説明

離隔距離確認器具

【課題】地上巡視に際して携帯するのに障害とならない程度にコンパクト化することができ、一旦設置した場合には数年間は利用することができるばかりでなく、樹木が密集する等の目視確認しにくい環境であっても容易に確認器具の所在を把握して、電線と他の樹木との間の離隔距離を確認する。
【解決手段】内外径が異なる中空、且つ絶縁性の棒状部材を入れ子式に伸縮自在とした竿2と、最大外径の棒状部材を樹木の幹に固定するための固定手段10と、最小外径の棒状部材の先端部に設けられた目印部材20と、最小外径の棒状部材の先部に一端を支持された絶縁紐30と、絶縁紐他端に固定されて空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーン35と、を備え、各棒状部材は、竿の全長を任意の長さに固定できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧送電線とその下方に位置する樹木等の送電線近接物との間の距離が安全上許容される程度に十分に離隔しているか否かを確認するための離隔距離確認器具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔間に張設される高圧送電線は、送電経路に沿った地上の樹木や建造物等の背の高い物体(送電線近接物)から十分に離隔した高さ位置に配置する必要がある。高圧送電線は絶縁樹脂等による絶縁被覆ができないために裸電線であり、空気を利用して絶縁を確保している。そのため、高圧電線から所定距離以内の空間に樹木等があると、電線に接触しなくても空気絶縁が破られることにより放電が発生し火災の原因となる。
特に、樹木は成長して送電線との間の距離が経時的に縮まるため、電力会社では一年に一回程度、定期的に電線と樹木頂部との間の離隔距離を確認するための巡視を行い、離隔距離が許容限度を下回っている場合には、地権者の承諾を得てから樹木の頂部を所定長に亘り伐採(剪定)する作業を実施することとなる。なお、通常、樹木との干渉が問題となる送電線の地上高は20m程度までである。送電線と樹木等との間の適正な離隔距離は、送電線の電圧に応じて法定されているが、許容される離隔距離は4〜6mの範囲であり、樹木を対象とする場合にはその成長による距離の短縮分を考慮して大きめに離隔距離を定める。そして、離隔距離が上記許容範囲を越えて短い場合には、樹木を伐採することとなる。
【0003】
ところで、従来送電線と樹木との間の離隔距離を調べる場合には、巡視ヘリコプターによる航空測量調査(特許文献1、2)や、請負業者が鉄塔に登った上で目視による調査する目視点検等が行われていたが、何れも多大な費用がかかるため、電力会社サイドで低廉に行える測距の方法の開発が求められていた。
地上、或いは高所から目視、又は望遠鏡による観察によって送電線と樹木との間の離隔距離をある程度の正確さで判定することは容易ではない。特に、巡視者による判断は感覚的に行われるため、送電線と巡視者の位置との高低差や距離によって、正確に離隔距離を判断することが困難となる。離隔距離判断が特に困難となるのは、送電線の地上高が低いために樹木が接近し易い森林地帯であり、離隔距離の判断ミスも起こりやすい。
なお、正確な離隔距離の判断は熟練した専門家によれば困難ではないが、熟練者を育てること自体にコストと時間を要するし、判断ミスも有り得る。仮に、50cm単位、1m単位の判断ミスが生じたとしても、一年後の定期的な巡視調査までの間に樹木が危険距離内にまで成長する可能性が高まる。更に、樹木が密集している等の植生状況や、地形等の環境条件によっては目視観察できない場合もあった。
巡視した結果、離隔判断があやふやな場合には、後日、班編成を組んで、作業員が鉄塔に登って確認することとなるが、リスク回避、コスト低減にはほど遠い結果となる。
【0004】
