説明

雨滴検出装置並びにそれを備えたワイパ自動制御装置

【課題】 雨滴の検出精度とコスト性とを両立する雨滴検出装置を提供する。
【解決手段】 各第一受光素子110及び第二受光素子28の受光量r1,r1,r2に内在する周囲温度の依存分を第一実施形態の比R3/(R1+R2)の場合と同様にキャンセルしてなる比r2/モr1に基づき初期雨判定を行う。したがって、イグニションスイッチ6のオン且つワイパスイッチ12におけるオートの選択操作が行われた直後であっても、高い判定精度を実現することができる。しかも、ウインドシールド4への雨滴の付着がない基準時に上記比r2/モr1を取得するには、各第一受光素子110及び第二受光素子28の受光量r1,r1,r2を少なくとも一点の発光量について測定するだけでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドに付着する雨滴を検出する雨滴検出装置並びにそれを備えたワイパ自動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウインドシールドに付着した雨滴を払拭するワイパを自動制御するワイパ自動制御装置等では、雨滴検出装置が利用されている。
従来、雨滴検出装置としては、ウインドシールドによって反射させた発光素子の光を受光素子に導くことで、当該受光素子による受光量を検出するものが知られている(例えば特許文献1、2参照)。このような雨滴検出装置では、ウインドシールドへの雨滴の付着状態に応じて受光素子への導光量が変化することに着目し、受光素子の検出結果から雨滴の付着を判定している。
【0003】
ところで、上記従来の雨滴検出装置においては、発光素子から発せられる発光量及び受光素子の受光量が変化するため、受光素子の出力が周辺温度に応じて変動する。したがって、そのような温度特性による検出精度の低下を回避することは重要となる。そこで、特許文献1の雨滴検出装置では、受光素子の出力と周辺温度との相関を表す相関データを予め取得しておき、当該相関データに基づいて受光素子の出力を補正することにより検出精度の向上を図っている。
【0004】
また、自動車等のウインドシールドに装着される従来の雨滴検出装置では、サイズが大きくなると運転者の視界を遮ることとなるため、ウインドシールドへの投影領域のうち雨滴の検出領域が占める割合、即ちサイズ効率を向上することが望まれている。そこで、特許文献2の雨滴検出装置では、発光素子と受光素子とを仮想三角形又は仮想平行四辺形の頂点に配置し、一つの発光素子が発した光を二つの受光素子にて同時に受けるようにすることで、サイズ効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−349961号公報
【特許文献2】米国特許第6433501号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の雨滴検出装置では、上述の相関データを取得するために、工場出荷前等において受光素子の出力を広範囲の温度で測定しておく必要がある。このような広範囲の温度での測定は手間や時間のかかるものであり、コストアップを惹起する。また、そうした測定によって得られる相関データはサイズの大きなものとなるため、相関データを記憶しておく記憶手段としては記憶容量の大きなものが必要となり、価格が高くなる。
【0007】
また、特許文献2の雨滴検出装置では、仮想三角形又は仮想平行四辺形の各辺で囲まれている部分が雨滴の非検出領域となる。即ち特許文献2の雨滴検出装置には、雨滴の検出に関与しない大きなデッドスペースが不可避的に存在するため、サイズ効率を向上する上で限界が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、雨滴の検出精度とコスト性とを両立する雨滴検出装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、サイズ効率を向上する雨滴検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によると、受光部は、発光素子から発せられ反射部を経由する第一光路によってウインドシールドに導かれた後、当該ウインドシールドによって反射された基準光を受ける。それと共に受光部は、発光素子から発せられ反射部を経由しない第二光路によってウインドシールドに導かれた後、当該ウインドシールドによって反射された基準光も受ける。このような受光部の受光量に基づいて判定手段が雨滴の付着判定をする請求項1に記載の発明では、ウインドシールドにおいて各光路の基準光を反射する領域が雨滴の検出領域と略一致する。ここで、第一光路の基準光を反射する領域については、当該第一光路が経由する反射部の位置を調整することで、自由に位置設定をすることができる。