説明

集積回路

【課題】スピントランジスタを用いた論理演算を可能とする集積回路を提供する。
【解決手段】実施形態の集積回路1は、磁化方向が互いに同じ方向となるVlowノード22と出力ノード23を有する第1のスピントランジスタ2と、磁化方向が互いに相反する方向となるVhighノード32と出力ノード33を有する第2のスピントランジスタ3と、を直列に接続した回路を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、InAlAs/InGaAsヘテロ結合などからなる変調ドープ構造の界面に誘起される2次元電子ガス(2DEG:two dimensional electron gas)をチャネルとし、ソースとドレインに強磁性体を用いるスピンFETが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S.Datta and B.Das,Appl.Phys.Lett.,vol.56,No.7,12 Feb. 1990,pp.665-667.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、スピントランジスタを用いた論理演算を可能とする集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の集積回路は、磁化方向が互いに同じ方向となる第1のノード及び第2のノードを有する第1のスピントランジスタと、磁化方向が互いに相反する方向となる第3のノード及び第4のノードを有する第2のスピントランジスタと、を直列に接続した回路を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1(a)は、第1の実施の形態に係る2つのスピントランジスタを用いた集積回路の概略図であり、(b)は、スピントランジスタの基本動作を説明する模式図であり、(c)は、ドレイン領域の大多数スピン方向と2DEGチャネル中の電子のスピン偏向ベクトルとの相対角度に関する模式図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態に係る2つのスピントランジスタを用いたインバータ回路の概略図である。
【図3】図3(a)は、第1の実施の形態に係るVinとしてVlowが入力した場合の第1のスピントランジスタの動作に関する概略図であり、(b)は、VinとしてVlowが入力した場合の第2のスピントランジスタの動作に関する概略図であり、(c)は、VinとしてVhighが入力した場合の第1のスピントランジスタの動作に関する概略図であり、(d)は、VinとしてVhighが入力した場合の第2のスピントランジスタの動作に関する概略図である。
【図4】図4は、第2の実施の形態に係る集積回路の概略図である。
【図5】図5(a)は、第3の実施の形態に係る集積回路の概略図であり、(b)は、集積回路の上面図である。
【図6A】図6A(a)〜図6A(h)は、第3の実施の形態に係る集積回路の製造工程を示す要部断面図である。
【図6B】図6B(i)〜図6B(o)は、第3の実施の形態に係る集積回路の製造工程を示す要部断面図である。
【図7】図7は、第3の実施の形態に係る磁性体金属の磁化曲線の概略図である。
【図8】図8(a)は、第4の実施の形態に係る集積回路の概略図であり、(b)は、第1の磁性体金属及び第2の磁性体金属の磁化曲線の概略図である。
【図9】図9は、第5の実施の形態に係る集積回路の概略図である。
【図10】図10(a)は、第6の実施の形態に係るNAND回路の概略図であり、(b)は、NAND回路の論理演算表である。
【図11】図11(a)は、第7の実施の形態に係るNOR回路の概略図であり、(b)は、NOR回路の論理演算表である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
スピンFETは、2DEGチャネル内をキャリアが移動する。2DEGチャネル内を移動中のキャリアは、ラシュバ効果によってキャリアスピンの歳差運動が制御される。スピンFETは、ドレイン端におけるキャリアのスピン偏向ベクトルの方向がドレインの金属的スピンバンドの向きと一致する場合はドレイン領域中に多数のキャリアが伝導する。また、スピンFETは、キャリアのスピン偏向ベクトルの方向が絶縁体的スピンバンドの向きと一致する場合はほとんどのキャリアがドレインを伝導しない。このスピンFETを用いて、従来のMOSFETによる論理演算回路と同等の回路を構成することはできなかった。
【0008】
(実施の形態の概要)
実施形態の集積回路は、磁化方向が互いに同じ方向となる第1のノード及び第2のノードを有する第1のスピントランジスタと、磁化方向が互いに相反する方向となる第3のノード及び第4のノードを有する第2のスピントランジスタと、を直列に接続した回路を含む。
【0009】
[第1の実施の形態]
(集積回路の構成)
図1(a)は、第1の実施の形態に係るスピントランジスタの概略図であり、(b)は、スピントランジスタの基本動作を説明する模式図であり、(c)は、ドレイン領域の磁性体の大多数スピンの方向とチャネル中の電子のスピン偏向ベクトルとの相対角度に関する模式図である。各図に示すxyz座標系は、例えば、直交座標系であるものとする。特に、ラシュバ効果による実効磁場の方向をz軸と規定する。
【0010】
以下において、スピントランジスタ2aのソース領域22b及びドレイン領域23b中の矢印は、各領域の大多数スピンの方向を示している。なお、大多数スピンの方向とは、磁性体中の大多数電子のスピンの角運動量の方向を示している。また、磁性を担う粒子が電子の場合には、大多数スピン方向は、磁性体の磁化方向とは反対の向きとなる。図1(b)に示す領域内の矢印は、磁化方向を示している。以下において、特に指定しない限りは、磁化方向の代わりに大多数スピン方向を用いて説明する。
【0011】
また、以下において、電子5の矢印は、電子5のスピンの偏向ベクトルを示している。さらに、以下においては、主に、キャリアである電子5の流れ(スピン流)に関することについて説明するが、キャリアである電子5の流れる方向と電流の流れる方向は、逆向きの関係となっている。よって、キャリアとしての電子(スピン流)は、低電位側(Vlow)から高電位側(Vhigh)に向けて走行するが、電流は、高電位側(Vhigh)から低電位側(Vlow)に向けて流れる。
【0012】
スピントランジスタ2aは、図1(a)に示すように、例えば、半導体基板10に形成される。スピントランジスタ2aは、例えば、半導体キャップ層21と、第1のノードとしてのソース領域22bと、第2のノードとしてのドレイン領域23bと、2DEGチャネル24と、ゲート絶縁膜25と、第1のゲート電極としてのゲート電極26と、を備えて概略構成されている。
【0013】
半導体基板10は、例えば、分子線エピタキシー法(MBE)等を用いてInP基板上にIn1−xAlAs、In1−yGaAs、In1−xAlAsを順に積層させたダブルヘテロ構造を有する。In1−xAlAs、In1−yGaAsは、混合比によって多くの組み合わせが考えられるが、本実施の形態では、x=0.48、y=0.47であるものとする。従って、以下において、特に言及しない場合、InAlASは、In0.52Al0.48Asを示し、InGaAsは、In0.53Ga0.47Asを示すものとする。また、スピントランジスタ2aは、例えば、ゲート電極26の下方に端子10aを有する。この端子10aには、基板電位Vsubが印加されている。
【0014】
半導体キャップ層21は、例えば、半導体基板10の上層部分のInAlAsを用いるものとする。半導体キャップ層21は、例えば、ソース領域22bとドレイン領域23bにショットキー接続している。ここで、2DEGチャネル24は、InAlAs/InGaAs/InAlAsの量子井戸構造におけるInGaAs層が2DEGチャネルとなる。なお、2DEGチャネル24は、例えば、半導体基板10がInAlAs/InGaAsを積層したヘテロ構造である場合、このInAlAs/InGaAsの界面に形成される。
【0015】
ソース領域22bは、例えば、半導体基板10のInAlAs、InGaAs及びInGaAsの下層のInAlAsの一部を除去して形成される。ソース領域22bは、例えば、端子22aを有する。この端子22aは、例えば、接地(GND)されている。
【0016】
ドレイン領域23bは、例えば、半導体基板10のInAlAs、InGaAs及びInGaAsの下層のInAlAsの一部を除去して形成される。ドレイン領域23bは、例えば、端子23aを有する。この端子23aには、電源回路から電源電圧Vdd(>0)が供給される。
【0017】
ソース領域22b及びドレイン領域23bは、例えば、高スピン偏向材料を用いて形成される。高スピン偏向材料とは、材料中の電子のスピン分極率(スピン偏向率)が高く、スピンの方向がそろった多くの電子を2DEGチャネルに注入することができる材料である。高スピン偏向材料としては、例えば、強磁性金属及びハーフメタル強磁性体等が用いられる。
【0018】
高スピン偏向材料として強磁性金属を用いる場合、強磁性体金属としては、例えば、Fe系金属、Co系金属及びNi系金属が用いられる。ここで、ソース領域22b及びドレイン領域23bは、例えば、III-V族半導体との高い整合性と、室温(例えば、300K)以上のキュリー温度と、一方のスピンのエネルギー状態に関してフェルミ準位E近傍での大きなバンドギャップとを有する強磁性体から形成されることが好ましい。このような強磁性体としては、例えば、フェルミ準位Eが一方のスピンバンド(金属的スピンバンド)の中を横切り、他方のスピンバンド(絶縁体的スピンバンド)ではバンドギャップの中を横切るようなバンド構造を有するハーフメタル強磁性体が適している。つまり、上記のようなバンド構造を有するハーフメタル強磁性体を用いることによって、スピン分極率が理論的に100%となるキャリアを注入することが可能となる。このハーフメタル強磁性体は、例えば、CrO、Fe、Ga1−xMnAs、In1−xMnAs、Ge1−xMn、LaSrMnO又はホイスラー合金等からなる。ホイスラー合金としては、例えば、CoMnAi、CoMnGe、CoMnSi、CoCrAl、CoFeAl、CoMnGa等が用いられる。
