説明

離型フィルム、積層離型フィルム及びそれらの製造方法

【課題】本発明は、耐熱性、離型性、非汚染性に優れた離型フィルム、該離型フィルムを表面層に有し、中間層樹脂フィルムがフィルム端面から流出し難い積層離型フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料からなることを特徴とする離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、離型性、非汚染性に優れた離型フィルム及び該離型フィルムを表面に有する積層離型フィルム並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、多層プリント配線基板等の製造工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムを介して銅張積層板又は銅箔を熱プレスする際に離型フィルムが使用されている。また、フレキシブルプリント基板の製造工程において、電気回路を形成したフレキシブルプリント基板本体に、熱硬化型接着剤によってカバーレイフィルムを熱プレス接着する際に、カバーレイフィルムとプレス熱板とが接着するのを防止するために、離型フィルムを用いる方法が広く行われている。更には、多層プリント配線基板の層間の立体配線に用いられるブラインドビアにも離型フィルムが使用されており、エポキシプリプレグを加熱プレス成形する際にも離型フィルムが使用されている。
【0003】
これらの用途に用いられる離型フィルムとしては、フッ素系フィルム、シリコン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられてきた。しかしながら、従来から離型フィルムとして用いられているフッ素系フィルムは耐熱性、離型性、非汚染性には優れているが、高価である上、使用後の廃棄焼却処理において燃焼し難く、かつ、有毒ガスを発生するという問題点があった。また、シリコン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリメチルペンテンフィルムは、シリコンや構成成分である低分子量体の移行によってプリント配線基板、とりわけ銅回路の汚染を引き起こし、品質を損なうおそれがあった。また、ポリプロピレンフィルムは耐熱性に劣り離型性が不充分であった。
【0004】
特許文献1は、極性基を有し、かつ、ハロゲンの含有率が5重量%以下である樹脂組成物からなるシートであって、23℃での貯蔵弾性率が1000〜5000MPaであり、且つ、170℃での貯蔵弾性率が20〜100MPaである高温での柔軟性、耐熱性、離型性、非汚染性に優れ、かつ、使用後の廃棄が容易なシート提案し、ペルプレンP450Bからなる樹脂組成物をTダイスより押出成形したシートを具体例として開示している。特許文献2は、環状オレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーからなる樹脂組成物を薄膜化したフィルムであって、該環状オレフィン系樹脂とスチレン系エラストマーの屈折率の差及び重量比が特定範囲にある環状オレフィン系樹脂からなる透明性と靭性に優れたフィルムの発明を開示し、このフィルムは、各種光学用途、例えば位相差フィルム、偏光板保護フィルム、光散乱板等、特にプリズムシート、液晶セル基板への用途に適することを記載している。
【特許文献1】特開2004−2592号公報
【特許文献2】特開2004−156048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐熱性、離型性、非汚染性に優れた離型フィルムを提供することを目的とする。また、該離型フィルムを表面層に有する積層離型フィルムを提供することを目的とする。更には、使用温度で充分なクッション性を有し、且つフィルム端面から汚染物の流出し難い積層離型フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、環状ポリオレフィン系樹脂、又は環状ポリオレフィン系樹脂と環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィンを含有する樹脂組成物から得られたフィルムが優れた剥離性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の離型フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料からなることを特徴とするものである。また、本発明の離型フィルムにおいては、前記樹脂系材料が前記環状ポリオレフィン系樹脂からなるものであることが好ましい。さらに、本発明の離型フィルムにおいては、前記樹脂系材料が前記環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含有する樹脂組成物からなるものであることが好ましい。
【0008】
また、本発明の離型フィルムにおいては、前記樹脂組成物が、前記環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、前記環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン1〜100重量部を含有するものであることが好ましい。さらに、本発明の離型フィルムにおいては、前記環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィンがポリエチレンであることが好ましい。また、本発明の離型フィルムにおいては、前記環状ポリオレフィン系樹脂の架橋物、前記環状ポリオレフィン系樹脂より高い融点及び/又はガラス転移点を有する有機物、並びに無機物からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる粒子を前記樹脂系材料中に分散させることによってフィルム表面を粗面化させることができる。さらに、本発明の離型フィルムにおいては、前記粒子が前記環状ポリオレフィン系樹脂の熱架橋物からなる粒子であることが好ましい。また、本発明の離型フィルムにおいては、前記環状ポリオレフィン系樹脂がエチレンとノルボルネンとの共重合体であることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の離型フィルムにおいては、前記離型フィルムの平均厚みが10〜300μmの範囲にあり、且つ該フィルムの厚みの最大値と最小値の比(最大値/最小値)が2以下であることが好ましい。また、本発明の離型フィルムにおいては、前記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)が100℃以上であることが好ましい。さらに、本発明の離型フィルムは、エポキシプリプレグと重ね合わせて、160℃で5分間、1MPaの圧力をかけた後に常温に冷却しても互いに接着しないものであることが好ましい。
