説明

限外濾過量測定システム

【課題】血液透析の際に発生する限外濾過量の測定を迅速且つ効率的に行え、且つ、精度良く測定可能とする
【解決手段】流入側チューブ12aの上流側に配置された流入側振動子14aと、流入側チューブと同一の断面積の流出側チューブ12bの上流側に配置された流出側振動子14dとを、送波素子として駆動回路18により振動させ、伝搬時間取得部24にて取得された、流入側振動子14aから流入側振動子14bまでの波動の流入側伝搬時間と、流出側振動子14dから流出側振動子14cまでの流出側伝搬時間とを用いて、血液あるいは透析液の透析器への流入速度と透析器からの血液あるいは透析液の流出速度との差を算出し、得られた流速差を用いて透析器にて生じる限外濾過量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析の際に透析器にて除去される水分量(限外濾過量)を測定する限外濾過量測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に血液透析を行う際、透析器において患者の血液中の余分な水分が除去されるが、この除去される水分量(限外濾過量)は、血液回路又は透析回路における透析器への流入量と透析器からの流出量との差により測定される。ここで、この限外濾過量を測定する技術として、例えば下記特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、超音波振動子を備え且つ流入路を配備した流入用測定部と、同じく超音波振動子を備え且つ流出路を配備した流出用測定部とを設けると共に、両測定部間には、超音波を反射して伝達する反射器を介在させ、一方の測定部の超音波振動子から出た超音波が他方の測定部の超音波振動子に導かれるように構成された限外濾過量の測定装置について開示されている。そして、この測定装置では、一方の超音波振動子から他方の超音波振動子への超音波の伝搬時間と、他方の超音波振動子から一方の超音波振動子への超音波の伝搬時間との差を計測することにより、各測定部内における流体の流速を測定し、この流速に基づいて、流入量と流出量との差、即ち限外濾過量を測定している。
【0004】
ここで、一般的に、複数の患者に対して続けて血液透析を行う際には、その都度、透析器に接続される血液回路や透析回路のチューブを交換する必要があるが、上記構成の測定装置を用いた場合、この測定装置には、透析器への流入量と透析器からの流出量とを測定するための流入用測定部と流出用測定部が設けられているため、患者毎にチューブの交換を行う度にこれらの測定部を洗浄しなければならない。従って、複数の患者に対して続けて血液透析を行う等の場合には、上記のような構成の測定装置では、洗浄などの手間がかかり、効率的でないといった問題があった。
【0005】
一方、血液回路のチューブの外壁に超音波振動子等の振動子を取り付け、この振動子を用いてチューブ内の流量を測定する流量測定システムがある。この流量測定システムでは、チューブの外壁における上流側と下流側の二箇所に振動子が設置され、波動が上流側から下流側に伝搬するのに要した時間と下流側から上流側に伝搬するのに要した時間との時間差、及びこの波動の伝搬距離から、チューブ内の流速が測定される。そこで、チューブ内の流路の断面積と、得られた流速とにより、チューブ内を通過する流量(体積流量)が算出される。
【0006】
そして、このシステムを用いて、血液透析における限外濾過量の測定を行うことができる。具体的には、まず、例えば透析器に接続される透析回路において、透析器に透析液を流入する流入側チューブに上記の如く2個の振動子を設置し、透析液の流入量を測定する。次に、透析器から透析液を流出する流出側チューブに、同様に2個の振動子を設置して透析液の流出量を測定する。こうして個別に得られた流入量と流出量との差を求めることで、限外濾過量を求めることができる。
【0007】
また、このような測定方法によれば、使用するチューブの外壁に振動子を設置すればよいため、患者毎にチューブの交換を行う際に使用済みのチューブから振動子を取り外し、次に使用するチューブに振動子を取付け直すだけで良く、特許文献1に記載の技術のような手間を省くことができる。
【0008】
尚、このような測定技術においては、チューブの軸方向に対して傾斜した姿勢で当該チューブの外壁に当接した振動子を用いてチューブ内に斜めに波動を送波し、チューブ内壁で反射した波動をもう一つの傾斜配置した振動子で受波することにより、波動の伝搬時間を測定する等していた。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−286162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
