説明

除菌洗浄剤

【課題】 本発明の目的は、化学物質の薬効による殺菌効果に基づかず、天然界に存在する物質を除菌洗浄剤の有効成分とすることで、人体への影響を軽減し、環境への負荷も少ない、新しい除菌洗浄剤を提供することにある。
【解決手段】 天然界に存在する糖質の一種であるマンノースが、人体の外皮細胞や粘膜上皮、もしくは家具や調理器具といった各種基材表面に付着した菌類を有意に取り除くことが可能であるとの知見が得られ、さらに利用可能性について検討を行い、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンノースを有効成分とする除菌洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康面や衛生面から、定期的な手洗いや洗浄による除菌や消毒が奨励されており、それに伴い、外出先などでも簡易的に洗浄や除菌ができるよう、繊維質やスポンジ質の素材に有効成分を含浸させた、ウェットタイプのティッシュ、除菌クリーナー、スプレー、クリームなどの様々な形態で各種除菌用製品が販売されている。近年、このような除菌の有効成分について開示した発明が多く見られる。
【0003】
例えば、有効成分として、少なくとも有機過酸と過硫酸塩とを含む水性溶液からなる除菌洗浄剤組成物であって、前記有機過酸が、過酢酸、過プロピオン酸、過コハク酸及び過グルタル酸から選ばれた1種または2種以上からなる過酸であり、前記過硫酸塩が、過硫酸水素カリウムである除菌洗浄剤組成物に係る発明が開示されている(特許文献1)。
【0004】
例えば、アルカリイオン水を溶媒として、水中に二酸化塩素が安定した状態で溶解してなる殺菌・除菌液に係る発明が開示されている(特許文献2)。
【0005】
例えば、過硫酸塩、ヨウ化物および発泡剤を含有する除菌洗浄剤に係る発明が開示されている(特許文献3)。
【0006】
しかしながら紹介される除菌用製品の多くは、殺菌効果を有する化学物質を有効成分として含有していることが多く、このような化学物質を使用するには、人体への影響が最小限となるよう化学物質の選定や使用量に最新の注意を払わねばならず、更には化学物質の使用による環境への負荷も避けらないという問題点を有する。また、殺菌剤の使用は、殺菌成分による副作用、耐性菌の出現、常在菌叢の均衡を崩し菌交代による様々な弊害を引き起こすおそれもある。
【0007】
【特許文献1】特開2005-154551号公報
【特許文献2】特開2005-002032号公報
【特許文献3】特開2004-346162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、化学物質の薬効による殺菌効果に基づかず、天然界に存在する物質を除菌洗浄剤の有効成分とすることで、人体への影響を軽減し、環境への負荷も少ない、新しい除菌洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するような除菌洗浄剤の可能性を鋭意検討した結果、天然界に存在する糖質の一種であるマンノースが、人体の外皮細胞や粘膜上皮、もしくは家具や調理器具といった各種基材表面に付着した菌類を有意に取り除くことが可能であるとの知見が得られ、さらに利用可能性について検討を行い、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第一は、マンノースを有効成分として含有する除菌洗浄剤である。
【0011】
本発明の第二は、アルコール類及び/又は界面活性剤を含有する第一に記載の除菌洗浄剤である。
【0012】
本発明の第三は、除菌対象がグラム陰性菌である、上記第一又は第二に記載の除菌洗浄剤である。
【0013】
本発明の第四は、除菌対象が大腸菌である、上記第一〜第三の何れか一つに記載の除菌洗浄剤である。
【0014】
本発明の第五は、上記第一〜第四の何れか一つに記載のマンノースを有効成分とする除菌洗浄剤を、紙類、布類、綿類、ナイロン類、合成高分子類、天然高分子類の群から選ばれる各種素材に、もしくは前記の各種素材を繊維状、編物状あるいはスポンジ状としたものに含浸させてなる除菌洗浄器具である。
【0015】
マンノースとは、6炭糖の単糖類であるグルコースの構造異性体の一種であり、高分子構造体であるマンナンの構成糖として知られている。
