説明

難燃性ポリエステルフィルムおよびその製造方法

【課題】 難燃性に優れ、200℃近辺の高温下での耐熱寸法安定性及び製膜性が良好な難燃性ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層Aの両面に、下記(a)及び(b)で表される特性(a)TG曲線の450〜750℃の範囲に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)および(a1)よりも高温側に位置する少なくとも1つの変曲点(a2)が存在し、(b)TG曲線の40〜750℃の範囲における重量減少率が30〜70%を同時に満たす樹脂層Bが積層されてなる難燃性ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。更に詳しくは、難燃性に優れ、高温下での耐熱寸法安定性及び製膜性が良好な難燃性ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、写真フィルム、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、金属ラミネート用フィルム、ガラスディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。
【0003】
近年、製造物責任法の施行に伴い、火災に対する安全性を確保するため、樹脂の難燃化が強く要望されている。従来用いられている有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物等のハロゲン系難燃剤は、難燃効果は高いものの、成形・加工時にハロゲンが遊離し、腐食性のハロゲン化水素ガスを発生して、成形・加工機器を腐食させ、また作業環境を悪化させる可能性が指摘されている。また、前記難燃剤は、火災などの燃焼に際して、ハロゲン化水素等のガスを発生するという報告もある。そのため、近年ハロゲン系難燃剤に替わり、ハロゲンを含まない難燃剤を用いることが強く要望されている。
【0004】
ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法としては、水酸化マグネシウムに代表される無機化合物、赤リンに代表される無機リン化合物、リン酸エステルやホスホン酸化合物およびホスフィン酸化合物などに例示されるリン化合物等が知られている。しかしながら、これらのハロゲンを含まない難燃剤をポリエステルに適用した場合、十分な難燃性を得るためには多量の添加量を必要とすることから、ポリエステルフィルムが本来有する耐熱性や機械特性などが低下することが指摘されており、また、これら難燃剤が原因となって発生するガス成分が各種電気機器に影響を与える可能性もあることから、さらなる新しい難燃化方法が求められている。
【0005】
例えば特開2004−243760号公報には、ポリエステルフィルムの両面に特定の熱分解特性を有し、かつ180〜450℃における非可燃性ガス発生率が3〜40%である樹脂層が積層された難燃性ポリエステルフィルムが提案されており、ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートが具体的に用いられている。該公報によれば、燃焼熱によって非可燃性ガスを発生させる化合物を配合して難燃性を高める発明であり、非可燃性ガスを発生する化合物として無機水酸化物および/またはトリアジン化合物が配合されている。しかしながらこのような化合物はポリエステルの熱分解が本格化する前に非可燃性ガスを発生させることでポリエステルの熱分解を抑制することから、用いるポリエステルの種類によっては加工温度域で非可燃性ガスが発生してしまい十分な製膜性が得られない場合がある。
【0006】
また特開2004−285338号公報において、ポリエステルとポリイミドとを構成成分として含み、燃焼指数が125未満である単層または積層の二軸配向ポリエステルフィルムが提案されており、ポリエステルとして具体的にポリエチレンテレフタレートが用いられている。しかしながら、該公報に開示されるように単層または積層体の芯層としてポリエチレンテレフタレートとポリイミドとのブレンド物を用いた場合、200℃近辺の高温条件下における寸法安定性が求められる用途には展開できないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2004−243760号公報
【特許文献2】特開2004−285338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の従来技術の課題を解決し、難燃性に優れ、200℃近辺の高温下での耐熱寸法安定性及び製膜性が良好な難燃性ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、難燃性に優れ、200℃近辺の高温下での耐熱寸法安定性及び製膜性が良好な、比較的安価なフレキシブル回路基板の基材フィルムおよび太陽電池の基材フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層の両面に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートおよびそれよりも高温側に変曲点を有する樹脂、すなわち熱分解開始温度がポリエチレンナフタレンジカルボキシレートよりも高い樹脂からなり、しかも750℃まで昇温した時の重量減少率が比較的小さく、残炭率が高い熱分解特性を有する樹脂層を積層させることによって、優れた難燃性を付与でき、しかも200℃近辺の高温下での耐熱寸法安定性にも優れ、製膜性も良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層Aの両面に、下記(a)及び(b)で表される特性
