説明

難燃性絶縁電線

【課題】燃焼時の遮炎性が非常に良好で、安定した難燃性を示して垂直燃焼試験をクリアし、しかも耐熱性、機械的強度、低温性に優れた耐熱架橋ポリエチレン電線を提供する。
【解決手段】エチレン系共重合体を主体とする樹脂成分100質量部に対し、ポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニールを除く臭素系難燃剤15〜80質量部、三酸化アンチモン10〜70質量部および金属水和物10〜60質量部を含む樹脂組成物が導体の周りに被覆されており、当該被覆樹脂が架橋されている難燃性絶縁電線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性、耐熱性、低温性を有する架橋ポリエチレン絶縁電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性を有する難燃ポリエチレン電線は各種白物家電や各種OA機器に幅広く使用されている。
このような耐熱架橋難燃ポリエチレン電線は、耐熱性、低温性は元より、さらに安全性の面から高い難燃性が要求されえており、非常に厳しい難燃性規格UL1581に規定される垂直難燃試験のVW−1試験に合格することが求められている。
従来より、樹脂組成物に金属水和物、メラミンシアヌレートを加えることにより(例えば、特許文献1参照)あるいは、臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを使用することにより(例えば、特許文献2参照)耐熱架橋難燃ポリエチレン電線は垂直難燃性 VW−1を維持してきた。
【特許文献1】特開2001−60414号公報
【特許文献2】特願平11−172751号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの電線の垂直燃焼試験時の着火の際には火炎が高く上がるという問題点があり、安定した難燃性を得ることが出来なかった。
そこで、本発明は、燃焼時の遮炎性が非常に良好で、安定した難燃性を示して垂直燃焼試験をクリアし、しかも耐熱性、機械的強度、低温性に優れた耐熱架橋難燃性絶縁電線を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、電線の難燃性について検討を重ねた結果、特定量の三酸化アンチモンや特定の臭素系難燃剤と共に特定量の金属水和物、さらにはシラン処理を施した水酸化マグネシウムを特定量使用することにより、燃焼時の遮炎性が非常に良好で、しかも耐熱性、強度、低温性に優れた耐熱架橋ポリエチレン電線を得ることに成功した。
すなわち本発明は、
(1)エチレン系共重合体を主体とする樹脂成分100質量部に対し、ポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニールを除く臭素系難燃剤15〜80質量部、三酸化アンチモン10〜70質量部および金属水和物10〜60質量部を含む樹脂組成物が導体の周りに被覆されており、当該被覆樹脂が架橋されていることを特徴とする難燃性絶縁電線、
(2)上記の金属水和物が、シラン処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする(1)記載の難燃性絶縁電線、
(3)上記のポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニ−ルを除く臭素系難燃剤が、ビス臭素化フェニルテレフタルイミド誘導体及び/又は1,2−ビス(ブロモフェニル)アルキルであることを特徴とする(1)または(2)記載の難燃性絶縁電線、および、
(4)上記の樹脂成分100質量部に対し、さらにメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩1〜15質量部を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載の難燃性絶縁電線、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の難燃性絶縁電線は、エチレン系共重合体を主成分とし、難燃剤としてポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニールを除く臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、金属水和物を含む樹脂組成物を被覆層とすることで、高い難燃性、低温性、耐熱老化特性を示し、垂直燃焼時の遮炎性が極めて良好となり、安定した難燃性を得ることができる。
しかも、金属水和物としてシラン処理された水酸化マグネシウムを使用した場合、極めて少量の含有量で前記効果を発現する。
また、樹脂組成物中に、さらにメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩を含有することにより、耐熱性、難燃性に優れたものでとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
先ず、本発明の絶縁電線の難燃性樹脂組成物のうち、樹脂成分を構成するエチレン系共重合体およびその他の樹脂について、その含有量も含めて説明する。
【0007】
(a)エチレン系共重合体
本発明におけるエチレン系共重合としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などが挙げられる。
この中でもエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体が好ましく、さらにはエチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
