説明

離型剤、樹脂組成物、及び樹脂成形体

【課題】成形時の離型性に優れた樹脂組成物及び樹脂成形体を提供する。
【解決手段】重合体の片末端または両末端及び内部の少なくともいずれかに二重結合を有する三種の特定なポリオレフィン重合体における前期二重結合を80%以上の高い変性率で変性し、ついで、加水分解を行うことにより得られる極性基含有ポレオレフィン重合体を含む離型剤と、樹脂とを含んでなる樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤、樹脂組成物、及び樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチック、ポリスチレン等のスチレン樹脂など、所謂熱可塑性樹脂には、成形時における金型からの離型性を向上させ金型の汚染を抑制するため、また、成形時の熱履歴や機械的付加による樹脂の物性低下を抑制するために、一般的に離型剤を含有させる。
離型剤としては、例えば、脂肪酸誘導体、ワックス及び金属石鹸等が用いられている。しかし、脂肪酸誘導体やワックスは高温で成形する時にそれ自身が揮発性のため蒸気として消失する場合があり、前記金属石鹸は、樹脂自身の分解を引き起こしたりする場合がある。
ワックスである離型剤について、具体的には、鉱物系のモンタン酸系ワックス(例えば、特許文献1及び2参照)や、ポリエチレン系ワックス(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−335883号公報
【特許文献2】特開平5−339481号公報
【特許文献3】特開平9−290424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のポリエチレン系ワックスでは、さらなる離型性の向上が求められている。
また、モンタン酸系ワックスは、天然の褐炭から抽出、精製されるため、製造コストが高いという問題がある。更に、近年では、天然の褐炭鉱山の枯渇により供給不安が起こり価格が高騰している問題もある。従って、モンタン酸系ワックスに代わる離型剤が求められている。
【0005】
従って、本発明は以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、モンタン酸系ワックスに代わる離型剤として、樹脂組成物を成形する際の離型性を向上させる離型剤を提供することである。
また、本発明の目的は、成形時の離型性に優れた樹脂組成物及び樹脂成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的の達成可能な重合体について鋭意研究および検討を重ねた結果、片末端、両末端及び内部の少なくともいずれかに二重結合を有するポリオレフィン重合体における前記二重結合を80%以上の高い変性率で変性し、次いで、加水分解を行うことにより得られる極性基含有ポリオレフィン重合体が、新規、且つ、極めて有用なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(i)、下記一般式(ii)、または下記一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体と、樹脂と、を含む樹脂組成物。
【0008】
【化1】



【0009】
(一般式(i)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。Mは、金属カチオンまたはオニウムカチオンを表す。jは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの数を表し、0〜4の整数である。iは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの価数を表し、0〜4の整数である。D及びEは、それぞれ独立に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、R、OR、SR、またはNRを表し、DとEとは結合して環構造を形成してもよい。d及びeは、それぞれ置換基D及びEの価数を表し、0〜4の整数である。なお、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。)
【0010】
【化2】



【0011】
(一般式(ii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。G及びTは、それぞれ独立に、ハロゲン、R、OR、SR、またはNRを表し、G及びTは環構造を形成してもよい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【0012】
【化3】



【0013】
(一般式(iii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【0014】
<2> 前記樹脂が、ポリアミド樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂である<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)中の極性基が、ポリオレフィン重合体の片末端または両末端に存在する<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記一般式(i)、前記一般式(ii)、前記一般式(iii)中のPOが、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される1種を重合して得られたホモ重合体であるか、または、前記群から選択される2種以上を共重合して得られた共重合体である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> <1>〜<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を成形して得られた樹脂成形体。
【0015】
<6> 下記一般式(i)、下記一般式(ii)、または下記一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体を含む離型剤。
【0016】
【化4】



【0017】
(一般式(i)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。Mは、金属カチオンまたはオニウムカチオンを表す。jは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの数を表し、0〜4の整数である。iは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの価数を表し、0〜4の整数である。D及びEは、それぞれ独立に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、R、OR、SR、またはNRを表し、DとEとは結合して環構造を形成してもよい。d及びeは、それぞれ置換基D及びEの価数を表し、0〜4の整数である。なお、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。)
【0018】
【化5】



(一般式(ii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。G及びTは、それぞれ独立に、ハロゲン、R、OR、SR、またはNRを表し、G及びTは環構造を形成してもよい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【0019】
【化6】



【0020】
(一般式(iii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【0021】
<7> 前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)における極性基が、ポリオレフィン重合体の片末端または両末端に存在する<6>に記載の離型剤。
<8> 一般式(i)、一般式(ii)、または一般式(iii)中のPOが、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される1種を重合して得られたホモ重合体であるか、または、前記群から選択される2種以上を共重合して得られた共重合体である<6>または<7>に記載の離型剤。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、モンタン酸系ワックスに代わる離型剤として、樹脂組成物を成形する際の離型性を向上させる離型剤を提供することができる。
また、本発明によれば、成形時の離型性に優れた樹脂組成物及び樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例のリフロー加熱における温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明における、前記一般式(i)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体、前記一般式(ii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体、及び前記一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体について説明し、引き続き、本発明の離型剤、樹脂組成物、及び樹脂成形体について説明する。
【0025】
<一般式(i)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体>
本発明における一般式(i)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体は、ポリオレフィン重合体の部位(一般式(i)中、「PO」で示される部位)と、極性基(一般式(i)中、かっこ内で示される基)と、から構成される。
以下、一般式(i)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体を、単に、「一般式(i)で示される重合体」と称することがある。
一般式(i)で示される重合体は、例えば、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体(以下、「重合体(A)」という場合がある)における二重結合を、特定の極性基を有する化合物で変性し、次いで、これを加水分解またはイオン交換することにより製造することができる。詳細については後述する。
【0026】
本発明に用いられる重合体(A)(一般式(i)中のPO部分)は、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される1種を重合して得られたホモ重合体であるか、または、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される2種以上を共重合して得られた共重合体であることが好ましい。
前記重合体(A)は、更に、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン類及び炭素数4〜20のジエン類から選択される1種以上を重合して得られたホモ重合体若しくは共重合体であるか、または、前記ホモ重合体若しくは前記共重合体を熱分解して得られる重合体であることがより好ましい。
中でも、重合体(A)(一般式(i)中のPO部分)としては、熱に対する安定性の観点からは、エチレンのホモ重合体(エチレン重合体)であることが好ましい。
また、前記重合体(A)は、重合体鎖の片末端、両末端及び内部の少なくともいずれかに一つ以上の不飽和結合を有する重合体であることが好ましい。
【0027】
重合体(A)の製造に用いられる前記炭素数3〜20のα−オレフィン類としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族α−オレフィン類、脂環式α−オレフィン類および芳香族α−オレフィン類等が挙げられる。
上記脂肪族α−オレフィン類としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−へキセン、4−メチル−1−へキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。
【0028】
前記脂環式α−オレフィン類としては、例えば、アリルシクロヘキサン、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、前記芳香族α−オレフィン類としては、例えば、スチレン、アリルベンゼン等が挙げられる。
これらの中で、好ましくは、炭素数3〜10のα−オレフィン類であり、より好ましくは、炭素数3〜8のα−オレフィン類であり、特に好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。
【0029】
また前記炭素数4〜20のジエン類としては、特に限定されるものではないが、脂肪族ジエン類、脂環式ジエン類および芳香族ジエン類等が挙げられる。
上記脂肪族ジエン類としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、1,3−エイコサジエン等が挙げられる。
【0030】
前記脂環式ジエン類としては、例えば、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタ−2,5−ジエン等が挙げられ、前記芳香族ジエン類としては、例えば、p−ジビニルベンゼン等が挙げられる。
これらの中で、好ましくは炭素数4〜10の脂肪族ジエン類および炭素数4〜12の脂環式ジエン類であり、より好ましくは炭素数4〜9の脂肪族ジエン類および炭素数4〜10の脂環式ジエン類であり、特に好ましくは、ブタジエン、イソプレン、ビニルノルボルネン及びビシクロ−[2,2,1]−ヘプタ−2,5−ジエンが挙げられる。
重合体(A)の製造には、これらのうちの1種または2種以上のモノマーが用いられ、ホモ重合体または共重合体を製造することができる。
【0031】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)により測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは400〜500,000の範囲、より好ましくは800〜200,000の範囲、更に好ましくは1,200〜100,000の範囲である。また重合体(A)のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、すなわち分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.0以下の範囲である。
【0032】
上記重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150を用い以下のようにして測定した。分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動層にはオルトジクロロベンゼン(和光純薬)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025質量%を用い、1.0ml/分で移動させた。また、試料濃度は0.1質量%、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。なお、基準となる標準ポリスチレンは東ソー社製を用いた。
【0033】
前記一般式(i)中、かっこ内に示される基が極性基であり、A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR及びC(O)NRのいずれかを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。また、D及びEはそれぞれ独立に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、R、OR、SR、NRのいずれかを表し、DとEとは結合して環構造を形成してもよい。
上記R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または、複素環を有する炭素数20以下の基を表す。これらの基は、置換基(例えば、ヘテロ原子を含む官能基等)によって置換されていてもよい。
【0034】
前記アルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。直鎖のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−デシル基、n−オクタデシル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2,3−ジヒドロキシプロピル基、2−(ビニルカルボニルオキシ)エチル基、N−(2−ヒドロキシエチル)アミノ基、N−(2−メルカプトエチル)アミノ基、(2−アミノエチル)チオール基、(2−ヒドロキシエチル)チオール基等が挙げられる。
【0035】
前記分岐のアルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルオクタデシル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基、2−(1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル)プロピルアミノ基、1−(2−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル)プロピルオキシ基等が挙げられる。
前記環状のアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−ヒドロキシシクロヘキシル基、2,3−ジヒドロキシシクロヘキシル基、2−アミノシクロヘキシル基、2,3−ジアミノシクロヘキシル基、2−メルカプトシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0036】
前記アルケニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、直鎖、分岐または環状のアルケニル基が挙げられる。直鎖のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、4−ペンテニル基等が挙げられる。分岐のアルケニル基としては、例えば、イソプロペニル基、イソペンチル基、3−ヒドロキシプロペニル基、3−アミノプロペニル基、5−ヒドロキシ−2−メチル−3−ペンテニル基等が挙げられる。環状のアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、ジシクロペンタジエニル基、1−ヒドロキシシクロヘキシル基、2−アミノシクロヘキシル基、2,3−ジヒドロキシシクロヘキシル基、2,3−ジアミノシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0037】
前記アルキニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、直鎖、分岐または環状のアルキニル基が挙げられる。直鎖のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等が挙げられる。分岐のアルキニル基としては、例えば、2−メチル−2−プロピニル基、3−メチル−1−ブチニル基等が挙げられる。環状のアルキニル基としては、例えば、2−エチニル−1−シクロヘキシル基、3−(2−プロピニル)−1−シクロペンチル基等が挙げられる。
【0038】
前記アラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、芳香族炭化水素類、または芳香族ヘテロ環類によって置換されたアルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素類によって置換されたアルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−ヒドロキシベンジル基、2,4−ジヒドロキシベンジル基、2,4,6−トリヒドロキシベンジル基、2−アミノベンジル基、2,4−ジアミノベンジル基、2,4,6−トリアミノベンジル基、2−メルカプトベンジル基、2,4−ジメルカプトベンジル基、2,4,6−トリメルカプトベンジル基、2,4−ジフルオロベンジル基、ペンタフルオロフェニルメチル基、4−ビニルフェニルメチル基、フェネチル基、2−ナフチルメチル基等が挙げられる。芳香族ヘテロ環類によって置換されたアルキル基としては、例えば、2−ピリジルメチル基、3−チオフェニルメチル基、3−フリルメチル基等が挙げられる。
【0039】
また、前記アリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、芳香族炭化水素類等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、フェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,4,6−トリヒドロキシフェニル基、2−アミノフェニル基、2,4−ジアミノフェニル基、2,4,6−トリアミノフェニル基、2−メルカプトフェニル基、2,4−ジメルカプトフェニル基、2,4,6−トリメルカプトフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−メトキシカルボニル基、4−ニトロフェニル基、ヘキサフルオロフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0040】
前記複素環を有する基としては、特に限定されるものではないが、例えば、芳香族へテロ環類が置換した基(即ち、芳香族へテロ環類から水素原子を1つ除いた残基)等が挙げられる。芳香族へテロ環類から水素原子を1つ除いた残基としては、例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、3−クロロ−2−ピリジル基、3−ヒドロキシ−2−ピリジル基、3−アミノ−2−ピリジル基、3−メルカプト−2−ピリジル基、2−チエニル基、2−クロロ−3−チエニル基、2−フリル基、1−ピラゾリル基、2−(1,3−チアゾリル)基等が挙げられる。
【0041】
さらに、前記一般式(i)中、Mは、金属カチオンまたはオニウムカチオンを表す。
金属カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、周期律表1A族、2A族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、2B族、3B族および4B族(IUPACの1989年無機化学命名法改訂版による族番号は、1族から14族、以下同様である)等の金属原子のカチオンが挙げられる。
【0042】
1A族の金属原子のカチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等のカチオンが挙げられ、2A族の金属原子のカチオンとしては、例えば、ベリルウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム等のカチオンが挙げられ、3A族の金属原子のカチオンとしては、例えば、スカンジウム、イットリウム、サマリウム等のカチオンが挙げられ、4A族の金属原子のカチオンとしては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等のカチオンが挙げられ、5A族の金属原子のカチオンとしては、例えば、バナジウム、ニオブ、タンタル等のカチオンが挙げられ、6A族の金属原子のカチオンとしては、例えば、クロム、モリブデン、タングステン等のカチオンが挙げられ、7A族の金属原子のカチオンとしては、例えば、マンガン、テクネチウム、レニウム等のカチオンが挙げられ、8族の金属原子のカチオンとしては、例えば、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金等のカチオンが挙げられ、1B族の金属原子のカチオンとしては、例えば、銅、銀、金等のカチオンが挙げられ、2B族の金属原子のカチオンとしては、例えば、亜鉛、カドミウム、水銀等のカチオンが挙げられ、3B族の金属原子のカチオンとしては、例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等のカチオンが挙げられ、4B族の金属原子のカチオンとしては、例えば、ゲルマニウム、錫、鉛等のカチオンが挙げられる。
【0043】
これらの中で、好ましくは、1A族、2A族、1B族、2B族及び3B族の金属原子のカチオンであり、より好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、銀、亜鉛及びアルミニウムのカチオンが挙げられる。
【0044】
前記オニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、スルホキソニウムカチオン、ホスホニウムカチオン及びホスファゼニウムカチオン等が挙げられる。
前記オキソニウムカチオンとしては、例えば、ヒドロニウム等が挙げられる。
【0045】
前記アンモニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族置換基が置換したアンモニウムカチオン、芳香族置換基が置換したアンモニウムカチオン等が挙げられる。
脂肪族置換基が置換したアンモニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルアミニウム、トリエチルアミニウム、トリアリルアミニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、ピペリジニウム、プロリニウム及びグリシニウム等が挙げられる。また、芳香族置換基が置換したアンモニウムカチオンとしては、例えば、ジフェニルメチルアミニウム、トリフェニルアミニウム、トリフェニルメチルアンモニウム、4−ジメチルアミノピリジニウム、イミダゾリウム及び1−メチルピリジニウム等が挙げられる。
【0046】
前記スルホニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族置換基が置換したスルホニウムカチオン、芳香族置換基が置換したスルホニウムカチオン等が挙げられる。
脂肪族置換基が置換したスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルホスホニウム、(エトキシカルボニルメチル)ジメチルスルホニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)スルホニウム、ジメチル(プロパルギル)スルホニウム及び(2−カルボキシエチル)ジメチルスルホニウム等が挙げられる。また、芳香族置換基が置換したスルホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルスルホニウム、フェニルテトラメチレンスルホニウム、1−メチルチオフェニウム、ジフェニルメチルスルホニウム等が挙げられる。
【0047】
前記スルホキソニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、脂肪族置換基が置換したスルホキソニウムカチオン、芳香族置換基が置換したスルホキソニウムカチオン等が挙げられる。
脂肪族置換基が置換したスルホキソニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルスルホキソニウム等が挙げられる。また、芳香族置換基が置換したスルホキソニウムカチオンとしては、例えば、ジフェニルメチルスルホキソニウム等が挙げられる。
【0048】
前記ホスホニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族置換基が置換したホスホニウムカチオン、芳香族置換基が置換したホスホニウムカチオン等が挙げられる。
脂肪族が置換したホスホニウムカチオンとしては、例えば、トリエチルホスフィニウム、テトラブチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、テトラキス(2−ヒドロキシエチル)ホスホニウム等が挙げられる。また、芳香族が置換したホスホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルホスホニウム、ブチルトリフェニルホスホニウム、ビニルトリフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、1,1−ジフェニルホスホラニウム、2,4,6−トリフェニリホスホリニウム、シクロヘキシルトリフェニルホスホニウム、トリフェニル(2−ピリジルメチル)ホスホニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリフェニルホスホニウム等が挙げられる。
【0049】
前記ホスファゼニウムカチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族置換基が置換したホスファゼニウムカチオン、芳香族置換基が置換したホスファゼニウムカチオン等が挙げられる。
脂肪族置換基が置換したホスファゼニウムカチオンとしては、例えば、テトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウム、テトラキス[トリス(ピロリジン−1−イル)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウム等が挙げられる。また、芳香族置換基が置換したホスファゼニウムカチオンとしては、例えば、テトラキス[トリス(ジフェニルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウム等が挙げられる。
【0050】
これらオニウムカチオンの中で、好ましくは、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン及びホスファゼニウムカチオンであり、さらに好ましくは、テトラブチルアンモニウム、テトラフェニルホスホニウム及びテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムが挙げられる。
【0051】
前記一般式(i)中、jは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの数を表し、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは1または2である。iは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの価数を表し、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは1または2である。また、一般式(i)中、dおよびeは、それぞれ置換基DおよびEの価数を表し、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0または1である。
ここで、例えば、j=0の時、d=0、e=(i×j−d)=0となり、一般式(i)の重合体は中性の置換基を含有することになる。また、プラスの電荷の総和は、i×jとなり、マイナスの電荷の総和は、d+eとなり、プラスとマイナスとは等しくなるので(i×j=d+e)、荷電の総和は0(中性)となる。例えば、(i,j)=(1,2)の時、(d,e)の組み合わせは、(d,e)=(0,2)、(1,1)、(2,0)となる。
【0052】
また、前記一般式(i)で表される重合体は、前記一般式(i)においてDとEとが結合して環構造を形成する時、下記一般式(iv)の構造となる。
【0053】
【化7】



