説明

除菌水の製造方法および製造装置

【課題】海水等塩素成分を含有する水を被処理水として陽極側電解室R1にて電解処理し、電解処理にて生成された処理水を脱気膜にて脱気処理し、脱気処理にて生成された処理水を陰極側電解室R2にて電解処理することからなる除菌水の製造において、陽極側電解室R1と陰極側電解室R2間で生じる圧力差に起因して発生する各問題を解消する。
【解決手段】陽極側電解室R1と陰極側電解室R2とを区画形成する隔膜として、透水性で気液分離能を有する透水性脱気膜22を採用してなる有隔膜電解槽を採用し、被処理水を陽極側電解室R1にて電解処理し、電解処理にて生成された電解生成水を透水性脱気膜22を透過して脱気処理し、脱気処理された電解生成水を陰極側電解室R2にて電解処理することによって除菌水を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水等塩素成分を含有する水を殺菌または滅菌処理して除菌水を製造する除菌水の製造方法、および、除菌水を製造する製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水は、飲料用水、調理用水、食品加工用水、衛生処理用水、製氷用水、各種の工業用水、空調用水、水泳プール用水等、極めて広い分野で利用されている物質であり、全ての生物にとっては必須不可欠の物質である。これらの多くの利用分野の水では、特に、人に直接関わる利用分野の水では、各種の雑菌が実質的に存在しない無菌状態があることが望ましく、これらの利用分野では、実質的に無菌状態の水が要請されている。このため、かかる要請に対処すべき、無菌水や除菌水の製造方法の開発が要請されていており、かかる要請に対処すべき手段の一例としては、「無菌水の製造方法及びその装置」なる名称で特許出願されている(特許文献1を参照)。
【0003】
当該特許文献にて提案されている製造方法および製造装置は、中性の無菌水を製造することを意図しているもので、当該無菌水の用途としては、食品加工用水、水泳プール用水、建物内の上水用水、空調用クーラボックスのクーラ用水への使用を意図している。当該無菌水の製造方法は、一般の水を被処理水とするもので、被処理水を被電解水とする有隔膜電解にて処理する方法を採用している。当該有隔膜電解では、先ず、被電解水を有隔膜電解槽の陽極側電解室に導入して電解処理し、次いで、生成された電解生成水を有隔膜電解槽の陰極側電解室に導入して電解処理するもので、これらの2回に亘る電解処理により、被電解水は陽極側電解室の電解にて酸化されて無菌化され、無菌化された電解生成水は陰極側電解室にて中和される。これにより、被処理水(被電解水)は、中性の無菌水に生成される。
【0004】
当該製造方法は、中性の無菌水を製造する限りにおいては、有効な製造方法であるということができる。しかしながら、当該製造方法においては、陽極側電解室の電解処理にて生成された電解生成水は無菌化されてはいるが、塩素および酸素を多く溶存していることから、溶存酸素や溶存塩素が陰極側電解室での電解処理にて発生する有用な水素ガスを消費し、生成される無菌水は酸化還元電位が高いものとなり、特に、飲料用水、製氷用水、調理用水、食品加工用水等、人の飲食に関わる水として適した、酸化還元電位が低く実質的に負である無菌水とはなり得ない。
【0005】
本発明者は、酸化還元電位が低く実質的に負である無菌水(除菌還元水)を製造するべく鋭意研究して、除菌還元水の製造方法および製造装置を開発し、かかる技術を「除菌還元水の製造方法および製造装置」なる名称で特許出願している(特願2004−40234号)。
【0006】
当該除菌水の製造方法は、被処理水を被電解水として有隔膜電解槽の陽極側電解室にて電解処理し、電解処理して生成された処理水を脱気膜にて脱気処理し、脱気処理して生成された処理水を有隔膜電解槽の陰極側電解室にて電解処理することからなる製造方法である。当該製造方法によれば、陽極側電解室の電解処理にて生成された無菌化された電解生成水中の溶存酸素や溶存塩素は、脱気膜が有する気液分離作用によって脱気され、陰極側電解室での電解処理にて発生する有用な水素ガスを消費する溶存酸素や溶存塩素が実質的に皆無となる。このため、陰極側電解室内で生成される電解生成水は、酸化還元電位が低く実質的に負である除菌水、実質的には、無菌水となる。
【0007】
また、当該除菌水の製造方法を実施するための製造装置は、有隔膜電解槽と気液分離器を主体とするものである。当該有隔膜電解槽は、槽本体と、槽本体内を一対の隔室に区画する隔膜と、区画された隔室に配設されて各隔室を各電解室に形成する一対の電極と、各電解室内に配設されて各電極と隔膜間を所定の間隔に保持する複数のスペーサにて構成されている。気液分離器は、当該有隔膜電解槽の陽極側電解室の下流側と陰極側電解室の上流側とを連結する流水管路に介在していて、陽極側電解室にて生成される電解生成水は前記気液分離器を通過する間に脱気処理をうけるようになっている。