本発明において、エチレン系共重合体の量は樹脂成分100質量%中50質量%以上、さらに60質量%〜100質量%が好ましい。この量が50質量%より少ないと難燃性が著しく低下するためである。
使用されるエチレン系共重合体の酸、エステル、酢酸含有量は特には限定しないが、10〜25質量%のものが強度維持、加工性の点から好ましい。
【0008】
(b)ポリオレフィン樹脂
本発明の樹脂成分の一部にポリオレフィン樹脂を使用することが出来る。
ここで言うポリオレフィン樹脂とはポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体ゴム、ポリプロピレン等が挙げられ、この中でもエチレン−αオレフィン共重合体、ポリエチレン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂は、樹脂成分中50質量%以下、さらには40質量%以下含有されるのが好ましい。この量が50質量%を超えると難燃性が著しく低下する。
【0009】
(c)不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィン樹脂
本発明の樹脂成分の一部として不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィンを使用することが出来る。不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィンは、樹脂成分中の50質量%以下、さらには40質量%以下含有されるのが好ましい。
また、この不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したポリオレフィン樹脂を配合することにより、組成物の強度を向上する事ができ、さらには電線の加工性を向上させることができる。
このポリオレフィン系樹脂を不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したものは、金属水和物による機械特性の低下を緩和する効果や電線の白化を防ぐ効果もある。
【0010】
本発明の難燃性絶縁電線の被覆部を構成する樹脂組成物は、難燃性等を付与するために臭素系難燃剤、三酸化アンチモン及び金属水和物を必須成分として含有する。これらの成分について、その含有量も含めて説明する。
【0011】
(d)臭素系難燃剤
本発明に用いる臭素系難燃剤としては、ポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニ−ルを除く臭素系難燃剤であればよい。臭素系難燃剤としては、例えば臭素化エチレンビスフタルイミド誘導体、ビス臭素化フェニルテレフタルアミド誘導体、臭素化ビスフェノール誘導体、1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン等の有機系臭素含有難燃剤が使用可能である。その中でも臭素化エチレンビスフタルイミド誘導体(下記構造式1)、1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン(下記構造式2)が好ましい。
ポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニールの臭素系難燃剤や塩素系難燃剤を使用すると、ブルーミングが激しく、生じたりする問題があるため、本発明ではその使用を避けている。
特にビス臭素化フェニルテレフタルイミド誘導体、1,2−ビス(ブロモフェニル)アルキルの二つの系の臭素系難燃剤を使用することによりブルーミングがほとんど生じない被覆材料を形成することが可能である。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
本発明では、臭素系難燃剤は樹脂成分100質量部に対し、15〜80質量部に制限され、好ましくは15〜60質量部である。臭素系難燃剤が15質量部より少ない場合、難燃性が低下し、その含有率が80質量部より多い場合、垂れ落ちによる難燃性が低下したり、低温性が著しく低下したり、ブルーミングが生じたりする。
【0015】
(e)三酸化アンチモン
また、本発明では難燃助剤として三酸化アンチモンを使用する。三酸化アンチモンの含有量は、樹脂成分100質量部に対し、10〜70質量部に制約され、好ましくは15〜50質量部である。この量が10質量部より少ないと難燃性が著しく低下し、また70質量部より多い場合低温性が著しく低下する。
【0016】
(f)金属水和物
発明に用いられる金属水和物としては、特に限定しないが、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトが挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
この金属水和物の量であるが樹脂成分100質量部に対し10〜60質量部に制約され、好ましくは10〜50質量部である。この含有量が10質量部以下であると実質的に難燃性の効果がなく、この量が60質量部を越えると低温性が大幅に低下する。
【0017】
水酸化アルミニウムは表面未処理のハイジライトH42M(商品名、昭和電工株式会社)など下記に例示されているビニル基又はエポキシ基を末端に有するシランカップリング剤により処理なされているものが挙げられる。
水酸化マグネシウムとしては、無処理のもの、その表面処理剤としてステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸処理がなされたもの、リン酸エステル処理がなされたもの、シランカップリング剤処理がなされたものがすでに、キスマ(協和化学(株))、マグシーズ(神島化学(株))、マグニフィン(アルベマール(株))の商品名で、すでに上市されている。