透析回路において、透析液の体積流量は約500mL/分であり、これに対し、限外濾過量は約10mL/分であるが、例えば流量500mL/分に対して精度±1%程度である流量計を用い、流入量と流出量とを測定し、限外濾過量に相当する約10mL/分を差分で求めたとしても、得られる限外濾過量の精度は、統計的に、±1.4%×500mL÷10mL=±70%となってしまう。これは、測定流入量に含まれる誤差と、測定流出量に含まれる誤差の伝搬が生じ、限外濾過量の精度が低くなることを意味している。このように、個別に流入量と流出量を測定し、これらの差を求めて微少流量の限外濾過量を求める方式では、微少流量の限外濾過量を実用精度(例えば、約10mL/分に対して±3%程度)で測定するのは困難である。
【0011】
また、上記のようにチューブ内に斜めに波動を送波する方式では、チューブが細い場合には波動の伝搬距離が短くなるため、伝搬時間差を精度良く計測するのが難しいという問題がある。ここで、透析器に接続されるチューブはいずれも内径2〜4mm程度の細いチューブである。従って、このチューブ内に斜めに波動を送波する方式を用いた場合には、得られる流入量と流出量にかなりの測定誤差が含まれる可能性があり、限外濾過量のような微少流量を上記のような実用精度で測定することは一層困難であるといえる。
【0012】
本発明の目的は、血液透析の際に透析器にて発生する限外濾過量を測定するにあたり、容易に測定作業を行うことができ、且つ従来に比して精度良く限外濾過量を測定することが可能な限外濾過量測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の限外濾過量測定システムは、透析器に血液あるいは透析液を流入させるための流入側チューブの上流側及び下流側に、それぞれ配置される一対の流入側振動子と、透析器から血液あるいは透析液を流出させるための、流入側チューブと同一の断面積の流出側チューブの上流側及び下流側に、それぞれ配置される一対の流出側振動子と、流入側チューブ及び流出側チューブの上流側に配置される2つの振動子あるいは下流側に配置される2つの振動子を、送波素子として振動させる駆動回路と、検出素子として流入側チューブ及び流出側チューブの下流側に配置される2つの振動子あるいは上流側に配置される2つの振動子にて、前記送波素子として振動する各チューブの振動子からの波が各チューブ内の血液中あるいは透析液中を伝搬して検出されるまでの伝搬時間をそれぞれ取得する伝搬時間取得部と、を含み、伝搬時間取得部にて取得された、流入側チューブにおける流入側伝搬時間及び流出側チューブにおける流出側伝搬時間より、血液あるいは透析液の透析器への流入速度と透析器からの血液あるいは透析液の流出速度との差を算出し、得られた流速差を用いて透析器にて生じる限外濾過量を測定する構成とする。
【0014】
また、上記構成の限外濾過量測定システムにおいて、送波素子として機能する各振動子を、駆動回路により管軸方向に振動する板状振動子とし、その振動により、流入側チューブ及び流出側チューブ内の血液あるいは透析液に、管軸方向に伝搬する平面波を発生させる構成とすることが好ましい。
【0015】
さらに、上記構成の限外濾過量測定システムにおいて、一対の流出側振動子を、一対の流入側振動子と同一距離の間隔をあけて流出側チューブの上流側と下流側とに配置することが好ましい。
【0016】
また、上記構成の限外濾過量測定システムにおいて、一対の流入側振動子及び流出側振動子は、流入側チューブ及び流出側チューブをそれぞれ嵌脱自在に挟持する挟持部を有するクランプに装着される構成とすると良く、このクランプを、流入側チューブ及び流出側チューブをそれぞれ嵌脱自在に挟持する挟持部を有し、一対の流入側振動子及び流出側振動子を、狭持部により狭持された流入側チューブ及び流出側チューブの外壁に直接または間接的に当接させるように保持する構成にすると良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、血液透析の際に透析器にて発生する限外濾過量を測定するにあたり、例えば複数の患者に対して続けて血液透析を行う等の場合にも、測定準備に手間をかけることなく迅速且つ効率的な作業を行うことができる。また本発明によれば、測定された透析器への流入側伝搬時間と透析器からの流出側伝搬時間とから伝搬時間差を求め、その伝搬時間差に基づいて、透析器への流体の流入速度と流出速度との差を直接的に算出することができるため、流入量と流出量との差である微少流量の限外濾過量を、従来に比して精度良く測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る限外濾過量測定システム10の要部構成の一例を示す図である。
【0019】
本実施形態に係る限外濾過量測定システム10では、流入側チューブ12aの上流側及び下流側の外壁に一対の板状の振動子14a,14bがそれぞれ設けられると共に、流出側チューブ12bの上流側及び下流側の外壁にも、流入側チューブ12aと同様に一対の板状の振動子14c,14dがそれぞれ設けられている。各振動子14a〜14dは、例えば、その表裏面に電極が形成され、分極された圧電素子(ピエゾ素子)として構成される。また、流入側チューブ12aと流出側チューブ12bとの間には、各チューブ12a,12bを固定するための固定板16が配置され、この固定板16により、各チューブ12a,12bが測定中に動かないように固定されている。尚、本実施形態における流入側チューブ12aと流出側チューブ12bの流路の断面積は同一である。
