説明

除菌装置

【課題】電解水ミストが到達しにくい大空間であっても効率よく空気中および物体表面の除菌を行う。
【解決手段】供給された水道水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解槽と、電解水が供給されて電解水が浸透される気液接触部材5と、電解水が供給され、電解水から電解水ミストを生成するミスト生成装置90と、気液接触部材5内を通過させて空気を室内に吹き出すべく送風し、あるいは、電解水ミストを前記室内に散布すべく送風する送風装置7と、を備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌、ウィルス、真菌等の空中浮遊あるいは物体の表面に付着している微生物(以下、単にウィルス等という)の除去が可能な除菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウィルス等の除去を目的として、空気中に電解水ミストをノズルにより拡散させて、この電解水ミストをウィルス等に直接接触させ、これらウィルス等を不活化する空気除菌装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−181358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した除菌装置では、電解ミストをノズルにより拡散させるに留まり、微粒子状の電解水ミストが到達しやすい使用環境下、すなわち、比較的小空間では効力を発揮するものの、電解水ミストが到達しにくい使用環境下、すなわち、大空間、例えば幼稚園や小・中・高等学校や、介護保険施設や、病院等では効力を発揮しにくいという問題がある。
そこで、本発明の目的は、電解水ミストが到達しにくい大空間であっても効率よく空気中および物体表面の除菌を行うことが可能な除菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、供給された水道水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解水生成部と、前記電解水が供給されて前記電解水が浸透される気液接触部材と、前記電解水が供給され、前記電解水から電解水ミストを生成する電解水ミスト生成部と、前記気液接触部材内を通過させて空気を室内に吹き出すべく送風し、あるいは、前記電解水ミストを前記室内に散布すべく送風する送風部と、を備えたことを特徴としている。
上記構成によれば、電解水生成部は、供給された水道水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成し、気液接触部材および電解水ミスト生成部に供給される。
これにより、気液接触部材には、電解水が浸透され、電解水ミスト生成部は、電解水ミストを生成する。
そして、送風部は、気液接触部材に対しては、気液接触部材内を通過させて空気を室内に吹き出すべく送風する。
一方、送付部は、電解水ミスト生成部に対しては、電解水ミストを室内に散布すべく送風することとなる。
【0005】
この場合において、前記気液接触部材に空気を送風して通過させて室内に吹き出させるのに先だって、前記電解水ミストを前記室内に散布させる制御部を備えるようにしてもよい。
また、前記制御部は、所定時刻に至ると、所定時間の間、前記電解水ミストを前記室内に散布させるようにしてもよい。
さらに、電解水ミスト生成部は、前記電解水を加振するための超音波振動子を備えているようにしてもよい。
さらにまた、前記電解水ミスト生成部は、電極を有し、水道水を電気分解して電解水を生成する電解ユニットを備えて構成してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電解水が浸透された気液接触部材を通過する空気の除菌効率の向上を図ることができるとともに、室内に電解ミストを満遍なく散布することができ、机などの物体の表面に付着しているウィルス等の除菌効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図1において、床置き式除菌装置1は、箱形の筐体2を備え、この筐体2は、脚片2Aと、前パネル2Bと、天パネル2Cとを含み、この天パネル2Cの両側には、操作蓋2D、開閉蓋2Eがそれぞれ横並びに配置されている。
【0008】
図2は、内部構成を示す斜視図である。