【特許文献1】特許第2714662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、当該除菌水の製造装置を使用する除菌水の製造方法では、陽極側電解室内で生成された電解生成水を、陽極側電解室と陰極側電解室を連通させている流水管路の途中で脱気処理することから両電解室内の圧力に差が生じ、陽極側電解室の内圧が陰極側電解室の内圧に比較して高い状態になる。このため、両電解室を区画形成している隔膜は、陽極側電解室の内圧によって陰極側電解室側へ押圧されて撓み、陰極側電解室での隔膜と電極間の間隔が狭くなり、陰極側電解室内の流路を設定された大きさより狭くなる。この結果、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室内での流量を設定された流量に確保することは難しく、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室での電解処理が十分にはできなくなる。
【0009】
かかる問題を解消するには、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室内での流量を設定された流量に確保することが不可欠である。これに対処するには、スペーサを硬質に形成するとともに本数を多くし、かつ、隔膜を硬質にすることによって、隔膜の陰極側電解室側への撓みを阻止することが考えられる。しかしながら、このような手段を採ることは不可能に近い。なお、陰極側電解室を予め大きく設定しておけば、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室内での流量を設定された流量にほぼ保持することができるが、かかる手段では有隔膜電解槽が大型化するという問題がある。
【0010】
従って、本発明の目的は、海水等塩素成分を含有する水を被処理水として有隔膜電解槽の陽極側電解室にて電解処理し、電解処理にて生成された処理水を脱気膜にて脱気処理し、脱気処理にて生成された処理水を前記有隔膜電解槽の陰極側電解室にて電解処理することからなる除菌水の製造方法、および、当該製造方法を実施するめの製造装置において、上記した各問題を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、除菌水の製造方法および製造装置に関する。本発明に係る除菌水の製造方法は、海水等塩素成分を含有する水を被処理水として有隔膜電解槽の陽極側電解室にて電解処理し、電解処理にて生成された処理水を脱気膜にて脱気処理し、脱気処理にて生成された処理水を前記有隔膜電解槽の陰極側電解室にて電解処理することからなる除菌水の製造方法である。
【0012】
しかして、本発明に係る除菌水の製造方法においては、前記陽極側電解室と前記陰極側電解室とを区画形成する隔膜として透水性で気液分離能を有する透水性脱気膜を採用してなる有隔膜電解槽を採用し、前記被処理水を前記陽極側電解室にて電解処理し、電解処理にて生成された電解生成水を前記透水性脱気膜を透過して脱気処理し、脱気処理された電解生成水を前記陰極側電解室にて電解処理することを特徴とするものである。本発明に係る除菌水の製造方法においては、前記透水性脱気膜として、通水性のケーシングに多数の中空糸を充填してなる気液分離膜を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係る除菌水の製造装置は、本発明に係る除菌水の製造方法を実施するための製造装置であって、筒状で所定長さの槽本体と、同槽本体内の基端側に配設されている第1の電極と、同槽本体内の先端側に配設されて前記第1の電極とは所定間隔を保持して位置している第2の電極と、同槽本体内にて前記両電極間に配設されている前記透水性脱気膜とを備え、同透水性脱気膜と前記第1の電極および前記第2の電極との間が各電解室に形成していることを特徴とするものである。本発明に係る製造装置においては、前記透水性脱気膜として、透水性のケーシングに多数の中空糸を充填してなる気液分離器を構成する中空糸を採用することができる。
【0014】
本発明に係る製造装置においては、第1の電極および第2の電極として、電導性材料からなる環状体を採用することができる。この場合には、前記第1の電極を前記槽本体の基端側を構成する管部内に嵌合固定し、または、同槽本体の基端側部を構成する分割された管部間に介在し、かつ、前記第2の電極を前記槽本体の先端側を構成する管部内に嵌合固定し、または、同槽本体の先端側部を構成する分割されている管部間に介在して位置させることができる。