【0019】
2DEGチャネル24は、例えば、チャネル長がLである。電子5は、この2DEGチャネル24をソース領域22bからドレイン領域23bに向けて走行する。
【0020】
ここで、電子5は、2DEGチャネル24をドレイン領域23bに向けて走行する際、ラシュバ効果と呼ばれる、y軸方向の電場の大きさに比例するスピン軌道相互作用が現れる。これにより、z軸方向に実効磁場が発生し、電子5の有するスピンはこの磁場の影響を受ける。電子5の有するスピンは、図1(c)に示すように、z軸の回りに歳差運動を行う。この歳差運動は、図1(c)に示す点線とスピンの偏向ベクトルの方向を示す矢印とのなす相対角度θが増加する方向、すなわち、反時計回りに回転するものである。この歳差運動による相対角度θの変化は、ラシュバ・パラメータαとチャネル長Lに依存する。ここでラシュバ・パラメータαとは、ラシュバ効果の大きさを示す量である。また、このラシュバ・パラメータαは、ゲート電圧Vに応じて変化し、この変化を利用して2DEGチャネル24中のドレイン領域近傍においてドレイン領域23bの大多数スピン方向との相対角度θを制御することができる。さらに、ラシュバ・パラメータαは、2DEGチャネル24の材料にも依存するので、半導体基板10の積層構造を構成する層のいずれか1つを変えることにより、ラシュバ効果を制御することができる。なお、図1(c)に示す点線は、ドレイン領域23bの大多数スピンの方向と平行な方向を示している。
【0021】
電子5は、図1(b)に示すように、例えば、ソース領域22bからスピン偏極した状態、つまり、スピン方向が揃った状態で2DEGチャネル24に注入される。注入された電子5は、例えば、ラシュバ効果により歳差運動を行い、ドレイン領域23bに達した際のスピン状態により、透過又は反射を行う。
【0022】
電子5は、例えば、図1(b)に示すように、スピン偏向ベクトルがドレイン領域23bの大多数スピンの方向と反対向き、即ち図中のx軸の負の向きであるとき、2DEGチャネル24とドレイン領域23bの境界で反射する。一方、電子5は、例えば、図1(b)に示すように、スピン偏向ベクトルがドレイン領域23bの大多数スピンの方向と逆向きではないとき、2DEGチャネル24とドレイン領域23bの境界を透過する。以下に、上記のスピントランジスタを用いた集積回路について説明する。なお、上記のスピントランジスタ2aと構成及び機能が同じ部分については、同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0023】
(集積回路の構成)
図2は、第1の実施の形態に係る2つのスピントランジスタを用いたインバータ回路の概略図である。
【0024】
以下において、第1のスピントランジスタ2のVlowノード22及び出力ノード23、及び第2のスピントランジスタ3のVhighノード32及び出力ノード33中の丸印付の矢印は、各ノードの大多数スピン方向を示している。
【0025】
この集積回路1は、例えば、第1及び第2のスピントランジスタ2、3を用いた論理演算回路である。この論理演算回路は、例えば、インバータ回路である。集積回路1は、図2に示すように、例えば、第1及び第2のスピントランジスタ2、3を電気的に分離するための素子分離領域4が、第1及び第2のスピントランジスタ2、3の間に形成されている。この素子分離領域4は、例えば、SiOからなる。
【0026】
第1のスピントランジスタ2は、図2に示すように、例えば、半導体基板10に形成される。第1のスピントランジスタ2は、例えば、半導体キャップ層21と、第1のノードとしてのVlowノード22と、第2のノードとしての出力ノード23と、2DEGチャネル24と、第1のゲート電極としてのゲート電極26と、を備えて概略構成されている。
【0027】
第1のスピントランジスタ2は、例えば、ゲート電極26の下方に端子10aを有する。この端子10aは、接地(GND)されている。よって、第1のスピントランジスタ2の基板電位Vsnは、一例として、0Vである。
【0028】
半導体キャップ層21は、例えば、半導体基板10の上層部分のInAlAsであり、本実施の形態においては、ゲート絶縁膜を含む層であるものとする。半導体キャップ層21は、例えば、Vlowノード22と出力ノード23にショットキー接続している。ここで、2DEGチャネル24は、InAlAs/InGaAs/InAlAsの量子井戸構造におけるInGaAs層が2DEGチャネルとなる。なお、2DEGチャネル24は、例えば、半導体基板10がInAlAs/InGaAsを積層したヘテロ構造である場合、このInAlAs/InGaAsの界面に形成される。
【0029】
lowノード22は、例えば、半導体基板10のInAlAs、InGaAs及びInGaAsの下層のInAlAsの一部を除去して形成される。Vlowノード22は、例えば、端子22aを有する。この端子22aには、例えば、電源回路から第1の電圧としての電源電圧Vlowが供給される。
【0030】
出力ノード23は、例えば、半導体基板10のInAlAs、InGaAs及びInGaAsの下層のInAlAsの一部を除去して形成される。出力ノード23は、例えば、端子23aを有する。この端子23aは、後述する第2のスピントランジスタ3の出力ノード33の端子33aに接続される。つまり、出力ノード23は、出力ノード33と電気的に接続されている。集積回路1は、電源電圧Vlowと第2の電圧としての電源電圧Vhighの間に第1のスピントランジスタ2と第2のスピントランジスタ3を直列に接続した回路である。
【0031】
lowノード22及び出力ノード23は、図2に示すように、大多数スピン方向が同じである。つまり、Vlowノード22及び出力ノード23は、磁化方向が同じである。
【0032】
lowノード22及び出力ノード23は、例えば、高スピン偏向材料を用いて形成される。高スピン偏向材料としては、強磁性金属及びハーフメタル強磁性体等が用いられる。
【0033】
本実施の形態に係るVlowノード22、出力ノード23、後述するVhighノード32及び出力ノード33は、一例として、CoMnSiを用いて形成される。
【0034】
2DEGチャネル24は、例えば、チャネル長がLである。電子5は、この2DEGチャネル24をVlowノード22から出力ノード23に向けて走行する。
【0035】
ゲート電極26は、例えば、半導体キャップ層21上に形成される。ゲート電極26は、例えば、多結晶Siからなる。ゲート電極26は、例えば、端子26aを有する。この端子26aは、例えば、後述する第2のスピントランジスタ3のゲート電極36の端子36aに接続され、デジタル信号Vinが入力する。つまり、ゲート電極26は、ゲート電極36と電気的に接続されている。
【0036】
第2のスピントランジスタ3は、図2に示すように、例えば、半導体基板10に形成される。第2のスピントランジスタ3は、例えば、半導体キャップ層31と、第3のノードとしてのVhighノード32と、第4のノードとしての出力ノード33と、2DEGチャネル34と、第2のゲート電極としてのゲート電極36と、を備えて概略構成されている。
【0037】
第2のスピントランジスタ3は、例えば、ゲート電極36の下方に端子10bを有する。この端子10bは、接地(GND)されている。よって、第2のスピントランジスタ3の基板電位Vspは、一例として、0Vである。
【0038】
半導体キャップ層31は、例えば、第1のスピントランジスタ2の半導体キャップ層21と実質的に同じである。半導体キャップ層31は、例えば、Vhighノード32と出力ノード33にショットキー接続している。ここで、2DEGチャネル34は、InAlAs/InGaAs/InAlAsの量子井戸構造におけるInGaAs層が2DEGチャネルとなる。なお、2DEGチャネル34は、例えば、半導体基板10がInAlAs/InGaAsを積層したヘテロ構造である場合、このInAlAs/InGaAsの界面に形成される。
【0039】
highノード32及び出力ノード33は、例えば、半導体基板10のInAlAs、InGaAs及びInGaAsの下層のInAlAsの一部を除去して形成される。また、Vhighノード32及び出力ノード33は、例えば、第1のスピントランジスタ2のVlowノード22及び出力ノード23と同じ材料を用いて形成される。また、第2のスピントランジスタ3のVhighノード32及び出力ノード33の大多数スピン方向は、相反する方向となっている。
【0040】
highノード32は、例えば、端子32aを有する。この端子32aには、例えば、電源回路から電源電圧Vhighが供給される。出力ノード33は、例えば、端子33aを有する。
【0041】
この2DEGチャネル34は、例えば、第1のスピントランジスタ2と同じチャネル長Lを有する。電子5は、この2DEGチャネル34を出力ノード33からVhighノード32に向けて走行する。
【0042】
ゲート電極36は、例えば、半導体キャップ層31上に形成される。ゲート電極36は、例えば、第1のスピントランジスタ2のゲート電極26と同じ材料から形成される。ゲート電極36は、例えば、端子36aを有する。この端子36aには、例えば、デジタル信号Vinが入力する。
【0043】