【0016】
本発明に係る除菌洗浄剤の有効成分であるマンノースは、市販されている程度の品質であれば問題なく使用できる。また、原料や調製方法の由来も問われず、例えば、こんにゃくいも、広葉樹、イリス根茎、アロエ葉等に含まれるグルコマンナンや、ローカストビーンガムやグアガム、ココやし、コーヒー豆等に含まれるガラクトマンナン等、各種マンナンを含有する素材を原料として、酸や酵素によって加水分解したり、グルコースやその他の糖類を出発原料として、酵素による異性化反応を生じさせたり、モリブデンやその他の金属イオンを担持させたイオン交換樹脂との作用による異性化反応を生じさせるなど、各種化学的処理を経て製造したものを用いても良い。
【0017】
本発明に係る除菌洗浄剤の有効成分であるマンノース中には、本発明の実施を妨げない範囲であれば、マンノビオースやマンノトリオースといった、原料に由来して生じる各種マンノオリゴ糖や、グルコース、ガラクトース、アラビノース、キシロースなどの単糖類が含まれていても良い。
【0018】
本発明に係る除菌洗浄剤はマンノースを有効成分とするものであるが、マンノース自体に殺菌作用をもたらす効果があるとの報告はされておらず、本発明の構築に際しても、マンノースによる殺菌作用が認められるような挙動は確認されていない。よって、本発明に係る除菌洗浄剤は、従来の化学薬品を有効成分とする殺菌作用に基づいた除菌洗浄剤とは異なる作用を示しているものと考えられるが、従来、天然界に存在する糖質であるマンノースが除菌洗浄剤として優れた効果を発揮するとの知見はなく、これまでの常識からは想起できない驚くべき結果であった。
【0019】
現段階で、本発明に係る除菌洗浄剤による除菌作用の詳細な機構は解明されていないが、マンノースと菌類との間で特異的な相互作用が生じており、菌類表面に存在する菌糸や繊毛の周囲にマンノースが吸着して、水溶液や水分を含浸させた素材などの媒介物質中に拡散し易い形態となり、除菌効果が発現していると考えられる。
【0020】
本発明に係る除菌洗浄剤を液状の形態で使用する場合、調製した溶液中に除菌有効量のマンノースを含有していれば良いが、その調製に当たっては、所定の除菌有効量のマンノースを添加して調製することが、有効量分の配合が容易であることと、マンノース以外の成分の混入による除菌効果低減の恐れが生じない点で好ましい。除菌洗浄剤を液状とした場合の有効なマンノース含有量は、除菌洗浄剤の配合成分、除菌すべき目的物の材質、汚染の程度、目指すべき除菌の程度などを考慮して適宜設定すべきであるが、マンノースの含有量が高すぎると、粘度が上昇してネトつきを感じ、使用感の悪化につながる。このため、除菌洗浄剤としてマンノースを単独で使用する場合、マンノースの含有量としては、液状物中の固形物含有量として0.10〜30.0重量%程度が好ましく、更に好ましくは1.0〜20.0重量%、最も好ましくは5.0〜10.0重量%である。
【0021】
本発明に係る除菌洗浄剤の効果を好適に発現させる目的で、アルコール類を添加しても良い。本発明でいうアルコール類としては、人体や環境に対する負荷の少ない素材であることが望ましく、具体的にはエタノールやイソプロパノールが例示できるが、これらの中で好ましいのはエタノールである。エタノール及びイソプロパノールは市販品もしくは医薬品、食品用として販売されているものであればよく、その原料、製法、由来は特に問われない。また、エタノールとイソプロパノールは、両者を組合せて使用しても良い。そして、除菌洗浄剤の有効成分としてマンノースとアルコール類を共存させた除菌洗浄剤とすることで、アルコール類単独で使用するよりも除菌処理後の菌類の残存率を低下させることができる。
【0022】