【0010】
本発明の積層離型フィルムは、中間層樹脂フィルムと、前記中間層樹脂フィルムの少なくとも片面に積層されている前記離型フィルムとを備えることを特徴とするものである。また、本発明の積層離型フィルムにおいては、前記積層離型フィルムが前記離型フィルムを両表面層として有する3層以上の積層離型フィルムであり、該積層離型フィルムに160℃で5分間、2MPaの圧力をかけた後に、前記表面層の端面から前記中間層樹脂フィルムがはみ出した部分の長さが2mm以下であることが好ましい。さらに、本発明の積層離型フィルムにおいては、前記中間層樹脂フィルムが、高密度ポリエチレンからなるものであることが好ましい。また、本発明の積層離型フィルムにおいては、前記中間層樹脂フィルムが、架橋されたポリオレフィンを少なくとも10重量%含有する樹脂系材料からなるものであることが好ましい。さらに、本発明の積層離型フィルムにおいては、前記架橋されたポリオレフィンがシラン架橋ポリオレフィンであることが好ましい。また、本発明の積層離型フィルムにおいては、前記架橋されたポリオレフィンが架橋ポリエチレンであることが好ましい。
【0011】
本発明の離型フィルムの製造方法は、環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料を押出機に供給し、リップクリアランス0.7mm以下に調整したTダイからフィルム状に溶融押出し、前記環状ポリオレフィン系樹脂のTg±20℃の範囲に制御した冷却ロールと接触させて冷却固化することにより前記離型フィルムを得ることを特徴とする方法である。
【0012】
本発明の積層離型フィルムの製造方法は、環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料と、中間層樹脂フィルムを形成するための樹脂系材料とを、フィードブロック又はマルチマニホールドを有する多層ダイを用いてフィルム状に溶融押出することにより前記積層離型フィルムを得ることを特徴とする方法である。
【0013】
また、本発明の離型フィルムは、プリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板を製造する工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムと銅張積層板又は銅箔との積層物を熱プレス成形する際に、プレス熱板と該積層物との間に配置され、該プレス熱板と熱プレス成形により形成されたプリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板との接着を防ぐためのものであることが好ましい。さらに、本発明の積層離型フィルムは、プリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板を製造する工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムと銅張積層板又は銅箔との積層物を熱プレス成形する際に、プレス熱板と該積層物との間に配置され、該プレス熱板と熱プレス成形により形成されたプリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板との接着を防ぐためのものであることが好ましい。また、本発明の離型フィルムは、ガラスクロス、炭素繊維、又はアラミド繊維とエポキシ樹脂とからなるプリプレグをプレス成形型内又はオートクレーブ内で硬化し、成形物を製造する際に成形型とプリプレグとの接着を防ぐためのものであることが好ましい。本発明の積層離型フィルムは、ガラスクロス、炭素繊維、又はアラミド繊維とエポキシ樹脂とからなるプリプレグをプレス成形型内又はオートクレーブ中で硬化し、成形物を製造する際に成形型とプリプレグとの接着を防ぐためのものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の離型フィルムによれば、比較的広い範囲の対象物(FPC(フレキシブルプリント基板)の黒化処理銅面、ポリイミド(PI)カバーレイフィルムの接着剤面、及びエポキシプリプレグの接触面)に対して良好な離型性が得られることを実施例が示している。また、積層離型フィルムの場合、中間層に架橋ポリオレフィンを用いることにより、高いクッション性を与えると共に、温度をかけてプレスしたとき中間層樹脂フィルムの両表面層の端面からのはみ出し(フローアウト)が少ない積層離型フィルムを与えることができ、使用後の焼却、廃棄の点で難点の少ない離型フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
先ず、本発明の離型フィルムについて説明する。即ち、本発明の離型フィルムは環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料からなることを特徴とするものである。そして、このような樹脂系材料は、環状ポリオレフィン系樹脂からなるもの、あるいは環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなるものであることが好ましい。環状ポリオレフィン系樹脂とは、特開2004−156048号公報の記載によれば、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(環状オレフィン)を単量体として用いることで導入される。このような環状ポリオレフィン系樹脂には、環状ポリオレフィンのホモポリマーと、エチレン等鎖状ポリオレフィンとのコポリマーを使用することができる。
【0017】
本発明で使用される環状オレフィンの具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環の環状オレフィン;