また、図3は、筐体の縦断面図である。
筐体2の内部には、図2に示すように、上下方向に延出する2枚の仕切り板51、52が設けられ、これら仕切り板51、52によって上記筐体2の内部は、3つの室(除菌室60、電装室61、給水室62)に区分けされている。筐体2の中央に形成された除菌室60の下部には、横長の吸込口3が形成され、この吸込口3の上方にはプレフィルタ3Aが配置されている。このプレフィルタ3Aの上方には、送風ファン7が支持板8を介して、上記仕切り板51、52に支持されている。この支持板8の上方には、保水性の高い気液接触部材5が、図3に示すように、筐体2の背面側から前面側に向けて下がるように斜めに配置されている。本実施形態では、この気液接触部材5は矩形形状に形成されており、当該気液接触部材5を筐体2内に斜めに配置することにより、この気液接触部材5の接触面積を減少させることなく、筐体2の高さ及び奥行きを小さくすることができ、この筐体2の小型化を図ることが可能となっている。
【0009】
ここで、気液接触部材5の傾斜角θは、30°以上であることが望ましい。それ以下の傾斜角θの場合、滴下した電解水が、気液接触部材5の傾斜に沿って流れず、下方に落下する。また、傾斜角θが90°に近づいた場合、気液接触部材5を通過する送風経路が水平に近くなり、その分だけ上方への吹き出しが困難になる。この吹き出し方向を水平に近付けた場合、吹き出し空気を遠くに送風できなくなり、大空間の除菌に適した装置とならない。傾斜角θは、30°<θ<80°が好ましく、さらに好ましくは、55°<θ<75°であり、本構成では約57°である。
【0010】
また、気液接触部材5と送風ファン7との間には、当該気液接触部材5を通過した電解水を受ける水受皿9が配置され、気液接触部材5の上方には、横長の吹出口4が形成されている。
この吹出口4の一部であるミスト散布口4Aの下部には、電解水ミストMを散布すべく生成するためのミスト生成装置90が配置されている。
筐体2の左側に形成された電装室61には、図示を省略したが、当該空気調和装置1の運転制御を司るプリント基板などの電装部品が収容されている。
一方、筐体2の右側に形成された給水室62には、図2に示すように、上記水受皿9で受けた電解水を貯める給水タンク支持皿10と、この給水タンク支持皿10に貯めた電解水を汲み出す循環ポンプ13と、この循環ポンプ13で汲み出した水を電気分解して電解水を生成する電解槽31等が収容されている。
【0011】
ここで、ミスト生成装置90の構成について説明する。
図4は、ミスト生成装置の断面図である。
ミスト生成装置90は、電解槽31により生成され、供給された電解水WEを蓄える電解水貯水部91と、電解水貯水部91内の電解水EWを加振して電解水ミストMを生成する超音波振動子92と、ミスト生成装置90の上部筐体93と、電解水貯水部91および上部筐体93により形成され、送風ファン7からの空気が下面開口94から導入され、電解水ミストMとともにミスト散布口4Aから放出されるための送風路95と、を備えている。
上記構成により、ミスト生成装置90の超音波振動子92は、電解水貯水部91内の電解水EWを加振して電解水ミストMを生成する。このとき、送風ファン7からの空気が下面開口94から導入され、生成された電解水ミストMとともにミスト散布口4Aから放出され、室内に散布されることとなる。
【0012】
図5は、気液接触部材5に電解水を滴下する電解水供給機構の説明図である。
気液接触部材5の下方には、水受皿9が配置され、この水受皿9には、給水タンク支持皿10が連接されている。この給水タンク支持皿10には、当該支持皿10内に塩素イオンを含む水道水を供給する給水タンク11と、循環ポンプ13とが配置されている。この循環ポンプ13には電解槽31が接続され、この電解槽31には、三方弁35を介して電解水供給管17A、17Bが接続されている。電解水供給管17Aは、軸方向に沿って略等間隔で形成された多数の散水孔77を備えて構成されている。これら各散水孔77は、気液接触部材5の各エレメント部E(後述する)に対応する位置に形成されている。また、電解水供給感17Bは、ミスト生成装置90の電解水貯水部91に電解水EWを供給可能に接続されている。
【0013】
図6は、電界槽の構成説明図である。
電解槽31は、図6に示すように、水受皿9及び給水タンク支持皿10より上方に配置され、電解槽31には循環ポンプ13が運転を開始すると、給水タンク支持皿10から吸い上げられた水が貯留され、循環ポンプ13が運転を停止すると、電解槽31内の水は重力により給水タンク支持皿10に自然落下し、電解槽31が空になる。