本発明においてマンノース以外の成分としてエタノールを併用する場合、除菌洗浄剤中に除菌有効量のマンノースとエタノールを含有していれば良い。除菌有効量は、除菌すべき目的物の材質や汚染の程度にもよるが、配合重量割合で表すと、マンノース:1〜30重量部、エタノール:1〜30重量部であり、残余に水を加えて、マンノースとエタノールと水の3成分で100重量部となる配合が例示できる。また、好ましい配合として、マンノース:2〜20重量部、エタノール:10〜20重量部であり、残余に水を使用して、全部で100重量部となる配合が例示できる。また、さらに好ましい配合として、マンノース:10〜20重量部、エタノール:10〜20重量部であり、残余に水を使用して、全部で100重量部となる配合が例示できる。エタノールに関する上記比率は、イソプロパノールを単独若しくはエタノールと組合せて使用した場合でも同様であり、そのままの数値割合が採用できる。また、上述の配合割合において、マンノース:エタノールの配合重量比が1:0.5〜1:10の範囲であることが特に好ましい。
【0023】
本発明に係る除菌洗浄剤中には界面活性剤を添加しても良い。本発明で使用することができる界面活性剤は、公知の素材で、市販されている程度の品質であれば何れも採用可能であり、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤の何れも採用可能であるが、これらの中で好ましいのは、非イオン系界面活性剤及び/又は陰イオン系界面活性剤である。
【0024】
用いることができる非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノ−4−ノニフェニルエーテルなどのアルキルフェノール系、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシドなどの脂肪酸系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシドなどの高級アルコール系などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。より好ましい非イオン系界面活性剤としては、アルキルフェノール系が挙げられ、特にポリエチレングリコールモノ−4−ノニフェニルエーテルが好ましい。
【0025】
用いることができる陰イオン系界面活性剤としては、例えば、直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアルキルベンゼン系、高級脂肪酸塩、石鹸、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩などの脂肪酸系、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩などの高級アルコール系、α−オレフィンスルホン酸塩などのα−オレフィン系、アルカンスルホン酸塩などのノルマルパラフィン系、アシルメチルタウリン塩、アシルグルタミン酸塩などのアミノ酸系などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。より好ましい陰イオン系界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼン系が挙げられ、特に直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、最も好ましいのはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0026】
本発明においてマンノース以外の成分として非イオン系界面活性剤を併用する場合、除菌有効量の範囲であればマンノースと非イオン系界面活性剤を任意の割合で配合しても良い。除菌を有効とする配合割合は、求める除菌の程度や、除菌すべき目的物の材質や汚染の程度にもよるが、除菌洗浄剤中の固形成分について固形物換算した配合重量割合で表すと、マンノース:100重量部に対して、非イオン系界面活性剤:1.0〜200重量部であり、全体の固形分濃度が0.10〜30.0重量%である除菌洗浄剤が例示できる。また、好ましい配合として、マンノース:100重量部に対して、非イオン系界面活性剤:1.8〜150重量部であり、全体の固形分濃度が0.15〜5.09重量%である除菌洗浄剤が例示できる。また、さらに好ましい配合として、マンノース:100重量部に対して、非イオン系界面活性剤:1.8〜15重量部であり、全体の固形分濃度が0.69〜5.09重量%である除菌洗浄剤が例示できる。また、上記配合割合において、除菌洗浄剤中のマンノースに由来する固形分濃度は0.60重量%以上が好ましく、更に好ましくは1.00重量%以上である。また、上述の配合割合において、マンノース:非イオン性界面活性剤の配合重量比が1:0.018〜1:1.5の範囲であることが特に好ましい。