【0015】
また、本発明に係る製造装置において、前記第1の電極および第2の電極として、電導性材料からなる棒状体を採用することができる。この場合には、前記第1の電極を前記槽本体の基端側を構成する管部の外周側から内部に挿入して位置させ、かつ、前記第2の電極を前記槽本体の先端側を構成する管部の外周側から内部に挿入して位置させることができる。
【0016】
また、本発明に係る製造装置においては、前記第1の電極および第2の電極として、電導性材料からなる多数の通水孔を有する円板状体を採用することができる。この場合には、前記第1の電極を前記槽本体の基端側を構成する管部内に嵌合固定し、または、同槽本体の基端側部を構成する分割された管部間に介在し、かつ、前記第2の電極を前記槽本体の先端側を構成する管部内に嵌合固定し、または、同槽本体の先端側部を構成する分割されている管部間に介在して位置させることができる
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る除菌水の製造装置は、陽極側電解室と陰極側電解室とを区画形成する隔膜として透水性脱気膜を採用してなる有隔膜電解槽を主体とする構成のものである。当該製造装置を使用する電解運転では、例えば、第1の電極を陽極側電極とし第2の電極を陰極側電極に設定し、被処理水である被電解水を、槽本体の基端側から槽本体内に導入する。導入された被電解水は、槽本体内に位置している第1の電極(陽極電極)を通過して透水性脱気膜に至り、透水性脱気膜を透過して第2の電極(陰極電極)を通過し、槽本体の先端側から導出される。当該製造装置においては、透水性脱気膜が従来の有隔膜電解槽の隔膜としても機能する。
【0018】
このため、被処理水は、槽本体内の第1の電極と透水性脱気膜との間に形成されている陽極側電解室で電解処理されて、無菌または無菌に近い状態に除菌された電解生成水(除菌水)になる。当該電解生成水は、透水性脱気膜と透過する間に脱気処理されて、溶存酸素および溶存塩素が揮発除去される。脱気処理された電解生成水は、透水性脱気膜と第2の電極との間に形成されている陰極側電解室でさらに電解処理されて中性化される。これにより、実質的の中性で酸化還元電位が負の除菌水が製造される。すなわち、本発明に係る製造装置によれば、本発明に係る製造方法を容易に実施することができる。
【0019】
このように、本発明に係る製造装置は、脱気処理器を装備する従来の有隔膜電解槽を主体とする除菌水の製造装置と同等に機能するが、陽極側電解室と陰極側電解室とを区画形成する隔膜として透水性脱気膜を採用して、陽極側電解室で生成された電解生成水を、当該隔膜を透して陰極側電解室に導入する方法を採っている。このような方法は、上記した従来の製造装置が実施する方法とは発想を全く異にする方法であって、従来の製造装置において問題となっている、陽極側電解室と陰極側電解室間に生じる圧力差は全く問題にならないものである。
【0020】
このため、本発明に係る製造装置、および、当該製造装置を使用して実施される本発明に係る製造方法には、陽極側電解室と陰極側電解室間に生じる圧力差に起因する問題は存在しない。すなわち、当該圧力差に起因して、陽極側電解室の内圧によって隔膜が陰極側電解室側へ押圧されて撓み、陰極側電解室での隔膜と電極間の間隔が狭くなり、陰極側電解室内の流路を設定された大きさに確保することができないという問題、これに起因して、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室内での流量を設定された流量に確保し得ないという問題、これに起因して、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室での電解処理が十分にはできなくなるという問題等、多くの問題は解消される。
【0021】
また、本発明に係る製造装置では、脱気処理を従来とは発想を大きく転換して、陽極側電解室と陰極側電解室を区画形成する隔膜にて行う方法を採用していることから、従来の製造装置では不可欠としている、陽極側電解室の下流側と陰極側電解室の上流側に連結されている流水管路、および、当該流水管路に介在させている脱気処理器等が不要である。従って、本発明に係る製造装置は、従来のこの種の製造装置に比較して大幅に小型化することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、除菌水の製造方法および製造装置に関する。本発明に係る製造装置は、海水等塩素成分を含有する水を被処理水として有隔膜電解槽の陽極側電解室にて電解処理し、電解処理にて生成された処理水を脱気膜にて脱気処理し、脱気処理にて生成された処理水を前記有隔膜電解槽の陰極側電解室にて電解処理することからなる除菌水の製造方法を実施し得る製造装置である。図1には、本発明に係る製造装置の基本形態を示し、図2〜図4には、当該製造装置の具体的な実施形態をそれぞれ示している。
