説明

集合住宅の移動経路報知システム

【課題】集合住宅における人の移動についての適正化を実現できる移動経路報知システムを提供する。
【解決手段】集合住宅10は複数階建てとなっており、各階において複数の住戸21を有している。また、集合住宅10は共用部として共用通路23、共用階段25,26及びエレベータ装置31を有している。住戸21には住戸盤と生体センサとが設けられており、住民が住戸盤に体調等の生体情報を入力すること、及び生体センサにより住民の生体情報が検出されることにより生体情報が管理サーバにて取得される。管理サーバは、火災等の災害発生時において住戸21の住民が避難するための移動経路を生体情報及び災害情報に基づいて設定し、その移動経路を住戸盤などから報知音声や報知画面などにより報知させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の移動経路報知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
集合住宅において災害発生時などに人の移動経路を案内するシステムが提案されている。例えば特許文献1には、住戸から集合住宅の出口までの避難経路が設定され、その避難経路が住戸内において通信装置の画面に表示されるという避難支援装置が記載されている。この避難支援装置においては、集合住宅内の通路が使用可能か否かを示す通路状態情報に基づいて避難経路が設定される。このため、工事などにより使用不能な通路が避難経路として設定されるという不都合が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−287476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記避難支援装置のように、集合住宅内の通路状態に合わせて移動経路が設定された場合、その移動経路が移動する移動者に適しているとは限らない。これは、移動者ごとに好みの経路や体力に適した経路が異なると考えられるためである。例えば、車椅子の使用者と非使用者とでは移動経路によって移動に伴う負担が大きく異なると考えられる。したがって、集合住宅内を人が移動する場合にその移動を支援する構成に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、集合住宅における人の移動についての適正化を実現できる移動経路報知システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明の集合住宅の移動経路報知システムは、集合住宅に適用され、前記集合住宅内を移動する移動者の移動経路を設定し報知する集合住宅の移動経路報知システムであって、前記移動者について少なくとも歩行に関する情報を含む生体情報を取得する生体情報取得手段と、前記生体情報取得手段により取得された生体情報に基づいて、前記移動者について移動経路を設定する移動経路設定手段と、前記移動経路設定手段により設定された移動経路を報知装置に報知させる報知制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、歩行に関する情報を含む生体情報に基づいて移動経路が設定されるため、仮に集合住宅内に移動者にとって移動に困難を伴う場所があったとしても、その場所を避けて移動経路を設定できる。例えば、車椅子使用者に対してはスロープやエレベータを含む経路を移動経路として設定できる。したがって、集合住宅における人の移動についての適正化を実現できる。
【0008】
なお、歩行に関する情報には、歩行障害を有していることの情報、高齢者であることの情報などが含まれている。
【0009】
第2の発明では、前記集合住宅は複数階建ての集合住宅であり、前記移動経路は、該集合住宅の住民が前記移動者として自住戸の階以外の階に移動する際の経路であり、前記住民に関して前記集合住宅内における住戸位置情報を取得する住戸情報取得手段を備え、前記移動経路設定手段は、前記生体情報に加えて、前記住戸情報取得手段により取得された住戸位置情報に基づいて前記住民について前記移動経路を設定する。
【0010】
複数階建ての集合住宅では、その集合住宅内の移動に際して上下階の移動を要するため、移動経路の違いによる移動者の負担の差が平地での移動の際に比べて大きいと考えられる。この点、第2の発明によれば、生体情報及び住戸位置情報に基づいて移動経路が設定されるため、住民が自住戸の階以外の階に移動する場合に、住民にとって移動に伴う負担が大き過ぎないような経路をその住民の移動経路として設定することができる。したがって、住民が集合住宅内を移動する場合に上下階の移動についての適正化を実現できる。
【0011】
第3の発明では、災害発生の有無を含む災害情報を取得する災害情報取得手段を備え、前記移動経路設定手段は、前記生体情報及び前記住戸位置情報に加えて、前記災害情報取得手段により取得された災害情報に基づいて前記住民について前記移動経路を設定する。
【0012】
災害が発生した場合、複数階建ての集合住宅においては避難する住民が一斉に階段など特定の場所に集中し、それら階段が混雑することが懸念される。この点、第3の発明によれば、災害情報に基づいて移動経路が設定されるため、特定の場所に住民が集中しないように各住民を分散させつつ避難させることができる。
【0013】
第4の発明では、前記災害情報取得手段は、前記集合住宅における災害の発生状況を前記災害情報として取得し、前記移動経路設定手段は、前記災害の発生状況に基づいて、住民の避難を要する階を避難階として設定する手段と、避難階の住民について前記移動経路を設定する手段と、を有している。
【0014】
災害が発生した場合、集合住宅の災害の発生状況によっては階ごとに危険性や避難の緊急性などが異なると考えられる。この点、第4の発明によれば、避難階の住民について移動経路が設定されるため、危険性や避難の緊急性などに合わせて住民を順に避難させることができる。したがって、集合住宅内の特定の場所に住民が集中して混雑することを抑制しつつ、危険性や避難の緊急性などが高い階の住民については優先的に避難させることができる。
【0015】
なお、集合住宅における災害の発生状況が取得される構成としては、災害の規模や種類、集合住宅における災害発生の位置などに基づいて推定される構成が挙げられる。
【0016】