【0027】
本発明においてマンノース以外の成分として陰イオン系界面活性剤を併用する場合、除菌有効量の範囲であればマンノースと陰イオン系界面活性剤を任意の割合で配合しても良い。除菌を有効とする配合割合は、求める除菌の程度や、除菌すべき目的物の材質や汚染の程度にもよるが、除菌洗浄剤中の固形成分について固形物換算した配合重量割合で表すと、マンノース:100重量部に対して、界面活性剤:1.0〜200重量部であり、全体の固形分濃度が0.10〜30.0重量%である除菌洗浄剤が例示できる。また、好ましい配合として、マンノース:100重量部に対して、界面活性剤:1.8〜150重量部であり、全体の固形分濃度が0.15〜10.09重量%である除菌洗浄剤が例示できる。また、さらに好ましい配合として、マンノース:100重量部に対して、界面活性剤:1.8〜30重量部であり、全体の固形分濃度が0.69〜10.09重量%である除菌洗浄剤が例示できる。また、上記配合割合において、除菌洗浄剤中のマンノースに由来する固形分濃度は0.30重量%以上が好ましく、更に好ましくは0.60重量%以上、特に好ましくは1.00重量%以上である。また、上述の配合割合において、マンノース:陰イオン性界面活性剤の配合重量比が1:0.018〜1:1.5の範囲であることが特に好ましい。
【0028】
また、本発明に係る除菌洗浄剤は、マンノース以外の成分として、上述したアルコール類、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性、陽イオン系界面活性、両イオン系界面活性、などを組み合わせて使用しても良い。
【0029】
本発明に係る除菌洗浄剤は、マンノースを有効成分として含有させることで、単に水だけで除菌するよりも高い除菌効果が得られる。効果の程度は、マンノースの含有量に応じて変化するが、単に水のみで除菌を行った際の菌数の残存レベルを基準としてその残存レベルを半減させる場合、マンノースのみを含有させた除菌洗浄剤の場合、有効なマンノース含有量は5.0重量%であった。
【0030】
本発明に係る除菌洗浄剤を、非イオン系界面活性剤としてポリエチレングリコールモノ−4−ノニフェニルエーテルを用いて、マンノースと併用した場合に、単に水のみで除菌を行った際の菌数の残存レベルを基準として、その残存レベルを半減させるために有効な添加量は、非イオン系界面活性剤の含有量が0.09重量%の条件であれば、マンノースの含有量は0.60重量%であった。更に、非イオン系界面活性剤の含有量が0.03重量%の条件であれば、マンノースの含有量は1.00重量%であった。
【0031】
本発明に係る除菌洗浄剤を、陰イオン系界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いて、マンノースと併用した場合に、単に水のみで除菌を行った際の菌数の残存レベルを基準として、その残存レベルを半減させるために有効な添加量は、陰イオン系界面活性剤の含有量が0.09重量%の条件であれば、マンノースの含有量は0.30重量%であった。更に、非イオン系界面活性剤の含有量が0.03重量%の条件であれば、マンノースの含有量は1.00重量%で、約20%のレベルまで低下させることが可能であった。
【0032】
本発明に係る除菌洗浄剤は、化学物質の殺菌作用に基づいた除菌ではなく、有効成分であるマンノースと菌類との間に生じる相互作用により、除菌の対象となる基質から物理的に菌類が取り除かれ、除菌が達成されるているものと思われる。そして、本発明に係る化学物質の殺菌作用に基づかない除菌方式は、有効成分として使用される原料が糖質の一種であるマンノースであることから、化学物質の殺菌作用やその他の副作用による悪影響を心配する必要が無く、人体や動物などの生体に対しても安心して使用することが可能である。
【0033】
従来の化学物質の殺菌作用に基づいた除菌洗浄剤では、化学物質毎に固有の抗菌スペクトルを有することがあるため、特定の菌類に対して効果を発揮しても、その他の菌類には効果を及ぼさない場合があるが、本発明に係る除菌洗浄剤は、化学物質の選択的な薬効に基づかない除菌方法であるため、広範な菌類に対して有効な除菌作用を有している。このような特徴を有する本発明に係る除菌洗浄剤は、人体や台所用品やトイレタリー器具などにおいて特に除菌が望まれているグラム陰性菌類に対して有効であり、その中でも大腸菌類に対して優れた除菌効果を示す。
