説明

集合住宅インターホンシステム

【課題】 集合住宅において周囲で使用している無線LANの状況を取得し、干渉の少ない通信チャンネルの割り当てを実現する。
【解決手段】 居室親機2は周囲の住戸に設置されている居室親機2等の無線LAN通信機器から発信されるRSSI値を測定するRSSI回路を有し、制御機5は個々の居室親機2のID及びハンディ端末4のIDを記憶するID情報記憶部と、個々の居室親機2が測定したRSSI値と通信チャンネル情報を記憶するRSSI情報記憶部を備え、制御機5がRSSI情報記憶部に記憶された情報を基に最も電波干渉を受けている居室親機2を選択し、選択した居室親機2に電波干渉する周囲の2つの居室親機2に対して通信チャンネルを選択した居室親機とは異なる通信チャンネルを割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集合住宅インターホンシステムに関し、特に住戸内に設置した居室親機が無線LAN通信により同様に住戸内で使用するハンディ端末と通信を行う集合住宅インターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
インターホンの居室親機として携行可能な機器を追加したインターホンシステムが普及している。このようなインターホンシステムで使用する携行可能なハンディ端末は、他の家電機器、特に情報通信機器で使用している電波による無線LAN通信を用いることで、システムの拡張性、汎用性が生ずるため、適用が進んでいる。
このようなシステムのなかで、複数の携帯可能なハンディ端末を備えた無線LANを使用したものとしては、特許文献1に記載されたインターホンシステムがある。これは、病院において使用されるナースコールシステムであって、看護師がIP携帯電話を携行し、複数のアクセスポイントを病院内に設置してIP携帯電話のアドレスを特定することで通信を可能とするものであった。
一方で、多数設置された無線LAN通信機器間の干渉を制御する形態として、機器の送信レベルを制御して互いの電波干渉を防止するものがあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−36977号公報
【特許文献2】特開2009−60655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無線LANの周波数帯域は狭く、使用可能な通信チャンネル数が少ない。例えば、2.4GHz帯の無線LANを使用した場合、3〜4チャンネルしか確保することができない。
そのため、複数の住戸が接近して隣接している集合住宅に無線LAN通信を適用すると、隣接する住戸同士が同一の通信チャンネルとなる場合が発生する。その場合は、電波干渉が発生して居室親機とハンディ端末の間の通信にノイズが入ったり、通信自体ができなくなる事態が発生してしまう。この点、上記特許文献1のナースコールシステムでは、使用するハンディ端末の数が限られていたため、通信障害を引き起こすには至らなかった。
【0005】
そのため、集合住宅インターホンシステムにおいて無線LANを適用する場合、上記特許文献2に記載されているように、通信電波自体を弱くして隣の住戸に影響を及ぼさないようにする方法が考えられるが、居室親機が住戸の中心に設置されることは少なく、住戸内全領域で無線LAN通信が可能なレベルに設定する必要があるため、電波の強さで隣接した住戸への電波干渉を防止することは難しい。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、集合住宅において周囲で使用している無線LANの状況を取得し、干渉の少ない通信チャンネルの割り当てを実現する集合住宅インターホンシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、集合住宅のエントランスに設置されて居住者を呼び出す機能を備えた集合玄関機と、各住戸に設置されて集合玄関機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機と、住戸毎に設置されて居室親機と無線LAN通信することで集合玄関機からの呼び出しに応答可能なハンディ端末と、集合玄関機と居室親機の間の通信を制御する制御機とを有する集合住宅インターホンシステムであって、居室親機は、周囲の住戸に設置されているハンディ端末等の無線LAN通信機器から発信される電波の強度を示すRSSI値を測定するRSSI回路と、測定した電波の通信チャンネル情報及びID情報を認識する電波認識手段とを有する一方、制御機は、住戸毎の居室親機及びハンディ端末のID情報等を記憶するID情報記憶部と、居室親機からRSSI値、通信チャンネル情報、ID情報を入手して、居室親機に対してハンディ端末との通信に割り当てる通信チャンネルを選択制御する通信チャンネル割当制御手段と、RSSI値及び通信チャンネル情報等を記憶するRSSI情報記憶部とを有し、通信チャンネル割当制御手段は、RSSI情報記憶部に記憶された情報を基に、所定の手順で通信チャンネル制御対象の居室親機を選択し、選択した居室親機に対する電波干渉を削減するために予め設定した所定の条件に従って通信チャンネルを割り当てることを特徴とする。
