説明

難燃性ポリマー組成物

ポリマーの可燃性を低減するのに十分な量で表面改質ナノ粒子相を分散した有機ポリマー又は重合性モノマーを含む組成物が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリマー組成物及びそれから調製される物品を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、可燃性を低減(又は燃焼耐性を増大)させようとして、多様な添加剤で改質されてきた。こうした添加剤は、亜リン酸塩、リン酸塩、ハロゲン化アルキルラジカルを含有するチオリン酸エステル、及び他のハロゲン化有機化合物を包含している。こうした多くの添加剤は、得られる物品の物理的及び/又は光学的特性に悪影響を与える可能性のあるような比較的高重量%で添加しなければならない。ポリテトラフルオロエチレンは、抗滴剤及び難燃剤として多くのポリマーに添加されてきたが、これらから作られた鋳造品の明澄性及び透明性に悪影響を与える。ガラス繊維を添加してもよいが、その添加はポリマーマトリックス及び光学的特性に悪影響を与える。多くの用途では、ポリマー組成物は低減した光学的特性を隠すために顔料を添加することによって不透明になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より最近になって、ポリマー用途のための新しい難燃剤の需要が増大している。既存製品は低価格で難燃性をもたらすという点では有効であるが、これらの環境持続性、生物濃縮物質を考慮すると、健康及び環境リスクに関して懸念が生じてきている。いくつかのヨーロッパの国々においては、ハロゲン化及び重金属含有抑制剤の使用の禁止が提案されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの態様においては、本発明は、熱可塑性ポリマー、熱硬化型ポリマー、エラストマー及びそのこれらの混合物から成る群から選択され、難燃性又は自己消火性にするのに十分な量で表面改質ナノ粒子相を分散した有機ポリマーを含む、ポリマー組成物を対象とする。表面改質剤は、両官能性有機リン含有添加剤である。
【0005】
別の様態においては、本発明は、表面改質ナノ粒子及び1以上の重合性モノマーを含む重合性組成物を提供する。重合した際、得られるポリマーは可燃性が低減している。ある実施形態では、得られるポリマーは、自己消火性である。
【0006】
本発明のポリマー及び重合性組成物は、例えば一体成形(casting)、鋳造(molding)又は押出成形(extrusion)によって製造される造形品の調製時に有用である。自動車部品、電動モータハウジング、装具、モニターハウジングのようなコンピュータ機器、航空機部品、ガラス代替品、光学レンズ及びヘッドランプレンズが挙げられる。添加剤(表面改質粒子相)は、光学的特性に有害な影響を与えることなく物品の可燃性を低減させるのに十分な水準で添加されてよいため、組成物は、透明性又は明澄性が望まれているが、従来不透明なポリカーボネートが使用されてきた用途において特に有用である。
【0007】
本発明は、難燃性である又は(好ましくは)燃焼を支持しないであろうポリマー組成物を提供するという当該技術分野における問題を克服する。表面改質ナノ粒子は、ポリマーと容易に組み合わせられ、ポリ臭素化ビフェニルのような従来の難燃添加剤に会合する露出の危険性を低減又は排除する。更に、一般に表面改質ナノ粒子添加剤は、得られるポリマーの機械的又は光学的特性に悪影響を与えない。加えて、表面改質ナノ粒子の存在は、燃焼間の滴り(dripping)を低減又は防止し、物品の形状を安定させ、燃焼生成物のガス放出において発泡を安定させる。
【0008】
ナノ粒子相は、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、セリア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミニウム/シリカ及びこれらの組合せを含んでよく、平均粒子サイズは100ナノメートル未満である。
【0009】
「表面改質ナノ粒子」という用語は、粒子表面に付着する又は粒子表面をコーティングする官能基、及びペンダントリン含有基を包含する粒子を指す。表面改質剤は、粒子の特徴を改質し、ナノ粒子上にコーティングされてよく、あるいはナノ粒子に共有結合又はイオン結合してよい。
【0010】
「粒子直径(particle diameter)」及び「粒子サイズ(particle size)」という用語は、粒子の平均断面寸法を指す。粒子が凝集体の形態で存在する場合、「粒子直径(particle diameter)」及び「粒子サイズ(particle size)」という用語は、凝集体の平均断面寸法を指す。
【0011】
「熱硬化型」及び「熱可塑性」という用語は、高分子化学分野における標準的な意味を有する。「熱硬化型」樹脂は、反応種の化学架橋反応の結果であるポリマーの流動を抑えるのに十分なエネルギー源(例えば、熱及び/又は放射線)に曝露されることにより、硬化された樹脂である。「熱硬化型の(thermosetting)」という用語は、硬化されていない熱硬化型樹脂を指す。「熱可塑性」樹脂は、加熱されると軟化又は流動し得り、冷却されると再度硬化し得る樹脂である。
【0012】
「難燃性」とは、水平燃焼(Horizontal Burn)又はぶら下がりストリップ(Hanging Strip)試験のような認められている試験方法の1つにより測定し、ある改質によって低減された基本的な可燃性の特徴を意味する。
【0013】
「自己消火性」とは、外部熱源の添加なしでは物質が燃焼を維持できないことを指す。本発明では、炎は10秒以内、好ましくは5秒以内に消える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ポリマー組成物は、リン含有表面改質剤により表面改質された無機ナノ粒子を包含する。表面改質剤は、無機ナノ粒子表面に結合するか、統合するか、又は付着する少なくとも1つの官能基、並びにリン−酸素基、リン−窒素基及びリン−ハロゲン基を包含する少なくとも1つのリン含有官能基を有する両官能性有機化合物である。「表面改質」とは、表面改質剤が、ナノ粒子上にコーティングされる、あるいはナノ粒子に共有結合又はイオン結合することを意味する。粒子直径が100ナノメートル未満である無機ナノ粒子は、ポリマーマトリックスに配置される。表面改質されたナノ粒子は、ポリマー全体にわたって分散した個々の会合しない(例えば、凝集していない)ナノ粒子であることが好ましく、互いに不可逆的に会合しないことが好ましい。「〜と会合する(associate with)」又は「〜と会合している(associating with)」という用語は、例えば、共有結合、水素結合、静電引力、ロンドン力、及び疎水性相互作用を包含する。
【0015】