【0014】
この電解槽31には、図6に示すように、一方が正、他方が負となる対の電極32、33を交互に備え、電極32、33は、通電された場合、電解槽31に流入した水道水を電気分解して活性酸素種を生成させる。ここで、活性酸素種とは、通常の酸素よりも高い酸化活性を持つ酸素と、その関連物質のことであり、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、或いは過酸化水素といった、いわゆる狭義の活性酸素に、オゾン、次亜ハロゲン酸等といった、いわゆる広義の活性酸素を含めたものとする。電解槽31は、気液接触部材5に接近して配置され、水道水を電気分解して生成された活性酸素種を、ただちに気液接触部材5に供給できるように構成される。
電極32、33は、例えばベースがTi(チタン)で皮膜層がIr(イリジウム)、Pt(白金)から構成された電極板であり、この電極32、33に流れる電流値は、電流密度で数mA(ミリアンペア)/cm2(平方センチメートル)〜数十mA/cm2になるように設定され、所定の遊離残留塩素濃度(例えば1mg(ミリグラム)/l(リットル))を発生させる。
【0015】
詳述すると、上記電極32、33により水道水に通電すると、カソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
の反応が起こり、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応が起こると同時に、
水に含まれる塩素イオン(水道水に予め添加されているもの)が、
2Cl-→Cl2+2e-
のように反応し、さらにこのCl2は水と反応し、
Cl2+H2O→HClO+HCl
となる。
従って、電極32、33に通電することにより、殺菌力の大きいHClO(次亜塩素酸)を発生させ、この次亜塩素酸が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、この気液接触部材5で雑菌が繁殖することを防止でき、気液接触部材5を通過する空気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。また、空気中の臭気も気液接触部材5を通過する際に、次亜塩素酸と反応し、イオン化して溶解するので、空気が脱臭される。
【0016】
次に、気液接触部材5について説明する。
図7は、気液接触部材の外観斜視図である。
気液接触部材5は、図7に示すように、電解水を浸透させるとともに空気を通過させる複数(本実施形態では5つ)のエレメント部Eと、これらエレメント部Eを支持するフレーム部Fとを備えて構成されている。このフレーム部Fは、下枠71と、この下枠71の両端に固定される一対の縦枠72、73と、一方の縦枠72の上部を貫通して他方の縦枠73の上部に先端が固定される電解水供給管17と、この電解水供給管17を覆うように一対の縦枠72、73の上端部間に固定される上枠(散水部)74とを備える。すなわち、電解水供給管17は、気液接触部材5の長手方向に沿って形成された上枠(散水部)74に挿入されている。
【0017】
図8は、気液接触部材の断面図である。
この上枠74は、図8に示すように、上板74A、前板74B及び背板74Cを有する断面略コ字状に形成され、これら前板74B及び背板74Cの内側の面には、それぞれ上板74Aに略平行に延出した各一対の支持部材75、75が形成されている。これら支持部材75、75の間には、電解水供給管17の下方に配置される第1分流シート76が差し込まれて支持されている。この第1分流シート76は、上記電解水供給管17に形成された多数の散水孔77から滴下された電解水を当該第1分流シート76全体に拡散させることにより、上記エレメント部Eの上面に均一に電解水を供給可能とするものである。
また、上板74Aの内側の面には、前板74B及び背板74Cに略平行に延出した一対のガイド片79A、79Bが形成されている。また、下枠71の下面には、エレメント部Eに滴下された余剰の電解水を、水受け皿9に排出する排水口71Aが形成されている。
【0018】
図9は、エレメント部の拡大説明図である。