この構成によれば、通信チャンネル割当制御手段が所定の手順で居室親機を選択、例えば最も多くの電波干渉を受ける居室親機を選択し、その選択した居室親機の周囲の居室親機に対して、電波干渉対象の居室親機とは異なるLAN通信チャンネルを割り当てるよう制御することで、居室親機とハンディ端末との通信が電波干渉による障害で通信できなくなる事態を防止することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、通信チャンネル割当制御手段は、RSSI情報記憶部から、最も多くの電波干渉を受けている居室親機を最初に選び、当該居室親機或いは当該居室親機に電波干渉する周囲の居室親機の通信チャンネルを所定の条件に従って変更することを特徴とする。
この構成によれば、最も多くの電波干渉を受けている居室親機を最初に選び、その居室親機がハンディ端末と通信できるようLAN通信チャンネルの割り当てが行われるので、電波干渉による障害を効果的に削減でき、通信チャンネルの適正な割り当てができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、通信チャンネル割当制御手段は、所定の手順で選択した居室親機のRSSI回路が測定したRSSI値から、電波干渉対象の居室親機を電波干渉の大きい順に順位付けし、順位付けした少なくとも上位2つの居室親機に対して、所定の手順で選択された居室親機の通信チャンネルとは異なる通信チャンネルを割り当てることを特徴とする。
この構成によれば、所定の手順で選択された居室親機に電波干渉する周囲の居室親機の通信チャンネルが変更される。よって、選択された居室親機が上下左右に干渉対象の住戸(居室親機)があっても、周囲に割り当てる通信チャンネルを操作するので、チャンネル数が例えば3チャンネルと少なくても確実に通信障害を削減することができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、通信チャンネル割当制御手段は、所定の手順で選択した居室親機に対して、当該居室親機のRSSI回路が測定した前記RSSI値から、電波干渉の大きい順に干渉対象の居室親機を順位付けし、順位付けした少なくとも上位2つの居室親機の通信チャンネルと異なる通信チャンネルにLAN通信チャンネルを割り当てることを特徴とする。
この構成によれば、所定の手順で選択された居室親機自体の通信チャンネルが、強い電波干渉対称の周囲の通信チャンネルとは異なる通信チャンネルに設定される。よって、RSSI値の大きな相手の無線LAN通信機器の通信チャンネルが変更できない場合であっても、チャンネルの割り当てができる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の構成において、通信チャンネル割当制御手段は、順位付けした最上位の居室親機に関するRSSI値が特定の値以下である場合はチャンネル割り当て制御を実施しないことを特徴とする。
この構成によれば、電波干渉が小さく通信障害となり難い電波に対しては通信チャンネルを変更しないので、最小限の変更で電波干渉による通信障害を防止できる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の構成において、通信チャンネル割当制御手段は、定期的に各居室親機からRSSI値を入手し、通信チャンネル割当制御を行うことを特徴とする。
この構成によれば、定期的に通信チャンネルの割当制御が行われるので、集合住宅内でハンディ端末等の無線LAN通信機器に追加等変更があっても、電波干渉の発生を自動で解消することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最も多くの電波干渉を受ける居室親機を選択し、その選択した居室親機自体の通信チャンネルを、電波干渉対象の居室親機の通信チャンネルとは異なる通信チャンネルを割り当てるか、選択された居室親機の通信チャンネルは変更せずに、電波干渉対象の居室親機の通信チャンネルを変更することで、割り当てるチャンネル数が少なくても、通信チャンネルの適正な割り当てが可能となり、電波干渉を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る集合住宅インターホンシステムの一例を示す構成図である。
【図2】制御機のブロック図である。
【図3】制御機が記憶する居室親機関連情報の内容を示す表図である。
【図4】集合住宅の各住戸に対して、通信チャンネルを仮割当した状態を示す説明図である。
【図5】図4の状態において、203号室の居室親機のRSSI回路が検知したRSSI値の一覧を示す表図である。