ここで、集積回路1は、デジタル信号VlowがVinとして入力するとき、Voutとしてデジタル信号Vhighを出力し、デジタル信号VhighがVinとして入力するとき、Voutとしてデジタル信号Vlowを出力するインバータ回路である。
【0044】
以下に、本実施の形態に係る集積回路の動作について説明する。
【0045】
(動作)
図3(a)は、第1の実施の形態に係るVinとしてVlowが入力した場合の第1のスピントランジスタの動作に関する概略図であり、(b)は、VinとしてVlowが入力した場合の第2のスピントランジスタの動作に関する概略図であり、(c)は、VinとしてVhighが入力した場合の第1のスピントランジスタの動作に関する概略図であり、(d)は、VinとしてVhighが入力した場合の第2のスピントランジスタの動作に関する概略図である。
【0046】
(Vin=Vlowの場合)
まず、VinとしてVlowが、第1のスピントランジスタ2のゲート電極26、及び第2のスピントランジスタ3のゲート電極36に入力する。
【0047】
スピン偏極した電子5が、図3(a)に示すように、第1のスピントランジスタ2のVlowノード22から2DEGチャネル24に注入される。
【0048】
この電子5は、図3(a)に示すように、2DEGチャネル24内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル24と出力ノード23の境界に到達する。
【0049】
到達した電子5は、出力ノード23の大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。
【0050】
一方、スピン偏極した電子5が、図3(b)に示すように、第2のスピントランジスタ3の出力ノード33から2DEGチャネル34に注入される。
【0051】
この電子5は、図3(b)に示すように、2DEGチャネル34内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル34とVhighノード32の境界に到達する。
【0052】
到達した電子5は、Vhighノード32の大多数スピン方向と同じスピン方向となる。これは、Vhighノード32の大多数スピン方向は、出力ノード33の大多数スピン方向とは角度π異なっているからである。よって電子5は、2DEGチャネル34とVhighノード32の境界を透過する。つまり、出力ノード33の電位は、Vhighとなる。
【0053】
よって、集積回路1は、Vin=Vlowの場合、第1のスピントランジスタ2には電流が流れず、第2のスピントランジスタ3には電流が流れるので、Voutからは、第2のスピントランジスタ3のVhighノード32に入力するVhighが出力される。
【0054】
(Vin=Vhighの場合)
まず、VinとしてVhighが、第1のスピントランジスタ2のゲート電極26、及び第2のスピントランジスタ3のゲート電極36に入力する。
【0055】
スピン偏極した電子5が、図3(c)に示すように、第1のスピントランジスタ2のVlowノード22から2DEGチャネル24に注入される。
【0056】
この電子5は、図3(c)に示すように、2DEGチャネル24内の磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル24と出力ノード23の境界に到達する。
【0057】
到達した電子5は、出力ノード23の大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード23の電位は、Vlowとなる。
【0058】
一方、スピン偏極した電子5が、図3(d)に示すように、第2のスピントランジスタ3の出力ノード33から2DEGチャネル34に注入される。
【0059】
この電子5は、図3(d)に示すように、2DEGチャネル34内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル34とVhighノード32の境界に到達する。
【0060】
到達した電子5は、Vhighノード32の大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界で反射する。
【0061】
よって、集積回路1は、Vin=Vhighの場合、第1のスピントランジスタ2には電流が流れ、第2のスピントランジスタ3には電流が流れないので、Voutからは、第1のスピントランジスタ2のVlowノード22に入力するVlowが出力される。
【0062】
従って、集積回路1は、VinとしてVlowが入力すると、VoutとしてVhighを出力し、VinとしてVhighが入力すると、VoutとしてVlowを出力するインバータ回路を構成している。
【0063】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態に係る集積回路1は、磁化方向が互いに同じ方向となるVlowノード22と出力ノード23を備える第1のスピントランジスタ2と、磁化方向が互いに相反する方向となるVhighノード32と出力ノード33を備える第2のスピントランジスタ3と、を直列に接続してインバータ回路を構成するため、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタにより構成されたインバータ回路と比べて、p型及びn型トランジスタを作り分ける必要がなく、製造工程が少なくなり、製造コストが低減する。
【0064】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、第1のスピントランジスタ2の出力ノードと第2のスピントランジスタ3の出力ノードを同一のノードとする点で第1の実施の形態と異なっている。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の機能及び構成を有する部分については、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0065】
図4は、第2の実施の形態に係る集積回路の概略図である。この集積回路1は、図4に示すように、基板電位VsnとVspが接地されていることから、第1の実施の形態における素子分離領域4を省略することが可能となる。よって、この集積回路1は、図4に示すように、第1のスピントランジスタ2の出力ノード23と、第2のスピントランジスタ3の出力ノード33を同一の領域とした出力ノード6を備えている。
【0066】
この出力ノード6は、例えば、Vlowノード22、32と同じ材料を用いて形成される。Vhighノード32は、Vlowノード22及び出力ノード6とは大多数スピン方向が逆向きになっている。
【0067】
また、出力ノード6は、例えば、端子6aを有する。この端子6aは、Voutを出力する。
【0068】
以下に、本実施の形態に係る集積回路1の動作について説明する。
【0069】
(動作)
(Vin=Vlowの場合)
まず、VinとしてVlowが、第1のスピントランジスタ2のゲート電極26、及び第2のスピントランジスタ3のゲート電極36に入力する。
【0070】
スピン偏極した電子5が、第1のスピントランジスタ2のVlowノード22から2DEGチャネル24に注入される。
【0071】
この電子5は、2DEGチャネル24内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル24と出力ノード6の境界に到達する。
【0072】
到達した電子5は、出力ノード6の大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界で反射する。
【0073】
一方、スピン偏極した電子5が、第2のスピントランジスタ3の出力ノード6から2DEGチャネル34に注入される。
【0074】
この電子5は、2DEGチャネル34内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル34とVhighノード32の境界に到達する。
【0075】
到達した電子5は、Vhighノード32の大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード6の電位は、Vhighとなる。
【0076】
よって、集積回路1は、Vin=Vlowの場合、第1のスピントランジスタ2には電流が流れず、第2のスピントランジスタ3には電流が流れるので、Voutからは、Vhighが出力される。
【0077】
(Vin=Vhighの場合)
まず、VinとしてVhighが、第1のスピントランジスタ2のゲート電極26、及び第2のスピントランジスタ3のゲート電極36に入力する。
【0078】
スピン偏極した電子5が、第1のスピントランジスタ2のVlowノード22から2DEGチャネル24に注入される。
【0079】
この電子5は、2DEGチャネル24内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル24と出力ノード6の境界に到達する。
【0080】
到達した電子5は、出力ノード6の大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0081】
一方、スピン偏極した電子5が、出力ノード6から2DEGチャネル34に注入される。
【0082】
この電子5は、2DEGチャネル34内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル34とVhighノード32の境界に到達する。
【0083】
到達した電子5は、Vhighノード32の大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界で反射する。
【0084】
