説明

集合住宅インターホンシステム

【課題】制御機を介さずに各居室端末とインターネットとを接続しているにも拘わらず、たとえネットワーク攻撃を受けたとしても火災やガスの警報機能が損なわれたりすることのない集合住宅インターホンシステムを提供する。
【解決手段】各居室端末3において、インターネット7への接続(たとえば、外部のサーバー8、9へ接続)に関しては、インターホンCPU43の制御のもと行う一方、火災やガス漏れを検知した場合には、警報系CPU42による制御のもと、スピーカ41から警報音を出力させたり、制御機5を介して管理室親機4へ報知したりするようにした。このように警報機能とインターホン機能とで夫々の動作を制御するCPUを異ならせているため、インターホンCPU43が機能不全になったとしても、火災やガス漏れの検知、及び火災やガス漏れの発生の報知を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急事態が発生した際に管理者等へ確実に報知することができる集合住宅インターホンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅インターホンシステムとしては、たとえば特許文献1に記載されているようなものが知られている。ここで、従来の集合住宅インターホンシステムについて、図3をもとに説明する。
集合住宅インターホンシステム51は、集合住宅のエントランスに設置されて各住戸の居住者を呼び出すための図示しない集合玄関機と、各住戸に設置されて集合玄関機からの呼び出しに応答するための居室端末53、53と、管理室に設置されて集合玄関機及び居室端末53、53と通話可能な管理室親機54と、各機器間の通信を制御する制御機55とを備えており、制御機55は、中継器(たとえばスイッチングハブ)56及びファイアウォール機能を有する通信制御装置57を介して、外部のコンテンツサーバー58やインターネット59と接続されていた。そして、各居室端末53は、制御機55を介してコンテンツサーバー58やインターネット59へと接続可能となっていた。また、各居室端末53には、火災を検知する火災検知回路やガス漏れを検知するガス検知回路が搭載されており、火災やガスを検知すると、自身に搭載されているCPUの制御のもと、管理室親機54へ警報を行うようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−218726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年は、利便性やインターネット59との通信性能の向上のために、制御機55を介することなく、各居室端末53とインターネット59とを接続したいという要求がある。しかしながら、制御機55を介することなく各居室端末53とインターネット59とを接続した場合、各居室端末53がネットワーク攻撃の直接の対象となってしまう。そして、ネットワーク攻撃により各居室端末53のCPUが機能不全になると、火災警報やガス警報が行えなくなってしまう可能性があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、制御機を介さずに各居室端末とインターネットとを接続しているにも拘わらず、たとえネットワーク攻撃を受けたとしても火災やガスの警報機能が損なわれたりすることのない集合住宅インターホンシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、集合住宅のエントランスに設置されて居住者を呼び出すための集合玄関機と、各住戸に設置されて集合玄関機からの呼び出しに応答するための居室端末と、管理室に設置されて集合玄関機及び居室端末と通話可能な管理室親機と、各機器間の通信を制御する制御機とを有する集合住宅インターホンシステムであって、居室端末に、火災及びガス漏れを検知する異常検知手段と、火災及びガス漏れを報知する報知手段と、制御機と通信するための通信手段と、異常検知手段により火災やガス漏れが検知されると、報知手段を作動させると共に通信手段を介して制御機へ異常を報知する警報系制御手段とを設けるとともに、集合玄関機や管理室親機との通話のための通話手段と、集合玄関機や管理室親機からの呼び出しに対して応答するための操作手段と、操作手段により応答操作されると、通話手段を作動させて集合玄関機や管理室親機との間での通話動作を制御する通話系制御手段とを設け、さらに、通話系制御手段にLAN回路を接続し、LAN回路を介してインターネットと接続可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、異常検知手段により火災やガス漏れが検知されると、報知手段を作動させると共に通信手段を介して制御機へ異常を報知する警報系制御手段と、操作手段により応答操作されると、通話手段を作動させて集合玄関機や管理室親機との間での通話動作を制御する通話系制御手段とを設けるとともに、インターネットと接続するためのLAN回路を通話系制御手段に接続している。