【0034】
本発明に係る除菌洗浄剤を用いた除菌方法としては、汚染箇所や汚染物などの被除菌物に対して、洗浄液中に浸漬するだけでよく、その後、必要に応じて水洗いすれば良い。また、汚染箇所や汚染物などの被除菌物に対して直接除菌洗浄剤を噴霧し、その後、必要に応じて噴霧した箇所を水洗するか、更に必要に応じて乾燥若しくは含水した清潔な布や紙などで拭取っても良い。
【0035】
本発明に係る除菌洗浄剤は上記方法で除菌効果を有するものであるが、本発明は液状の形態での使用に限らず、例えば紙類、布類、綿類、ナイロン類、合成高分子類、天然高分子類などの各種素材や、前記の各種素材やその他の各種物質などで繊維状あるいはスポンジ状を形成させ、それらに本発明に係る除菌洗浄剤を含浸させて使用することで、ウェットティッシュの如き形態の除菌洗浄器具として利用することもできる。本発明に係る除菌洗浄剤を含浸させた除菌洗浄器具として使用することのできる材質としては、適度な強度、柔軟性、含浸性を併せ持つ素材で、含水もしくは保湿状態にあっても、安定した保形性を持つ素材であることが好ましく、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニル、ナイロン、アクリル、ウレタン、レーヨン、木綿、麻、絹、ケナフ、紙、羊毛、羽毛、パルプ繊維などが挙げられる。また、本発明に係る除菌洗浄剤を粉末状やクリーム状の形状とし、それを塗布した後、水洗及び/又は拭き取るなどしても良い。
【0036】
本発明に係る除菌洗浄剤を含浸させる素材として、例えば、繊維ウェブの一つである紙を採用する場合、原紙に本発明に係る除菌洗浄剤を含浸させることにより、保湿タイプのティシュペーパー状の除菌洗浄器具を得ることができる。繊維ウェブが不織布である場合、不織布に本発明に係る除菌洗浄剤を含浸させることにより、保湿タイプの不織布ティシュ形状の除菌洗浄器具を得ることができる。
【0037】
本発明に係る除菌洗浄剤は、天然に存在する糖質であるマンノースを有効成分とするものであるため、除菌の適用範囲に特に制限は無く、例えば、顔、手、その他の皮膚部など人体に直接噴霧する使用や、マウスウォッシュとして口腔内の洗浄用途で使用してもよい。また、人体以外の用途として、便座、いす、机、まな板、箸、スプーン、フォーク、ナイフ、皿、家具、壁、ドアノブ、リモコン、自動車のハンドル、その他各種食器類や各種家具類など、材質や形状による影響を受けず、各種素材に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、実施例を交えて、本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、断りが無い限り、実験装置や器具は、イオン交換処理した純水で洗浄後、オートクレーブ(装置名:ES−315、株式会社トミー精工製)により、121℃で15分間滅菌処理したものを使用した。水については、イオン交換処理した純水を耐圧ビンに入れて栓をし、同じくオートクレーブにより、121℃で15分間滅菌処理したものを滅菌水として使用した。
【0039】
(対象菌)
本発明に係る除菌洗浄剤の除菌効果を観測するためのモデル菌として、大腸菌(Escherichia coli IFO 3806)を使用した。
【0040】
(前培養液の調製)
被検液を調製するための前培養液として、ポリペプトン(商品名:ポリペプトンS、新日本製薬株式会社製)を0.5重量%、酵母エキス(商品名:粉末酵母エキスD−3、新日本製薬株式会社製)を0.25重量%、グルコース(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)を0.1重量%含有する水溶液を調製し、10%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液(試薬特級、和光純薬工業株式会社製)でpH7.0に調整した。
【0041】
(菌液の調製)