(a)TG曲線の450〜750℃の範囲に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)および(a1)よりも高温側に位置する少なくとも1つの変曲点(a2)が存在し、
(b)TG曲線の40〜750℃の範囲における重量減少率が30〜70%
を同時に満たす樹脂層Bが積層されてなる難燃性ポリエステルフィルムによって達成される。
【0011】
また、本発明の二軸配向エステルフィルムは、その好ましい態様として、変曲点(a2)を有する樹脂がポリエーテルイミドであること、樹脂層Bの重量を基準としてポリエーテルイミドを40〜80重量%含むこと、樹脂層Bの合計厚みが1.5〜10.0μmであること、ポリエステルフィルム全層の厚みが5〜200μmであること、ポリエステルフィルム全層の厚みに対する樹脂層Bの合計厚みの割合が10〜40%の範囲内であること、樹脂層Bの180〜450℃における非可燃性ガス発生率が0.01%以上3%未満であること、の少なくともいずれか一つを具備するものも包含する。
また本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、フレキシブル回路基板の基材フィルムまたは太陽電池の基材フィルムのいずれかに用いられることを包含する。
【0012】
さらに本発明は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層Aの両面に、下記の(a)及び(b)で表される特性
(a)TG曲線の450〜750℃の範囲に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)および(a1)よりも高温側に位置する少なくとも1つの変曲点(a2)が存在し、
(b)TG曲線の40〜750℃の範囲における重量減少率が30〜70%
を同時に満たす樹脂層Bが積層されてなる難燃性ポリエステルフィルムの製造方法であって、
層Aを構成するポリエチレンナフタレンジカルボキシレートおよび層Bを構成する樹脂それぞれが共押出法により溶融状態でダイ内部で積層されてからシート状に押出された後、縦延伸倍率および横延伸倍率それぞれ2.5〜5.0倍の範囲で二軸延伸して得られる難燃性ポリエステルフィルムの製造方法も包含される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層の両面に特定の熱分解特性を有する樹脂層を積層させることによって、優れた難燃性を付与でき、しかも200℃近辺の高温下での耐熱寸法安定性にも優れ、製膜性も良好であることから、難燃性及び耐熱性が必要とされる各種用途に広く用いることができ、例えばフレキシブル回路基板の基材フィルムや太陽電池の基材フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
<ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート層A>
本発明のフィルムの層Aを構成するポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、主たるジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸が用いられ、主たるグリコール成分としてエチレングリコールが用いられる。ナフタレンジカルボン酸としては、たとえば2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができ、これらの中で2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ここで「主たる」とは、層Aを形成するポリマーの構成成分において全繰返し単位の少なくとも90mol%、好ましくは少なくとも95mol%を意味する。ポリエチレンナフタレートがコポリマーである場合、コポリマーを構成する共重合成分としては、例えば蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸;p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸の如きオキシカルボン酸;或いはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコールの如きジオールを好ましく用いることができる。これらの共重合成分は、1種または2種以上用いてもよい。これらの共重合成分の中で、好ましい酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸であり、好ましいジオール成分としては、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物である。
【0015】
ポリエチレンナフタレートがポリマーブレンドである場合、ブレンド成分としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン4,4’−テトラメチレンジフェニルジカルボキシレート、ポリエチレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリネオペンチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステルを挙げることができる。これらのブレンド成分は、1種または2種以上用いてもよい。