【0020】
また、流入側チューブ12aの上流側に設けられた板状振動子14aと、流出側チューブ12bの上流側に設けられた板状振動子14dは、これらの板状振動子を送波素子として機能させる駆動回路18にそれぞれ接続されている。一方、流入側チューブ12aの下流側に設けられた板状振動子14bと、流出側チューブ12bの下流側に設けられた板状振動子14cは、送波素子として振動する板状振動子(流入側チューブ12aの上流側の板状振動子14aと、流出側チューブ12bの上流側の板状振動子14d)からの波動をそれぞれ受信する受波素子として、検出回路20にそれぞれ接続されている。
【0021】
ここで、この駆動回路18は、制御部22によって動作が制御される構成となっている。制御部22は、測定対象として流入側チューブ12aと流出側チューブ12bの何れか一方を選定し、選定された一方のチューブに設けられた一対の振動子の内、送波素子として機能する振動子を駆動回路18により振動させる制御を行う。そして、この振動により発生した波動は、選定されたチューブに設けられた一対の振動子の内、受波素子として機能する振動子で受信されることとなる。また、このように一方のチューブについて波動の送受信が終了すると、制御部22は、他方のチューブに設けられた一対の振動子に対して、同様の処理を行うべく駆動回路18を制御するように動作し、他方のチューブについても波動の送受信が行われることとなる。
【0022】
さらに、流入側チューブ12a及び流出側チューブ12bにおいて送受信される波動の各伝搬時間を取得する伝搬時間取得部24が、駆動回路18、検出回路20及び制御部22に接続されている。そして、この伝搬時間取得部24は、駆動回路18、検出回路20及び制御部22から取得した情報(波動の送受信時間に関する情報や、選定された測定対象のチューブはどちらかといった情報、等)に基づいて、各チューブ12a,12b内の流体において、送波素子として機能する振動子からの出力波動が受波素子として機能する振動子で受信されるまでの伝搬時間T(T1:流入側チューブ12a内の流体における波動の伝搬時間,T2:流出側チューブ12b内の流体における波動の伝搬時間)をそれぞれ計測する。そして、計測された伝搬時間のデータは、流量算出部26に送信される。
【0023】
流量算出部26は、例えば、流入側チューブ12a内の流体での波動の伝搬時間T1と、流出側チューブ12b内の流体での波動の伝搬時間T2との差ΔT(=|T1−T2|)を算出し、ここで得られた伝搬時間差ΔTを用いて、次の式
【数1】

から、透析器への流入量と透析器からの流出量との差である限外濾過量の流量Qを取得する(ここに、L:二つの振動子14間の距離、A(=π・d/4):各チューブ12a,12bの流路面積)。
【0024】
以上説明したように、上記構成によれば、流入側チューブ12aにおける流体の流入量と、流出側チューブ12bにおける流体の流出量とを個別に測定してその差を求めるという手順を行うことなく、流入量と流出量との流量差を直接的に求めることができる。従って、例えば血液透析の際に透析器にて発生する限外濾過量を測定する場合のように、この差流量(限外濾過量)が流入量(例えば、透析器に流入する透析液)及び流出量(例えば、透析器から流出する透析液)に比べて微少流量である場合には、直接的に限外濾過量を求めることができるため、従来のような誤差の伝搬による実用精度の低下を回避でき、流量差を精度良く測定することができる。
【0025】
尚、上記実施形態では、流入側チューブ12aの上流側の板状振動子14aと、流出側チューブ12bの上流側の板状振動子14dを駆動回路18にそれぞれ接続し、流入側チューブ12aの下流側の板状振動子14bと、流出側チューブ12bの下流側の板状振動子14cを検出回路20にそれぞれ接続しているが、駆動回路18と検出回路20に接続する振動子の組を反対にしても良い。即ち、流入側チューブ12aの下流側の板状振動子14bと、流出側チューブ12bの下流側の板状振動子14cを駆動回路18にそれぞれ接続し、流入側チューブ12aの上流側の板状振動子14aと、流出側チューブ12bの上流側の板状振動子14dを検出回路20にそれぞれ接続しても良い。
【0026】
また、本実施形態に係る限外濾過量測定システム10を、例えば血液透析の際に透析器にて発生する限外濾過量の測定に用いる場合、透析器に接続されるチューブはいずれも内径2〜4mm程度の細いチューブであることから、流入側チューブ12a及び流出側チューブ12bが音響管として機能するように、すなわち、振動子の振動によって生じる波動が流体中を主として管軸方向に平面波として伝搬するように構成することが好ましい。これについて、以下説明する。
【0027】
