説明

離型シート用樹脂組成物、離型シート及びそれを用いたフレキシブルプリント回路基板若しくはプリプレグの製造方法

【課題】本発明は、加熱板による荷重を掛けてフレキシブルプリント回路基板に対してカバーレイフィルムを積み重ねるとき、又は加熱板による荷重を掛けてプリプレグを成形するとき、このカバーレイフィルム若しくはプリプレグが加熱板から剥がれ易いようにするための、且つ上記に引き続く後工程での取り扱い時や成形加工時に脆くて割れることのない特徴を有する離型シートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る離型シート用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂とエチレン・α‐オレフィン共重合体からなる樹脂混合物において、環状オレフィン系樹脂のガラス転移点が100〜250℃であり、樹脂混合物の熱機械分析によって得られた温度‐歪曲線での歪量が0〜12%の範囲における該温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度が140〜200℃であり、離型シートは離型シート用樹脂組成物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シート用樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、フレキシブルプリント回路基板(以下、FPCとも記載する。)及びプリプレグ等各種複合材製造時に使用される離型シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路のプリント回路基板は、その配線に銅や銀等の金属を用いるため、微細な配線が金属腐食することがある。そのためカバーレイフィルムを加熱圧着したり、樹脂溶液の塗装乾燥膜を用いたりすることで、空気中の水蒸気や微量酸性物質の浸入を防いでいる。
【0003】
カバーレイフィルムはフレキシブルプリント回路基板に好適に用いられ、上記の必要性状の他に、280℃程度で溶ける半田による配線作業にも耐える保護フィルムとして効果があり、また埃避けとしても効果がある。一般的なカバーレイフィルムは、ポリイミドフィルム等の耐熱性フィルムの片面にエポキシ樹脂の接着層を配する構成である。
【0004】
カバーレイフィルムをフレキシブルプリント回路基板に加熱圧着するとき、カバーレイフィルムの端部又はビアホール(via hole)からエポキシ樹脂が滲出して、加熱板に接着して剥がし難くなることがある。そこで、加熱板とカバーレイフィルムとの間に離型シートを挟んで加熱加圧することにより、カバーレイフィルムと加熱板の接着を防止する方法が知られている。若しくは、カバーレイフィルムの積層構成としてフレキシブルプリント回路基板接触側に離型シートを配することもある。またエポキシ樹脂製プリプレグを加熱プレス成形する際にも、成形型とプリプレグとの接着を防ぐために離型シートが使用されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
また、プリプレグ等の複合材を乗用車のバンパーや家具等の外装材に使用する際に、その表面に装飾のための細かい凹凸(以下、「しぼ」ともいう。)を付与する目的で、表面を粗くした離型シートが使用される場合がある。
【0006】
これらの用途に用いられる離型シートとして、従来から用いられているフッ素系フィルムは耐熱性、離型性、非汚染性には優れているが、高価である上、使用後の廃棄焼却処理において燃焼し難く、かつ、有毒ガスを発生するという問題点があった。
【0007】
一方、環状オレフィン系樹脂が優れた剥離性状を示すことが知られている。例えば、使用後に剥離しやすい表面保護フィルムへの利用(例えば、特許文献2を参照。)が開示されており、離型シートへの利用も提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、環状オレフィン系樹脂とエチレン・α‐オレフィン共重合体との混合樹脂組成物を利用して、フィルムや容器の耐熱性、耐衝撃性を改善させる提案も開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【特許文献1】特開2006‐257399号公報
【特許文献2】特許第3596901号
【特許文献3】特表2005‐525952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フレキシブルプリント回路基板の表面は回路の配線による凹凸があるため、加熱圧着されたカバーレイフィルムの表面に凹凸を生じる。したがって、加熱された離型シートは軟化してカバーレイフィルムのこの凹凸に食い込むように変形する。
【0009】
この結果、フレキシブルプリント回路基板の製造後工程において、カバーレイフィルムから離型シートを剥がすとき、離型シートがこの凹凸に引っ掛かることで局所的な伸びや千切れを生じて離型シートを均一に剥がすことができないことがある。同様に、プリプレグを加熱成形する工程においてプリプレグの表面に凹凸がある場合、加熱成形に用いた離型シートを剥がすとき、離型シートがこの凹凸に引っ掛かることで局所的な伸びや千切れを生じて、離型シートを均一に剥がすことができないことがある。
【0010】
そこで、本発明は、加熱板による荷重を掛けてフレキシブルプリント回路基板に対してカバーレイフィルムを積み重ねるとき、又は加熱板による荷重を掛けてプリプレグを成形するとき、このカバーレイフィルム若しくはプリプレグが加熱板から剥がれ易いようにするための、且つ上記に引き続く後工程での取り扱い時や成形加工時に脆くて割れることのない特徴を有する離型シートに用いる樹脂組成物、該樹脂組成物からなる離型シートを提供することを目的とする。
【0011】
さらに、フレキシブルプリント回路基板へのカバーレイフィルムの加熱圧着若しくはプリプレグを加熱成形する工程において、その後工程で均一に剥がしやすい離型シートを用いたフレキシブルプリント回路基板若しくはプリプレグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る離型シート用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂とエチレン・α‐オレフィン共重合体からなる樹脂混合物において、前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)が100〜250℃であり、前記樹脂混合物の熱機械分析(TMA)によって得られた温度‐歪曲線での歪量が0〜12%の範囲における該温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度が140〜200℃であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る離型シートは、樹脂成分として本発明に係る離型シート用樹脂組成物からなることを特徴とする。本発明に係る離型シートは、樹脂成分として本発明に係る離型シート用樹脂組成物のみからなり、他の配合成分として無機粉末、酸化防止剤、安定剤、顔料等の添加剤を配合する場合が含まれる。以下、離型シート用樹脂組成物からなる離型シートは、樹脂成分ではない成分を配合している場合も含むものとする。
【0014】
本発明に係る離型シートでは、樹脂成分として前記離型シート用樹脂組成物からなる層を少なくとも一つの表面層に有する場合が含まれる。
【0015】
本発明に係る離型シートでは、樹脂成分として前記離型シート用樹脂組成物からなる表面層を除く層の少なくとも一層が、エチレン・α‐オレフィン共重合体の層である場合が含まれる。
【0016】
本発明に係る離型シートでは、実質的に未延伸であり、かつ、前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体の結晶融解温度での最大収縮率が20%未満であることが好ましい。収縮が少なければ加熱時にカバーレイフィルム若しくはプリプレグ等の対象物に不要な応力を与えることがない。
【0017】