【0016】
また、本発明のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってよく、極く少量の例えばグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0017】
本発明のポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とグリコールの反応で直接低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとをエステル交換触媒を用いて反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることができる。
【0018】
本発明は、3層からなる難燃性ポリエステルフィルムの芯層である層Aとしてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いることにより、200℃近辺の高温条件下において良好な寸法安定性が得られ、また本発明の樹脂層Bとの共押出性および密着性を良好にすることが可能となる。
【0019】
<樹脂層B>
本発明のフィルムの層Bを構成する樹脂は、下記の(a)及び(b)で表される特性
(a)TG曲線の450〜750℃の範囲に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)および(a1)よりも高温側に位置する少なくとも1つの変曲点(a2)が存在し、
(b)TG曲線の40〜750℃の範囲における重量減少率が30〜70%
を同時に満たすことが必要である。
【0020】
樹脂層Bは、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートおよびそれよりも高温側に変曲点を有する樹脂、すなわち熱分解開始温度がポリエチレンナフタレンジカルボキシレートよりも高い樹脂からなり、しかも750℃まで昇温した時の重量減少率が比較的小さく、残炭率が高い熱分解特性を有することによって、3層からなる難燃性ポリエステルフィルムの両表面層を構成した場合に、燃焼時にチャー層(以下、炭化層と称することがある)が形成されて高い難燃性が得られ、また層Aとの共押出性および密着性を良好にすることが可能となる。
【0021】
樹脂層Bが、TG曲線の450〜750℃の範囲においてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)を含まない場合、層Aとの共押出性が乏しくなる。また、ポリエステルとしてポリエチレンナフタレンジカルボキシレート以外のポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートを用いた場合、変曲点(a2)を有する樹脂との融点差や熱分解開始温度差が大きいために、押出工程で粘度ムラがあり、また加工温度によってはポリエチレンテレフタレートが熱分解し、所望の配合比でブレンドすることが難しくなる。
また樹脂層Bが、TG曲線の450〜750℃の範囲において変曲点(a2)を含まない場合、難燃性ポリエステルフィルムの難燃性が不足する。また樹脂層Bが、TG曲線の40〜750℃の範囲において30%未満の重量減少率の場合、変曲点(a2)を有する樹脂の割合が高すぎるために層Aとの共押出性が低下する。一方、かかる重量減少率が70%を越える場合、燃焼時にチャー層が形成されないため高い難燃性が得られない。このように、本発明の難燃ポリエステルフィルムの難燃機構は、燃焼時にチャー層を形成しやすい樹脂層Bを両表面に積層することで、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート以外の樹脂の配合量が少なくても効率的に難燃性を高め、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが本来有する機械的特性や耐熱寸法安定性の低下が少ない点に特徴を有するものである。
【0022】
なお、これらのTG曲線特性は、熱重量分析(TG)装置を用い、サンプル重量10mgを昇温速度20℃/分の条件で窒素流量200ml/分の雰囲気下で測定し、温度変化に対するサンプルの重量減少を測定したものである。変曲点は、TG曲線を2次微分した曲線が0になるところを変曲点として求めたものである。また、重量減少率は加熱前の重量を100%とした時の減少割合を表す。上記測定方法において、変曲点(a1)および変曲点(a2)は、それぞれTG曲線の450〜750℃の範囲に存在し、かつ変曲点(a2)が変曲点(a1)よりも高温側に位置することが必要である。好ましくは、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)は450℃〜500℃の範囲に存在し、また変曲点(a2)は500℃〜750℃の範囲に存在する。変曲点(a2)は、550℃〜700℃の範囲に存在することがより好ましい。
【0023】
樹脂層Bに含まれるポリエチレンナフタレンジカルボキシレートは、層Aを構成するポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに準ずる。ポリエステルとしてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いることにより、ポリエステルが熱分解することなく所望の配合比で変曲点(a2)を有する樹脂とのブレンドが可能になる。