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環の環状オレフィン;
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環の環状オレフィン;
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環の環状オレフィン;
8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]−14−エイコセン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンが挙げられる。これらの環状オレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組合せて用いることができる。
【0018】
環状オレフィンと共重合可能なα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のエチレン又はα−オレフィン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
環状オレフィン又は環状オレフィンとα−オレフィンとの重合方法及び得られた重合体の水素添加方法に、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0020】
本発明の離型フィルムに使用される環状ポリオレフィン系樹脂は、好ましくは、エチレンとノルボルネンの付加共重合体である。エチレンとノルボルネンの付加共重合体は、ノルボルネンのモル分率を高めることにより高いTgを得ることが容易である。また、加工条件を調整することによって熱架橋による凹凸物をフィルム表面に発生させることができる。フィルム表面を適度に粗面化することによって、対象物とのすべり性を改良することができる。
【0021】
このような環状ポリオレフィン系樹脂の構造は、特に制限はされず、鎖状でも、分岐状でも、架橋状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、このような環状オレフィン系樹脂の分子量としては、GPC法による数平均分子量が0.5万〜30万、好ましくは1万〜15万、さらに好ましくは1.5万〜10万である。数平均分子量が低すぎると機械的強度が低下し、高すぎると成形加工性が悪くなる傾向にある。
【0022】
また、環状ポリオレフィン系樹脂には、前述の環状ポリオレフィン系樹脂に極性基(例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等)を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合したものを含めることができる。上記環状オレフィン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明で使用する環状ポリオレフィン系樹脂のTgは通常50℃以上で、好ましくは100℃以上、更に好ましくは130℃以上、特に好ましくは170℃以上である。Tgが高いほど高温でのフィルム形状の保持と離型性に優れるが、高すぎると成形加工が難しくなる傾向がある。一般的な環状ポリオレフィン系樹脂のTgの上限値は250℃程度である。また、このようなTgの異なる環状ポリオレフィン系樹脂を2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
本発明の離型フィルムにおいては、前記樹脂系材料として前記環状ポリオレフィン系樹脂を単独で使用することが最も好ましいが、他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を妨げない範囲内でブレンドして用いてもよい。ブレンドする樹脂の種類としては、特に制限はないが、環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィンが好ましい。また、このようなポリオレフィンの中でも、各種ポリエチレン、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、及びこれらの樹脂を熱や電子線又は触媒等により架橋できるように変性した樹脂が更に好ましい。靭性を改良する目的では、オレフィン系のエラストマー、スチレン系のエラストマー等の各種熱可塑性エラストマーや耐衝撃剤等をブレンドしても良い。環状ポリオレフィン系樹脂と親和性の低い樹脂をブレンドする場合は、市販の相溶化剤等を用いることが好ましい。ブレンドする樹脂の配合割合は、環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、好ましくは100〜1重量部、更に好ましくは45〜5重量部、特に好ましくは20〜5重量部である。ブレンドする樹脂の配合割合が前記上限を超えると、離型フィルムの剥離性と耐熱性が悪くなる傾向にある。また、このようなポリオレフィンの中でも、ポリエチレンが更に好ましく、高密度ポリエチレンが特に好ましい。さらに、このような高密度ポリエチレンのメルトマスフローレート(MFR)は、好ましくは0.01〜10.0、更に好ましくは0.1〜3.0、特に好ましくは0.2〜1.5である。MFRが高過ぎても低過ぎても環状ポリオレフィン系樹脂と均一に混ざり難くなる傾向にある。
【0025】
また、本発明の離型フィルムにおいては、前記環状ポリオレフィン系樹脂の架橋物、前記環状ポリオレフィン系樹脂より高い融点及び/又はガラス転移点を有する有機物、並びに無機物からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる粒子を前記樹脂系材料中に分散させることによってフィルム表面を粗面化させることができる。このように前記樹脂系材料に分散させる粒子としては、環状ポリオレフィン系樹脂の架橋物からなる粒子;シリコン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等の環状ポリオレフィン系樹脂より高い融点及び/又はガラス転移点を有する有機物からなる粒子;タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ゼオライト、ガラス、モンモリロナイト、ヘクトライト、アエロジル、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、黒鉛、有機金属塩、酸化金属等の無機物からなる粒子状又は繊維状の粒子を用いることができる。これらの粒子の中でも、環状ポリオレフィン系樹脂の熱架橋物からなる粒子が更に好ましく用いられる。また、本発明の離型フィルムにおいては、これらの粒子を本発明の効果を妨げない程度に配合して用いることができる。さらに、本発明の離型フィルムにおいては、酸化防止剤、可塑剤、有機顔料、無機顔料、界面活性剤、カップリング剤、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アルキルエステル酸エステルワックス等を本発明の効果を妨げない程度に配合してもよい。