【0054】
上記一般式(iv)中、PO、A、B、M、n、d、e、i及びjは、一般式(i)の場合と同様であり、Qは窒素原子、R、NRを表す。なお、Rは一般式(i)に関して説明した置換基と同様である。
【0055】
また、一般式(i)中、nは平均官能基数を表し0.80〜10.0の範囲である。この値として、好ましくは、0.85〜5.00の範囲、さらに好ましくは0.90〜3.00の範囲、特に好ましくは0.90〜1.50の範囲である。
ここで上記平均官能基数について説明すると、例えば、nが1.00の場合、平均値として全ての重合体にカルボニル基含有置換基(極性基)が1つ結合していることを意味する。なお、実際にはi)片末端がカルボニル基含有置換基を有する重合体、ii)内部にカルボニル基含有置換基を有する重合体、iii)両末端にカルボニル基含有置換基を有する重合体、iv)片末端および内部にカルボニル基含有置換基を有する重合体、v)両末端および内部にカルボニル基含有置換基を有する重合体、vi)両末端および内部全てが飽和炭化水素である重合体、の六種類の重合体の集合体と推定される。したがって、本発明において前記nが1未満となるのは、当該nが末端等に結合していないvi)の飽和炭化水素である重合体(n=0)を含めた平均値として求められるものであるためである。
【0056】
上記平均官能基数は、原料となる重合体(A)の二重結合含有率(X)(H−NMRにより、末端メチル基と二重結合の積分比より計算される)と後述する式(3)で得られる変性率(U)より、以下の式(1)によって求められる。
式(1):n=X×U/100
ここで二重結合含有率(X)について説明すると、Xは、H−NMRで計算できる。すなわち、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.91ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。
【0057】
例えば、エチレンのみからなる片末端二重結合含有重合体の場合、飽和末端におけるメチル基の3プロトン分のピーク(A)が0.80ppm〜0.95ppm、末端二重結合の3プロトン分のピークが4.88ppm〜5.05ppmに2プロトン分のピーク(B)、5.75ppm〜5.90ppmに1プロトン分のピーク(C)として観測される。この時、二重結合含有率(X)は、ピーク(A)、ピーク(B)およびピーク(C)のピーク積分値を各々S、SおよびSとすれば、下記式(2)にて算出される。
式(2):X=(S+S)/S
【0058】
次に、離型性向上効果及び熱的安定性の観点からみた、一般式(i)における、PO、A、B、D、E、M、d、e、i、j、及びnの特に好ましい組み合わせについて説明する。
特に好ましい組み合わせは、POが、エチレン及び炭素数3〜8のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を重合して得られる重合体であって、A及びBが、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であって、D及びEが、それぞれ独立に、酸素原子または水酸基であって、Mが、金属カチオンであって、d及びeが、それぞれ独立に0または1であって、i及びjが、それぞれ独立に1または2であって、nが0.90〜1.50である組み合わせである。
最も好ましい組み合わせは、POが、エチレン重合体であって、A及びBが水素原子であって、D及びEが酸素原子であって、Mが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、銀、亜鉛、またはアルミニウムであって、d及びeが、それぞれ独立に0または1であって、i及びjが、それぞれ独立に1または2であって、nが0.90〜1.50である組み合わせである。
【0059】
<一般式(ii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体>
本発明における一般式(ii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体は、ポリオレフィン重合体の部位(一般式(ii)中、「PO」で示される部位)と、極性基(一般式(ii)中、かっこ内で示される基)と、から構成される。
以下、一般式(ii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体を、単に、「一般式(ii)で示される重合体」と称することがある。
なお、後述するように、上記一般式(ii)で示される重合体は、本発明の離型剤の成分として用いられるだけでなく、前記一般式(i)で示される重合体を得るための中間体化合物としても用いられる。
【0060】
一般式(ii)で示される重合体は、前述の一般式(i)で示される重合体において説明した重合体(A)の二重結合を変性することにより製造することができる。詳細については後述する。
一般式(ii)中、PO、A、Bおよびnは、前記一般式(i)で示される重合体の場合と同様である。GおよびTは、それぞれ独立に、ハロゲン、R、OR、SR及びNRのいずれかを表し、GおよびTは環構造を形成しても良い。RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または、複素環を有する炭素数20以下の基を表す。この場合のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基及び複素環を有する基としては、特に限定されるものではないが、前記一般式(i)で示される重合体について説明したものと同様である。
【0061】
また、一般式(ii)で示される重合体は、前記一般式(ii)においてGとTとが結合して環構造を形成する時、下記一般式(vi)の構造となる。
【0062】
【化8】