本発明に係る離型シートでは、前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体は、α‐オレフィンの有する炭素数が6〜12のいずれか一種の共重合体であるか、或いは該共重合体の組合せであることが好ましい。離型シートに必要な機械的強度と耐熱性を得ることができる。
【0018】
本発明に係る離型シートでは、前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体は、α‐オレフィンがヘキセン若しくはオクテンの共重合体であることが好ましい。エチレン・α‐オレフィン共重合体のコモノマーα‐オレフィンが1‐ヘキセン又は1‐オクテンにおいては、環状オレフィン系樹脂への溶融分散性に優れるため、シート乃至フィルムへの成形加工性が優れ、その機械的強度も大きくなる。また、この離型シートの樹脂組成物から環状オレフィン系樹脂は析出し難いので、汚染の原因とならない。更に、これらエチレン・α‐オレフィン共重合体は表面エネルギーが小さいため離型性を維持できる。
【0019】
本発明に係る離型シートでは、前記離型シート用樹脂組成物の環状オレフィン系樹脂が、エチレン・ノルボルネン共重合体であることが好ましい。エチレン・ノルボルネン共重合体は、ノルボルネンのモル分率を高めることにより高いTgを得ることが容易である。
【0020】
本発明に係る離型シートでは、樹脂成分として前記離型シート用樹脂組成物からなるシート面は、カバーレイフィルム若しくはプリプレグの表面に重ねて、200℃の加熱板で圧力10MPaにて30分間加圧した後、23℃の雰囲気に戻したとき、前記シート面が前記カバーレイフィルム若しくは前記プリプレグの表面と接着していない離型性を有することが好ましい。この結果、加熱加圧の後工程において離型シートが伸びや千切れを生じることなく均一に剥がすことができる。
【0021】
本発明に係る離型シートでは、前記カバーレイフィルム若しくは前記プリプレグの表面が凹凸を有するときに前記シート面が前記離型性を有することが好ましい。凹凸に離型シートが引っ掛った場合においても、加熱加圧の後工程において離型シートが伸びや千切れを生じることなく均一に剥がすことができる。
【0022】
本発明に係る離型シートでは、前記カバーレイフィルム若しくは前記プリプレグがエポキシ樹脂からなるときに前記シート面が前記離型性を有することが好ましい。エポキシ樹脂面に対する加熱加圧の後工程において離型シートが局所的な伸びや千切れを生じることなく均一に剥がすことができる。
【0023】
本発明に係る離型シートでは、少なくとも一つの表面が凹凸を有することが好ましい。シート表面に凹凸があると、プリプレグ等の複合材を外装材に使用する場合に、離型シートによって外装材に「しぼ」を付与できる。また、カバーレイフィルム又はプリプレグに離型シートを被せるときに対象物に付着しにくくなり、離型シートをずらすことによって被せる位置の微調整を容易に行えるため作業性が向上する。さらに、表面の凹凸によって離型シートと対象物との接触面積が小さくなるため加熱加圧後の剥離性が向上する。
【0024】
本発明に係る離型シートでは、少なくとも一つの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以上2.0μm以下であることが好ましい。対象物への「しぼ」の付与に適した凹凸の範囲であり、且つ、離型シートの作業性も向上する。
【0025】
本発明に係る離型シートでは、前記離型シート用樹脂組成物100質量部に対して、平均粒子径が1μm以上10μm未満の無機粉末を3質量部以上20質量部以下配合してなる樹脂組成物からなることが好ましい。離型シートの強度と柔軟性を損なわずに、シート表面に十分な凹凸を付与することができる。
【0026】
本発明に係る離型シートでは、前記無機粉末が炭酸カルシウムであることが好ましい。廉価な炭酸カルシウムを使用することによって離型シートを廉価に提供でき、且つ、加熱時に対象物を汚染する可能性のあるガスの発生がない。
【0027】
本発明に係るフレキシブルプリント回路基板若しくはプリプレグの製造方法は、フレキシブルプリント回路基板若しくはプリプレグを加熱成形する工程において、本発明に係る離型シートを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る離型シート用樹脂組成物からなる離型シート、さらには該樹脂組成物からなる層を表面層に配した多層の離型シートは、加熱板による荷重を掛けてフレキシブルプリント回路基板に対してカバーレイフィルムを積み重ねるとき、又は加熱板による荷重を掛けてプリプレグを成形するとき、このカバーレイフィルム若しくはプリプレグが加熱板から剥がれ易く、且つ上記に引き続く後工程での取り扱い時や成形加工時に脆くて割れることがなく均一に剥がしやすいという効果を有する。さらには本発明に係るフレキシブルプリント回路基板若しくはプリプレグの製造方法は、本発明に係る離型シートを用いることにより上記の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明について実施形態を示して詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0030】
本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(以下、COCとも記載する。)とエチレン・α‐オレフィン共重合体(以下、EOとも記載する。)からなる樹脂混合物において、環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)が100〜250℃であり、前記樹脂混合物の熱機械分析(TMA)によって得られた温度‐歪曲線での歪量が0〜12%の範囲における該温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度が140〜200℃である。
【0031】
環状オレフィン系樹脂(Cyclic Olefin Copolymer)とは、α‐オレフィンと環状オレフィン類とを付加重合してなる共重合体、環状オレフィン類を開環重合してなる重合体、その開環共重合体、並びにこれらの水素添加物である。
【0032】
環状オレフィン類は、環状オレフィン又は環状ジエンである。環状オレフィンの具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン等の1環の環状オレフィン;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン(慣用名:ノルボルネン)、5‐メチル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5,5‐ジメチル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐エチル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐ブチル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐エチリデン‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐ヘキシル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐オクチル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐オクタデシル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐メチリデン‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐ビニル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐プロペニル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン等の2環の環状オレフィン;