よって、集積回路1は、Vin=Vhighの場合、第1のスピントランジスタ2には電流が流れ、第2のスピントランジスタ3には電流が流れないので、Voutからは、Vlowが出力される。
【0085】
従って、集積回路1は、VinとしてVlowが入力すると、VoutとしてVhighを出力し、VinとしてVhighが入力すると、VoutとしてVlowを出力するインバータ回路を構成している。
【0086】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態に係る集積回路1は、基板電位Vsn、Vspが等しいことから、素子分離領域を必要とせず、素子分離領域を必要とする集積回路に比べて、設置のための面積を小さくすることができる。
【0087】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、他の磁性体領域(ノード)の磁化方向とは異なる磁化方向を有する磁性体領域を、他の磁性体領域とは異なる材料によって形成する点で上記の他の実施の形態と異なっている。
【0088】
(集積回路1の構成)
図5(a)は、第3の実施の形態に係る集積回路の概略図であり、(b)は、集積回路の上面図である。
【0089】
本実施の形態に係る集積回路1は、図5(a)に示すVhighノード32が、Vlowノード22及び出力ノード6とは、異なる材料から形成されている。磁性体は、不純物の含有量を減じる、又は、磁性体のアニール条件を変えること等により、内部歪みを変え、保磁力を変化させることができる。よって、異なる材料としては、一例として、ドーピング比の異なるNiFeが用いられる。
【0090】
以下に、本実施の形態に係る集積回路1の製造方法について説明する。
【0091】
(集積回路の製造方法)
図6A(a)〜図6B(o)は、第3の実施の形態に係る集積回路の製造工程を示す要部断面図である。
【0092】
まず、分子線エピタキシー法等により、InP基板上にInAlAs、InGaAs及びInGaAsを順に積層させて半導体基板10を形成する。この半導体基板10のInGaAs層を2DEGチャネル前駆体層60とする。また、半導体基板10上層のInAlAsを半導体キャップ層前駆体層61とする。
【0093】
次に、図6A(a)に示すように、フォトリソグラフィ法及びRIE(Reactive Ion Etching)法等により、素子分離領域4を形成し、続いて、保護膜62を形成する。
【0094】
次に、図6A(b)に示すように、フォトリソグラフィ法及びRIE法等により、保護膜62上にマスク膜63を形成する。このマスク膜63は、Vlowノード22に対応する位置に開口63aが形成され、出力ノード6に対応する位置に開口63bが形成される。
【0095】
次に、図6A(c)に示すように、RIE法等により、マスク膜63をマスクとして異方性エッチングを行い、開口63a及び開口63b内の保護膜62及び2DEGチャネル前駆体層60と、半導体基板10の一部を除去する。
【0096】
次に、図6A(d)に示すように、マスク膜63を除去する。
【0097】
次に、図6A(e)に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により、第1の磁性体金属64を開口63a、開口63b及び保護膜62上に形成する。この第1の磁性体金属64は、例えば、上記に記載のホイスラー合金である。
【0098】
次に、図6A(f)に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等によって平坦化処理を行い、保護膜62上の第1の磁性体金属64を除去する。この平坦化処理により、開口63aには、第1の磁性体金属64からなる磁性体領域65が形成され、開口63bには、第1の磁性体金属64からなる磁性体領域66が形成される。
【0099】
次に、図6A(g)に示すように、フォトリソグラフィ法及びRIE法等により、保護膜62、磁性体領域65及び磁性体領域66上にマスク膜67を形成する。このマスク膜67は、Vhighノード32に対応する位置に開口67aが形成される。
【0100】
次に、図6A(h)に示すように、RIE法等により、マスク膜67をマスクとして異方性エッチングを行い、開口67a内の保護膜62及び2DEGチャネル前駆体層60と、半導体基板10の一部を除去する。
【0101】
次に、図6B(i)に示すように、CVD法等により、第2の磁性体金属68を開口67a及び保護膜62上に形成する。この第2の磁性体金属68は、例えば、上記に記載のホイスラー合金である。
【0102】
次に、図6B(j)に示すように、CMP法等によって平坦化処理を行い、保護膜62上の第2の磁性体金属68を除去する。この平坦化処理により、開口67aには、第2の磁性体金属68からなる磁性体領域69が形成される。
【0103】
次に、図6B(k)に示すように、ウエットエッチング法等により、保護膜62を選択的に除去する。
【0104】
次に、CVD法等により、素子分離領域4、半導体キャップ層前駆体層61、磁性体領域65、磁性体領域66及び磁性体領域69上に絶縁膜を堆積させる。続いて、図6B(l)に示すように、RIE法等による等方性エッチングを行うことにより、磁性体領域65、磁性体領域66及び磁性体領域69の側面に側壁70を形成する。
【0105】
次に、図6B(m)に示すように、CVD法等により、素子分離領域4、半導体キャップ層前駆体層61、磁性体領域65、磁性体領域66、磁性体領域69及び側壁70上にメタルゲート電極前駆体膜71を形成する。このメタルゲート電極前駆体膜71は、例えば、Ta、Ru等の金属材料の単層を含んで形成されるか、又は、金属材料を積層させた構造を含んで形成される。なお、積層させた構造は、例えば、Ti/Auを含んで積層させた構造、又はTiN/Pt/Auを含んで積層させた構造である。
【0106】
次に、図6B(n)に示すように、フォトリソグラフィ法及びRIE法等により、磁性体領域69と磁性体領域65の間、及び磁性体領域65と磁性体領域66の間にゲートマスク72を形成する。
【0107】
次に、図6B(o)及び図5(b)に示すように、RIE法等により、ゲートマスク72をマスクとしてメタルゲート電極前駆体膜71を除去する。ここで、磁性体領域65は、集積回路1のVlowノード22として用いられる。磁性体領域66は、出力ノード6として用いられる。磁性体領域69は、Vhighノード32として用いられる。続いて、Vlowノード22、出力ノード6及びVhighノード32に磁化を形成させる。以下では、この磁化を形成させる方法について説明する。
【0108】
(磁化を形成させる方法について)
図7は、第3の実施の形態に係る第1の磁性体金属及び第2の磁性体金属の磁化曲線の概略図である。図7の縦軸は磁化の強さMであり、横軸は磁場の強さHである。図7に実線で示す第1の磁化曲線64aは、第1の磁性体金属64の磁化曲線であり、一点鎖線で示す第2の磁化曲線68aは、第2の磁性体金属68の磁化曲線である。以下では、外部から印加される磁場Hを0、H、0、H、0の順に変化させたときの第1の磁性体金属64及び第2の磁性体金属68の磁化について説明する。なお、磁場の強さは、図7の磁場Hの右側を正とすると、Hc4<H<Hc3<0<Hc2<Hc1<Hとなっている。磁場H、Hc1、Hc2の磁場の方向は、Hc3、H、Hc4の磁場の方向とは逆となっている。
【0109】
また、図7に示す点Aは磁場Hにおける第1の磁化曲線64a上の点である。点Bは磁場ゼロにおける第1の磁化曲線64a上の点である。点Cは磁場Hにおける第1の磁化曲線64a上の点である。
【0110】
さらに、図7に示す点aは、磁場Hにおける第2の磁化曲線68a上の点である。点b及び点eは磁場ゼロにおいて磁性体が磁化している際の第2の磁化曲線68a上の点である。点cは磁場Hc3における第2の磁化曲線68a上の点である。点dは、磁場Hにおける第2の磁化曲線68a上の点である。
【0111】
まず、外部から磁場Hを、磁化Mがゼロの状態であるVlowノード22、出力ノード6及びVhighノード32に印加する。この外部磁場の印加は、例えば、Vlowノード22、出力ノード6及びVhighノード32等が形成された半導体基板10に行われる。
【0112】
まず、第1の磁性体金属64の磁化について説明する。図7に示すように、印加される磁場が、磁場ゼロから磁場Hまで増加するにつれ、第1の磁性体金属64の磁化は、ゼロの状態から初期磁化曲線上を移動し、さらに、磁場Hにおける第1の磁化曲線64a上の点Aまで増加する。
【0113】
続いて、印加する磁場Hをゼロにすると、第1の磁性体金属64の磁化は、点Aから初期磁化曲線上を戻らず、すなわち、ゼロとならず、磁化M軸上のゼロではない点Bに到達する。この磁化M軸上の点Bは、残留磁化の大きさを示している。
【0114】
続いて、印加される磁場が、磁場ゼロから磁場Hまで増加するにつれ、第1の磁性体金属64の磁化は、徐々に残留磁化が小さくなるものの磁化方向が逆転することはなく、第1の磁化曲線64a上の点Cに到達する。
【0115】
続いて、印加する磁場Hをゼロとすると、第1の磁性体金属64の磁化は、第1の磁化曲線64aに沿って徐々に増加し、磁場ゼロにおいて残留磁化Bを有することとなる。
【0116】
一方、第2の磁性体金属68の磁化は、図7に示すように、印加される磁場が、磁場ゼロから磁場Hまで増加するにつれ、ゼロの状態から初期磁化曲線上を移動し、さらに、磁場Hにおける第1の磁化曲線64a上の点aまで増加する。ここで、点aにおける磁化Mは、点Aにおける磁化Mよりも大きい。
【0117】
続いて、印加する磁場Hをゼロとすると、第2の磁性体金属68の磁化は、点aから初期磁化曲線上を戻らず、磁化M軸上のゼロではない点bに到達する。この磁化M軸上の点bは、残留磁化の大きさを示している。ここで、点bにおける残留磁化は、点Bにおける残留磁化よりも大きい。