【0026】
本発明の離型フィルム(単層フィルム)の平均厚みは、好ましくは10〜300μm、更に好ましくは10〜200μm、特に好ましくは10〜100μm、最も好ましくは30〜50μmである。且つ、該フィルムの厚みの最大値と最小値の比(最大値/最小値)は、好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.1以下である。最大値と最小値の比が大き過ぎると、フィルムが薄い部分で対象物との密着性が悪くなる。そして、対象物との密着性が悪くなると、対象物との層間に入った空気が膨張して破裂したり、対象物のプレスが不十分になる傾向にある。薄すぎるとフィルムの強度が不足して破れやすくなる傾向にある。他方、厚すぎるとフィルムの柔軟性が損なわれてプリプレグやプリント配線基板等の対象物との密着性が悪くなる傾向にある。
【0027】
次に、本発明の積層離型フィルムについて説明する。即ち、本発明の積層離型フィルムは、中間層樹脂フィルムと、前記中間層樹脂フィルムの少なくとも片面に積層されている前述した離型フィルムとを備えることを特徴とするものである。本発明の積層離型フィルムは、離型性とクッション性に優れるため、プリント配線基板を熱プレス処理する際の所謂パッドフィルムに適している。
【0028】
本発明の積層離型フィルムは、前記中間層樹脂フィルムの片面に前述した離型フィルムが積層されている2層の積層離型フィルムであってもよいが、前述した離型フィルムを両表面層として有する3層以上の積層離型フィルムであることが好ましい。積層離型フィルムの場合、表面層(離型フィルム層)の平均厚みは、通常2〜200μm、好ましくは10〜100μm、更に好ましくは20〜100μmである。
【0029】
表面層(離型フィルム層)の厚さが薄すぎると離型フィルム層が破れ易くなる傾向にある。そして、離型フィルム層が破れると、中間層樹脂フィルムがプリプレグやプリント配線基板等の対象物と接着する不都合が生じる。他方、厚すぎるとフィルムの柔軟性が損なわれてプリプレグやプリント配線基板等の対象物との密着性が悪くなる傾向にある。さらに、3層以上の積層離型フィルムである場合、表面層(離型フィルム層)の厚みは中間層(中間層樹脂フィルム層)の厚みよりも薄いことが好ましい。また、このような積層離型フィルムのトータル厚みの平均は、通常20μm〜2mm、好ましくは50μm〜1mm、更に好ましくは100〜500μmである。薄すぎると、フィルムの強度やクッション性が不足する傾向にある。他方、厚すぎるとフィルムの柔軟性が損なわれたり、中間層の樹脂がフィルム端面から流出し易くなったりする等の不都合がある傾向にある。
【0030】
本発明の積層離型フィルムにかかる中間層樹脂フィルムの流動性は、積層離型フィルムの端面からのはみ出し部分の長さ(流出距離)を測定することによって評価できる。即ち、前記積層離型フィルムを160℃で5分間、2MPaの圧力をかけた後に、前記表面層の端面から前記中間層樹脂フィルムがはみ出した部分(フローアウト)の長さ(流出距離)が通常5mm以下、好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。このような流出距離が長いと、前記中間層樹脂フィルムが基板等の対象物に付着して汚染の原因になったり、適度なクッション性が得られなかったりする傾向にある。
【0031】
本発明の積層離型フィルムにかかる中間層樹脂フィルムを形成するための樹脂系材料としては特に制限されないが、環状ポリオレフィン系樹脂と接着性の良好であるものを用いることが好ましい。また、このような樹脂系材料としては、柔軟性があり使用温度で適度なクッション性を有する一方で、使用温度において中間層の樹脂が積層フィルムの端面から流出(フローアウト)し難い(流動化し難い)ものを用いることが好ましい。更に、フィードブロック又はマルチマニホールドを有する多層ダイを用いてフィルム状に溶融押出し、共押出し成形する場合は、加工温度での樹脂粘度が環状ポリオレフィン系樹脂と近いものを用いることが好ましい。
【0032】
このような樹脂系材料としては、オレフィン系の樹脂が好ましく、層間の接着性の観点からポリエチレン系の樹脂がより好ましい。そして、このような樹脂系材料としては、流動性の観点から、高密度ポリエチレンや熱可塑性エラストマーや架橋された樹脂が更により好ましく、架橋されたポリオレフィンを少なくとも10重量%含有するものが特に好ましい。架橋の方法としてはシラン架橋や電子線架橋等の公知の手法を使用できるが、シラン架橋の方法が好ましい。また、水架橋タイプ(例えば、三菱化学社製の商品名リンクロン等)の樹脂を使用すると容易に架橋樹脂層を形成させることができる。これらの水架橋樹脂の中でも水架橋ポリエチレンが特に好ましい。
【0033】
このような水架橋樹脂は、フィルム加工中のゲル化防止や樹脂コストの観点から他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を妨げない範囲内でブレンドして用いてもよいが、単独で使用することが好ましい。このような水架橋樹脂にブレンドする他の熱可塑性樹脂の種類としては、特に制限はないが、オレフィン系の樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン等の各種ポリエチレンが特に好ましい。また、靭性を改良する目的では、オレフィン系のエラストマー、スチレン系のエラストマー等の各種熱可塑性エラストマーや耐衝撃剤等をブレンドしても良い。このような水架橋樹脂にブレンドする他の熱可塑性樹脂の配合率は、好ましくは90重量%未満、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは30%以下である。他の熱可塑性樹脂の配合率が高くなると中間層樹脂フィルムが流動し易くなるために、積層フィルムの端部から中間層樹脂フィルムがはみ出してプリント配線基板等の対象物を汚染する原因になる傾向にある。また、このような水架橋樹脂を用いる場合のゲル分率は、通常10%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上である。さらに、このような水架橋樹脂を用いる場合には、成形後の架橋速度を促進させるために、表面層(離型フィルム層)の樹脂系材料として、ポリエチレン等のような水蒸気透過度の高い樹脂をブレンドしたものを用いることが好ましい。これらの樹脂を選択することにより、積層離型フィルムの端面に熱シール等の処理をすることなく、中間層樹脂フィルムのフローアウトを抑制することができる。