【図6】通信チャンネルを変更する第1の制御を示すフローチャートである。
【図7】集合住宅に通信チャンネルの変更操作ができない無線LAN機器がある場合の集合住宅の各住戸に対して、通信チャンネルを仮割当した状態を示す説明図である。
【図8】図7の状態において、202号室の居室親機のRSSI回路が検知したRSSI値の一覧を示す表図である。
【図9】通信チャンネルを変更する第2の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る集合住宅インターホンシステムの一例を示す構成図であり、1は集合住宅のエントランスに設置されて居住者を呼び出すための集合玄関機、2は各住戸に設置されて呼び出しに応答するための居室親機、3は個々の住戸玄関に設置されて居住者を呼び出すための玄関子機、4は住戸毎に住戸内に設置されて居室親機2と無線LAN通信するハンディ端末、5は集合玄関機1と居室親機2の間の通信を制御する制御機である。
集合玄関機1は制御機5に伝送線L1を介して接続され、各居室親機2は親機幹線L2を介して制御機5に接続され、玄関子機3は伝送線L3を介して住戸毎に居室親機2に接続されている。
【0016】
居室親機2は、周囲の無線LAN通信機器から発信される電波の強度を測定するRSSI(Received Signal Strength Indicator)回路21、ハンディ端末4と通信するためのアンテナ22、周囲の無線LAN通信機器から受信した電波から機器の通信チャンネル、ID情報等を読み取ると共に、ハンディ端末4との通信を制御し、更に居室親機2自身を制御する親機CPU23等を備えている。
【0017】
制御機5は図2に示すような回路構成となっている。図2は制御機5の回路ブロック図であり、居室親機2が測定したRSSI値情報や通信チャンネル情報を記憶するRSSI情報記憶部51、個々の居室親機2のID情報やハンディ端末4のID情報を記憶するID情報記憶部52、集合玄関機1と居室親機2との間の通信を制御すると共に制御機5自身を制御する制御機CPU53、集合玄関機1及び居室親機2と通信するための制御機IF54等を備えている。
【0018】
このように構成された集合住宅インターホンシステムは、来訪者により集合玄関機1が操作されて選択された住戸の居室親機2が呼び出されたら、呼出先の居室親機2が呼出音を報音する。この呼び出しを受けて、居住者により居室親機2が応答操作されると、制御機5が集合玄関機1と居室親機2の間の通話路を形成し、来訪者と居住者の間で通話が可能となる。また、呼び出しに対してハンディ端末4でも応答でき、ハンディ端末4の所定の応答操作により、ハンディ端末4と集合玄関機1の間で通話路が形成される(詳細は省略する)。
【0019】
図3は、集合住宅における住戸配置、個々の住戸で使用されている無線LAN通信チャンネルの状態を示している。図3において、N1は住戸番号、N2は無線LANの通信チャンネルを示し、通信チャンネルはA,B,Cの3チャンネルが使用可能である場合を示している。尚、一般的に使用されている2.4GHz帯の無線LANを使用した場合、電波干渉がないように効率よく使用したチャンネル数は最大4チャンネル、通常3チャンネルとなっている。
【0020】
図4は、制御機5のID情報記憶部52が記憶している情報を示し、住戸番号、居室親機ID、ハンディ端末IDの一覧に設定されているLAN通信チャンネルを合わせて示している。住戸番号と、居室親機ID及びハンディ端末IDの関係は集合住宅インターホンシステム構築時に設定され、通信チャンネルは居室親機2から送信される情報、或いは制御機5が通信チャンネルを割り当てた際に逐次書き換えられる。
尚、制御機5がこのような一覧を備えることで、同一の通信チャンルを使用する無線LAN通信機器が周辺にあっても、ID情報の不一致から居室親機2との通信が実施できないよう制御することが可能となる。
【0021】
また、制御機5のRSSI情報記憶部51には、居室親機2のRSSI回路21が測定したRSSI値情報と通信チャンネル情報が記憶されている。制御機CPU53の制御により、定期的にRSSI値情報が各居室親機2から入手され記憶される。
図5は、このRSSI情報の一部を示し、入手したRSSI値情報のうち203号住戸の居室親機2から入手したRSSI値情報を示している。この図5に示すように、干渉している居室親機2(或いはハンディ端末4)の住戸番号、RSSI値、通信チャンネル情報が居室親機2から伝送され、RSSI情報記憶部51に記憶される。
【0022】
上記構成の集合住宅インターホンシステムにおいて、通信チャンネル割り当て手順の流れを次に説明する。図6は通信チャンネル割り当て手順の流れの概略を示し、このフローを参照して説明する。
通信チャンネルは、集合住宅インターホンシステムが施工された段階で、図3に示すような仮チャンネルが設置業者により割り当てられ、居室親機2とその住戸で使用されるハンディ端末4の間で通信が可能となっている。