平面波は、比較的長い距離にわたって伝搬することができ、しかも管路の曲がりによる減衰が少ない。このような平面波を得るには、振動の周波数を、チューブ内の流体の半径方向の共振周波数のうち最低のものに比べて十分に低くする必要があり、チューブを円環状断面の剛管であると仮定した場合、振動の周波数fを、
【数2】

とする必要があることが知られている(ここに、c:流体中の音速、d:チューブの内径)。ここで、内径dが小さいほど右辺の値が大きくなり、式(1)の不等式の関係が得られやすいことがわかる。このように、平面波を伝搬させる方式は、比較的細いチューブ内の流量を計測するのに適していることがわかる。
【0028】
ところが、低い周波数を、振動子の厚み方向振動あるいは縦振動での共振周波数として得る場合には、振動子を大きくせざるを得ない。そこで、図2に示すように、板状の振動子の径方向振動あるいは横振動の共振周波数fが、厚み方向振動あるいは縦振動の共振周波数fより低くなることを利用する。こうすれば、比較的小型の振動子を用いても低い共振周波数を得ることができる。ここで、表裏面に電極が形成される円板状の振動子の径方向基本振動の共振周波数fは、
【数3】

となる。また、表裏面に電極が形成される矩形板状の振動子の横方向基本振動の共振周波数fは、
【数4】

となる。ただし、η:係数(=2.08;ただし、ポアソン比σE=0.35のとき)、D:円板状振動子の直径、Y11E:弾性係数、ρ:密度である。なお、添え字11は、面方向(拡がり方向)を意味し、添え字は電界E=一定の条件にあることを意味する。
【0029】
即ち、本実施形態に係る限外濾過量測定システム10では、径方向振動あるいは横振動の共振として、上記式(1)を満たす周波数の振動を得ることで、細いチューブの流量を、比較的小型の振動子を用いて、より精度良く計測することを可能とする。一例として、一辺の長さa=8mmの矩形状の振動子の径方向振動の共振周波数は、式(3)から、f=220×10Hzとなる。ここで、式(1)を変形すると、
【数5】

となり、この式(4)の右辺は、流体中の音速cを1500m/secとすると、0.586×1500[m/sec]/(220×10[Hz])×10≒4mmとなる。すなわち、一辺の長さaが8mmの矩形状の振動子の径方向振動を利用する場合、式(4)より、内径dが4mm以下のチューブに対しては、管軸方向に伝搬する平面波が得られることがわかる。尚、内径dが6mm以下のチューブについては、矩形状の振動子において、その一辺の長さaを、チューブの内径dの2倍程度とすれば良い。
【0030】
以上説明したように、血液透析の際に透析器にて発生する限外濾過量を測定する等、内径2〜4mm程度の細いチューブ内の流体の流量を計測するような場合には、本実施形態に係る限外濾過量測定システム10で使用する振動子の内、送波素子として機能する各振動子(上記実施形態では、符号14a,14d)は、流入側チューブ12a及び流出側チューブ12b内を管軸方向に伝搬する平面波が発生するよう、径方向あるいは横方向に振動する板状振動子とすることが好ましい。
【0031】
また、複数の患者に対して続けて血液透析を行う等の場合には、チューブ12a,12bへの各振動子14a〜14dの取り付け及び取り外しを容易に行えることが好ましい。そこで、例えば図3のような構成の振動子固定用のクランプ28によれば、各振動子14a〜14dの取り付け及び取り外しを容易に行うことが可能となる。図3は、各振動子14a〜14dを流入側チューブ12a及び流出側チューブ12bの外壁に当接させるためのクランプ28の一構成例を示す図(チューブ12a,12bの管軸方向に垂直な断面図)である。
【0032】
このクランプ28は、流入側チューブ12a及び流出側チューブ12bをそれぞれ狭持する狭持部30a,30bが並列に配置された構成となっている。各狭持部30a,30bの内板32の断面は、それぞれコの字型となっている。そして、内板32の互いに対向する壁面間の距離δは、チューブ12a,12bの外径より僅かに小さく形成されており、これにより、チューブ12a,12bが当該コの字の内側に嵌脱自在に挟持される。即ち、この例では、各狭持部30a,30bの内板32がチューブの狭持機能を有している。
【0033】
各振動子14a〜14dの表面(または裏面)と内板32の裏面(チューブ12a,12bに当接する面の裏面)とは、例えば接着され、これにより、各振動子14a〜14dは内板32に固定されている。このとき、各振動子14a〜14dは、その表面(または裏面)がチューブ12の外壁に沿う姿勢となる。また、このような構成では、各振動子14a〜14dは、チューブ12a,12bの外壁に内板32を介して間接的に当接され、各振動子14a〜14dとチューブ12a,12b内の流体との間には、内板32及びチューブ12a,12bが介在することになる。従って、内板32の厚みや材質は、内板32及びチューブ12a,12bが整合層として機能するように決定するのが好適である。
【0034】
本体34は、外板部36と、その先端に内板32を例えば接着によって固定する支持板部38とから構成されている。このような構成により、クランプ28を中空構造とし、軽量化を図ることができる。