【0118】
続いて、印加される磁場が、磁場ゼロから磁場Hまで増加するにつれ、第2の磁性体金属68の磁化は、徐々に残留磁化が小さくなり、磁場がHc3のとき、磁化方向が逆転して点cに到達し、さらに、点cから磁化の強さが増加した点dに到達する。この点c及びdにおける磁化方向は、第1の磁化曲線64a上の点B及び第2の磁化曲線68a上の点bにおける磁化方向とは逆となっている。
【0119】
続いて、印加する磁場Hをゼロとすると、第2の磁性体金属68の磁化は、磁化方向を反転させることなく、第2の磁化曲線68aに沿って徐々に減少し、磁場ゼロにおいて残留磁化eを有することとなる。
【0120】
従って、印加する磁場Hを0、H、0、H、0と順に変化させることにより、第1の磁性体金属64と第2の磁性体金属68とに、相反する方向の磁化を同時に形成することができる。
【0121】
次に、周知の工程を経て、集積回路1を得る。なお、上記の磁化させる工程では、磁場Hを0、H、0、H、0の順に変化させたが、0、H、0、H、0の順に変化させても良い。
【0122】
(第3の実施の形態の効果)
第3の実施の形態に係る集積回路1は、同じ磁化方向を有するVlowノード22、出力ノード6と、Vlowノード22、出力ノード6とは相反する磁化方向を有するVhighノード32を同時に磁化することができるので、局所的に磁化を行う場合と比べて、工程が少なく、集積回路1を含む半導体装置の製造コストを抑制することができる。
【0123】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態は、磁化方向が異なるVhighノードの体積と、他のVlowノード及び出力ノードの体積を異なる体積とする点で上記の他の実施の形態と異なっている。なお、以下では、Vhighノード32の体積を、他のVlowノード22及び出力ノード6の体積よりも小さいものとしたが、これに限定されず、Vhighノード32の体積を、他のVlowノード22及び出力ノード6の体積よりも大きくしても良い。
【0124】
(集積回路1の構成)
図8(a)は、第4の実施の形態に係る集積回路の概略図であり、(b)は、磁性体金属の磁化曲線の概略図である。図8(b)に実線で示す第1の磁化曲線8aは、体積がVhighノード32よりも大きいVlowノード22及び出力ノード6を形成する磁性体金属の磁化曲線であり、一点鎖線で示す第2の磁化曲線8bは、Vhighノード32を形成する磁性体金属の磁化曲線である。以下では、外部から印加される磁場Hを、第3の実施の形態と同様に、0、H、0、H、0の順に変化させたときの磁化について説明する。なお、磁場の強さは、図7と同様に、Hc4<H<Hc3<0<Hc2<Hc1<Hとなっている。
【0125】
また、図8(b)に示す点Aは磁場Hにおける第1の磁化曲線8a上の点である。点Bは磁場ゼロにおける第1の磁化曲線8a上の点である。点Cは磁場Hにおける第1の磁化曲線8a上の点である。
【0126】
さらに、図8(b)に示す点aは、磁場Hにおける第2の磁化曲線8b上の点である。点b及び点eは磁場ゼロにおける第2の磁化曲線8b上の点である。点cは磁場Hc3における第2の磁化曲線8b上の点である。点dは、磁場Hにおける第2の磁化曲線8b上の点である。
【0127】
本実施の形態に係る集積回路1は、第2のスピントランジスタ3のVhighノード32の体積が、Vhighノード32の磁化方向と逆向きの磁化方向を有するVlowノード22及び出力ノード6の体積よりも小さくなっている他は、第2の実施の形態と同じ構成を有している。なお、Vlowノード22、出力ノード6及びVhighノード32は、例えば、同じ材料から形成されるものとする。
【0128】
lowノード22及び出力ノード6よりも体積が小さいVhighノード32は、図8(a)に示すように、磁化が反転する際の磁場の強さHc3が、Vlowノード22及び出力ノード6の磁化が反転する磁場の強さHc4よりも小さい。これは、体積が小さい方が、磁化が反転し易いことに起因している。従って、初期磁化曲線を抜けてヒステリシスループの磁気飽和に達するまでの磁場H、及び磁場Hc3と磁場Hc4との間の値となる磁場Hを印加することにより、Vlowノード22及び出力ノード6の磁化と、Vlowノード22及び出力ノード6の磁化方向と相反する磁化方向を有するVhighノード32の磁化とを同時に行うことができる。
【0129】
なお、第1の実施の形態に係る集積回路において、磁化方向が他の磁性体領域と異なる磁性体領域(例えば、出力ノード33)の体積を他の磁性体領域の体積と異なるものとしても良い。
【0130】
(第4の実施の形態の効果)
第4の実施の形態に係る集積回路1は、異なる磁化方向を有するVlowノード22、出力ノード6及びVhighノード32を同時に磁化することができるので、磁化方向に応じて局所的に磁化を行う場合と比べて、工程が少なく、集積回路1を含む半導体装置の製造コストを抑制することができる。
【0131】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態は、スピントランジスタの上方に形成された配線を利用して磁性体領域を磁化する点で上記の他の実施の形態と異なっている。
【0132】
(集積回路1の構成)
図9は、第5の実施の形態に係る集積回路の概略図である。本実施の形態に係る集積回路1の主な構成は、第4の実施の形態に係る集積回路と同様であるが、さらに、第1のスピントランジスタ2及び第2のスピントランジスタ3上に層間絶縁膜9と、この層間絶縁膜9上に配線90が形成されている。
【0133】
highノード32は、第4の実施の形態において示すように、Vlowノード22及び出力ノード6と比べて、体積が小さいことからその保磁力も小さい。よって、図9に示すように、Vhighノード32の上方に配線90を形成し、この配線90に電流を流すことで磁場Hを発生させ、この磁場Hによって磁化を行う。なお、他の磁性体領域の上方に、配線を設け、この配線に電流を流すことにより、磁化を行っても良い。
【0134】
(第5の実施の形態の効果)
第5の実施の形態に係る集積回路1は、磁性体領域の上方に配線を備えているので、半導体装置を製造した後であっても、磁性体領域の磁化を行うことができる。集積回路1は、例えば、外部の擾乱磁場及び温度の揺らぎ等による、磁化の反転及び磁化の消失等が起こったとしても、不具合が生じた磁性体領域の上方に位置する配線に電流が流されることにより発生する磁場によって、半導体装置の製造終了後であっても再度磁化を行うことができる。また、集積回路1は、例えば、定期的に配線に電流を流すことで、磁化の消失等の不具合を未然に防止することができる。
【0135】
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態は、上記に記載のスピントランジスタを組み合わせてNAND回路を構成する点で上記の他の実施の形態と異なっている。
【0136】
(NAND回路100aの構成)
図10(a)は、第6の実施の形態に係るNAND回路の概略図であり、(b)は、NAND回路の論理演算表である。本実施の形態に係るNAND回路100aは、素子分離領域4を挟んでスピントランジスタで構成された第1の素子101及び第2の素子102が電源電圧Vlowと電源電圧Vhighの間に直列に接続されている。
【0137】
第1の素子101は、図10(a)に示すように、Vlowノード200、中間ノード201b及び出力ノード202bが、それぞれのチャネル長がLとなるように半導体基板10に並んで形成されている。Vlowノード200と中間ノード201bの間には、2DEGチャネル203が形成され、中間ノード201bと出力ノード202bの間には、2DEGチャネル204が形成されている。Vlowノード200、中間ノード201b及び出力ノード202bの大多数スピン方向は、同じ方向を有する。
【0138】
2DEGチャネル203の上方には、半導体キャップ層205を挟んでゲート電極209が形成されている。
【0139】
2DEGチャネル204の上方には、半導体キャップ層206を挟んでゲート電極210が形成されている。
【0140】
lowノード200は、端子200aを有し、電源回路から電源電圧Vlowが供給される。出力ノード202bは、端子202aを有する。
【0141】
ゲート電極209は、端子209aを有する。ゲート電極210は、端子210aを有する。
【0142】
第1の素子101の半導体基板10には、端子101aが形成されている。第1の素子101の基板電位Vは、一例として、接地されているので0Vである。
【0143】
第2の素子102は、図10(a)に示すように、Vhighノード300b、出力ノード301b及びVhighノード302が、それぞれチャネル長がLとなるように半導体基板10に並んで形成されている。Vhighノード300bと出力ノード301bの間には、2DEGチャネル303が形成され、出力ノード301bとVhighノード302の間には、2DEGチャネル304が形成されている。
【0144】
2DEGチャネル303の上方には、半導体キャップ層305を挟んでゲート電極309が形成されている。
【0145】
2DEGチャネル304の上方には、半導体キャップ層306を挟んでゲート電極310が形成されている。
【0146】
highノード300bは、端子300aを有する。出力ノード301bは、端子301aを有し、第1の素子101の出力ノード202bの端子202aに接続され、Voutを出力する。Vhighノード302は、端子302aを有し、電源回路から電源電圧Vhighが供給される。この端子302aは、Vhighノード300bの端子300aに接続されている。つまり、Vhighノード300b及びVhighノード302の電位は、同電位となる。第2の素子102の基板電位Vは、一例として、接地されているので0Vである。