【0023】
居室親機2は、周囲で使用されている居室親機2を始とする無線LAN通信機器から定期的に送信されるビーコン、または通信電波を受信することで、その機器を特定するIDと使用している通信チャンネルを取得し、RSSI値を測定(S1)する。制御機5は、制御機CPU53の制御で取得したデータ及び測定値を定期的に入手し、入手した情報を基に図5に示すようなリストを作成する(S2)。尚、図5では対となっている居室親機2とハンディ端末4のRSSI値のうち値の大きい方のRSSI値をリストに登録している。
【0024】
制御機5は、このようなリストを居室親機2毎に作成し、全住戸の居室親機2のRSSI値データを比較し、全住戸の中で最も電波環境が悪い住戸を決定する(S3)。具体的に、測定したRSSI値が一定の閾値、例えば−70dBmを超えている干渉数を比較し、その干渉数が最も多い住戸から順番付けし、干渉数が同一な場合はRSSI値の大きい方を電波環境がより悪い住戸とする。
尚、図5において太線Hが閾値により分離される部位を示し、この太線Hより上位の住戸(居室親機)が順番付けの対称となる。
【0025】
こうして最悪の環境となった住戸に対して最初に通信チャンネル変更制御を実施する。ここで、203号住戸の居室親機2が最も電波環境が最悪と判断されたとして説明する。図4の情報から203号住戸ではチャンネルAが使用され、図5のリストから最も干渉している303号住戸の通信チャンネルはチャンネルB、2番目に干渉している302号住戸の通信チャンネルはチャンネルAであることがわかる。
この結果、制御機CPU53は302号住戸で使用する通信チャンネルを、チャンネルA以外のチャンネルB或いはチャンネルCに変更する(S4)。例えば、1番目の303号住戸がチャンネルBであるため、このチャンネルを避けてチャンネルCを選択し、302号住戸に割り当てる。
こうして最も強く干渉を受けている上位2つの住戸に対して通信チャンネル変更制御が実施される。
【0026】
この変更制御を実施したら、次の住戸に対して変更制御を実施する。この制御も、基本は上記制御の流れと同様である。制御はRSSI値の測定(S1)から開始され、変更された通信チャンネルの情報が加味されて次の変更制御は実施される。但し、203号、303号、302号の各住戸の制御は完了したとして、これらの住戸を除いた機器に対して順位付けされ、その中で最も電波環境が悪い住戸を選択し、その住戸に対して同様の制御が実施される。
こうして、閾値Hを超えるようなRSSI値の住戸が無くなった時点で、或いは所定の回数変更制御が実施されたら終了となる。尚、この一連の制御は例えば1時間毎に定期的に実施される。
【0027】
このように、制御機CPU53が所定の手順で最も多くの電波干渉を受ける居室親機2を最初に選択し、その居室親機2がハンディ端末4と通信できるようLAN通信チャンネルの割り当てが行われるので、電波干渉による障害を効果的に削減でき、通信チャンネルの適正な割り当てができ、居室親機2とハンディ端末4との間で電波干渉により通話できなくなる事態を防止することができる。
また、所定の手順で選択された居室親機2に電波干渉する周囲の居室親機2の通信チャンネルが変更されるので、選択された居室親機2の対して干渉対象の住戸(居室親機)が上下左右にあっても、またチャンネル数が3チャンネルと少なくても、周囲に割り当てる通信チャンネルを操作することで確実に通信障害を削減することができる。
更に、閾値を設けて電波干渉が小さく通信障害となり難い電波に対しては通信チャンネルを変更しないので、最小限の変更で電波干渉による通信障害も防止できる。
また、定期的に通信チャンネルの割当制御が行われるので、集合住宅内で無線LAN通信機器に追加等の変更があっても、電波干渉の発生を自動で解消することができる。
【0028】
尚、ここでは、通信チャンネル数が3チャンネルの場合を説明しているため、干渉対象となっている機器のうち上位2つの機器の通信チャンネルを変更する制御を行っているが、通信チャンネル数が3チャンネルより多い場合は、変更可能な機器の数を増やすことができる。
【0029】
次に、集合住宅内に、制御機5が通信チャンネルを変更できない無線LAN通信機器がある場合を説明する。図7は、上記図3と同様に集合住宅における個々の住戸の配置、個々の住戸で使用されている無線LAN通信チャンネルの状態を示し、通信チャンネルは互いに干渉しないA,B,Cの3チャンネルが使用可能である場合を示している。
上記図3とは、102号住戸に制御機5が関与できない無線LAN通信機器であるパーソナルコンピュータ(以下、PCとする)7が設置されている点が相違している。
尚、説明のためこのPC7のLAN通信はチャンネルCで行われるとする。また、図7に示すように通信チャンネルが設定されている状態において、制御機5のID情報記憶部52が記憶している個々の居室親機2と通信チャンルの関係一覧は上記図4と同様とする。