理論に束縛されることを望まないが、有機リン化合物は、保護液体(protective liquid)又は炭化障壁(char barrier)を形成することにより難燃剤として機能する可能性があり、これは、ポリマー分解生成物の炎への蒸散を最小限にし、及び/又は熱伝達を最小限にする絶縁隔壁として機能する。有機リン表面改質剤が付着する無機ナノ粒子は、ヒートシンクとして役立つ可能性があり、燃焼を更に遅延させる。
【0016】
両官能性表面改質剤は、少なくとも2つの官能基を有する。1つの反応性官能基は、共有結合ないしは別の方法でその上の表面官能基を通してナノ粒子表面と会合することができ、2つ目はリン含有官能基である。好適なリン含有基の例としては、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィンオキシド、ホスフィン、亜リン酸塩又はリン酸塩、並びにその窒素又はハロゲン類似体から選択されるリン含有基が挙げられる。表面改質剤の反応性官能基は、無機ナノ粒子の表面上の官能基と共有結合を形成することが好ましい。
【0017】
反応性官能基に関して、1つの構成要素(表面改質剤又はナノ粒子)上に存在するシリル、アミノ、ヒドロキシル、メルカプタン、アクリレート及びメタクリレート基のような反応性官能基は、他の構成要素(表面改質剤又はナノ粒子)上に存在するオキシラン、ヒドロキシル、アミノ、ハロ、アジリジン、無水物、アクリレート、メタクリレート、又はイソシアネート基のような相補的な反応性官能基と反応できる。1超過の表面改質剤を使用してよい。
【0018】
有用な両官能性表面改質剤は、以下の一般式のものである:
−R−Y (I):式中、
Xは、無機ナノ粒子表面に結合してよい又は無機ナノ粒子表面と会合してよい官能基を表し、シリル、ヒドロキシル、アジド、メルカプト、アルコキシ、ニトロ、シアノ、又はアミノ基から選択されることが好ましく、
は、炭素原子約1〜20個、価数n+mの置換又は非置換多価炭化水素架橋基であり、アルキレン及びアリーレンを包含し、所望により−O−、−C(O)−、−S−、−SO−及び−NR−基から成る群から選択される1〜5部分の骨格鎖(−C(O)−O−のような、これらの組合せ)を包含し、式中Rは、水素、アセチル、又は炭素原子1〜6個のアルキル基である。Rは、二価のアルキレンであることが好ましい。
【0019】
Yはリン含有基であり、
m及びnは独立して1〜4である。
【0020】
好ましい表面改質剤としては、次の式を有するものが挙げられる:
−R−Si−(Y)(R3−b (II)
式中
Pは、リン−酸素基、リン−窒素基、及びリン−ハロゲン基を包含するリン含有官能基である。
【0021】
は、炭素原子約1〜20個及び価数a+bの、置換又は非置換多価炭化水素架橋基であり、所望により−O−、−C(O)−、−S−、−SO−及び−NR−基から成る群から選択される1〜5部分の骨格鎖を包含し、式中Rは、水素、アセチル、又は炭素原子1〜6個のアルキル基である。Rは、二価のアルキレンであることが好ましい。
【0022】
Yは、−ORであり、式中Rは炭素原子1〜8個のアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基であり、好ましくはメチル基又はエチル基であり、
は、独立して、所望により酸素、窒素、及び/又は硫黄原子で利用可能な部位が置換されている、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルコキシ基であり、
aは1又は2であり;
bは1〜3である。
【0023】
当然のことながら、式IIの表面改質剤のシリル基は加水分解してよく、この場合1以上の「Y」又は「OR」基が、シラノール又はシラノレートに変換するであろう。
【0024】
好適な無機ナノ粒子の例としては、シリカ、並びにジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、炭酸カルシウムのような炭酸塩、及びこれらの組合せを包含する金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。ナノ粒子は、約100nm未満、好ましくは約50nm以下、より好ましくは約3nm〜約50nm、更に好ましくは約3nm〜約20nm、最も好ましくは約3nm〜約10nmの平均粒子直径を有する。ナノ粒子が凝集している場合、凝集粒子の最大断面寸法は、任意のこれらの好ましい範囲内である。
【0025】
ナノ粒子の表面を改質するために利用可能な各種方法としては、例えば、表面改質剤をナノ粒子に添加すること(例えば、粉末、あるいはコロイド分散又は懸濁液の形状で)、及び表面改質剤をナノ粒子と反応させることが挙げられる。他の有用な表面改質方法は、例えば、米国特許第2,801,185号イラー(Iler)、及び同第4,522,958号ダス(Das)らに記載されている。或いは、表面改質剤は、無機ナノ粒子の表面にコーティングされてもよい(すなわち、共有又はイオン結合していない)。
【0026】
式I及びIIの表面改質剤は、無機ナノ粒子上の利用可能な官能基の10〜100%と反応するのに十分な量で使用される(例えば、シリカナノ粒子上の利用可能なヒドロキシル官能基の数)。全ての利用可能な反応部位が表面改質剤で官能化されるように、ナノ粒子の多くが過剰量の表面改質剤と反応する場合の官能基の数は、実験的に決定される。次いでその結果から、より低いパーセントの官能化が計算される可能性がある。
【0027】
一般に、表面改質剤の量は、無機ナノ粒子の重量と比較して、同重量の2倍以下の表面改質剤を提供するのに十分な量で使用される。表面改質剤:無機ナノ粒子の重量比は、2:1〜1:10であることが好ましい。
【0028】
表面改質ナノ粒子は、可燃性を低減させた(純ポリマー(neat polymer)と比較して測定した場合)組成物を提供するのに十分な量、好ましくは自己消火性の組成物を提供するのに十分な量で、ポリマーに添加することができる。表面改質されたナノ粒子は、組成物中に、例えば組成物の総重量を基準として約5〜50重量%、好ましくは約10〜50重量%を包含する、様々な量で存在してよい。表面改質ナノ粒子は、好ましくはポリマー全体にわたって分散し、より好ましくはポリマー全体にわたって均質に分散する。
【0029】
表面改質剤及びその分子量、ナノ粒子及びそれらの量を考慮すると、表面改質ナノ粒子は、ポリマー組成物又は重合性組成物中のリン基含有量が約0.25〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%になるのに十分な量で、ポリマーに添加される。
【0030】
必要であれば、粒子は、両官能性表面改質剤に加えて二次表面改質剤を更に含んでよい。こうした二次表面改質剤は、ナノ粒子の溶解度特性を改質する表面基を有する。表面基は、ナノ粒子をポリマー又は重合性混合物(例えば重合性モノマー)に適合させるように選択される。使用される場合、こうした二次表面改質剤は、両官能性表面改質剤(式I又はII)の官能化後に残存する、ナノ粒子の表面の利用可能な官能基の1〜100%と反応するのに十分な量で用いられる。
