説明

陽電子放出断層撮影法バイオマーカーのためのマイクロ流体放射合成システム(関連出願)本出願は、2007年4月12日に出願された米国特許仮出願第60/923,086号明細書、2007年4月13日に出願された米国特許仮出願第60/923,407号明細書、2007年8月23日に出願された米国特許非仮出願第11/895,636号明細書、及び2008年1月11日に出願された米国特許仮出願第61/010,822号明細書に基づく優先権を主張し、それらの各々の内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる。

例えば陽電子放出断層撮影法(PET)による、迅速、効率的かつ緻密な方法によるイメージングのための放射性化合物の全自動合成のための方法及び装置が開示される。詳細には、本発明の様々な実施形態は、反応器を通って無制限に気体流が流れるマイクロ流体デバイス上で、ターゲット水から出発して従来の化学システムより短い期間内に精製されたPET放射性トレーサを産生する、全放射合成サイクルの自動独立型ハンドフリー操作を提供する。従って、本発明の1つの態様は、反応室と、前記反応室に接続された1つ以上のフローチャネルと、前記反応室に接続された1つ以上のベントと、前記反応室の内外への流量制御を実行するための1つ以上の一体型バルブとを含んでなる、放射標識化化合物を放射合成するためのマイクロ流体チップに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、マイクロ流体デバイス及び関連技術、並びにそのようなデバイスを使用する化学プロセスに関する。より詳細には、本発明は、例えば陽電子放出断層撮影法(PET)による、迅速、効率的かつ緻密な方法によるイメージングのための放射性化合物の全自動合成に関する。詳細には、本発明の実施形態は、PET用プローブ等の、放射性医薬品を多段階化学合成するための自動独立型マイクロ流体機器及びそのようなシステムを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本節では、特許請求の範囲において列挙する本発明の背景又は状況を提供することを意図している。本明細書に記載の説明は、遂行することができたが必ずしも以前には思い描かれ又は遂行されていたものではない概念を含む可能性がある。このため、本明細書で特に指示しない限り、本節に記載されている内容は、本出願における明細書及び特許請求の範囲に対する先行技術ではなく、本節に含めることにより先行技術であると認められるものではない。
【0003】
陽電子放出断層撮影法(PET)は、疾患を検出するためにますます使用されつつある分子イメージング技術である。PETイメージングシステムは、患者組織内の陽電子放出同位元素の分布に基づいて画像を創成する。これらの同位元素は、典型的には、身体内で容易に代謝され若しくは局在化される分子又は身体内の受容体部位に化学的に結合する分子に、共有結合した陽電子放出同位元素(例えば、炭素11、窒素13、酸素15又はフッ素18)を含んでなるプローブ分子の注射によって患者に投与される。PETプローブについては、陽電子放射体の半減期が短いため、プローブの合成、分析及び精製を迅速に完了することが必要とされる。
【0004】
これまでに大容量合成モジュールが開発されており、多数の放射性医薬品化合物の調製に使用されてきた。F−18で放射標識化された一般的医薬品には、2−デオキシ−2−[F−18]−フルオロ−D−グルコース(18F−FDG)、3’−デオキシ−3’−[F−18]−フルオロチミジン(18F−FLT)、9−[4−[F−18]フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(18F−FHBG)、9−[(3−[F−18]フルオロ−1−ヒドロキシ−2−プロポキシ)メチル]グアニン(18F−FHPG)、3−(2’−[F−18]フルオロエチル)スピペロン(18F−FESP)、4−[F−18]フルオロ−N−[2−[1−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−2−ピリジニル−ベンザミド(18F−p−MPPF)、2−(1−{6−[(2−[F−18]フルオロエチル)−(メチル)アミノ]−2−ナフチル}エチリジン)マロノニトリル(18F−FDDNP)、2−[F−18]フルオロ−α−メチルチロシン、[F−18]フルオロミソニダゾール(18F−FMISO)、5−[F−18]フルオロ−2’−デオキシウリジン(18F−FdUrd)が含まれる。その他の一般的な放射標識化化合物には、11C−メチオニン及び11C−酢酸が含まれる。大容量合成モジュールは、大量のスペースを占有し、化学プロセスは標識化化合物を調製するために所望されるよりも長い反応時間サイクルを必要とする。そのようなモジュールは、また、新規の化合物及びプローブの研究調査及び開発のために変更することも困難である。一般に、そのようなモジュールにおける反応は、大規模な液体操作のために必要な途方もなく大きな試薬の希釈のため、低下した効率で行われる。
【0005】
[F−18]−標識分子プローブである2−デオキシ−2−[F−18]−フルオロ−D−グルコース(18F−FDG)の合成は、3つの主要な連続合成プロセスに基づいている。(i)サイクロトロン内におけるターゲット水[O−18]H2Oの衝撃から得られる希[F−18]フッ化物溶液(1〜10ppm)の濃縮;(ii)マンノーストリフレート前駆体の[F−18]フッ化物置換;及び(iii)フッ素化中間体の酸加水分解。現在、[F−18]FDGは、ルーチンベースでは、大規模な市販の合成装置を用いて約50分間の処理時間(又はサイクル時間)で生産されている。これらの合成装置は、一部において、機械的バルブ、ガラスをベースとする反応室及びイオン交換カラムからなる。これらの装置の物理的寸法は、典型的には、およそ80cm×40cm×60cmである。大規模な合成装置についての記述は、例えば、国際公開第2007/066089号パンフレット、国際公開第2005/057589号パンフレット、米国特許出願公開第2007/0031492号明細書、米国特許出願公開第2004/022696号明細書の中に見出すことができる。
【0006】
長い処理時間、大規模合成装置の低い試薬濃度及び[F−18]フッ素の短い半減期(t1/2=109.7分間)のために、結果として生じるプローブの放射化学的収率は、相当に大きく減少することが避けられない。更に、多数の商業化された自動システムは大規模合成のために構築されているので、そのプロセスは貴重な試薬(例えば、前駆体又はKryptofix2.2.2)の大量消費を必要とするが、これは臨床及び調査研究の両方にとって非効率であり不経済である。例えば、単一患者の[F−18]FDG PETイメージングのために必要とされる放射能は、約20mCiであり、これは約240ngのFDGに対応する。マウス等の小型動物イメージング用途には、約200μCi以下の[F−18]FDGしか必要とされない。同じことがFLTについても当てはまる。
【0007】
従って、そのような少量の分子プローブを処理できる、より小型又は超小化されたシステム及びデバイスを開発する必要がある。更に、化学処理を促進して、化学処理手順を単純化しながら、総処理時間又はサイクル時間を短縮させることができ、同時に、広範囲のプローブ、バイオマーカー標識化薬物又は薬物類似体を安価に製造するための柔軟性を提供するようなシステムに対するニーズがある。
【0008】
マイクロ流体デバイスによれば、試薬消費量の減少、高濃度の試薬、高い面積対容積比並びに質量及び熱の移動の制御の改善等の、大規模な反応装置に対する多様な利点が提供される(例えば、K.Jahnisch,V.Hessel,H.Lowe,M.Baerns,Angew.Chem.2004,116:410−451、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.2004,43:406−446、P.Watts,S.J.Haswell,Chem.Soc.Rev.2005,34:235−246、G.Jas,A.Kirschning,Chem.Eur.J.2003,9:5708−5723を参照されたい)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般にマイクロ流体デバイス及び関連技術、並びにそのようなデバイスを使用する化学プロセスに関する。より詳細には、本発明の実施形態は、例えば陽電子放出断層撮影法(PET)による、迅速、効率的かつ緻密な方法によるイメージングのための放射性化合物の全自動合成に関する。詳細には、本発明の様々な実施形態は、反応器を通って無制限に気体流が流れるマイクロ流体デバイス上で、ターゲット水から出発して従来の化学システムより短い期間内に精製されたPET放射性トレーサを産生し、著しく高い反応収率を示し、更に著しく少量の前駆体しか必要としない、全放射合成サイクルの自動独立型ハンドフリー操作を提供する。従って、本発明の1つの態様は、反応室と、前記反応室に接続された1つ以上のフローチャネルと、前記反応室に接続された1つ以上のベントと、前記反応室の内外への流量制御を実行するための1つ以上の一体型バルブとを含んでなる、放射標識化化合物を放射合成するためのマイクロ流体チップに関する。用語「デバイス」、「装置」及び「機器」は、本明細書では、互換的に使用され、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0010】
1つの実施形態では、反応室は、圧力で嵌合されるチップの反応器(反応器)部及び蓋部の内部に位置する。別の実施形態では、蓋の少なくとも一部分は透明である。別の実施形態では、蓋は、枠に入ったガラス窓から構成される。別の実施形態では、チップは一体構造であり、反応室はチップ内に完全に封入されている。別の実施形態によると、チップは、反応室の生成物を配送するように構成されたインターフェースを更に含んでいる。更に別の実施形態によると、インターフェースは、チップの反応器部に接続されている。別の実施形態は、反応室の床が湾曲部を備えてなることを提供する。別の実施形態では、チップは六角形状を有する。
【0011】
別の実施形態によると、チップは、前記反応室を加熱するためのヒータを更に備えてなる。1つの実施形態によると、ヒータは、加熱エレメント、抵抗ヒータ、放熱器、マイクロ波ヒータ、及び反応室へ熱を遠隔配送するためのレーザデバイスのうちの、少なくとも1つを備えてなる。更に別の実施形態では、ヒータは、チップの底面にある開口部を通してチップに連結されている。1つの実施形態では、ヒータが前記開口部の側壁から空隙によって分離されているが、一方、別の実施形態では、ヒータは250ミクロンの部分によって反応室から分離されている。1つの実施形態では、この部分はドープされたDCPD材料を含有してなる。
【0012】
本発明の別の実施形態によると、バルブは、空気圧アクチュエータによって制御される。異なる実施形態では、バルブは、ソレノイドによって制御される。別の実施形態によると、バルブは、1本以上の隆線によって分離されている1つ以上の細い部分を備えたデュアルポートプランジャを備えてなる。異なる実施形態では、バルブは、細い金属部分、先端、及び前記反応室からのガス漏れを防止するように改変された1つ以上のo−リングを備えたプランジャを備えてなる。
【0013】
別の実施形態では、チップは、1つ以上の反応室を更に含んでなる。別の実施形態では、チップは、チップ上に一体化されたイオン交換カラムを備えてなる。1つの実施形態では、チップは前記チップ内に一体化されたHPLCを備えてなるが、他方、異なる実施形態では、チップは、前記チップのインターフェース部内に一体化されたHPLCを備えてなる。別の実施形態では、チップは、排気を除去するための1つ以上の内部フィルタを含んでなる。別の実施形態によると、反応室は、円筒形状及び60μL(マイクロリットル)の容量を有しており、異なる実施形態では、チップは配管延長部を伴わない閉鎖型システムとして構成されている。
【0014】
本発明の別の実施形態によると、チップは、更に、流体及び気体の配送及び除去のネットワークと連絡するように改変されている。1つの実施形態では、1つ以上のシリンジが少なくとも1つの流体又は気体をチップへ配送するために使用される。1つの実施形態では、シリンジは、前記チップへの液体の効率的な配送を実行するために液体内容物を備える1つ以上のバイアルの下方に置かれている。別の実施形態では、シリンジは、前記チップへ気体を配送するために使用される。異なる実施形態では、ネットワークは、プレフィルド個別バイアル及びプレパッケージカートリッジの少なくとも1つとともに作動するように改変されている。1つの実施形態では、カートリッジは、チップとともに単一回使用するために十分な、予め計量された量の試薬を含有している。異なる実施形態では、液体の制御配送は、閉鎖されたベントに対する圧力の段階的増加によって実行される。
【0015】
本発明の別の実施形態によると、溶媒蒸発及び蒸気除去は、反応室内で溶液の上方で、気体を流すことによって行われる。1つの実施形態では、気体は窒素である。異なる実施形態によると、反応室の内容物の過熱は、ベントを閉鎖し、ヒータで反応室を加熱することによって行われる。別の実施形態は、熱を掛ける前に反応室を加圧する工程を含んでなる。異なる実施形態によると、チップは、一体型溶媒除去モジュールを更に備えてなる。
【0016】
本発明の別の側面は、マイクロ流体チップと、前記チップと流体連絡していて少なくとも1つの試薬を含んでなる試薬源と、気体及び流体の配送及び除去ネットワークと、前記ネットワークの作動を制御するように改変された制御装置と、デバイスの1つ以上の放射線に不可欠のコンポーネントを遮蔽するための局所放射線遮蔽とを備えてなる、放射標識化化合物の自動放射合成のための携帯型デバイスに関する。1つの実施形態では、デバイスは、マイクロ流体チップ内の反応室を監視するためのカメラを更に備えてなる。別の実施形態によると、デバイスは、カメラから受信した情報によって1つ以上の工程の完了を認識するように改変された機械視覚(Machine Vision)システムを更に備えてなる。1つの実施形態では、第2工程は、第1工程が完了すると直ちに開始される。
【0017】
本発明の別の実施形態によると、デバイスは、バッチモードで作動するように構成されている。1つの実施形態では、デバイスは、流過(フロースルー)モードで作動するように構成されているが、他方、異なる実施形態では、デバイスはバッチ−流過混成モードで作動するように構成されている。本発明の異なる実施形態では、局所遮蔽は、イオン交換カラム及びF−18源の少なくとも1つに対して実行される。別の実施形態では、制御装置は、プログラム可能な論理制御装置及びユーザインターフェースを備えてなる。1つの実施形態では、ユーザインターフェースは、デバイスの手動操作及び自動操作のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている。
【0018】
別の実施形態では、デバイスは、排気を除去するための1つ以上の内部フィルタを更に備えてなる。別の実施形態では、局所遮蔽は、ユーザによって実施される複数回の合成運転における前記ユーザの放射線への曝露を防止する。1つの実施形態では、充填された試薬の全部はゼロ廃棄物システムによって消費され、異なる実施形態では、デバイスは、イオン交換カラムから[f−18]フッ化物が効率的に溶離されるように、更に改変されている。別の実施形態では、デバイスは、試薬の自己計量を更に備えており、そして別の実施形態では、デバイスは全自動作動するように、更に改変されている。
【0019】
本発明の異なる側面は、1つ以上の試薬をマイクロ流体チップ内に導入し(ここで、前記チップは反応室と、前記反応室へ接続された1つ以上のフローチャネルと、前記反応室へ接続された1つ以上のベントと、前記反応室内外への流通制御を実施するための1つ以上の一体型バルブとを備えている。)、前記試薬を処理して放射標識化化合物を生成させ、そして、前記放射標識化化合物を収集することを含んでなる、放射標識化化合物を放射合成するための方法に関する。
【0020】
本発明の異なる側面は、コンピュータ可読媒体上で実施されるプログラムコードに関し、このプログラムコードは、マイクロ流体チップを使用して制御装置に放射標識化化合物を放射合成するための方法を実行させるための指示を含んでなり、この方法は、1つ以上の試薬を反応室内へ導入し、合成システムを作動させて所定の規定アルゴリズムに応答して前記試薬を処理して放射標識化化合物を生成させ、そして、前記放射標識化化合物を収集することを含んでなる。別の実施形態では、サイクロトロンから受け入れた放射性核種から始まり、注射可能な製剤中の精製生成物へ仕上げる全プロセスは、ユーザの介入を伴わずに自動で実施される。
【0021】
更に、本発明の様々な実施形態による方法及びデバイスは、以下の追加の特徴及び利点を提供する。
・デバイスは、ユーザを放射線に曝露させることなく複数回の運転(異なる生成物の合成を含む)を実行できる;
・充填された試薬の100%を用いる「ゼロ廃棄物」マイクロ流体システム;
・溶媒を、マイクロ流体デバイス内を真空にすることなく、それらの沸点未満で蒸発させることができる;
・反応を、使用した溶媒の沸点の2倍の(又は100℃を超える)温度に加熱された溶液中で実行できる;
・デバイスは、別々の蓋部及び反応器部を伴わない、一体型チップを含んでなるものであってもよい;
・デバイスは、管に接続しているポート内に圧力で嵌合されたピンを備えるインターフェース層を備えずに使用できる;
・デバイスは、イオン交換カラムからの「F−18」フッ化物の超効率的な分別溶離を可能にする;
・反応室の床は、高い熱伝導性及び不活性表面を備える任意の材料を含んでいてよい;
・チップは、(例えば、表面張力によって)試薬の自己計量を可能にする;
・チップは、(例えば、溶液が出入りする間は反応器内に保持できるビーズを反応器内に配置することによって)固体支持体上の試薬を可能にする;
・試薬の分別を可能にするデュアルシリンジシステム(例えば、1つのシリンジには試薬、及びもう1つのシリンジには気体);
・ユーザ及び電子機器を同時に保護する局所遮蔽;
・チップからHPLCカラムへの直接充填;
・生成物の自動認識及び単離;
・卓上操作−ドラフト等の排気装置の取扱いを必要としない;
・自動有機溶媒除去システム;及び
・全プロセス(ターゲット水中のF−18から、患者に注射するために処方される精製生成物まで)は、単一コマンドで自動で実施できる。
【0022】