第5の発明では、上下階を移動する階段が階ごとに複数設けられている集合住宅に適用され、前記移動経路設定手段は、前記災害の発生状況に基づいて、前記避難階の住民が使用する階段を複数の階段のうちいずれかに設定する手段と、前記避難階の住民について設定された階段を含むように前記移動経路を設定する手段と、を有している。
【0017】
階ごとに階段が複数設けられている集合住宅であっても避難する住民がいずれかの階段に集中すると、その階段が混雑して住民の避難が円滑に行われないことが懸念される。この点、第5の発明によれば、避難階において複数の階段のうちいずれかの階段が移動経路に含まれているため、避難階の住民を複数の階段に分散させて避難させることが可能となる。したがって、階段において住民の避難が円滑に行われないという不都合を抑制できる。
【0018】
第6の発明では、前記災害情報に基づいて、発生した災害が火災である場合に該火災が発生している階を判定する火災階判定手段を備え、前記移動経路設定手段は、前記火災階判定手段の判定結果に基づいて前記避難階を設定する。
【0019】
集合住宅において火災が発生した場合、火災発生の場所によって階ごとに危険性や避難の緊急性などが異なる。例えば、火災発生の住戸がある階の住民はその階より下階の住民に比べて危険性や避難の緊急性が高い。この点、第6の発明によれば、火災発生の場所に合わせて避難階を設定することにより、危険性や避難の緊急性を考慮しつつ住民を速やかに避難させることができる。
【0020】
第7の発明では、前記報知制御手段は、前記移動経路設定手段により避難階が複数設定された場合に、前記災害情報に基づいて前記移動経路を報知するタイミングを避難階ごとに設定する手段と、前記タイミングにて前記報知装置に前記移動経路を報知させる手段と、を有している。
【0021】
避難階が複数設定されている場合、災害発生時において各住宅の住民が一斉に避難すると、集合住宅内の通路や階段などが混雑してしまい、住民を速やかに避難させることが困難になると想定される。この点、第7の発明によれば、避難階が複数設定された場合に移動経路を避難階ごとに異なるタイミングで報知することが可能となるため、複数の住民が同じタイミングで階段に集中するということを抑制できる。したがって、階段において住民の避難を円滑に行わせることができる。
【0022】
第8の発明では、前記生体情報取得手段は、前記移動者について歩行障害を有していることの情報及び高齢者であることの情報の少なくとも一方を前記生体情報として取得し、前記移動経路設定手段は、前記移動者が歩行障害を有していることの情報及び高齢者であることの情報の少なくとも一方に基づいて移動経路を設定する。
【0023】
第8の発明によれば、移動者が歩行障害を有している人の場合や高齢者である場合に、それらの人にとって都合の良い経路を移動経路として報知することができる。
【0024】
第9の発明では、前記生体情報取得手段は、前記移動者について空気感染の可能性がある病気であることの情報を前記生体情報として取得し、前記移動経路設定手段は、前記移動者が空気感染の可能性がある病気である場合に、他の移動者について病気の移動者が通った経路を含まない経路を前記移動経路に設定する。
【0025】
空気感染の可能性のある病気を患っている移動者が集合住宅内を移動し、その移動者が通った通路や階段を他の人が通った場合、病気ではない人が病気に感染することが懸念される。この点、第9の発明によれば、病気ではない人は病気の移動者が通った経路とは異なる経路を通って集合住宅内を移動することができる。したがって、集合住宅内において人が病気に空気感染する可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態における集合住宅の構成を示す概略図。
【図2】二階部分の構成を示す概略平面図。
【図3】移動経路報知システムに関する電気的な構成を示すブロック図。
【図4】移動案内制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図5】災害時処理の処理手順を示すフローチャート。
【図6】集合住宅内の移動ルートについて説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明を集合住宅において住民の移動を案内する移動経路報知システムとして具体化している。図1は集合住宅の構成を示す概略図、図2は二階部分12の構成を示す概略平面図である。
【0028】
図1に示すように、集合住宅10は複数階建てとなっており、一階部分11〜五階部分15を有している。各階部分11〜15にはそれぞれ住戸21と共用通路23とが設けられている。各階部分11〜15において住戸21はそれぞれ複数配置されており、共用通路23に沿って並べられている。
【0029】
集合住宅10には共用階段25,26とエレベータ装置31とが設けられている。共用階段25,26及びエレベータ装置31は人が階間を移動する階間移動手段であり、集合住宅10は階間移動手段を複数有していることになる。共用階段25,26は各階部分11〜15の各共用通路23のそれぞれと連通されており、その連通部分を人が通るようになっている。共用階段25,26のうち第1共用階段25は共用通路23の一端側に配置されており、第2共用階段26は共用通路23の他端側に配置されている。エレベータ装置31は、上下方向に延びる昇降路32内を昇降するエレベータカゴ33を有している。昇降路32は各階部分11〜15の各共用通路23のそれぞれと連通されており、その連通部分を通って人がエレベータカゴ33に乗り降りするようになっている。昇降路32は共用階段25,26の間に配置されている。
【0030】
集合住宅10の一階部分11には正面出入口35と裏出入口36とが設けられており、正面出入口35又は裏出入口36を通って人が集合住宅10のエントランスホールに出入りするようになっている。一階部分11において正面出入口35は共用階段25側に設けられ、裏出入口36は共用階段26側に設けられており、正面出入口35と裏出入口36との間に昇降路32が存在している。また、一階部分11には管理室としての警備員室38が設けられている。
【0031】
なお、集合住宅10においては、共用通路23や共用階段25,25、正面出入口35、裏出入口36などにより共用部が構成されている。
【0032】