【0031】
一般に、無機ナノ粒子表面上の利用可能な官能基の0〜80%は、両官能性表面改質剤で官能化される前又は後に、二次表面改質剤で官能化されてよい。
【0032】
また好適な表面基は、表面基及びポリマー(又は重合性混合物)の溶解パラメータに基づいて選択することができる。表面基、又は表面基が誘導される剤は、ポリマーの溶解パラメータに類似する溶解パラメータを有することが好ましい。ポリマーが疎水性である場合、例えば、当業者は、疎水性ポリマーと適合する表面改質ナノ粒子を得るために、種々の疎水性表面基の中から選択することができる。同様に、ポリマーが親水性である場合、当業者は、親水性表面基から選択することができる。また粒子は、ポリマーの溶解パラメータに類似する溶解パラメータを有する粒子を提供するために組み合わせる少なくとも2つの異なる表面基を包含することもできる。
【0033】
二次表面改質剤の好適な部類としては、例えば、シラン、有機酸、有機塩基及びアルコールが挙げられる。
【0034】
特に有用な二次表面改質剤としては、シランが挙げられる。有用なシランの例としては、例えば、アルキルクロロシラン、アルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シラン及びビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランを包含するオルガノシラン;トリアルコキシアリールシラン;イソオクチルトリメトキシ−シラン;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート;例えば、3−(メタアクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロペニルトリメトキシシラン及び3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを包含するシラン官能性(メタ)アクリレート;例えば、ポリジメチルシロキサンを包含するポリジアルキルシロキサン;例えば、置換及び非置換アリールシランを包含するアリールシラン;例えば、メトキシ及びヒドロキシ置換アルキルシランを包含する、例えば置換及び非置換アルキルシランを包含するアルキルシラン、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0035】
有用な有機酸二次表面改質剤としては、例えば、炭素のオキシ酸(例えば、カルボン酸)、硫黄及びリン、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0036】
カルボン酸官能性を有する極性二次表面改質剤の代表例としては、CHO(CHCHO)CHCOOH、及び化学構造CHOCHCHOCHCOOH(以後、MEAA)を有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、及びモノ(ポリエチレングリコール)コハク酸塩が挙げられる。
【0037】
カルボン酸官能性を有する非極性二次表面改質剤の代表例としては、オクタン酸、ドデカン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0038】
好適なリン含有酸の例としては、例えば、オクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸及びオクタデシルホスホン酸を包含するホスホン酸が挙げられる。
【0039】
有用な有機塩基二次表面改質剤としては、例えば、アルキルアミンが挙げられ、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン及びオクタデシルアミンが挙げられる。
【0040】
他の有用な非シラン二次表面改質剤の例としては、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)コハク酸塩、及びこれらの組合せが挙げられる。ナノ粒子に極性及び反応性の両方を付与する有用な表面改質剤としては、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)コハク酸塩が挙げられる。
【0041】
好適な二次表面改質アルコールの例としては、例えば、オクタデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール及びフルフリルアルコールを包含する脂肪族アルコール、例えば、シクロヘキサノールを包含する脂環式アルコール、例えば、フェノール及びベンジルアルコールを包含する芳香族アルコール、並びにこれらの組合せが挙げられる。エポキシ樹脂組成物に特に好適な二次表面改質基の例は、米国特許第5,648,407号(ゴエツ(Goetz)ら)に開示されている。
【0042】
有用な有機ポリマーの例としては、熱硬化型ゴム並びに熱可塑性ゴムを包含する天然及び合成ゴム樹脂、並びに、例えばニトリルゴム(例えば、アクリロニトリルブタジエン)、ポリイソプレンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)、サントプレン ポリプロピレン−EPDMエラストマー、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンゴム、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンビニルアセテートゴム、例えばポリシロキサンを含むシリコンゴム、メタクリレートゴム、例えばイソオクチルアクリレート及びアクリル酸のコポリマーを包含するポリアクリレートゴム、ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、及び、例えばこれらの直鎖、ラジカル、スター及びテーパブロックコポリマーを包含するこれらの混合物及び組合せを包含するエラストマーが挙げられる。
【0043】
他の有用なエラストマーとしては、例えばポリトリフルオロエチレンを包含するフルオロエラストマー、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、フルオロシリコーン及び、例えば塩化ポリエチレンを包含するクロロエラストマー、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0044】