本発明の様々な実施形態によるこれらやその他の利点及び特徴は、それらの機構及び操作方法とともに、添付の図面と結び付けると以下の詳細な説明から明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して説明する。
【図1】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体チップの横断面を示す図である。
【図2】本発明の1つの実施形態による、組み立てられた代表的なマイクロ流体チップを異なる角度から見た図である。
【図3】本発明の1つの実施形態による、[F−18]−FDG合成のための代表的な工程を示す図である。
【図4】本発明の1つの実施形態による、リモートアクチュエータを備える代表的なマイクロ流体チップを示す図である。
【図5】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体機器のための流体及び気体ネットワークを示す図である。
【図6】本発明の1つの実施形態による、ソレノイドを備える代表的なマイクロ流体チップを示す図である。
【図7】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体工学に基づく機器を示す図である。
【図8】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体工学に基づく機器を示す図である。
【図9】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体工学に基づく機器を示す図である。
【図10】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体工学に基づく機器を示す図である。
【図11】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体工学に基づく機器のためのユーザインターフェースを示す図である。
【図12】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体工学に基づく機器のためのユーザインターフェースを示す図である。
【図13】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体工学に基づく機器のためのユーザインターフェースを示す図である。
【図14(A)−1】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体工学に基づく機器のための流体及び気体ネットワークを示す図である。
【図14(A)−2】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体工学に基づく機器のための流体及び気体ネットワークを示す図である。
【図14(B)−1】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体工学に基づく機器のための流体及び気体ネットワークを示す図である。
【図14(B)−2】本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体工学に基づく機器のための流体及び気体ネットワークを示す図である。
【図15】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体チップの蓋部を示す図である。
【図16】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体チップの反応器部を示す図である。
【図17】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体チップのインターフェース部を示す図である。
【図18】本発明の代表的な実施形態による、結合マイクロ流体チップ及びインターフェースアセンブリを示す図である。
【図19A】本発明の1つの実施形態による、代表的なプランジャバルブ作動を示す図である。
【図19B】本発明の1つの実施形態による、代表的なプランジャバルブ作動を示す図である。
【図20A】本発明の1つの実施形態による、代表的なプランジャバルブを示す図である。
【図20B】本発明の1つの実施形態による、代表的なプランジャバルブを示す図である。
【図21】本発明の1つの実施形態による、代表的なベントバルブを示す図である。
【図22】本発明の1つの実施形態による、代表的なマイクロ流体チップの蓋部を示す図である。
【図23】本発明の代表的な実施形態による、生成物の移動及び精製システムダイアグラムである。
【図24】本発明の代表的な実施形態による、検出及び単離システムダイアグラムである。
【図25】本発明の代表的な実施形態による、検出及び単離デバイスダイアグラムである。
【図26】本発明の代表的な実施形態による、溶媒除去ダイアグラムである。
【図27】本発明の代表的な実施形態による、溶媒除去ダイアグラムである。
【図28】本発明の代表的な実施形態による、バイアル固定具を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の明細書では、限定するためではなく説明するために、本発明が完全に理解されるように細部及び説明を記述する。しかし、当業者には、本発明をこれらの詳細及び説明から外れた他の実施形態において実施できることが明白であろう。
【0025】
2007年8月23日に出願された「マイクロ流体合成装置により生成された放射化学生成物の精製及び分析のためのシステム(System for Purification and Analysis of Radiochemical Products Yielded by Microfluidic Synthesis Devices)」と題された米国特許出願第11/895,636号明細書は、参照により本明細書に全体として組み込まれる。
【0026】
一般に、放射性医薬品を合成するための従来の自動合成装置は非効率的であり、これまでに確認された効率的なマイクロ流体反応器は手動操作を必要とする。本発明の様々な実施形態は、マイクロ流体反応器の自動操作を可能にする。以前のマイクロ流体反応器は、様々な機械的、空気圧式又は極めて単純な電子制御によって固定有鉛ホットセルの内側で操作されてきたが、これには、常にオペレータが注意を払うことを必要とした。これらの反応器は、結果として、顕著な変動性を示す。本発明の1つの態様によって可能になる自動化は、マイクロ流体デバイスを自律的かつ携帯型にする。1つの態様では、本発明のマイクロ流体システムは、医療従事者によって臨床又はR&Dのいずれかの状況において使用でき、そして技術者又は特殊訓練を受けたオペレータの常時存在を必要としない。更に、本発明の実施形態によるマイクロ流体システムは、合成の様々な工程が制御された追跡可能な方法で行われることを可能にする。本発明の別の態様では、シリンジドライバを使用すると、試薬をより正確に配送及び計量することができる。一般に、センサを使用すると、例えば溶媒蒸発等の、工程完了を監視することができる。この配置によれば、より迅速かつよりフェイルセーフな機器が生じる。
【0027】
詳細には、本発明の実施形態は、陽電子放出断層撮影法のためのバイオマーカー又は放射標識化医薬品を全自動合成するためのマイクロ流体システムに関する。本発明の様々な実施形態に関連する利点の一部には、例えば、試薬使用量の減少(従って、化学生成物の費用の減少)、反応効率及び収率を上昇させる、F−18等の放射標識濃度の上昇、及び必要に応じて柔軟な方法で化合物を合成する能力が含まれる。本発明の様々な実施形態のその他の利点には、運転間でユーザへの放射線に曝露させることなく(従来のシステムでは、曝露は不可避である。)、複数の生成物を連続的に合成する能力及び(例えば、数百psiの)高圧反応を実施する能力が含まれる。
【0028】
本明細書で開示するシステムは、本システムを、1つの運転から次の運転へ又は同時にさえ、異なるバイオマーカーのために、使用することを可能にするために、追加の試薬モジュール、廃棄物モジュール及び合成モジュールを加える機構を含むことができる。様々なバイオマーカー合成に同一数の工程が関与する場合には、本機器はハードウエアの変更を伴わずに、又は単一運転のために試薬及び/又は溶媒が事前に充填されている単回使用カートリッジを用いて、再使用することができる。この使用の容易さにより、数人の患者が同日に異なるバイオマーカーを用いて実施される、異なるスキャンを必要とする場合のように、要求に応じたバイオマーカーの合成が必要とされる研究開発環境又は特殊臨床状況において、極めて大きな柔軟性が可能になる。
【0029】
1つの態様では、本発明は、使用しやすく柔軟な自動機器を提供する。従って、本システムは、非熟練者がバイオマーカーの開発、合成の最適化及び試験のために、要求に応じて様々なPETバイオマーカーを合成することを、可能にする。別の態様では、本発明は、現在可能であるサイクロトロンからは離れている病院に配置できる機器を提供する。本明細書に開示するデバイスは、中央集中型(及びおそらく遠隔の)合成設備からの配送を必要とする従来のシステムに関連する崩壊した生成物とは対照的に、新鮮な生成物を要求に応じて合成することを可能にする。このタイプの現場機器は、追加の診療所、患者及び研究室にとって、PET走査をより利用しやすいものにし、地方の放射性薬局(radio−pharmacy)から入手できるものを越える、(高い比活性度を備えた)所望のバイオマーカーを入手する際に更なる柔軟性を提供する。
【0030】
本明細書に開示した方法、システム及びデバイスについての理解を深めるために、下記では有機合成、エンジニアリング及び薬学の分野において使用される用語及び定義を列挙する。
【0031】
「マイクロ流体デバイス」又は「マイクロ流体チップ」又は「合成チップ」又は「チップ」は、少量(例えば、μL(マイクロリットル)又はnL(ナノリットル))の液体の操作及びマイクロチャネルを含む基板内へのそれらの移送を可能にするユニット又はデバイスである。デバイスは、機械的又は非機械的ポンプを使用してマイクロチャネル及び反応室内において移送又は搬送すべき試薬及び溶媒を始めとする液体の操作ができるように、構成できる。デバイスは、当技術分野において公知である微細電気機械的作製方法を用いて構築することができる。或いは、デバイスは、コンピュータ数値制御(CNC)技術を用いて機械加工することができる。デバイスを形成するための基板の例には、ガラス、水晶又はポリマーが含まれる。そのようなポリマーには、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、DCPD(ポリジシクロペンタジエン)、PEEK等が含まれてよい。そのようなデバイスは、カラム、ポンプ、ミキサ、バルブ等を備えることができる。一般に、マイクロ流体チャネル又はチューブ(時にはマイクロチャネル又はキャピラリと呼ばれる)は、少なくとも1つの断面寸法(例えば、高さ、幅、深さ、直径)を有しており、これは、例えば、限定されるわけではないが、1,000μm〜10μmの範囲に及んでよい。マイクロチャネルは、例えば、nL〜μLの水準の極めて少量の液体を操作することを可能にする。マイクロ反応器は、1つ以上のマイクロチャネルと流体連絡している1つ以上のリザーバを更に備えていてもよく、各リザーバは、例えば約5〜約1,000μLの容量を有する。
【0032】
「反応室」(場合によっては「反応器」又は「マイクロ反応器」と呼ばれる)は、反応が発生する場所であるマイクロ流体チップ(本明細書又は例えば米国特許第11/514,396号明細書、米国特許第11/540,344号明細書、又は米国特許第11/701,917号明細書(これらの各々が全体として参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されているような)上の機能に関する。反応室は、例えば、円筒形であってよい。反応室は、それに接続された、試薬及び/又は溶媒を配送し又は生成物除去のために設計されている1つ以上のマイクロチャネル(例えば、オンチップバルブ、又は同等のデバイスによって制御される)を有している。例えば、限定されるわけではないが、反応室は、約0.5:10を超える径対高さ比を有していてよい。例えば、限定されるわけではないが、反応器の高さは、約25μm(マイクロメートル)〜約20,000μmであってよい。
【0033】
「カラム」は、反応物又は生成物を分離し、精製し又は濃縮するために使用できるデバイスを意味する。そのようなカラムは当技術分野において周知であり、イオン交換及びアフィニティークロマトグラフィカラムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0034】
「フローチャネル」又は「チャネル」は、それを通って流体、溶液、又は気体が流通できるマイクロ流体チャネルを意味する。例えば、限定されるわけではないが、そのようなチャネルは、約0.1mm〜約1mmの断面を有していてよい。例えば、限定されるわけではないが、本発明の実施形態のフローチャネルも、また、約0.05ミクロン〜約1,000ミクロンの範囲内の断面寸法を有していてよい。フローチャネルの特定の形状及びサイズは、所望のスループットを始めとする反応プロセスのために必要とされる特定用途に依存し、所望の用途に従って構成し及び寸法を設定することができる。
【0035】
「ターゲット水」とは、サイクロトロン等の、粒子加速器内での高エネルギー陽子との衝撃後の[18O]H2Oである。ターゲット水は、[18F]フッ化物を含む。本発明の1つの実施形態では、ターゲット水の調製は、本明細書に開示されたシステムとは別個に企図されている。ターゲット水は、本発明の1つの実施形態ではカートリッジから、別の実施形態では予め充填した個別バイアルから、システムに供給される。
【0036】
マイクロ流体「バルブ」(又は「マイクロバルブ」)は、フローチャネル、溶媒又は試薬リザーバ、反応室、カラム、マニホルド、温度制御エレメント及びデバイスの間のフローを始めとする、マイクロ流体デバイスの様々なコンポーネント間の流体、気体又は溶液流等を制御又は調節するために、制御又は作動させられるデバイスを意味している。例を挙げれば、限定するためではないが、そのようなバルブには、機械的(又はマイクロメカニカル)バルブ、(圧力作動式)エラストマーバルブ、空気圧バルブ、固体バルブ等が含まれる。そのようなバルブ及びそれらの作製方法の例は、例えば、「新型マイクロバルブ(The New Generation of Microvalves)」分析化学(Analytical Chemistry).Felton,429−432(2003)の中に見出すことができる。
【0037】
用語「放射性同位元素」は、放射性崩壊を示す(例えば、陽電子を放出する)同位元素を意味する。そのような同位元素は、当技術分野では放射性同位元素又は放射性核種とも呼ばれる。放射性同位元素は、本明細書では、一般に使用される、元素の名称又は記号及びその質量数の様々な組み合わせを用いて、命名されている(例えば、18F、[F−18]、フッ素−18)。代表的な放射性同位元素には、各々4.2日、110分、20分、10分、及び2分の半減期を有するI−124、F−18、C−11、N−13及びO−15が含まれる。
【0038】
用語「FLT前駆体」は、「N−ジメトキシトリチル−5’−O−ジメトキシトリチル−3’−O−ノシル−チミジン」(「BOC−BOC−ノシル」としても公知である);FMISOは、[F−18]フルオロミソニダゾールを表すために使用することができ、そしてFHBGは、9−[4−[18F]フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニンを表すために使用できる。
【0039】
用語「反応性前駆体」又は「前駆体」は、放射性医薬品を形成するために、典型的には求核置換、求電子置換又はイオン交換によって、放射性同位元素と反応させられる有機又は無機の非放射性分子を意味する。反応性前駆体の化学的性質は、試験対象の生理学的プロセスに左右される。典型的には、反応性前駆体は、脳を始めとする身体内の標的部位を選択的に標識する放射標識化化合物を生成するために使用されるが、このことは、この化合物が被験者における標的部位と反応性である可能性があること、そして必要な場合には、血液脳関門を越えて搬送できることを意味している。典型的な有機反応性前駆体には、糖、アミノ酸、タンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、小分子医薬品及びそれらの誘導体が含まれる。18F−FDGの調製に使用される1つの一般的前駆体は、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−2−O−トリフルオロメタンスルホニル−β−D−マンノピラノースである。
【0040】
語句「反応器温度」は、反応室内で観察され、測定され、及び/又は維持される温度を意味する。
【0041】
「反応時間」は、次の工程が起きる前に反応が進行できる時間である。
【0042】
語句「試薬圧」又は「溶媒圧」は、例えば反応室への途中の、試薬又は溶媒をフローチャネル内へ駆動させる、試薬又は溶媒バイアルに印加される気体(通常は、窒素又はアルゴン等の不活性気体)の圧力を意味する。
【0043】
語句「試薬充填時間」又は「溶媒充填時間」は、オンチップバルブが閉鎖し、これにより追加の試薬又は溶媒が反応室内へ通過するのを阻止する前に、試薬又は溶媒をマイクロ流体チップ内に進入させる時間を意味している。
【0044】
用語「蒸発」は、液体から気体への溶媒の状態における変化を意味しており、通常は、その後に反応器からのその気体の除去が行われる。気体を除去するための1つの方法は、真空を適用することによって実行される。例えばアセトニトリル及び水等の、様々な溶媒は、本明細書に開示した合成経路中に蒸発させられる。当業者には公知であるように、アセトニトリル及び水等の、各溶媒は、異なる蒸発時間及び/又は温度を有する可能性がある。別の実施形態では、蒸発は、反応室からの蒸気の除去を促進するために不活性気体を反応混合物の上方を流しながら、反応室を加熱することによって行われる。
【0045】
用語「溶離」は、一般には、特定の場所からの化合物の除去を意味する。イオン交換カラムからの[F−18]フッ化物の溶離は、カラムから反応室への溶離液による[F−18]フッ化物の搬送を意味する。反応室からの生成物の溶離は、例えば、反応室を多量の溶媒、例えば水、でフラッシュすることによる、生成物の反応室からオフチップ生成物バイアル(又は精製システム)への、搬送を意味する。