したがって、第一光路の基準光を反射する領域について、第二光路の基準光を反射する領域の外側をカバーするように位置設定をすることで、雨滴検出装置のウインドシールドへの投影領域から雨滴の非検出領域が減少する。これにより、雨滴の検出に関与しないデッドスペースが低減されるので、サイズ効率の向上が図られる。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、受光部は、ウインドシールドによって反射された第一光路の基準光を受ける第一光路受光素子と、ウインドシールドによって反射された第二光路の基準光を受ける第二光路受光素子とを有する。このように第一光路の基準光と第二光路の基準光とを各別の受光素子によって受けることで、それら各光路の基準光について光量をより正確に知ることができる。したがって、判定手段による雨滴の付着の判定精度、換言すれば雨滴の検出精度が向上する。
【0011】
請求項3に記載の発明では、基準光をウインドシールドの内壁側からウインドシールドに入射させる光学体に反射部が形成されるので、従来から存在する光学体を利用して安価に雨滴検出装置の組立性を向上することができる。
請求項4,5に記載の発明によると、発光素子、第一光路受光素子及び第二光路受光素子が実装される基板部と、それに略平行なウインドシールドとの間に反射部が設けられるので、雨滴検出装置の体格をコンパクトにすることができる。
【0012】
請求項6に記載の発明によると、受光部の受光素子は、発光素子から発せられ第一反射部を経由する第一光路によってウインドシールドに導かれた後、当該ウインドシールドによって反射された基準光を受ける。また、同受光素子は、発光素子から発せられ反射部を経由しない第二光路によってウインドシールドに導かれた後、当該ウインドシールド及び第二反射部によって順次反射された基準光も受ける。このような構成によれば、第一光路の基準光を受ける受光素子と第二光路の基準光を受ける受光素子とが共通化されるので、部品点数を低減してコスト性を向上することができる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、基準光をウインドシールドの内壁側からウインドシールドに入射させる光学体に第一及び第二反射部が形成されるので、従来から存在する光学体を利用して安価に雨滴検出装置の組立性を向上することができる。
請求項8,9に記載の発明によると、発光素子及び受光素子が実装される基板部と、それに略平行なウインドシールドとの間に第一及び第二反射部が設けられるので、雨滴検出装置の体格をコンパクトにすることができる。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発明である雨滴検出装置と、当該雨滴検出装置の判定手段が雨滴の付着ありと判定した場合にワイパを駆動する駆動手段とを備えたワイパ自動制御装置である。かかるワイパ自動制御装置によれば、雨滴検出装置として備えた請求項1〜9のいずれか一項に記載の発明と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第一実施形態による雨滴検出装置を示す側面図である。
【図2】第一実施形態によるワイパ自動制御装置を示すブロック図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】第一実施形態による雨滴検出装置の検出領域を示す模式図である。
【図5】第一実施形態によるワイパ自動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】第一実施形態による初期雨判定の流れを示すフローチャートである。
【図7】第一実施形態による初期雨判定の原理を説明するための特性図である。
【図8】第一実施形態による通常雨判定の流れを示すフローチャートである。
【図9】第二実施形態による通常雨判定の流れを示すフローチャートである。
【図10】第三実施形態による通常雨判定の流れを示すフローチャートである。
【図11】第四実施形態による初期雨判定の流れを示すフローチャートである。
【図12】第四実施形態による初期雨判定の原理を説明するための特性図である。
【図13】第五実施形態による雨滴検出装置を示す側面図である。
【図14】図13のXIV−XIV断面図である。
【図15】第五実施形態によるワイパ自動制御装置を示すブロック図である。
【図16】第五実施形態による雨滴検出装置の検出領域を示す模式図である。
【図17】第五実施形態による初期雨判定の流れを示すフローチャートである。
【図18】第五実施形態による通常雨判定の流れを示すフローチャートである。
【図19】第五実施形態の変形例による雨滴検出装置を示す側面図である。