エレメント部Eは、図9に示すように、波板状の波板部材81と平板状の平板部材82とが積層されて構成され、これら積層された波板部材81及び平板部材82の両端に、当該エレメント部の縦枠を構成する一対の枠部材83が配置されている。この枠部材83は、プラスチック等の樹脂によって形成されており、この枠部材83を、積層された波板部材81及び平板部材82の両端に配置することにより、当該エレメント部Eの取り扱いが容易となる。また、エレメント部Eは、上記波板部材81及び平板部材82を積層させることにより、これら波板部材81と平板部材82との間に略三角状の多数の開口85が形成され、気体接触面積が広く確保され、電解水滴下が可能で、目詰まりしにくい構造になっている。
各エレメント部Eは、フレーム部Fの縦枠72、73間に並べて配置されており、これらエレメント部Eの上面(上縁部)には、複数枚の第2分流シート84がそれぞれ配置されている。この第2分流シート84は、第1分流シート76を介して、各エレメント部Eの上面に供給された電解水を当該エレメント部Eの上面全体に拡散させるものである。
【0019】
本実施形態では、第2分流シート84は、3枚の分流シート(上分流シート84A、中分流シート84B及び下分流シート84C)を備えて構成されている。これら中分流シート84B及び下分流シート84Cは、積層された波板部材81及び平板部材82の幅方向の長さと略同一に設定されている。また、上分流シート84Aは、上記中分流シート84B及び下分流シート84Cと略同一の長さを有する基部84A1と、この基部84A1の両端に設けられた折り曲げ部84A2とを有し、これら折り曲げ部84A2を、枠部材83に形成された挿入口83Aに挿し込むことにより、3枚の分流シート84A〜84Cを重ねてエレメント部Eの上面に取り付けることができるようになっている。
【0020】
上記波板素材81、平板素材82、第1分流シート76及び第2分流シート84は、液体の浸透性を有するとともに、電解水による劣化が少ない素材、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、PET(ポリエチレン・テレフタレート)樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE等)またはセラミックス系材料等の素材が使用され、本構成では、PET樹脂が使用されている。なお、電解水は防かび性を発揮するため、気液接触部材5には防かび剤の塗布が不要である。
【0021】
次に、電解水供給管17Aに形成された散水孔77について説明する。
上述のように、気液接触部材5は矩形形状に形成されるとともに、筐体2内に斜めに配置されている。このため、電解水を単に滴下した場合には、この電解水は第1分留シート76の下部76Bに集中することにより、エレメント部Eの背面側には電解水が浸透するものの、当該エレメント部Eの前面側には電解水が浸透しにくく、結果的に均一に電解水をエレメント部Eへ浸透できないことにより、十分な除菌効果が得られないことが考えられる。
このため、本実施形態では、第1分留シート76の全面に均一に電解水を供給すべく、電解水供給管17Aには、筐体2の前面側に向けて略横向きに散水孔77が形成されている。本明細書では、略横向きとは水平方向のみならず、第1分留シート76もしくはエレメント部Eの上面に均一に電解水を供給可能な角度を含む。
具体的には、散水孔77は、図6に示すように、上枠74の前板74B側に形成されたガイド片(内壁)79Aに対向する位置に形成されており、気液接触部材5の傾斜角度をθ(度)とした場合、上記散水孔77は、水平面に対する仰角が90−θ(度)となる位置に形成されている。また、散水孔77は、電解水供給管17の軸方向の所定間隔ごとに略一直線上に形成されている。
【0022】
この構成によれば、電解水供給管17の散水孔77から吐出された電解水は、上枠74の内面に形成されたガイド片79Aに当たり、第1分留シート76の上部76A側に滴下される。この滴下された電解水は、第1分留シート76の傾斜を利用して当該第1分留シート76の上部76A側から下部76B側に移動することにより、当該第1分流シート76全体に浸透して拡散する。この電解水は、第2分流シート84上に滴下され、この第2分流シート84全体に拡散してエレメント部Eの上部全体に浸透し、気液接触部材5の傾斜に沿って下方に浸透していく。
【0023】
このため、気液接触部材5の全体に電解水を均等に浸透させることができることにより、この気液接触部材5で雑菌が繁殖することを防止でき、気液接触部材5を通過する空気中に浮遊するウィルスを不活化することができる。