変曲点(a2)を有する樹脂は、変曲点がTG曲線の450〜750℃の範囲にあり、かつ変曲点(a1)よりも高温側に位置し、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートと配合して樹脂層(B)を形成した時に(b)TG曲線の40〜750℃の範囲における重量減少率が30〜70%、を満たすものであれば特に限定されないが、例えばポリエーテルイミドを用いることができる。変曲点(a2)を有する樹脂は1種または2種以上用いてもよい。かかるポリエーテルイミドとして、下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるものが挙げられる。
【0024】
【化1】

(式中、Xは−CH2−、−C(CH32−、及び−O−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基、Yは炭素数1〜20のアルキレン基または炭素数1〜20の2価の芳香族残基、mは0又は1の整数を示す)
【0025】
これらの中でも特に好ましいポリエーテルイミドとして下記式(II)または下記式(III)で表される繰り返し単位からなるポリイミドが挙げられる。
【化2】

【化3】

【0026】
樹脂層Bは、変曲点(a2)を有する樹脂としてポリエーテルイミドを用いた場合、樹脂層Bの重量を基準としてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが20〜60重量%、ポリエーテルイミドが40〜80重量%の範囲でそれぞれ配合されることが好ましい。樹脂層Bに含まれるポリエーテルイミドの比率が高ければ高いほど、フィルム両表面でのポリエーテルイミド比率が高くなり、より高い難燃性が得られる。一方、ポリエーテルイミドが上限を超える場合、延伸工程において破断が生じたり、層Aとの共押出性および密着性が低下することがある。
【0027】
本発明の難燃機構は、樹脂層Bが燃焼して形成されるチャー層が、燃焼過程で樹脂の熱分解ガスを気層に拡散するのを遮断することで発現されるものであり、樹脂層Bを燃焼させた際の非可燃性ガスの発生率は極めて低い。具体的には樹脂層Bの180〜450℃における非可燃性ガス発生率は0.01%以上3%未満である。本発明は、非可燃性ガスを発生する化合物を樹脂層Bに含まないことがさらに好ましい。本発明における非可燃性ガス発生率とは、下記式(1)により定義される。
1/W0×100(%) ・・・(1)
(式中、W0は樹脂層Bの重量、Wは樹脂層を一定の昇温速度で昇温した場合に発生するガスのうち、180〜450℃の温度範囲で発生した非可燃性ガスの重量をそれぞれ示す)
【0028】
非可燃性ガスを発生する化合物の代表例である無機水酸化物またはトリアジン系化合物を樹脂層Bに含めた場合、無機水酸化物によってポリエステルが分解することがあり、またトリアジン系化合物の熱分解開始温度が樹脂層Bに較べて低いために十分な難燃性が得られないばかりでなく、200℃近辺の高温下でフィルムを使用する場合に非可燃性ガスが発生し、使用用途によっては好ましくないことがある。
【0029】
<難燃性ポリエステルフィルム>
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層Aの両面に、樹脂層Bが積層される構成であることを必要とする。
本発明の難燃性ポリエステルフィルムにおいて、樹脂層Bの合計厚みは1.5〜10.0μmであることが好ましく、またポリエステルフィルム全層の厚みは5〜200μmであることが好ましい。さらに、ポリエステルフィルム全層の厚みに対する樹脂層Bの合計厚みの割合は10〜40%の範囲内であることが好ましい。
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが本来有する耐熱寸法安定性および機械特性を維持するためには、上記の範囲内で樹脂層Bのフィルム厚みを薄肉化し、ポリエステルフィルム全層の厚みに対する樹脂層Bの合計厚みの割合を小さくする方向が好ましい。一方ポリエステルフィルム全層の厚みに対する樹脂層Bの合計厚みの割合が下限に満たない場合は十分な難燃性が得られないことがある。
また、ポリエステルフィルム全層の厚みが下限に満たない場合は、フィルムの絶縁性能が不足することがある。一方、フィルム全層の厚みが上限を超える場合、フィルムの耐屈曲性が不足することがあり、外力を加えられた場合、基板フィルムに割れが発生したり折れた状態のまま戻らなくなることがある。
【0030】
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、固有粘度が0.47〜0.90dl/gであることが好ましく、さらに好ましくは0.50〜0.80dl/gである。固有粘度が下限に満たない場合、フィルムが脆くなることがあり、例えばフィルムを所定の大きさに裁断したり、回路部品実装のための固定用の穴を穿孔する時に端面にバリが発生することがある。また、フィルムの固有粘度が上限を超える場合、通常の合成手法では重合に長時間を要し生産性が悪くなることがある。また特別な重合方法(固相重合等)を行うためには専用の設備が必要となるため生産コストが高くなることがある。
【0031】
<添加剤>