つまり、火災やガス漏れの報知に係る制御手段と、通話及びインターネットへの接続に係る制御手段とを別個としている。したがって、たとえばネットワーク攻撃等により通話系制御手段が機能不全になったとしても、警報系制御手段が動作する限り、火災やガス漏れの検知、及び火災やガス漏れの発生の報知を行うことができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、警報系制御手段と通話系制御手段とが、インターネットとの接続とは異なる通信方式で接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、警報系制御手段と通話系制御手段とが、インターネットとの接続とは異なる通信方式で接続しているため、たとえネットワーク攻撃を受けたとしても、一度に両制御手段が機能不全となるおそれは低く、警報系制御手段については正常な状態を維持できる可能性が非常に高い。つまり、たとえネットワーク攻撃を受け、通話系制御手段が機能不全になったり乗っ取られたりしたとしても、警報系制御手段により、火災やガス漏れの検知、及び火災やガス漏れの発生の報知については正常に行うことができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、警報系制御手段と通話系制御手段との間にリセット回路を介在させており、警報系制御手段による制御のもと、通話系制御手段の動作プログラムを消去可能としたことを特徴とする。
この構成によれば、警報系制御手段と通話系制御手段との間にリセット回路を介在させているため、通話系制御手段が機能不全になった場合等に、警報系制御手段による制御のもと、通話系制御手段の動作プログラムを消去することができる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、通話系制御手段の動作プログラムを記憶したFTPサーバーがインターネットを介して居室端末と接続されており、通話系制御手段は、FTPサーバーから自身の動作プログラムをダウンロード可能であることを特徴とする。
この構成によれば、通話系制御手段の動作プログラムを記憶したFTPサーバーがインターネットを介して居室端末と接続されており、通話系制御手段は、FTPサーバーから自身の動作プログラムをダウンロード可能であるため、機能不全となった通話系制御手段を容易且つ迅速に正常な状態へ復帰させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、火災やガス漏れの報知に係る制御手段と、通話及びインターネットへの接続に係る制御手段とを別個としているため、たとえばネットワーク攻撃等により通話系制御手段が機能不全になったとしても、警報系制御手段が動作する限り、火災やガス漏れの検知、及び火災やガス漏れの発生の報知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】集合住宅インターホンシステムのブロック構成図である。
【図2】居室端末のブロック構成図である。
【図3】従来の集合住宅インターホンシステムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態となる集合住宅インターホンシステムについて、図面にもとづき詳細に説明する。
【0013】
図1は、集合住宅インターホンシステム1のブロック構成図である。
集合住宅インターホンシステム1は、従来同様の図示しない集合玄関機と、各住戸に設置されて集合玄関機からの呼び出しに応答するための居室端末3、3と、管理室に設置されて集合玄関機及び居室端末3、3と通話可能な管理室親機4と、各機器間の通信を制御する制御機5とを備えてなる。そして、各居室端末3が、ルーター6を介してインターネット7と接続されているとともに、該インターネット7を介してFTPサーバー8やコンテンツサーバー9に接続可能となっている。尚、10は、インターネット7と各サーバー8、9との間に介在されるルーターである。
【0014】
制御機5は、集合玄関機、居室端末3、3、及び管理室親機4間での通話を含んだ信号の送受信を制御する制御機CPU11と、居室端末3、3が接続される幹線通信回路12と、管理室親機4が接続される通信回路13とを備えてなる。
また、管理室親機4は、自身の動作を制御する管理室親機CPU15と、各居室端末3を呼び出したり等するための操作部16と、映像等を表示するためのモニター17と、後述の如くして居室端末3から警報信号を受信した際に警報音を出力するための警報音出力回路18と、各居室端末3等と通話するための音声IF回路19と、制御機5の通信回路13と接続するための通信回路20と、マイク21及びスピーカ22とを備えてなる。