【0147】
highノード300b及びVhighノード302は、同じ大多数スピン方向を有する。出力ノード301bの大多数スピン方向は、Vhighノード300b及びVhighノード302の大多数スピン方向と逆向きとなっている。なお、本実施の形態に係る第2の素子102のVhighノード300b及びVhighノード302は、第1の素子101のVlowノード200、中間ノード201b及び出力ノード202bの大多数スピン方向と同じであるが、これに限定されず、逆方向であっても良い。その際、出力ノード301bは、Vlowノード200、中間ノード201b及び出力ノード202bの大多数スピン方向と同じ方向となる。
【0148】
ゲート電極309は、端子309aを有する。この端子309aは、第1の素子101のゲート電極210の端子210aと接続され、デジタル信号Vin2が入力する。ゲート電極310は、端子310aを有する。この端子310aは、第1の素子101のゲート電極209の端子209aと接続され、デジタル信号Vin1が入力する。
【0149】
第2の素子102の半導体基板10には、端子102aが形成されている。
【0150】
以下に、図10(b)に示す論理演算表に基づいてNAND回路100aの動作について説明する。
【0151】
(動作)
以下では、ゲート電極に電圧Vlowが印加された場合、チャネル長Lを有する2DEGチャネルを走行する電子5は、例えば、角度πの歳差運動を行う。また、ゲート電極に電圧Vhighが印加された場合、チャネル長Lを有する2DEGチャネルを走行する電子5は、例えば、角度2πの歳差運動を行う。
【0152】
(Vin1=Vlow、Vin2=Vlowの場合)
まず、Vin1としてVlowが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVlowが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0153】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0154】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と中間ノード201bの境界に達する。
【0155】
到達した電子5は、中間ノード201bの大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界で反射する。つまり、電子5は、中間ノード201bを透過できないので、第1の素子101には、電流が流れない。
【0156】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード301bから2DEGチャネル303及び2DEGチャネル304に注入される。
【0157】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303とVhighノード300bの境界に到達する。
【0158】
到達した電子5は、Vhighノード300bの大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。これは、Vhighノード300bと出力ノード301bの大多数スピン方向が、角度π異なっていることに起因している。
【0159】
また、電子5は、2DEGチャネル304内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル304とVhighノード302の境界に到達する。
【0160】
到達した電子5は、Vhighノード302の大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード301bは、電位がVhighとなる。
【0161】
よって、集積回路1は、Vin1=Vlow、Vin2=Vlowの場合、第1の素子101には電流が流れず、第2の素子102には電流が流れるので、Voutからは、Vhighが出力される。
【0162】
(Vin1=Vlow、Vin2=Vhighの場合)
まず、Vin1としてVlowが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVhighが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0163】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0164】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と中間ノード201bの境界に達する。
【0165】
到達した電子5は、中間ノード201bの大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界で反射する。つまり、電子5は、中間ノード201bを透過できないので、第1の素子101には、電流が流れない。
【0166】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード301bから2DEGチャネル303及び2DEGチャネル304に注入される。
【0167】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303とVhighノード300bの境界に到達する。
【0168】
到達した電子5は、Vhighノード300bの大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。
【0169】
また、電子5は、2DEGチャネル304内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル304とVhighノード302の境界に到達する。
【0170】
到達した電子5は、Vhighノード302の大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード301bは、電位がVhighとなる。
【0171】
よって、集積回路1は、Vin1=Vlow、Vin2=Vlowの場合、第1の素子101には電流が流れず、第2の素子102には電流が流れるので、Voutからは、Vhighが出力される。
【0172】
(Vin1=Vhigh、Vin2=Vlowの場合)
まず、Vin1としてVhighが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVlowが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0173】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0174】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と中間ノード201bの境界に達する。
【0175】
到達した電子5は、中間ノード201bの大多数スピン方向と角度2π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0176】
続いて、スピン偏極した電子5が、第1の素子101の中間ノード201bから2DEGチャネル204に注入される。
【0177】
この電子5は、2DEGチャネル204内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル204と出力ノード202bの境界に達する。
【0178】
到達した電子5は、出力ノード202bの大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界を反射する。つまり、第1の素子101には、電流が流れない。
【0179】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード301bから2DEGチャネル303及び2DEGチャネル304に注入される。
【0180】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303とVhighノード300bの境界に到達する。
【0181】
到達した電子5は、Vhighノード300bの大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0182】
また、電子5は、2DEGチャネル304内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル304とVhighノード302の境界に到達する。
【0183】
到達した電子5は、Vhighノード302の大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。しかし、出力ノード301bとVhighノード300b間には、電流が流れるので、出力ノード301bの電位はVhighとなる。
【0184】
よって、集積回路1は、Vin1=Vhigh、Vin2=Vlowの場合、第1の素子101には電流が流れず、第2の素子102の出力ノード301bとVhighノード302間に電流が流れるので、Voutからは、Vhighが出力される。
【0185】
(Vin1=Vhigh、Vin2=Vhighの場合)