有用な熱可塑性樹脂の例としては、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、スチレン−アクリロニトリル、セルロース及びこれらの誘導体、塩化ポリエーテル、エチレンビニルアセテート、例えばポリクロロトリフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン、及びポリフッ化ビニリデンを包含するフルオロカーボン、例えばポリカプロラクタム、ポリヘキサメチレンアジプアパミド、ポリヘキサメチレンセバクアミド、ポリウンデカノアミド、ポリラウロアミド及びポリアクリルアミドを包含するポリアミド、例えばポリエーテルイミドを包含するポリイミド、ポリカーボネート、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリ−4−メチルペンタンを包含するポリオレフィン、例えばポリエチレンテレフタレートを包含するポリアルキレンテレフタレート、例えばポリフェニレンオキシドを包含するポリアルキレンオキシド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、例えばポリビニルクロライド、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンクロライドを包含するビニルポリマー、並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0045】
有用な熱硬化型樹脂としては、例えばアクリレートウレタン及びアクリレートポリエステルを包含する、ポリエステル及びポリウレタン及びこれらの混成物及びコポリマー、例えばアルキル化尿素ホルムアルデヒド樹脂を包含するアミノ樹脂(例えばアミノプラスト樹脂)、メラミンホルムアルデヒド樹脂、例えばアクリル酸及びメタクリレート、ビニルアクリレート、アクリル化エポキシ、アクリル化ウレタン、アクリル化ポリエステル、アクリル化アクリル、アクリル化ポリエーテル、ビニルエーテル、アクリル化オイル及びアクリル化シリコンを包含するアクリル酸樹脂、ウレタンアルキド樹脂のようなアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、反応性ウレタン樹脂、例えばレゾール樹脂、ノボラック樹脂、及びフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を包含するフェノール樹脂、フェノール/ラテックス樹脂、例えばビスフェノールエポキシ樹脂、脂肪族及び脂環式エポキシ樹脂、エポキシ/ウレタン樹脂、エポキシ/アクリレート樹脂及びエポキシ/シリコン樹脂のようなエポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、イソシアヌレート樹脂、アルキルアルコキシシラン樹脂を包含するポリシロキサン樹脂、反応性ビニル樹脂、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0046】
また本発明は、表面改質ナノ粒子及び重合性モノマーを含む重合性混合物も提供する。重合は、多様な従来のフリーラジカル重合方法によって達成することができ、該方法は、例えば可視光及び紫外線、電子ビーム照射、並びにこれらの組合せを包含する化学線を用いる過程を包含する、例えば溶媒重合、エマルジョン重合、懸濁重合、バルク重合、及び放射線重合を含む、化学又は放射線によって重合が開始され得る。有用なモノマーとしては、前述の熱可塑性ポリマー及び熱硬化型ポリマーの調製に用いられるような、フリーラジカル重合性モノマー、付加重合性モノマー及び縮合重合性モノマーが挙げられる。
【0047】
開始剤は、組成物中に存在するモノマーの重合を促進するのに有効な量で用いてよく、該量は例えば、開始剤の種類、開始剤の分子量、得られるポリマー組成物の意図する用途、及び例えば製造温度を包含する重合プロセスに基づいて変化するであろう。
【0048】
有用なフリーラジカル開始剤としては、熱及び光活性開始剤が挙げられる。用いられる開始剤の種類は、重合プロセスに依存する。光開始剤の例としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルのようなベンゾインエーテル、アニソインメチルエーテルのような置換ベンゾインエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのような置換アセトフェノン、及び2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンのような置換アルファ−ケトオールが挙げられる。
【0049】
また重合性組成物としては、例えば2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロペノイル)フェノキシ]エチル−2−メチル−2−N−プロペノイルアミノプロパノエートを包含する、コポリマーの光開始剤、並びにチバガイギー社(Ciba-Geigy)から商品名ダロクールZLJ3331(DAROCUR ZLJ 3331)として入手可能な重合性光開始剤、並びに、例えばサートマー(Sartomer)社(ペンシルバニア州エクストン(Exton))から商品名サーキャットCD−1012(SarCat CD-1012)として入手可能なジアリールイオドニウムヘキサフルオロアンチモネート、及びサートマー社から商品名サーキャットCD−101 1として入手可能なトリアリールスルフォニウムヘキサフルオロホスフェートを包含する光酸発生開始剤を挙げることができる。
【0050】
好適な熱反応開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウリル、過酸化シクロヘキサン、過酸化メチルエチルケトン、例えばブチルヒドロペルオキシド及びクメンヒドロペルオキシドを包含するヒドロペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルベンゾエートのようなペルオキシド、並びに、例えば2,2,−アゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)のようなアゾ化合物、並びにこれらの組合せが挙げられる。市販されている熱反応開始剤の例としては、ヴァゾ(VAZO)64(2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル))、ヴァゾ52、ヴァゾ65、及びヴァゾ68を包含する、デュポン特殊化学(DuPont Specialty Chemical)社(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))から「ヴァゾ(VAZO)」の商品名で入手可能な開始剤、並びにエルフアトケムノースアメリカ(Elf Atochem North America)社(ペンシルバニア州フィラデルフィア(Philadelphia))から商品名「ルシドール(Lucidol)」として入手可能な熱反応開始剤、及びユニロイヤルケミカル社(Uniroyal Chemical Co.)(コネチカット州ミドルベリ(Middlebury))から商品名セロゲン(Celogen)として入手可能な開始剤が挙げられる。