また、従来、地上巡視において、釣り竿式に伸縮自在な絶縁性伸縮パイプを短縮した状態で携帯し、電線と樹木との離隔距離を測定する際に伸長させて電線まで延ばし距離を測り、樹木との間隔を目視観察する測定方法が行われていた。しかし、この伸縮パイプは最長でも15m程度しか伸長しないので、それ以上の高さ位置にある送電線には適用することができなかった。また、長く延ばすとしなりを起こすため、正確な測定ができなくなり、扱いにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−313715号公報
【特許文献2】特開平09−097342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
森林地帯、山岳地帯に配設される高圧送電線は樹木との離隔距離を十分に確保する必要があるが、樹木は成長して離隔距離が経時的に縮まるため、定期的に地上巡視を行って離隔距離を確認し、必要な場合には剪定、伐採を行う必要がある。
本発明は、地上巡視に際して携帯するのに障害とならない程度にコンパクト化することができ、一旦設置した場合には数年間は利用することができるばかりでなく、樹木が密集する等の目視確認しにくい環境であっても容易に確認器具の所在を把握して、電線と他の樹木との間の離隔距離を確認することができる離隔距離確認器具を提供することを目的としている。
また、遠方からの離隔距離の確認に際しても計測者の技量等の個人差によるバラツキを生じることなく、取扱性に極めて優れた離隔距離確認器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る離隔距離確認器具は、複数の絶縁性の棒状部材を伸縮自在に連結した竿と、基端側の棒状部材を樹木に固定するための固定手段と、先端側の棒状部材に設けられた目印部材と、該先端側の棒状部材の先部に一端を支持された絶縁紐と、該絶縁紐他端に固定されて空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーンと、を備えたことを特徴とする。
特定の樹木の先端を所定の高さまで切断して短縮させ、この樹木の幹先端部に離隔距離確認器具を固定して送電線との間の離隔距離を示す目印部材を設置するようにした。目印部材は、送電線との間の適正な離隔位置を示しているため、隣接する他の樹木の先端部の高さを目印部材の高さと比較することによって、比較的正確に送電線と他の樹木との離隔距離を推定することが可能となる。このため、個人差がなく、常に安定した精度で、離隔距離を確認、測定できる。また、竿は伸縮自在でコンパクト化できるので、山岳地帯、森林遅滞を巡視する場合にも携帯した離隔距離確認器具が邪魔となることがない。
【0008】
請求項2の発明は、内外径が異なる中空、且つ絶縁性の棒状部材を入れ子式に伸縮自在とした竿と、該竿の最大外径の棒状部材を樹木に固定するための固定手段と、最小外径の棒状部材の先端部に設けられた目印部材と、該最小外径の棒状部材の先部に一端を支持された絶縁紐と、該絶縁紐他端に固定されて空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーンと、を備え、前記各棒状部材は、前記竿の全長を任意の長さに固定できるように構成されていることを特徴とする。
竿として、釣り竿に類した伸縮構造を採用した構成例である。コンパクト化、軽量化できる利点を有する。
【0009】
請求項3の発明では、前記固定手段は、前記竿の傾斜角度を調整するチルト機構を備えていることを特徴とする。
絶縁紐とバルーンを用いて竿の先端から送電線までの離隔距離を設定するため、竿が垂直に設置されることが重要である。このため、チルト機構等を用いて竿の姿勢を調整可能とした。
【0010】
請求項4の発明では、前記目印部材は、太陽光を反射させる反射鏡であることを特徴とする。
目印部材としては種々のもの(旗、吹き流し等)を想定できるが、ミラーボールのような反射鏡は目に付きやすいため、有効である。
【発明の効果】
【0011】
絶縁性伸縮パイプをメジャー代わりに使用して離隔距離を測定する従来の方法は、絶縁性伸縮パイプの携帯性の悪さ、長く伸長させた時のしなりの発生等による測定精度の低下、といった不具合があった。