まず、Vin1としてVhighが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVhighが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0186】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0187】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と中間ノード201bの境界に達する。
【0188】
到達した電子5は、中間ノード201bの大多数スピン方向と角度2π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0189】
続いて、スピン偏極した電子5が、第1の素子101の中間ノード201bから2DEGチャネル204に注入される。
【0190】
この電子5は、2DEGチャネル204内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル204と出力ノード202bの境界に達する。
【0191】
到達した電子5は、出力ノード202bの大多数スピン方向と角度2π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード202bは、電位がVlowとなる。
【0192】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード301bから2DEGチャネル303及び2DEGチャネル304に注入される。
【0193】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303とVhighノード300bの境界に到達する。
【0194】
到達した電子5は、Vhighノード300bの大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。
【0195】
また、電子5は、2DEGチャネル304内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル304とVhighノード302の境界に到達する。
【0196】
到達した電子5は、Vhighノード302の大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。つまり、第2の素子102には、電流が流れない。
【0197】
よって、集積回路1は、Vin1=Vhigh、Vin2=Vhighの場合、第1の素子101に電流が流れ、第2の素子102には電流が流れないので、Voutからは、Vlowが出力される。
【0198】
従って、NAND回路100aは、図10(b)に示す論理演算表を満足するので、NAND回路を構成している。
【0199】
(第6の実施の形態の効果)
第6の実施の形態に係るNAND回路100aは、CMOSトランジスタにより構成されたNAND回路と比べて、p型及びn型トランジスタを作り分ける必要がなく、製造工程が少なくなり、製造コストが低減する。
【0200】
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態は、上記に記載のスピントランジスタを組み合わせてNOR回路を構成する点で上記の他の実施の形態と異なっている。
【0201】
(NOR回路100bの構成)
図11(a)は、第7の実施の形態に係るNOR回路の概略図であり、(b)は、NOR回路の論理演算表である。本実施の形態に係るNOR回路100bは、第6の実施の形態に係るNAND回路100aと、基本構成は同じであるが、端子の接続が異なっている。本実施の形態では、主に、第6の実施の形態と異なる点について説明する。
【0202】
第1の素子101は、図11(a)に示すように、電源回路からVlowノード200に電源電圧Vlowが供給される。また、Vlowノード200の端子200aは、Vlowノード202cの端子202aと接続されている。出力ノード201cの端子201aは、第2の素子102の出力ノード300cの端子300aと接続されている。第1の素子101の基板電位Vは、一例として、接地されているので0Vである。
【0203】
第2の素子102は、電源回路からVhighノード302に電源電圧Vhighが供給される。第2の素子102は、Vhighノード302と出力ノード300cの磁化方向が同一方向である。また、Vhighノード302と出力ノード300cの間に形成された中間ノード301cは、Vhighノード302と出力ノード300cと相反する磁化方向を有する。第2の素子102の基板電位Vは、一例として、接地されているので0Vである。
【0204】
以下に、図11(b)に示す論理演算表に基づいてNOR回路100bの動作について説明する。
【0205】
(動作)
(Vin1=Vlow、Vin2=Vlowの場合)
まず、Vin1としてVlowが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVlowが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0206】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0207】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と出力ノード201cの境界に達する。
【0208】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界で反射する。
【0209】
また、スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード202cから2DEGチャネル204に注入される。
【0210】
この電子5は、2DEGチャネル204内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル204と出力ノード201cの境界に達する。
【0211】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界で反射する。つまり、第1の素子101には、電流が流れない。
【0212】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード300cから2DEGチャネル303に注入される。
【0213】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303と中間ノード301cの境界に到達する。
【0214】
到達した電子5は、中間ノード301cの大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0215】
続いて、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の中間ノード301cから2DEGチャネル304に注入される。
【0216】
この電子5は、2DEGチャネル304内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル304とVhighノード302の境界に到達する。
【0217】
到達した電子5は、Vhighノード302の大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード300cは、電位がVhighとなる。
【0218】
よって、集積回路1は、Vin1=Vlow、Vin2=Vlowの場合、第1の素子101には電流が流れず、第2の素子102には電流が流れるので、Voutからは、Vhighが出力される。
【0219】
(Vin1=Vlow、Vin2=Vhighの場合)
まず、Vin1としてVlowが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVhighが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0220】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0221】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と出力ノード201cの境界に達する。
【0222】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界で反射する。
【0223】
また、スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード202cから2DEGチャネル204に注入される。
【0224】
この電子5は、2DEGチャネル204内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル204と出力ノード201cの境界に達する。
【0225】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度2π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード201cは、電位がVlowとなる。
【0226】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード300cから2DEGチャネル303に注入される。
【0227】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303と中間ノード301cの境界に到達する。
【0228】
到達した電子5は、中間ノード301cの大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。よって、第2の素子102には、電流が流れない。