【0023】
本発明に係る製造装置は、基本的には図1に示すように、円筒状で所定長さの槽本体10aと、槽本体10a内の基端側に配設されている第1の電極12と、槽本体10a内の先端側に配設されて第1の電極12とは所定間隔を保持して位置している第2の電極13と、槽本体10a内にて第1の電極12および第2の電極13間にてそれぞれ所定の間隔を保持して配設されている気液分離器20を備える構成となっている。
【0024】
気液分離器20は、通水性のケーシング21に多数の中空糸22を充填して形成してなるもので、ケーシング21内には吸気管路23を通して吸気負圧が付与されるようになっている。気液分離器20は、槽本体10a内の長手方向の略中央部に位置して、第1の電極12との間の空間部を陽極側電解室R1に形成し、かつ、第2の電極13との間の空間部を陰極側電解室R2に形成している。従って、当該気液分離器20は、充填されている多数の中空糸22が透水性脱気膜を構成して、陽極側電解室R1と陰極側電解室R2とを区画成形する隔膜としても機能する。
【0025】
本発明に係る製造装置を使用する電解運転では、例えば、第1の電極12を陽極側電極に設定し、かつ、第2の電極13を陰極側電極に設定し、被処理水を、槽本体10aの基端側から槽本体10a内に導入する。導入された被処理水は、槽本体10a内に位置している第1の電極12(陽極電極)および陽極側電室R1を通過して気液分離器20に至り、気液分離器20を透過して、陰極側電解室R2および第2の電極13(陰極電極)を通過し、槽本体10aの先端側から導出される。この間、気液分離器20は、従来の有隔膜電解槽の隔膜として機能するとともに、脱気処理装置としても機能する。
【0026】
このため、槽本体10a内に導入された被処理水は、槽本体10a内の第1の電極12と気液分離器20間の陽極側電解室R1にて電解処理されて、無菌または無菌に近い状態に除菌された電解生成水(除菌水)になる。当該電解生成水は、気液分離器20の中空糸22を透過する間に脱気処理されて、溶存酸素および溶存塩素が揮発除去(脱気)される。脱気処理された電解生成水は、気液分離器20と第2の電極13との間の陰極側電解室R2にて電解処理されて中性化され、実質的の中性で酸化還元電位が負の除菌水となる。
【0027】
このように、本発明に係る製造装置は、脱気処理装置を装備する従来の有隔膜電解槽を主体とする除菌水の製造装置とは同等に機能するが、陽極側電解室R1と陰極側電解室R2とを区画形成する隔膜として気液分離器20の中空糸22が構成する透水性脱気膜を採用して、陽極側電解室R1で生成された電解生成水を、透水性脱気膜22を透して陰極側電解室R2に導入する方法を採っている。このような方法は、上記した従来の製造方法および製造装置とは全く異なる方法であって、これらからは全く予測し得ない画期的な方法であり、従来の製造装置において問題となっている、陽極側電解室と陰極側電解室間に生じる圧力差が問題になるようなことはない。
【0028】
このため、本発明に係る製造装置、および、当該製造装置を使用して実施される本発明に係る製造方法には、陽極側電解室R1と陰極側電解室R2間に生じる圧力差に起因する問題は存在しない。すなわち、当該圧力差に起因して、隔膜(透水性脱気膜22)が陽極側電解室R1の内圧によって陰極側電解室R2側へ押圧されて、陰極側電解室R2の隔膜と第2電極13間の間隔が狭くなり、陰極側電解室R2内の流路を設定された大きさに確保することができないという問題は存在しない。また、かかる問題に起因して、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室R2内での流量を設定された流量に確保し得ないという問題、これに起因して、脱気処理された電解生成水の陰極側電解室R2での電解処理が十分にはできなくなるという問題等も存在しない。
【0029】
また、本発明に係る製造装置では、脱気処理を従来とは発想を大きく転換した方法を採用して、陽極側電解室R1と陰極側電解室R2を区画形成する隔膜にて行う方法を採用していることから、従来の製造装置では不可欠としている、陽極側電解室の下流側と陰極側電解室の上流側を連通させる流水管路、および、当該流水管路に介在させている脱気処理装置等が不要である。従って、本発明に係る製造装置においては、従来のこの種の製造装置に比較して簡単に構成することができるとともに、大幅に小型化することができる。本発明に係る製造装置は、具体的には、図2〜図4に示す実施形態のごとく構成することができる。