さらに、上記散水孔77からの当該孔径に対応する総散水量は、循環ポンプ13の吐出量よりも少なく設定されている。このため、電解水供給管17内の電解水圧力が高められ、電解水が末端の散水孔77にまでくまなく供給され、これによって、気液接触部材5の長手方向の隅々にまで電解水を均等に浸透させることができる。
【0024】
次に、床置き式除菌装置1の空気除菌時の動作を説明する。
図10は、実施形態の処理フローチャートである。
本実施形態においては、床置き式除菌装置1は、タイマ運転により起動されるものとする。
まず、床置き式除菌装置1の図示しない制御装置(マイクロコンピュータなどとして構成)は、タイマ装置を監視しており、起動予定時刻である所定時刻に至ったか否かを判別する(ステップS1)。
ステップS1の判別において、未だ起動予定時刻に至っていない場合には(ステップS1;No)、待機状態(あるいはスリープ状態)となる。
ステップS1の判別において、起動予定時刻に至った場合には、床置き式除菌装置1の運転が開始される。
そして、床置き式除菌装置1の図示しない制御装置は、循環ポンプ13を駆動し、これにより、給水タンク支持皿10に溜まった水道水が、電解槽31に供給される。
【0025】
この電解槽31では、電極32、33への通電により、水道水が電気分解されて活性酸素種を含む電解水EWが生成される。
このとき、三方弁35は、電解水供給感17B側に切り替えられており、電解水貯水部91内に所定量の電解水EWが供給される。
これにより、ミスト生成装置90の超音波振動子92は、電解水貯水部91内の電解水EWを加振して電解水ミストMを生成する。
これと並行して、床置き式除菌装置1の図示しない制御装置は、送風ファン7を駆動する。この結果、送風ファン7からの空気がミスト生成装置90の下面開口94から導入され、生成された電解水ミストMとともにミスト散布口4Aから放出され、室内に散布されることとなる(ステップS2)。
この結果、室内の机、棚、テーブル、椅子など物体の表面(特に上面)には、電解水ミストが付着し、当該物体の表面の除菌がなされることとなる。
【0026】
すなわち、電解ミストM中の活性酸素種は、物体表面に(インフルエンザウィルス等の)ウィルス等が付着している場合に、その感染に必須の当該ウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する機能を持ち、これを破壊すると、ウィルス等と、当該ウィルス等が感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、これによって感染が阻止されることとなる。
なお、床置き式除菌装置1の起動予定時刻としては、散布中には室内に人がいないような始業開始前時刻などに設定されているのが好ましい。
【0027】
次に、床置き式除菌装置1の図示しない制御装置は、タイマ装置を監視しており、電解水ミストMの散布終了時間が経過したか否かを判別する(ステップS3)。
ステップS3の判別において、いまだ電解水ミストMの散布終了時間が経過していない場合には(ステップS3;No)、処理を再びステップS2に移行して、電解水ミストMの散布を継続する。
ステップS3の判別において、電解水ミストMの散布終了時間が経過した場合には(ステップS3;Yes)、電解水ミストMの散布を終了し、通常運転に移行する(ステップS4)。
【0028】
次に通常運転時の動作について説明する。
通常運転時においては、三方弁35は、電解水供給感17A側に切り替えられており、
この電解水EWは、電解水供給管17の散水孔77(図6)から吐出され、上枠74に形成されたガイド片79に当たって、第1分流シート76上に滴下される。これにより、電解水が第1分流シート76全体に拡散し、この電解水が第2分流シート84に落下する。この落下した電解水は第2分流シート84に浸透して、この第2分流シート84全体に拡散し、エレメント部Eの上部全体に電解水を供給し、これによって、電解水がエレメント部Eの波板素材81及び平板素材82の隅々に浸透するようになっている。
【0029】
気液接触部材5から滴下した電解水EWは、下枠71に形成された排水口71A(図6)を通じて水受皿9に排出され、この水受皿9の下り勾配を通じて給水タンク支持皿10内に流入し、そこに貯留される。本構成では、水が循環式となっており、蒸発等により水量が減った場合、給水タンク11内の水道水が、給水タンク支持皿10に適量供給される。この給水タンク11は、開閉蓋2E(図1参照)を開いて取り出し自在に配置され、この給水タンク11を取り出して水道水の補給が可能となる。