また無処理又は予め表面処理がなされている水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムにシランカップリング剤をコーティングすることにより、シラン処理の金属水和物を得ることが出来る。
【0018】
この中でもシラン処理された水酸化マグネシウムが好ましい。シラン処理なされた水酸化マグネシウムを使用することにより、垂直燃焼を行った際の遮炎性が極めて良好となり、安定した難燃性を得ることが出来る。さらに良好な低温性も維持することが可能で、さらには端末加工性も非常に良好となる。
本発明におけるシランカップリング剤は末端にビニル基、メタクロキシ基、グリシジル基、アミノ基を有するものが好ましい。架橋性のシランカップリング剤としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ―アミノプロピルトリプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が好ましい
シランカップリング剤は、表面処理するに十分な量が適宜加えられるが、具体的には金属水和物に対し0.1〜2.5重量%、好ましくは0.2〜1.8重量%、さらに好ましくは0.3〜1.0重量%である。
【0019】
さらに、本発明の絶縁樹脂組成物には、酸化防止剤を含有させるのが好ましい。
酸化防止剤としては、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などのアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリル−チオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤、などがあげられる。
特に、メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩を使用することにより耐熱性が大幅に向上するのみならず、難燃性を大幅に向上する。このメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩は樹脂成分100質量部に対して1〜15質量部、さらには2〜12質量部加えることが好ましい。
【0020】
本発明の絶縁樹脂組成物には、電線・ケ−ブルにおいて、一般的に使用されている各種の添加剤、例えば、金属不活性剤、難燃(助)剤、充填剤、滑剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0021】
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’ −オキサミドビス−(エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などがあげられる。
難燃(助)剤、充填剤としては、カーボン、クレー、酸化亜鉛、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモン、シリコーン化合物、石英、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボンなどがあげられる。
滑剤としては、炭化水素系、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石けん系などがあげられ、なかでも、ワックスE、ワックスOP(いずれも商品名、Hoechst社製)などの内部滑性と外部滑性を同時に示すエステル系、アルコール系、金属石けん系などが挙げられる。
【0022】
本発明の絶縁樹脂組成物は、上記の各成分を、二軸混練押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど、通常用いられる混練装置で溶融混練して得ることができる。
【0023】
次に本発明の難燃性絶縁電線について説明する。
本発明の難燃性絶縁電線は、導体の周りに上記の絶縁樹脂組成物が被覆されたものであり、絶縁樹脂組成物を通常の押出成形機を用いて導体の周囲に押出被覆することにより製造することが出来る。
本発明の絶縁電線の場合、導体の周りに形成される絶縁樹脂組成物の被覆層の肉厚も特に制限はないが、0.15〜2mmが好ましい。また、絶縁層が多層構造であってもよく、絶縁樹脂組成物で形成した被覆層のほかに中間層などを有するものでもよい。
またその後、その被覆層を架橋し、さらに耐熱性を維持する絶縁電線を製造することができる。被覆層を架橋体とすることにより、耐熱性の向上のみならず、難燃性も向上する。
【0024】
架橋の方法は特に制限はなく、電子線架橋法や化学架橋法で行うことができる。
電子線架橋法で行う場合、電子線の線量は1〜30Mradが適当であり、効率よく架橋をおこなうために、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのメタクリレート系化合物、トリアリルシアヌレートなどのアリル系化合物、マレイミド系化合物、ジビニル系化合物などの多官能性化合物を架橋助剤として配合してもよい。
化学架橋法の場合は樹脂組成物に、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ケトンペルオキシエステル、ケトンペルオキシドなどの有機過酸化物を架橋剤として配合し、押出成形被覆後に加熱処理により架橋をおこなう。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
実施例1〜10および比較例1〜5
表1に実施例1〜6および比較例1〜5の樹脂組成物の各成分の含有量(表中の数字は断りのない限り質量部である)を示す。
まず、表に示す各成分を室温にてドライブレンドし、バンバリーミキサーを用いて溶融混練して、各絶縁樹脂組成物を製造した。
【0026】
表中に示す各成分材料は以下のものを使用した。