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ‐3,7‐ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ‐3‐エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ‐3,7‐ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ‐3,8‐ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ‐3‐エン、5‐シクロペンチル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐シクロヘキシル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エン、5‐フェニル‐ビシクロ[2.2.1]ヘプタ‐2‐エンといった3環の環状オレフィン;
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8‐メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐プロペニル‐テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エンといった4環の環状オレフィン;
8‐シクロペンチル‐テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐シクロヘキシル‐テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐シクロヘキセニル‐テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン、8‐フェニル‐シクロペンチル‐テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ‐3‐エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ‐4,9,11,13‐テトラエン(1,4‐メタノ‐1,4,4a,9a‐テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ‐5,10,12,14‐テトラエン(1,4‐メタノ‐1,4,4a,5,10,10a‐へキサヒドロアントラセンともいう)、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]‐4‐ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]‐4‐ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]‐4‐ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]‐5‐エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]‐14‐エイコセン、シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンが挙げられる。
【0033】
これらの環状オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0034】
環状ジエンの具体例としては、1,3‐シクロブタジエン、1,3‐シクロペンタジエン、1,3‐シクロヘキサジエン、1,4‐シクロヘキサジエン、1,3‐シクロヘプタジエン、1,4‐シクロヘプタジエン、1,3‐シクロオクタジエン、1,3,5‐シクロオクタトリエン、1,4‐シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン等を挙げることができる。
【0035】
なお、環状ジエンは少なくとも2個の二重結合を有しておればよく、例えば環状トリエン等も包含される。
【0036】
環状オレフィン類との共重合を行うα‐オレフィン具体例としては、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐へキセン、3‐メチル‐1‐ブテン、3‐メチル‐1‐ペンテン、3‐エチル‐1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐ペンテン、4‐メチル‐1‐へキセン、4,4‐ジメチル‐1‐ヘキセン、4,4‐ジメチル‐1‐ペンテン、4‐エチル‐1‐へキセン、3‐エチル‐1‐ヘキセン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐テトラデセン、1‐ヘキサデセン、1‐オクタデセン、1‐エイコセン等の炭素数2〜20であり、好ましくは炭素数2〜8のエチレン又はα‐オレフィン、特に好ましくはエチレンである。
【0037】
なお、環状オレフィン系樹脂として、環状ジエン・α‐オレフィン共重合体の製造を行う場合、共重合体中におけるα‐オレフィン単位の割合を0.1〜80モル%とすることが耐熱性の点で好ましい。
【0038】
これらのα‐オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組合せて使用することができる。
【0039】
環状オレフィンの開環重合又は環状オレフィンとα‐オレフィンとの付加重合の方法及び得られた重合体の水素添加方法には、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0040】
本実施形態の離型シートに使用される環状オレフィン系樹脂は、好ましくは、エチレンとノルボルネンの付加共重合体である。このエチレン・ノルボルネン共重合体は、ノルボルネンのモル分率を高めることにより高いTgを得ることができる。
【0041】
このような環状オレフィン系樹脂の構造は、特に制限はされず、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、このような環状オレフィン系樹脂の分子量としては、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)分析による数平均分子量が0.5万〜30万、好ましくは1万〜15万、さらに好ましくは1.5万〜10万である。数平均分子量が低すぎると機械的強度が低下し、高すぎると成形加工性が悪くなる傾向にある。
【0042】
本実施形態で使用する環状オレフィン系樹脂のTgは100℃〜250℃、より好ましくは130℃〜250℃、特に好ましくは170℃〜240℃である。Tgが高いほど高温でのフィルム形状の保持性が高く、且つ、金属面から剥離し易く離型性に優れるが、Tgが250℃を超えると、後工程での取り扱いや成形加工時に脆くて割れてしまい商品価値を失うので好ましくない。一方、Tgが100℃未満であると、加熱加圧時にフィルムの変形を生じ、且つ、カバーレイフィルム、プリプレグ、FPC、金型等から剥離し易く、離型シートとしての実用に適さない。また、Tgの異なる環状オレフィン系樹脂を2種類以上組合せて使用することもできる。
【0043】
本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物を得るために、前記環状オレフィン系樹脂と混合されるエチレン・α‐オレフィン共重合体の共重合に供されるα‐オレフィンの具体例としては、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン、1‐デセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ブタジエン、1,5‐ヘキサジエン、1,4‐ヘキサジエン、1,4‐ペンタジエン等である。また、これら2種以上のα‐オレフィンを混合してエチレンとの共重合に用いることも出来る。
【0044】
本実施形態に係る離型シートでは、前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体は、α‐オレフィンの有する炭素数が6〜12のいずれか一種の共重合体であるか、或いはこれらの共重合体の組合せであることが好ましく、さらに、α‐オレフィンがヘキセン若しくはオクテンの共重合体であることがより好ましい。離型シートに必要な機械的強度と耐熱性がより向上させることができる。