【0030】
図2に示す第1の実施形態の製造装置においては、第1の電極12および第2の電極13として、金属材料からなる円環状の電極を採用している。当該製造装置が採用している気液分離器20のケーシング21は、合成樹脂製の円筒体21aと、円筒体21aの各先端開口部に固着して開口部を閉塞している多数の貫通孔を有する合成樹脂製の蓋体21b、21cとかなる合成樹脂製のもので、ケーシング21内には、多数の中空糸が充填されている。
【0031】
当該製造装置を構成する槽本体10bは、気液分離器20のケーシング21の円筒体21aを利用しているもので、基端側から第1円筒体11a、第2円筒体11b、ケーシング21の円筒体21a(第3円筒体)、第4円筒体11cおよび、第5円筒体11dある合成樹脂製の円筒体を構成部材としている。第2円筒体11bと第4円筒体11cは、第3円筒体21aの各端部に接合されていて、第2円筒体11bの先端に第1の電極12が接続され、かつ第1の電極12の先端に第1円筒体11aが接続されている。また、第4の円筒体11cの先端には、第2の電極13が接続され、かつ、第2の電極13の先端に第5円筒体11d接続されている。
【0032】
かかる構成においては、槽本体10bは、第1円筒体11a、第1の電極12、第2円筒体11b、第3円筒体21a、第4円筒体11c、第2の極13、および第5円筒体11dより形成されていて、槽本体10b内の基端側に第1の電極12が位置し、槽本体10b内の先端側に第2の電極13が位置し、第1の電極12と第2の電極13との間に気液分離器20が位置している。気液分離器20は、第1の電極12との間に電解室R1を形成し、かつ、第2の電極13との間に電解室R2を形成している。第1の電極12と第2の電極13には所定の電圧が印加されて、電解室R1は例えば陽極側電解室として機能し、かつ、電解室R2は例えば印極側電解室として機能する。
【0033】
図3に示す第2の実施形態の製造装置においては、第1の電極12および第2の電極13として、金属材料からなる棒状の電極を採用している。また、気液分離器については、気液分離器20を採用している。当該製造装置を構成する槽本体10cは、気液分離器20のケーシング21の円筒体21aを利用しているもので、基端側の第1円筒体14a、ケーシング21の円筒体21a(第2円筒体)、および第3円筒体14bである合成樹脂製の円筒体を構成部材としている。第1円筒体14aと第3円筒体14bは、第2円筒体21aの各端部に接合されている。
【0034】
かかる構成においては、槽本体10cは、第1円筒体14a、第2円筒体21aおよび第3円筒体14bにより形成されていて、槽本体10c内の基端側に第1の電極12が位置し、槽本体10c内の先端側に第2の電極13が位置し、第1の電極12と第2の電極13との間に気液分離器20が位置している。気液分離器20は、第1の電極12との間に電解室R1を形成し、かつ、第2の電極13との間に電解室R2を形成している。第1の電極12と第2の電極13には所定の電圧が印加されて、電解室R1は例えば陽極側電解室として機能し、かつ、電解室R2は例えば印極側電解室として機能する。
【0035】
図4に示す第3の実施形態の製造装置においては、第1の電極12および第2の電極13として、金属材料からなる貫通孔を多数有する円板状の電極を採用している。また、気液分離器については、気液分離器20を採用している。当該製造装置を構成する槽本体10dは、気液分離器20のケーシング21の円筒体21aを利用しているもので、基端側から第1円筒体15a、第2円筒体15b、ケーシング21の円筒体21a(第3円筒体)、第4円筒体15c、および第5円筒体15dである合成樹脂製の円筒体を構成部材としている。第2円筒体15bと第4円筒体15cは、第3円筒体21aの各端部に接合されていて、第2円筒体15bの先端側内部に第1の電極12が嵌合固定され、かつ、第4円筒体15cの先端側内部に第2の電極13が嵌合固定されている。また、第2円筒体15bの先端に第1円筒体15aが接続され、かつ、第4円筒体15c先端に第5円筒体15d接続されている
かかる構成においては、槽本体10dは、第1円筒体15a、第2円筒体15b、第3円筒体21a、第4円筒体15c、および第5円筒体15dにより形成されていて、槽本体10dの基端側に第1の電極12が位置し、槽本体10dの先端側に第2の電極13が位置し、第1の電極12と第2の電極13との間に気液分離器20が位置している。気液分離器20は、第1の電極12との間に電解室R1を形成し、かつ、第2の電極13との間に電解室R2を形成している。第1の電極12と第2の電極13には所定の電圧が印加されて、電解室R1は例えば陽極側電解室として機能し、かつ、電解室R2は例えば印極側電解室として機能する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る除菌水の製造装置の基本形態を示す側面図である。