【0046】
システムにおいてある時点で適用される真空(又は気体圧)に関連する「オフ/オン時」は、真空(又は気体圧力)のが開始又は停止された時点の放射合成操作時点を表す。
【0047】
「窒素圧」又は「アルゴン圧」を始めとする「不活性気体圧」は、窒素又はアルゴン等の、所定の調節装置を通過させられる不活性気体の圧力を意味する。
【0048】
語句「内部フィルタ」は、木炭等の吸着材料が充填されていて2つのポートを備えた、バイアル、シリンジ又は別の容器をいう。マイクロ流体チップからの排気がそのようなフィルタを通過するときに、放射性及び非放射性の汚染物質は、一般的に捕捉され、フィルタ上に留まる。反応排気が内部フィルタを通過した後には、精製された気体が大気中に放出される。適切な内部フィルタの使用は、携帯型システムの安全な操作のための追加排気処理の必要性を、減少させ又はなくする。1つの実施形態では、本明細書に開示した携帯型システムをドラフト内で作動させることは必要ではない。
【0049】
試薬フローチャネルに関連して使用する場合の用語「プライミング」は、試薬源及び反応室を接続するフローチャネルを通って試薬を搬送することを意味するが、このとき試薬の流れは閉鎖されたオンチップバルブを通過し、開放されたフローチャネルを通って廃棄物容器へ流れる。この方法では、試薬が反応室へ加えられる場合は、対応するオンチップバルブが開放され、空気圧式作動がプライミングされたフローチャネルから最小遅延で試薬を反応室内へ搬送する。代替法では、フローチャネルがプライミングされない場合は、試薬は、試薬源から反応室へフローチャネルの全長を、移動しなければならず、これは、その経路内の気体を、反応室及び合成チップ上の開放ベントチャネルを通って、移動させる。これは試薬又は溶媒の損失を引き起こす可能性があるが、これはフローチャネルをプライミングすることによって回避される。同様に、適切な場合は、用語「プライミング」は、溶媒フローチャネルに関連して使用できる。
【0050】
語句「予備包装ディスポーザブル試薬カートリッジ」は、本明細書に記載した自動システム内又は上に、取り外し可能及び交換可能に適合するように設計された装置を意味する。カートリッジ内に保持された試薬は、本明細書に記載したシステム内にカートリッジを嵌めこんだ後、反応室へ搬送することができる。放射標識化化合物を調製するために適切である場合は、試薬カートリッジは、溶媒並びに試薬を含有していてよい。或いは、溶媒は、試薬とは別個に提供されてよい。
【0051】
1つの実施形態では、本明細書に開示した自動システムには、ディスポーザブル試薬カートリッジを備えたシステムが含まれる。1つの実施形態では、本発明は、単純にカートリッジを取り替えることによって、交差汚染のリスクを最小限に抑えながら、様々な異なる放射性医薬品を作成する柔軟性を備える自動システムに関する。そのようなカートリッジを使用することには、単純化されたセットアップ、製造運転間の迅速な変更、カートリッジ及び試薬の運転前自動診断検査、試薬のトレーサビリティ、単回使用、不正開封防止策及び乱用防止策を始めとする、多数の利点がある。試薬カートリッジの置換は、異なる放射性医薬品を調製する度に、完全に新規な自動合成システムを設計する必要性を排除する。本明細書に記載したシステムは、遮蔽を開いてユーザを放射線に曝露させることなく、カートリッジ交換を可能にする。
【0052】
本明細書に開示した合成システムにおいて使用するために適切な熱源には、これらに限定されるわけではないが、抵抗加熱、局所及び非局所マイクロ波加熱及びPeltier(ペルティエ)デバイスが含まれる。様々なセンサ(例えば、フローセンサ、液−気界面センサ、放射能センサ、圧力センサ、温度センサ等)及びその他の装置コンポーネント(例えば、バルブ、スイッチ等)は、システム内に一体化し、プロセス制御及び監視目的でコンピュータに接続することができる。
【0053】
本明細書に開示した合成システムは、マイクロ流体合成チップを備えており、この中で、例えば、試薬が混合及び加熱され、溶媒が交換されて、所望の化学プロセスが実施される。
【0054】
従来のマイクロ流体チップは、実際の用途において実現するには、しばしば作動が、(概念的にさえ)、遅すぎた。本発明の実施形態は、迅速な合成を可能にし、同時に低収率のバイオマーカー製造には極めて重要な反応収率を増加させる。これまでに公知のマイクロ流体チップは手動又は半手動で作動させなければならなかったので、オンチップで証明された利点にもかかわらず現実の適用には非実用的となる。その結果として、以前には、自動機器は非マイクロ流体工学法を用いて実施されていた。1つの側面では、本発明は、バッチモードのマイクロ流体デバイスに基づく自己遮蔽式全自動放射合成機器に向けられる。
【0055】
本明細書に記載したマイクロ流体デバイスは、放射化学合成のために使用すると、より高速で且つより高収率で公知のバイオマーカーを作成することができる。更に、そのようなデバイスは、例えば、典型的には不活発な反応及び/又は従来法によっては有意な量の材料を産生できない反応が関与する新規なバイオマーカーを開発する研究及び開発に努める際に、従来の方法によって効率的には合成できない新規なバイオマーカーの製造を可能にする。従って、(従来の機器を用いた場合の1〜2に対して)1日で10〜20の合成を実施することを可能にする機器は、研究者が反応条件の迅速な最適化を実施することを可能にする。
【0056】
本発明の様々な実施形態は、(例えば、ターゲット水から注射用組成物中の精製生成物への)全自動放射合成が単一機器内で実施される全自動(例えば、ワンタッチ)法で行われること、又は個別の工程制御を可能にすることを記載する。本明細書に開示した様々な例示的な実施形態は、自動モードで公知のバイオマーカーを製造すること並びに個別工程制御を伴うモードで新規なバイオマーカーを開発することのいずれかのために使用できる。
【0057】
本明細書に開示したシステムは、詳細には従来の化学よりも、有意な収率及び反応時間の向上を証明した。1つの代表的なシステムは、ビジュアルベーシック(Visual basic)プログラム及びPLC(プログラマブルロジックコントローラ)によるチップ操作を自動化する。自動プロセスは、自動生成物単離能力をも、また、提供する。
【0058】
以前の閉鎖型マイクロ流体反応器は、ガス透過性ガスケットにより、反応室内にフッ化物及び反応中間体を含有させていた。これらのガスケットは、十分に不活性で、放射標識化条件に耐え、同時に、有意な気体透過性を示すことができる材料から構成されていなければならない。適切なガスケットが入手されても、膜を通過する気体移動に依存するそのような閉鎖型デバイスは、依然として長い蒸発時間及び充填工程に悩まされる。その一方で、効率的な放射合成の要件の1つは速度であることが多い。一般に、これまで開示されたマイクロ反応器では、反応自体よりもむしろ中間(取扱い)工程が主要な遅延源であることが見出されてきた。本発明の様々な実施形態によると、これらの反応工程は、反応効率及び充填工程が、膜を含んでいない無制限の気体経路によって、かなり短縮されるので、時間が最短化される。
【0059】
本明細書に開示したシステム及びデバイスは、膜を必要とせずに、試薬、生成物及び中間体が漏れ出ることを防止することを達成する。更に、それらは過熱反応を実施する能力を保持している。本発明の実施形態は、更に、試薬配送及び溶媒蒸気除去のために配管されたマイクロ反応器に関する。本発明の代表的実施形態による試薬配送は、エラストマーガスケットには依存せず以前のシステムよりはるかに高い圧力に耐え得る、特殊設計のバルブを備えるチャネルによって可能にできる。本発明の典型的な実施形態によって生成されるデバイスは、数百psiで成功裏に作動することが証明されている。1つの例示的な実施形態では、蒸気除去は、液体の表面上方に窒素を流すことによって起きる。この流れは、制御された方法で実施することができ、従って、蒸発速度を決定し又は、反応工程中、完全に遮断することができる。
【0060】
従って、本発明の実施形態によると、例えば[F−18]FDG等のF−18標識化プローブの産生のために様々な機構が使用される場合は、F−18の損失は、回避され、減少させられ又は軽減させられる。更に、本発明の実施形態は、生成物の多様性を増加させるために必要な能力を提供する。本発明の幾つかの実施形態では、本明細書に開示したチップ及びそれらの制御システムは、改良された能力を示すが、それには、それらに限定されるわけではないが、有意の圧力下で反応を実施すること、能動的な混合、試薬の濃縮、加熱及び冷却の速度等を含む。
【0061】
本発明の1つの実施形態は、一体型イオン交換カラムを含むデバイスである。イオン交換カラムの一体化は、イオン交換カラムからチップへの搬送中でのF−18損失を克服する。一般に、カラムは、チップ内に作製されたバレル内に包み込まれ、PEEK又は他の不活性材料フリットで覆うことができる。このカラムは、更にまたチップ流体アダプタベース内に配置することもできる。
【0062】
本発明の別の実施形態は、気体(及び蒸気)の流れを制御するオンチップ一体型バルブを含むデバイスである。1つの変形では、オンチップバルブは液体通過を制御するが、気体制御バルブはオフチップである。別の変形では、液体制御バルブ及び気体制御バルブはどちらもオンチップである。バルブをオンチップへ一体化すると、反応器のより良好な密封並びにより良好な圧力制御が可能になる。これは、また、延長されたオフチップベント配管内への溶媒及び試薬の損失も防止する。従って、バルブプランジャが正に反応室まで達することができるので、バルブと反応室との間のチャネルを排除し、従って配管延長部を備えない閉鎖型システムが可能になる。1つの実施形態では、これらのバルブは、高圧で反応を実施するように構成されている。高圧能力を保証するその他の機構を使用して300psiに達し又は超える圧力を達成することができる。そのような能力は、過熱反応を許容し、これにより、マイクロ波反応器に類似する原理によって導かれる高収率及び反応速度が生じる。
【0063】
本発明の1つの実施形態によると、配管延長部を備えていない1つのバージョンの反応器を構築することができるが、これは完全に閉鎖されており、未反応材料又は未溶離生成物が滞留する可能性があるポケットがない標準のコイン形又は他の形状を有する。標準の形状を有することに加えて、反応器の表面は、表面積を最小限に抑えるために極めて平滑にすることができる。更に、隅部及び溝部をなくして、反応残留物又は水分が集まる可能性があり、近づくのが困難な反応器の部分を減少させることができる。
【0064】
本発明の別の実施形態では、例えば高圧で密封したままにできる反応器については、マイクロ波能力がチップに組み込まれる。反応器上にマイクロ波を集中させると、当業者には公知であるように、極めて迅速な反応が生じる。更に、別の変形は、チップ上にビルトイン音響装置を組み込み、試薬の迅速な混合によって反応を促進することができる。別の変形では、表面音響波を使用して反応室内の混合が促進される。更に別の実施形態では、試薬を混合するために、液体を吸引して、それをジェットの形態で反応室内へ放出することのできるキャピラリチャネルが使用される。
【0065】
本発明の別の実施形態は、高速応答温度制御システムを用いて、加熱及び冷却の速度を改善する。1つの側面では、加熱エレメントは、一体型オンチップである。別のアプローチは、熱伝導「冷却剤」様流体を運ぶ、反応器に極く接近させた一体型ラジエーターであり、その温度はオフチップ又は該チップの別の部分で制御される。一般に、加熱ブロックを温度平衡させるためにはある時間(例えば、1分間以上)を要するが、ブロックから材料の1mm分だけ離れた反応器を同一温度に到達させるためには、より多くの時間が掛かる。本明細書に開示するように、遠隔加熱は、外部に位置決めされ、しかし反応器内に焦点が合わされたレーザを用いて、達成することもできる。更に、又は代わりに、反応器の床面の厚さを、例えば、250μmへ薄くさせ、より迅速でより効率的な熱伝導を行わせることができる。
【0066】
本明細書に開示した加熱及び冷却の速度を増加させるためには、純粋なDCPD(ポリジシクロペンタジエン)よりも良好な熱伝導率を有するチップ材料を使用できる。そのような材料には、例えば、他の材料でドープされたDCPDが含まれる。増加した加熱/冷却速度に取り掛かるための別のアプローチは、反応器のチップの残りの部分からの断熱が関与する。この場合には、加熱及び冷却は、ヒートシンクとして作用するデバイスの質量によって遅くならない。
【0067】
1つの実施形態では、チップのための材料は、ガラスである。或いは、水晶又はシリコン等の類似材料を使用できる。その他の適切な材料は、当業者であれば同定できる。同様に、そのような材料の使用に基づいて、適切な製作方法を組み込むべきである。別の実施形態では、本明細書に開示するチップは、試薬を予備充填する能力を有しており、これにより、単回使用構成が提供される。単回使用構成では、機器は、如何なる液体処理をも実施しない可能性があるので、試薬の無駄が回避される。オンチップ試薬は、真空によって膜を通して移動させ又は反応器内へ吸引することができる。1つのシステムでは、チップを機器内に挿入する前に、チップの全部のバルブが閉鎖され、それらの個別リザーバ内に試薬が保持される。
【0068】
別の実施形態では、HPLCカラム/システムがチップ又は流体ベースアダプタの一部とされている。この精製システムが流体ベースアダプタの一部である場合は、カラムは複数回使用コンポーネントであってよい。本明細書に記載した様々なアプローチを組み込むと、F−18の損失を有意ではない数値へ減少させることができる。
【0069】
本明細書に開示した別の変形は、流過反応器である。流過反応器には、配管若しくは長い螺旋形インチップチャネルに基づく伝統的なタイプ、又は完全に異なる構造が含まれる。そのような可能性には、Gilliesら、「PET放射化学のためのマイクロ流体技術(Microfluidic technology for PET radiochemistry)」アプライド ラディエーション アンド アイソトープ(Applied Radiation and Isotopes)(2006)64:333−336、及びGilliesら、「PET放射性トレーサーの放射合成のためのマイクロ流体反応器(Microfluidic reactor for the radiosynthesis of PET radiotracers)」アプライド ラディエーション アンド アイソトープ(Applied Radiation and Isotopes)(2006)64:325−332によって報告された反応器に類似する円筒形反応器が含まれるが、これらに限定されるわけではない。当業者には公知であるように、反応速度を上昇させるためにいずれかのタイプの反応器に、更に新規な機構を加えることができる。これらの追加には、移動する液体に乱流を導入する又はその流れを単純に方向付けるチャネル又は反応器の表面上の或る形状が含まれてよいが、これに限定されるわけではない。1つの流体を他の流体へジェット噴流させる原理もまた使用されてよい。
【0070】
本明細書に開示したように、ハイブリッド型バッチフロー反応器を創製することもまた可能であり、この場合、第1液体がぐるぐる回り続ける低容量ループ内を循環させられる。ループ内の1つの地点で、第1液体は流過する試薬である第2液体と接触する。第1及び第2液体は、層流モードで相互に接触し、この後に、所定の距離を進んだ後に分離する。このアプローチによれば、重要な試薬及び中間体が、チップから離れない濃縮液中に保持され、他方では他の(安価で非限定的な)試薬は流過することが可能になる。更にまた、フッ化物を捕捉するためにそのような機構を組み込むこともまた可能であり、その場合には、フッ化物は希薄な流通する液体から濃縮された再循環溶液内へ移動させられる。精製段階の一部又は全部の間に、類似の原理を適用することができる。或いは、流過式又は静止バッチ式反応器のいずれにおいても、他の能動的な混合機構を創り出すことができる。
【0071】
別の半バッチアプローチは、本発明の例示的な実施形態による「Hypervap」技術に基づいている。Hypervap法によれば、試薬が連続的に反応器内へ注入され、そこで濃縮されることが可能になる。試薬及び気体の流れを変化させることによって、単一濃度溶液から所望量の試薬が反応器内へ持ち込まれる。その特定試薬は、同一容積(これもまた制御できる)で反応器内にとどまっている。ここで、反応は、チャンバの周りを高速で移動している溶液内の1つのチャンバ内で発生する。生成物は1バッチとして1運転に付き1回しか収集できないが、使用する試薬の量は、その運転中に変化させることができる。このアプローチは、研究及び開発の両方並びに製造用途のために重要な価値がある。
【0072】
本明細書に記載した別の変形では、長距離の材料移動、限定された溶媒交換能力並びに非効率的なF−18捕捉及び放出等の問題に対処するために、追加の有益な特徴が提供される。本発明の例示的な実施形態によるチップは、希薄溶液の効率的な濃縮を可能にする。これらの利点は、一部において、材料移動に伴う損失が本発明の実施形態による一体型デバイスでは減少するという事実のおかげである。例えば、約99%以上の効率で機能できる捕捉及び放出システムを組み込むと、多数の開示されたシステムで観察された全収率が上昇する。この効率は、幾つかの要因によって達成される。第1に、イオン交換床(例えば、AG1−X8又は別の樹脂が充填されている)の容量は最小である(例えば、4μLの総容積及び2μL未満の空隙容量)−これは、複数カラム容量の溶離剤を含有する15μLの溶離液をもたらす。第2に、フッ化物の捕捉及び放出は反対方向で行われる−ほとんどのF−18は、捕捉中、カラムの最初で濃縮され、放出中に、カラムの残りと平衡している必要がない。第3に、放出溶液は小画分(例えば、約1μL以下)に分解されるが、これにより、大部分の濃縮F−18が残りとは混合せずに第1の小数画分内を移動することを可能にするので、後続の各画分が、前の画分の後に残されているものを、濃縮F−18溶液ではなく新鮮バッチの溶離液で、ぬぐい取ることを可能にする。99.8%までの全捕捉及び放出効率が観察されている。イオン交換カラムを使用する場合は、フリットの選択は極めて重要な可能性がある。例えば、金属フリットは捕捉及び放出に有害な影響を及ぼす可能性があり、Teflonフリットは容易に分解する可能性があり、そしてPEEKフリットは溶液を容易に濾過するにもかかわらず詰まってしまう可能性がある。本発明の1つの例示的な実施形態によると、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)が最適なフリット材料であると決定されている。本明細書に組み込まれた、流過モードの一部の実施形態では、電気化学的捕捉及び放出機構は、極めて有益である。他の実施形態では、溶離体積は、10μL、5μL、又は2μLのように、より小さくてよい。