次に、各階の構成について説明する。ここでは、一階部分11〜五階部分15のうち二階部分12の平面図を参照しつつ説明する。なお、一階部分11〜五階部分15の構成はほぼ同じとなっているため、一階部分11、三階部分13〜五階部分15の平面図を参照しての説明は省略する。ちなみに、一階部分11の構成は、二階部分12の構成に対して出入口35,36や警備員室38、住戸21の数などが異なっているだけである。
【0033】
図2に示すように、住戸21には玄関出入口42が設けられており、玄関出入口42には開き戸等の玄関ドア43が設けられている。玄関出入口42は仕切壁のうち住戸21と共用通路23とを仕切る部分に設けられている。エレベータ装置31用の昇降路32には、エレベータ出入口45が設けられており、エレベータ出入口45には自動開閉式のエレベータドア46が設けられている。
【0034】
本実施形態では、移動経路報知システムにより集合住宅10内の移動ルートが設定され、その移動ルートが移動経路として集合住宅10の住民(入居者)に提供される。集合住宅10は移動ルートを提供する情報提供手段として、住戸21に設けられた住戸盤51と共用部に設けられたた共用盤52とを有している。住戸盤51及び共用盤52は情報提供盤となっている。
【0035】
住戸盤51は、各住戸21において玄関出入口42に設置されており、玄関ドア43の屋内側に取り付けられている。共用盤52は、共用通路23における第1共用階段25周辺や、第2共用階段26周辺、エレベータ出入口45周辺、共用通路23の略中央部、さらにはエレベータカゴ33内に設置されている。
【0036】
住戸盤51及び共用盤52は、タッチパネル55、監視カメラ56、緊急ボタン57、スピーカ58を含んで構成されている(図3参照)。タッチパネル55は、移動ルートを表示する表示装置としての機能と、住民による入力操作が行われる操作装置としての機能との両方を有している。監視カメラ56は、住戸盤51においては住戸21内を撮像する撮像手段となっており、共用盤52においては共用通路23内やエレベータカゴ33内の撮像する撮像手段となっている。緊急ボタン57は、住民により押圧操作される操作ボタンとなっている。スピーカ58は、音声や警報音などを出力する音声出力手段となっている。
【0037】
集合住宅10には、火災発生を検知する火災検知手段としての火災感知器59a,59b(図3参照)が設けられている。火災感知器59a,59bは、熱や火炎、煙を感知するセンサとなっている。火災感知器59aは住戸21に設置されており、火災感知器59bは共用通路23や共用階段25,26等の共用部に設置されている。なお、火災感知器59a,59bは災害情報取得手段に含まれている。
【0038】
続いて、移動経路報知システムに関する電気的な構成について図3を参照しつつ説明する。図3は移動経路報知システムに関する電気的な構成を示すブロック図である。
【0039】
図3に示すように、移動経路報知システムには、報知制御手段としての管理サーバ61が設けられており、管理サーバ61は警備員室38に設置されている。管理サーバ61は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、集合住宅10における各住戸21の位置を住戸21ごとに示す住戸位置情報などを記憶する管理記憶部62と、無線通信又は有線通信が可能な管理通信部63とを有している。
【0040】
管理記憶部62において住戸位置情報はあらかじめ記憶されている。住戸位置情報には、住戸21が配置されている階、その階において住戸21からエレベータ出入口45及び共用階段25,26までの距離などが含まれている。管理通信部63はインターネットへの接続、外部施設や携帯機(例えば携帯電話)との通信が可能となっており、管理サーバ61は管理通信部63を通じて天気情報や地震情報などを取得する。なお、地震情報は災害情報に含まれており、地震発生の有無や震度、地震による被害に関する情報などを有している。この場合、管理通信部63は災害情報取得手段に相当し、地震情報の他にも台風や大雨に関する情報を災害情報として取得する。
【0041】
管理サーバ61には、共用盤52と、火災感知器59bとが接続されている。共用盤52は、タッチパネル55及び緊急ボタン57に対して行われた操作を検出し、その検出信号を管理サーバ61に対して出力する。管理サーバ61は指令信号を出力することにより共用盤52のタッチパネル55及び監視カメラ56の動作制御を行う。火災感知器59bは検出信号をその火災感知器59bの設置位置を示す情報とともに管理サーバ61に対して出力する。
【0042】
管理サーバ61には、住戸21ごとに設けられたホームサーバ71がそれぞれ接続されており、管理サーバ61は指令信号を出力することによりホームサーバ71の動作制御を行う。ホームサーバ71は各住戸21のそれぞれに配置されている。ホームサーバ71は、管理サーバ61と同様にCPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、住民に関する住民情報を記憶するホーム記憶部72と、無線通信が可能なホーム通信部73とを有している。住民情報には生体情報が含まれており、生体情報としては、体温、心拍数、年齢、歩行障害の有無、車椅子の使用の有無、持病の有無、怪我の有無、感染症の有無、体調などが挙げられる。なお、感染症としては、空気感染の可能性がある風邪やインフルエンザなどが想定される。
【0043】
また、ホーム記憶部72には、このホームサーバ71が設置されている住戸21についての住戸位置情報が記憶されている。
【0044】
ホーム通信部73は住戸21の住民が携帯する携帯機との通信が可能となっており、携帯機からID情報が出力された場合、ホームサーバ71はそのID情報に基づいて認証処理を行い、携帯機の携帯者が登録者(住戸21の住民)であることを判定し、その判定結果をホーム記憶部72に記憶する。
【0045】
ホームサーバ71には、住戸盤51と、火災感知器59aと、住民の生体情報を検出する生体情報検出手段としての生体センサ75とが接続されている。住戸盤51は、タッチパネル55及び緊急ボタン57に対して行われた操作を検出し、その検出信号をホームサーバ71に対して出力する。住戸盤51のタッチパネル55においては、住民の生体情報や、住民の行動予定を示すスケジュール情報、嗜好等の個人情報などの入力が可能となっており、それら情報は住民情報としてホーム記憶部72に記憶される。また、ホームサーバ71は指令信号を出力することにより住戸盤51のタッチパネル55の表示制御、監視カメラ56の撮像制御、及びスピーカ58の音声出力制御を行う。