【0034】
また、本発明の積層離型フィルムにおいては、前記中間層樹脂フィルムを形成するための樹脂系材料が添加物を更に含有していてもよい。このような添加物としては、特に限定されないが、シリコン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂のファインパウダー;タルク、マイカ、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ゼオライト、ガラス、モンモリロナイト、ヘクトライト、エアロジル、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、黒鉛、有機金属塩、酸化金属等の粉末状又は繊維状フィラーを本発明の効果を妨げない程度に配合して用いることができる。また、本発明の積層離型フィルムにおいては、酸化防止剤、可塑剤、有機顔料、無機顔料、界面活性剤、カップリング剤、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アルキル酸エステルワックス等を本発明の効果を妨げない程度に配合してもよい。
【0035】
以上説明したような本発明の離型フィルム又は積層離型フィルムの表面は、平滑性を有することが好ましいが、ハンドリングに必要なスリップ性、アンチブロッキング性等が付与されていてもよく、また、熱プレス成形時の空気抜けを目的として、少なくとも片面に適度のエンボス模様が設けられてもよい。
【0036】
本発明の離型フィルム又は積層離型フィルムの剥離性の目安としては、エポキシプリプレグと重ね合わせて、160℃で5分間、1MPaの圧力をかけた後に常温に冷却しても互いに接着しないことが好ましい。
【0037】
本発明の離型フィルムの成形方法は特に限定されないが、通常は溶融押出法によって成形することができる。具体的には、環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料を押出機に供給し、リップクリアランスを1mm以下、好ましくは0.7mm以下に調整したTダイからフィルム状に溶融押出し、環状ポリオレフィン系樹脂のTg(ガラス転移点)±20℃の範囲に制御した冷却ロールと接触させて冷却固化することにより成形する。溶融押出法としては特に限定されず、例えば、Tダイ押出法、環状ダイを使用したインフレーション及びデフレーション押出法等が挙げられる。
【0038】
本発明の積層離型フィルムの製造方法には特に制限はなく、各層のフィルムを別々に製膜してドライラミネート等で貼り合わせる方法や、共押出し成形する方法等の公知の方法が使用できる。例えば、フィードブロック又はマルチマニホールドを有する多層ダイを用いてフィルム状に溶融押出することにより積層離型フィルムが得られる。生産性の観点からは、共押出し成形が特に好ましい。
【0039】
多層の環状ダイを用いる場合は、外層を環状ポリオレフィン系樹脂にした環状成形物を押出し、ピンチロール等で押しつぶして2枚のフィルムを重ねて1枚の積層離型フィルムを成形することができる。積層離型フィルムの各層間の接着性を向上させるために、離型フィルムと中間層樹脂フィルムとの間に接着樹脂層を設けてもよい。
【0040】
本発明の離型フィルム又は積層離型フィルムは、プリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板を製造する工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムと銅張積層板又は銅箔との積層物を熱プレス成形する際に、プレス熱板と該積層物との間に配置され、該プレス熱板と熱プレス成形により形成されたプリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板との接着を防ぐためのフィルムとして好適に用いられる。尚、複数の積層物を含む場合は、積層物と積層物の間にも、本発明の離型フィルム又は積層離型フィルムを配置してもよい。更に、ガラスクロス、炭素繊維、又は、アラミド繊維とエポキシ樹脂とからなるプリプレグをプレス成形型内又はオートクレーブ内で硬化し、釣竿、ゴルフクラブ・シャフト等の成形物を製造する際に、成形型とプリプレグとの接着を防ぐための離型フィルム又は積層離型フィルムとしても有用である。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。物性の測定法は、以下の通りである。
【0042】
平均厚み測定:
フィルムの厚みは、ダイヤルゲージ厚み計(小野測器社製、商品名:DG−911)で測定した。任意に切り取った550mm×550mmの面積のフィルムから100mm間隔で、縦5点、横5点の計25点の測定点で厚みを測定し、平均値、最大値、最小値、最大値/最小値を求めた。
【0043】
剥離性:
100mm×50mmのサイズに切り出した離型フィルムと対象物(エポキシプリプレグ)を重ね合わせ、150〜230℃(160℃)に調整したプレス成形機で1MPaの圧力を5分間加えた後にサンプルを取り出し、室温中で充分に冷却してから、対象物と剥離フィルムを手で剥がした。このとき、殆ど手に力を加えずに容易に剥れた場合を「○」。手に力を加えることによって剥れた場合を「△」。剥れなかった場合を「×」として評価した。対象物としては、FPC(フレキシブルプリント基板、マルチ社製)の黒化処理銅面、ポリイミド(PI)カバーレイフィルム(ニッカン工業社製、商品名:ニカフレックスCISA)の接着剤面及び非接着剤面、エポキシプリプレグシート(サカイ産業社製、炭素繊維強化エポキシプリプレグ)の3種類を使用した。このうち、対象物としてエポキシプリプレグシートを用い、試料離型フィルムと重ね合わせ160℃、5分間、1MPaで加圧する条件を剥離性の目安とした。