【0051】
少なくとも一つのエチレン性不飽和二重結合を含有する好適なフリーラジカル重合性組成物は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、及びフリーラジカル重合をし得る他のビニル組成物のような、モノマー及び/又はオリゴマーであってよい。エチレン性不飽和フリーラジカル性重合物質は、モノマー、オリゴマー又はこれらの混合物であってよい。有用な部類としては、例えば、一官能性、二官能性、又は多官能性であるビニル官能性モノマー;フリーラジカル重合性マクロマー;及びエチレン性不飽和フリーラジカル性重合性ポリシロキサンが挙げられる。一般に、本発明で採用される最も有用なエチレン性不飽和フリーラジカル性重合性モノマーは、ビニル官能性出発物質である。このようなビニル出発物質としては、これらに限定されないが、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、ビニル置換芳香族化合物、ビニル置換複素環化合物、ビニルエステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体、並びにフリーラジカル手段によって重合可能な他のビニルモノマーが挙げられる。このようなモノマー及び具体例は、米国特許第4,985,340号により十分に記載されている。
【0052】
こうしたモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、アクリル酸、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、−テトラアクリレート及び−テトラメタクリレート、分子量200〜500のポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビス−メタクリレートのようなモノ−、ジ−、又はポリアクリレート及びメタクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのようなイソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル−及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートのようなアクリル化エポキシ、グリシジル(メタ)アクリレートのような多反応性モノマー;アクリルアミド、メチレンビスーアクリルアミド及びβ−メタクリルアミノエチルメタクリレートのような不飽和アミド;及びスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルアジパート、及び米国特許第4,304,705号に開示されている種々のビニルアズラクトンのようなビニル化合物が挙げられる。1超過のモノマーの混合物を、必要に応じて用いることができる。
【0053】
好適なカチオン重合性モノマー及び/又はオリゴマーは、典型的に、エポキシド、環状エーテル、ビニルエーテル、ビニルアミン、側鎖不飽和芳香族炭化水素、ラクトン及び他の環状エステル、ラクタム、オキサゾリン、環状カーボネート、環状アセタール、アルデヒド、環状アミン、環状スルフィド、シクロシロキサン、シクロトリホスファゼン、特定のオレフィン及びシクロオレフィン、並びにこれらの混合物のような少なくとも1つのカチオン重合性基を含有し、好ましくはエポキシド及びビニルエーテルを含有する。他のカチオン重合性基又はモノマーは、G・オディアン(G. Odian)著、「重合の原理(Principles of Polymerization)」第三版、ジョンワイリー&サンズ社(John Wiley & Sons Inc.)、1991年、ニューヨークに記載されており、「高分子科学及び工学百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)」第二版、H.F.マーク(Mark)、N.M.ビケールズ(Bikales)、C.G.オーバーベルガー(Overberger)、G.メンゲス(Menges)、J.I.クロスクウィッツ(Kroschwitz)編、第2巻、ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1985年、ニューヨーク、729〜814頁もまた本発明の実施において有用である。
【0054】
特に有用な例としては、米国特許第4,985,340号に記載されているエポキシドモノマーを包含する環状エーテルモノマーが挙げられる。多種多様な市販エポキシ樹脂が入手可能であり、これらはリー(Lee)及びネビル(Neville)による「エポキシ樹脂ハンドブック(Handbook of Epoxy Resins)」、マグローヒル(McGraw Hill)社、ニューヨーク、1967年、及びP.F.ブルーインズ(Bruins)による「エポキシ樹脂技術(Epoxy Resin Technology)」、(ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク、1968年)に掲載されている。導電性接着剤において使用される場合、エポキシ樹脂は、「電子グレード」である、すなわち、イオン性汚染物質が少ないことが好ましい。
【0055】
またカチオン重合性ビニル及びビニルエーテルモノマーは、本発明の実施に特に有用であり、米国特許第4,264,703号に記載されている。
【0056】
有用なエポキシ樹脂としては、プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド、及びシェルケミカル(Shell Chemicals)社から入手可能なEPON−828−LS(商標)電子グレードエポキシ樹脂のようなビスフェノールAに基づくエポキシ、又はこれもシェルケミカル(Shell Chemicals)社から入手可能なEPON−164(商標)若しくは他の製造者からの同等品のようなノボラックエポキシを挙げることができる。さらなる有用なエポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン二酸化物、エルフアトケム(Elf Atochem)から入手可能なPoly BD(商標)のようなエポキシ化ポリブタジエン、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル及びレゾルシノールジグリシジルエーテルが挙げられる。