【0015】
さらに、本発明の要部となる居室端末3について、図2をもとに詳述する。図2は、居室端末3のブロック構成図である。
居室端末3は、火災やガス漏れの発生を警報する警報機能と、来訪者との間での通話及びインターネット7への接続に係るインターホン機能との2つの機能を有しており、警報機能のための構成要素としては、火災を検知するための火災検知回路31と、ガス漏れを検知するためのガス検知回路32と、火災を検知した際に点灯/点滅させる火災LED33と、ガス漏れを検知した際に点灯/点滅させるガスLED34と、火災やガス漏れを検知した際に警報音を出力するための警報音出力回路35と、警報音を停止するための警報音停止操作部49とを備えている。一方、インターホン機能のための構成要素としては、呼び出し時の応答操作やインターネット7への接続時における操作のための操作部36と、集合玄関機を操作した来訪者やサービス画面等を表示するためのモニター37と、後述するインターホンCPU43のプログラムやインターネット7を介してダウンロードした種々のコンテンツ等を記憶するROM38と、通話や警報音出力のための音声IF回路39と、マイク40及びスピーカ41とを備えている。そして、居室端末3では、上記警報機能を制御する警報系CPU42と、インターホン機能を制御するインターホンCPU43との2つのCPUを備えており、警報系CPU42には制御機5の幹線通信回路12と接続される幹線通信回路44が、インターホンCPU43にはルーター6と接続されるLAN回路45が夫々接続されている。また、警報系CPU42とインターホンCPU43とは、警報系側CPU間通信回路46と、インターホン側CPU間通信回路47とを介して接続されており、両CPU間の通信は、LAN回路45及びルーター6を介したインターネット7への接続に係る通信とは異なる通信方式で行っている。さらに、両CPU42、43間には、インターホンCPU43が機能不全になった際にインターホンCPU43をリセットするためのリセット回路48が設けられている。尚、音声IF回路39については、警報系CPU42が直接接続されており、警報音をスピーカ41から報音する際には、警報系CPU42による制御のもと音声IF回路39が動作するようになっている。
【0016】
以上のような集合住宅インターホンシステム1によれば、各居室端末3において、インターネット7への接続(たとえば、外部のサーバー8、9へ接続)に関しては、インターホンCPU43の制御のもと行う一方、火災やガス漏れを検知した場合には、警報系CPU42による制御のもと、スピーカ41から警報音を出力させたり、制御機5を介して管理室親機4へ報知したりする。このように警報機能とインターホン機能とで夫々の動作を制御するCPUを異ならせているため、インターホンCPU43が機能不全になったとしても、火災やガス漏れの検知、及び火災やガス漏れの発生の報知を行うことができる。
【0017】
また、警報系CPU42とインターホンCPU43との通信に関しては、警報系側CPU間通信回路46と、インターホン側CPU間通信回路47とを介し、LAN回路45及びルーター6を介したインターネット7への接続に係る通信とは異なる通信方式で行っている。そのため、たとえネットワーク攻撃を受けたとしても、一度に両CPU42、43が機能不全となるおそれは低く、警報系CPU42については正常な状態を維持できる可能性が非常に高い。つまり、たとえネットワーク攻撃を受け、インターホンCPU43が機能不全になったり乗っ取られたりしたとしても、警報系CPU42により、火災やガス漏れの検知、及び火災やガス漏れの発生の報知については正常に行うことができる。
【0018】
さらに、警報系CPU42とインターホンCPU43との間にリセット回路48を設けているため、インターホンCPU43が機能不全になった場合、管理室親機4からの制御により警報系CPU42が動作し、リセット回路48を介してインターホンCPU43のプログラム(ROM38に記憶されている)を消去させることができるし、更にはインターネット7を介してFTPサーバー8に接続させ、新たなプログラムをダウンロードさせることにより、インターホンCPU43を容易且つ迅速に正常な状態へ復帰させることができる。
【0019】
なお、本発明に係る集合住宅インターホンシステムは、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、居室端末の構成は勿論、管理室親機での制御等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0020】
たとえば、上記実施形態では、居室端末3において、警報系CPU42とインターホンCPU43との通信は、LAN回路45及びルーター6を介したインターネット7への接続に係る通信とは異なる通信方式で行っているが、わざわざ異ならせなくとも警報機能とインターホン機能とでCPUを別個とするだけで、ネットワーク攻撃時における火災やガス漏れの検知、及び火災やガス漏れの発生の報知に係る動作の正常な維持に関して一定の効果を奏することができる。