【0046】
火災感知器59a及び生体センサ75は検出信号をホームサーバ71に対して出力する。ホームサーバ71は、火災感知器59aの検出信号を住戸位置情報に関連付けて管理サーバ61に対して出力する。ここで、管理サーバ61は、共用部の火災感知器59b及び各住戸21の火災感知器59aの各検出信号に基づいて、集合住宅10内における火災発生の有無を取得するとともに、火災が発生した場合にはその火災の発生場所、火災の規模といった集合住宅10における災害の発生状況を取得する。なお、火災感知器59a,59bの検出信号が火災情報に相当し、火災情報は災害情報に含まれている。また、火災感知器59a,59bは災害情報取得手段に相当する。
【0047】
生体センサ75は住民の体温や心拍数などを取得するセンサとなっており、住戸21において住民が接触する部材や装置(例えばドアノブや体重計)などに設けられている。ホームサーバ71は生体センサ75により検出された生体情報をホーム記憶部72に記憶させる。ホームサーバ71は、生体センサ75により検出された都度の生体情報(住民情報)や、ホーム記憶部72に記憶された住民情報を住戸位置情報に関連付けて管理サーバ61に対して出力し、管理サーバ61は、それら生体情報や住民情報を住戸位置情報に関連付けて管理記憶部62に記憶する。なお、生体センサ75は携帯機に設けられていてもよい。この場合、生体センサ75の検出信号は携帯機からホーム通信部73を介してホームサーバ71に対して出力される。
【0048】
集合住宅10の移動経路報知システムにおいて管理サーバ61は、住民の移動を案内する移動案内制御処理を行う。ここでは、移動案内制御処理の処理手順について図4、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、移動案内制御処理は所定周期で繰り返し実行される。
【0049】
図4において、ステップS101では、各住戸21のホームサーバ71から住民情報を取得する。ステップS102では、災害が発生したか否かを判定する。ここでは、火災感知器59a,59bの検出信号に基づいて集合住宅10にて火災が発生したか否かを判定するとともに、管理通信部63を通じて取得した地震情報に基づいて地震が発生したか否かを判定する。そして、火災又は地震が発生した場合に災害が発生したとしてステップS103に進み、災害時処理を行う。なお、地震が発生した場合は、震度が基準値より大きいことを条件として災害が発生したと判定してもよい。
【0050】
ステップS103の災害時処理については図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0051】
図5においてステップS201では、災害が火災であるか否かを判定する。災害が火災である場合、ステップS202に進み、火災感知器59a,59bの検出信号に基づいて火災場所を判定する。また、火災場所を含む階を火災階として判定する。
【0052】
ステップS203では、住民が出入口35,36に移動できる候補ルートを算出する。ここでは、火災階の位置及び火災の規模に基づいて、住民を避難させる必要がある階を避難階として設定し、避難階について、火災発生場所、及び火災の火炎や煙により通行することが困難である場所を通行禁止エリアとして設定するとともに、その通行禁止エリアを通らずに且つエレベータ装置31を使用せずに住戸21から出入口35、36に移動できる経路を候補ルートとする。また、候補ルートには、他の候補ルートに比べて正面出入口35又は裏出入口36までの距離が最も短い最短ルートと、最短ルートよりも距離が長い迂回ルートとを含ませている。なお、最短ルートは移動に要する所要時間が最も短いルートであってもよい。
【0053】
ちなみに、避難階の設定について、通常は火災発生時には全ての階を避難階として設定するが、小火など火災の規模が小さい場合には火災階だけを避難階として設定することや、火災階及びそれより上階だけを避難階として設定することも可能となっている。
【0054】
ステップS204では、住民の避難時に共用通路23や共用階段25,26が過剰に混雑することが想定されるか否かを判定する。ここでは、各住戸21に居る全住民が最短ルートを通って避難する場合を想定し、その場合の共用階段25,26の想定通行人数を算出し、さらにその想定通行人数が許容範囲を超えるか否かを判定する。想定通行人数の算出においては、全住民が一斉に出入口35,36に向けて移動を開始した場合を想定し、さらに、共用階段25,26をそれぞれ複数のエリアに分割してエリアごとに想定通行人数を算出する。そして、想定通行人数が許容範囲を超えるエリアを混雑エリアとする。例えば、第1共用階段25における一階部分11と二階部分12との間のエリアにて想定通行人数が許容範囲を超える場合、そのエリアを混雑エリアとする。
【0055】
過剰な混雑が想定されない場合、ステップS205に進み、避難階の全住民について候補ルートのうち最短ルートを移動ルートに設定する。ここでは、住戸21から正面出入口35又は裏出入口36までの移動距離が最も短いルートを最短ルートとする。なお、住戸21から第1共用階段25及び第2共用階段26のうち近い方までの共用通路23の距離が短い方のルートを最短ルートとしてもよい。
【0056】
ステップS206では、住民が移動ルートで避難できるように火災時用報知処理を行う。火災時用報知処理では、避難階の住戸21を対象として住戸盤51のタッチパネル55に住民の移動ルートを表示させるとともに、住戸盤51のスピーカ58から避難が必要である旨の音声や警報音を出力させる。また、共用盤52のタッチパネル55に火災場所や、避難方向(例えば共用階段25,26の位置)を示す矢印、エレベータ装置31は使用禁止であることなどを表示させるとともに、共用盤52のスピーカ58から警報音を出力させる。さらに、管理通信部63を通じて指令信号を出力し、住民の携帯機に移動ルートを表示させる。
【0057】
また、火災時用報知処理では、住戸盤51や共用盤52からの音声等による報知を階ごとに行う。例えば、まず避難階のうち火災階を対象として報知を行い、その報知開始から所定時間(例えば数分)経過後に火災階より上階を対象として報知を行い、さらにその報知開始から所定時間後に火災階より下階を対象として報知を行う。