本発明によれば、一つの樹木を他の樹木の離隔距離を確認する手段の一部として利用するものであり、所定の高さまで切断して短縮させた樹木の幹先端部に離隔距離確認器具を固定して送電線との間の離隔距離を示す目印部材を設置するようにした。目印部材は、送電線との間の適正な離隔位置を示しているため、隣接する他の樹木の先端部の高さを目印部材と比較することによって、比較的正確に送電線との間の離隔距離を推定することが可能となる。このため、個人差がなく、常に安定した精度で、離隔距離を確認、測定できる。また、竿は伸縮自在でコンパクト化できるので、山岳地帯、森林遅滞を巡視する場合にも携帯した離隔距離確認器具が邪魔となることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る離隔距離確認器具の収納時の外観図、及び樹木への取付け状態を示す図である。
【図2】確認器具を用いた電線と樹木頂部との離隔距離の確認、測定作業を説明する図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る離隔距離確認器具の要部構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る離隔距離確認器具の収納時の外観図、及び樹木への取付け状態を示す図である。
離隔距離確認器具1は、電力会社の巡視員等が高圧送電線とその下方に位置する樹木等の送電線近接物との間の距離が安全上許容される程度に十分に離隔しているか否かを判断するための手段である。
離隔距離確認器具(以下、確認器具、という)1の基本構造は、複数の絶縁性の棒状部材4a、4b、4cを伸縮自在に連結した竿2と、基端側の棒状部材4aを樹木Tに固定するための固定手段10と、先端側の棒状部材に設けられた目印部材20と、該先端側の棒状部材の先部に一端を支持された絶縁紐30と、該絶縁紐他端に固定されて空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーン35と、を備えた構成にある。
【0014】
次に、具体的実施形態に基づいて本発明を説明する。
即ち、離隔距離確認器具(以下、確認器具、という)1は、内外径が異なる中空、且つ絶縁性の棒状部材(樹脂製パイプ)4a、4b、4cを入れ子式に伸縮自在とした竿2と、竿の最大外径の棒状部材4aを上部を切断した樹木Tの幹の上部に固定するための固定手段10と、最小外径の棒状部材4cの先端部に設けられた目印部材20と、最小外径の棒状部材4cの先部に一端を支持された絶縁紐30と、絶縁紐30の他端に固定されて空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーン35と、を備える。
なお、必要に応じて竿の下部に錘としてゴムから成る錘袋40を取り付ける。
【0015】
竿2は、入れ子式に伸縮する複数本の棒状部材4a、4b、4cと、棒状部材4aと棒状部材4bとの間、及び棒状部材4bと棒状部材4cとの間を固定する締結部材6と、を備えている。締結部材6は、例えば内周面に雌螺子部を有した環状部材であり、これを棒状部材4a、4bの先端部に夫々設けた図示しない雄螺子部に螺着する。棒状部材4a、4bの先端部には、軸方向へ延びるスリットを形成することによって、各棒状部材4a、4bの先端部は縮径、拡径が可能となっている。棒状部材4aに対して棒状部材4bを固定し、棒状部材4bに対して棒状部材4cを固定する際には、手作業、或いは工具を用いて各締結部材6を締結方向に回転させて各棒状部材4a、4bの先端部を縮径させればよい。
各棒状部材の外面形状、及び内面形状は、円筒形である必要はなく、互いに整合し合う多角形状であってもよい。
最大径の棒状部材4aは、例えば直径を10cm程度、軸方向長を1.5m程度とし、竿2の最大伸長時の長さを4m程度とする。
竿2は、全体として遠方から見た場合に目立つように赤色、その他の色に着色する。
なお、締結部材6としては、図示したものに限らず、所謂突っ張り棒に使用される他の固定手段を適用することも可能である。