【図20】図19のXX−XX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態によるワイパ自動制御装置を図2に示す。ワイパ自動制御装置2は車両に搭載され、車室前面のウインドシールド4に付着した雨滴を払拭するワイパ5を自動制御する。
【0017】
まず、ワイパ自動制御装置2の全体構成について説明する。
ワイパ自動制御装置2は、ワイパ駆動装置10及び雨滴検出装置20等から構成されている。ワイパ駆動装置10と雨滴検出装置20とは、車両のイグニションスイッチ6を介して車両のバッテリ7から電力を供給される。
【0018】
ワイパ5を駆動するワイパ駆動装置10は、ワイパスイッチ12、ワイパモータ駆動回路14及びワイパモータ16を備えている。ワイパスイッチ12は車室の運転席に設置され、オート、低中高速、停止等の複数の作動位置を有している。ワイパスイッチ12は、作動位置を表す信号をワイパモータ駆動回路14と雨滴検出装置20のCPU32とに出力する。ワイパモータ駆動回路14は、ワイパスイッチ12と雨滴検出装置20のCPU32との各々から受信する信号に応じてワイパモータ16の駆動状態を切り換える。具体的にワイパモータ駆動回路14は、ワイパスイッチ12の作動位置としてオートを表す信号を受信するとき、CPU32から受信する制御信号に従ってワイパモータ16を駆動する。また、ワイパモータ駆動回路14は、ワイパスイッチ12の作動位置として低中高速のいずれかを表す信号を受信するとき、当該いずれかの作動速度を実現するようにワイパモータ16を駆動する。さらにまた、ワイパモータ駆動回路14は、ワイパスイッチ12の作動位置として停止を表す信号を受信するとき、ワイパモータ16を停止させる。ワイパモータ16は、ワイパモータ駆動回路14によって駆動されるときワイパ5を揺動運動させ、またワイパモータ駆動回路14によって停止させられるときワイパ5を車両のカウルトップパネルの上方に定位させる。
【0019】
図1に示すように雨滴検出装置20はウインドシールド4の内壁8側に装着され、ウインドシールド4の外壁9側に付着する雨滴を検出する。雨滴検出装置20は、ウインドシールド4においてワイパ5により払拭される領域内に当該装置20のウインドシールド4への投影領域が収まる形態で配置されている。
図2に示すように雨滴検出装置20は、発光制御回路22、発光素子24、第一〜第三光路受光素子26〜28、検波・増幅回路29〜31、CPU32並びに記憶部34を備えている。
【0020】
発光制御回路22は、発光素子24に供給する電流の大きさを、CPU32から受信する制御信号に従って調整する。
発光素子24は発光ダイオードからなり、発光制御回路22からの供給電流に従う発光量となるように基準光を発する。ここで発光素子24の発する基準光としては、例えば赤外光等が用いられる。
【0021】
第一〜第三光路受光素子26〜28はいずれもフォトダイオードからなり、それぞれ異なる光路によって導かれた基準光を受ける。各受光素子26〜28は対応する検波・増幅回路29〜31に接続されており、基準光の受光量R1,R2,R3を表す検出信号を当該検波・増幅回路29〜31に出力する。
【0022】
検波・増幅回路29〜31は、対応する受光素子26〜28の検出信号を線形増幅してCPU32に出力する。ここで、各検波・増幅回路29〜31における信号増幅処理は、検出信号の受信と略同期して行われる。また、各検波・増幅回路29〜31における信号増幅率は、CPU32から受信する制御信号に従って調整される。
【0023】
CPU32は、記憶部34のROM35に記憶されている制御プログラムを実行することで、ワイパモータ駆動回路14、発光制御回路22及び検波・増幅回路29〜31に出力する制御信号を生成し、ワイパ駆動装置10の作動全体を制御する。この制御に際して記憶部34のRAM36には、CPU32の演算によって得られる各種データが一時的に記憶される。
【0024】
次に、雨滴検出装置20の構造について説明する。尚、以下の説明では、図3の横方向及び縦方向をそれぞれX方向及びY方向と定義する。
雨滴検出装置20は、上記要素22,24,26〜32,34に加え、図1及び図3に示す如き基板部40及び光学体50を備えている。
【0025】
基板部40は、ケース等の図示しない部材を介してウインドシールド4の内壁8に固定されている。基板部40は平板状に形成されており、ウインドシールド4の内壁8に対して略平行な板面42を有している。この基板部40の板面42上には、発光素子24及び第一〜第三光路受光素子26〜28が実装されている。ここで、基板部40のY方向の中心部を通り板面42に直交する仮想平面Oを定義すると、発光素子24は、当該仮想平面Oを挟む両側に一つずつ配置されている。第一〜第三光路受光素子26〜28は、仮想平面O上にそれぞれ一つずつ配置されている。基板部40の一端44側から他端45側に向かうX方向において発光素子24、第三光路受光素子28、第一光路受光素子26及び第二光路受光素子27はこの順で並んでいる。