【0058】
なお、ステップS206では、火災時用報知処理に加えて火災対処処理を行う。火災対処処理では、火災発生の旨を消防署や管理会社といった外部施設に通報する処理、火災発生を携帯機から外出中の住民に知らせる処理、住戸盤51及び共用盤52の各監視カメラ56に撮像を行わせてその撮像データを外部施設や携帯機に送信する処理、エレベータ装置31を制御対象としてエレベータカゴ33の昇降を停止させる処理、正面出入口35及び裏出入口36をセキュリティ解除して開放させる処理などを行う。
【0059】
過剰な混雑が想定される場合(ステップS204がYES判定の場合)、ステップS207に進み、避難階のうち火災階以上の階の住戸21の住民について、候補ルートのうち最短ルートを移動ルートに設定する。ステップS208では、火災階より下階の住戸21の住民に共用通路23や共用階段25,26の移動が困難な移動困難者が含まれているか否かを判定する。ここでは、平坦通路の歩行が困難な歩行困難者や階段の昇降が困難な昇降困難者、車椅子の使用者、高齢者、乳幼児、子供、妊婦などを移動困難者とする。
【0060】
火災階より下階の住民に移動困難者が含まれていない場合、ステップS209に進み、火災階より下階の住民の少なくとも一部を迂回者に定めると判定する。ここでは、想定される混雑エリアにおいて超過となる人数を算出し、火災階より下階の住民のうち迂回ルートが短い住民から順に超過人数の分だけ迂回者として判定する。
【0061】
ステップS210では、火災階より下階の住民について移動ルートを設定する。ここでは、非迂回者については最短ルートを移動ルートに設定し、迂回者については迂回ルートのうち最も短いルートを移動ルートに設定する。その後、ステップS206に進み、火災時用報知処理を行う。この場合、住民の避難に際して共用通路23や共用階段25,26において住民の過剰な混雑が懸念される状況でも、一部の住民をその混雑エリアを通らないように迂回させることで過剰な混雑の発生を抑制できる。
【0062】
火災階より下階の住民に移動困難者が含まれている場合、ステップS211に進み、火災階より下階において移動困難者以外の住民の少なくとも一部を迂回者に定めると判定する。ここでは、想定される混雑エリアにおいて超過となる人数を算出し、火災階より下階で昇降困難者を除いた住民のうち迂回ルートが短い住民から順に超過人数の分だけ迂回者として判定する。
【0063】
その後、ステップS210に進み、火災階より下階の住民について移動ルートを設定する。ここでは、移動困難者及び非迂回者については最短ルートを移動ルートに設定し、迂回者については迂回ルートのうち最も短いルートを移動ルートに設定する。その後、ステップS106に進み、火災時用報知処理を行う。この場合、混雑エリアを迂回させる住民に移動困難者が含まれないようにすることにより、避難に際して過剰な混雑の発生を抑制しつつ、移動困難者が逃げ遅れることを抑制できる。
【0064】
災害が火災でない場合(ステップS201がNO判定の場合)、ステップS212に進み、非火災時用の移動ルートを設定する。ここでは、災害が火災である場合と同様に、住民ごとに候補ルートを複数算出し、混雑エリアの発生が想定されるか否かを判定する。混雑エリアの発生が想定されない場合、全住民について最短ルートを移動ルートに設定する。一方、混雑エリアの発生が想定される場合、移動困難者以外の住民の少なくとも一部を迂回者に定め、移動困難者及び非迂回者については最短ルートを移動ルートに設定し、迂回者については迂回ルートのうち最も短いルートを移動ルートに設定する。
【0065】
ステップS212では、非火災時用報知処理を行う。非火災時用報知処理では、火災時用報知処理と同様に、住戸盤51及び共用盤52に住民ごとの移動ルートを表示させる。
【0066】
図4の説明に戻り、災害が発生していない場合(ステップS101がNO判定の場合)、ステップS104に進み、住民情報に基づいて、集合住宅10内に感染症の感染者がいるか否かを判定する。また、感染症に感染した住民やその家族が感染者のいる旨を住戸盤51に対して入力したか否かを判定し、入力された場合に集合住宅10内に感染者がいると判定する。
【0067】
感染者がいる場合、ステップS105に進み、集合住宅10のいずれの住戸21の住民が感染者となったかを判定する。ここでは、感染症を検出した生体センサ75や感染者がいる旨の入力が行われた住戸盤51がいずれの住戸21に設定されているのかを、住戸盤51から出力された住戸位置情報に基づいて判定する。ステップS106では、住民情報に基づいて感染者が外出するか否かを判定する。ここでは、生体センサ75や住戸盤51からの信号に基づいて感染者を特定するとともに、その感染者のスケジュール情報に基づいて感染者が外出するか否かを判定する。また、感染者が外出することが住戸盤51に入力されたか否かを判定し、入力された場合に感染者が外出すると判定する。
【0068】
感染者が外出する場合、ステップS107に進み、感染者の移動ルートを設定する。ここでは、住戸21からエレベータ装置31を使用して出入口35,36に移動するルートを移動ルートとして設定する。この移動ルートは、共用階段25,26を使用するルートに比べて移動に際しての感染者の負担が軽減されるルートとなっている。また、正面出入口35及び裏出入口36のうちエレベータ装置31から近い方がルートに含まれるように移動ルートが設定される。
【0069】
ステップS108では、非感染者の移動ルートを設定する。ここでは、集合住宅10内において感染者の移動ルートに含まれる場所を通らずに集合住宅10外へ出ることができる候補ルートを住民ごとに算出し、候補ルートがある住民については感染者用の移動ルートと同様に候補ルートの中から移動ルートを設定し、候補ルートがない住民については一時的な(例えば数時間の)外出禁止を設定する。候補ルートがない住民としては、共用通路23のうち玄関出入口42の前の部分が感染者用の移動ルートに含まれている住戸21の住民が挙げられる。
【0070】
ステップS109では、外出時用報知処理を行う。外出時用報知処理では、感染者の住戸21において住戸盤51のタッチパネル55に感染者用の移動ルートを表示させ、非感染者の住戸21において住戸盤51のタッチパネル55に非感染者用の移動ルートを表示させる。この場合、感染者が通った場所を非感染者が通ることを回避することになり、非感染者が感染症に感染することを抑制できる。
