の少なくとも一部は、表面に存在する水酸基の少なくとも一部が、該エポキシ樹脂で修飾されている、エポキシ樹脂・充填剤混合物として用いることが好ましい。即ち、多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂により少なくとも一部修飾された充填剤を含む多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂・充填剤混合物及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂により少なくとも一部修飾された充填剤を含むビスフェノールF型エポキシ樹脂・充填剤混合物として用いることが好ましい。
このようなエポキシ樹脂・充填剤混合物は、充填剤がエポキシ樹脂で修飾されているため、充填剤とエポキシ樹脂との親和性が高くエポキシ樹脂との接着性が向上するため、塗膜とした際の緻密性が向上するため、硫化水素などの腐食性物質の遮蔽性が向上され、防食性に優れた塗膜が得られる。また、塗膜中で充填剤とエポキシ樹脂との界面で剥離が生ずると、その部分が腐食性物質の透過経路となるため、腐食発生並びに塗膜の耐久性低下の原因となるが、本発明では充填剤とエポキシ樹脂との接着性が向上しているため、充填剤とエポキシ樹脂との界面の剥離による防食性と耐久性の低下を防止することができる。
【0014】
(2)充填剤
本発明における充填剤としては、金属酸化物を用いる。例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化モリブデンを例示することができる。より好ましくは、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタンであり、更にはシリカ、アルミナが好ましい。これらの充填剤を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0015】
充填剤の粒径は、10μmを超える粒子を含まないことが好ましく、平均粒径としては5μm以下が好ましい。粒径が大きい場合は、十分に緻密な塗膜が得られず、硫化水素などの腐食性物質が浸透しやすくなるので好ましくない。形状は、球状が好ましい。破砕状の場合は、塗膜の緻密性に劣る場合がある。
【0016】
上記のように、これらの充填剤は、表面に存在する水酸基の少なくとも一部がエポキシ樹脂により修飾されたものを含む、エポキシ樹脂・充填剤混合物として用いることが好ましい。
エポキシ樹脂・充填剤混合物中の充填剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、30〜200重量部が好ましく、60〜150重量部がより好ましい。30重量部未満では塗膜の硬度が低く、耐久性が十分でない。200重量部を超える場合は塗膜の硬度が高すぎるため、膜の割れや剥離の点で好ましくない。
充填剤の表面の少なくとも一部の水酸基が上記のエポキシ樹脂で修飾されているエポキシ樹脂・充填剤混合物は、例えば、米国特許第5,026,816号公報及び第5,169,912号公報などに記載の方法に基づき得ることができる。
【0017】
(3)硬化剤、硬化促進剤
硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン類;ジアミノジシクロヘキシルメタンなどの環状脂肪族ポリアミン類;m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンなどの芳香族ポリアミン類;これらポリアミン類のエポキシ付加物、マンニッヒ反応物、ミカエル反応物、チオ尿素反応物などの変性アミンがあげられる。これらのうち、m―フェニレンジアミン、1,3―ビス(アミノメチル)ベンゼンなどの芳香族ポリアミン類並びにこれら芳香族ポリアミン類のエポキシ付加物、マンニッヒ反応物、ミカエル反応物、チオ尿素反応物などの変性アミンが好ましく使用できる。これらを単独又は2種以上混合して使用する。硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂の硬化に必要な量で使用されるが、エポキシ樹脂のエポキシ官能基に対応する量を使用することが好ましい。この値からはずれた場合は、樹脂硬化物の特性が低下する。硬化促進剤としては、例えば、ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4’―ヒドロキシフェニル)プロパンなどのポリフェノール類;イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。これらを単独又は2種以上混合して使用する。硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部が必要に応じ用いられる。
【0018】
(4)溶剤
本発明の防食塗料は、粘度調整の目的で溶剤を用いることができる。溶剤としては、2−プロパノールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、エトキシエタノールなどのセルソルブ系溶剤、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤を用いることができる。
これらを単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0019】
(5)塗布方法
本発明の防食塗料は、上記の2種類のエポキシ樹脂、充填剤、硬化剤及び硬化促進剤を、より好ましくは2種類のエポキシ樹脂・充填剤混合物、硬化剤及び硬化促進剤を混合して防食塗料として用いる。この防食塗料を金属部材へ塗布する方法としては、刷毛塗り、スプレーコート、ロールコート、ディップコート、バーコートなど何れの方法も好ましく適用できる。
金属部材に塗布後、乾燥、硬化させて、金属表面に防食塗料の膜を形成させる。塗膜の厚さとしては、通常、100〜500μm程度とすることが好ましい。
金属部材の表面は、予め、グラインダー、サンドブラストなどにより腐食や汚れを落としておくことが好ましい。また、本発明の防食塗料を塗布に先立ち、金属部材と塗膜との密着性の改善などの目的で、清浄化された金属部材表面に対して、例えば、シラン系カップリング剤等を用いて表面処理を行っても良い。
【0020】
(6)適用対象
本発明の防食塗料の適用対象金属部材は、特に制限されるものではなく、防食を要する金属部材一般に対して有用であるが、例えば、橋梁、石油精製プラント、石油化学プラントなどの金属部材、特に鋼材に対して好適に用いることができる。
【0021】
また、硫化水素、塩化水素など腐食性物質及び水分の存在する環境において、優れた防食性と耐久性を有する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されないことは言うまでもない。