【0063】
上記一般式(vi)中、PO、A、Bおよびnは、前記一般式(i)で示される重合体の場合と同様である。Zは、R、硫黄、NRのいずれかを表し、Rは、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、及び複素環を有する炭素数20以下の基のいずれかを表す。これらの基は、置換基(例えば、ヘテロ原子を含む官能基等)によって置換されていてもよい。
また、この場合のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基及び複素環を有する基としては、特に限定されるものではないが、前記一般式(i)で示される重合体について説明したものと同様である。
【0064】
次に、離型性向上効果の観点からみた、一般式(ii)における、PO、A、B、G、T、及びnの特に好ましい組み合わせについて説明する。
特に好ましい組み合わせは、POが、エチレン及び炭素数3〜8のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を重合して得られる重合体であって、A及びBが、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であって、D及びEが、それぞれ独立に、酸素原子であって、Mが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、銀、亜鉛、またはアルミニウムのカチオンであって、nが0.90〜1.50である組み合わせである。
最も好ましい組み合わせは、POが、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を重合して得られるホモ重合体または共重合体であって、A及びBが水素原子であって、D及びEが酸素原子であって、Mが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、銀、亜鉛、またはアルミニウムであって、nが0.90〜1.50である組み合わせである。
【0065】
<一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体>
本発明における一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体は、ポリオレフィン重合体の部位(一般式(iii)中、「PO」で示される部位)と、極性基(一般式(iii)中、かっこ内で示される基)と、から構成される。
以下、一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体を、単に、「一般式(iii)で示される重合体」と称することがある。
なお、後述するように、上記一般式(iii)で示される重合体は、本発明の離型剤の成分として用いられるだけでなく、前記一般式(i)で示される重合体を得るための中間体化合物としても用いられる。
【0066】
一般式(iii)で示される重合体は、前述の一般式(i)で示される重合体において説明した重合体(A)の二重結合を変性することにより製造することができる。詳細については後述する。
一般式(iii)中、PO、A、Bおよびnは、前記一般式(i)で示される重合体の場合と同様である。
【0067】
次に、離型性向上効果の観点からみた、一般式(iii)における、PO、A、B、及びnの特に好ましい組み合わせについて説明する。
特に好ましい組み合わせは、POが、エチレン及び炭素数3〜8のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を重合して得られる重合体であって、A及びBが、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、またはフェニル基であって、nが0.90〜1.50である組み合わせである。
最も好ましい組み合わせは、POが、エチレン及びプロピレンの少なくとも一方を重合して得られるホモ重合体または共重合体であって、A及びBが水素原子であって、nが0.90〜1.50である組み合わせである。
【0068】
表1、表2に、一般式(i)〜一般式(iii)(一般式(iv)(vi)となる場合を含む)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体の具体例をまとめて示す。なお、表中に付されたNo.にしたがって、以降において表中の各々の重合体を、例えば「例示化合物(1)」(No.1で示された重合体)という場合がある。なお、表中「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「Bu」はブチル基を表し、「Ph」はフェニル基を表し、「PZN」はテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスホラニリデンアミノ]ホスホニウムカチオン([(MeN)P=N])を表す。

【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
以上に例示した、一般式(i)で示される重合体、一般式(ii)で示される重合体、及び一般式(iii)で示される重合体に関しては、各一般式(i)〜一般式(iii)中のかっこ内で表される極性基が、ポリオレフィン重合体の片末端または両末端に存在することが、後述する離型剤としての物性の発現の観点から好適である。
【0072】
<極性基含有ポリオレフィン重合体の製造方法>
前述のように、本発明の前記一般式(i)で示される重合体は、前記一般式(ii)または一般式(iii)で示される重合体の少なくともいずれかを中間体化合物とし、これを加水分解して得ることができる。このため、まず一般式(ii)で示される重合体及び一般式(iii)で示される重合体の製造方法について説明する。
【0073】
(一般式(ii)で示される重合体の製造方法)
本発明の前記一般式(ii)で示される重合体は、(a)重合体鎖の片末端、両末端及び内部の少なくともいずれかに一つ以上の不飽和結合を有するポリオレフィン重合体と、(b)重合禁止剤と、(c)下記一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物の少なくともいずれかとを、溶媒系または無溶媒系で反応させて製造できる。
【0074】
【化9】



【0075】
上記一般式(vii)中、A、B、GおよびTは、前記一般式(ii)で示される重合体の場合と同様である。
【0076】
【化10】



【0077】
上記一般式(viii)中、A、B、GおよびTは、前記一般式(ii)で示される重合体の場合と同様である。
【0078】
ここで、(a)重合体鎖の片末端、両末端及び内部の少なくともいずれかに一つ以上の不飽和結合を有するポリオレフィン重合体とは、特に限定されるものではないが、例えば、前記記載の重合体(A)およびこれらを熱分解して得られる重合体等が挙げられる。これら不飽和結合を有するポリオレフィン重合体は、単独で用いても二種類以上混合して用いてもよい。
【0079】
前記不飽和結合を有するポリオレフィン重合体の製造は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0080】
重合温度は、通常−50℃〜200℃、好ましくは0℃〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm 、好ましくは常圧〜50kg/cmの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
また、公知のオレフィン重合触媒としては例えば、特開平4−218507号公報で示されるような固体上Ti触媒成分、特公平7−37488号公報、特開平2−41303号公報、特開平9−87313号公報等のメタロセン触媒、EP 0874005A号明細書、J. Am. Chem. Soc.,125, 4306 (2003)で開示されている非メタロセン触媒等の触媒が例示できるがこの限りではない。
【0081】
上記合成工程により得られる不飽和結合を有するポリオレフィン重合体の好適な分子量、分子量分布は、前記一般式(i)で示される重合体における重合体(A)に関して説明した好適な重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)と同様である(ポリオレフィン重合体合成工程)。
【0082】
また、前記(b)重合禁止剤とは、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール系重合禁止剤、ニトロソアミン系重合禁止剤、フェノチアジン等が挙げられる。
フェノール系重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、t−ブチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等が挙げられる。前記ニトロソ系重合禁止剤としては、例えば、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミナト)アルミニウム等が挙げられる。
【0083】
これらの中で、好ましくはフェノール系重合禁止剤であり、より好ましくは2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ハイドロキノン、4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、メチルハイドロキノン及びp−ベンゾキノンであり、さらに好ましくは、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ハイドロキノン及び4−メトキシフェノールである。
【0084】
これら重合禁止剤を添加することで、(c)一般式(vii)および一般式(viii)で示される化合物の単独重合体の生成が抑制され得られる樹脂の精製が容易になるだけでなく、前記(a)不飽和結合を有するポリオレフィン重合体(重合体(A))における不飽和結合の変性率が向上する。本反応による変性率は80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
また、これら重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましくは使用する重合体(A)の質量の0.01倍〜20倍の範囲、より好ましくは0.05倍〜5倍の範囲、さらに好ましくは0.1倍〜1倍の範囲である。
【0085】
さらに、(c)一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物は、反応性の二重結合を有する化合物であり、且つ、互いにシス−トランスの関係にある幾何異性体である。一般式(vii)および一般式(viii)におけるGおよびTが環構造を形成する時、下記一般式(ix)で示される構造となる。
【0086】
【化11】