【0071】
住民の中に感染症の感染者がいない場合(ステップS104がNO判定の場合)、ステップS110に進み、集合住宅10内に不審者がいるか否かを判定する。ここでは、緊急ボタン57の検出信号に基づいて住戸盤51又は共用盤52の緊急ボタン57が押圧操作されたか否かを判定し、押圧操作された場合に住戸21や共用通路23、共用階段25、26に不審者がいるとする。なお、認証処理により非登録者と判定された人が住戸21内にいる場合に、その住戸21内に不審者がいると判定してもよい。
【0072】
集合住宅10内に不審者がいる場合、ステップS111に進み、不審者の居場所を判定する。ここでは、住戸盤51のうちいずれの住戸盤51の緊急ボタン57が押されたのかの判定や、共用盤52のうちいずれの共用盤52の緊急ボタン57が押されたのかの判定を行い、緊急ボタン57が押された住戸盤51の住戸21、又は緊急ボタン57が押された共用盤52の周辺に不審者がいるとする。
【0073】
ステップS112では、防犯用報知処理を行う。防犯用報知処理では、不審者の居場所にある住戸盤51又は共用盤52から警報音を出力させ、それによって不審者を威嚇する。また、不審者の居場所ではない住戸盤51及び共用盤52からは一時的な外出禁止の旨を知らせる音声を出力させたり報知画面を表示させたりする。外出禁止の報知は、住戸盤51又は共用盤52のタッチパネル55に対して警戒解除の操作が行われるまで継続して行われる。
【0074】
なお、ステップS112では、防犯用報知処理に加えて防犯処理を行う。防犯処理では、不審者がいる旨を警察署や消防署、管理会社といった外部施設に通報する処理、不審者がいる旨を携帯機から外出中の住民に知らせる処理、住戸盤51及び共用盤52の各監視カメラ56に不審者の撮像を行わせてその撮像データを管理通信部63から外部施設や携帯機に送信する処理、エレベータ装置31を制御対象としてエレベータカゴ33の昇降を停止させる処理などを行う。住戸盤51や共用盤52にランプ部が設けられていれば、そのランプ部を発光させる処理を行ってもよい。
【0075】
続いて、管理サーバ61により設定される移動ルートについて図6を参照しつつ説明する。図6は集合住宅10内の移動ルートについて説明するための図であり、(a)に火災発生の場合の図を示し、(b)に感染症の感染者が外出する場合の図を示す。
【0076】
まず、集合住宅10内にて火災が発生した場合の移動ルートについて図6(a)を参照しつつ説明する。
【0077】
図6(a)に示すように、集合住宅10の三階部分13において第1共用階段25に最も近い住戸21で火災が発生し、火災に伴う通行禁止エリアがその住戸21に隣接した通路部分、及び第1共用階段25における三階部分13と四階部分14との間の部分である場合(図のハッチング部分の場合)、三階部分13の全ての住民(例えば図のMa)は、通行禁止エリアを通らずに避難できるルートのうち最短ルートにて案内される。この場合、それら住民は三階部分13の共用通路23を通って第2共用階段26に移動し、その第2共用階段26を使用して一階部分11に降りて裏出入口36に移動することができる。
【0078】
また、第1共用階段25を使用して三階部分13を通ることが火災発生に伴って禁止された場合、四階部分14及び五階部分15の全ての住民(例えば図のMb)は、第1共用階段25を使用せずに一階部分11に避難できるルートのうち最短ルートにて案内される。この場合、それら住民は四階部分14及び五階部分15の各共用通路23を通って第2共用階段26に移動し、その第2共用階段26を使用して一階部分11に降りて裏出入口36に移動することができる。
【0079】
さらに、第2共用階段26の一階部分11と二階部分12との間にて住民の過剰な混雑が想定される場合、二階部分12の一部の住民(例えば図のMc)は第2共用階段26を使用しない迂回ルートにて案内される。これにより、第2共用階段26で過剰に混雑することを抑制できる。また、この場合でも、高齢者等の移動困難者(例えば図のMd)は最短ルートにて案内される。これにより、第2共用階段26の混雑を抑制しつつ、移動困難者が逃げ遅れることが抑制される。
【0080】
次に、集合住宅10内に感染症の感染者がいる場合の移動ルートについて図6(b)を参照しつつ説明する。
【0081】
図6(b)に示すように、三階部分13において第1共用階段25に最も近い住戸21の住民が感染者(例えば図のMe)であり、その感染者がエレベータ装置31を使用して正面出入口35から外出する場合、共用通路23において感染者が通る部分に隣接した住戸21(図のハッチング部分に重なっている住戸21)の住民は外出が一時的に禁止される。共用通路23において感染者が通らない部分に隣接した住戸21の住民(例えば図のMf)は外出が禁止されることはないが、エレベータ装置31や正面出入口35といった感染者が通った部分(図のハッチング部分)を避けて第2共用階段26や裏出入口36を通る迂回ルートにて案内される。
【0082】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0083】
集合住宅10において住民が正面出入口35又は裏出入口36まで移動する際に住民に対して報知される移動ルートは、その住民の生体情報に基づいて住民ごとに設定される。ここで、生体情報には、住民の歩行に関する情報が含まれているため、集合住宅10内に住民にとって移動に困難を伴う場所があったとしても、その場所を避けて且つ移動が容易な場所を通るように移動経路を設定することができる。この場合、階段の昇降が困難な昇降困難者や車椅子使用者、感染症などにより体調が悪い住民を、共用階段25,26を通さずにエレベータ装置31を使用させて外出させることができる。したがって、集合住宅10における住民の移動についての適正化を実現できる。
【0084】
移動ルートが生体情報に加えて住戸位置情報に基づいて設定されるため、上下階の移動に際して共用階段25,26及びエレベータ装置31のいずれを使用するかによって移動に伴う負担が大きく異なる集合住宅10において、住民が上下階を移動する場合でもその住民を負担が大きくなり過ぎない経路にて移動させることができる。ここで、住戸21から出入口35,36までの経路が複数ある場合、経路ごとの負担の差は平地を移動する際の経路ごとの負担の差に比べて大きくなると考えられるため、上下階の移動に際して生体情報に合わせて移動経路を設定することは、集合住宅10における人の移動についての適正化を実現する上で効果的である。