【0030】
電解水が浸透した気液接触部材5には、送風ファン7を経て、室内の空気が供給される。この室内の空気は、気液接触部材5のエレメント部Eにしみ込んだ活性酸素種に接触して、再び、室内に吹き出される。この活性酸素種は、室内の空気中に、例えばインフルエンザウィルスが浮遊した場合、その感染に必須の当該ウィルスの表面蛋白(スパイク)を破壊、消失(除去)する機能を持ち、これを破壊すると、インフルエンザウィルスと、当該ウィルスが感染するのに必要な受容体(レセプタ)とが結合しなくなり、これによって感染が阻止される。実証試験の結果、インフルエンザウィルスが浮遊した空気を、本構成の気液接触部材5に通した場合、当該ウィルスを99%以上除去できることが判明した。
【0031】
以上の説明のように、本実施形態によれば、物体の表面に付着しているウィルス等あるいは空気中に浮遊しているウィルス等の双方について除菌することができ、より衛生的な環境を構築することができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、筐体2内に矩形状の気液接触部材5を斜めに配置し、この気液接触部材5のエレメント部Eの上面に上方から電解水供給管17を介して電解水を滴下し、この電解水が浸透したエレメント部Eに空気を送風して室内に吹き出す構成を有し、電解水供給管17には、上記エレメント部Eの上面に略均等に電解水を供給可能に略横向きの散水孔77を形成したため、この散水孔77から吐出された電解水は、エレメント部Eの上面に略均等に供給されことにより、このエレメント部E全体に略均等に電解水を浸透させることができる。従って、このエレメント部Eに空気を通過させた場合、この空気と電解水とがより接触しやすい状態にあるため、当該エレメント部Eを通過する空気の除菌効率の向上を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、電解水供給管17は、気液接触部材5の長手方向に沿って形成された上枠74に挿入され、散水孔77は、この上枠74のガイド片79に対向する位置に形成されているため、このガイド片79に当たった電解水は、第1分留シート76の上部76A側に滴下される。このため、電解水は、第1分流シート76全体に拡散して第2分流シート84に滴下し、この第2分流シート84全体に拡散してエレメント部Eの上面全体に浸透し、気液接触部材5の傾斜に沿って下方に浸透していく。このため、上記エレメント部E全体に電解水を略均等に浸透させることができ、当該エレメント部Eを通過する空気の除菌効率の向上を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、散水孔77は、電解水供給管17の軸方向に沿って略等間隔で形成されているため、この散水孔77から滴下された電解水は、電解水供給管17に配置された第1分流シート76上に滴下され、この第1分流シート76に浸透することにより、この電解水を当該第1分流シート76の長手方向に略均等に拡散させることができる。このため、電解水は、気液接触部材5のエレメント部Eの上面部に略均等に供給されるため、このエレメント部E全体に電解水を浸透させることができ、従って、当該エレメント部Eを通過する空気の除菌効率の向上を図ることができる。
【0035】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、活性酸素種としてオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を発生させる構成としても良い。この場合、電極として白金タンタル電極を用いると、イオン種が希薄な水から、電気分解により高効率に安定して活性酸素種を生成できる。
このとき、アノード電極では、
2H2O→4H++O2+4e-
の反応と同時に、
3H2O→O3+6H++6e-
2H2O→O3+4H++4e-
の反応が起こりオゾン(O3)が生成される。またカソード電極では、
4H++4e-+(4OH-)→2H2+(4OH-
2-+e-+2H+→H22
のように、電極反応により生成したO2-と溶液中のH+とが結合して、過酸化水素(H22)が生成される。
【0036】