【0044】
積層離型フィルム流動性(中間層の流出距離):
100mm×100mmのサイズに切り出した積層離型フィルムを、160℃に調整したプレス成形機で2MPaの圧力を5分間かけた後にサンプルを取り出し、室温中で充分に冷却してから、表面層の離型層からはみ出した中間層樹脂フィルムのはみ出し部分の長さ(流出距離)を測定した。各サンプルの4辺で最もはみ出しの大きい部分の長さを該サンプルの中間層の流出距離(mm)とした。これらの値を測定すべき試料を10個作成し、10の測定値の平均値(算術平均)を求めた。
【0045】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
表1に示す樹脂を単軸スクリュー押出機に供給して、リップクリアランス0.7mmのT型ダイスから溶融樹脂を押し出しし、冷却ロールで冷却し、平均厚み50μmの離型フィルムを得た。実施例1〜4で得られた離型フィルムは、非汚染性に優れたものであった。なお、剥離性の評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例5)
環状ポリオレフィンコポリマー(TOPAS6017)70重量%と水架橋高密度ポリエチレン(リンクロン650N)30重量%ペレットブレンドで混合して1軸スクリュー押出機に供給して、リップクリアランス0.7mmのT型ダイスから溶融樹脂を押し出し、冷却ロールで冷却し、平均厚み50μmのフィルムを得た。得られたフィルムを80℃の熱水中で3時間処理して離型フィルムとした。実施例5で得られた離型フィルムは、非汚染性に優れたものであった。なお、剥離性の評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例6)
実施例5で用いた水架橋高密度ポリエチレン30重量%をHDPEに変えたこと以外は、実施例5と同様にして、平均厚み50μmの離型フィルムを得た。実施例5で得られた離型フィルムは、非汚染性に優れたものであった。なお、剥離性の評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた離型フィルムにおいては、フィルム厚みの最大値/最小値の比が1.1以下であった。
【0049】
【表1】

【0050】
前記表1並びに後述する表2〜5において各樹脂は以下の通りである。
【0051】
樹脂1は、環状ポリオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製、TOPAS6013、Tg=140℃)である。樹脂2は、環状ポリオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製、TOPAS6015、Tg=160℃)である。樹脂3は、環状ポリオレフィンコポリマー(ポリプラスチックス社製、TOPAS6017、Tg=180℃)である。樹脂4は、環状ポリオレフィンポリマー(日本ゼオン社製、ZEONOR1600R、Tg=160℃)である。樹脂5は、水架橋低密度ポリエチレン(三菱化学社製、リンクロン710N)である。樹脂6は、水架橋高密度ポリエチレン(三菱化学社製、リンクロン650N)である。ETFEは、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(旭硝子社製、アフロンC88A)である。PVDFは、ポリフッ化ビニリデン(株式会社クレハ製、KF#1000)である。HDPEは、高密度ポリエチレン(三井化学社製、ハイゼックス3300F、MFR=1.1)である。HDPE(2)は、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、ノバテックHY530、MFR=0.55)である。PBTは、ポリブチレンテレフタレート(ウィンテックポリマー社製、ジュラネックス700FP)である。
【0052】
上記の表1に記載した結果からも明らかなように、実施例1〜4で得られた離型フィルムは広い範囲の温度条件において、いずれの対象物(FPC(フレキシブルプリント基板)の黒化処理銅面、ポリイミド(PI)カバーレイフィルムの接着剤面、及びエポキシプリプレグの接触面)とも良好な離型性が得られていた。環状オレフィン系樹脂に水架橋高密度ポリエチレン樹脂を添加した実施例5で得られた離型フィルムも比較的低い温度では、良好な剥離性が得られていた。なお、実施例1〜6で得られた離型フィルムについては、230℃におけるポリイミド(PI)カバーレイフィルムの非接着剤面との剥離性の評価結果が「○」であった。一方、比較例1で得られたフィルムは、剥離性は良好だが、フッ素含有樹脂なので、使用後の焼却等の際に有毒ガスが発生するため、廃棄が難しい欠点を有する。また、比較例2及び比較例3で得られたフィルムは、エポキシプリプレグや、カバーレイフィルムとの剥離性が悪かった。したがって、本発明の離型フィルムは、優れた耐熱性、離型性を有することが確認された。
【0053】
(実施例7〜11)
表2に示す樹脂をマルチマニホールド多層Tダイと単軸スクリュー押出機(表裏面層用と中間層用)とを用いて共押出しして、平均厚み250μm(表面層厚み40μm、中間層170μm、裏面層厚み40μm)の積層離型フィルムを得た。更に、得られたフィルムを80℃の熱水中で3時間処理して積層離型フィルムとした。実施例7〜11で得られた積層離型フィルムは、優れたクッション性を有していた。また、実施例7〜11で得られた積層離型フィルムにおいては、フィルム厚みの最大値/最小値の比が1.1以下であった。なお、複数の樹脂を配合する方法は、ペレットブレンドで混合する方法を用いた。中間層の流動性の評価結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に記載した結果からも明らかなように、中間層にHDPEを用いた実施例11で得られた積層離型フィルムにおいては、中間層樹脂フィルムの流出が大きかったが、水架橋ポリエチレンを使用した実施例7と実施例8で得られた積層離型フィルムにおいては流出が約1/10に抑制されていた。また、水架橋ポリエチレンにHDPEをブレンドした実施例9と実施例10で得られた積層離型フィルムでも中間層樹脂フィルムの流出は極端に大きくなることがなかった。したがって、本発明の積層離型フィルムにおいては、中間層樹脂フィルムがフィルム端面から流出し難いことが確認された。