本発明の難燃性ポリエステルフィルムには、課題を損なわない範囲において、各層に添加剤、例えば安定剤、滑剤等を含有させることができる。
フィルムに滑り性を付与するためには、不活性粒子を少割合含有させることが好ましい。かかる不活性粒子としては、例えば球状シリカ、多孔質シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、二酸化チタン、カオリンクレー、硫酸バリウム、ゼオライトの如き無機粒子、或いはシリコン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子の如き有機粒子を挙げることができる。無機粒子は粒径が均一であること等の理由で、天然品よりも合成品であることが好ましく、あらゆる結晶形態、硬度、比重、色の無機粒子を使用することができる。
【0032】
かかる不活性粒子の平均粒径は0.05〜5.0μmの範囲であることが好ましく、0.1〜3.0μmであることがさらに好ましい。また、不活性粒子の含有量は0.001〜1.0重量%であることが好ましく、0.03〜0.5重量%であることがさらに好ましい。フィルムに添加する不活性粒子は、上記に例示した中から選ばれた単一成分でもよく、あるいは二成分以上を含む多成分でもよい。
不活性粒子の添加時期は、製膜する迄の段階であれば特に制限はなく、例えば重合段階で添加してもよく、また製膜の際に添加してもよい。
【0033】
<熱収縮率>
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、200℃の温度で10分間加熱処理したときの熱収縮率がフィルムの長手方向(MD)、幅方向(TD)共それぞれ1.5%以下であり、好ましくはMD、TD共それぞれ1.0%以下である。200℃の温度で10分間加熱処理したときの熱収縮率が1.5%を超えると、例えばフレキシブル基板として用いた場合に金属箔を貼りあわせた後のキュアリング時のフィルムの寸法変化や印刷後の乾燥処理でのフィルムの寸法変化が大きくなるため、回路基板に反りが発生することがある。なおフィルムの長手方向は、フィルム連続製膜方法、縦方向、MD方向と称することがあり、本発明においてはポリマーの主たる配向軸が観察される方向を表す。またフィルムの幅方向は、横方向、TD方向と称することがあり、発明においては主たる配向軸に直交する方向を表す。主たる配向軸は、フィルム面内の屈折率の分布を測定し、最も屈折率の高い方向により求められる。
【0034】
<製膜方法>
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、層Aを構成するポリエチレンナフタレンジカルボキシレートおよび層Bを構成する樹脂それぞれを共押出法により溶融状態でダイ内部で積層してからシート状に押出した後、テンター法、インフレーション法など公知の製膜方法を用いて製造することができる。
【0035】
具体的には、層A用に調整したポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを乾燥後、(Tma)〜(Tma+70)℃(TmaはPEN樹脂の融点)の温度範囲内で溶融する。同時に、樹脂層B用に調整した樹脂組成物を乾燥し、(Tmb)〜(Tmb+70)℃(Tmbは樹脂組成物の融点)の温度範囲内で溶融する。続いて、両方の溶融樹脂をダイ内部で層B/層A/層Bとなるように積層する方法、例えばマルチマニホールドダイを用いた共押出法(以下、同時積層押出法と称することがある)により、積層された未延伸フィルムが製造される。かかる共押出法によると、A層を形成する樹脂の溶融物とB層を形成する樹脂の溶融物はダイ内部で交互に積層され、積層形態を維持した状態でダイよりシート状に成形される。
【0036】
このようにして得られたシート状物を、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、さらに該未延伸フィルムを一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg-10)〜(Tg+70)℃(TgはPEN樹脂のガラス転移点)の温度で所定の倍率に延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向(一段目が縦方向の場合には二段目は横方向となる)にTg〜(Tg+70)℃の温度で所定の倍率に延伸し、必要に応じてさらに熱処理する方法を用いて製造することができる。縦延伸倍率は2.5倍以上5.0倍以下、好ましくは2.8倍以上4.0倍以下である。また、横延伸倍率は2.5倍以上5.0倍以下、好ましくは2.8倍以上4.0倍以下である。縦、横方向それぞれの延伸倍率が下限に満たない場合、十分な機械特性および耐熱寸法安定性が得られないことがある他、フィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られないことがある。一方上限を超える場合は製膜中に破断が発生しやすくなる。また面積延伸倍率は6〜35倍が好ましく、より好ましくは6〜25倍、さらには7〜16倍にするのが好ましい。
【0037】
熱固定温度は190〜250℃の範囲内、また処理時間は1〜60秒の範囲内であることが好ましい。特に、耐熱性が必要とされる場合、高温条件下での寸法安定性を向上させるために、210〜240℃の範囲で熱固定を行うことが好ましい。このような熱固定処理を行うことによって、得られた二軸配向フィルムの200℃における熱収縮率をより小さくすることができる。また熱収縮を抑えるために、さらにオフライン工程において150〜220℃で1〜60秒間熱処理した後、50〜80℃の温度雰囲気下で徐冷するアニール処理を施しても構わない。