【0073】
流過式及びバッチ式の両方のデバイスについて、最適化されたデバイスは、高度に不活性な最先端技術材料を用いて調製される。そのような材料には、PFPEをベースとする材料(パーフルオロポリエーテル)又は実験的ROMPが含まれ得るが、それらに限定されるわけではない。本発明の別の実施形態では、チップの異なる領域が使用される場合に同時に実行される反応を始めとする、同一チップ上での多重反応の遂行を可能にするデバイスが開示される。
【0074】
多数の新規なバイオマーカーは、中間体の精製を伴うより複雑な合成を伴う。そのような経路に適応するために、本発明の例示的な実施形態によるデバイスは、中間体のHPLC精製を可能にする高速活性濃縮機構を備えて設計されている。そのようなデバイスは、プロセスの異なる工程に適合させられた異なる容量又は機能を備える多重の反応器を含むことができる。そのようなシステムにとっての1つの利点は、全てが1つのデバイス内に一体化されており、それにより材料移動が最小限に抑えられ、希釈の必要性が排除されることにある。Hypervapに類似する原理に依存する濃縮デバイスは、溶液の連続的濃縮を許容し得、その場合に溶液は溶媒が蒸発するにつれて小さなチャンバ内へ供給される。或いは、大きな容器/チャンバをオンチップで設計することができるが、そのような例では、蒸発後に、高表面積を備える壁から材料を収集するのが困難になる場合がある。
【0075】
1つの例示的な実施形態では、同時に多重反応の遂行を可能にするデバイス/機器コンボが提供される。そのような構成では、複数のバッチが精製段階で生成物を結合することができる。或いは、異なる反応器に由来する反応混合物について同一カラム上での精製の連続的運転を可能にするために、幾つかのバッチをずらすこともできる。
【0076】
1つの変形では、優れた機械加工特性を備える剛直で透明なポリマーであるpDCPD等のポリマーが、本明細書に開示したデバイスにおいて使用される。更に、別の作製方法を使用すると、より高速な製造及びより優れたチップ特性をもたらす。そのような方法には、熱エンボス加工、射出成形又はエッチングが含まれるが、それらに限定されるわけではない。また、固体支持体上での反応を組み込むことも可能であるが、その場合には非放射性試薬が固定化される、又は分子が標識化されるのいずれかである(その後に精製後の開裂が行われる)。
【0077】
本明細書に開示したチップを制御する機器は、自己遮蔽することができ、配管又はバイアルのいずれかによって標識化プローブを受け入れることができる。後者の場合には、バイアルは遮蔽して、オペレータへ曝露させることなく機器内に差し込むことができる。
【0078】
1つの例示的な実施形態では、各試薬及び/又は溶媒は、個別の試薬/溶媒源から合成チップへ配送することができる。この場合には、各試薬/溶媒源は、その中に配管が挿入されている2つのポート、入口及び出口を有していてよい。入口配管は流体表面の上方に位置していてよく、加圧され又は定量された不活性気体(例えば、窒素又はアルゴン)供給源に接続された電子的に制御される三方向バルブと流体連絡している。各試薬/溶媒は、固有の独立して制御可能な圧力を有していてよく、異なる流量を許容することによって柔軟性を許容する。各試薬/溶媒源の出口ライン(又は出口チャネル)は、試薬バイアルの底部に一端があり、先端はマイクロ流体チップに向かっている1片の配管であってよい。入口に接続された三方向バルブは、試薬/溶媒バイアルが加圧され、試薬/溶媒が出口ラインに押し出されるように開放できるか、又は試薬/溶媒バイアルが大気に開放され減圧されるように排気することができる。
【0079】
試薬/溶媒バイアルからのライン(又はチャネル)は、「洗浄」溶媒及び/又は不活性気体(窒素又はアルゴン)を合成チップに向けて方向付けて合成運転の終了時には1本以上のラインを洗浄及び乾燥させることができるように、合成チップへの途中で追加の電子的に制御される三方向バルブを通過させることができる。ラインの乾燥は、インターフェースアダプタからチップを取り外して再据え付けする場合の液体漏出を回避するのに役立つ。乾燥は、また、その前の運転コンポーネントによる後続の運転の汚染又は洗浄溶媒による試薬の希釈を回避することにも役立つ。更に、逆止弁は、合成チップへの途中の入口ライン内に配置され、いかなる漏れ易いマイクロ流体チップバルブ(又は不適切な時点に不注意によりスイッチが入れられたバルブ)によっても、試薬/溶媒バイアル内への逆流が決して起こらないことを保証する。
【0080】
1つの実施形態では、試薬/溶媒は、プレフィルドバイアルに個別に充填され、本システム内へと充填される。これらのバイアルは、例えば、N2とチップとを移動させるシリンジの間に配置される小型v−バイアルであってよく、単一運転においてチップ上でそれらの全容量が使用される試薬で充填されていてよい。これらのバイアルを保持する固定具は、v−バイアルの最底部に到達し、チップにつながる配管に接続されているピンを有していてよい。バイアルを保持する固定具内の別のポートは、N2を押すことによって制御された方法でチップ内へ液体を移動させることのできるN2シリンジに接続されていてよい。ng又はmg量で使用される試薬は、これらのバイアル中で計り分け、マイクロピペットを用いて溶媒が添加されてよい。図28は、本発明の例示的な実施形態によるそのようなバイアルの形状を示している。図28に示した「ゼロ廃棄物」試薬バイアルは、正確な量でシステム内に充填された前駆体及びKryptofix2.2.2溶液のために利用できる。そのようなバイアルからチップへ試薬を配送するためには2つの方法がある。1つは、オンチップ入口バルブ及びベント(置換された気体を逃がすため)を開き、シリンジを用いて試薬の後方へ静かにN2を移動させることによる。もう一つの方法は、シリンジの使用を排除する。オンチップバルブが開き、ベントが閉鎖されると、少量の圧力がv−バイアル内の液体の後方に加えられ、その液体はシステム内の気体が圧縮するにつれてチップに向けて押される。圧力が上昇するにつれて、液体の正面にある気体は更に圧縮され、液体をチップに向かって移動させ、最終的に反応室へ到達してこれを満たすことになる。この後者の方法は、オフチップベントバルブが使用される場合にのみ使用できる。
【0081】
別の実施形態では、これらの試薬/溶媒は、一工程で据え付けることのできる単一試薬カートリッジに包装することができるが、また、各合成チップを用いて極めて少量で包装して異なるバイオマーカーの合成を容易にすることができる。異なるセットの試薬/溶媒及び異なるチップ構成は、次に各所望の放射合成のために使用できる。或いは、後続の運転において同一試薬(HCl等の)が使用される場合は、それらはシステム内へ大量に充填され、計量した量を必要に応じてシリンジポンプによってチップへ分注することができる。別の実施形態では、チップは、過剰に使用される所定量の試薬だけが単一運転において使用されることを可能にする計量機構を組み込んでいる。そのような機構は、表面張力又は他の特性に基づいていてよい。
【0082】
1つの代表的なシステムでは、F−18等の放射標識は、サイクロトロンから逆止弁を通して機器の内部の一時的貯蔵バイアル内に配送される。別の代表的なシステムでは、放射標識は毎日、接続しやすい有鉛バイアルで、又は場合によっては(例えば、機器の内部の一時的貯蔵バイアル内に溶離させられるイオン交換カラムに取り付けられている)固相で、配送される。オペレータが、独自のサイクロトロンを有することは想定されておらず、必要に応じた、例えば1日1回の、放射能標識の配送はこの欠陥を解決する。[F−18]FDG合成の1つの例では、F−18はターゲット水の溶液中に提供される。この溶液はF−18を捕捉して濃縮するために最初に交換樹脂を通過させられる;その後、F−18はK2CO3溶液を用いてマイクロ流体合成チップ内へ溶離させられる。交換カラムからマイクロ流体合成チップ内へ移される流体容量を最小限に抑えるために、本流体システムのこの部分では極微量(例えば、0.5μL)回転バルブを使用してもよい。
【0083】
1つの実施形態では、本システムに配送される放射性核種の(サイクロトロン又は遮蔽された容器からの)全充填量は単一運転で使用されるが、他の実施形態では、数回の連続又は並行運転で使用される画分に分けることができる。
【0084】
フッ化物イオンを捕捉するその他の方法(例えば、米国特許第60/950,976号明細書、「電気化学的捕捉によるマイクロ流体放射合成デバイス及びその濃縮段階におけるF−18の放出(Microfluidic Radiosynthesis device relying on electrochemical trapping and release of F−18 in its isotope concentration step)」に開示されたような電気化学的捕捉法)は、代替法として、本発明の実施形態によって本システム内に容易に一体化することができる。電気化学的捕捉法を用いると、制御装置、及び拡張されたコンピュータは、更に、このセットアップにおいて必要な高電圧供給を制御することができる。
【0085】
合成チップ内で作成された放射標識化生成物は、溶媒を用いて、例えば、カラム等の精製システムを通して最終収集バイアル(又は生成物容器)内へ溶離させることができ、そして分析及び/又は患者への注射のために必要な容量へ希釈することができる。1つの実施形態では、生成物容器は、容易かつ迅速な除去及び患者への配送のため又はその後の分析のために、機器の外側に添付された有鉛バイアル又はシリンジ内に配置されている。或いは、生成物は注射ループ内へ溶離させることもでき、そのループから生成物はHPLCカラムへ充填され、次にHPLC精製を受けることができる。
【0086】
追加の電子的に制御される三方向バルブを、マイクロ流体合成チップへの、水等の、溶媒の経路に配置することができる。1つの位置では、このバルブは、溶媒をチップ内に流入させる。他の構成では、液体を合成チップから受け入れ廃棄物へ流れさせる。このバルブは、洗浄/クリーニング相中に使用できる。洗浄用溶媒及び気体(窒素又はアルゴン)は、合成チップに通して流して排液しそれをクリーニングしてもよい。1つの実施形態では、システム全体が、システムを分解せずに、そして遮蔽を除去せずに溶媒で洗浄することができる。
【0087】
本発明の1つの実施形態による自動システムは、マイクロ流体チップ内に一体化されたバルブをも制御する。これらのバルブにおいて機械的作動ピンを駆動させる空気圧ピストンは、要求に応じて電子バルブによって制御される圧縮空気(又は他の気体)によって駆動させられる。
【0088】
当技術分野において公知の多数の合成装置は、気体圧作動式エラストマーバルブ又は空気圧バルブを使用する。更に、様々な作動方法によるマイクロ流体バルブの制御を開示している重要な文献がある。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願第2002/0127736号明細書、「マイクロ流体デバイス及び使用方法(Microfluidic devices and methods of use)」を参照されたい。1つの側面では、本発明の実施形態によるマイクロ流体デバイスは、高圧下で効率的に作動できる機械バルブ(例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許出願第2007/0051412号明細書に開示されている機械バルブ等)を使用する。
【0089】
マイクロ流体チップ及び本発明に開示したシステム内に組み込むことのできるデッドボリュームバイパス機構による試薬配送についての詳細は、参照により本明細書に全体として組み込まれる米国特許公開第11/862,167号明細書、「マイクロ流体チップに接続するためのシステム及び方法(System and Method for Interfacing with a Microfluidic Chip)」の中で考察されている。
【0090】
各入口のバイパス部は、逆止弁次いで単一の電子制御式デッドボリュームバイパスバルブに接続されてよい。1つの実施形態では、自動制御下にあってよいシステムコンポーネントには、不活性気体配送源、温度制御システム、圧力制御システム、及び合成チップ上の1つ以上のバルブが含まれる。
【0091】
本明細書に開示したハードウエアは、様々な電子ハードウエア機器類及びデバイスを用いて制御することができる。例えば、PC−104をベースとするシステムは、16個のアナログインプット、10個のアナログアウトプット、8個のデジタルインプット及び48個のデジタルアウトプットを備えて使用できる。制御装置は、FIX32自動ソフトウエアを実行する標準PCとイーサネット接続によって交信する、組み込まれたWindows−NTソフトウエアを実行することができる。このソフトウエアは、例えば、ハードウエア内で起きていることを視覚化して様々なバルブ及びその他のコンポーネントを制御するためのグラフィカルインターフェースの簡単な構築を可能にする自動言語である。インターフェースは、例えば全自動、手動又は段階的作動等の様々な作動モードを許容できる。
【0092】
1つの実施形態では、コントロールソフトウエアは個々のデジタルアウトプット(例えば、二方向及び三方向バルブ、オンチップバルブ、温度制御システム、ヒータイネーブル、クーライネーブル、真空システム、ロータリーインジェクタ、及びその他のシステムコンポーネント)並びにアナログアウトプット(例えば、温度設定点、及びその他のアウトプット)にアクセスできる。アナログインプット(例えば、反応器温度、ベントチャネル圧、放射線レベル)は、メイン画面上で監視するための工学単位へ拡大縮尺することができる。
【0093】
本明細書に記載した対話形式グラフィックインターフェースに加えて、数十のスクリプトが本明細書に記載したプロセス工程を自動化する。各サブプログラムは、例えばバルブの状態を変化させる、一定量時間に亘って待機する、又はインプットされた特定値を待機する等の一連の単純な作動(例えば、反応器が規定温度に到達するまで加熱する)を実施することができる。本発明の実施形態によるシステムは、例えば半自動法(放射合成における各工程は、コンピュータ画面上のボタンを用いて開始される。)で、精製された人間的規模の量のFDGを、繰り返して生成できる。
【0094】
全自動システムでは、必要とされる反応時間を最適化することができ、例えばFIX32における単純なスクリプトを、全作動を順序立てて実行するために、書くことができる。1つの実施例は、充填等の自動化単位動作を含むことができ、これらは複数のサブ工程を含んでいる。「単位作動」スクリプトは、「パラメータ化」されるように設計できる。即ち、単一場所において、オペレータは、流通時間、反応時間及び加熱温度を設定することができる。次に、自動化スクリプトは、全情報を読み取れるので、それに従って合成運転を調整することができる。自動化運転は、例えば、ユーザが、ユーザインターフェースの一部である「スタート」アイコンを、単純にクリックすることによって開始することもできる。本発明の実施形態によるシステムは、精製されたPET放射性トレーサを産生するマイクロ流体デバイス上の全放射合成サイクルの全自動ハンドフリー運転を提供する。1つの実施形態では、本機器は携帯型であり、外部コンポーネントを有しておらず、自己遮蔽されており、即ち別個のホットセルを必要としない。更に別の実施形態では、本機器は内部フィルタを備えており、このフィルタは、追加の排気を全く伴わない運転、即ちドラフトを必要としない本当の卓上運転を可能にする。
【0095】
本発明の代表的な実施形態によると、本明細書に開示したハードウエアは、PC、プログラム可能論理制御装置(PLC)、及びビジュアルベーシックで書かれたソフトウエア制御プログラムを用いて、制御することができる。PLCは、6個のアナログアウトプット、8個のアナログインプット、24個のリレーアウトプット、18個のデジタルインプット、17個のデジタルアウトプット、及びラダー論理(Ladder Logic)プログラムを用いて、機器内の全てのI/Oを制御できる。例えば、ビジュアルベーシック制御ソフトウエアを用いる標準的なPCは、シリアル通信を用いてPLC及び8個の精密シリンジポンプを制御できる。これは極めて詳細なグラフィカルインターフェースを提供し、ハードウエア内で起こっていることの視覚化を可能にし、そして様々なバルブ、ポンプ、ヒータ及びその他のコンポーネントを制御する。インターフェースは、例えば全自動、半自動及び手動等の様々な運転モードも許容できる。
【0096】
1つの例示的な実施形態によると、手動運転モードでは、コントロールソフトウエアは、ユーザインターフェース画面からボタンのクリック及びテキスト入力を通して、機器内の全てのコンポーネント及びプロセスの個別制御を可能にする。
【0097】
1つの例示的な実施形態によると、半自動作動モードでは、初期化、プライミング、充填、蒸発、加水分解、フッ素化及びその他の様々なプロセスの自動制御に適応するようにされた様々なサブルーチンを使用できる。更に、自動工程の各々は、特定値(例えば、温度、圧力、流量、容量及び時間)の入力を許容できる。
【0098】
例示的な実施形態によると、全自動作動モードでは、本システムは、単一ボタンのクリックで、精製PET放射性トレーサ生成物を産生するマイクロ流体デバイス上での全放射合成サイクルの全自動ハンドフリー運転を提供する。必要とされる反応値は、所望であれば、反応の開始時に入力することができる。即ち、デフォルト値を変更することができ、オペレータは、反応を開始させる前に、流通時間、反応時間、温度、圧力及び容量を設定できる。自動化スクリプトは、全情報を読み取れるので、それに従って合成運転を調整することができる。1つの実施形態では、本機器は携帯型であり、外部コンポーネントを有しておらず、自己遮蔽されている(即ち、別個のホットセルを必要としない)。更に別の実施形態では、本機器は内部フィルタを備えており、このフィルタは、追加の排気を全く伴わない運転、即ちドラフトを必要としない本当の卓上運転を可能にする。
【0099】