【0045】
また、本実施形態で使用するエチレン・α‐オレフィン共重合体中の単量体のモル分率には特に制限はないが、好ましくはエチレン単量体/α‐オレフィン単量体=10000〜0.5であり、更に好ましくは1000〜10である。
【0046】
また、前記エチレン・α‐オレフィン共重合体が達成し得る密度範囲の下限は、800kg/mまで可能であり、好ましくは890〜940kg/mの範囲で使用される。エチレン・α‐オレフィン共重合体の重合に際しては、オレフィン重合用均一系触媒としてカミンスキー触媒(メタロセン/メチルアルミノキサン)を用いることが知られている。また、メタロセン触媒を用いることで、効率良くエチレン・α‐オレフィン共重合体を重合できることも知られている。メタロセン触媒は、例えば、下記(化1)
【0047】
【化1】

((化1)中、Mは、Ti、Zr、Hfのいずれかの遷移金属を意味する。X1及びX2 は、互いに同じでも異なってもよく、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、又は、アルキルシリル基、ハロゲン原子を意味する。R1、R2、R3、R6、R7は、水素原子、炭素原子数1から10の炭化水素基、アルキルシリル基を意味し、R1、R2のうちどちらか一方は水素原子でない。また、R4、R5は、炭素数1から10の炭化水素基又は、アルキルシリル基、を意味し、互いに結合して環を形成してもよい。Yは、炭素原子又は、ケイ素原子又は、ゲルマニウム原子を意味する。式中nは、1から3の整数を示す。)で表わすことが出来る。このうち、(化1)のYが炭素原子であるメタロセン化合物であることが好ましい。また、(化1)のR4、R5が互いに結合して環を形成するインデニル環であることが好ましい。
【0048】
本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂とエチレン・α‐オレフィン共重合体からなる。各樹脂の配合割合は特に制限はないが、エチレン・α‐オレフィン共重合体の配合割合は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対し、好ましくは1〜100質量部、更に好ましくは3〜50質量部、特に好ましくは5〜25質量部である。エチレン・α‐オレフィン共重合体の配合割合が100質量部を超えると、離型シートの剥離性と耐熱性が悪くなる傾向にある。一方、α‐オレフィン共重合体の配合割合が1質量部に満たない場合、離型シートの剥離時に伸びや千切れを生じ易くなる傾向にある。更に、エチレン・α‐オレフィン共重合体が1質量部未満では、環状オレフィン系樹脂がゲル化し易くなり、その押出成形フィルムの表面平滑性が損なわれる。また、本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物には、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ、酸化金属等の粉末を適宜混合することができる。また更に、本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物には、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤、有機顔料、無機顔料、界面活性剤、カップリング剤、あるいはステアリン酸カルシウム等の脂肪酸の金属塩等の添加剤を、本発明の課題を阻害しない範囲で適宜配合することができる。
【0049】
本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物は、樹脂混合物の熱機械分析(TMA)によって得られた温度‐歪曲線での歪量が0〜12%の範囲における該温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度が140〜200℃、好ましくは160〜180℃である。ここで、熱機械分析(TMA:Thermal Mechanical Analysis)について説明する。熱機械分析(TMA)は、JIS:K7115(プラスチック‐クリープ特性の試験方法‐第1部:引張クリープ)に準じる引張試験用治具を備えた熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ社製 商品名称Thermal Mechanical Analyzer TMA‐SS6100型)を用いた。
【0050】
熱機械分析(TMA)に供する樹脂組成物は、所定の厚さのシートに成形したものから短冊状に切り出して引張試験用試料片とする。このときシートの横断方向(TD)に引張加重が加わるように試料片を切り出す。シートの成形方向(MD)を引張試験の方向とすると熱機械分析(TMA)の測定結果が安定しない。成形時の巻き取りにともないシートの成形方向には不均一な延伸が生じるためである。また、一般に合成樹脂の混合物を押出成形フィルムにするとき、シートの成形方向(MD)に対して流動配向して連続相を生じるので、シートの成形方向(MD)の熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度が、シートの横断方向(TD)の前記最大ピーク位置の温度よりも0〜20℃だけ大きくなることがある。そこで、シートの横断方向(TD)の温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度を用いる。
【0051】
この引張試験用試料片を前記熱機械分析装置の引張試験用治具に取り付け、一定荷重での歪みの温度依存性を温度‐歪曲線として測定し、その二次微分曲線を求めた。該二次微分曲線の最大ピークには、試料片がメルトダウン(試料片が高温になり原型を留めずに融けてしまうことをいう。)して破断に至る前における軟化によって発生するピークと、メルトダウンして破断に至るときに発生するピークがある。メルトダウンによる熱機械分析装置の損傷を防ぐため、歪量が所定量に達する測定を停止する機構が一般に使用されている。そこでメルトダウンにより生ずるピークを除外し、試料片の軟化時の強度特性を得るため、熱機械分析(TMA)によって得られた温度‐歪曲線での歪量が0〜12%の範囲における該温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度を求めた。
【0052】
熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線において、縦軸は試料片の歪であり、TMA(%)で表示した。また横軸は温度(℃)である。熱機械分析(TMA)で得られた温度‐歪曲線において、温度に対する歪の変化率は温度をTとすると、一次微分曲線として(数1)で表せられる。
(数1) 歪の変化率=(d(TMA)/dT)
(数1)を、さらに温度により微分したものが、DTMA(Delivative TMA)と呼ばれる熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線であり、(数2)により表せられる。
(数2) DTMA=d(TMA)/dT
なおDTMAは、温度‐歪曲線において生じた変曲点をピークとして的確にとらえることを目的としている。
【0053】
熱機械分析(TMA)によって得られた温度‐歪曲線での歪量が0〜12%の範囲における該温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度は、軟化しても伸び難いという耐クリープ特性を示す尺度となるものであり、前記最大ピーク位置の温度が140〜200℃の範囲にある前記樹脂組成物からなる離型シート若しくは前記樹脂組成物からなる表面層を有する離型シートは、加熱板から剥がれ易く、且つ、後工程においてフレキシブルプリント回路基板やプリプレグから離型シートを剥がすとき、離型シートが凹凸に引っ掛かることによる局所的な伸びや千切れを生じることのない充分な耐クリープ特性を有しているので、均一に剥がすことができる。
【0054】
なお前記最大ピーク位置の温度が140℃未満の場合は、加熱板との剥離性が悪くなり、また200℃を超える場合は脆くなり、剥がすときに千切れを生ずる傾向がある。