ガラス製の試験管(φ18×130mm)に前培養液を5ml分注し、シリコン製の培養栓(商品名:シリコセン(登録商標)、型番T−19、信越ポリマー株式会社製)で試験管の口を密閉し、オートクレーブに設置し、121℃で15分間滅菌処理し、自然放冷により室温まで冷却した。次いで滅菌処理した前培養液中に、大腸菌(Escherichia coli IFO 3806)を植菌し、再びシリコン製のゴム栓で試験管の口を密閉し、試験管を振盪培養器(装置名:TA−16R、高崎科学器械株式会社製)に設置し、30℃で80rpmの条件で24時間振盪培養を行い、得られた培養液を滅菌水で希釈し、菌の濃度を所定濃度に調整したものを実験用菌液(以下、菌液と称する)とした。
【0042】
(菌数カウント用の培地の調製)
標準寒天培地(栄研器材株式会社製)23.5gを1000mlの滅菌蒸留水に溶かし、滅菌シャーレ(商品名:浅型滅菌シャーレ、サイズ:90×15mm、サンセイ医療器材株式会社製)に20ml分注したものを、菌数カウント用の培地として使用した。
【0043】
試験例1:マンノースを有効成分とする除菌洗浄剤による除菌効果
マンノースとして、結晶マンノース(商品名:D−マンノース、東和化成工業株式会社製)を使用し、表1に示した組成に従い滅菌水中に結晶マンノースを添加し、除菌洗浄剤中の結晶マンノースの含有量がそれぞれ1.0重量%、2.0重量%、5.0重量%、10.0重量%、20.0重量%である洗浄液1〜5と、対比用に滅菌水1を用意した。調製した洗浄液は、0.2μmの滅菌フィルター(商品名:ニューステラディスク25、倉敷紡績株式会社製)を用いてろ過滅菌した。次に、上記菌液の調製に記載された方法に従って、菌濃度が8.0×10(cfu/ml)の菌液を調製した。調製した菌液5mlをガラス製試験管(内径25mm×高さ120mm)内に加えて、その中に円形のカバーガラス(商品名:MICRO COVER GLASS、THICKNESS No.1、MATSUNAMI製、直径:15mm、厚さ:0.12〜0.17mm)を10秒間浸してカバーガラス表面に大腸菌を付着させ、菌液の雫が生じないよう静かにカバーガラスを取り出した。次いで、洗浄液1〜5及び滅菌水1を、先と同型のガラス製試験管にそれぞれ5mlづつ分注し、各試験管別に大腸菌を付着させたカバーガラスを浸漬させ、そのまま常温で1時間静置し、カバーガラスに付着させた大腸菌の除菌処理を行った。除菌処理後、洗浄液から雫が生じないよう静かに試験管内のカバーガラスを取り出し、5mlの滅菌水が分注された先と同型のガラス製試験管内に10秒間浸漬して洗浄液成分を洗い落とし、滅菌水の雫が生じないよう静かにカバーガラスを取り出した。次いで、カバーガラス表面に残存する大腸菌数を測定するため、菌数カウント用の培地表面に、取り出したカバーガラスを片面づつ静かにスタンプした。スタンプ後、シャーレに蓋をして、30℃の恒温層内で24時間の培養処理を行い、スタンプした箇所に生じたコロニー数をカウントし、滅菌水1のみで除菌処理したもので生じたコロニー数を基準として、各洗浄液を用いた場合でも同様の操作によりコロニー数をカウントして、基準のコロニー数に対する百分率で表した。なお、除菌処理において、洗浄液1を用いた操作を実施例1とし、洗浄液2は実施例2、洗浄液3は実施例3、洗浄液4は実施例4、洗浄液5は実施例5として表し、滅菌水1を用いた操作を比較例1として表した。
【0044】
【表1】

【0045】
試験例2:マンノースと非イオン系界面活性剤を有効成分とする除菌洗浄剤による除菌効果
マンノースは試験例1と同じものを使用し、界面活性剤は、非イオン系界面活性剤であるポリエチレングリコールモノ−4−ノニフェニルエーテル(試薬、東京化成工業株式会製)を使用して、表2に示した組成に従い滅菌水中に結晶マンノースと非イオン系界面活性剤を添加し、洗浄液6〜12と、対比用に滅菌水2を用意した。調製した洗浄液は、試験例1と同じく0.2μmの滅菌フィルターを用いてろ過滅菌した。次に、上記菌液の調製に記載された方法に従って、菌濃度が1.2×10(cfu/ml)の菌液を調製した。次に、調製した菌液20mlをガラス製試験管(内径25mm×高さ120mm)内に加えて、その中に長方形のカバーガラス(商品名:MICRO COVER GLASS、THICKNESS No.1、MATSUNAMI製、22mm×24mm、厚さ:0.12〜0.17mm)を10分間浸してカバーガラス表面に大腸菌を付着させ、菌液の雫が生じないよう静かにカバーガラスを取り出した。