【0030】
そして制御機5は、居室親機2のRSSI回路21が測定したRSSI値情報を入手し、RSSI情報記憶部51に記憶する。図8は、各居室親機2から入手したRSSI値情報のうち、一例として202号住戸の居室親機2のRSSI値情報のリストを示している。この図8に示すように、干渉している居室親機2(或いはハンディ端末4)の住戸番号、RSSI値、通信チャンネル情報に加えて、PC7から発信される無線LAN信号の情報が居室親機2から伝送され、RSSI情報記憶部51にIDを判別できない外部機器として記憶される。
【0031】
このように構成された集合住宅インターホンシステムにおいて、通信チャンネル割り当て手順の流れを、次に説明する。図9は、通信チャンネル割り当て手順の流れの一例を示し、自身の通信チャンネルを変更する制御の概略フローであり、このフローを参照して説明する。
通信チャンネルは、集合住宅インターホンシステムが施工された段階で、図3に示すような仮チャンネルが設置業者により割り当てられ、居室親機2とその住戸で使用されるハンディ端末4の間で通信が可能となっている。
【0032】
居室親機2は、周囲で使用されている無線LAN機器から定期的に送信されるビーコン、または通信電波を受信することで、その機器を特定するIDと使用している通信チャンネルを取得し、RSSI値を測定(S11)する。制御機5は、制御機CPU53の制御により、データ及び測定値を定期的に入手し、この情報を基に図8に示すようなリストを作成する(S12)。
【0033】
制御機5は、このようなリストを居室親機2毎に作成し、全住戸の居室親機2のRSSI値データを比較し、全住戸の中で最も電波環境が悪い住戸決定する(S13)。具体的に、測定したRSSI値が一定の閾値、例えば−70dBmを超えている干渉数を比較し、その干渉数が最も多い住戸から順番付けし、干渉数が同一な場合はRSSI値の大きい方を電波環境がより悪い住戸とする。尚、図8において太線Hは閾値を示している。
【0034】
こうして最悪の環境となった住戸に対して最初に通信チャンネル変更制御を実施する。ここで、202号住戸の居室親機2が最も電波環境が最悪と判断されたとして説明する。
上記図4の情報から202号住戸ではチャンネルCが使用され、図8のリストから最も干渉している102号住戸にあるPC7の通信チャンネルはチャンネルC、2番目に干渉している301号住戸の通信チャンネルはチャンネルCであることがわかる。
この結果、制御機5は202号住戸で使用する通信チャンネルを、現状のチャンネルCからチャンネルA或いはチャンネルBに変更する(S14)。例えば、3番目に干渉している住戸の通信チャンネルがチャンネルAであることから、制御機5はこのチャンネルAを除外してチャンネルBを選択し、202号住戸の無線LAN通信チャンネルとして割り当てる。このように、干渉する上位2つの住戸で使用しているチャンネルとは異なるチャンネルへの変更制御を実施する。但し、この制御はRSSI値が−70dBm未満の小さなRSSI値の場合は実施しない。
【0035】
この変更制御を実施したら、次の住戸に対して変更制御を実施する。この制御も、基本は上記制御の流れと同様である。制御はRSSI値の測定(S11)から開始され、変更された通信チャンネルの情報が加味されて次の変更制御は実施される。また、202号住戸の制御は完了したとして、この住戸を除外した機器に対して順位付けされ、その中で最も電波環境が悪い住戸を選択し、その住戸に対して同様の制御が実施される。
こうして、閾値Hを超えるようなRSSI値の住戸が無くなった時点で、或いは所定の回数変更制御が実施されたら終了となる。そして、この一連の制御は例えば1時間毎に定期的に実施される。
【0036】
このように、制御機5が所定の手順で最も多くの電波干渉を受ける居室親機2を選択し、選択された居室親機自体の通信チャンネルが、強い電波干渉対象の周囲の通信チャンネルとは異なる通信チャンネルに設定される。よって、RSSI値の大きな相手の無線LAN通信機器の通信チャンネルが変更できない場合であっても、チャンネルの割り当てができるし、電波干渉している周囲の居室親機2とは異なる通信チャンネルを割り当てるよう制御するので、通信チャンネルの適正な割り当てができ、居室親機2とハンディ端末4との間で電波干渉により通話できなくなる事態を防止することができる。
また、RSSI値に閾値を設定して電波干渉が小さく通信障害となり難い電波に対しては通信チャンネルを変更しないので、最小限の変更で電波干渉による通信障害も防止できる。
更に、定期的に通信チャンネルの割当制御が行われるので、集合住宅内で無線LAN通信機器に追加等の変更があっても、電波干渉の発生を自動で解消することができる。
【0037】