【0229】
よって、集積回路1は、Vin1=Vlow、Vin2=Vhighの場合、第1の素子101には電流が流れ、第2の素子102には電流が流れないので、Voutからは、Vlowが出力される。
【0230】
(Vin1=Vhigh、Vin2=Vlowの場合)
まず、Vin1としてVhighが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVlowが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0231】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0232】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と出力ノード201cの境界に達する。
【0233】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度2π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0234】
また、スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード202cから2DEGチャネル204に注入される。
【0235】
この電子5は、2DEGチャネル204内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル204とVlowノード202cの境界に達する。
【0236】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度π異なるスピン方向となっているので、境界を反射する。しかし、Vlowノード200と出力ノード201c間には電流が流れるので、出力ノード201cの電位はVlowとなる。
【0237】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード300cから2DEGチャネル303に注入される。
【0238】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303と中間ノード301cの境界に到達する。
【0239】
到達した電子5は、中間ノード301cの大多数スピン方向と同じスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0240】
続いて、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の中間ノード301cから2DEGチャネル304に注入される。
【0241】
この電子5は、2DEGチャネル304内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル304とVhighノード302の境界に到達する。
【0242】
到達した電子5は、Vhighノード302の大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。よって、第2の素子102には、電流が流れない。
【0243】
よって、集積回路1は、Vin1=Vhigh、Vin2=Vlowの場合、第1の素子101には電流が流れ、第2の素子102には電流が流れないので、Voutからは、Vlowが出力される。
【0244】
(Vin1=Vhigh、Vin2=Vhighの場合)
まず、Vin1としてVhighが、第1の素子101のゲート電極209、及び第2の素子102のゲート電極310に入力する。また、Vin2としてVhighが、第1の素子101のゲート電極210、及び第2の素子102のゲート電極309に入力する。
【0245】
スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード200から2DEGチャネル203に注入される。
【0246】
この電子5は、2DEGチャネル203内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル203と出力ノード201cの境界に達する。
【0247】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度2π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。
【0248】
また、スピン偏極した電子5が、第1の素子101のVlowノード202cから2DEGチャネル204に注入される。
【0249】
この電子5は、2DEGチャネル204内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル204と出力ノード201cの境界に達する。
【0250】
到達した電子5は、出力ノード201cの大多数スピン方向と角度2π異なるスピン方向となっているので、境界を透過する。つまり、出力ノード201cは、電位がVlowとなる。
【0251】
一方、スピン偏極した電子5が、第2の素子102の出力ノード300cから2DEGチャネル303に注入される。
【0252】
この電子5は、2DEGチャネル303内の実効磁場によってz軸を中心に、例えば、角度2πの歳差運動を行い、2DEGチャネル303と中間ノード301cの境界に到達する。
【0253】
到達した電子5は、中間ノード301cの大多数スピン方向と逆向きのスピン方向となっているので、境界を反射する。よって、第2の素子102は、電流が流れない。
【0254】
よって、集積回路1は、Vin1=Vhigh、Vin2=Vhighの場合、第1の素子101には電流が流れ、第2の素子102には電流が流れないので、Voutからは、Vlowが出力される。
【0255】
従って、NOR回路100aは、図11(b)に示す論理演算表を満足するので、NOR回路を構成している。
【0256】
(第7の実施の形態の効果)
第7の実施の形態に係るNOR回路100bは、CMOSトランジスタにより構成されたNOR回路と比べて、p型及びn型トランジスタを作り分ける必要がなく、製造工程が少なくなり、製造コストが低減する。
【0257】
以上説明した各実施の形態によれば、磁化方向が同じ方向となるソース領域としてのノードとドレイン領域としてのノードを備えるスピントランジスタと、相反する磁化方向を有するソース領域としてのノードとドレイン領域としてのノードを備えるスピントランジスタと、を用いて論理演算回路を形成することができる。
【0258】
また、以上説明した各実施の形態によれば、各ノードを強磁性体によって形成するので、ゲートリークやDIBL(障壁低下効果:Drain Induced-Barrier Lowering)等の短チャンネル効果、及び短チャンネル効果を抑制するために生じるGIDL(接合リーク電流:Gate Induced Drain Leakage)等を防止することができる。各実施の形態に係る集積回路1は、第1及び第2のスピントランジスタ2、3をオン、オフするためのVhigh及びVlowの幅が小さくてすむので、低消費電力となる。
【0259】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0260】
1…集積回路、2a…スピントランジスタ、2…第1のスピントランジスタ、3…第2のスピントランジスタ、6、出力ノード、22、200、202c…Vlowノード、23…出力ノード、32、300b、302…Vhighノード、33、201c、300c、301b…出力ノード、22b…ソース領域、23b…ドレイン領域、201b、301c、…中間ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化方向が互いに同じ方向となる第1のノード及び第2のノードを有する第1のスピントランジスタと、
磁化方向が互いに相反する方向となる第3のノード及び第4のノードを有する第2のスピントランジスタと、
を直列に接続した回路を含む集積回路。
【請求項2】
前記第1のスピントランジスタは、第1のゲート電極を有し、
前記第2のスピントランジスタは、第2のゲート電極を有し、
前記第1のノードは、第1の電圧が供給され、
前記第3のノードは、第2の電圧が供給され、
前記第1及び第2のゲート電極は、電気的に接続され、
前記第2のノード及び前記第4のノードは、電気的に接続される請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記第3のノード及び前記第4のノードのうち、前記第1のノード及び前記第2のノードの磁化方向と相反する磁化方向を有するノードは、前記第1のノード及び前記第2のノードと異なる体積を有し、
前記第3のノード及び前記第4のノードのうち、前記第1のノード及び前記第2のノードの磁化方向と同じ磁化方向を有する領域は、前記第1のノード及び前記第2のノードと同じ体積を有する請求項1又は2に記載の集積回路。
【請求項4】
前記第2のノード及び前記第4のノードは同一の領域である請求項1に記載の集積回路。
【請求項5】
前記第3のノードは、前記第1のノード及び前記同一の領域と異なる体積を有する請求項4に記載の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−69757(P2012−69757A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213585(P2010−213585)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】