【0035】
以上の構成により、このクランプ28を、極めて簡単に流入側チューブ12a及び流出側チューブ12bに取り付けることができ、また取り外すことができるため、各チューブ12a,12bの外壁に各振動子14a〜14dをより容易にかつより確実に当接させ、また離間させることができる。
【0036】
尚、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、各振動子14a〜14dが内板32を介してチューブ12a,12bの外壁に当接される場合について例示したが、これには限定されず、各振動子14a〜14dの表面が直接チューブ12a,12bの外壁に当接されるように構成してもよい。但し、内板32等、何らかの部材を介在させる構成とする方が、各振動子14a〜14dの保護という観点からは有利である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る限外濾過量測定システムの要部構成の一例を示す図である。
【図2】振動子(ただし(a):円形振動子、(b):矩形振動子)の径方向振動(横方向振動)および厚み方向振動(縦方向振動)を示す説明図である。
【図3】各振動子を流入側チューブ及び流出側チューブの外壁に当接させるためのクランプの一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
10 限外濾過量測定システム、12a 流入側チューブ、12b 流出側チューブ、14a〜14d 振動子、16 固定板、18 駆動回路、20 検出回路、22 制御部、24 伝搬時間取得部、26 流量算出部、28 クランプ、30a,30b 狭持部、32 内板、34 本体、36 外板部、38 支持板部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析器に血液あるいは透析液を流入させるための流入側チューブの上流側及び下流側に、それぞれ配置される一対の流入側振動子と、
透析器から血液あるいは透析液を流出させるための、流入側チューブと同一の断面積の流出側チューブの上流側及び下流側に、それぞれ配置される一対の流出側振動子と、
流入側チューブ及び流出側チューブの上流側に配置される2つの振動子あるいは下流側に配置される2つの振動子を、送波素子として振動させる駆動回路と、
検出素子として流入側チューブ及び流出側チューブの下流側に配置される2つの振動子あるいは上流側に配置される2つの振動子にて、前記送波素子として振動する各チューブの振動子からの波が各チューブ内の血液中あるいは透析液中を伝搬して検出されるまでの伝搬時間をそれぞれ取得する伝搬時間取得部と、
を含み、
伝搬時間取得部にて取得された、流入側チューブにおける流入側伝搬時間及び流出側チューブにおける流出側伝搬時間より、血液あるいは透析液の透析器への流入速度と透析器からの血液あるいは透析液の流出速度との差を算出し、得られた流速差を用いて透析器にて生じる限外濾過量を測定することを特徴とする限外濾過量測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の限外濾過量測定システムにおいて、
送波素子として機能する各振動子は、駆動回路により管軸方向に振動する板状振動子であり、
その振動により、流入側チューブ及び流出側チューブ内の血液あるいは透析液に、管軸方向に伝搬する平面波を発生させることを特徴とする限外濾過量測定システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の限外濾過量測定システムにおいて、
一対の流出側振動子は、一対の流入側振動子と同一距離の間隔をあけて流出側チューブの上流側と下流側とに配置されることを特徴とする限外濾過量測定システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の限外濾過量測定システムにおいて、
一対の流入側振動子及び流出側振動子は、流入側チューブ及び流出側チューブをそれぞれ嵌脱自在に挟持する挟持部を有するクランプに装着されることを特徴とする限外濾過量測定システム。
【請求項5】
請求項4に記載の限外濾過量測定システムに用いられるクランプであって、
流入側チューブ及び流出側チューブをそれぞれ嵌脱自在に挟持する挟持部を有し、一対の流入側振動子及び流出側振動子を、狭持部により狭持された流入側チューブ及び流出側チューブの外壁に直接または間接的に当接させるように保持することを特徴とするクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−68327(P2006−68327A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256196(P2004−256196)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000189486)上田日本無線株式会社 (29)
【Fターム(参考)】