【0087】
上記一般式(ix)中、AおよびBは、前記一般式(i)で示される重合体の場合と同様である。Zは、R、硫黄およびNRのいずれかを表し、Rも前記一般式(i)に関して説明した置換基と同様である。
【0088】
一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、イミド類、カルボン酸類、酸ハロゲン化物類、アミド類、エステル類及びカルボチオエステル類等が挙げられる。
上記イミド類としては、例えば、マレイミドが挙げられる。前記カルボン酸類としては、例えば、脂肪族カルボン酸類、脂環式カルボン酸類及び芳香族カルボン酸類等が挙げられる。また、上記脂肪族カルボン酸類としては、例えば、メサコン酸、シトラコン酸及びマレイン酸等が、前記脂環式カルボン酸類としては、例えば、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸等が、前記芳香族カルボン酸類としては、例えば、フェニルマレイン酸等が各々挙げられる。
【0089】
前記酸ハロゲン化物類としては、例えば、脂肪族酸ハロゲン化物類、脂環式酸ハロゲン化物類、芳香族酸ハロゲン化物類等が挙げられる。
上記脂肪族酸ハロゲン化物類としては、例えば、マレイン酸ジクロライド及びマレイン酸ジブロミド等が、前記脂環式酸ハロゲン化物としては、例えば、シクロヘキサ−1−エン−1,2−ジカルボン酸クロライド等が、前記芳香族酸ハロゲン化物としては、例えば、2−フェニルマレイン酸ジクロライド等が各々挙げられる。
【0090】
前記アミド類としては、例えば、脂肪族アミド類、脂環式アミド類、芳香族アミド類等が挙げられる。
上記脂肪族アミド類としては、例えば、N,N’−メチルマレアミド等が、前記脂環式アミド類としては、例えば、(z)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−ジアゾシン−5,8−ジオン等が、前記芳香族アミド類としては、例えば、2−フェニルマレアミド等が各々挙げられる。
【0091】
前記エステル類としては、例えば、脂肪族エステル類、脂環式エステル類、芳香族エステル類等が挙げられる。
上記脂肪族エステル類としては、例えば、マレイン酸ジメチル及びテトラエチルエテンテトラカルボキシレート等が、前記脂環式エステル類としては、例えば、ジメチル−1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボキシレート及びジメチル−7−オキサビシクロ〔2.2.1〕ヘプタ−2,5−ジエン−2,3−ジカルボキシレート等が、前記芳香族エステル類としては、例えば、2−フェニルマレイン酸ジメチル等が各々挙げられる。
【0092】
前記カルボチオエステル類としては、例えば、脂肪族カルボチオエステル類、脂環式カルボチオエステル類、芳香族カルボチオエステル類等が挙げられる。
上記脂肪族カルボチオエステル類としては、例えば、(z)−S,S−ジメチルブタ−2−エンビス(チオエート)等が、前記脂環式カルボチオエステル類としては、例えば、S,S−ジエチルシクロヘキサ−1−エン−1,2−ビス(カルボチオエート)等が、前記芳香族カルボチオエステル類としては、例えば、S,S−ジメチル−2−フェニルジチオマレイン酸エステル等が各々挙げられる。
【0093】
これら一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物は、単独で用いても、あるいは2種類以上混合して用いてもよい。これら化合物の使用量は、特に制限されるものではないが、好ましくは用いる重合体(A)の質量の0.01倍〜50倍の範囲、より好ましくは、0.1倍〜20倍の範囲、さらに好ましくは、0.5倍〜5倍の範囲である。
【0094】
一般式(ii)で示される重合体を製造するに際し、反応は無溶媒でも、あるいは溶媒を用いてもどちらでもよい。用いる溶媒としては本発明を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロルエタン、トリクロロエタン、パークロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族類;ニトロベンゼン等の置換芳香族類;などが挙げられる。
【0095】
これらの中で、好ましくは、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ハロゲン化芳香族類であり、より好ましくは、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族類であり、さらに好ましくはメシチレン、o−ジクロロベンゼンが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても、二種類以上混合して用いてもよい。
上記溶媒の使用量は、原料の溶解性によるが、好ましくは原料として用いる重合体(A)の質量の0.1倍〜100倍の範囲、より好ましくは0.5倍〜50倍の範囲、さらに好ましくは1倍〜10倍の範囲である。
【0096】
反応は、例えば次のようにして行うことができる。反応器に(a)重合体(A)、(b)重合禁止剤、(c)一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物の少なくともいずれかを仕込み昇温する。原料は一括で仕込んでも、または分割して適宜添加してもよい。この時、反応を促進させるために触媒等の添加物を使用してもよい。反応温度は、本発明を阻害しない限り特に制限されるものではないが、好ましくは室温〜300℃の範囲、より好ましくは100℃〜250℃の範囲、より好ましくは150℃〜230℃の範囲で行われる。使用する化合物、溶媒によっては反応温度が沸点を超える場合があるためオートクレーブ等適切な反応装置を選択する。反応時間は、使用する重合体(A)、溶媒、重合禁止剤の量や反応性により変わるが、通常20時間〜120時間である。
【0097】
反応の進行は、H−NMRで確認できる。すなわち、測定サンプル管中で重合体を、ロック溶媒と溶媒を兼ねた重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンに完全に溶解させた後、120℃において測定した。ケミカルシフトは、重水素化−1,1,2,2−テトラクロロエタンのピークを5.91ppmとして、他のピークのケミカルシフト値を決定した。
例えば、エチレンのみからなる片末端二重結合含有重合体の場合、飽和末端におけるメチル基の3プロトン分のピークが0.80ppm〜0.95ppm、末端二重結合の3プロトン分のピークが4.88ppm〜5.05ppmに2プロトン分のピーク(B)、5.75ppm〜5.90ppmに1プロトン分のピークとして観測される。反応が進行すると、4.88ppm〜5.05ppmに観測される2プロトン分のピーク(B)と、5.75ppm〜5.90ppmに観測される1プロトン分のピークとが消失し、反応進行に伴い二重結合のシフトが起こり、新たに5.20ppm〜5.40ppmに1プロトン分のピーク(D)、5.50ppm〜5.70ppmに1プロトン分のピークが観測され、二重結合が一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物の少なくともいずれかで変性されたポリオレフィン重合体が生成する。
【0098】
この時、反応の転化率U(%)(本発明における「変性率」に相当)は、ピーク(B)およびピーク(D)のピーク積分値を各々SおよびSとすれば、下記式(3)にて算出される。
式(3):U(%)=S×100/[(S/2)+S
【0099】
前記製造方法は、工業的にも使用可能であり、且つ、原料の重合体(A)は、一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物の少なくともいずれかとほぼ定量的に反応する。
本発明において、上記式(3)から求められる前記二重結合の極性基(一般式(vii)及び一般式(viii)で示される構造の基)による変性率は80%以上である。また、該変性率は85%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好適である。
【0100】
反応後は、晶析操作、洗浄等の簡単な操作により、過剰の原料、溶媒、重合禁止剤等を除去して、目的とする一般式(ii)で示される重合体(一般式(i)で示される重合体を得るための中間体化合物)を得ることができる。また、上記反応において、原料の重合体(A)の製造工程から単離せずに上記反応を実施することもできる(中間体化合物合成工程)。
【0101】
前記一般式(ii)で示される重合体は上述した方法以外にも、特許第2523359号公報や特許第2523360号公報に記載の、オレフィン型不飽和化合物と無水マレイン酸とを、触媒量の副反応抑制添加剤(触媒)の存在下に反応させる方法によっても製造できる。
副反応抑制添加剤(触媒)としては、特許第2523359号公報に記載の亜鉛アルコキシドまたはジアルキル亜鉛(例えば、ジエトキシ亜鉛、ジ−n−ブトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛、ジメトキシ亜鉛、ジオクチルオキシ亜鉛、等)を用いることができる。また、前記以外の亜鉛化合物(例えば、亜鉛粉末、塩化亜鉛、等)も触媒として有効である。
また、副反応抑制添加剤(触媒)としては、特許第2523360号公報に記載のアルミニウムアセチルアセトネートを用いることができる。また、前記以外のアルミニウム化合物(アルミニウム粉末、塩化アルミニウム(III)、アルミニウムトリイソプロポキシド、等)も触媒として有効である。
また、副反応抑制添加剤(触媒)としては、亜鉛化合物やアルミニウム化合物以外にも、チタン化合物やホウ素化合物を用いることもできる。
【0102】
(一般式(iii)で示される重合体の製造方法)
本発明の一般式(iii)で示される重合体は、(a)重合体鎖の片末端、両末端及び内部の少なくともいずれかに一つ以上の不飽和結合を有するポリオレフィン重合体と、(b)重合禁止剤と、(d)下記一般式(x)で示される化合物とを、溶媒系または無溶媒系で反応させて製造できる。
【0103】
【化12】



【0104】
上記式中、AおよびBは、前記一般式(i)で示される重合体の場合と同様である。
【0105】
ここで、(a)重合体鎖の片末端、両末端または内部に少なくとも一つ以上の不飽和結合を有するポリオレフィン重合体、(b)重合禁止剤は、各々前記一般式(ii)で示される重合体の製造方法で説明したものと同様である。さらに、(d)一般式(x)で示される化合物とは、反応性の二重結合を有する酸無水物である。
【0106】
前記一般式(x)で示される化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物等が挙げられる。
上記脂肪族酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、シス−無水アコニット酸、無水2−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸等が挙げられる。前記芳香族酸無水物としては、例えば、5−ビニルイソベンゾフラン−1,3−ジオン、フェニル無水マレイン酸、4−ビニル−無水2,3−ピリジンジカルボン酸等が挙げられる。
【0107】
一般式(iii)で示される重合体の製造は、前記一般式(ii)で示される重合体の製造方法において、(c)一般式(vii)及び一般式(viii)で示される化合物の少なくともいずれかの代わりに(d)一般式(x)で示される化合物を用いる以外は、同様な方法で行うことができる。
【0108】
また、一般式(iii)で示される重合体の製造方法も、工業的にも使用可能であり、且つ、例えば原料の重合体(A)は、一般式(x)で示される化合物ほぼ定量的に反応する。本発明において、前記式(3)から求められる前記二重結合の極性基(一般式(x)で示される構造の基)による変性率は80%以上である。また、該変性率は85%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好適である。
【0109】
また、前記一般式(iii)で示される重合体は上述した方法以外にも、特許第2523359号公報や特許第2523360号公報に記載の、オレフィン型不飽和化合物と無水マレイン酸とを、触媒量の副反応抑制添加剤(触媒)の存在下に反応させる方法によっても製造できる。
副反応抑制添加剤(触媒)としては、特許第2523359号公報に記載の亜鉛アルコキシドまたはジアルキル亜鉛(例えば、ジエトキシ亜鉛、ジ−n−ブトキシ亜鉛、ジイソプロポキシ亜鉛、ジメトキシ亜鉛、ジオクチルオキシ亜鉛、等)を用いることができる。また、前記以外の亜鉛化合物(例えば、亜鉛粉末、塩化亜鉛、等)も触媒として有効である。
また、副反応抑制添加剤(触媒)としては、特許第2523360号公報に記載のアルミニウムアセチルアセトネートを用いることができる。また、前記以外のアルミニウム化合物(アルミニウム粉末、塩化アルミニウム(III)、アルミニウムトリイソプロポキシド、等)も触媒として有効である。
また、副反応抑制添加剤(触媒)としては、亜鉛化合物やアルミニウム化合物以外にも、チタン化合物やホウ素化合物を用いることもできる。
【0110】
以上で説明したとおり、前記一般式(ii)で示される重合体又は前記一般式(iii)で示される重合体は、重合体鎖の片末端、両末端及び内部の少なくともいずれかに一つ以上の不飽和結合を有するポリオレフィン重合体(以下、「不飽和結合含有ポリオレフィン重合体」ともいう)を原料として好適に製造される。
このような不飽和結合含有ポリオレフィン重合体を製造する方法としては、例えば、特許第3934999号公報に記載されているオレフィン重合用触媒の存在下において、エチレンおよび炭素数3以上20以下のα−オレフィンからなる群から選ばれる1種以上のオレフィンを重合又は共重合させる方法により合成できる。
この方法によれば、片末端に不飽和結合を有するポリオレフィン重合体を合成し易く、このため、一般式(i)〜(iii)におけるnの範囲を好適な範囲に調整し易い。
【0111】
(オレフィン重合用触媒)
前記オレフィン重合用触媒として、具体的には、下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物と、からなるオレフィン重合用触媒が好ましい。
〜 一般式(I)で表される遷移金属化合物 〜
【0112】
【化13】