【0055】
本実施形態に係る離型シートは前記離型シート用樹脂組成物からなり、その相加平均厚みは、好ましくは20〜150μm、より好ましくは30〜80μmである。薄すぎると離型シートの強度が不足して破れ易くなる傾向にある。他方、厚すぎると離型シートの柔軟性が損なわれてカバーレイフィルムやプリプレグ等の対象物との密着性が悪くなる傾向にある。
【0056】
また、前記離型シート用樹脂組成物からなる層を少なくとも一つの表面層に有する多層の離型シートであってもよいが、この場合、前記表面層の相加平均厚みは、3〜150μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。なお、このような多層の離型シートの全体の厚みは、20〜500μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0057】
表面層とした離型シート用樹脂組成物の厚みが薄すぎると、表面層が破れ易くなり、結果として中間層の樹脂がカバーレイフィルムやプリプレグ等の対象物と接着する不都合が生じる。他方、厚すぎるとフィルムの柔軟性が損なわれて、カバーレイフィルムやプリプレグ等の対象物との密着性が悪くなる傾向にある。
【0058】
本実施形態に係る離型シートの表面に凹凸を付与する場合、その平均算術粗さ(Ra)は、好ましくは0.5μm以上2.0μm以下、更に好ましくは0.7μm以上1.5μm以下である。シート表面の平均算術粗さ(Ra)が0.5μm未満であると凹凸が不足し、対象物に十分な「しぼ」を与えることができない。また、凹凸による対象物との接触面積の低減が少ないため、対象物に被せた離型シートの位置をずらして調整することが困難となり、作業性の改善効果が十分に得られない場合がある。一方、2.0μmより大きいと、シートを使用する工程においてシートの縁部を機械的にチャッキングして移動するときに外れ易くなる場合がある。
【0059】
本実施形態に係る離型シートの表面に凹凸を付与する方法には、定法として凹凸を付けたローラーによって離型シートを加熱加圧するローラー加工があるが、離型シート用樹脂組成物に無機粉末を配合して、シート表面に凹凸を付与することもできる。無機粉末を配合する場合、その配合率は、離型シート用樹脂組成物100質量部に対し、好ましくは3質量部以上20質量部以下、更に好ましくは5質量部以上20質量部以下、特に好ましくは5質量部以上10質量部未満である。無機粉末の配合率によってシート表面の凹凸を制御できるが、配合率が20質量部を超えるとシートを使用する工程においてシートの縁部を機械的にチャッキングして移動するときに外れ易くなる場合がある。さらに配合率が高くなるとシートの柔軟性が損なわれ、シートが成形できない場合がある。一方、配合率が3質量部未満ではシート表面の凹凸が不足する。
【0060】
また、無機粉末の配合率が20質量部以下の場合、離型シート用樹脂組成物の熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークを示す温度に対する影響は殆ど認められない。
【0061】
本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物に無機粉末を配合して、シート表面に凹凸を付与する場合、無機粉末の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm未満、更に好ましくは3μm以上8μm未満、特に好ましくは4μm以上7μm未満である。平均粒子径が10μm以上ではシートが裂け易くハンドリング性が損なわれ、1μm未満ではシート表面の凹凸が不足する。平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって求めた粒度分布の累積50%点であるメジアン径である。
【0062】
本実施形態に係る離型シート用樹脂組成物に無機粉末を配合してシート表面に凹凸を付与する場合、無機粉末は炭酸カルシウムであることが好ましい。加熱時にフレキシブル回路基板等の対象物を汚染する可能性のあるガスを発生するおそれがなく、且つ、廉価な炭酸カルシウムを使用することによって、離型シートを廉価に提供できる。炭酸カルシウム粉末は、粒径が好ましい範囲であれば重質炭酸カルシウム又は軽質炭酸カルシウムによらず用いることができる。
【0063】
本実施形態に係る多層の離型シートでは、前記離型シート用樹脂組成物からなる表面層を除く層の少なくとも一層が、エチレン・α‐オレフィン共重合体の層としてもよい。エチレン・α‐オレフィン共重合体の層は、離型シートの使用温度で離型シートに柔軟性とクッション性をより付与する効果があり、加熱加圧時にカバーレイフィルム若しくはプリプレグ等の対象物に不要な応力を与えることがない。
【0064】
本実施形態に係る離型シートでは、実質的に未延伸であり、かつ、前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体の結晶融解温度での最大収縮率が20%未満であることが好ましく、より好ましくは10%未満であり、特に好ましくは5%未満である。実質的に未延伸とは、シートの押出成形時に積極的に延伸させないようにすることであり、一般にシートの押出成形では、積極的に延伸操作を加えない場合でも成形にともないシートにはその成形方向に最大20%の流動配向を生じる。本実施形態に係る離型シートは、樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体の結晶融解温度において収縮が最大となる。この最大収縮率は小さいほど好ましいが、一般に20%未満であれば、加熱加圧時にカバーレイフィルム若しくはプリプレグ等の対象物に与える応力は小さく、離型シートとして好適である。
【0065】
本実施形態に係る離型シートを使用することにより、カバーレイフィルム若しくはプリプレグへの加熱加圧後において、離型シートは剥離し易く、特に、カバーレイフィルム若しくはプリプレグの表面が凹凸を有するときに、凹凸に離型シートが引っ掛った場合においても、離型シートに伸びや千切れを生じることなく均一に剥がすことができる。なお加熱加圧の条件として、カバーレイフィルム若しくはプリプレグの表面に重ねて、200℃の加熱板で圧力10MPaにて30分間加圧した後、23℃の雰囲気に戻したときに、前記シート面が前記カバーレイフィルム若しくは前記プリプレグの表面と接着していない程度の離型性を有することができる。
【0066】
本実施形態に係る離型シートは、カバーレイフィルム若しくはプリプレグがエポキシ樹脂からなるときに、前記と同様の離型性を有することができる。エポキシ樹脂からなるカバーレイフィルムには、加熱板との接触側をポリイミドとした積層構成にしたものがあるが、この場合もフレキシブルプリント回路基板の端子に対応した端子穴が該カバーレイフィルムに設けられているため、加熱加圧時に溶融したエポキシ樹脂が端子穴より滲出して離型シートに直接接触する。このときに本実施形態に係る離型シートは接着することがなく、局所的な伸びや千切れを生じることもなく容易に剥離できる利点を有する。
【0067】
本実施形態に係る離型シートは、フレキシブルプリント回路基板へのカバーレイフィルムの加熱圧着若しくはプリプレグの加熱成形に使用することにより、後工程で離型シートの不均一な剥離に起因する工程上の障害、例えば、フレキシブルプリント回路基板やプリプレグに離型フィルムに起因するダストの付着をなくすことができ、より高い品質の向上に寄与できる。
【実施例】
【0068】
次に実施例を示して、本発明を更に詳細に説明する。
【0069】
(実施例1)
<離型シート用樹脂組成物の製造>
環状オレフィン系樹脂(ポリプラスチックス社製、Tg180℃)を97質量%、エチレン・α‐オレフィン共重合体として、エチレン・1‐オクテン共重合体(ダウケミカル社製、商品名称エンゲージ、結晶融解温度55℃)を3質量%の比率で、二軸スクリュー押出機に供給して混合し、その後ペレタイザーによりペレット化して、離型シート用樹脂組成物を得た。
【0070】
<離型シートの製造>