竿2は、図示のような入れ子式の伸縮構造に限らず、多段状に全長を伸長、短縮できる構造であれば、どのような構造であってもよい。
【0016】
固定手段10は、最大径の棒状部材4aに離間して固定される2つのリング部材11、15と、一方のリング部材11に連結されたチルト機構12と、他方のリング部材に連結された伸縮機構16と、チルト機構12、及び伸縮機構の他端部間を連結すると共に樹木Tの幹の表面に添設される添設部材17と、添設部材17を幹に固定する締結バンド(樹脂バンド、ステンレスバンド等)18と、を備える。
リング部材11、15は、金属、或いは樹脂から構成する。リング部材11、15は、棒状部材4aに対して固定してもよいし、着脱自在にしてもよい。
チルト機構12は、リング部材11から延びる連結片12aと添設部材17から延びる連結片12bと、両連結片12a、12bの端部間に配置された回動片(自在継手)12cとから成る。つまり、連結片12a、12bの端部は、回動片12cによって上下方向へ相対回動可能に連結されている。チルト機構12は棒状部材4aの傾斜角度を調整する手段である。
【0017】
伸縮機構16は、リング部材15から延びる連結片16aと、添設部材17から延びる連結片16bを入れ子式にスライド自在に連結すると共に、両連結片16a、16b間を任意の長さで固定する螺子、ナットなどから成る締結片16cと、を有している。例えば、一方の連結片16aに丸穴を貫通形成すると共に、他方の連結片16bには丸穴と連通する長穴を形成しておき、丸穴と長穴に螺子を差し込んだ状態で、反対側からナットを螺子に締結することによって、両連結片を任意の長さで固定することができる。
樹木Tの先端が垂直でない場合等には、チルト機構12と伸縮機構16を利用して竿2を垂直姿勢に調整することができる。即ち、伸縮機構16によって添設部材17と棒状部材4aとの距離を設定した後で、チルト機構12によって竿の傾斜角度を微調整することができる。
なお、本例では、チルト機構12を伸縮機構16の上側に配置したが、両者の位置関係は逆であってもよい。
【0018】
竿の下部に錘として取り付けるゴムから成る錘袋40を、チルト機構12及び伸縮機構16と併用することによって、竿2の重心を低下させてその姿勢を垂直に調整するのに役立てることができる。即ち、水を充填した錘袋40を最下部の棒状部材4aの底部に取り付けた状態で樹木に取り付ける作業を行うことにより、竿2の全体の重心が錘袋40の近傍に集中するため、チルト機構12及び伸縮機構16を用いて竿の姿勢を調整する際に、竿全体を垂直姿勢に調整し易くなる。竿の姿勢の調整を終了した後は、錘袋40の栓41を抜いて水を捨てればよい。なお、水の代わりに、錘袋40内に砂や小石を入れるようにしてもよい。
チルト機構12や伸縮機構16は、必須ではなく、垂直に延びる樹木の先端に竿を固定する場合には、竿を直接、或いは添設部材を介して樹木の幹に固定してもよい。
目印部材20は、例えば図示のように棒状部材4cの先端部から上方に突出しつつ拡開した絶縁性の樹脂材料から構成し、その着色、形状が遠方から容易に視認できるように目立つように構成する。破れにくい柔軟な素材からなる旗や吹き流しのようなものでもよい。
【0019】
バルーン35は、ゴム等の弾力性と十分な強度を有した材料にて構成され、その内部にはヘリウムガス等の空気よりも比重の小さい気体が封入されることによって十分な浮力を発生させるように構成されている。バルーンの適所に設けた注入口から図示しない携帯用のガスボンベを用いてガスを注入することにより使用可能な状態となる。注入口には逆止弁を設けるか、キャップを設けたガスが漏れ出ないように構成する。即ち、巡視員が山岳地帯や森林地帯を移動する際には、バルーン35にガスを注入しない状態で竿等と共にコンパクト化してバッグ等に収納して携帯する。一方、離隔距離を確認(測定)する場合にはガスボンベからバルーン内にガスを注入して十分な浮力を発生させた上で実使用に供する。バルーン内のガスを抜く場合には、注入口から排出させればよい。
なお、バルーン中に常時ガスを封入した構成とし、現場でのガスの注入作業を省略できるようにしてもよい。