【0113】
一般式(I)中、Mは周期律表第4族の遷移金属原子を示し、mは、1〜4の整数を示し、R11は、炭素数1〜5の直鎖炭化水素基又は水素原子を示し、R12、R13、R14、R15、及びR16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アリールアルコキシ基、アセトキシ基、アリールアミノ基又はアルキルアリールアミノ基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、ハロゲン原子を示す。
【0114】
なお、一般式(I)中、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
一般式(I)中、Mは周期律表第4〜5族の遷移金属を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルであり、好ましくは4族の金属原子であり、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムである。
【0115】
一般式(I)中、mは1〜4の整数を示し、好ましくは1又は2であり、特に好ましくは2である。
一般式(I)中、R11は、炭素数1〜5の直鎖炭化水素基又は水素原子を示す。R11の炭素数1〜5の直鎖炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましい。
前記R11として、より好ましくは、メチル基、エチル基、及び水素原子である。
【0116】
一般式(I)中、R12〜R16は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アリールアルコキシ基、アセトキシ基、アリールアミノ基又はアルキルアリールアミノ基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2以上の場合にはR12〜R16で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
上記のうち、R12〜R16としてはハロゲン原子又は炭化水素基が好ましい。
【0117】
前記炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状又は分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状又は分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状又は分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、α,α−ジメチルベンジル基、などの炭素数7〜20のアリール置換アルキル基(アラルキル基);などが挙げられる。
【0118】
上記のうち、不飽和結合含有ポリオレフィン重合体を合成し易いという観点からは、前記一般式(I)で表される遷移金属化合物としては、R11が炭素数1以上5以下の直鎖炭化水素基であって、R12、R13及びR15が水素原子であって、R14が水素原子、ハロゲン原子または炭素数1以上5以下の直鎖炭化水素基(R14として特に好ましくはハロゲン原子)であって、R16が炭素数7以上20以下のアラルキル基であって、Mがジルコニウムであって、Xがハロゲン原子であって、nが2であって、mが2である組み合わせの形態が特に好ましい。
【0119】
〜 有機アルミニウムオキシ化合物 〜
前記有機アルミニウムオキシ化合物としては、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物又は結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水又は結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷又は水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0120】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒又は未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解又はアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
【0121】
前記有機アルミニウムオキシ化合物としては、アルキルアルミノキサン(例えば、メチルアルミノキサン)やその誘導体が特に好ましい。
前記有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独で又は2種以上組み合せて用いることができる。
前記有機アルミニウムオキシ化合物としては、市販品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、東ソー・ファインケム(株)製のMMAO(修飾メチルアルミノキサン)等が挙げられる。
【0122】
〜 重合条件 〜
前述の不飽和結合含有ポリオレフィン重合体を合成する際のオレフィンの重合は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法又は気相重合法のいずれにおいても実施できる。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素又はこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0123】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うに際して、一般式(I)で示される遷移金属化合物は、反応容積1リットル当り、通常10−12〜10−2モル、好ましくは10−10〜10−3モルになるような量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物は、有機アルミニウムオキシ化合物中のアルミニウム原子と、一般式(I)で示される遷移金属化合物中の全遷移金属(M)とのモル比〔Al/M〕が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。
前述の一般式(i)で表されるポリオレフィン重合体を合成し易いという観点からは、モル比〔(Al/M〕は、1000〜10000が更に好ましく、1000〜5000が特に好ましい。
【0124】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃、更に好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜170℃の範囲である。
重合圧力は、通常常圧〜100kg/cmG、好ましくは常圧〜50kg/cmGの条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0125】
(一般式(i)で示される重合体の製造方法)
前記一般式(i)で示される重合体は、一般式(ii)で示される重合体及び一般式(iii)で示される重合体の少なくともいずれかを加水分解して製造することができる。すなわち、前記ポリオレフィン合成工程及び中間体化合物合成工程を経て得られた一般式(ii)で示される重合体及び一般式(iii)で示される重合体の少なくともいずれかを中間体化合物として、次いで、加水分解工程によりこれらを加水分解することにより得ることができる。
なお、一般式(ii)で示される重合体及び一般式(iii)で示される重合体は、単独で用いても、あるいは2種類以上混合して用いても良い。
【0126】
前記加水分解は、水と、塩基または酸とを用いて行うことができる。用いる塩基としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機塩基、有機塩基、イオン交換樹脂等が挙げられる。
上記無機塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩;並びに、これらの金属の酸化物;水酸化鉄;シアン化カリウム;などが挙げられる。
【0127】
前記有機塩基としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、アニリン、2−アミノピリジン、m−フェニレンジアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。
また、前記イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーリスト−21(登録商標)、アンバーリスト−93(登録商標)等が挙げられる。
【0128】
これら塩基の中で、好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、2−アミノピリジン、m−フェニレンジアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、アンバーリスト−21が挙げられ、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。
【0129】
また、製造に用いる前記酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、無機酸、有機酸、イオン交換樹脂、ルイス酸等が挙げられる。
上記無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等が挙げられ、前記有機酸としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、フェノール等が挙げられ、前記イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーリスト−15(登録商標)等が挙げられ、前記ルイス酸としては、例えば、三塩化ホウ素、二塩化亜鉛、三塩化アルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム等が挙げられる。
【0130】
これら酸の中で、好ましくは塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、三塩化アルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウムが挙げられ、より好ましくは塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、三塩化アルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウムが挙げられる。
【0131】
一般式(i)で示される重合体を製造するに際し、加水分解反応は水のみでも、あるいは水と他の溶媒を混合して用いてもどちらでもよい。用いる溶媒としては本発明を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、前記一般式(ii)で示される重合体の製造方法で用いた各種溶媒等、および、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール等のアルコール類が挙げられる。溶媒量の使用量は、本発明を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、前記一般式(ii)で示される重合体の製造方法で説明した溶媒量が好適である。
【0132】
反応は、例えば次のようにして行うことができる。反応器に一般式(ii)で示される重合体及び一般式(iii)で示される重合体の少なくともいずれか、溶媒、及び塩基または酸を仕込み昇温する。原料は一括で仕込んでも、または分割して適宜添加してもよい。反応温度は、本発明を阻害しない限り特に制限されるものではないが、好ましくは室温〜200℃の範囲、より好ましくは40℃〜150℃の範囲、さらに好ましくは50℃〜120℃の範囲で行われる。使用する化合物、溶媒によっては反応温度が沸点を超える場合があるためオートクレーブ等適切な反応装置を選択する。反応時間は、使用する溶媒、添加物の量や反応性により変わるが、通常数時間〜50時間である。
【0133】
反応後は、晶析操作、洗浄等の簡単な操作により、塩基または酸、溶媒等を除去して目的とする一般式(i)で示される重合体を得ることができる。なお、上記反応において、原料の一般式(ii)で示される重合体または一般式(iii)で示される重合体の製造工程から単離せずに、連続して前記反応を実施することもできる。
【0134】
さらに本発明では、前記のようにして得られた一般式(i)で示される重合体を、塩交換して、下記一般式(ib)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体を製造することができる。このように塩交換反応を利用することにより、異なる様々な物性を有する極性基含有ポリオレフィン重合体を得ることができる。
【0135】
【化14】



【0136】
上記式中、PO、A、B、D、E、d、eおよびnは、前記一般式(i)で示される重合体の場合と同様である。また、Lは、金属カチオンまたはオニウムカチオンを表し、lは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの数を表し、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。kは金属カチオンまたはオニウムカチオンの価数を表し、0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。但し、一般式(i)と比較した場合、L≠Mである。
ここで、例えば、l=0の時、d=0、e=(k×l−d)=0となり、一般式(ib)の重合体は中性の置換基を含有することになる。また、プラスの電荷の総和は、l×kとなり、マイナスの電荷の総和は、d+eとなり、プラスとマイナスは等しくなるので(l×k=d+e)、荷電の総和は0(中性)となる。例えば、(k,l)=(1,2)の時、(d,e)の組み合わせは、(d,e)=(0,2)、(1,1)、(2,0)となる。
【0137】
また、一般式(ib)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体において、DとEとが結合して環構造を形成する時、下記一般式(v)で示される構造となる。
【0138】
【化15】