1つの実施形態では、1つ以上の試薬は個別プレフィルドバイアルから、又は事前包装されたディスポーザブルカートリッジから配送されてよい。1つの実施形態では、携帯型システムは、分解せずにクリーニングできる。従って、反応室、並びに試薬、生成物及び廃棄物チャネルの各々は、所望ならば自動方法により、クリーニングできる。生成された放射性トレーサの同一性は、ハードウエアの変更を必要とせずに容易に変更することができる。1つの実施形態では、マイクロ流体合成チップは交換可能である。1つの変形では、合成チップの交換は、遮蔽全体を分解するのではなく鉛遮蔽体内の単一のドアを開くことによって、実施できる。別の実施形態では、最終生成物バイアルは、その生成物を取り上げるオペレータが機器からの残りの放射線に曝露させられないように、別個の遮蔽された容器内に配置することができる。
【0100】
放射線の遮蔽:一体型遮蔽は、本明細書に開示した機器を伝統的なホットセル及び放射性薬局から独立させる1つの特徴である。1つの実施形態では、遮蔽体は、18枚の連結している厚さ0.565’’の鉛パネルから構築された箱からなる(計2,000ポンド)。本発明の別の例示的な実施形態によると、デバイスの遮蔽は、局所的な方法で実行される。従って、デバイス重量を増加させて放射線へ電子機器を曝露させるデバイス全体の被覆化とは対照的に、局所遮蔽は、イオン交換カラム、チップ、及びF−18源バイアル等の、放射線取扱いコンポーネント及び検出器だけを被覆するように実行されてよい。この配列は、電子コンポーネントのための保護を維持しながら、有意に少ない遮蔽材料を使用する。或いは、本機器は、所望であれば、適切に遮蔽されたミニセルの内部に適合するようなサイズで設計されてもよい。そのような局所遮蔽に関連する利点の一部は、以下のように要約することができる。
・携帯型かつ軽量の機器(〜300ポンド);
・ホットセルを用いた研究室構築を必要としない;
・放射線損傷からの電子機器の保護;
・サイクロトロンから離れた機器の配置を可能にする「差し込み」びん;
・ユーザの曝露を伴わない機器の搬送;
・区分化されたデザインの使用によるシステムの残りからの検出器を分離。これにより、機器内部の他の放射線源へユーザを曝露させることなく生成物の取り出しが可能になる;
・試薬バイアルを遮蔽の外側に配置できるので、遮蔽を開く必要なく多重回の連続運転を実行できる能力;
・セグメントが容易にスライドするレール上にあるので、(重い遮蔽体を持ち上げるための)過度の力を必要とせずに内部の(遮蔽された)領域へのアクセスを可能にする、上部の容易なハッチング機構;
・全角度からの保護を提供する一様な遮蔽。
【0101】
別の実施形態では、本機器は、抵抗ヒータによる反応室の迅速な加熱及び渦流式クーラの空気による反応室の冷却を可能にする熱交換器を含んでいる。
【0102】
本発明の1つの実施形態によると、コンピュータシステム又は外部入力デバイスを、プログラム記憶装置及び制御装置へ接続することができる。制御装置は、合成チップ上の少なくとも1つのバルブ、不活性気体供給源、温度制御システム、圧力モニタ、及び/又は真空システムに接続することができる。
【0103】
汎用コンピュータシステムは、プロセッシング装置、システムメモリ、プロセッシング装置へシステムメモリを接続するシステムバス、ハードディスクドライブ等の記憶装置、例えばリムーバブル磁気ディスクに読み書きするための磁気ディスクドライブ、及び、例えばCD−ROMディスクを読み取り若しくは他の光学メディアに読み書きするための光学ディスクドライブを含んでいる。記憶装置は、ハードディスクドライブインターフェース、磁気ディスクドライブインターフェース及び光学ドライブインターフェース等の、記憶装置インターフェースによってシステムバスに接続することができる。コンピュータ可読媒体についてのこの説明は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク及びCD−ROMディスクに関するものではあるが、磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク等の、コンピュータシステムによって可読であり所望の最終目的に適合した他のタイプの媒体も使用できることを理解されたい。
【0104】
ユーザは、コマンド及び情報を汎用コンピュータシステムへ入力し又はグラフィック情報を汎用コンピュータシステムへ入力することができる。モニタ等の、ディスプレイ画面を有するディスプレイ装置は、インターフェースによってシステムバスへ接続されている。ディスプレイ画面に加えて、汎用コンピュータシステムは、他の周辺出力機器を更に含むことができる。汎用コンピュータシステムは、サーバ、ルータ、ピアデバイス又はその他の共通ネットワークノード等の、1つ以上の遠隔コンピュータシステムへ論理結合を用いて、ネットワーク環境内で作動させることができ、そしてそのようなシステムは、汎用コンピュータシステムに関連して本明細書で記載するいずれか又は全てのエレメントを含むことができる。
【0105】
LAN(ローカルエリアネットワーク)環境において使用される場合は、汎用コンピュータシステムは、ネットワークインターフェースを通じてLANへ接続されている。WANネットワーク環境内で使用される場合は、汎用コンピュータシステムは、典型的には、インターネット等のWAN上の通信を確立するためのモデム又はその他の手段を含んでいる。内部モデム又は外部モデムは、シリアルポートインターフェースによってシステムバスへ接続することができる。ネットワーク環境内では、汎用コンピュータシステムに関連して描出されるプログラムモジュール又はそれらの部分は、遠隔記憶装置内に保存することができる。本明細書に示すネットワーク接続は代表的なものであり、コンピュータシステム間の通信リンクを確立するための他の手段が使用できることを理解されたい。アプリケーションモジュールは、汎用コンピュータシステム以外のホスト又はサーバコンピュータシステム上で同等に実施できること、そしてCD−ROM以外の、例えばネットワーク接続インターフェースによる、他の手段によってホストコンピュータシステムへ同等に送信できることもまた理解されたい。コンピュータシステムのドライバ内に記憶されたプログラムモジュールは、汎用コンピュータシステムが機能し、ユーザとI/Oデバイスと又はその他のコンピュータと相互作用する方法を制御することができる。プログラムモジュールは、ルーチン、オペレーティングシステム、ターゲットアプリケーションプログラムモジュール、データ構造、ブラウザ、及びその他のコンポーネントを含むことができる。
【0106】
本明細書に記載した操作、工程及び手順は、本発明の代表的な実施形態を当業者が実行することを可能にするために、十分に開示されていると考えられるので、詳細な説明に記載した様々な方法を実施するための特定のプログラム言語は記載されていないことを理解されたい。更に、代表的な実施形態を実行する際に使用できる多数のコンピュータ及びオペレーティングシステムがあり、従って、これらの多数の異なるシステム全部に適用できる詳細なコンピュータプログラムを提供することはできない。特定コンピュータの各ユーザは、そのユーザのニーズ及び目的のために最も有用な言語及びツールを知っていなければならない。
【0107】
更に、本方法は、コンピュータ実行プロセス及びそれらのプロセスを実施するための装置の形態で実施することができる。上記は、また、フロッピーディスク、CD−ROM、ハードドライブ、又は任意の他のコンピュータ可読記憶媒体等の、有形媒体において実施される指示を含むコンピュータプログラムコードの形態で実施することもできるが、このときコンピュータプログラムコードがコンピュータ内にロードされ、コンピュータによって実行される場合は、そのコンピュータは本発明の実施形態を実行するための装置になる。再プログラム可能な記憶装置(例えば、フラッシュメモリ)を有する現行システムは、本発明の実施形態を実行するためにアップデートすることができる。上記は、また、例えば、記憶媒体に保存されていようと、コンピュータ内にロードされて及び/又はコンピュータによって実行されようと、又は電気配線又はケーブル等上で光ファイバーを通して若しくは電磁放射線によって等の何らかの伝送媒体上で送信されようと、コンピュータプログラムコードの形態で実施することができるが、このときコンピュータプログラムコードがコンピュータ内へロードされてコンピュータによって実行される場合は、そのコンピュータは本発明の実施形態を実行するための装置になる。汎用マイクロプロセッサ上で実行される場合は、コンピュータプログラムコードセグメントは、特定の論理回路を全体として又は部分的に作製するために、マイクロプロセッサを構成することができる。
代表的な実施形態:チップの設計
図1は、本発明の代表的な実施形態による、マイクロ流体チップを示している。図1に示した代表的反応器10は、チップ90の中央部に位置しており、幅5mm及び高さ3mmの寸法を備える円筒形状を有する。これは60μLの反応器容量を生じさせるが、ベント及び出口内への溶液の消失を引き起こす可能性があるので、反応器を最大容量まで充填しない方が有益な場合がある。例えば、30〜45μLの溶液を使用すると、適正な作動のために適した量を提供できる。反応器が部分的に充填されると、液体上方に十分な空間が生じ、チップから蒸気を取り除く一定の窒素流通が可能になる。
【0108】
反応器10は、チップ90の中央部に固定され、反応器の1つ以上の入口20と流体連絡している。図1に示したように、チップは、チップの頂部95及び底部99の両方と物理的に接触しているo−リングを含有していてよい。反応器10からの排気はベントチャネル40によって遂行され、ベントチャネルはバルブプランジャ50によって制御され、バルブプランジャはベント出口60と更に流体連絡している。試薬は試薬入口70を通して反応器10へ加えられ、試薬入口はバルブプランジャ55によって制御され、バルブプランジャは試薬バイパス出口65と流体連絡している。反応器の下方には、ヒータ開口部80に配置されたヒータ(図示せず)が配列されている。
【0109】
バルブ:本発明の1つの例示的な実施形態では、反応器には6本のフローチャネルが配管されている。フローチャネルの4本は試薬を配送し、2本は生成物を溶離するために機能する。密封として使用される膜は存在しないので、バルブは、このチップとともに使用するように設計されている。側面を通ってチップに入るバルブプランジャは、それらが移動するバレルの内部に密封を作り出す。これらの密封は、プランジャの先端にあるTeflon等の軟質不活性材料によって作り出すことができる;その他の適切な材料は、当業者には公知である。バルブが閉鎖位置にある場合は、プランジャは最後まで挿入され、反応器の近くのハードストップに対して押されている。試薬の配送は、バルブバレルを横切る垂直チャネルによって可能にされる。「バルブが閉鎖した」構成では、試薬はチップの上部を通して配送される。プランジャ先端の薄い部分は、試薬(並びに充填中に配管から出る試薬によって押される空気/気体)がチップの底部を通して出て行くことを可能にする。プランジャが引っ込められると、入口は、反応器への明確な通路を有する。反応器に充填している間に試薬が漏出し続けることを防止するためには出口上の外部バルブを閉鎖することが必要である。
【0110】
別の例示的な実施形態では、外部バルブは任意である。このデザインは、プランジャが所定の位置まで引き戻されると、入口だけが反応器への明白な通路を獲得し、出口は遮断されるような方法で、バレルに沿ってずらされた試薬入口及び出口を有している。本明細書では、本発明の実施形態による代表的なバルブについての別の詳細が提供される。
【0111】
ヒータ:1つの代表的な実施形態では、熱はペルティエ装置又は類似の装置から反応器へ、反応器のすぐ下方の円筒形開口部内に挿入されたアルミニウムブロックを通して、移動させることができる。そのような配列により、反応器内容物の迅速な加熱及び冷却が可能になる。
【0112】
パーツ。チップは、それらの結合部での漏れを限定又は排除できるような方法で圧力で嵌合される2つのセクション又はパーツを含んでいる。1つの代表的な実施形態では、2つのパーツの界面にはo−リングを配置して漏れの可能性を排除することができる。放射能試験により、このo−リングと接触する材料がほとんど又は全くないことが確認された。従って、本発明の1つの例示的な実施形態では、o−リングを省略できる。チップの上方部分は、反応器に対する「蓋」として機能する。蓋が過剰に大きいように設計される場合は、チップをねじによって共に保持することが可能になる。図2(A)から図2(C)は、そのように完全に組み立てられた1つのチップを異なる視野角から示している。図1に示した本発明の代表的な実施形態は単一反応器を含むが、単一チップ内で2つ以上の反応器を提供できることに留意されたい。そのような手段は、反応室の並行作動を可能にするが、これは同一又は異なる反応を実施するために利用できる。
【0113】
ベント。反応器の頂部は、窒素用の入口及び出口として機能する個別バルブによって制御される2つの開口部を有する。反応器内の溶液の上方に窒素を流通させると、周囲温度においても迅速な溶媒の蒸発が可能になる。両方のベントチャネルを閉鎖することにより、反応器を「密封されたチューブ」として機能させ、溶媒蒸発を伴わずに反応を発生させ、そして対応する溶媒の沸点を超える温度に反応混合物を過熱することが可能になる。別の実施形態では、反応室を加圧して反応を促進させることができる。
例示的な実施形態:18F−FDGを調製するためのチップAの使用
図3は、上記に記載した反応器等の反応器を用いた[F−18]−FDGの合成に関わる一連の例示的な工程の概略を示している。本明細書に記載したデバイスによれば、蒸発が数秒間で発生することを可能にし、総運転時間は標識化用前駆体の反応性によって決定される。本発明の実施形態による例示的なデバイスを使用することによって、FDGの総合成時間は、最適化後には20分間を下回ることが証明されている。
【0114】
バルブ102及び108が閉鎖されバルブ104及び106が開放されている工程1では、ターゲット水は、イオン交換カートリッジ110を通過させられて希釈溶液からF−18を捕捉する。バルブ104及び106が閉鎖されバルブ102及び108が開放される工程2では、反応器内へ進入する濃縮溶液中にK2CO3が放出される。その供給が発生した後に、F−18入口を制御するバルブ108が閉鎖し、工程3ではK222/MeCN溶液がチャネル112から供給される。試薬が混合した後、窒素が反応器の天井にあるポートを通して流通し始める(図3には示していない)。工程4では、溶媒は迅速に蒸発して、[F−18]KF/K222錯体を含有する残留物が後に残る。蒸発は、一般に、効率的なので、従来のシステムでは一般的であったアセトニトリル(MeCN)を用いる後続する乾燥工程の必要がない。工程5では、前駆体(マンノーストリフレート)がチャネル116を通して(周囲温度で)反応器内へ配送される。結果として生じる反応混合物が加熱され、数秒間に亘り沸騰させて混合を達成して残留物を再溶解させる。その後、全ベントが閉鎖され、反応混合物は140℃へ過熱される。冷却後、溶媒は窒素流によって蒸発させられる。工程6では、エタノール性HClを反応器内へ持ち込むことによって脱保護が行われる。エタノールは、疎水性残留物の酸中への溶解を支援する1つの溶媒である。再び、反応混合物は加熱され、次に、溶媒が蒸発させられて後にFDGの残留物が残される。生成物溶離の最終工程(図3には示していない)は、水が1つのチャネル118から反応器内へ進入し、生成物を他のチャネル120から運び出すときに発生する。現行チップを用いた最適化研究、理論計算及びテストは、溶離が、溶離液入口チャネル及び出口チャネルが反応器の周囲に対して接線方向に配置されている場合に、最も効率的であるという理論を支持しているが、他の構成も可能である。
【0115】
遠隔操作:放射合成に適切であるためには、デバイスは、放射能へのオペレータの曝露を回避するために、遠隔操作されなければならない。1つの代表的な実施形態では、バルブプランジャは、微量レベルの放射能を用いた低温運転又はテスト運転中のいずれかに、手動で動かすことができる。代表的な実施形態では、チップの周囲に空気圧式作動を利用するアクチュエータを構築して、手動ではあるが遠隔操作を可能にすることができる。図4(A)は、手動(しかし遠隔の)空気圧アクチュエータを備える代表的なデバイスの図を示している。図4(B)は、上述したアクチュエータが利用される実際の代表的なデバイスを示している。1つの構成では、剛性プラットフォーム上に搭載された圧力シリンダ対が、プランジャを、チップに個別に出入りさせるように、駆動させることができる。この設計は、単一の気体供給源及び一連のフリップスイッチしか必要としないので、比較的容易に実行することができる。或いは、プランジャを前後に移動させるために、双方向空気シリンダを使用できる。
【0116】
上述したチップは、[F−18]−FDGの調製において成功裏に使用されており、これは旧世代に比較して優れた性能を証明しており、一部の側面では従来の化学的モジュールを凌駕している。表1は、[F−18]FDG放射合成におけるチップの代表的な性能特性を示している。
【0117】
【表1】

【0118】
試験中に、最適化されたシステムでは、試薬のある程度の沸騰を使用すると、コンポーネントの混合を促進でき又は残留物を溶解できるが、他方では反応自体のために過熱が重要であることが明らかになってきた。
【0119】
F−18の濃縮:本発明の別の例示的な実施形態によると、チップに加えて、捕捉機構を利用して、チップ作動を補完することができる。このデバイスでは、AG1−X8樹脂が充填された小型カラム(例えば、1.5×5mm)を使用して2mLの希H218O溶液から[F−18]フッ化物が捕捉され、濃K2CO3溶液中へ放出され、5μLという少量の溶媒中へ全充填放射能が移される。これは、増分溶離によって達成できる。この原理は、K2CO3がカラムを通過して最も濃縮されたF−18溶液をその正面に運ぶときに発生するF−18勾配を利用している。溶液によるF−18の拡散は極めて高速であるので、この勾配は通常の状況では明白ではなく、このときF−18は溶離液を通して後方伝搬し、ほんの数秒間で濃度平衡することができる。このセットアップでは、F−18は1μL以下の増分で溶離され、空気によって分離されるので、第1画分中のフッ化物は第2画分内には伝搬することができず、その後も同様である。90%を超えるF−18が最初の数画分内に含有されているので、ほとんどのF−18は上記の技術に従って反応器内に移動させることができる。PEEK(フリットを含む)内に完全に封入されたカラムを作製することによって、F−18の(ステンレススチール製フリットを使用した場合に観察されるような)更なる損失は、減少させ又は回避することができる。
【0120】