[実施例1]
レゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂で表面修飾されているシリカを充填剤として含む、レゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂(エポキシ樹脂A)・シリカ混合物(シリカ含有量約50重量%、シリカ平均粒径2.9μm、粘度680mPa・s)を6重量部、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂で表面修飾されているシリカを含む、ビスフェノールFジグリシジルエーテル樹脂(エポキシ樹脂B)・シリカ混合物(シリカ含有量約50重量%、シリカ平均粒径2.9μm、粘度12750mPa・s)を4重量部、硬化剤(1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼンと促進剤ジヒドロキシジフェニルメタンを含む混合物(モル比で10:1)を7.5重量部、2−メチルイミダゾールを2重量部を混合し、防食塗料を調製した。表面をサンドブラスト処理した炭素鋼のテストピース(50mm×30mm)に、この防食塗料をバーコータを用いて塗布し、常温で一昼夜乾燥させた。更に同様にして防食塗料を2回塗布し(3層塗布)、3層目を塗布後常温で1週間乾燥させた。乾燥後の塗膜の厚さは400μmであった。
【0023】
このようにして調製したテストピースを、ライニング試験器を用い、塩素を約35ppm、硫化水素を約50ppm含有するナフサ留分に、150℃で12日間浸漬した。
試験後、試験器から取り出したテストピース上の塗膜の外観を調べたところ、亀裂、膨れは認められなかった。
また、塗膜の密着性を評価するため、JIS K5400に準拠し、エルコメーター106(エルコメーター社)を用い引き剥がし強度を測定した。試験前と試験後の引き剥がし強度は、いずれも15.0MPaであり変化はみられなかった。
【0024】
[比較例1]
実施例1と同じ炭素鋼のテストピースの表面をサンドブラスト処理した後、金属溶射(33材、HsB、及び酸化チタンの3層溶射)により防食被膜を形成した。溶射被膜の厚さは約300μmであった。このテストピースを用いて、実施例1と同様にして腐食試験を行った。
試験後のテストピース上の溶射膜には亀裂、膨れは認められなかったが、引き剥がし試験において、試験前は13.0MPaの強度であったものが、試験後には8.5MPaまで劣化していた。
【0025】
[実施例2]
実施例1と同様にして防食塗料の塗膜を備えたテストピースを調製した。このテストピースを、ライニング試験器を用いて、塩素イオンを80ppm含有する水溶液(塩酸水溶液、pH=1)に、130℃で1ヶ月間浸漬した。外観及び引き剥がし試験の結果を表1にまとめて示す。
【0026】
[比較例2]
エポキシ樹脂としてビスフェノールAジグリシジルエーテル樹脂を30重量部、充填材として鉄粉を35重量部、SiCを15重量部及びTiOを20重量部、硬化剤として、ジエチレントリアミンを21重量部及びイソホロンジアミンを29重量部、促進剤としてビスフェノールAを18重量部、溶媒としてベンジルアルコール32重量部を混合して、樹脂組成物−Cを調製した。表面をサンドブラスト処理した炭素鋼のテストピースに、前記樹脂組成物−Cをバーコートし、常温で1昼夜乾燥させた。更に樹脂組成物−Cを同様にして2回塗布した(合計3層)。その後、常温で1週間乾燥させた。乾燥後の塗膜の厚さは約400μmであった。
このテストピースを実施例2と同様にして、塩酸水溶液中に130℃で1ヶ月間浸漬した。外観及び引き剥がし試験の結果を、表1にまとめて示す。
【0027】
【表1】

【0028】
[実施例3〜6及び比較例3〜4]
エポキシ樹脂A・シリカ混合物及びエポキシ樹脂B・シリカ混合物の配合比を変えた他は実施例1と同様にしてテストピースを調製し、欠くテストピースの塗膜の耐久性を評価した。試験は、ライニングテスタ(山崎精機研究所製、LA−15型、小径アダプタSD−88付)を用いて、テストピースの塗膜面に95℃の温水を、炭素鋼面に20℃の水を、それぞれ接触させてテストピースに温度勾配をかけた状態で3日間保持した。試験後、塗膜の状態を目視にて観察した。
【0029】
エポキシ樹脂A・シリカ混合物及びエポキシ樹脂B・シリカ混合物の配合比を変えた他は実施例1と同様にして調製した防食塗料を、内径10cm×長さ9cmの炭素鋼製のモデル管の内側に刷毛により塗布し、常温で一晩乾燥させた。更に同様にして防食塗料を2回塗布し(3層塗布)、3層目を塗布後常温で1週間乾燥させた。乾燥後の塗膜の厚さは約400μmであった。このモデル配管内にスチームを流し、温度を160℃に保った状態で4日間保持した。試験終了後、塗膜の状態を目視にて観察した。
ライニングテスタの結果及びスチーム試験の結果を、まとめて表2に示す。なお、亀裂や膨れの発生がみられた場合を×、亀裂や膨れの発生がみられなかった場合を○として示した。
【0030】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、充填剤、及び硬化剤を含むことを特徴とする防食塗料。
【請求項2】
多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂が、レゾルシノールジグリシジルエーテル樹脂又はフロログルシノールトリグリシジルエーテル樹脂である請求項1に記載の防食塗料。
【請求項3】
多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂との配合比が、重量比で9:1〜4:6である請求項1又は2に記載の防食塗料。
【請求項4】
充填剤の少なくとも一部が、表面に存在する水酸基の少なくとも一部が多価フェノールにエポキシ基を有するエポキシ樹脂により修飾されている充填剤及び/又は表面に存在する水酸基の少なくとも一部がビスフェノールF型エポキシ樹脂により修飾されている充填剤である請求項1〜3のいずれかに記載の防食塗料。
【請求項5】
充填剤が、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の防食塗料。
【請求項6】
金属材料の表面に、請求項1〜5のいずれかに記載の防食塗料の硬化膜を備えた金属材料。

【公開番号】特開2008−38016(P2008−38016A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214154(P2006−214154)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【出願人】(304003860)株式会社ジャパンエナジー (344)
【Fターム(参考)】