【0038】
かかる逐次二軸延伸法のほかに、同時二軸延伸法を用いることもできる。また逐次二軸延伸法において縦方向、横方向の延伸回数は1回に限られるものではなく、縦-横延伸を数回の延伸処理により行うことができ、その回数に限定されるものではない。
【0039】
本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、層A、層Bを構成する樹脂として既述の樹脂をそれぞれ用いることにより、溶融時の粘度ムラが小さいことから、それぞれの樹脂層を溶融状態で共押出法により製造することができ、しかも縦、横方向に、2.5倍以上5.0倍以下の範囲内で延伸が可能であることから、機械特性および耐熱寸法安定性に優れる難燃性ポリエステルフィルムが得られるものである。
【0040】
<用途>
本発明によれば、本発明の難燃性ポリエステルフィルムは、高い難燃性を有し、しかも耐熱寸法安定性に優れることから、難燃性及び耐熱性が必要とされる各種用途に広く用いることができる。例えばフレキシブル回路基板用フィルムや太陽電池用基板用フィルムとして有用である。
【0041】
フレキシブル回路基板用フィルムとして用いる場合、難燃性ポリエステルフィルムの片面または両面に、金属箔を積層させることが好ましい。金属箔としては銅箔が例示される。金属箔の接合手段や形状の具体的手段としては特に制限はなく、例えば金属箔を難燃性ポリエステルフィルムに貼り合せた後、金属箔をパターンエッチングするいわゆるサブトラクティブ法、難燃性ポリエステルフィルム上に銅などをパターン状にメッキするアディティブ法、パターン状に打ち抜いた金属箔を難燃性ポリエステルフィルムに貼り合せるスタンピングホイルなどを利用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0043】
(1)固有粘度
サンプルの固有粘度([η]dl/g)を、35℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
【0044】
(2)エチレンナフタレンジカルボキシレートの割合
フィルムの表層部分を採取したサンプルを用い、測定溶媒(CDCl:CFCOOD=1:1)に溶解後、H−NMR測定を行い、得られた各シグナルの積分比をもって算出する。ブレンドからなる層が芯層に存在する場合は、表層を削り取った後の芯層のサンプルを用いて測定を行った。
【0045】
(3)TG曲線測定
フィルムの表層部分を採取したサンプルを用い、セイコーインスツルメント製の熱重量分析装置SSC5200を用いて、サンプル重量10mg、昇温速度20℃/分の条件で窒素流量200ml/分の雰囲気下でサンプル重量減量を測定した。変曲点については、図1に示すように、TG曲線を2次微分した曲線が0になるところを変曲点とした。また、重量減少率は加熱前の重量を100%としたときの減少割合から算出した。
【0046】
(4)フィルム厚み
アンリツ製打点式厚み計を用いて、打点法での厚み測定を行った。
【0047】
(5)熱収縮率
フィルムサンプルに30cm間隔で標点をつけ、荷重をかけずに200℃の温度のオーブンで10分間熱処理を実施し、熱処理後の標点間隔を測定して、フィルム連続製膜方向(MD方向)と、製膜方向に垂直な方向(TD方向)において、それぞれ下記式(2)にて熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=((L−L)/L)×100 ・・・(2)
(式中、Lは熱処理前の標点間距離、Lは熱処理後の標点間距離をそれぞれ示す。)
【0048】
(6)平面安定性
フィルムサンプルと銅箔とを、汎用塩化ビニル系樹脂と可塑剤とからなる接着剤により貼り合わせて、温度160℃、圧力30kg/cm、時間30分の条件で圧着ロールを用いて圧着した。試料寸法を25cm×25cmとし、相対湿度85%、65℃の雰囲気下で100時間定盤上に置いた状態で4隅のカール状態を観測した。4隅の反り量(mm)の平均を測定した。下記の基準に従って評価を行った。○が合格である。
○;10mm未満の反り量
×;10mm以上の反り量
【0049】
(7)難燃性
フィルムサンプルを幅12.7mm、長さ127mmの短冊状に切り出して、長手方向が地面と垂直になるようにして、長手方向の上端を把持し、下端を約20mmの火炎に5秒間さらした後、離炎した。このときの離炎後のフィルムの燃焼時間を測定した。(1回目の接炎時の燃焼時間)。次にフィルムが燃え尽きずに消火された場合、消火後に1回目と同様にして2回目の接炎・離炎を行い、離炎後のフィルムの燃焼時間を測定した。(2回目接炎時の燃焼時間)難燃性は、1回目、2回目接炎時の燃焼時間の合計を次の4段階で評価した。
◎:30秒未満で自己消火する
○:30〜50秒で自己消火する
△:50秒以内にドリップして自己消火する
×:50秒以内に自己消火しないか、または燃え尽きる
【0050】
(8)非可燃性ガス発生量
難燃性ポリエステルフィルムの樹脂層Bの部分を採取したサンプル1gを用い、管状炉に流速50ml/分でヘリウムガスを流しながら60℃〜450℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、180℃〜450℃加熱中に発生するガスをフッ化ビニル製のテドラーバッグで回収した。このガスを試料ガスとし、ガステック(株)製の二酸化炭素検知管、水蒸気検知管、窒素酸化物検知管を用いて、試料ガス中のCO2、H2OおよびNO2の測定を行い、それぞれの試料ガス濃度を求めた。180℃〜450℃における総捕集ガス量(1350ml)におけるそれぞれのガス濃度より各ガスの換算質量(mg)の合計量(W)を求め、下記式(1)により非可燃性ガス発生量を算出した。