機器類:このチップの周囲に機器を構築するためには、(a)試薬配送の自動化及び計量、(b)バルブ制御の自動化、(c)フィードバックループを用いた加熱及び(d)工程を過度に時間設定するのではなくむしろ工程完了に基づく段階的プロセスの自動化、を始めとする幾つかの側面を考慮に入れなければならない。上記の問題に対処するプロセスは、図5に示した試薬配送の代表的なフロー図によって遂行できる。図5は、K2CO3、K18F/H218O、KHCO3、NaOH、MeCN、マンノーストリフレート、Kryptofix2.2.2、HCl及びH2Oを含有する一連のバイアルを示している。これらのバイアルは、シリンジポンプ1〜9に接続されている。図5は、本発明の例示的な実施形態による様々な試薬、並びにH218O廃棄物、未加工FDG及び一般廃棄物リザーバの配送経路を更に示している。本発明の代表的な実施形態による試薬の流通及び配送機構についてのより詳細な説明は、図14に関連して本明細書に記載されている。機器におけるこのスキームの実行により、全試薬のプライミング、試薬の反応器への配送、生成物の収集、及び洗浄サイクルを間欠的に用いる多重回の反応サイクルの実行が可能になる。
【0121】
1つの実施形態では、本明細書に開示したチップは、反応器の容量を限定する膜を有しておらず、むしろチップが開放ベントを有している。そのような配列は、膜を越えて気体を通過させる必要がないので、反応器の迅速な充填を可能にはするが、空気圧式で作動する液体の制御されない流れはベント内への液体の消失をもたらす可能性がある。このため、1つの例示的な実施形態では、高圧を発生させて試薬の過度の消費及び頻繁な失敗を導く可能性がある空気圧式液体作動が、シリンジドライバに基づくシステムに取り替えられる。シリンジをベースとするシステムは、廃棄物を最小に抑えて正確に試薬の量を計量することができ、迅速で、高圧を発生させない。各試薬は、放射合成プロセスにおいて所定の時間に作動するようにプログラミングできる固有のシリンジドライバを有していてよい。図5は、本発明の代表的な実施形態のフロー図に組み込まれている代表的なシリンジポンプを示している。
【0122】
1つの代表的な実施形態では、空気圧バルブアクチュエータは、試薬配送及びバルブ作動を堅実かつコンパクトなシステムに結合するためにソレノイドで置き換えてもよい。空気圧バルブアクチュエータは、各オンチップバルブのために空気流を制御するための2つの外部バルブを必要とするが、ソレノイドは、適正な作動のためには、2本のワイヤしか必要としない。更に、バルブの作動には2つの位置(即ち、オン及びオフの位置)しか必要でないので、ソレノイドは適切な作動選択を提供する。図6は、チップの周辺に配置されている6つの代表的なソレノイドを示している。別の実施形態では、これらのソレノイドは、それらがチップバルブプランジャと同軸ではない構成に配置することができる。1つの例示的な実施形態では、ソレノイドは、チップ及びそのヒータの下方に配置できる。このスペース節約的な構成では、プランジャは各ソレノイド−プランジャ対を接続する適切な形状のブラケットによって駆動させることができる。
【0123】
本発明の別の例示的な実施形態によると、チップの周囲のスペースをより効率的に利用しソレノイドのより幅広い選択を可能にするために、チップの形状は長方形から六角形に変更することができ、これにより、チップの周辺のバルブの等距離間隔及び各バルブアクチュエータのための楔形のスペースをもたらす。更に、そのようなチップは、それらが高度の対称性を有しており、全面上で同一作動を6回繰り返すことのできるコンピュータ数値制御(CNC)技術の使用を可能にするので、製造が容易である。
【0124】
1つの代表的な実施形態は、円筒形の反応室を有する六角形チップを備えている。例として、限定する訳ではないが、径5mm及び高さ3mmの反応室を実行することができる。この代表的な反応室の容量は60μLであるが、ベントを通しての意図されない液体損失を回避するために、最大液体容量を反応室の全容量未満(例えば、50μL)に限定することができる。1つの実施形態では、試薬の配送及び生成物溶離のために使用される多数のチャネル(例えば、6本のチャネル)は反応器の床に沿って反応器へ水平に入ってよいが、ベント入口及び出口は天井の中心を通って垂直に入ってよい。ベントをチップの辺縁の近くに配置すると、メニスカスが天井と壁との間の隅部を充填するので液体損失を引き起こすことがある。この代表的な実施形態におけるベントチャネルは、90度旋回して、チップへ水平に入る取付け具(例えば、10〜32)へ接続する。反応器の床は、壁が床と交わる場所で湾曲を有していてよい。尖った角を備える反応室とは対照的に、本発明の実施形態によって設計されている湾曲部は、反応器の床を通る亀裂を引き起こす可能性のある亀裂発生点を有していない。
【0125】
1つの例示的な実施形態によるチップは、2つのコンポーネント、即ち「反応器」及び天井が反応器の壁と交わる場所で分断する「蓋」に分離する。蓋は、反応器より直径が僅かに大きい円形突出部を有している可能性があるので、このため反応器の塔頂部分に挿入されると緊密な圧力嵌合を形成できる。この構成は、数百psiまでの圧力を反応器が保持することを可能にするので有利である。反応器及び蓋は、反応器パーツへ直接ねじ入れられる複数のねじによって共に保持することができ、例えば反応器の周囲に対称的に配置される。1つの例示的な実施形態では、この構成を実行するために3本のねじを使用できる。他の実施形態では、チップは様々なクランプによって共に保持することができる。別の実施形態では、これらの層は永久的に共に接合することができる。
【0126】
試薬(特に[F−18]フッ化物)配送のためには金属ピンを使用することはできないので、全試薬が垂直チャネルを通ってチップの底部からチップに出入りする1つの例示的な実施形態では、チップ補完的インターフェースベースを準備することにより、マクロ的配管とチップとを効率的な方法で結合することができる。そのようなベースは、チップの機器への容易な取付け及び取り外しを更に可能にする。図6は、プランジャをチップの内外へ押したり引いたりする、ベースアダプタ及び周辺に6個の大きなソレノイドを備えるチップのそのような例示的な実施形態を示している。このチップの配列によれば、更に、ペルティエに基づく加熱システムの容易な一体化が可能になり、容易なカメラアクセスのためにチップ上方のスペースを使用する。蓋、反応器及びインターフェースに関連する本発明の例示的な実施形態についてのこれ以上の詳細は、本明細書に開示されている。
【0127】
図15(A)から図(D)は、本発明の例示的な実施形態による六角形チップの「蓋」部1000を示している。図15(A)は、チップの「反応器」部分へ蓋部1000を取り付けるために使用される複数の第1セットの穴1002を備えた、蓋部1000の底面図を示している。図15(A)は、更に、組み立てられたチップを「インターフェース」へ取り付けるために使用される複数の第2セットの穴1004を示している。図15(A)には、また、o−リングを配置するために使用される溝1006も示されている。図15(B)は、平面A−Aに沿った蓋部1000の横断面図である。図15(B)は、マイクロ反応器の「反応器部分」内へ圧力嵌合される蓋部1000の中心部1008を示している。10〜32の取付け具を備えるベントポート1010も、また、図15(B)に示されている。図15(C)は、蓋部1000の別の底面図を示し、o−リングを保持するための溝1006及び蓋部1000の中心部1008を図示している。図15(D)は、例えば10〜32の取付け具を備える複数のベントポート1010の別の図を有する、蓋部1000の上面図を示している。
【0128】
図16(A)から(D)は、本発明の例示的な実施形態による六角形チップの「反応器」部1100を示している。図16(A)は、反応室の底部に、薄い床での亀裂形成を防止する湾曲1102(図には示していない)を備える反応器部1100の上面図を示している。図16(B)は、平面A−Aに沿った反応器部1100の横断面図である。図16(B)は、バレルから反応室1108へ走る流体入口1104に沿った湾曲1102を示している。図16(B)は、更に、バルブプランジャバレル1106、反応室1108(代表的な容量60μLを備える)を示している。蓋部1000は反応室1108の開口部に圧力嵌合され、閉鎖シリンダを形成する。図16(B)は、ヒータを挿入するための端ぐり穴1110、及びインターフェースからバレルへの複数の流体入口1112を更に示している。図16(C)は、反応器部1100の別の上面図であり、更に、反応室1108、バレルから反応室1108への流体入口1104及びバルブプランジャバレル1106の位置を示している。図16(D)は、反応器部1100の底面図である。図16(D)は、ヒータを挿入するための端ぐり穴1110及びインターフェースからバレルへの流体入口1112を更に示している。
【0129】
図17(A)から図(D)は、本発明の例示的な実施形態による六角形チップを補完する「インターフェース」部1200を示している。図17(A)は、機器上にインターフェースを取り付けるための複数の穴1202を備えた、インターフェース部1200の上面図を示している。図17(A)は、また、チップを取り付けるための複数のねじ切り穴1204、チップ内にヒータを挿入するために使用されるインターフェース部1200の中心にある貫通穴1206を示している。図17(B)は、平面A−Aに沿ったインターフェース部1200の横断面図である。図17(C)は、インターフェース部1200の別の上面図である。図17(C)は、六角形チップ及び各ポートの周囲でチップとインターフェース1200との間の密封を形成するo−リングを配置するために使用される複数の円形の窪み1210を収容する、六角形の窪み1208を示している。図17(C)は、試薬の配送及び生成物の出口のために使用される複数のポート1212を更に示している(例えば、サイズが1/4〜28インチ)。図17(D)は、ペルティエデバイスを用いる熱伝達ブロックの接触面積を増加させるために用意される、くぼみ1214を有する、インターフェース部1200の底面図を示している。
【0130】
図18(A)から(C)は、本発明の例示的な実施形態によるチップ及びインターフェースアセンブリ1300の結合図を示している。図18(A)は、結合アセンブリ1300の上面図を示している。図18(B)は、平面A−Aに沿ったアセンブリ1300の断面図である。図18(B)は、開口部1302を示しており、加熱ブロックは、それを通ってインターフェースを通じて反応器部1100内に挿入され、反応室の床に押しつけられることができる。液体ポート1304及びプランジャポート1306も、また、図18(B)に示されている。図18(C)は、蓋部1000、反応器部1100、及びインターフェース部1200を備えた結合アセンブリ1300を示している。
【0131】
本発明の別の実施形態によると、試薬バレルは、プランジャが閉鎖形では反応器を密封し、数百psiまでの圧力を維持することを可能にする平坦な端部を備えて、平滑及び一様であってよい。反応器の周囲には、2つのタイプのポート配列が備えられる。1つのタイプは、バレルの端部の近くに単一入口を備えている。これらのポートは、例えばKryptofix2.2.2及び前駆体等の、一定量で機器内に充填される試薬を配送するために使用できる。これらのポートは、F−18がイオン交換カラムから入り、生成物が出て行くことを可能にするために実装することもできる。第2のタイプは、同一バレル内に2つのポートを備えている。従って、プランジャが閉鎖位置にある場合は、プランジャの中心部分が薄いほど、これらの2つのポート間の流体連絡が可能になる。この機構によれば、酸及び水等の試薬を、反応室を通過することを必要とせずに、反応室に直接プライミングすることを可能にする。試薬の全部又は一部の前に、試薬バイアルとチップとの間のチャネル内に空気を先行させてもよい。空気は、典型的には、プライミングのプロセスにおいてバイパスチャネルを通して除去される。本発明の実施形態によるバルブを使用することによって、液体が反応室までずっと持ち込まれる場合は、ユーザは、バルブが開放して規定量の試薬が分注される場合には、その直前にそれが実際に試薬であって空気ではないことを確信し得る。入口は、反応室に最も近いバレルの端部の近くに配置されてよく、出口は更に下方に配置されてよい。プランジャが開放位置にある場合は、第1入口は反応室と流体連絡しているが、第2ポートはプランジャによって遮断される。この状態では、分注されたあらゆる液体が反応器内へ流入するが、閉鎖状態では、液体はバイパス機構を通して廃棄物内へ流入する。
【0132】
図19(A)及び(B)は、本発明の代表的な実施形態による例示的なプランジャの縮尺モデル及びその操作方法を示している。「デュアルポート」プランジャは、プランジャの薄い部分1404によって分離された複数の隆線1402から構成される。図19(A)は、最も右側の位置までずっとプランジャを挿入することによってバルブが閉鎖され、その結果、バレルの端部でデッドストップ1406に対して押しつけられるシナリオを示している。反応室は密封され、2つの垂直部分は、今や、プランジャ先端上での隆線1402及び薄い部分1404の組み合わせによって可能になった流体連絡をしていている。この構成は、試薬のプライミング(バイパス出口を通して液体の前面から空気を取り除くこと)を可能にする。図19(B)は、プランジャを最も右側の位置から引き戻すことによって、第1ポート1408と反応室との間の開放連絡にとってちょうど十分な程度にバルブが開放され、一方で第2ポート1410はまだ遮断されたままであるシナリオを示している。第1ポート1408に対して作動させられた液体は、今度は反応室内に入ることができる。
【0133】
図20(A)及び20(B)は、本発明の代表的な実施形態による、正確な縮尺ではない例示的な「デュアルポート」プランジャバルブ1500を示している。このプランジャは、図19と結び付けて使用できるプランジャの例示的な構成を提供する。図20(A)は、プライミングバイパスモードにおけるプランジャバルブ1500の作動を示している。プランジャバルブ1500は、バレル1504内へ挿入したり引き出したりできるプランジャ1502を備えている。このプランジャバルブは、更に、プランジャ1502の薄い部分1508を分離する複数の隆線1506を備えている。プランジャ1502がバレル1504内に挿入されたり引き戻されるにつれて、バイパス出口1510又は液体入口1512ポートは遮断されたり露出されたりするので、バレル1502及び反応室内及び外への材料の流通が可能になる。図20(B)は、開放反応器モードにおけるプランジャバルブ1500の作動を示しており、この場合、液体入口1512は、材料が反応室へ流通するのを可能にするように露出される。
【0134】
本発明の別の実施形態によると、ベントは、様々な種類のバルブを利用できる。単一ポートバルブと原理的には同様であるが、ベントバルブは密封を実行するためにo−リング機構を利用できる。これらのバルブは、容量の拡張を最小限に抑えながら大きなチャネル断面を可能にする。拡大された容量は、径の小さな配管が使用される場合であっても、オフチップバルブを用いる場合は極めて重要である。配管の容量は、容易に反応室の容量を2倍又は3倍にすることができる。これは反応中の重大な溶媒蒸発及び沸騰中のベント配管内への反応混合物の消失をもたらす。図21は、本発明の代表的な実施形態による、ベント制御バルブを示している。2つのバルブの位置は、図21に示されている、即ち(A)開放したバルブ、及び(B)閉鎖したバルブの位置。これらのバルブは、例えば二方向空気圧アクチュエータを使用することによって、プランジャ902を前後に動かすことによって制御される。図21は、更に、PEEKプランジャ先端904内に配置されている大きなo−リング906の使用を示している。大きなo−リング906は開放バルブ位置では気体の経路を密封し、バレルに沿った気体の漏出を防止する。図21は、更に、同様にプランジャ先端904内に配置されている小さなo−リング908の使用を示している。小さなo−リングは、バルブが閉鎖位置にある場合は、全部の外部気体接続から反応室を密封する。図21は、窒素配管及びベント出口配管をチップに接続するために使用される取付け具910(例えば、サイズ10〜32)も示している。
【0135】
本発明の例示的な実施形態によるオンチップベントバルブは、これらの問題を排除する。それらは、更に、オフチップでの大きな径の配管及びオンチップでの大きな断面のチャネルの使用もまた可能にするが、これにより、低圧における液体上の気体流速が速くなり、このため蒸発工程中の溶媒蒸発が速くなる。1つの代表的な実施形態では、プランジャは、空気シリンダによって駆動され、100psi未満の作動圧で反応器内の数百psiの圧力を保持することを可能にする。1つの実施形態では、ベントは、外部バルブにつながる配管を用いて延長することもできる。
【0136】
本発明の1つの例示的な実施形態では、反応器の下方に位置する加熱エレメントから反応器の内容物への熱の移動は、反応器の床の適切な厚さを選択することによって最適化される。1つの実施例では、床の厚さは、250μmである。チップを製造し得る材料の多くは、伝導体ではなくむしろ(PEEK又はポリDCPD等の)熱絶縁体である。これは、通常、250μmの障壁を超える場合においても重要な温度低下を生じさせる。DCPDの場合には、180度でのずれは、約20度である。反応器部は、次の特性、即ち化学的、熱的及び放射線安定性並びに製造可能性を併せ持つ広範囲の材料を用いて構築できる。
【0137】
更に、蓋部の少なくとも一部分は、好ましくは透明であってよい。この特徴は、カメラを用いた反応室の視覚的監視を可能にする。機械視覚技術は、更に、他の事象を誘発するために使用できる、反応完了等の、所定の事象を示す、反応室内の変化を追跡するために使用できる。例えば、蒸発が完全に完了するまで待機して、反応器が乾燥していることを保証するために余分な時間を使う代わりに、カメラを使用してフィードバックループを確立することができる。この例示的な実施形態によると、カメラは、反応室が完全に無水分となった瞬間に制御装置へ信号を送ることができ、反応器を冷却させ、気体流を停止させ、前駆体を充填することを始めとする次の工程を引き起こす。そのようなフィードバック機構がない場合は、工程を完了するために必要な最長観察時間を把握し、それに約20%を加えることによって、所定の工程を完了するために必要な時間についての推定値を入手することが必要になる。そのようなシナリオでは、工程がより短い期間で完了する場合においても、システムは、まだ規定の時間の間、待機する必要がある。更に、工程が推定より長時間を要する場合、先行工程が完了する前に次の工程が開始されるであろうから、全合成プロセスは危険に曝されることがある。