1.エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)
商品名:エバフレックスV−527−4 製造元:三井デュポンポリケミカル(株)
酢酸ビニル含有量:17質量%
2.エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)
商品名:NUC6510 製造元: 日本ユニカー(株)
アクリル酸エチル含有量:22質量%
3.直鎖型低密度ポリエチレン(LLDPE)
商品名: UE320 製造元:日本ポリエチレン(株)
4.マレイン酸変性ポリエチレン
商品名:アドマーXE070 製造元:三井化学(株)
マレイン酸変性量:1質量%
5.臭素系難燃剤I(臭素化エチレンビスフタルイミド誘導体)
商品名:サイテックスBT−93 製造元: アルべマール(株)
6.臭素系難燃剤II(1,2−ビス(ブロモフェニル)エタン)
商品名:サイテックス8010 製造元: アルべマール(株)
7.中国産三酸化アンチモン
商品名: 中国産三酸化アンチモン 製造元:豊田通商(株)
8.シランカップリング剤処理水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5L 製造元:協和化学工業(株)
シラン処理品
9.脂肪酸処理水酸化マグネシウム
商品名:キスマ5A 製造元:協和化学工業(株)
ステアリン酸処理3%
10.ヒンダートフェノール系酸化防止剤
商品名:イルガノックス1010 製造元:チバスペシャリティケッミカルズ
11.2−メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩
商品名:ノクラックMBZ 製造元:大内親興化学(株)
12.架橋助剤
商品名:オグモントT200/01 製造元:新中村化学(株)
13.ステアリン酸マグネシウム
ステアリン酸マグネシウム 製造元:日本油脂(株)
【0027】
次に、電線製造用の押出被覆装置を用いて、導体(導体径0.95mmφの錫メッキ軟銅撚線 構成:21本/0.18mmφ)上に、予め溶融混練した表記の各絶縁樹脂組成物を押し出し法により被覆して、各々絶縁電線を製造した。外径は1.79mm(被覆層の肉厚0.42mm)とした。
得られた電線の電子線架橋処理(15Mrad)を行い、被覆樹脂層の架橋を行った。
【0028】
得られた絶縁電線について、以下の試験を行い、得られた結果を表1に示した。
1)伸び、引張り強さ
各絶縁電線の伸び(%)と被覆層の引張り強さ(MPa)を、標線間25mm、引張速度500mm/分の条件で測定した。伸びおよび引張り強さの要求特性はそれぞれ、各々400%以上、10MPa以上が好ましい。
2)難燃性
各絶縁電線について、UL1581の Vertical Flame Test をおこない、合格数を示した(合格数/N数)。また、1回目接炎の際の最大炎長(バーナー火の接する部分から、燃え上がる最大の高さ)についても記した。
合格は全数合格、最大炎長は200mm以下が合格である。
3)低温性
各絶縁電線を−45℃自己径巻き付けを行い、クラックの有無を確認した。
クラックが入っているものは不合格である。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例1〜6はいずれの評価項目においても満足な結果が得られている。特に実施例1〜6は、厳しい垂直難燃試験(VW−1)にも合格する難燃性を有している。
これに対して、金属水和物を含有しない比較例1および比較例2は、垂直難燃試験に合格ができず、最大炎長も200mm以上を示し、金属水和物を規定量以上に含有する比較例3は、伸びが悪く、また低温性を満足することができない。
樹脂組成物中の三酸化アンチモンの含有量が規定値を越える比較例4は、低温性が悪く、臭素系難燃剤の含有量が規定値を越える比較例5は、垂直難燃試験に合格ができず、また低温性を満足することができない。
このように比較例では、伸び、難燃性、低温性のいずれかの項目を満足することができず、本発明の効果が得られないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系共重合体を主体とする樹脂成分100質量部に対し、ポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニールを除く臭素系難燃剤15〜80質量部、三酸化アンチモン10〜70質量部および金属水和物10〜60質量部を含む樹脂組成物が導体の周りに被覆されており、当該被覆樹脂が架橋されていることを特徴とする難燃性絶縁電線。
【請求項2】
上記の金属水和物が、シラン処理された水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1記載の難燃性絶縁電線。
【請求項3】
上記のポリブロモフェニルエーテル及びポリブロモビフェニ−ルを除く臭素系難燃剤が、ビス臭素化フェニルテレフタルイミド誘導体及び/又は1,2−ビス(ブロモフェニル)アルキルであることを特徴とする請求項1または2記載の難燃性絶縁電線。
【請求項4】
上記の樹脂成分100質量部に対し、さらにメルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩1〜15質量部を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の難燃性絶縁電線。

【公開番号】特開2009−51918(P2009−51918A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219135(P2007−219135)
【出願日】平成19年8月25日(2007.8.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】