1/W0×100(%) ・・・(1)
(式中、W0は樹脂層Bの重量、Wは樹脂層を一定の昇温速度で昇温した場合に発生するガスのうち、180〜450℃の温度範囲で発生した非可燃性ガスの重量をそれぞれ示す)
評価は以下の基準で行った。
○:180℃〜450℃の温度範囲における非可燃性ガスの発生量が0.01以上3%未満
×:180℃〜450℃の温度範囲における非可燃性ガスの発生量が3%以上
【0051】
(9)製膜性
製膜時の状況を観察し、以下の基準でランク分けする。
○:製膜する上でネックダウンや切断の発生がない。
×:製膜する上でネックダウンや切断が生じる。
【0052】
[実施例1]
芯層(層A)として平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有し、固有粘度0.60であるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、押出機に投入して300℃で溶融混練を行った。また、両表層(層B)として平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有し、固有粘度0.60であるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート50重量%とポリエーテルイミド(General Electric社製、Ultem1010(登録商標))50重量%との混合物を別の押出機に投入して330℃で溶融混練を行い、それぞれ溶融した状態で(層Aの厚み:層Bの合計厚み)=19:6となるようにダイスリットより溶融共押出し、キャスティングドラム上で冷却固化させて未延伸フィルムを作成した。
この未延伸フィルムを、表1に示す条件で縦方向、横方向の順で逐次二軸延伸し、表1に示す条件で金枠で固定して熱処理を施し、総厚みが25μmのフィルムを作成した。
【0053】
さらに、このフィルムの片面に接着剤を塗布し、1/2oz厚みの銅箔(18μm厚)を貼りつけ、この銅箔をエッチングすることで所定の回路を形成し、200℃で15分間乾燥を行いフレキシブル回路基板を得た。得られた難燃性フィルムの物性、フレキシブル回路基板の平面性の評価結果を表1に示す。製膜性については、未延伸工程、延伸工程ともにフィルム破断は発生しなかった。
【0054】
[実施例2〜4、比較例1〜2]
両表層(層B)のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートとポリエーテルイミドの配合比率、溶融混練温度、(層Aの厚み/層Bの合計厚み)および延伸倍率を表1に記載したように変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、フィルムおよびフレキシブル回路基板を得た。得られた難燃性フィルムの物性、フレキシブル回路基板の平面性の評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例3]
層Aとして平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有し、固有粘度0.60であるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、層Bを用いなかった以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、総厚みが25μmの1層からなるフィルムおよびフレキシブル回路基板を得た。得られた難燃性フィルムの物性、フレキシブル回路基板の平面性の評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例4]
芯層に、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有し、固有粘度0.60であるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート50重量%とポリエーテルイミド(General Electric社製、Ultem1010(登録商標))50重量%とをブレンドした樹脂を用い、両表層として平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有し、固有粘度0.60であるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを用い、それぞれの溶融混練温度を表1に記載したように変更した以外は実施例1と同様の操作を繰り返し、フィルムおよびフレキシブル回路基板を得た。得られた難燃性フィルムの物性、フレキシブル回路基板の平面性の評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例5]