【0139】
上記式中、PO、A、B、L、n、d、e、kおよびlは、一般式(ib)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体の場合と同様であり、Qは、前記一般式(iv)で示されるポリオレフィン重合体の場合と同様である。
【0140】
原料の一般式(i)で示される重合体は単独で用いても、あるいは2種類以上混合して用いても良い。
塩交換は、水溶性の無機塩またはオニウム塩を用いて行うことができる。用いる水溶性の無機塩としては特に限定されるものではないが、例えば、金属のハロゲン化物等が挙げられる。該金属のハロゲン化物としては、例えば、周期律表2A族、遷移金属、および3B族等のハロゲン化物等が挙げられる。周期律表2A族のハロゲン化物としては、例えば、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のハロゲン化物が挙げられ、遷移金属のハロゲン化物としては、例えば、クロム、鉄、銅、銀、亜鉛、カドミウム等のハロゲン化物が挙げられ、3B族のハロゲン化物としては、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム等のハロゲン化物が挙げられる。これら金属のハロゲン化物の中で、好ましくは、金属の塩化物が挙げられ、より好ましくは、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化亜鉛が挙げられる。
【0141】
また、用いる水溶性のオニウム塩としては特に限定されるものではないが、例えば、前記一般式(i)で示される重合体で説明したオニウムカチオンの塩等が挙げられる。
【0142】
前記一般式(ib)の重合体を製造するに際し、塩交換反応は水のみでも、あるいは水と他の溶媒を混合して用いてもどちらでもよい。用いる溶媒としては本発明を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、前記一般式(i)で示される重合体の製造方法における加水分解反応で説明した溶媒等が挙げられる。使用する溶媒量は、本発明を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、前記一般式(ii)で示される重合体の製造方法で説明した溶媒量が好適である。
【0143】
塩交換反応は、例えば次のようにして行うことができる。反応器に一般式(i)で示される重合体、溶媒、無機塩またはオニウム塩を仕込み昇温する。原料は一括で仕込んでも、または分割して適宜添加してもよい。反応温度は、本発明を阻害しない限り特に制限されるものではないが、好ましくは室温〜200℃の範囲、より好ましくは40℃〜150℃の範囲、さらに好ましくは50℃〜120℃の範囲で行われる。使用する化合物、溶媒によっては反応温度が沸点を超える場合があるためオートクレーブ等適切な反応装置を選択する。反応時間は、使用する溶媒、添加物の量や反応性により変わるが、通常数時間〜50時間である。
【0144】
反応後は、晶析操作、洗浄等の簡単な操作により、無機塩またはオニウム塩、溶媒等を除去して目的とする本発明に関する重合体を得ることができる。なお、上記反応において、原料の一般式(i)で示される重合体の製造工程から単離せずに、連続して上記反応を実施することもできる。
【0145】
<離型剤>
本発明の離型剤は、前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)で示される重合体を含む。
即ち、本発明の離型剤の第1の形態は、前記一般式(i)で示される重合体を含む形態である。
また、本発明の離型剤の第2の形態は、前記一般式(ii)で示される重合体を含む形態である。
また、本発明の離型剤の第3の形態は、前記一般式(iii)で示される重合体を含む形態である。
但し、上記第1〜第3の形態の分類は便宜的なものであり、各形態が互いに重複することがあってもよい。
即ち、本発明の離型剤は、前記一般式(i)で示される重合体と前記一般式(ii)で示される重合体とを含んでいてもよいし、前記一般式(i)で示される重合体と前記一般式(iii)で示される重合体とを含んでいてもよいし、前記一般式(ii)で示される重合体と前記一般式(iii)で示される重合体とを含んでいてもよいし、前記一般式(i)で示される重合体と前記一般式(ii)で示される重合体と前記一般式(iii)で示される重合体とを含んでいてもよい。また、本発明の離型剤は、上記重合体以外のその他の離型剤を含んでいてもよい。
【0146】
本発明の離型剤は上記構成としたことにより、樹脂組成物を成形する際の金型からの離型性を向上させる。
本発明の離型剤は、公知のポリエチレン系ワックスである離型剤と比較し、優れた離型性を有する。
また、本発明の離型剤による離型性は、公知のモンタン酸系の離型剤と比較しても近い程度であるか、または、同等以上であるため、公知のモンタン酸系の離型剤に代わる離型剤として好適である。
また、本発明の離型剤はモンタン酸系の離型剤と併用してもよく、この場合には、モンタン酸系の離型剤の使用量を減らすことができる。
【0147】
前記樹脂組成物に含まれる樹脂(即ち、本発明の離型剤を用いることができる樹脂)としては特に限定はないが、例えば、熱可塑性樹脂、エンジニアリングプラスチック及びスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
本発明における極性基含有ポリオレフィン重合体(前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)で示される重合体)は熱的に安定である。
このため、本発明における極性基含有ポリオレフィン重合体は、特に前記エンジニアリングプラスチック又はスーパーエンジニアリングプラスチックと高温で混合される場合でも、これらの樹脂の機械物性の変化を抑制しながら、これらの樹脂に離型性を付与することができる。
前記「高温」としては、例えば200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは270℃以上、特に好ましくは300℃以上である。前記「高温」の上限には特に限定はないが、例えば350℃である。
従って、本発明の離型剤は、融点が200℃以上(好ましくは250℃以上、より好ましくは270℃以上、特に好ましくは300℃以上)の樹脂の離型性を向上させる用途に好適である。該樹脂の融点の上限には特に限定はないが、例えば350℃である。
また、本発明の離型剤は、ガラス転移点が40℃以上(好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上)の樹脂の離型性を向上させる用途に好適である。該樹脂のガラス転移点の上限には特に限定はないが、例えば300℃である。
また、本発明の離型剤は、前記範囲の融点と前記範囲のガラス転移点との双方を満たす樹脂の離型性を向上させる用途にも好適である。
【0148】
前記熱可塑性樹脂、前記エンジニアリングプラスチック、及び前記スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム状(共)重合体、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;アイオノマー樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、液晶ポリマー等、が挙げられる。また、これらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0149】
具体的には、ポリアセタール樹脂[ポリプラスチック社製、商品名:ジュラコン−M90]、ABS樹脂[宇部サイコン社製、商品名:HM−11001]、[東レ社製、商品名:トヨラック500]、ポリアミド樹脂[三井化学社製、商品名:アーレン]、ポリアミド樹脂[宇部興産社製、商品名:UBEナイロン]、ポリフェニレンエーテル樹脂[旭化成ケミカルズ社製、商品名:ザイロン]、ポリブチレンテレフタレート樹脂[東レ社製、商品名:トレコン]、ポリエチレンテレフタレート樹脂[三井化学社製、商品名:三井PET]、ポリイミド樹脂[三井化学社製、商品名:オーラム]、ポリエーテルサルフォン樹脂[三井化学社製、商品名:PES]、ポリカーボネート樹脂[出光興産社製、商品名:タフロン]、[帝人化成社製、商品名:パンライト]等が挙げられる。
【0150】
本発明の離型剤による離型性向上の効果は、上記の樹脂のうち、ポリアミド樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂に用いたときにより顕著であり、中でも、ポリアミド樹脂に用いたときに特に顕著である。
【0151】
本発明の離型剤(または、前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)で示される重合体)の添加量としては、用いる樹脂の種類にもよるが、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜20質量部の範囲、より好ましくは0.1質量部〜10質量部の範囲、さらに好ましくは、0.2質量部〜5質量部の範囲である。
【0152】
また、本発明の離型剤は、一般式(i)、一般式(ii)、または一般式(iii)で示される重合体単体であってもよいし、該重合体とその他の成分とを含む組成物であってもよい。
前記その他の成分としては、前記重合体以外の他の離型剤、滑剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、難燃剤、帯電防止剤、核剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、分散剤、相溶化剤、発泡剤、充填剤、補強剤等が挙げられる。
本発明の離型剤は、前記その他成分の分散性を向上する機能を有する。従って、得られた成形体の表面平滑性、摺動性、光沢、透明性、印刷性、溶接適性、滑り特性及びブロッキング特性を向上させる。
【0153】
また、本発明の離型剤は、一般式(i)、一般式(ii)、または一般式(iii)で示される重合体と、該重合体以外の樹脂と、の樹脂組成物の形態であってもよい。また、該重合体を含む樹脂組成物を、目的とする樹脂組成物や樹脂成形体のマスターバッチとして用いる形態であってもよい。
【0154】
本発明の離型剤の使用形態としては、成形材料としての樹脂組成物(例えば、ペレット)中に含有させて使用する形態が挙げられる。この場合、例えば、本発明の離型剤と、該離型剤以外の成分から構成される樹脂組成物と、を混合し、押出機に装入して溶融混練することで、本発明の離型剤を含んだ樹脂組成物(例えば、ペレット)を得ることができる。
また、本発明の離型剤の別の使用形態としては、本発明の離型剤を含まない樹脂組成物と、本発明の離型剤と、を成形時に成形機に装入する形態であってもよい。
また、本発明の離型剤の使用形態としては、溶媒に溶解させて溶液状態とするか、または、溶媒に加熱溶解させた後、冷却してペースト状態とし、得られた溶液またはペーストを、金型に塗布または印刷する形態であってもよい。
【0155】
本発明の離型剤は、樹脂成形体の金型からの離型性を向上させる効果の他、難燃剤等の腐食性物質による侵食を防止する効果を有する。
また、本発明の離型剤は、例えば、押出機の成形機内部の樹脂滞留部が原因で発生するダイ先端の目やにの生成を防止する効果や、例えば、射出成形金型のベントが閉塞することで発生するショートショットやガス焼けなどを低減する効果を有する。
従って、本発明の離型剤を用いることで、長時間の連続射出成形が可能となることがあり、これらの効果により、成形サイクルの短縮化が図られ効率化、省力化等の利点がもたらされる。
更に、本発明の離型剤を用いることにより、電気・電子部品に用いられるエンジニアリングプラスチックの成形品(樹脂成形体)において、離型性向上を達成し、且つ、はんだ付け工程におけるリフロー耐熱性を向上させ、成形品における靭性を向上させることができる。
【0156】
また、本発明の離型剤は、滑剤としての機能を有していてもよい。
ここで、滑剤としての機能とは、例えば、樹脂組成物中に含有させることで樹脂組成物の流動性を向上させる機能や、樹脂組成物中に含有させることで混練時に樹脂組成物にかかるシェアを低減させる機能、成形品表面の状態を向上させる機能、等である。
【0157】
<樹脂組成物及び樹脂成形体>
本発明の樹脂組成物は、前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)で示される重合体(または本発明の離型剤)と、樹脂と、を含む。
また、本発明の樹脂成形体は、上記本発明の樹脂組成物を成形して得られたものである。
このため、本発明の樹脂組成物または樹脂成形体は、成形の際、金型からの離型性に優れる。
【0158】
前記樹脂組成物または樹脂成形体に含まれる樹脂としては、前述の熱可塑性樹脂、前述のエンジニアリングプラスチック、及び前述のスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられ、好ましい範囲も前述のとおりである。
前記樹脂としては、離型性向上効果の観点より、ポリアミド樹脂及びポリフェニレンオキシド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂が好ましい。
また、前記樹脂としては、離型性向上効果をより効果的に得る観点より、融点が200℃以上(好ましくは250℃以上、より好ましくは270℃以上、特に好ましくは300℃以上)の樹脂が好適である。該樹脂の融点の上限には特に限定はないが、例えば350℃である。
また、前記樹脂としては、ガラス転移点が40℃以上(好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは200℃以上)の樹脂も好適である。該樹脂のガラス転移点の上限には特に限定はないが、例えば300℃である。
また、前記樹脂としては、前記範囲の融点と前記範囲のガラス転移点との双方を満たす樹脂が好ましい。
【0159】
また、本発明の樹脂組成物または樹脂成形体に含まれる、前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)で示される重合体(または本発明の離型剤)の量としては、用いる樹脂の種類にもよるが、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜20質量部の範囲、より好ましくは0.1質量部〜10質量部の範囲、さらに好ましくは、0.2質量部〜5質量部の範囲である。
【0160】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じ、ガラス繊維、難燃剤、難燃助剤、ハロゲンキャッチャー、ドリップ防止剤、結晶核剤等のその他の成分を有していてもよい。
また、本発明の樹脂組成物に含まれるその他の成分としては、既述の本発明の離型剤のその他の成分として列挙した成分が挙げられる。
【0161】
樹脂成形体への成形方法としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の違いにより異なるが、押出成形方法、射出成形方法、真空成形方法、ブロー成形方法、圧縮形成方法、トランスファー成形方法、RIM成形方法、注型成形方法等、広く一般的に熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂に用いられている成形方法を採用することができる。
【実施例】
【0162】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0163】
≪分析装置≫
まず、本実施例における化合物の分析に用いた分析装置および測定条件等について説明する。
(1)分子量、分子量分布
重合体の分子量測定に際しては、本文中に記載のGPC装置および条件で測定を行った。
(2)H−NMRスペクトル
日本電子社製JNM−GSX270型または日本電子社製EX400型用いて、本文中に記載の方法で測定した。
(3)赤外線吸収スペクトル
日本分光社製FT/IR−6100を用いて測定した。
(4)FD−質量分析
日本電子社製JMS−SX102Aを用いて分析した。
(5)融点(Tm)
本実施例中、特に断りの無い限り、融点(Tm)は以下のようにして測定した。
即ち、島津製作所製DSC−60Aを用い、以下の条件で測定して得られたピークトップ温度を採用し、融点(Tm)とした。
・セル:アルミニウム
・キャリアーガス:窒素(50ml/分)
・温度プログラム:30℃(10℃/分)→100℃(5分固定)→350℃(5分固定)
(6)5%減量温度(Thermogravimetric Analysis(TGA))
島津製作所製DTG−60を用い、以下の条件で測定して得られた減量カーブから解析により求めた。
・セル:アルミニウム
・キャリアーガス:空気(100ml/分)
・温度プログラム:30℃(10℃/分)→100℃(10分固定)→400℃(5分固定)
【0164】
≪極性基含有ポリオレフィン重合体の製造≫
<例示化合物(3):一般式(iii)で示される重合体の製造>
(重合体(A3)の合成:片末端二重結合含有エチレン−プロピレン共重合体)
−固体成分(1)の調製−
窒素流通下、150℃で5時間乾燥したシリカ(SiO)30gを466mLのトルエンに懸濁した後、メチルアルモキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.08mmol/mL)134.3mLを25℃で30分かけて滴下した。滴下終了後、30分かけて114℃まで昇温し、その温度で4時間反応させた。その後60℃まで降温し、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで3回洗浄した後、トルエンを加え、固体成分(1)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分(1)の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:0.150g/mL、Al濃度:1.179mmol/mLであった。
【0165】
−固体触媒成分(2)の調製−
窒素置換した300mLのガラス製フラスコにトルエン150mLを入れ、撹拌下、上記で調製した固体成分(1)のトルエンスラリー(固体部換算で1.91g)を装入した。次に、下記化合物(xi)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0012mmol/mL)50.0mLを15分かけて滴下し、室温で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘプタンで3回洗浄し、ヘプタン100mLを加えて固体触媒成分(2)のヘプタンスラリーを調製した。得られた固体触媒成分(2)のヘプタンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.058mmol/mL、Al濃度14.8mmol/mLであった。
なお、化合物(xi)は、特開2003−73412号公報の合成例6に従って合成した。
【0166】
【化16】



【0167】
充分に窒素置換した内容積1000mlのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン450mlを装入し、室温でエチレン100リットル/hrを15分間流通させ、液相及び気相を飽和させた。続いてプロピレンを28NL導入し、80℃に昇温した後、エチレンで8kg/cmGまで昇圧し、温度を維持した。トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)0.5ml(0.5mmol)を圧入し、ついで上記固体触媒成分(2)をZr原子に換算して0.0001mmolを圧入し、重合を開始した。エチレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、80℃で60分間重合を行った後、5mlのメタノールを圧入することにより重合を停止し、降温後モノマーを脱圧した。
【0168】
得られたポリマースラリーをメタノール2Lと混合撹拌後濾過した。得られた生成物を80℃にて10時間減圧乾燥することによりエチレン−プロピレン共重合体(重合体(A3))である末端二重結合含有重合体41.4gを得た。物性を以下に示す。
H―NMR:δ(CCl) 0.70−0.99(m),1.00−1.75(m),1.95−2.15(m),4.62−4.72(m,0.15H),4.88−5.04(m,2H),5.38−5.50(m,0.54H),5.72−5.90(m,1H)
・二重結合含有率(X):0.999
・融点(Tm):97.5℃
・Mw:1310、Mw/Mn:1.66
【0169】
(例示化合物(3):一般式(iii)で示される重合体の製造)
還流管の付いた2000mlの反応器に、重合体(A3)(片末端二重結合含有重合体、146g)、無水マレイン酸(168g,1.71mol)、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(226g,1.03mol)を仕込み、205℃で24時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液をアセトン中に加えてポリマーを析出させた。アセトンで数回洗浄し、減圧乾燥機70℃、24時間乾燥させ、例示化合物(3)(一般式(iii)中、PO=ポリ(エチレン−プロピレン)、A=B=水素、n=1)145gを得た。二重結合の転化率(変性率)は以下のH−NMR結果から計算され、99.9%であった。物性は以下の通りである。
H−NMR:δ(CCl)0.72−0.98(m),1.00−1.65(m),1.89−2.19(m),2.20−3.30(m),4.98−5.42(m),5.46−5.80(m)
・IR(cm−1):2900,1864,1784,1716,1474,1232,1068,968,920,730,720
【0170】
<例示化合物(7):一般式(i)で示される重合体の製造>
(重合体(A2)の合成:片末端二重結合含有エチレン重合体)
充分に乾燥、窒素置換した100mlの反応器に、5−クロル−3−クミルサリチルアルデヒド15.4g(56.1mmol)、トルエン60ml、及びメチルアミン4.42g(40%メタノール溶液、56.9mmol)を仕込み、室温で5時間撹拌した。この反応溶液を減圧濃縮することにより、下記式(xii)で示される赤褐色オイル16.0g(収率99%)を得た。
H−NMR:δ(CDCl)1.71(s,6H),3.33(s,3H),7.10−7.44(m,7H),8.16(s、1H),13.8(s,1H)
【0171】
【化17】