バルーン35は、ガスが漏出することによって徐々に落下してゆき、次回の巡視時には離隔距離を確認する手段として使用し得なくなる。
【0020】
絶縁紐30は、絶縁材料から成る紐、ワイヤ、帯状体、その他の柔軟且つ長尺な長尺部材から構成し、必要に応じてその長手方向に沿って所定のピッチにて長さを示す目盛りを形成してもよい。バルーン35の適所に対して絶縁紐の一端を一体化しておいても良いし、着脱具を用いてバルーン35に対して着脱自在に構成してもよい。絶縁紐30の基端部は、棒状部材4cの先端部に固定してもよいし、着脱自在にしてもよい。絶縁紐30の長さは、棒状部材4cの先端部と送電線Cとの間の離隔距離を知るための手段であるため、送電線の種類によって法定の離隔距離が異なってくる場合には、それに応じた長さの絶縁紐に交換使用できるようにするのが好ましい。
なお、確認器具1を取り付けた樹木Tの生育(伸長)状態を次回の巡視時に確認する場合に、絶縁紐の先端に新たなバルーン35を取り付けて浮上させて送電線との間の距離を確認する作業が必要となるため、絶縁紐としては耐久性を有した素材を使用する。
絶縁紐30に目立つ色の旗や吹き流しを取り付けて遠方から視認できるようにしてもよい。
【0021】
本発明の確認器具1は、特定の樹木Tの幹を先端から所定長切断した後で、この樹木の幹の先端部に固定する。樹木の切断箇所は、切断後の樹木先端部と電線との離隔距離が法定離隔距離(例えば、送電線が110kVの場合には、2.6m)を十分越えるように低い位置にする。切断された樹木の先端部に固定手段10を用いて最大外径を有した棒状部材4aを固定する。この時、バルーン35には空気より軽いガス(例えば、ヘリウムガス)が充填されているため、絶縁紐30は上空へ向けて引き上げられた状態にある。また、絶縁紐の長さは、前記法定離隔距離(2.6m)、或いはそれを越える長さに設定されている。この状態で、樹木に固定された棒状部材4aから他の棒状部材4b、4cを順次引き出して竿の全長を伸長させ、バルーン35が電線の高さに達した時に締結部材6を操作して竿の長さを固定する。
このとき、先端の棒状部材4aの先端に設けた目印部材20と送電線との間の離隔距離が法定離隔距離、或いはそれを越えた距離となる。
樹木の種類にもよるが、20m前後の高さを有した樹木の幹は、枝とは異なり、2、3年ではさほど伸長しないため、切断した幹の先端部に固定された竿の先端部の目印部材20の高さ位置は4、5年間は大きく変化しない。このため、確認器具1を取り付けた樹木Tと近接する他の樹木の先端部と、目印部材20の高さ位置とを比較することによって、他の樹木の先端部がどの程度電線に接近しているかを確認することが可能となる。即ち、他の樹木の先端部と電線との間の離隔距離を目視確認する作業は容易ではないが、近接する樹木に取り付けた目印部材の高さとの比較によって他の樹木の先端部の高さを確認し、その結果を利用して電線との離隔距離を割り出すことは容易である。
【0022】
本発明の確認器具1は、送電線Cの地上高が低く、頻繁に樹木を伐採する必要がある箇所等において効果を発揮する。
なお、確認機器1を設置した樹木Tの高さが設置後数年経過すると、20cm、或いは30cm以上伸びる可能性があるため、一定期間が経過した時期に確認機器1の目印部材20の高さを調整する必要がある。この場合には、樹木Tに登って締結部材6を緩めて竿2を短縮させた状態で絶縁紐30先端にガスを封入した新たなバルーン35を取り付けて、竿の長さの調整作業を実施する。樹木Tが成長したことによってバルーン35の高さ位置が電線よりも上方に達する場合には、その分だけ竿を短くして締結部材6によって固定することとなる。
この確認器具1を用いた電線と樹木頂部との離隔距離の確認、測定作業は、図2のようにして実施される。即ち、地面に植立した樹木T、T1の上方に送電線Cが通っている場合に巡視員が適切な離隔距離Lを確認器具1を用いて測定するには、樹木Tの頂部に設置した確認機器1先端の目印部材20と隣接する他の樹木Tの頂部の高さとを比較する。即ち、樹木群から十分に離間した地面、或いは高台に立った巡視者が目印部材20と樹木と電線を見ると、図2のような状態に見える。