同様に有用なのは、シクロヘキセンオキシド、及びビニルシクロヘキセンジオキシド(ERL−4206(商標))、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシ(ERL−4221(商標))、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジパート(ERL−4299(商標))のようなユニオンカーバイド(Union Carbide)から入手可能なERL(商標)シリーズ樹脂;−1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(例えば、シェルケミカル(Shell Chemical)から入手可能なヘロキシ(Heloxy)67(商標))、フェノールホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジルエーテル(例えば、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手可能なDER−431(商標)及びDER−438(商標))、ポリグリコールジエポキシド(例えば、ダウケミカル社から入手可能なDER736(商標))及びこれらの混合物、並びにこれらと、同様に周知の共硬化剤(co-curatives)、硬化剤(curing agents)又は硬化剤(hardeners)の混合物である。用いられ得る周知の共硬化剤(co-curatives)又は硬化剤(hardeners)の代表例は、無水マレイン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、ピロメリト酸無水物、シス−1,2−シクロヘキサンカルボン酸無水物のような酸無水物、アミノ硬化剤(例えば、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペントアミド、フェナルカミン及び、ジェファミン(Jeffamine)(商標)及びバーサミド(Versamide)(商標)のような商品名で売られている物質、並びにこれらの混合物である。
【0057】
エポキシモノマーを含有する組成物を調製する際、ヒドロキシ官能性物質を添加することができる。ヒドロキシル官能性構成要素は、物質の混合物又はブレンドとして存在することができ、モノ−及びポリ−ヒドロキシル含有物質を含有することができる。ヒドロキシル官能性物質は、少なくともジオールであることが好ましい。用いる際、ヒドロキシル官能性物質は、鎖延長を助長することができ、硬化中にエポキシが過剰に架橋する(例えば硬化された組成物の硬度を増大させる)のを防ぐことができる。
【0058】
存在する際、有用なヒドロキシル官能性物質としては、約2〜18個の炭素原子、及び2〜5個好ましくは2〜4個のヒドロキシ基を有する脂肪族、脂環式、又はアルカノール置換アレーンモノ−又はポリ−アルコール、又はこれらの組合せが挙げられる。有用なモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、ネオペンチルアルコール(neopenyl alcohol)、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−フェノキシエタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキシルメタノール、3−シクロヘキシル−1−プロパノール、2−ノルボルナンメタノール及びテトラヒドロフルフリルアルコールを挙げることができる。
【0059】
本発明で有用なポリオールとしては、約2〜18個の炭素原子、及び2〜5個好ましくは2〜4個のヒドロキシル基を有する、脂肪族、脂環式、又はアルカノール置換アレーンポリオール又はこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
有用なポリオールの例としては、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン、2−エチ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール及びポリアルコキシ化ビスフェノールA誘導体が挙げられる。有用なポリオールの他の例は、米国特許第4,503,211号に開示されている。
【0061】
分子量の大きいポリオールとしては、ユニオンカーバイド(Union Carbide)社から入手可能なカーボワックス(Carbowax)(商標)ポリエチレンオキシド物質のような、分子量(M)の範囲が200〜20,000ポリエチレン及びポリプロピレンオキシドポリマー、ユニオンカーバイド社から入手可能なトーン(Tone)(商標)ポリオール物質のような、分子量の範囲が200〜5,000であるカプロラクトンポリオール、デュポン(DuPont)社から入手可能なテラタン(Terathane)(商標)物質のような、分子量の範囲が200〜4,000であるポリテトラメチレンエーテルグリコール、ユニオンカーバイド社から入手可能なPEG200のようなポリエチレングリコール、エルフアトケム(Elf Atochem)社から入手可能なポリBD(商標)物質のようなヒドロキシル終端ポリブタジエン樹脂、サウスカロライナ州ロックヒル(Rock Hill)のフェノキシアソシエーツ(Phenoxy Associates)社から市販されているもののようなフェノキシ樹脂、又は他の製造者によって供給されている同等の物質が挙げられる。
【0062】
酸触媒逐次重合としては、これらに限定されないが、多官能性イソシアネート(ポリイソシアネート)が多官能性アルコール(ポリオール)と反応してポリウレタンを形成する反応、多官能性エポキシと多官能性アルコールとの反応、及び多官能性シアネートエステルの架橋ポリトリアジン樹脂への環状三量化が挙げられる。
【0063】
本発明の触媒を用いた酸触媒逐次重合により硬化され得る、特に有用な多官能性アルコール、イソシアネート、及びエポキシド構成要素は、米国特許第4,985,340号、同第4,503,211号、同第4,340,716号に記載されている。
【0064】
触媒環状三量化によって硬化され得る、好適な多官能性シアネートエステルは、米国特許第5,143,785号及び同第5,215,860号に記載されている。硬化され得る、好適な多反応性モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートのようなヒドロキシ(アルキル)(メタ)アクリレート、イソシアネートエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0065】
上述の部類のモノマーと、粘着付与剤、硬化剤(hardeners)、共硬化剤(co-curatives)、硬化剤(curing agents)、安定剤、増感剤等のような添加剤との混合物もまた、本発明の重合性組成物において用いることができる。更に、顔料、粒状研磨剤、安定剤、光安定剤、酸化防止剤、フロー剤、粘度付与剤(bodying agents)、つや消し剤、帯電防止剤、着色剤、不活性充填剤、結合剤、発泡剤、殺真菌剤、殺菌剤、界面活性剤、可塑剤、及び当業者に公知の他の添加剤のような補助剤を、本発明の組成物に添加することができる。これらは、本発明の組成物の重合を妨げない限り、その意図される目的に有効な量で添加され得る。更に、放射線感受性触媒又は開始剤を含有する組成物においては、補助剤が、触媒又は開始剤が反応する放射線を吸収しないことが好ましい。