【0056】
(実施例12〜17)
表3に示す樹脂を単軸スクリュー押出機に供給して、リップクリアランス0.7mmのT型ダイスから溶融樹脂を押し出しし、冷却ロールで冷却し、平均厚み50μmの離型フィルムを得た。実施例12〜17で得られた離型フィルムは、汚染物が付着しにくく非汚染性に優れたものであった。また、実施例12〜17で得られた離型フィルムは、環状オレフィン系樹脂にHDPE(2)を添加していない実施例2、3で得られた離型フィルムと比較して柔軟性があり、ハンドリング性が良好なものであった。さらに、HDPE(2)の添加量が多くなるほど離型フィルムの柔軟性及びハンドリング性は向上した。また、実施例12〜17で得られた離型フィルムにおいては、フィルム厚みの最大値/最小値の比が1.1以下であった。なお、複数の樹脂を配合する方法は、ペレットブレンドで混合する方法を用いた。剥離性の評価結果を表3に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
表3に記載した結果からも明らかなように、環状オレフィン系樹脂にHDPE(2)を添加した実施例12〜17で得られた離型フィルムは比較的低い温度では、良好な剥離性が得られていた。なお、実施例12〜17で得られた離型フィルムについては、230℃におけるポリイミド(PI)カバーレイフィルムの非接着剤面との剥離性の評価結果が「○」であった。また特に、実施例15〜17で得られた離型フィルムは広い範囲の温度条件において、いずれの対象物(FPC(フレキシブルプリント基板)の黒化処理銅面、ポリイミド(PI)カバーレイフィルムの接着剤面、及びエポキシプリプレグの接触面)とも良好な離型性が得られていた。したがって、本発明の離型フィルムは、優れた耐熱性、離型性を有することが確認された。
【0059】
(実施例18〜24)
表4に示す樹脂をフィードブロック式多層Tダイと単軸スクリュー押出機(表裏面層用と中間層用)とを用いて共押出しして、平均厚み250μm(表面層厚み50μm、中間層150μm、裏面層厚み50μm)の積層離型フィルムを得た。実施例18〜24で得られた積層離型フィルムは、優れたクッション性を有していた。また、HDPE(2)の添加量が多くなるほど積層離型フィルムの柔軟性及びハンドリング性は向上した。さらに、実施例18〜24で得られた積層離型フィルムにおいては、フィルム厚みの最大値/最小値の比が1.1以下であった。なお、複数の樹脂を配合する方法は、ペレットブレンドで混合する方法を用いた。中間層の流動性の評価結果を表4に示す。
【0060】
【表4】

【0061】
表4に記載した結果からも明らかなように、中間層にHDPE(2)を用いた実施例18〜23で得られた積層離型フィルムにおいても、中間層樹脂フィルムの流出が抑制されていた。特に、また、HDPEに環状ポリオレフィンコポリマーをブレンドした実施例24で得られた積層離型フィルムにおいては、中間層樹脂フィルムの流出が十分に極端に抑制されていた。したがって、本発明の積層離型フィルムにおいては、中間層樹脂フィルムがフィルム端面から流出し難いことが確認された。
【0062】
(実施例25、26)
ラインスピード(溶融樹脂の引取速度)を5倍にした以外は実施例22と同様にして、平均厚み50μm(表面層厚み10μm、中間層厚み30μm、裏面層厚み10μm)の積層離型フィルム(実施例25)を得た。また、ラインスピード(溶融樹脂の引取速度)を5倍にした以外は実施例24と同様にして、平均厚み50μm(表面層厚み10μm、中間層厚み30μm、裏面層厚み10μm)の積層離型フィルム(実施例26)を得た。実施例25、26で得られた積層離型フィルムは、優れたクッション性を有しており、しかも非汚染性に優れたものであった。また、実施例25、26で得られた積層離型フィルムにおいては、フィルム厚みの最大値/最小値の比が1.1以下であった。なお、複数の樹脂を配合する方法は、ペレットブレンドで混合する方法を用いた。剥離性の評価結果を表5に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
表5に記載した結果からも明らかなように、実施例25、26で得られた積層離型フィルムは広い範囲の温度条件において、いずれの対象物(FPC(フレキシブルプリント基板)の黒化処理銅面、ポリイミド(PI)カバーレイフィルムの接着剤面、及びエポキシプリプレグの接触面)とも良好な離型性が得られていた。なお、実施例25、26で得られた積層離型フィルムについては、230℃におけるポリイミド(PI)カバーレイフィルムの非接着剤面との剥離性の評価結果が「○」であった。したがって、本発明の積層離型フィルムは、優れた耐熱性、離型性を有することが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料からなることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
前記樹脂系材料が前記環状ポリオレフィン系樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記樹脂系材料が前記環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含有する樹脂組成物からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、前記環状ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、前記環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン1〜100重量部を含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記環状ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィンがポリエチレンであることを特徴とする請求項4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記環状ポリオレフィン系樹脂の架橋物、前記環状ポリオレフィン系樹脂より