上記離型シート用樹脂組成物のペレットを単軸スクリュー押出機に供給して、リップクリアランス0.9mmのT型ダイスから溶融樹脂を押し出しし、冷却ロールで冷却し、相加平均厚み60μmの離型シートを得た。
【0071】
<熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分ピークが示す最高温度の測定>
熱機械分析(TMA)は、JIS:K7115(プラスチック‐クリープ特性の試験方法‐第1部:引張クリープ)に準じる引張試験用治具を備えた熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ社製 商品名称Thermal Mechanical Analyzer TMA‐SS6100型)を用いた。引張試験に供した試験片(長さ20mm、幅3mm)は、離型シートの横断方向(TD)を、試験片の長さ方向として切り出し、長さ方向に引張荷重(試験片の厚み1μm当り1mNの比率で荷重を設定した。)を加え、10℃/分の速度で昇温し、試験片が軟化して歪量が12%をとなるまでの温度‐歪曲線を求めた。この温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置が示す温度を求めた結果、174℃であった。
【0072】
(実施例2)
環状オレフィン系樹脂の比率を95質量%、エチレン・1‐オクテン共重合体の比率を5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは50μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は175℃であった。
【0073】
(実施例3)
環状オレフィン系樹脂の比率を70質量%、エチレン・1‐オクテン共重合体の比率を30質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例3の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは55μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は173℃であった。
【0074】
(比較例1)
環状オレフィン系樹脂の比率を50質量%、エチレン・1‐オクテン共重合体の比率を50質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の離型シートを得た。実離型シートの相加平均厚みは55μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は75℃であった。
【0075】
(実施例4)
混合するエチレン・α‐オレフィン共重合体を、エチレン・1‐ブテン‐1‐ヘキセン共重合体(ダウケミカル社製、商品名称フレキソマー、結晶融解温度122℃)に変更し、環状オレフィン系樹脂の比率を95質量%、エチレン・1‐ヘキセン共重合体の比率を5質量%とした以外は、実施例1と同様にして実施例4の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは60μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は174℃であった。
【0076】
(実施例5)
環状オレフィン系樹脂の比率を80質量%、エチレン・1‐ブテン‐1‐へキセン共重合体の比率を20質量%に変更した以外は、実施例4と同様にして実施例5の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは60μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は173℃であった。
【0077】
(比較例2)
環状オレフィン系樹脂の比率を50質量%、エチレン・1‐ブテン‐1‐ヘキセン共重合体の比率を50質量%に変更した以外は、実施例4と同様にして比較例2の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは60μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は130℃であった。
【0078】
(実施例6)
混合するエチレン・α‐オレフィン共重合体を、エチレン・1‐オクテン共重合体(ダウケミカル社製、商品名称エンゲージ、結晶融解温度59℃)に変更し、環状オレフィン系樹脂の比率を80質量%、エチレン・1‐オクテン共重合体の比率を20質量%とした以外は、実施例1と同様にして実施例6の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは65μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は148℃であった。
【0079】
(実施例7)
混合するエチレン・α‐オレフィンを、エチレン・1‐オクテン共重合体(ダウケミカル社製、商品名称エンゲージ、結晶融解温度60℃)に変更し、環状オレフィン系樹脂の比率を80質量%、エチレン・1‐オクテン共重合体の比率を20質量%とした以外は、実施例1と同様にして実施例7の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは60μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は173℃であった。
【0080】
(比較例3)
混合するエチレン・α‐オレフィン共重合体を、エチレン・1‐ブテン共重合体(三井化学社製、商品名称ビューロン、結晶融解温度80℃)に変更し、環状オレフィン系樹脂の比率を80質量%、エチレン・1‐ブテン共重合体の比率を20質量%とした以外は、実施例1と同様にして比較例3の離型シートを製膜しようとしたが、混合樹脂の分散と樹脂の厚さが不均一のため、離型性と熱機械分析(TMA)を評価できるシートは得られなかった。
【0081】
(比較例4)
環状オレフィン系樹脂(ポリプラスチックス社製、Tg180℃)を80質量%、高密
度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名称ノバテックHY530、結晶融解温度135℃)を20質量%の比率で、二軸スクリュー押出機に供給して混合し、その後ペレタイザーによりペレット化して離型シート用樹脂組成物を得た以外は、実施例1と同様にして比較例4の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは50μmであった。また熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度の測定値は173℃であった。
【0082】
(実施例8)
環状オレフィン系樹脂の比率を80質量%、エチレン・1‐オクテン共重合体の比率を20質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして実施例8の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは50μmであった。また、熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークを示す温度は175℃であった。
【0083】
(実施例9)
<離型シート用樹脂組成物の製造>
環状オレフィン系樹脂(ポリプラスチックス社製、Tg180℃)を80質量%、エチ
レン・1‐オクテン共重合体(ダウケミカル社製、商品名称エンゲージ、結晶融解温度55℃)を20質量%と、この環状オレフィン系樹脂とエチレン・1‐オクテン共重合体の質量の合計100質量部に対して、5質量部の重質炭酸カルシウム粉末(竹原化学工業社製、商品名称SL−100、平均粒子径6.0μm)とを混合し、二軸スクリュー押出機に供給して混合し、その後ペレタイザーによりペレット化して、離型シート用樹脂組成物を得た。
【0084】
<離型シートの製造>
実施例1と同様の方法で実施例9の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは50μmであった。また、熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークを示す温度は175℃であった。