【0066】
上記重合性モノマー中におけるナノ粒子の分散を促進するために、溶媒、好ましくは有機溶媒を、加工助剤として使用することができる。代表的な溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、メチルセロソルブアセテート、塩化メチレン、ニトロメチレン、ギ酸メチル、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン(グリム)、3−メチルスルホラン及びプロピレンカーボネートが挙げられる。
【0067】
重合後、得られるポリマーを架橋してよい。架橋は、ガンマ線又は電子線照射のような高エネルギー放射線の使用によって、架橋剤を用いて又は用いずに達成され得る。架橋剤又は架橋剤の組合せは、架橋を促進するために重合性モノマーの混合物に添加され得る。
【0068】
架橋剤を硬化する有用な放射物としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、1,12−ドデカノールジアクリレート、及びこれらの組合せを包含する、米国特許第4,379,201号(ハイルマン(Heilmann)ら)に開示されているような多官能性アクリレート、及び米国特許第4,737,559号(ケレン(Kellen)ら)に開示されているような共重合性芳香族ケトンコモノマーが挙げられる。好適な紫外線源としては、例えば中圧水銀ランプ及び紫外線ブラックライトが挙げられる。
【0069】
有用な縮合重合性モノマーとしては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリ尿素及びポリウレタンの調製に用いられるものが挙げられる。
【0070】
表面改質ナノ粒子とポリマーを組み合わせるために種々の方法を採用してよい。1つの方法においては、表面改質ナノ粒子のコロイド分散液とポリマーが組み合わせられる。次いで、組成物中に存在する溶媒は除去され、ポリマー中に分散している表面改質ナノ粒子から離れる。例えば蒸留、回転蒸発、又はオーブン乾燥を包含する蒸発により溶媒を除去してもよい。任意に、いくつかのコロイド分散液、例えば、水性コロイド分散液において、ポリマーの添加前に、水の除去を助けるために、共溶媒(例えば、メトキシ−2−プロパノール又はN−メチルピロリドン)をコロイド分散液に添加してよい。また水は、トルエンのような不混和性溶媒による共沸蒸留によって除去されてもよい。ポリマーを添加した後、水及び共溶媒は除去される。
【0071】
表面改質ナノ粒子のコロイド分散液をポリマーに導入するための別の方法としては、表面改質ナノ粒子のコロイド分散液を乾燥して粉末にした後、ナノ粒子を分散させようとするポリマー又はポリマー中の少なくとも1つの構成要素を添加することが挙げられる。乾燥工程は、オーブン乾燥又は噴霧乾燥のような従来の手段によって実行してもよい。表面改質ナノ粒子は、乾燥の際の、不可逆的なアグロメレーション又は不可逆的な凝集を防ぐのに十分な量の表面基を有することが好ましい。乾燥時間及び乾燥温度は、100%未満の表面被覆率を有するナノ粒子について最小限であることが好ましい。
【0072】
或いは、ナノ粒子は溶融加工によって合成されてもよい。この実施形態においては、表面改質ナノ粒子及び熱可塑性ポリマーを、組み合わせ、混合物を十分攪拌することによって溶解し、均一な混合物を提供する。或いは、ナノ粒子と熱可塑性ポリマーのペレット又は粉末を組み合わせ、溶解前に密接に混合してもよい。
【0073】
別の実施形態においては、表面改質ナノ粒子は、重合性モノマー又はモノマーの混合物中に分散してもよく、これらは次いで重合される。モノマーは、熱的に、フリーラジカル的に、又は光化学的に重合されてよく、当該技術分野において既知の適切な触媒が存在する。必要に応じて、重合性混合物は、当該技術分野において既知の技術及び発泡剤を用いて泡立てられてもよい。米国特許第6,586,483号(バラン(Baran)ら)を参照してよい。
【実施例】
【0074】
特に明記しない限り、試薬及び溶媒は全て、アルファ・エイサー(Alfa Aesar)(マサチューセッツ州、ワードヒル(Ward Hill))から得たか、又は入手可能である。
【0075】
調製例1
トリエトキシシラン基を有するグリシジルアジドポリマー(GAP−シラン)の調製
酢酸エチル(20.0g)中のヒドロキシ終端グリシジルアジドポリマーおよそ40重量%溶液を、酢酸エチル(20.0g)中の3−イソシアネートトリエトキシシラン(2.90g)と混合した。混合物にジラウリン酸ジブチルスズ(1滴)を加え、室温で一晩磁気的に攪拌した。ロータリーエバポレーターを用いて酢酸エチルを減圧下で除去し、GAP−シラン生成物(23.28g)を得た。イソシアネート基に起因する吸光度は、製品の赤外線スペクトル中に観察されなかった。グリシジルアジドポリマー及びGAP−シランの調製に関する更なる詳細は、出願人の同時係属出願U.S.S.N.11/141,877(2005年1月6日出願)に見られるであろう。
【0076】
(実施例1)
GAP−及びイソオクチル−改質シリカナノ粒子の調製
アンモニウム安定化シリカゾル(100.0g;NALCO2326、ナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州、ネーパービル(Naperville)から得られる))、1−メトキシ−2−プロパノール(112.5g)、実施例1のGAP−シラン生成物(3.55g)、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(1.26g、ゲレスト(Gelest)(ペンシルペニア州、モリスビル(Morrisville))より)、及びイソオクチルトリメトキシシラン(7.16g、ゲレスト(Gelest)(ペンシルペニア州、モリスビル(Morrisville))より)を、3首フラスコ内で組み合わせ、攪拌し、80℃で18時間加熱した。混合物をガラス皿に注いだ後、130℃の強制空気オーブンで乾燥し、わずかに黄色の固体粉末として生成物15.62gを得た。
【0077】
(実施例2)
リン酸エステル含有シリカナノ粒子の調製