【0172】
充分に乾燥、アルゴン置換した500mlの反応器に、上記化合物(xii)12.1g(42.0mmol)とジエチルエーテル150mlとを仕込み、−78℃に冷却し撹拌した。これにn−ブチルリチウム27.8ml(n−ヘキサン溶液、1.57M、43.7mmol)を30分かけて滴下し、そのままの温度で2時間撹拌した後、ゆっくりと室温まで昇温し、室温でさらに3時間撹拌してリチウム塩を調製した。この溶液を、−78℃に冷却したZrCl(THF)錯体4.84g(20.8mmol)を含むテトラヒドロフラン溶液150mlに滴下した。滴下終了後、ゆっくりと室温まで昇温しながら撹拌を続けた。さらに室温で12時間撹拌した後、反応液を溶媒留去した。
【0173】
得られた固体を塩化メチレン200mlに溶解し、不溶物をガラスフィルターで除去した。ろ液を減圧濃縮し、析出した固体をジエチルエーテル80ml、n−ヘキサン150mlで再沈し、減圧乾燥することにより下記式(xiii)で示される黄色粉末の化合物11.4g(収率75%)を得た。
H−NMR:δ(CDCl)1.67(s,6H),1.92(s、6H),2.30(s,6H),7.00−7.60(m,12H),7.70(s,2H),7.79(s,2H)
・FD−質量分析:734
【0174】
【化18】



【0175】
充分に窒素置換した内容積2000mlのステンレス製オートクレーブに、ヘプタン1000mlを装入し、150℃に維持した。エチレンにて34kg/cmGに昇圧し、MMAO(東ソーファインケム社製)のヘキサン溶液(アルミニウム原子換算1.00mmol/ml)1ml(1mmol)を圧入し、次いで化合物(xiii)のトルエン溶液(0.0001mmol/ml)3ml(0.0003mmol)を圧入し、重合を開始した。エチレンガス雰囲気下、150℃で30分間重合を行った後、少量のメタノールを圧入することにより重合を停止した。
【0176】
得られたポリマー溶液から溶媒を留去してポリマーを析出させた。その後、80℃にて10時間減圧乾燥した。得られたエチレン重合体(重合体(A2))は30.45gであり、重合活性は203kg/mmol−Zr・hrであり、H−NMRの測定結果及び物性は以下の通りであった。
・二重結合含有率(X):0.990
・融点(Tm):116℃
H−NMR:δ(C) 0.81(t,3H,J=6.9Hz),1.10−1.45(m),1.95(m,2H),4.84(dd,1H,J=9.2,1.6Hz),4.91(dd,1H,J=17.2,1.6Hz),5.67−5.78(m、1H)
・Mw:1380,Mw/Mn:2.20
【0177】
(例示化合物(2):一般式(iii)で示される重合体の製造)
還流管の付いた2000mlの反応器に、重合体(A2)(片末端二重結合含有エチレン重合体、150g)、無水マレイン酸(168g,1.71mol)、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(226g,1.03mol)を仕込み、205℃で24時間加熱攪拌した。反応終了後、反応液をアセトン中に加えてポリマーを析出させた。アセトンで数回洗浄し、減圧乾燥機70℃、24時間乾燥させ、例示化合物(2)(一般式(iii)式中、PO=ポリエチレン、A=B=水素、n=0.99)149gを得た。 二重結合の転化率(変性率)はH−NMRから計算され、99.9%であった。物性は以下の通りである。
H−NMR:δ(CCl)0.80−0.95(m),1.00−1.60(m),1.92−2.12(m),2.20−3.20(m),5.10−5.42(m),5.47−5.72(m)
・IR(cm−1):2958,1863、1813,1716,1471,1227,1119、1067、970,920,870,720
【0178】
(例示化合物(7):一般式(i)で示される重合体の製造)
還流管の付いた500mlの反応器に、前記例示化合物(2)(一般式(iii)で示される重合体、20g)、水酸化カルシウム(1.79g、24.1mmol)、溶媒としてトルエン(100ml)、及び蒸留水(100ml)を仕込み、110℃で30時間反応させた。反応終了後、室温に冷却し、水層をデカンテーションで取り除いた。得られたポリマーは、メタノール洗浄(300ml×2回)、水洗浄(300ml×1回)、メタノール洗浄(300ml×2回)を行い、減圧乾燥で60℃、7.5時間乾燥させ、例示化合物(7)(一般式(i)式中、PO=ポリエチレン、A=B=水素、D=E=O、M=Ca、d=e=j=1、i=2、n=0.99)20.1gを得た。物性は以下の通りである。
・融点(Tm):100℃、108℃
・5%減量温度(TGA):288℃
・IR(cm−1):3393,2914,2849,1599,1565,1540,1472,1423,1472,968,874,719
【0179】
<例示化合物(42):一般式(iii)で示される重合体の製造>
還流管の付いた1000mlの反応器に、前記例示化合物(7)の製造で合成した重合体A2(片末端二重結合含有エチレン重合体、200g)、無水マレイン酸(134g,1.37mol)、及び塩化アルミニウム(III)(0.5g,3.75mmol)を仕込み、195℃に昇温し、30時間加熱攪拌した。反応終了後、120℃に冷却した反応ポリマーにトルエン200gを加えて溶解させた後、アセトン(1000ml)に投入し晶析させた。その後、アセトン洗浄(1000ml×2回)し、減圧乾燥機で80℃、9時間乾燥させ、例示化合物(42)(一般式(iii)中、PO=ポリエチレン、A=B=水素、n=0.98)203gを得た。二重結合の転化率(変性率)はH−NMRから計算され、99%であった。物性は以下の通りである。
H−NMR:δ(CCl)0.72−0.98(m),1.00−1.65(m),1.89−2.19(m),2.20−3.30(m),4.98−5.42(m),5.46−5.80(m)
・IR(cm−1):2900,1864,1784,1716,1474,1232,1068,968,920,730,720
【0180】
<例示化合物(41):一般式(ii)で示される重合体の製造>
還流管の付いた50ml反応器に、前記例示化合物(2)(一般式(iii)式中、PO=ポリエチレン、A=B=水素、n=0.99、0.5g)、ジ−n−ブチルアミン(0.39g,3.02mmol)を仕込み、150℃に昇温し、12時間加熱攪拌した。反応終了後、110℃に冷却した反応ポリマーにトルエン2gを加えて溶解させた後、アセトン(30ml)に投入し晶析させた。その後、アセトン洗浄(30ml×2回)し、減圧乾燥機で80℃、3時間乾燥させ、例示化合物(41)(一般式(ii)中、PO=ポリエチレン、A=B=水素、G=T=NBu、n=0.99)0.45gを得た。物性は以下の通りである。
H−NMR:δ(CCl)0.80−0.98(m),1.00−1.65(m),1.70−1.88(m),1.91−2.10(m),2.11−3.00(m),3.05−3.51(brm)5.25−5.42(m),5.43−5.65(m)
・IR(cm−1):2918,2849,1703,1640,1473,1463,1401,1376,1193,1141,969,730,719
【0181】
≪ポリアミド樹脂での離型性評価≫
〔実施例1−1〕
ポリアミド樹脂(宇部興産製、UBEナイロン:1015GC6A、融点223℃)と、前記例示化合物(3)(離型剤)と、を表3に示すような量比で混合し、二軸押出機(パーカーコーポレーション製、HK25D、シリンダー温度260℃)に装入し、溶融混練してペレット(樹脂組成物)を得た。ペレットの作製量は3kgとした。
【0182】
なお、上記1015GC6Aの融点は、以下のようにして測定した。
即ち、島津製作所製DSC−60Aを用い、以下の条件で測定して得られたピークトップ温度を採用し、融点とした。
−条件−
・セル:アルミニウム
・キャリアーガス:窒素(50ml/分)
・温度プログラム:30℃(10℃/分)→350℃
【0183】
次に上記で作製したペレットを、下記条件の下、コップ型の射出成形金型を用いて射出成形を行ってコップ型成形品を作製するとともに、射出成形の際の離型応力(離型力)を下記条件により測定した。
離型応力値はN=15ショットの平均値とした。
結果を表3に示す。
【0184】
(射出成形及び離型応力測定の条件)
コップ型金型:φ50×50×1.6mmt、勾配0.5°
金型温度:80℃
成形機:クロックナーF−85
シリンダー温度:NT/C1/C2/C3=280℃/250℃/250℃/240℃
測定装置:ニレコ社モバック100
センサー:M100A、ストレンゲージ式、受圧部ピンφ2.5
【0185】
〔実施例1−2〕
離型剤として、例示化合物(3)の代わりに、例示化合物(7)を用いた以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0186】
〔比較例1−1〕
離型剤として、例示化合物(3)を用いなかったこと(即ち、離型剤を無添加としたこと)以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。
【0187】
〔実施例1−3、比較例1−2〕
離型剤の種類及び量を下記表3に示すようにしたこと以外は実施例1−1と同様の操作を行った。
結果を表3に示す。

【0188】
【表3】

【0189】
表3に示すように、実施例1−1〜1−3では、離型剤が無添加である比較例1−1に対して離型力が50%以下に低減されており、極めて優れた離型性を示した。
また、離型剤として例示化合物(3)を樹脂100質量部に対し0.25質量部添加した実施例1−3では、モンタン酸系の離型剤を同じ量添加した比較例1−2と比較して、より優れた離型性を示した。
以上のように、本発明の離型剤は、離型性の悪いポリアミド樹脂に用いた場合でも、優れた離型性を示すことが確認された。
【0190】
≪ポリカーボネート樹脂での離型性評価≫
〔実施例2−1〕
実施例1−1において、ポリアミド樹脂をポリカーボネート樹脂(帝人化成製、パンライト:G−3410R、ガラス転移点150℃)に変更し、ペレット作製時の二軸押し出し機のシリンダー温度を280℃に変更し、射出成形時の成形機のシリンダー温度を「NT/C1/C2/C3=290℃/280℃/270℃/260℃」に変更したこと以外は実施例1−1と同様の操作を行った。
上記ガラス転移点は、既述の1015GC6Aの融点測定と同様の条件で測定し、自動計算により求めた。具体的には、接線交点からオンセット及びオフセットを求め、得られたオンセット(147℃)とオフセット(154℃)との中間点(150℃)を、ガラス転移点とした。
結果を表4に示す。
【0191】
〔実施例2−2〕
離型剤として、例示化合物(3)の代わりに、例示化合物(7)を用いた以外は、実施例2−1と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【0192】
〔比較例2−1〕
離型剤として、例示化合物(3)を用いなかったこと(即ち、離型剤を無添加としたこと)以外は、実施例2−1と同様の操作を行った。
結果を表4に示す。
【0193】
〔実施例2−3、実施例2−4〕
離型剤の種類及び量を下記表4に示すように変更したこと以外は実施例2−1と同様な操作を行った。
結果を表4に示す。
【0194】
【表4】