【0085】
(実施例10)
重質炭酸カルシウム粉末の配合量を10質量部に変更した以外は、実施例9と同様にして実施例10の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは50μmであった。また、熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線のピークが示す温度の測定値は175℃であった。
【0086】
(実施例11)
重質炭酸カルシウム粉末の配合量を20質量部に変更した以外は、実施例9と同様にして実施例11の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚みは50μmであった。また、熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線のピークが示す温度の測定値は175℃であった。
【0087】
(実施例12)
粒子径を小さい重質炭酸カルシウム粉末(竹原化学工業社製、商品名称SL−700、
平均粒子径4.5μm)に変更した以外は、実施例10と同様にして実施例12の離型シートを得た。離型シートの相加平均厚み50μmであった。また、熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線のピークが示す温度の測定値は175℃であった。
【0088】
(比較例5)
重質炭酸カルシウム粉末の配合量を40質量部に変更した以外は、実施例9と同様にして離型シート用樹脂組成物を得た。実施例1と同様の方法で比較例5の離型シートを製膜しようとしたが、樹脂組成物が脆すぎて破断するために、離型性と熱機械分析(TMA)を評価できるシートは得られなかった。
【0089】
上記実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例2の熱機械分析(TMA)により得られた温度‐歪曲線とその二次微分曲線を、図1〜図3に示す。なお図1〜図3において、横軸は温度、左側の縦軸は歪であるTMA(%)を示す。また、右側の縦軸は、温度‐歪曲線における歪の二次微分値であるDTMA(%・℃−2)を示すが、最大ピーク位置が明確になるように温度−歪曲線との重なりを避けて、正の方向を下向きにした。
【0090】
上記実施例1〜実施例12、比較例1、比較例2及び比較例4で得られた離型シートを、回路による凹凸を有する各種フレキシブルプリント回路基板に対し、カバーレイフィルム(ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂接着剤層の積層フィルム)を加熱圧着する工程において使用した。この後工程において、離型シートがカバーレイフィルムから、伸びや千切れを生じることなく、均一に剥がすことができるかを観察した。
【0091】
その結果、実施例1〜実施例12の離型シートは、いずれも伸びや千切れを生じることなく、均一に剥がすことができた。一方、比較例1、比較例2及び比較例4は、カバーレイフィルムから剥がす際に、カバーレイフィルム表面の凹凸に引っ掛かり、伸び及び千切れを生じた。
【0092】
次に、実施例1〜実施例12、比較例1、比較例2及び比較例4につき、カバーレイフィルムの接着剤層であるエポキシ樹脂が、カバーレイフィルムの端子用開口部より加熱加圧時に滲出した時における離型シートの離型性(対エポキシ離型性)を、下記の評価方法で比較した。
【0093】
<対エポキシ離型性の評価方法>
離型性評価対象物として、熱硬化エポキシ樹脂とポリイミド樹脂を積層したカバーレイフィルムを2種類(ニッカン工業社製及び信越化学社製)、を使用した。実施例及び比較例の離型シートを、幅30mm、長さ100mmの寸法に切り出し、幅20mm、長さ80mmの寸法の前記カバーレイフィルムに重ねて、200℃、10MPa、30分間の加熱加圧を行った。なお加熱加圧時に滲出するエポキシ樹脂の離型性への影響を評価するため、カバーレイフィルムのエポキシ樹脂接着剤層の面と離型シートと接するようにした。加熱加圧後、離型シートを前記カバーレイフィルムから人手により剥がし、以下の基準による離型性の判定を行った。
【0094】
<離型性の判定方法>
◎ :殆ど接着していない。
○ :容易に剥がれる。
△ :力を加えれば剥がれる。(実用上は問題ない下限レベル)
× :剥がれない(強く接着しているため、実用上問題あり)。
【0095】
上記と同様に、実施例1〜実施例12、比較例1、比較例2及び比較例4につき、フレキシブルプリント回路基板の銅端子が、カバーレイフィルムの端子穴を通して直接離型シートに接触した場合の離型シートの離型性に与える影響をモデル試験により、対銅離型性として下記の評価方法で比較した。
【0096】
<対銅離型性の評価方法>
離型性評価対象物として、銅箔(福田金属箔粉工業社製、商品名称CF‐T9FZ‐SV、規格厚み18μm)を使用した。実施例及び比較例の離型シートを、幅30mm、長さ100mmの寸法に切り出し、幅20mm、長さ80mmの寸法の前記銅箔に重ねて、200℃、10MPa、30分間の加熱加圧を行った。なお銅箔は、平滑面と粗面(ブラウン化表面処理面)の二種類を使用した。加熱加圧後、離型シートを、前記銅箔から人手により剥がし、対エポキシ離型性評価における離型性の判定方法と同じ基準により離型性の判定を行った。
【0097】
さらに、上記と同様に、実施例1〜実施例12、比較例1、比較例2及び比較例4につき、エポキシ樹脂製プリプレグに対する離型性を下記の評価方法で比較した。
【0098】
<対プリプレグ離型性の評価方法>
離型性評価対象物として、プリプレグ(ガラス繊維使用エポキシ樹脂製プリプレグ、松下電工社製、規格厚み100μm)を使用した。実施例及び比較例の離型シートを、幅30mm、長さ100mmの寸法に切り出し、幅20mm、長さ80mmの寸法の前記プリプレグに重ねて、200℃、10MPa、30分の加熱加圧条件を設定して行った。加熱加圧後、離型シートを前記プリプレグから人手により剥がし、対エポキシ離型性評価における離型性の判定方法と同じ基準により離型性の判定を行った。
【0099】
実施例8〜実施例12につき、離型シート表面の算術平均粗さ(Ra)を下記の方法で測定した。
【0100】
<離型シート表面の算術平均粗さ(Ra)の測定方法>
実施例8〜12につき、表面粗さ測定器(東京精密社製、商品名称Surfcom)を用いて、離型シート表面のJIS:B0601(表面粗さ‐定義及び表示)に規定する算術平均粗さ(Ra)を測定した。測定条件は、カットオフ値0.25mm、評価長さ1.25mm、走査速度0.03mm/分である。
【0101】
以上、対エポキシ離型性、対銅離型性並びに対プリプレグ離型性の評価結果を、表1及び表2にまとめた。また離型シート表面の算術平均粗さ(Ra)の測定結果を表3に示した。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
脚注:
(1)ピーク温度:熱機械分析(TMA)における温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピークが示す温度
(2)COC:環状オレフィン樹脂、ポリプラスチックス社製、Tg180℃
(3)オクテンコポリマーA:エチレン・1‐オクテン共重合体、商品名称エンゲージ、ダウケミカル社製、Tm=55℃
(4)オクテンコポリマーB:エチレン・1‐オクテン共重合体、商品名称エンゲージ、ダウケミカル社製、Tm=59℃
(5)オクテンコポリマーC:エチレン・1‐オクテン共重合体、商品名称エンゲージ、ダウケミカル社製、Tm=60℃
(6)ヘキセンコポリマー:エチレン・1‐ブテン・1‐ヘキセン共重合体、商品名称フレキソマー、ダウケミカル社製、Tm=122℃
(7)ブテンコポリマー:エチレン・1‐ブテン共重合体、商品名称ビューロン、三井化学社製、Tm=80℃
(8)HDPE:高密度ポリエチレン、商品名称ノバパックHY530、日本ポリエチレン社製、Tm=135℃
(9)炭酸カルシウムA:重質炭酸カルシウム粉末、商品名称SL−100、竹原化学工業社製、平均粒子径=6.0μm