アンモニウム安定化シリカゾル(100.0g;ナルコケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州、ネーパービル(Naperville))から得られるナルコ(NALCO)2326)、1−メトキシ−2−プロパノール(112.5.0g)、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(2.51g、ゲレスト(Gelest)(ペンシルペニア州、モリスビル(Morrisville))より)、及びイソオクチルトリメトキシシラン(7.16g、ゲレスト(Gelest)ペンシルペニア州、モリスビル(Morrisville)より)を、3首フラスコ内で組み合わせ、攪拌し、80℃で16時間加熱した。混合物をガラス皿に注いだ後、150℃の強制空気オーブンで乾燥し、白色固体粉末として生産物19.15gを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面改質ナノ粒子相を分散した有機ポリマーを含む難燃性ポリマー組成物:ここで表面改質剤は下式である:
−R−Y (I):式中
Xは、無機ナノ粒子表面に結合してよい又は無機ナノ粒子表面と会合してよい官能基を表し、
は、炭素原子約1〜20個及び価数n+mの、置換又は非置換多価炭化水素架橋基であり;
Yはリン含有基であり、
m及びnは、独立して1〜4である。
【請求項2】
リン含有基が、ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィンオキシド、ホスフィン、亜リン酸塩又はリン酸塩、及びこれらの窒素類似体から選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ナノ粒子相の前記粒子の平均粒子サイズが5〜100ナノメートルである請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記ナノ粒子の平均粒子サイズが3〜20ナノメートルである請求項2に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが熱可塑性ポリマー及び熱硬化型ポリマーから選択される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子が前記表面改質剤に共有結合又はイオン結合した請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子がシリカナノ粒子であり、前記リン含有基が、両官能性シラン表面改質剤によって前記ナノ粒子表面に結合している、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記両官能性シラン表面改質剤が、式P−R−Si−(Y)(R3−b (II)である請求項7に記載のポリマー組成物。
式中:
Pはリン含有官能基であり;
は、炭素原子約1〜20個及び価数a+bの、置換又は非置換多価炭化水素架橋基であり;
Yは、−ORであり、ここでRは、炭素原子1〜8個のアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はアラルキル基であり;
は、独立して、炭素原子1〜8個のアルキル、アリール、アラルキル又はアルコキシ基であり;
aは1又は2であり;
bは1〜3である。
【請求項9】
表面改質剤:無機ナノ粒子の重量比が2:1〜1:10である請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記表面改質剤が、無機ナノ粒子の表面上で、利用可能な官能基の10〜100%と反応するのに十分な量で使用される請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、セリア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミニウム/シリカ、及びこれらの組合せである請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記官能化ナノ粒子が二次表面改質剤を更に含む請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
二次表面改質剤が、無機ナノ粒子の表面上で、利用可能な官能基の1〜100%と反応するのに十分な量で使用される、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
1以上の重合性モノマー及び表面改質ナノ粒子相を含む重合性組成物;ここで表面改質剤は下式である:
−R−Y (I):式中
Xは、無機ナノ粒子表面に結合してよい又は無機ナノ粒子表面と会合してよい官能基を表し、
は、炭素原子約1〜20個及び価数n+mの、置換又は非置換多価炭化水素架橋基であり;
Yはリン含有基であり、
m及びnは、独立して1〜4である。
【請求項15】
前記重合性モノマーが、フリーラジカル重合性モノマー、カチオン重合性モノマー、付加重合性モノマー、及び縮合重合性モノマーから選択される請求項14に記載の重合性組成物。
【請求項16】
前記フリーラジカル重合性モノマーが、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、ビニル置換芳香族化合物、ビニル置換複素環化合物、ビニルエステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体から選択される請求項15に記載の重合性組成物。
【請求項17】
前記表面改質ナノ粒子相が、前記組成物の5〜50重量%を構成する請求項14に記載の重合性組成物。
【請求項18】
前記カチオン重合性モノマーが、エポキシド、環状エーテル、ビニルエーテル、ビニルアミン、側鎖不飽和芳香族炭化水素、ラクトン、ラクタム、オキサゾリン、環状カーボネート、環状アセタール、アルデヒド、環状アミン、環状硫化物、シクロシロキサン、シクロトリホスファゼン、シクロオレフィン、及びこれらの混合物から選択される請求項15に記載の重合性組成物。
【請求項19】
前記表面改質ナノ粒子がシリカ表面改質ナノ粒子であり、前記表面改質剤が、両官能性シランカップリング剤によって前記ナノ粒子表面に結合されている、請求項14に記載の重合性組成物。
【請求項20】
前記ナノ粒子が、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、セリア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミニウム/シリカ、及びこれらの組合せである請求項14に記載の重合性組成物。
【請求項21】
前記表面改質ナノ粒子が二次表面改質剤を更に含む請求項14に記載の重合性組成物。

【公表番号】特表2009−518510(P2009−518510A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544378(P2008−544378)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/045841
【国際公開番号】WO2008/024127
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】