【0085】
火災等の災害が発生した場合にその災害情報に基づいて移動経路が設定されるため、避難する住民が共用通路23や共用階段25,26における特定の場所に集中しないように分散させることができる。この場合、集合住宅10内において過剰な混雑の発生が抑制されるため、住民を速やかに避難させることができるとともに、混雑して人同士が接触するといった避難時の安全性の低下を抑制することができる。
【0086】
発生した災害が火災である場合、火災発生場所を有する火災階に基づいて避難階が設定され、避難階の各住民に対して移動経路が設定される。この場合、特定の場所が過剰に混雑することを抑制しつつ、危険性や避難の緊急性が高い住民を優先的に避難させることができる。火災発生時においては、火災階及びそれより上階の住民の危険性や避難の緊急性が高いと想定されるため、それら住民の移動経路を最短経路とすることにより避難を円滑に行わせることができる。
【0087】
避難階における全住民が最短経路にて避難すると過剰な混雑が発生しそうな場合に、火災階より下階の住民のうち歩行困難者などを除いた住民について迂回経路が移動経路に設定される。この場合、歩行困難者など早急な移動が困難な住民の移動負担が大きくなることを回避しつつ、集合住宅10内の特定の場所が過剰に混雑することを抑制できる。これにより、避難階の全住民を速やかに避難させることができる。
【0088】
避難階を対象として避難を促す音声等の報知が行われる場合、火災階、火災階より上階、火災階より下階の順で行われるため、各階の住民が避難を開始するタイミングをずらすことが可能となる。この場合、火災階の住民が火災階より上階の住民の混雑や下階の住民の混雑に巻き込まれることを抑制できる。したがって、避難階の全住民をより一層速やかに避難させることができる。
【0089】
集合住宅10内において感染症の感染者が外出する場合、感染者の移動ルートに含まれる部分が他の住民の移動ルートには含まれていない。このため、共用通路23やエレベータ装置31などの共用部において、健康な住民が感染者と同じ場所を通ることで感染症に感染するということを抑制できる。
【0090】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0091】
(1)住民情報のうち住民の嗜好に基づいて移動ルートが設定される構成としてもよい。例えば、他の住民が通る部分とは異なる部分を通ることを好む住民については、その住民の移動経路を他の住民の移動経路と極力重ならないように設定する構成とする。この場合、他の住民について第1共用階段25及び正面出入口35を通る移動ルートを設定していれば、他の住民とは異なる部分を通ることを好む住民についてはそれら第1共用階段25及び正面出入口35を含まずに第2共用階段26及び裏出入口36を含む移動ルートを設定する。
【0092】
(2)集合住宅10の外からいずれかの住戸21に入る訪問者等の人について移動ルートが設定される構成としてもよい。例えば、訪問者が触ることでその訪問者の生体情報を取得する生体センサと、訪問者が訪問する住戸21がいずれの住戸21であるのかを入力する入力装置とが正面出入口35や裏出入口36に設けられており、生体情報及び訪問先に基づいて訪問者の移動ルートが設定される構成とする。ここで、生体センサは訪問者の歩行に関する情報を生体情報として取得する。この構成によれば、訪問者の歩行の状態にとって困難とならない移動ルートにて訪問者を訪問先に移動させることができる。この場合、例えば訪問者が車椅子使用者であればエレベータ装置31を使用して訪問先に移動させることができる。
【0093】
また、集合住宅10に対して出入りする人ではなく、集合住宅10において上下階の移動を行う移動者について移動ルートを設定する構成としてもよい。
【0094】
(3)災害時においてエレベータ装置31を使用するルートが避難する住民の候補ルートに含まれていてもよい。ただし、エレベータ装置31を使用する上での安全性が確認されたことを条件として、エレベータ装置31を使用するルートが候補ルートに含まれることが好ましい。
【0095】
(4)移動経路報知システムが適用される集合住宅10には、上下階を移動する手段としてスロープが設けられていてもよい。例えば、上下階を移動する人の生体情報に合わせて、共用階段25,26及びスロープのいずれかを通る移動経路が設定される構成とする。この構成によれば、例えば車椅子使用者に対してスロープを通る経路があることを知らせることができる。
【0096】
(5)移動経路報知システムが適用される集合住宅10は、一階部分11より上階に共用出入口としての正面出入口35や裏出入口36が設けられていてもよい。また、屋上にヘリポートが設けられている集合住宅10においては、屋上に設けられた屋上出入口が共用出入口とされ、屋上出入口に移動するための移動ルートが住民に報知される構成としてもよい。
【0097】
(6)住戸盤51及び共用盤52は、タッチパネル55やスピーカ58等により天気情報や交通情報、車両に関する車両情報、住民の生体情報、集合住宅10に関する集合住宅情報などを報知する構成としてもよい。住戸盤51により天気情報が報知される場合、都度の降雨確率が文字情報としてタッチパネル55に表示される構成とすることにより、住民は傘が必要な場合に限って外出時に傘を所持することができる。住戸盤51により交通情報が報知される場合、住民は玄関にて一般道や高速道の渋滞の有無や各種公共交通機関の運行状況を知ることができる。なお、住戸盤51は玄関出入口42の周辺ではなくリビング等の居室に設けられていてもよい。
【0098】
住戸盤51により車両情報が報知される場合、駐車スペースに駐車されているプラグインハイブリッド車や電気自動車を対象としてバッテリの蓄電量や充電が完了したこと、車両の掃気移動が促されていることなどが報知される構成とすることにより、住民は住戸21に居ながらにして車両の状態を知ることができる。住戸盤51により生体情報が報知される場合、住戸盤51に握りバーが設けられその握りバーを住民が握ることにより生体情報が握りバーを介して取得される構成とすることにより、住民は外出前に健康状態をチェックすることができる。
【0099】