(10)炭酸カルシウムB:重質炭酸カルシウム粉末、商品名称SL−700、竹原化学工業社製、平均粒子径=4.5μm
【0106】
表1及び表2に示す評価結果より、対エポキシ離型性及び耐銅離型性評価試験に供した実施例の離型シートはいずれも、カバーレイフィルムの開口部から滲出するエポキシ樹脂からの離型性は良好であり、殆ど接着していないか、容易に剥がれるレベルであった。また対銅離型性については、特にブラウン化表面処理した粗面についてはやや接着がみられるものの、実用上は問題なく剥がすことのできるレベルであった。一方、比較例では、対エポキシ離型性については、実施例と同様にエポキシ樹脂への接着性は低く、表面に凹凸がない平面状のカバーレイフィルムに対する離型性の面では実用上の問題はなかったが、対銅離型性の評価では、粗面の銅箔に強く接着し、実用上問題があった。
【0107】
さらに表1及び表2に示すように、対プリプレグ離型性評価試験に供した実施例の離型シートは、実用上問題なく剥がすことのできる離型性を有していた。一方、比較例は、プリプレグに強く接着して剥離できないため、実用上問題があった。
【0108】
環状オレフィン系樹脂とエチレン・α‐オレフィン共重合体の組成を同一とした実施例8〜12について、炭酸カルシウム粉末の配合による離型シート表面の算術平均粗さ(Ra)の変化を比較した結果を表3に示す。実施例9〜実施例12では炭酸カルシウム粉末の配合によって離型シート表面に凹凸が付与され、離型シート表面の算術平均粗さ(Ra)は対象物に対して「しぼ」を付与するために適していた。また表2に示すように、無機粉末を配合していない実施例8の離型シートに比べて、無機粉末の配合によって離型シート表面の算術平均粗さ(Ra)を大きくした実施例9〜実施例12は粗面の銅及びプリプレグに対して離型性が向上し、さらに容易にはがすことができた。
【0109】
上記の結果からわかるように、各実施例は比較例に比べて、フレキシブルプリント回路基板へのカバーレイフィルムの加熱加圧後にカバーレイフィルム表面の凹凸への引っ掛かりによる伸びや千切れを生ぜず、また加熱加圧工程において想定されるエポキシ樹脂接着層との接触や、銅端子との接触においても離型性に優れており、またエポキシ製プリプレグへの加熱成形後の剥離性も優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例1〜3並びに比較例1に係る熱機械分析(TMA)により得られた温度‐歪曲線とその二次微分曲線であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3、(d)は比較例1である。実線は温度‐歪曲線を示し、点線は温度‐歪曲線の二次微分曲線とその最大ピーク位置(メルトダウンのピークは除いた。)の温度を示す。
【図2】実施例4、5並びに比較例2に係る熱機械分析(TMA)により得られた温度‐歪曲線とその二次微分曲線であり、(a)は実施例4、(b)は実施例5、(c)は比較例2である。実線は温度‐歪曲線を示し、点線は温度‐歪曲線の二次微分曲線とその最大ピーク位置(メルトダウンのピークは除いた。)の温度を示す。
【図3】実施例6及び7に係る熱機械分析(TMA)により得られた温度‐歪曲線とその二次微分曲線であり、(a)は実施例6、(b)は実施例7である。実線は温度‐歪曲線を示し、点線は温度‐歪曲線の二次微分曲線とその最大ピーク位置(メルトダウンのピークは除いた。)の温度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系樹脂とエチレン・α‐オレフィン共重合体からなる樹脂混合物において、前記環状オレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)が100〜250℃であり、前記樹脂混合物の熱機械分析(TMA)によって得られた温度‐歪曲線での歪量が0〜12%の範囲における該温度‐歪曲線の二次微分曲線の最大ピーク位置の温度が140〜200℃であることを特徴とする離型シート用樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂成分として請求項1に記載の離型シート用樹脂組成物からなることを特徴とする離型シート。
【請求項3】
樹脂成分として前記離型シート用樹脂組成物からなる層を少なくとも一つの表面層に有することを特徴とする請求項2に記載の離型シート。
【請求項4】
樹脂成分として前記離型シート用樹脂組成物からなる表面層を除く層の少なくとも一層が、エチレン・α‐オレフィン共重合体の層であることを特徴とする請求項3に記載の離型シート。
【請求項5】
実質的に未延伸であり、かつ、前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体の結晶融解温度での最大収縮率が20%未満であることを特徴とする請求項2、3又は4に記載の離型シート。
【請求項6】
前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体は、α‐オレフィンの有する炭素数が6〜12のいずれか一種の共重合体であるか、或いは該共重合体の組合せであることを特徴とする請求項2、3、4又は5に記載の離型シート。
【請求項7】
前記離型シート用樹脂組成物のエチレン・α‐オレフィン共重合体は、α‐オレフィンがヘキセン若しくはオクテンの共重合体であることを特徴とする請求項2、3、4、5又は6に記載の離型シート。
【請求項8】
前記離型シート用樹脂組成物の環状オレフィン系樹脂が、エチレン・ノルボルネン共重合体であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7に記載の離型シート。
【請求項9】
樹脂成分として前記離型シート用樹脂組成物からなるシート面は、カバーレイフィルム若しくはプリプレグの表面に重ねて、200℃の加熱板で圧力10MPaにて30分間加圧した後、23℃の雰囲気に戻したとき、前記シート面が前記カバーレイフィルム若しくは前記プリプレグの表面と接着していない離型性を有することを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7又は8に記載の離型シート。
【請求項10】
前記カバーレイフィルム若しくは前記プリプレグの表面が凹凸を有するときに前記シート面が前記離型性を有することを特徴とする請求項9に記載の離型シート。
【請求項11】
前記カバーレイフィルム若しくは前記プリプレグがエポキシ樹脂からなるときに前記シート面が前記離型性を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の離型シート。
【請求項12】
少なくとも一つの表面が凹凸を有することを特徴とする請求項2,3,4,5,6,7、8、9、10又は11に記載の離型シート。
【請求項13】
少なくとも一つの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項12に記載の離型シート。
【請求項14】
前記離型シート用樹脂組成物100質量部に対して、平均粒子径が1μm以上10μm未満の無機粉末を3質量部以上20質量部以下配合してなる樹脂組成物からなることを特徴とする請求項12又は13に記載の離型シート。
【請求項15】
前記無機粉末が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項14に記載の離型シート。
【請求項16】
フレキシブルプリント回路基板若しくはプリプレグを加熱成形する工程において、請求項2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12,13,14又は15に記載の離型シートを用いることを特徴とするフレキシブルプリント回路基板若しくはプリプレグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−231411(P2008−231411A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35324(P2008−35324)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】