この構成では、電極に通電することにより、殺菌力の大きいオゾン(O3)や過酸化水素(H22)が発生し、これらオゾン(O3)や過酸化水素(H22)を含んだ電解水を作ることができる。この電解水中におけるオゾンもしくは過酸化水素の濃度を、対象ウィルス等を不活化させる濃度に調整し、この濃度の電解水が供給された気液接触部材5に空気を通過させることにより、空気中に浮遊する対象ウィルス等を不活化することができる。また、臭気も気液接触部材5を通過する際に、電解水中のオゾンまたは過酸化水素と反応し、イオン化して溶解することで、空気中から除去され、脱臭される。
【0037】
ところで、水道水を電気分解することにより、電極上(カソード)にスケールが堆積した場合、電気伝導性が低下し、継続的な電気分解が困難となる。
この場合、電極の極性を反転(電極のプラスとマイナスを切り替える)させることが効果的である。カソード電極をアノード電極として電気分解することで、カソード電極上に堆積したスケールを取り除くことができる。この極性反転制御では、例えばタイマを利用して定期的に反転させてもよいし、運転起動の度に反転させる等、不定期的に反転させてもよい。また、電解抵抗の上昇(電解電流の低下、あるいは電解電圧の上昇)を検出し、この結果に基づいて、極性を反転させてもよい。
【0038】
上記実施形態では、出し入れ自在な給水タンク11による給水方式としたが、この給水タンク11の代わりに、例えば水道管を接続して、市水を直接導く水配管給水方式としてもよいことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】内部構成を示す斜視図である。
【図3】筐体の縦断面図である。
【図4】ミスト生成装置の断面図である。
【図5】気液接触部材5に電解水を滴下する電解水供給機構の説明図である。
【図6】電界槽の構成説明図である。
【図7】気液接触部材の外観斜視図である。
【図8】気液接触部材の断面図である。
【図9】エレメント部の拡大説明図である。
【図10】実施形態の処理フローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 床置き式除菌装置
4A ミスト散布口
5 気液接触部材
7 送風装置(送風部)
17A、17B 電解水供給管
31 電解槽(電解水生成部)
35 三方弁
90 ミスト生成装置
91 電解水貯水部
92 超音波振動子
93 上部筐体
94 下面開口
95 送風路
77 散水孔
E エレメント部
F フレーム部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された水道水を電気分解して活性酸素種を含む電解水を生成する電解水生成部と、
前記電解水が供給されて前記電解水が浸透される気液接触部材と、
前記電解水が供給され、前記電解水から電解水ミストを生成する電解水ミスト生成部と、
前記気液接触部材内を通過させて空気を室内に吹き出すべく送風し、あるいは、前記電解水ミストを前記室内に散布すべく送風する送風部と、
を備えたことを特徴とする除菌装置。
【請求項2】
請求項1記載の除菌装置において、
前記気液接触部材に空気を送風して通過させて室内に吹き出させるのに先だって、前記電解水ミストを前記室内に散布させる制御部を備えたことを特徴とする除菌装置。
【請求項3】
請求項2記載の除菌装置において、
前記制御部は、所定時刻に至ると、所定時間の間、前記電解水ミストを前記室内に散布させることを特徴とする除菌装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の除菌装置において、
電解水ミスト生成部は、前記電解水を加振するための超音波振動子を備えていることを特徴とする除菌装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の除菌装置において、
前記電解水ミスト生成部は、電極を有し、水道水を電気分解して電解水を生成する電解ユニットを備えて構成されていることを特徴とする除菌装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−229051(P2007−229051A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51845(P2006−51845)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】