【図2】同製造装置の第1の実施形態を示す一部縦断側面図である。
【図3】同製造装置の第2の実施形態を示す一部縦断側面図である。
【図4】同製造装置の第3の施形態を示す一部縦断側面図である。
【符号の説明】
【0037】
10a,10b,10c,10d…槽本体、11a…第1円筒体、11b…第2円筒体、11c…第3円筒体、11d…第5円筒体、12…第1の電極、13…第2の電極、14a…第1円筒体、14c…第2円筒体、15a…第1円筒体、15b…第2円筒体、15c…第3円筒体、15d…第5円筒体、20…気液分離器、21…ケーシング、21a…円筒体(第2,第3)、21b,21c…蓋体、22…中空糸、23…吸気管路、R1…陽極側電解室、R2…陰極側電解室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水等塩素成分を含有する水を被処理水として有隔膜電解槽の陽極側電解室にて電解処理し、電解処理にて生成された処理水を脱気膜にて脱気処理し、脱気処理にて生成された処理水を前記有隔膜電解槽の陰極側電解室にて電解処理することからなる除菌水の製造方法であり、前記陽極側電解室と前記陰極側電解室とを区画形成する隔膜として透水性で気液分離能を有する透水性脱気膜を採用してなる有隔膜電解槽を採用し、前記被処理水を前記陽極側電解室にて電解処理し、電解処理にて生成された電解生成水を前記透水性脱気膜を透過して脱気処理し、脱気処理された電解生成水を前記陰極側電解室にて電解処理することを特徴とする除菌水の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の除菌水の製造方法において、前記透水性脱気膜として、通水性のケーシングに多数の中空糸を充填してなる気液分離膜を採用することを特徴とする除菌水の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の除菌水の製造方法を実施するための製造装置であり、当該製造装置は、筒状で所定長さの槽本体と、同槽本体内の基端側に配設されている第1の電極と、同槽本体内の先端側に配設されて前記第1の電極とは所定間隔を保持して位置している第2の電極と、同槽本体内にて前記両電極間に配設されている前記透水性脱気膜とを備え、同透水性脱気膜と前記第1の電極および前記第2の電極との間が各電解室に形成していることを特徴とする除菌水の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載の除菌水の製造装置において、前記透水性脱気膜は、通水性のケーシングに多数の中空糸を充填してなる気液分離膜器を構成する中空糸であることを特徴とする除菌水の製造装置。
【請求項5】
請求項3に記載の除菌水の製造装置において、前記第1の電極および第2の電極は電導性材料からなる環状体であって、前記第1の電極は前記槽本体の基端側を構成する管部内に位置し、または、同槽本体の基端側部を構成する分割された管部間に介在し、かつ、前記第2の電極は前記槽本体の先端側を構成する管部内に嵌合固定され、または、同槽本体の先端側部を構成する分割されている管部間に介在していることを特徴とする除菌水の製造装置。
【請求項6】
請求項3に記載の除菌水の製造装置において、前記第1の電極および第2の電極は電導性材料からなる棒状体であって、前記第1の電極は前記槽本体の基端側を構成する管部の外周側から内部に挿入されて位置し、かつ、前記第2の電極は前記槽本体の先端側を構成する管部の外周側から内部に挿入されて位置していることを特徴とする除菌水の製造装置。
【請求項7】
請求項3に記載の除菌水の製造装置において、前記第1の電極および第2の電極は電導性材料からなる多数の通水孔を有する円板状体であって、前記第1の電極は前記槽本体の基端側を構成する管部内に位置し、または、同槽本体の基端側部を構成する分割された管部間に介在し、かつ、前記第2の電極は前記槽本体の先端側を構成する管部内に嵌合固定され、または、同槽本体の先端側部を構成する分割されている管部間に介在していることを特徴とする除菌水の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−198497(P2006−198497A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11744(P2005−11744)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)
【Fターム(参考)】