芯層(層A)として平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有し、固有粘度0.62であるポリエチレンテレフタレートを用い、押出機に投入して280℃で溶融混練を行った。また両表層(層B)として平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.2重量%含有し、固有粘度0.60であるポリエチレンテレフタレート50重量%とポリエーテルイミド(General Electric社製、Ultem1010(登録商標))50重量%との混合物を別の押出機に投入して320℃で溶融混練を行い、それぞれ溶融した状態で(層Aの厚み:層Bの合計厚み)=19:6となるようにダイスリットより溶融共押出し、キャスティングドラム上で冷却固化させて未延伸フィルムを作成した。
この未延伸フィルムを、表1に示す条件で縦方向、横方向の順で逐次二軸延伸し、表1に示す条件で金枠で固定して熱処理を施し、総厚みが25μmのフィルムを作成した。
【0058】
さらに、このフィルムの片面に接着剤を塗布し、1/2oz厚みの銅箔(18μm厚)を貼りつけ、この銅箔をエッチングすることで所定の回路を形成し、200℃で15分間乾燥を行いフレキシブル回路基板を得た。得られた難燃性フィルムの物性、フレキシブル回路基板の平面性の評価結果を表1に示す。製膜性については、未延伸フィルムは作成できたが、延伸工程においてフィルム破断が発生した。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明における難燃性ポリエステルフィルムは難燃性に優れ、しかも耐熱寸法安定性に優れることから、難燃性及び耐熱性が必要とされる各種用途に広く用いることができる。例えばフレキシブル回路基板用フィルムや太陽電池用基板用フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明のTG曲線を例示した図である。
【符号の説明】
【0062】
1 変曲点(a1)
2 変曲点(a2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層Aの両面に、下記(a)及び(b)で表される特性
(a)TG曲線の450〜750℃の範囲に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)および(a1)よりも高温側に位置する少なくとも1つの変曲点(a2)が存在し、
(b)TG曲線の40〜750℃の範囲における重量減少率が30〜70%
を同時に満たす樹脂層Bが積層されてなることを特徴とする難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項2】
変曲点(a2)を有する樹脂がポリエーテルイミドである請求項1に記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
樹脂層Bの重量を基準としてポリエーテルイミドを40〜80重量%含む請求項2に記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
樹脂層Bの合計厚みが1.5〜10.0μmである請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ポリエステルフィルム全層の厚みが5〜200μmである請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ポリエステルフィルム全層の厚みに対する樹脂層Bの合計厚みの割合が10〜40%の範囲内である請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項7】
樹脂層Bの180〜450℃における非可燃性ガス発生率が0.01%以上3%未満である請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項8】
フレキシブル回路基板の基材フィルムとして用いる請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項9】
太陽電池の基材フィルムとして用いる請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性ポリエステルフィルム。
【請求項10】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とする層Aの両面に、下記の(a)及び(b)で表される特性
(a)TG曲線の450〜750℃の範囲に、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートに由来する変曲点(a1)および(a1)よりも高温側に位置する少なくとも1つの変曲点(a2)が存在し、
(b)TG曲線の40〜750℃の範囲における重量減少率が30〜70%
を同時に満たす樹脂層Bが積層されてなる難燃性ポリエステルフィルムの製造方法であって、
層Aを構成するポリエチレンナフタレンジカルボキシレートおよび層Bを構成する樹脂それぞれが共押出法により溶融状態でダイ内部で積層されてからシート状に押出された後、縦延伸倍率および横延伸倍率それぞれ2.5〜5.0倍の範囲で二軸延伸して得られることを特徴とする難燃性ポリエステルフィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−50559(P2007−50559A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235854(P2005−235854)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】