【0138】
本発明の別の例示的な実施形態によると、反応室の乾燥度は、静電容量センサを用いて監視することができる。従って、複数の伝導性プローブ(例えば、3つのプローブ)は、乾燥反応器及び湿潤反応器間の静電容量の変化を測定するように構成されている反応器の底端部より下方に配置することができる。この感知機構は、反応器内の乾燥度を評価するために、時間と結び付けて使用できる。更に別の例示的な実施形態によると、反応室の乾燥度は、チップの下流にあるベントラインに配置された流量センサを用いて監視できる。流量は蒸発が開始すると上昇し、反応器内に残っていた溶媒がなくなると、ベースラインに低下する。
【0139】
本発明の別の例示的な実施形態によると、反応室の乾燥度は、レーザセンサを用いて監視することができる。従って、反射型レーザセンサは、反応器の底端部に狙いを定めて、湿潤反応器及び乾燥反応器から戻ってくる光線量の相違を測定することができる。更に、又は代替的に、湿潤反応器及び乾燥反応器状態において反応器を通過する光線の量の相違を測定するために、スルービーム(Thru−Beam)レーザセンサが使用されてもよい。この構成では、スルービームレーザセンサは、例えば、光線ビームが側面から反応器の底端部を通過するように配置することができる。
【0140】
ガラス製蓋によれば、カメラシステムを組み込むために所望の透明性を得られるが、全体がガラスからできているような蓋を作製するのは困難かつ高価であり得る。このため、本発明の例示的な実施形態によると、蓋は、PEEK又はDCPD等のプラスチック材料から作製されているフレーム内にガラス窓を備えていてよい。この窓は、ねじ接続を保持するフレーム内へ圧力嵌合することができる。ガラス部分は、例えば、ガラス上に穿孔し又はエッチングし得るただ2本だけのチャネルを含有していてよい。
【0141】
図22は、本発明の例示的な実施形態による、ガラス/PEEKを組み合わせた蓋を示している。以下の説明は図22の代表的な蓋に関連する特定の数値及びパラメータを提供するが、これらの数値及びパラメータは、本発明の様々な実施形態の範囲から逸脱せずに、他の例示的な蓋を製造するために修正されてよい。図22に示した蓋の様々な部分は、以下のように同定できる。
・2層のガラスチップ、総厚5mm、六角形の設置面、およその面積10×12mm。
・ベースガラス層の底部にエッチングされたo−リング用溝(深さ300ミクロン×幅620ミクロン);エッチングされた溝内に挿入された小さな部分のo−リング。
・最上層の底部内にエッチングされたチャネル;これは、10〜32個の穴へ半球形の水平チャネルを生じさせる。
・ベース層を通して穿孔された2つの0.6mm径の穴。
・容積のコストを減少させるためにウェハレベルでエッチング、穿孔、融合及びダイスカットされたチップ。
【0142】
チップは、最上層内の穴を通して適合し、底部層内へねじ入れられる3本のボルトによって共に保持されてよい。チップは、両方の層を最初から最後まで通過する更に3個の穴を有していてよい。これらは、チップをインターフェース層へボルト固定するために使用される。この剛性アタッチメントはポートの周囲のo−リングと共に緊密な密封を作り出し、インターフェースを介してチップからの液体の出入りを可能にする。その他の例示的な実施形態では、様々な種類のラッチングを始めとする、チップをインターフェースベース上に固定する他の方法が実行されてよい。しかし、インターフェースへチップをボルト締めする方法は、スペースを節約しながら単純に実行できるという利点を有している。
【0143】
ヒータは、インターフェース層の開口部を通してチップの底部(「反応器」)内の端ぐり穴内に挿入することができる。様々な層における公差は、ヒータと反応室床間の如何なる場所でも、0〜300ミクロンの間隙を作り出すことがある。絶縁性空隙を回避するために、チップ挿入の前にヒータの上部に伝熱ペーストを配置することができる。ペーストは完全に取り除くことができ、チップが取り外される度に交換することができる。代替的実施形態では、チップ−インターフェースアセンブリ内の様々な地点に、ばねを配置することができる。ばねがインターフェース層の下方に配置されると(それを引っ張るが、それを押し上げないばね)、チップがインターフェースへボルト締めされたときに、インターフェースがチップを持ち上げるので、チップはヒータの上部に置かれる。これは、ヒータとチップとの間の間隙を常に最小限に抑える(様々なチップ−インターフェース組み合わせにおいて異なる可能性がある、公差の加算とは無関係に、2者の間の接触を保証する。)。この構成は、伝熱化合物の必要性をも、また、排除する。反応室への熱伝導を最大化し、チップの残りの部分への熱伝導を最小限に抑えるためには、円筒形ヒータの周囲の有意な空隙が残されたままでよい。従って、故意に絶縁性空隙を残すことによって、側面上でのヒータとチップとのあらゆる接触を回避できる。
【0144】
本発明の別の例示的な実施形態では、試薬容器はシリンジドライバの上方に位置するように設計される。この構成によれば、容器の底部からの液体の吸引を効率的に発生させ、試薬バイアル、シリンジドライバ及びチップの間の配管の長さを最小限に抑えることが可能になる。プロセス全体は、例えば、PLC(プログラム可能な論理制御)制御装置によりビジュアルベーシックプログラムを用いて制御することができる。図7から図10は、本発明の実施形態によるデバイスの例示的な実施形態を示している。詳細には、図7は、チップ、ソレノイド及びPLC制御装置等の基本的コンポーネントを含む代表的なデバイスを示している。図8は、機器のカバーが閉じられている、バイオマーカーの合成及び単離を実行できる例示的な機器を示している。図9は、カバーが取り外されている代表的な機器を示しており、図10は、デバイスに関連する様々なコンポーネント及び機能もまた識別されている、代表的な機器を示している。
例示的な実施形態:[11C]−標識化生成物の合成
炭素11標識化用薬剤(例えば、ヨウ化メチル、メチルトリフレート、一酸化炭素、シアン化水素)を利用するプロセスの例として、限定するためではなく、マイクロ流体デバイス内で以下の工程を実施することができる。
【0145】
a)サイクロトロンターゲット又は後照射プロセッサから[11C]−標識化用薬剤を受け入れる。
【0146】
b)有機及び/又は極性非プロトン性溶媒(アセトニトリル、DMF、DMSO等)中で反応性[11C]−標識化用薬剤の溶液を生成する。
【0147】
c)有機及び/又は極性非プロトン性溶媒(アセトニトリル、DMF、DMSO等)中で反応性前駆体の溶液を提供する。
【0148】
d)新しく炭素−窒素、炭素−酸素、炭素−硫黄又は炭素−炭素結合を作り出すためにSN2求核置換反応又は他の適切な反応を用いて、必要に応じて熱又はマイクロ波エネルギーを使用して、[11C]−標識化用薬剤を前駆体と反応させる。
【0149】
e)例えば、固相抽出法又はクロマトグラフィによって、最初の[11C]−標識化生成物を精製する。
【0150】
f)精製した最初の[11C]−標識化生成物を第2試薬と(例えば、必要に応じて保護基の加水分解によって)反応させて最終[11C]標識化生成物を生成する。
【0151】
g)固相抽出法又はクロマトグラフィによって、最終[11C]−標識化生成物を精製する。
【0152】
h)[11C]−標識化生成物から溶媒を除去する。
【0153】
i)最終[11C]−標識化生成物を最終生成物バイアルへ配送する。
例示的な実施形態:制御システム
以下の開示は、本発明の様々な実施形態による装置、プロセス及び制御についての説明である。この機器は、本発明の1つの実施形態であり、動物及びヒトの陽電子放出断層撮影法による走査において使用するための、複数タイプの放射標識化化合物の自動合成及び精製を可能にする。
【0154】
図7から図10に示したように、本発明の実施形態による例示的な機器は、アルミニウムフレーム;点検口を備えるステンレススチール製パネルエンクロージャ、並びに:
入力/出力(I/O)制御のためのプログラム可能な論理制御装置(PLC);
反応器内の様々な事象を視認するため、並びに乾燥及び蒸発制御のための、高分解能CCDカメラ及び機械視覚システム;
精密な流体配送のための低内部容量バルブ及びゼロデッドボリュームシリンジを備える8本以上の自動精密シリンジポンプ;
流体制御のための11個の高圧液体/気体バルブ;
イオン交換カラム上での捕捉及び放出のための低内部容量高圧自動制御ループバルブ;
カラム再生及びシステム洗浄のための低内部容量高圧自動制御分配バルブ;
HPLC注入ループ内へ粗生成物を充填するための低内部容量高圧自動制御ループバルブ;
合成反応のために6個のオンチップバルブ並びに通気式反応室を含有するマイクロ流体チップ;
反応室を加熱及び冷却するための熱電モジュール;
手動圧力調節装置;
自動圧力調節装置;
気体マニホルド;
5つの高圧ソレノイド気体バルブ;
1つの低圧ソレノイド気体バルブ;
手動流量制御バルブ;
液体バイアル及びボトル;
機器の全般的制御のためにビジュアルベーシック制御プログラムを実行するラップトップPC;
2つの熱電ヒータ及びクーラ、精製カラム、オンボードHPLC、並びに生成物分離バルブを含む精製システム、からなる装置を含んでいてよい。
【0155】
図11から13は、本発明の様々な実施形態による機器を作動させるための例示的なユーザインターフェース画面を示している。詳細には、図11は、本発明の1つの実施形態による自動放射合成作動についての例示的な入力画面を示している。図12は、本発明の1つの実施形態による手動放射合成作動のための例示的な入力画面を示す図である。図13は、ユーザが機器操作の手動及び自動モードを選択することを可能にする例示的な画面を示している。1つのそのようなデバイスは、ビジュアルベーシック制御プログラム並びにデバイスの制御のためにラダー論理PLCを使用する、Siemens Universal Biomarker Synthesis Instrument(Siemens社汎用バイオマーカー合成機器)として実行されてきた。
【0156】
この機器は、以下の3つのモードの1つで使用できる。(1)スタートボタンのワンクリックでターゲット水から注射用製剤中の精製生成物までのプロセスを行う全自動化;(2)各合成工程後にユーザを休止させ、次の工程においてどのパラメータを使用するのか、又は工程をスキップするか、又はプロセスを停止するかをユーザに決定させる、個別工程の自動化;及び(3)ユーザが、バルブ、圧力調節装置、シリンジ等の機器内の各デバイスを制御できる、完全手動モード。全モードが、ユーザがチップ上方に配置されたカメラからの出力を個別画面上で観察することによって、リアルタイムでチップ内で発生するプロセスを監視することを可能にする。機械視覚は同一画像を使用して、自動プロセスにおいて所定の工程シークエンスを駆動し又は手動モードでの工程完了の指標をユーザへ与えることができる。
例示的な実施形態:[18F]FLTを調製するためのシステムの使用
例として、そして限定するためではなく、以下の説明は、[18F]FLTを調製するための本発明の様々な実施形態によって実施できる1組の工程を提供する。以下の説明を通して、図14(A)及び図14(B)に示されている様々なコンポーネントが参照される。括弧付きで言及される全用語(例えば、「LV2」)は、図14に同様に表示されたコンポーネントに対応する。これら2つの図面は、本発明の1つの実施形態による様々なコンポーネント並びに流体及び気体ネットワークの詳細図を示している点で、相互に類似する。しかし、図14(B)は、本明細書に開示した精製システムに関する更なる詳細を含んでいる。以下の説明は図14(B)によるシステムの代表的な使用に関連する特定の数値及びパラメータを提供するが、これらの数値及びパラメータは、本発明の様々な実施形態の範囲から逸脱せずに、本システムを利用するために修正されてよい。[18F]FLTの合成の前に、機器は洗浄サイクルを通過し、次にシステムは過剰に使用される試薬(HCl及びH2O)をデッドボリュームバイパスシステムを通ってチップに至るまで運ぶプライミング工程を(自動的に)完了しなければならない。
【0157】
[F−18]フッ化物を含有する放射性ターゲット水約2.0mLが、捕捉方法が開始される前に適切なバイアル(標識化した「F18/H2O(HP)」)内に配置される。「Rheodyne捕捉バルブ」は、「捕捉」位置に設定される。空気バルブ「AV1」によって制御される高圧窒素が使用され、収集バイアル上へストリップ水を通過させる間に[F−18]フッ化物を捕捉して保持する「イオン交換カラム」を通してターゲット水が押し進められる(標識化された「H2O18廃棄物」)。そこで、「Rheodyne捕捉バルブ」は、「放出」位置に切り換えられる。次に、15μLのK2CO3は、「ポンプ6」を用いて「6K2CO3」バイアルから吸引して、「イオン交換カラム」に向けて分注することができる。次に精密な量の窒素が「ポンプ4」によって「八方向マニホルド低圧」から吸引され、チップバルブ「溶液 1 F18」及びベントバルブ「LV2」を開放した後に、15μLのK2CO3に向けて分注される。この窒素は、「イオン交換カラム」中を反対方向にK2CO3を押し進めるために使用され、捕捉された[F−18]フッ化物を放出させ、次にそれをマイクロ流体「チップ」内の反応室内へ配送する。この時点で、チップバルブ「溶液 1 F18」は閉鎖され、チップバルブ「溶液6 K222」は開放される。精確な量の窒素は「ポンプ7」によって「八方向マニホルド低圧」から吸引され、事前に計量された量(例えば、35μL)のKryptofix2.2.2を含有する「K222」バイアルに向けて分注され、Kryptofix2.2.2を反応室内へ移動させるために使用される。チップバルブ「溶液6 K222」は閉鎖され、次に反応室は、フッ化物乾燥/H2O蒸発工程である次の工程のために調製される。
【0158】
フッ化物の乾燥/H2Oの蒸発:「自動圧力調節装置」は15psigに設定され、チップ熱電モジュール「TEM1」温度は110℃へ設定され、チップベントバルブ「LV2」は先行工程から開放されたままとなり、チップ窒素バルブ「LV1」は開放され、タイマがセットされ、フッ化物の乾燥及びH2O蒸発の工程が開始される。15psigの圧力は1psigで開始され、15psigに到達するまで3秒毎に1psigずつ上昇させられる。圧力は、「自動圧力調節装置」によって制御される。乾燥の精密な程度は、タイマを用いて機械視覚システムからのフィードバックを加えて決定される。機械視覚システムでは、反応器の視野角内の幾つかの箱は、各箱について、乾湿の場合に赤、緑、青、色相、彩度、及び輝度値を用いてプログラムされる。これらの数値プラス時間を使用して、乾燥度のレベルが決定される。そしてチップ窒素バルブ「LV1」が閉鎖される。
【0159】
機械視覚システム(図14には示していない)は、高分解能カメラ及び特別設計されたソフトウエアを備えていて、反応室の監視、フィードバックの提供、及びフィードバックによってプロセスの後続の工程を開始させることを可能にする。
【0160】
乾燥の後は、チップベントバルブ「LV2」は開放したままとなる。チップバルブ「溶液2前駆体」は開放され、精密量の窒素が「ポンプ8」から吸引され、「前駆体」バイアルに向けて分注され、前駆体を反応室内へ移動させるために使用される。「前駆体」バイアルは、事前に計量された量(40μL)の前駆体を含有していることに留意されたい。チップバルブ「溶液2前駆体」は、全容量がチップへ配送された後に閉鎖される。チップベントバルブ「LV2」は閉鎖され、反応室は、フッ素化工程である次の工程のために調製される。
【0161】
フッ素化:「LV1」を開放し、「自動圧力調節装置」によって圧力を15psiへ設定し、次に「LV1」を閉鎖することによって反応室内で圧力を設定する。チップバルブ全部を閉鎖して、チップ熱電モジュール「TEM1」は140℃へ設定され、タイマは180秒間へ設定される。タイマ時間の終了時には、温度は、「TEM1」によって60℃へ低下させられる。次に「LV1」は開放され、圧力は「自動圧力調節装置」によって0psiへ減圧され、次に「LV1」が閉鎖される。次にアセトニトリル蒸発工程が始まる。例えば15psi等の小さな圧力で反応器を加圧すると、生成物の分解又はベント内への反応物質の損失を引き起こす溶媒の蒸発及び沸騰が抑制される。別の実施形態では、高圧を印加すると、反応速度が更に改善され、より高い収率を生じる。
【0162】
アセトニトリルの蒸発:「自動圧力調節装置」は3psigに設定され、チップ熱電モジュール「TEM1」温度は60℃へ設定され、チップベントバルブ(「LV2」)は開放され、チップ窒素バルブ(「LV1」)は開放され、タイマは17秒間にセットされ、アセトニトリル蒸発の工程が開始される。3psigの圧力は1psigで開始され、3psigに到達するまで3秒毎に1psigずつ上昇させられる。精確な乾燥量は、タイマを用いて機械視覚システムからのフィードバックを加えて決定される。機械視覚システムでは、反応器の視野角内の幾つかの箱は、各箱について、乾湿の場合に赤、緑、青、色相、彩度、及び輝度値を用いてプログラムされる。これらの数値プラス時間を使用して、乾燥度が決定される。チップ窒素バルブ(「LV1」)は閉鎖され、他方チップベントバルブ(「LV2」)は開放されたままとなる。アセトニトリルの蒸発は、酸のための十分な空間をきれいにするために部分的であるにすぎないように設計されている。蒸発を完全に進行させると、攪拌せずに酸性水溶液中に有機残留物を溶解させることは不可能である。
【0163】
HClの充填:チップ熱電モジュール「TEM1」は60℃のままにされ、「自動圧力調節装置」は0psigへ設定されている。次に30μLの3N HClが「HCl」バイアルから「ポンプ3」を用いて吸引され、チップバルブ「溶液5 HCl」が開放され、次に30μLのHClが反応器内へ分注される。チップバルブ「溶液5 HCl」が閉鎖され、そしてチップベントバルブ(「LV2」)が閉鎖される。
【0164】
加水分解:チップバルブ全部を閉鎖したままにして、「TEM1」は100℃へ設定され、タイマは180秒間へ設定される。180秒間後、加水分解工程は終了し、溶離工程が始められる。FLTの場合には、圧力は加水分解中には0のままにされるが、この工程中に、より高い温度及び圧力を必要とする他のプロセスでは、加水分解中にもフッ化中に実施されるのと類似の方法で、上昇した圧力を維持できるが、溶離工程の前には0へ低下させることが必要になる。加水分解工程中に圧力を0のままにしておくと、反応混合物の軽度の沸騰を許容し、これはベントチャネル内への液体の損失を伴わずにコンポーネントを混合するために役立つ。