尚、上記実施形態では、最も電波干渉を受けている居室親機2を選択したら、干渉対象の上位2つの無線LAN通信機器を選択して、その通信チャンネルとは異なる通信チャンネルに設定する制御を行っているが、使用可能な通信チャンネルが4チャンネル以上あれば、上位3つ或いはそれ以上の干渉対象の無線LAN通信機器を選択して、その通信チャンネルとは異なる通信チャンネルを設定しても良い。
また、最も電波干渉を受けている居室親機2から順に通信チャンネルの割り当てを行うが、単純に住戸番号順に居室親機を選択して順次チャンネルの割当制御を行っても良い。
【符号の説明】
【0038】
1・・集合玄関機、2・・居室親機(無線LAN通信機器)、4・・ハンディ端末(無線LAN通信機器)、5・・制御機、7・・パーソナルコンピュータ(無線LAN通信機器)21・・RSSI回路、23・・親機CPU(電波認識手段)、51・・RSSI情報記憶部、52・・ID情報記憶部、53・・制御機CPU(通信チャンネル割当制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅のエントランスに設置されて居住者を呼び出す機能を備えた集合玄関機と、各住戸に設置されて前記集合玄関機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機と、住戸毎に設置されて前記居室親機と無線LAN通信することで前記集合玄関機からの呼び出しに応答可能なハンディ端末と、前記集合玄関機と前記居室親機の間の通信を制御する制御機とを有する集合住宅インターホンシステムであって、
前記居室親機は、周囲の住戸に設置されているハンディ端末等の無線LAN通信機器から発信される電波の強度を示すRSSI値を測定するRSSI回路と、測定した電波の通信チャンネル情報及びID情報を認識する電波認識手段とを有する一方、
前記制御機は、住戸毎の前記居室親機及び前記ハンディ端末のID情報等を記憶するID情報記憶部と、
前記居室親機から前記RSSI値、通信チャンネル情報、ID情報を入手して、前記居室親機に対して前記ハンディ端末との通信に割り当てる通信チャンネルを選択制御する通信チャンネル割当制御手段と、
前記RSSI値及び前記通信チャンネル情報等を記憶するRSSI情報記憶部とを有し、
前記通信チャンネル割当制御手段は、前記RSSI情報記憶部に記憶された情報を基に、所定の手順で通信チャンネル制御対象の居室親機を選択し、選択した居室親機に対する電波干渉を削減するために予め設定した所定の条件に従って通信チャンネルを割り当てることを特徴とする集合住宅インターホンシステム。
【請求項2】
前記通信チャンネル割当制御手段は、前記RSSI情報記憶部から、最も多くの電波干渉を受けている前記居室親機を最初に選び、当該居室親機或いは当該居室親機に電波干渉する周囲の居室親機の通信チャンネルを所定の条件に従って変更することを特徴とする請求項1記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項3】
前記通信チャンネル割当制御手段は、所定の手順で選択した居室親機のRSSI回路が測定した前記RSSI値から、電波干渉対象の居室親機を電波干渉の大きい順に順位付けし、順位付けした少なくとも上位2つの居室親機に対して、前記所定の手順で選択された居室親機の通信チャンネルとは異なる通信チャンネルを割り当てることを特徴とする請求項1又は2記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項4】
前記通信チャンネル割当制御手段は、所定の手順で選択した居室親機に対して、当該居室親機のRSSI回路が測定した前記RSSI値から、電波干渉の大きい順に干渉対象の居室親機を順位付けし、順位付けした少なくとも上位2つの居室親機の通信チャンネルと異なる通信チャンネルにLAN通信チャンネルを割り当てることを特徴とする請求項1又は2記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項5】
前記通信チャンネル割当制御手段は、順位付けした最上位の居室親機に関するRSSI値が特定の値以下である場合はチャンネル割り当て制御を実施しないことを特徴とする請求項3又は4に記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項6】
前記通信チャンネル割当制御手段は、定期的に各居室親機からRSSI値を入手し、通信チャンネル割当制御を行うことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の集合住宅インターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−97356(P2011−97356A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249213(P2009−249213)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】