【0195】
表4に示すように、実施例2−1〜2−4では、離型剤が無添加である比較例2−1に対して離型力が90%以下に低減されており、優れた離型性を示した。
【0196】
≪変性ポリフェニレンエーテル樹脂での離型性評価≫
〔実施例3−1〕
実施例1−1において、ポリアミド樹脂を変性ポリフェンレンエーテル樹脂(旭化成ケミカルズ製、ザイロン:G701V、ガラス転移点210℃)に変更し、金型温度を75℃に変更し、ペレット作製時の二軸押し出し機のシリンダー温度を260℃に変更し、射出成形時の成形機のシリンダー温度を「NT/C1/C2/C3=300℃/280℃/270℃/260℃」に変更した以外は実施例1−1と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
【0197】
〔実施例3−2〕
離型剤として、例示化合物(3)の代わりに、例示化合物(7)を用いた以外は、実施例3−1と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
【0198】
〔比較例3−1〕
離型剤として、例示化合物(3)を用いなかったこと(即ち、離型剤を無添加としたこと)以外は、実施例3−1と同様の操作を行った。
結果を表5に示す。
【0199】
〔実施例3−3、比較例3−2〕
離型剤の種類及び量を下記表5に示すように変更したこと以外は実施例3−1と同様な操作を行った。
結果を表5に示す。
【0200】
【表5】

【0201】
表5中、比較例3−1の離型力「N.D.」は、金型から成形体を離型することができず、離型性が極めて悪いことを示す。
【0202】
表5に示すように、実施例3−1〜3−3では、離型剤が無添加である比較例3−1に対し、極めて優れた離型性を示した。
また、離型剤として例示化合物(7)を樹脂100質量部に対し0.25質量部添加した実施例3−3では、モンタン酸系の離型剤を同じ量添加した比較例3−2と比較して、より優れた離型性を示した。
以上のように、本発明の離型剤は、離型性が極めて悪い変性ポリフェニレンエーテル樹脂に用いた場合でも、優れた離型性を示すことが確認された。
【0203】
≪成形加工性および成形品の評価≫
〔実施例4−1〕
下記の(A)〜(H)の成分を混合し、温度310℃に設定した二軸ベント付押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−45)に装入し溶融混練してペレット(樹脂組成物)を作製した。
【0204】
−ペレットの組成−
(A)ポリアミド(三井化学(株)製 PA6T/66(融点320℃、極限粘度[η]0.8)) … 6.65kg
(B)ガラス繊維(セントラル硝(株)製、ECS03−615)
… 4.5kg
(C)臭素系難燃剤(ケムチュラ・ジャパン(株)製、PBS−64HW)
… 3.15kg
(D)難燃助剤(日本精鉱(株)製 アンチモン酸ナトリウム、SA−A)
… 0.3kg
(E)ハロゲンキャッチャー(協和化学(株)製 ハイドロサルタイト、MP−TH4)
… 0.045kg
(F)ドリップ防止剤(旭化成(株)製 マレイン化SEBS、タフテックM1913)
… 0.21kg
(G)結晶核剤(松村産業(株)製 タルク、ET−5) … 0.105kg
(H)離型剤(前記例示化合物(7)) … 0.038kg
【0205】
なお、上記PA6T/66の融点は、既述の1015GC6Aの融点と同様の方法により測定した。
【0206】
<評価>
上記で作製したペレットを用いて成形品を作製するとともに、下記の評価を行った。
評価結果を下記表6に示す。
【0207】
(曲げ試験(靭性))
上記で作製したペレットを用い、射出成形により、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片(成形品)を作製した。
得られた試験片を用い、スパン26mm、曲げ速度5mm/minで曲げ試験を行い、曲げ強度及びその試験片を破壊するのに要するエネルギー(靭性)を測定した。
射出成形及び曲げ試験の条件は以下のとおりである。
【0208】
−射出成形及び曲げ試験の条件−
成形機:(株)ソディックプラステック製のツパールTR40S3A
シリンダー温度:NT/C1/C2/C3=320℃/320℃/310℃/300℃
金型温度:120℃
曲げ試験機:NTESCO社製 AB5
【0209】
(離型力測定)
上記で作製したペレットを用いて射出成形により成形品を作製するとともに、射出成形の際の離型力を測定した。
射出成形及び離型力測定の条件は以下のとおりである。
【0210】
−射出成形及び離型力測定の条件−
成形機:日精樹脂工業(株)製のPS−40E
射出条件:射出圧力50%、射出速度30%
シリンダー温度:NT/C1/C2/C3=320℃/320℃/310℃/300℃
金型:コネクタ金型(金型温度100℃)
離型力測定機:日精樹脂工業(株)製DLA(Data Logger Analyzer)
【0211】
(ベント閉塞性試験)
上記で作製したペレットを用い、射出成形により試験片(成形品)を作製した。ここで、射出成形はガスベントを備えた角板型金型(詳細は以下に示す)を用いて行った。
上記と同様にして試験片を繰り返し作製し、モールドデポジットにより金型のガスベントが閉塞し、試験片にガス焼けが確認できるショット数(試験片の個数)を測定した。
ショット数が多いほど、ベント閉塞が抑制されていることを示す。
射出成形の条件の詳細は以下のとおりである。
【0212】
−射出成形の条件−
・成形機: (株)ソディックプラステック製のツパールTR40S3A
・射出条件: 射出速度150mm/s
・シリンダー温度:NT/C1/C2/C3=320℃/320℃/310℃/300℃
・金型: 幅20mm、ランド長2mm、深さ10μmのガスベントを備えた、幅20mm、長さ40mm、高さ3mmの角板型金型(金型温度135℃)
【0213】
(リフロー耐熱性試験)
上記で作製したペレットを用い、射出成形により、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片(成形品)を作製し、作製された試験片について以下のようにしてリフロー耐熱性試験を行った。
【0214】
まず、上記試験片を、温度40℃、相対湿度95%で96時間調温調湿した。
調温調湿後の試験片を、厚み1mmのガラスエポキシ基板上に載置すると共に、この基板上に温度センサーを載置した。試験片及び温度センサーが載置された基板について、赤外線及び熱風併用型リフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製 AIS−20−82C)を用いて、リフロー加熱を施し、温度プロファイル(温度変化)を測定した。
ここで、リフロー加熱は、設定温度を、255℃、260℃、265℃の3種類に設定して行った。
【0215】
図1は、各設定温度におけるリフロー加熱の温度変化を示すグラフである。詳しくは、破線は設定温度を255℃としたときの温度変化であり、一点鎖線は設定温度を260℃としたときの温度変化であり、実線は設定温度を265℃としたときの温度変化である。
図1に示すように、温度変化は、加熱開始後1分以内に180℃まで昇温し、加熱開始後2分30秒付近まで180℃で保持し、加熱開始後2分30秒付近から設定温度に向けて昇温し、加熱開始後3分20秒付近で設定温度に達し、加熱開始後4分で100℃付近まで降温する温度変化となっていた。
【0216】
リフロー耐熱性試験は、上記温度プロファイルのリフロー加熱を施した後の試験片を目視で確認し、試験片の溶解の有無、及び、試験片表面のボイドの発生有無を観察することにより行った。試験は、各設定温度について2回ずつ行い、試験結果を以下のように分類した。
【0217】
−リフロー耐熱性試験の分類−
「0/2」 … 試験2回中、2回とも、試験片の溶解もボイドの発生も無かった。
「1/2」 … 試験2回中、1回のみ、試験片の溶解またはボイドの発生があった。
「2/2」 … 試験2回中、2回とも、試験片の溶解またはボイドの発生があった。
評価結果「0/2」がリフロー耐熱性に最も優れており、評価結果「1/2」が次に優れており、評価結果「2/2」がリフロー耐熱性に最も劣っている。
【0218】
〔比較例4−1〕
実施例4−1において、(H)離型剤を添加せず、かつ、(A)ポリアミドの量を6.69kgに変更したこと以外は実施例4−1と同様にしてペレットを作製し、実施例4−1と同様の評価を行った。
評価結果を表6に示す。
【0219】
〔比較例4−2〕
実施例4−1において、(H)離型剤として、例示化合物(7)に代えて、リコモントCaV−102を用いたこと以外は実施例4−1と同様にしてペレットを作製し、実施例4−1と同様の評価を行った。
評価結果を表6に示す。
【0220】
【表6】

【0221】
表6に示すように、曲げ強度及び破壊エネルギー(靭性)において、本発明の離型剤を用いた場合(実施例4−1)は、無添加(比較例4−1)と同等の強度を保っていた。
一方、モンタン酸系の離型剤を用いた比較例4−2では、樹脂の強度が低下していた。 この結果は、高温の混練において、本発明の離型剤は樹脂の機械物性を殆ど変化させることなく成形していることを示す。
また、離型力では、本発明の離型剤を用いた場合は、無添加の場合と比較して、小さい力で金型から離型させることができていた。
さらに、ベント閉塞性において、本発明の離型剤を用いた場合が最も良い結果となり、金型汚染が少なく、生産性の向上も図れるものとなっていた。
リフロー耐熱性試験では、本発明の離型剤を用いた場合は、255〜265℃の設定温度のうち、いずれの温度においてもボイドは観察されず、はんだ工程における熱変形が抑制されることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(i)、下記一般式(ii)、または下記一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体と、樹脂と、を含む樹脂組成物。
【化1】



(一般式(i)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。Mは、金属カチオンまたはオニウムカチオンを表す。jは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの数を表し、0〜4の整数である。iは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの価数を表し、0〜4の整数である。D及びEは、それぞれ独立に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、R、OR、SR、またはNRを表し、DとEとは結合して環構造を形成してもよい。d及びeは、それぞれ置換基D及びEの価数を表し、0〜4の整数である。なお、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。)
【化2】



(一般式(ii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。G及びTは、それぞれ独立に、ハロゲン、R、OR、SR、またはNRを表し、G及びTは環構造を形成してもよい。R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【化3】



(一般式(iii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【請求項2】
前記樹脂が、ポリアミド樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)中の極性基が、ポリオレフィン重合体の片末端または両末端に存在する請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(i)、前記一般式(ii)、前記一般式(iii)中のPOが、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される1種を重合して得られたホモ重合体であるか、または、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される2種以上を共重合して得られた共重合体である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られた樹脂成形体。
【請求項6】
下記一般式(i)、下記一般式(ii)、または下記一般式(iii)で示される極性基含有ポリオレフィン重合体を含む離型剤。
【化4】



(一般式(i)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。Mは、金属カチオンまたはオニウムカチオンを表す。jは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの数を表し、0〜4の整数である。iは、金属カチオンまたはオニウムカチオンの価数を表し、0〜4の整数である。D及びEは、それぞれ独立に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、R、OR、SR、またはNRを表し、DとEとは結合して環構造を形成してもよい。d及びeは、それぞれ置換基D及びEの価数を表し、0〜4の整数である。なお、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。)
【化5】



(一般式(ii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。G及びTは、それぞれ独立に、ハロゲン、R、OR、SR、またはNRを表し、G及びTは環構造を形成してもよい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【化6】



(一般式(iii)中、POは、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される少なくとも1種を含む単量体を重合して得られるポリオレフィン重合体であり、かっこ内に示される基が極性基である。A及びBは、それぞれ独立に、R、シアノ基、C(O)OR、またはC(O)NRを表し、AとBとは結合して環構造を形成してもよい。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルキニル基、炭素数20以下のアラルキル基、炭素数20以下のアリール基、または複素環を有する炭素数20以下の基を表す。nは平均官能基数を表し、0.80〜10.0である。また、POにおける二重結合のかっこ内に示される極性基による変性率は80%以上である。)
【請求項7】
前記一般式(i)、前記一般式(ii)、または前記一般式(iii)における極性基が、ポリオレフィン重合体の片末端または両末端に存在する請求項6に記載の離型剤。
【請求項8】
一般式(i)、一般式(ii)、または一般式(iii)中のPOが、エチレン及び炭素数3〜20のオレフィンからなる群から選択される1種を重合して得られたホモ重合体であるか、または、前記群から選択される2種以上を共重合して得られた共重合体である請求項6または請求項7に記載の離型剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−57728(P2011−57728A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205319(P2009−205319)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】