【0023】
図2のように目印部材20よりも頂部の位置が高いことが明かな他の樹木T1は離隔距離Lを越えて送電線Cに近づいていることが判明する。
次に、図3は本発明の他の実施形態であり、目印部材20としてミラーボールのように太陽光を拡散反射させる反射鏡20aを用いた例を示している。太陽光が照射する日中に巡視は行われるため、竿の先端に反射鏡20aを設置しておくことにより遠方からでもその位置を容易に確認することが可能となる。
反射鏡20aとしては、耐久性に優れ、且つ軽量の金属、樹脂等から成るものを用いる。
【0024】
以上のように本発明では、特定の樹木の先端を所定の高さまで切断して短縮させ、この樹木の幹先端部に離隔距離確認器具1を固定して送電線Cとの間の離隔距離を示す目印部材20を設置するようにした。目印部材は、送電線との間の適正な離隔位置を示しているため、隣接する他の樹木の先端部の高さを目印部材の高さと比較することによって、比較的正確に送電線と他の樹木との離隔距離を推定することが可能となる。このため、個人差がなく、常に安定した精度で、離隔距離を確認、測定できる。また、竿は伸縮自在でコンパクト化できるので、山岳地帯、森林遅滞を巡視する場合にも携帯した離隔距離確認器具が邪魔となることがない。
なお、本発明に係る確認器具を設置する対象物としては、一般の樹木の他に、竹を含む。竹の新芽(タケノコ)は成長が早く、しかも成長量が予想を超えて長大化する場合が多いため、本発明の確認器具による離隔距離確認が有効となる。
【符号の説明】
【0025】
1…離隔距離確認器具、2…竿、4a…棒状部材、4b…棒状部材、4c…棒状部材、6…締結部材、10…固定手段、11、15…リング部材、12…チルト機構、12a…連結片、12b…連結片、12c…回動片、15…リング部材、16…伸縮機構、16a…連結片、16b…連結片、16c…締結片、17…添設部材、20…目印部材、20a…反射鏡、30…絶縁紐、35…バルーン、40…錘袋、41…栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁性の棒状部材を伸縮自在に連結した竿と、基端側の棒状部材を樹木に固定するための固定手段と、先端側の棒状部材に設けられた目印部材と、該先端側の棒状部材の先部に一端を支持された絶縁紐と、該絶縁紐他端に固定されて空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーンと、を備えたことを特徴とする離隔距離確認器具。
【請求項2】
内外径が異なる中空、且つ絶縁性の棒状部材を入れ子式に伸縮自在とした竿と、該竿の最大外径の棒状部材を樹木に固定するための固定手段と、最小外径の棒状部材の先端部に設けられた目印部材と、該最小外径の棒状部材の先部に一端を支持された絶縁紐と、該絶縁紐他端に固定されて空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーンと、を備え、
前記各棒状部材は、前記竿の全長を任意の長さに固定できるように構成されていることを特徴とする離隔距離確認器具。
【請求項3】
前記固定手段は、前記竿の傾斜角度を調整するチルト機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の離隔距離確認器具。
【請求項4】
前記目印部材は、太陽光を反射させる反射鏡であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の離隔距離確認器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−95395(P2012−95395A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238856(P2010−238856)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】