住戸盤51及び共用盤52により集合住宅情報が報知される場合、集合住宅10内に掲示板が設置されていなくても入居者に対する総会の連絡等の案内事項を住民に知らせることができる。
【0100】
(7)住戸盤51は、住民がタッチパネル55を操作することで外部施設と通信可能となる構成であってもよい。例えばタッチパネル55上にヘルプアイコンが用意されており、住民が病気などの緊急事態において住戸21に居ながらにして救助等を求めることができる。
【0101】
(8)上記実施形態では、管理サーバ61が移動経路設定手段及び報知制御手段として移動経路の設定及び報知制御処理を行う構成としたが、ホームサーバ71が移動経路設定手段として移動経路の設定を行う構成や、ホームサーバ71が報知制御手段として報知制御処理を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0102】
10…集合住宅、51…生体情報取得手段、報知装置及び住戸情報取得手段としての住戸盤、52…報知装置としての共用盤、55…生体情報取得手段及び報知装置としてのタッチパネル、58…報知装置としてのスピーカ、59a,59b…災害情報取得手段としての火災感知器、61…移動経路設定手段、報知制御手段及び火災階判定手段としての管理サーバ、62…住戸情報取得手段としての管理記憶部、63…災害情報取得手段としての管理通信装置、72…住戸情報取得手段としてのホーム記憶部、75…生体情報取得手段としての生体センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅に適用され、前記集合住宅内を移動する移動者の移動経路を設定し報知する集合住宅の移動経路報知システムであって、
前記移動者について少なくとも歩行に関する情報を含む生体情報を取得する生体情報取得手段と、
前記生体情報取得手段により取得された生体情報に基づいて、前記移動者について移動経路を設定する移動経路設定手段と、
前記移動経路設定手段により設定された移動経路を報知装置に報知させる報知制御手段と、
を備えていることを特徴とする集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項2】
前記集合住宅は複数階建ての集合住宅であり、前記移動経路は、該集合住宅の住民が前記移動者として自住戸の階以外の階に移動する際の経路であり、
前記住民に関して前記集合住宅内における住戸位置情報を取得する住戸情報取得手段を備え、
前記移動経路設定手段は、前記生体情報に加えて、前記住戸情報取得手段により取得された住戸位置情報に基づいて前記住民について前記移動経路を設定することを特徴とする請求項1に記載の集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項3】
災害発生の有無を含む災害情報を取得する災害情報取得手段を備え、
前記移動経路設定手段は、前記生体情報及び前記住戸位置情報に加えて、前記災害情報取得手段により取得された災害情報に基づいて前記住民について前記移動経路を設定することを特徴とする請求項2に記載の集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項4】
前記災害情報取得手段は、前記集合住宅における災害の発生状況を前記災害情報として取得し、
前記移動経路設定手段は、
前記災害の発生状況に基づいて、住民の避難を要する階を避難階として設定する手段と、
避難階の住民について前記移動経路を設定する手段と、
を有していることを特徴とする請求項3に記載の集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項5】
上下階を移動する階段が階ごとに複数設けられている集合住宅に適用され、
前記移動経路設定手段は、
前記災害の発生状況に基づいて、前記避難階の住民が使用する階段を複数の階段のうちいずれかに設定する手段と、
前記避難階の住民について設定された階段を含むように前記移動経路を設定する手段と、
を有していることを特徴とする請求項4に記載の集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項6】
前記災害情報に基づいて、発生した災害が火災である場合に該火災が発生している階を判定する火災階判定手段を備え、
前記移動経路設定手段は、前記火災階判定手段の判定結果に基づいて前記避難階を設定することを特徴とする請求項4又は5に記載の集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項7】
前記報知制御手段は、
前記移動経路設定手段により避難階が複数設定された場合に、前記災害情報に基づいて前記移動経路を報知するタイミングを避難階ごとに設定する手段と、
前記タイミングにて前記報知装置に前記移動経路を報知させる手段と、
を有していることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項8】
前記生体情報取得手段は、前記移動者について歩行障害を有していることの情報及び高齢者であることの情報の少なくとも一方を前記生体情報として取得し、
前記移動経路設定手段は、前記移動者が歩行障害を有していることの情報及び高齢者であることの情報の少なくとも一方に基づいて移動経路を設定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の集合住宅の移動経路報知システム。
【請求項9】
前記生体情報取得手段は、前記移動者について空気感染の可能性がある病気であることの情報を前記生体情報として取得し、
前記移動経路設定手段は、前記移動者が空気感染の可能性がある病気である場合に、他の移動者について病気の移動者が通った経路を含まない経路を前記移動経路に設定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の集合住宅の移動経路報知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−248805(P2011−248805A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123925(P2010−123925)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】