【0021】
また、インターホンCPU43に、自身へのアクセス状況を監視する機能をもたせ、たとえば一定時間内に複数回の異常なアクセスが検知された場合には、警報系CPU42に異常な事態が行われている旨を通知し、火災やガス漏れの発生時と同様にスピーカ41から警報音を出力させたり、制御機5を介して管理室親機4へ報知させたりするように構成してもよい。
さらに、管理室親機4において上述したような不正アクセスが報知されると、制御機5及び警報系CPU42を介してインターホンCPU43にLAN回路45の動作停止を命じることにより、インターホンCPU43が完全に機能停止してしまう前に、ネットワーク攻撃をシャットアウトできるように構成することも可能である。
加えて、FTPサーバー8を設けるか否かや、インターホンCPU43が機能不全となった場合の復帰に関しても、上記実施形態の構成に何ら限定されることはなく、インターホンCPU43を交換したり、専用のプログラム更新装置を居室端末3に接続して対応するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0022】
1・・集合住宅インターホンシステム、3・・居室端末、4・・管理室親機、5・・制御機、6・・ルーター、7・・インターネット、8・・FTPサーバー、31・・火災検知回路(異常検知手段)、32・・ガス検知回路(異常検知手段)、33・・火災LED(報知手段)、34・・ガスLED(報知手段)、35・・警報音出力回路(報知手段)、36・・操作部(操作手段)、37・・モニター、38・・ROM、39・・音声IF回路(報知手段、通話手段)、40・・マイク(報知手段、通話手段)、41・・スピーカ(報知手段、通話手段)、42・・警報系CPU(警報系制御手段)、43・・インターホンCPU(通話系制御手段)、44・・幹線通信回路(通信手段)、45・・LAN回路、46・・警報系側CPU間通信回路、47・・インターホン側CPU間通信回路、48・・リセット回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合住宅のエントランスに設置されて居住者を呼び出すための集合玄関機と、各住戸に設置されて前記集合玄関機からの呼び出しに応答するための居室端末と、管理室に設置されて前記集合玄関機及び前記居室端末と通話可能な管理室親機と、各機器間の通信を制御する制御機とを有する集合住宅インターホンシステムであって、
前記居室端末に、火災及びガス漏れを検知する異常検知手段と、火災及びガス漏れを報知する報知手段と、前記制御機と通信するための通信手段と、前記異常検知手段により火災やガス漏れが検知されると、前記報知手段を作動させると共に前記通信手段を介して前記制御機へ異常を報知する警報系制御手段とを設けるとともに、
前記集合玄関機や前記管理室親機との通話のための通話手段と、前記集合玄関機や前記管理室親機からの呼び出しに対して応答するための操作手段と、前記操作手段により応答操作されると、前記通話手段を作動させて前記集合玄関機や前記管理室親機との間での通話動作を制御する通話系制御手段とを設け、
さらに、前記通話系制御手段にLAN回路を接続し、前記LAN回路を介してインターネットと接続可能としたことを特徴とする集合住宅インターホンシステム。
【請求項2】
前記警報系制御手段と前記通話系制御手段とが、前記インターネットとの接続とは異なる通信方式で接続されていることを特徴とする請求項1に記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項3】
前記警報系制御手段と前記通話系制御手段との間にリセット回路を介在させており、前記警報系制御手段による制御のもと、前記通話系制御手段の動作プログラムを消去可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の集合住宅インターホンシステム。
【請求項4】
前記通話系制御手段の動作プログラムを記憶したFTPサーバーが前記インターネットを介して前記居室端末と接続されており、前記通話系制御手段は、前記FTPサーバーから自身の動作プログラムをダウンロード可能であることを特徴とする請求項3に記載の集合住宅インターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−204866(P2012−204866A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64761(P2011−64761)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】