次いで、洗浄液6〜12及び滅菌水2を、先と同型のガラス製試験管にそれぞれ20mlづつ分注し、各試験管別に大腸菌を付着させたカバーガラスを浸漬させ、そのまま常温で30分間静置し、カバーガラスに付着させた大腸菌の除菌処理を行った。除菌処理後、洗浄液から雫が生じないよう静かに試験管内のカバーガラスを取り出し、20mlの滅菌水が分注された先と同型のガラス製試験管内に30分間浸漬して洗浄液成分を洗い落とし、滅菌水の雫が生じないよう静かにカバーガラスを取り出した。次いで、カバーガラス表面に残存する大腸菌数を測定するため、菌数カウント用の培地表面に、取り出したカバーガラスを片面づつ静かにスタンプした。スタンプ後、シャーレに蓋をして、30℃の恒温層内で24時間の培養処理を行い、スタンプした箇所に生じたコロニー数をカウントし、滅菌水2のみで除菌処理したもので生じたコロニー数を基準として、各洗浄液を用いた場合でも同様の操作によりコロニー数をカウントして、基準のコロニー数に対する百分率で表した。なお、除菌処理において、洗浄液6を用いた操作を実施例6とし、洗浄液7は実施例7、洗浄液8は実施例8、洗浄液9は実施例9、洗浄液10は実施例10、洗浄液11は実施例11、洗浄液12は実施例12として表し、滅菌水2を用いた操作を比較例2として表した。
【0046】
【表2】

【0047】
試験例3:マンノースと非イオン系界面活性剤を有効成分とする除菌洗浄剤による除菌効果
試験例2に記載された方法において、菌液の菌濃度が8.8×10(cfu/ml)であり、洗浄液として表3に示した組成に従って、洗浄液13〜18と、対比用に滅菌水3を用意した他は、同様の試薬及び装置を用いて同様の操作を行い、除菌効果を測定した。評価方法は、滅菌水3のみで除菌処理したもので生じたコロニー数を基準として、各洗浄液13〜18を用いた場合も同様の操作によりコロニー数をカウントして、基準のコロニー数に対する百分率で表した。なお、除菌処理において、洗浄液13を用いた操作を実施例13とし、洗浄液14は実施例14、洗浄液15は実施例15、洗浄液16は実施例16、洗浄液17は実施例17、洗浄液18は実施例18とし、滅菌水3を用いた操作を比較例3として表した。
【0048】
【表3】

【0049】
試験例4:マンノースと陰イオン系界面活性剤を有効成分とする除菌洗浄剤による除菌効果
試験例2に記載された方法において、菌液の菌濃度が1.1×10(cfu/ml)であり、界面活性剤として陰イオン系界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(試薬、東京化成工業株式会製)を用い、表4に示した組成に従い滅菌水中に結晶マンノースと陰イオン系界面活性剤を添加し、洗浄液19〜26と、対比用に滅菌水4を用意した他は、同様の試薬及び装置を用いて同様の操作を行い、除菌効果を測定した。評価方法は、滅菌水4のみで除菌操作したもので生じたコロニー数を基準として、各洗浄液19〜26を用いた場合も同様の操作によりコロニー数をカウントして、基準のコロニー数に対する百分率で表した。なお、除菌処理において、洗浄液19を用いた操作を実施例19とし、洗浄液20は実施例20、洗浄液21は実施例21、洗浄液22は実施例22、洗浄液23は実施例23、洗浄液24は実施例24、洗浄液25は実施例25とし、洗浄液26は実施例26とし、滅菌水4を用いた操作を比較例4として表した。
【0050】
【表4】

【0051】
試験例5:マンノースと陰イオン系界面活性剤を有効成分とする除菌洗浄剤による除菌効果
試験例4に記載された方法において、菌液の菌濃度が8.2×10(cfu/ml)であり、洗浄液として表5に示した組成に従って、洗浄液27〜31と、対比用に滅菌水5を用意した他は、同様の試薬及び装置を用いて同様の操作を行い、除菌効果を測定した。評価方法は、滅菌水5のみで除菌操作したもので生じたコロニー数を基準として、各洗浄液27〜31を用いた場合も同様の操作によりコロニー数をカウントして、基準のコロニー数に対する百分率で表した。なお、除菌処理において、洗浄液27を用いた操作を実施例27とし、洗浄液28は実施例28、洗浄液29は実施例29、洗浄液30は実施例30、洗浄液31は実施例31とし、滅菌水5を用いた操作を比較例5として表した。