高い融点及び/又はガラス転移点を有する有機物、並びに無機物からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる粒子を前記樹脂系材料が更に含有しており、前記粒子の分散によって表面が粗面化されていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記粒子が前記環状ポリオレフィン系樹脂の熱架橋物からなる粒子であることを特徴とする請求項6に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記環状ポリオレフィン系樹脂がエチレンとノルボルネンとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記離型フィルムの平均厚みが10〜300μmの範囲にあり、且つ該フィルムの厚みの最大値と最小値の比(最大値/最小値)が2以下であることを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移点(Tg)が100℃以上であることを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項11】
前記離型フィルムが、エポキシプリプレグと重ね合わせて、160℃で5分間、1MPaの圧力をかけた後に常温に冷却しても互いに接着しないものであることを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項12】
中間層樹脂フィルムと、前記中間層樹脂フィルムの少なくとも片面に積層されている請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の離型フィルムとを備えることを特徴とする積層離型フィルム。
【請求項13】
前記積層離型フィルムが前記離型フィルムを両表面層として有する3層以上の積層離型フィルムであり、該積層離型フィルムに160℃で5分間、2MPaの圧力をかけた後に、前記表面層の端面から前記中間層樹脂フィルムがはみ出した部分の長さが2mm以下であることを特徴とする請求項12に記載の積層離型フィルム。
【請求項14】
前記中間層樹脂フィルムが、高密度ポリエチレンからなるものであることを特徴とする請求項13に記載の積層離型フィルム。
【請求項15】
前記中間層樹脂フィルムが、架橋されたポリオレフィンを少なくとも10重量%含有する樹脂系材料からなるものであることを特徴とする請求項14に記載の積層離型フィルム。
【請求項16】
前記架橋されたポリオレフィンがシラン架橋ポリオレフィンであることを特徴とする請求項15に記載の積層離型フィルム。
【請求項17】
前記架橋されたポリオレフィンが架橋ポリエチレンであることを特徴とする請求項15又は16に記載の積層離型フィルム。
【請求項18】
環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料を押出機に供給し、リップクリアランス0.7mm以下に調整したTダイからフィルム状に溶融押出し、前記環状ポリオレフィン系樹脂のTg±20℃の範囲に制御した冷却ロールと接触させて冷却固化することにより請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の離型フィルムを得ることを特徴する離型フィルムの製造方法。
【請求項19】
環状ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂系材料と、中間層樹脂フィルムを形成するための樹脂系材料とを、フィードブロック又はマルチマニホールドを有する多層ダイを用いてフィルム状に溶融押出することにより請求項12〜17のうちのいずれか一項に記載の積層離型フィルムを得ることを特徴する積層離型フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記離型フィルムが、プリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板を製造する工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムと銅張積層板又は銅箔との積層物を熱プレス成形する際に、プレス熱板と該積層物との間に配置され、該プレス熱板と熱プレス成形により形成されたプリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板との接着を防ぐためのものであることを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項21】
前記積層離型フィルムが、プリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板を製造する工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムと銅張積層板又は銅箔との積層物を熱プレス成形する際に、プレス熱板と該積層物との間に配置され、該プレス熱板と熱プレス成形により形成されたプリント配線基板又はフレキシブルプリント配線基板との接着を防ぐためのものであることを特徴とする請求項12〜17のうちのいずれか一項に記載の積層離型フィルム。
【請求項22】
前記離型フィルムが、ガラスクロス、炭素繊維、又はアラミド繊維とエポキシ樹脂とからなるプリプレグをプレス成形型内又はオートクレーブ内で硬化し、成形物を製造する際に成形型とプリプレグとの接着を防ぐためのものであることを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項23】
前記積層離型フィルムが、ガラスクロス、炭素繊維、又はアラミド繊維とエポキシ樹脂とからなるプリプレグをプレス成形型内又はオートクレーブ内で硬化し、成形物を製造する際に成形型とプリプレグとの接着を防ぐためのものであることを特徴とする請求項12〜17のうちのいずれか一項に記載の積層離型フィルム。

【公開番号】特開2006−257399(P2006−257399A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22978(P2006−22978)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】