【0165】
溶離:「自動圧力調節装置」は0psigにとどまっており、「TEM1」は60℃にとどまり、チップベントバルブ(「LV2」)が閉鎖され、チップ窒素バルブ(「LV1」)が閉鎖され、そして2.0mLのH2Oは「H2O」バイアルから「ポンプ5」によって吸引される。チップバルブ「溶液3 H2O」が開放され、チップバルブ「溶液4 EXIT」が開放され、そして2.0mLのH2Oは、「注入ループバルブ」について選択された位置に依存して、チップに向けて分注され、未加工の生成物を「未加工生成物バイアル」内又は「注射ループ」内のいずれかへ溶離させる。チップバルブ「溶液3 H2O」は閉鎖され、次にチップバルブ「溶液4 EXIT」は閉鎖される。生成物が「未加工生成物バイアル」へ配送される場合は、今度はシステムから除去して分析することができる。
【0166】
精製:生成物が「注入ループ」内へ溶離されると、今度は「注入ループバルブ」は、「チップ」から「HPLC」位置へ切り換えなければならない。次に、「HPLCポンプ」が未加工の生成物を「HPLCカラム」内へ推進し始める。カラムは未加工の生成物流中の様々な化合物を分離するので、それらは様々な保持時間でカラムから出される(HPLC)。このシステムは、事前にプログラムされた勾配、工程又は定組成プログラムを実行しながら、FLT等の公知の化合物を自動的に検出し単離するようにプログラムされる。「検出/単離モジュール」を備える放射線検出器及びUV検出器は、カラムを離れる液体を監視するため、そしてバルブをして、精製された生成物を「精製生成物」バイアル内に向けさせ、残りの液体を「一般廃棄物」バイアルに向けさせるために、使用される。
【0167】
別の実施形態では、生成物の移動(及び損失)を最小限に抑えるために、反応室が注入ループの代りに使用され、HPLCポンプはチップ入口の1つへ直接的に配管され、他方、出口はHPLCカラムへ直接的に接続される。この配列により、注入ループの必要性が排除される。表2は、[F−18]FLT放射合成においてチップに関連する代表的な性能特性を示している。

【0168】
【表2】

【0169】
最後に、次の運転の前に、イオン交換カラム再生並びにマイクロ流体チップ洗浄を実施する洗浄工程がある。
【0170】
カラム再生:高圧窒素バルブ「AV3」のスイッチが入れられ、「KHCO3(HP)」バイアル内へ事前に充填された1.0mLのKHCO3は、「捕捉」位置にある「Rheodyne捕捉バルブ」を備える「イオン交換カラム」中を推進させられる。「AV3」バルブは、最後の少量の液体が「Rheodyne捕捉バルブ」から下流でインターフェース検出器を通過するとスイッチが切られる。これで「AV2」高圧バルブのスイッチが入れられ、2.0mLのH2Oはカラムを通して「H2O(HP)」バイアルから強制的に外へ出される。次に窒素は、乾燥のためにカラム中を流通させられる。「AV2」は次に、スイッチが切られる。
【0171】
チップのクリーニングは、次の運転のためにシステムを準備する一連の工程である。これは、遮蔽を開く必要なしに、手動運転を行わずに達成できる。1つの代表的な実施形態では、チップのクリーニングは、以下の工程によって実施できる。最初に酸のラインがN2でフラッシュされ、全部の酸が廃棄物へ除去される。次に、酸のライン及び反応室は、微量の酸を除去するために水で、次いでN2で、フラッシュされる。次にK2CO3ライン及び反応器は、水で、次いでN2でフラッシュされる。次に、Kryptofix2.2.2ラインは、アセトニトリルで、次いでN2でフラッシュされる。次に、前駆体のラインはアセトニトリル及びN2でフラッシュされるが、今度は、溶媒は粗生成物ラインを通ってチップから出て行き、HPLC注入ループをフラッシュする。最後に、反応器を確実に乾燥させるために加熱しながら、N2はKryptofix2.2.2及び前駆体両方のバイアルを通って流れ、反応器出口ライン及びベント出口から出て行く。バルブの全部が閉鎖して圧力が解放されると、システムは次の運転のために準備が整っている。
例示的な実施形態:精製及び処方システム
図23から図27は、本発明の例示的な実施形態による精製及び処方に関連する様々なコンポーネント及び工程を示している。これらのシステムは、合成又は以下のモジュラー設計アプローチが合成機器を補完する個別機器にまとめることができるので、同一機器内に組み込むことができる。図23(A)は、チップからサンプル充填ループへサンプルを移すための代表的な図を示している。図23(A)のサンプル充填バルブは、充填位置にある。図23(B)は、サンプル充填ループからC18カラム(又は任意の他のHPLCカラム)へのサンプルの注入を示している。図23(B)のサンプル充填バルブは、注入位置にある。従って、サンプルコンポーネントはC18カラム内で分離され、放射線及びUV検出システムを用いて連続的に検出される。所望のサンプル画分を収集できるが、他方残りは廃棄物として処理できる。別の実施形態では、UV検出モジュールを越えて生成物ライン内で追加の分配バルブを使用することによって、幾つかの画分を個別に収集することができる。
【0172】
図24は、鉛製ハウジングを用いて遮蔽されているCsI(TI)発光結晶/光ダイオードの組み合わせに基づく、代表的な放射線検出モジュールを示している。UV検出及びサンプル収集モジュールは、同一基板上に構築することができる。UV検出システムは、光源、CCD分光計及び光ファイバから構成される。画分収集は、三方向ソレノイドバルブを用いて制御できる。図25は、検出/サンプル収集モジュールの内部構造を示す上面図である。例示的な放射線検出モジュールは、鉛製ハウジングを用いて遮蔽されているCsI(TI)発光結晶/光ダイオードの組み合わせに基づく。UV検出及びサンプル画分は、同一基板上に構築することができる。UV検出システムは、光源、CCD分光計及び光ファイバから構成される。画分収集は、三方向ソレノイドバルブを用いて制御できる。
【0173】
図26は、代表的な溶媒除去モジュールを示している。画分バイアルの加熱及び窒素の流通は、溶媒除去を促進する。図26に示したように、除去された溶媒は、まず冷却トラップ内で凝縮させられ、その後、木炭バイアル内で捕捉される。図27は、溶媒がC18カートリッジを用いて生成物から除去される別の例示的な実施形態を示している。図27(A)では、画分バイアルには、サンプル画分を希釈する過剰な水が事前に充填されている。窒素を用いて、希釈されたサンプル画分は、所望の生成物を捕捉するC18カートリッジを通過する。より多くの水がサンプル画分ラインを通して配送され、C18カートリッジから残留溶媒を洗い流すことができる。図27(B)では、少量のエタノールがカートリッジを通って流れて捕捉された生成物を放出するように、バルブが切り換えられ、生成物は、次いで、注射可能なEtOH/H2O比へと、水で希釈される。
【0174】
本明細書に引用した全ての参考文献は、各々が個別に参照され全体として本明細書に組み込まれていたかのように、参照により組み込まれる。本発明の実施形態を記載する際には、明確さのために特定の用語が使用されている。しかし、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定することは意図されていない。本明細書において、どの記載も本発明の範囲を限定すると見なすべきではない。本明細書に提示した全ての実施例は、代表的なもので非限定的である。上述した実施形態は、上記の教示に照らせば当業者には理解されるように、本発明から逸脱せずに修正又は変更することができる。このため、下記の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内で、本発明は本明細書に詳細に記載した以外の方法でも実施できると理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室;
前記反応室に接続された1つ以上のフローチャネル;
前記反応室に接続された1つ以上のベント;及び
前記反応室内外への流通制御を実行するための1つ以上の一体型バルブとを備えてなる、
放射標識化化合物の放射合成のためのマイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記反応室が、圧力で嵌合されるチップの反応器部及び蓋部の内部に位置する、請求項1に記載のチップ。
【請求項3】
前記蓋部の少なくとも一部分が透明である、請求項2に記載のチップ。
【請求項4】
前記蓋部がフレーム内にガラス窓を含む、請求項2に記載のチップ。
【請求項5】
前記反応室への生成物の配送を実行するように構成されたインターフェースを更に備えてなる請求項2に記載のチップ。
【請求項6】
前記インターフェースが前記反応器部へ接続されている請求項5に記載のチップ。
【請求項7】
前記反応室の床が湾曲部を備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項8】
前記チップが六角形状を有する請求項1に記載のチップ。
【請求項9】
前記反応室を加熱するためのヒータを更に備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項10】
前記ヒータが、加熱エレメント、抵抗ヒータ、放熱器、マイクロ波ヒータ、及び反応室へ熱を遠隔配送するためのレーザデバイスのうちの少なくとも1つを備えてなる、請求項9に記載のチップ。
【請求項11】
前記ヒータが前記チップの底面にある開口部を通して前記チップに連結されている、請求項9に記載のチップ。
【請求項12】
ヒータが前記開口部の側壁から空隙によって分離されている請求項11に記載のチップ。
【請求項13】
前記ヒータが約250ミクロンの部分によって前記反応室から分離されている請求項9に記載のチップ。
【請求項14】
前記部分がドープされたDCPD材料を含有してなる請求項13に記載のチップ。
【請求項15】
前記バルブが空気圧アクチュエータ又はソレノイドによって制御されるが請求項1に記載のチップ。
【請求項16】
前記バルブが、1つ以上の隆線によって分離されている1つ以上の細い部分を備えたデュアルポートプランジャを、備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項17】
前記バルブが、細い金属部分、先端、及び前記反応室からのガス漏れを防止するように改変された1つ以上のo−リングを備えたプランジャを、備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項18】
前記チップに一体化されたイオン交換カラムを更に備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項19】
前記チップに一体化されたHPLCを更に備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項20】
前記チップのインターフェース部内に一体化されたHPLCを更に備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項21】
前記反応室が円筒形状及び約60μLの容量を有するものである請求項1に記載のチップ。
【請求項22】
前記チップが配管延長部を伴わない閉鎖型システムとして構成されている請求項1に記載のチップ。
【請求項23】
前記チップが流体及び気体の配送及び除去のネットワークと連絡するように更に改変されている請求項1に記載のチップ。
【請求項24】
1つ以上のシリンジが少なくとも1つの流体又は気体を前記チップへ配送するために使用される請求項23に記載のチップ。
【請求項25】
前記シリンジが、前記チップへの液体の効率的配送を実行するために液体内容物を備える1つ以上のバイアルの下方に、置かれている請求項24に記載のチップ。
【請求項26】
前記シリンジが前記チップへ気体を配送するために使用される請求項24に記載のチップ。
【請求項27】
前記ネットワークが、プレフィルド個別バイアル及びプレパッケージカートリッジの少なくとも1つとともに作動するように、改変されている請求項23に記載のチップ。
【請求項28】
前記カートリッジが、チップとともに単回使用するために十分な、予め計量された量の試薬を含有している請求項27に記載のチップ。
【請求項29】
液体の制御配送が閉鎖ベントに対する圧力の段階的増加によって実行される請求項23に記載のチップ。
【請求項30】
溶媒蒸発及び蒸気除去が前記反応室内で溶液の上方で気体を流すことによって行われる請求項1に記載のチップ。
【請求項31】
前記気体が窒素である請求項30に記載のチップ。
【請求項32】
前記反応室の内容物の過熱が、前記ベントを閉鎖し、ヒータで前記反応室を加熱することによって行われる、請求項1に記載のチップ。
【請求項33】
前記ヒータを適用する前に前記反応室を加圧する工程を更に含んでなる、請求項32に記載のチップ。
【請求項34】
一体化された溶媒除去モジュールを更に備えてなる請求項1に記載のチップ。
【請求項35】
マイクロ流体チップ;
前記チップと流体連絡していて、少なくとも1つの試薬を含有する試薬源;
流体配送及び除去ネットワーク;
前記ネットワークの作動を制御するように改変された制御装置;及び
前記デバイスの1つ以上の放射線に不可欠のコンポーネントを遮蔽するための局所放射線遮蔽とを備えてなる、
放射標識化化合物の自動放射合成のための携帯型デバイス。
【請求項36】
前記マイクロ流体チップ内の反応室を監視するためのカメラを更に備えてなる請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
前記カメラから受信した情報によって1つ以上の工程の完了を認識するように改変された機械視覚(Machine Vision)システムを更に備えてなる請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
第1工程が完了すると直ちに第2工程が開始される請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記デバイスがバッチモードで作動するように構成されている請求項35に記載のデバイス。
【請求項40】
前記デバイスが流過モードで作動するように構成されている請求項35に記載のデバイス。
【請求項41】
前記デバイスがバッチ−流過混成モードで作動するように構成されている請求項35に記載のデバイス。
【請求項42】
前記局所遮蔽がイオン交換カラム及びF−18源の少なくとも1つに対して実行される請求項35に記載のデバイス。
【請求項43】
前記制御装置がプログラム可能な論理制御装置及びユーザインターフェースを備えてなる請求項35に記載のデバイス。
【請求項44】
前記ユーザインターフェースが、前記デバイスの手動操作及び自動操作のうちの少なくとも1つを実行するように、構成されている請求項43に記載のデバイス。
【請求項45】
排気を除去するための1つ以上の内部フィルタを更に備えてなる請求項35に記載のデバイス。
【請求項46】
前記局所遮蔽が、ユーザによって実施される複数回の合成運転における前記ユーザの放射線への曝露を、防止する請求項35に記載のデバイス。
【請求項47】
充填された試薬の全部がゼロ廃棄物システムによって消費される請求項35に記載のデバイス。
【請求項48】
イオン交換カラムからの[F−18]フッ化物を効率的に溶離するように更に改変された請求項35に記載のデバイス。
【請求項49】
試薬の自己計量を更に備えてなる請求項35に記載のデバイス。
【請求項50】
前記制御装置が前記装置の全自動作動のために改変された請求項35に記載のデバイス。
【請求項51】
1つ以上の試薬をマイクロ流体チップ内に導入し;、
ここで、チップは、
反応室と、
前記反応室へ接続された1つ以上のフローチャネルと、
前記反応室へ接続された1つ以上のベントと、
前記反応室内外への流通制御を実施するための1つ以上の一体型バルブとを
備えてなり、
前記試薬を処理して放射標識化化合物を生成させ;そして
前記放射標識化化合物を収集することを含んでなる、
放射標識化化合物を放射合成するための方法。
【請求項52】
プログラムコードが、マイクロ流体チップを使用して制御装置に放射標識化化合物を放射合成するための方法を実行させるための指示を含んでなり:
前記方法は、
1つ以上の試薬を反応室内へ導入し;
合成システムを作動させて所定のアルゴリズムに応答して前記試薬を処理して放射標識化化合物を生成させ;そして
前記放射標識化化合物を収集することを含んでなる、
コンピュータ可読媒体上で実現されるプログラムコード。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14(A)−1】
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【図14(A)−2】
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【図14(B)−1】
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【図14(B)−2】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図16D】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2010−531295(P2010−531295A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503277(P2010−503277)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/060267
【国際公開番号】WO2008/128201
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
2.WINDOWS
3.TEFLON
4.フロッピー
【出願人】(593063105)シーメンス メディカル ソリューションズ ユーエスエー インコーポレイテッド (156)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Medical Solutions USA,Inc.
【住所又は居所原語表記】51 Valley Stream Parkway,Malvern,PA 19355−1406,U.S.A.
【Fターム(参考)】