【0052】
【表5】

【0053】
試験例6:マンノースとエタノールを有効成分とする除菌洗浄剤による除菌効果
マンノースは試験例1と同じものを使用し、エタノールは市販の試薬(試薬特級:和光純薬工業株式会社製)を使用して、表6に示した組成に従い、滅菌水中に結晶マンノースとエタノールを添加し、マンノースとエタノールを有効成分とする除菌洗浄剤である洗浄液32〜34と、対比用に滅菌水6及び所定濃度に調整したエタノール水溶液1を用意した。調製した洗浄液とエタノール水溶液は、試験例1と同じく0.2μmの滅菌フィルターを用いてろ過滅菌した。次に、上記菌液の調製に記載された方法に従って、菌濃度が8.0×10(cfu/ml)の菌液を調製した。次に、調製した菌液20mlをガラス製試験管(内径25mm×高さ120mm)内に加えて、その中に長方形のカバーガラス(商品名:MICRO COVER GLASS、THICKNESS No.1、MATSUNAMI製、22mm×24mm、厚さ:0.12〜0.17mm)を10分間浸してカバーガラス表面に大腸菌を付着させ、菌液の雫が生じないよう静かにカバーガラスを取り出した。次いで、洗浄液32〜35、滅菌水6及びエタノール水溶液1を、先と同型のガラス製試験管にそれぞれ20mlづつ分注し、各試験管別に大腸菌を付着させたカバーガラスを浸漬させ、そのまま常温で10秒間静置し、カバーガラスに付着させた大腸菌の除菌処理を行った。除菌処理後、洗浄液から雫が生じないよう静かに試験管内のカバーガラスを取り出し、40mlの滅菌水が分注された先と同型のガラス製試験管内に30分間浸漬して洗浄液成分を洗い落とし、滅菌水の雫が生じないよう静かにカバーガラスを取り出した。次いで、カバーガラス表面に残存する大腸菌数を測定するため、菌数カウント用の培地表面に、取り出したカバーガラスを片面づつ静かにスタンプした。スタンプ後、シャーレに蓋をして、30℃の恒温層内で24時間の培養処理を行い、スタンプした箇所に生じたコロニー数をカウントし、滅菌水6のみで除菌処理したもので生じたコロニー数を基準として、各洗浄液を用いた場合でも同様の操作によりコロニー数をカウントして、基準のコロニー数に対する百分率で表した。なお、除菌処理において、洗浄液32を用いた操作を実施例32とし、洗浄液33は実施例33、洗浄液34は実施例34とし、滅菌水6を用いた操作を比較例6、エタノール水溶液1を用いた操作を比較例7として表した。
【0054】
【表6】

【0055】
試験例7:マンノースとエタノールを有効成分とする除菌洗浄剤による除菌効果
試験例6に記載された方法において、菌液の菌濃度が7.8×10(cfu/ml)であり、洗浄液として表7に示した組成に従って、洗浄液35〜37と、対比用に滅菌水7及びエタノール水溶液2を用意した他は、同様の試薬及び装置を用いて同様の操作を行い、除菌効果を測定した。評価方法は、滅菌水7のみで除菌操作したもので生じたコロニー数を基準として、各洗浄液35〜37を用いた場合も同様の操作によりコロニー数をカウントして、基準のコロニー数に対する百分率で表した。なお、除菌処理において、洗浄液35を用いた操作を実施例35とし、洗浄液36は実施例36、洗浄液37は実施例37とし、滅菌水7を用いた操作を比較例8、エタノール水溶液2を用いた操作を比較例9として表した。
【0056】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンノースを有効成分として含有する除菌洗浄剤。
【請求項2】
アルコール類及び/又は界面活性剤を含有する請求項1に記載の除菌洗浄剤。

【公開番号】特開2007−99639(P2007−99639A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288612(P2005−288612)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000223090)東和化成工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】