【0026】
光学体50は樹脂で形成され、第一及び第二コリメートレンズ52,53、反射面54、プリズム56、第一及び第二収束レンズ58,59、並びに反射導光面60を有している。プリズム56は、光透過性のシリコンシート62を介してウインドシールド4の内壁8に装着されており、当該プリズム56の内壁8とは反対側には、光学体50の他の要素52〜54,58〜60が一体に形成されている。これにより、光学体50の略全体が基板部40とウインドシールド4との間に配置されている。
【0027】
第一コリメートレンズ52は、仮想平面Oを挟む両側に一つずつ設けられ、また反射面54も、仮想平面Oを挟む両側に一つずつ設けられている。第一コリメートレンズ52は、仮想平面Oに対して同じ側の発光素子24及び反射面54が光軸上に位置する平凸レンズであり、当該発光素子24から入射された基準光を自身の光軸に沿って当該反射面54へと導く。ここで、X方向において第一コリメートレンズ52は発光素子24よりも基板の一端44側に位置しており、当該第一コリメートレンズ52の光軸は、ウインドシールド4の外壁9に対して約45ー傾斜している。反射面54は、ウインドシールド4の外壁9及び基板部40の板面42に対して略垂直とされ、X方向においては発光素子24及び第一コリメートレンズ52よりも基板部40の一端44側に位置している。反射面54は、仮想平面Oに対して同じ側の第一コリメートレンズ52から導かれた基準光を反射してプリズム56へと導く。
【0028】
第二コリメートレンズ53は、仮想平面Oを挟む両側に一つずつ設けられている。第二コリメートレンズ53は、仮想平面Oに対して同じ側の発光素子24が光軸上に位置する平凸レンズであり、当該発光素子24から入射される基準光を自身の光軸に沿ってプリズム56へと導く。ここで第二コリメートレンズ53の光軸は、ウインドシールド4の外壁9に対して約45ー傾斜し且つ仮想平面Oに対して同じ側の第一コリメートレンズ52の光軸に対して約90ー傾斜している。これにより第二コリメートレンズ53は、X方向においては発光素子24よりも基板部40の他端45側に位置している。
プリズム56は、第一コリメートレンズ52及び反射面54を経由する第一光路L1と、第二コリメートレンズ53を経由する第二光路L2とによって導かれた基準光を内壁8側からウインドシールド4に入射させ、当該ウインドシールド4の外壁9によって反射させる。
【0029】
第一収束レンズ58は、仮想平面Oの両側に跨る形態で設けられている。第一収束レンズ58は、第一光路受光素子26が光軸上に位置する平凸レンズである。X方向において第一収束レンズ58は発光素子24及び第二コリメートレンズ53よりも基板部40の他端45側に位置しており、当該第一収束レンズ58の光軸はウインドシールド4の外壁9に対して約45ー傾斜している。第一収束レンズ58には、ウインドシールド4の外壁9によって反射された第一光路L1の基準光がプリズム56を通じて入射される。第一収束レンズ58は、そのようにして入射される第一光路L1の基準光を自身の光軸に沿って第一光路受光素子26へと導く。ここで、図4に模式的に示す楕円形の領域D1は、ウインドシールド4の外壁9において第一光路L1の基準光を反射させて第一光路受光素子26に導くことが可能な領域である。この領域D1に雨滴が付着すると、ウインドシールド4による基準光の反射量が減少するため、第一光路受光素子26の受光量R1が変化する。即ち領域D1は、第一光路L1の基準光を利用して第一光路受光素子26が雨滴の付着を検出する領域であり、以下では、検出領域D1というものとする。尚、図4において矩形の領域Sは、ウインドシールド4への雨滴検出装置20の投影領域を模式的に示している。
【0030】
図1及び図3に示すように第二収束レンズ59は、仮想平面Oの両側に跨る形態で設けられている。第二収束レンズ59は、X方向に並び第二光路受光素子27がそれぞれの光軸上に位置する二つの平凸レンズ64,65を組み合わせてなる。X方向において第二収束レンズ59は発光素子24及び第一収束レンズ58よりも基板部40の他端45側に位置しており、当該第二収束レンズ59をなす平凸レンズ64,65の各光軸はウインドシールド4の外壁9に対して約45ー傾斜している。第二収束レンズ59には、ウインドシールド4の外壁9によって反射された第二光路L2の基準光がプリズム56を通じて入射される。第二収束レンズ59は、そのようにして入射される第二光路L2の基準光を各平凸レンズ64,65の光軸に沿って第二光路受光素子27へと導く。ここで、図4に模式的に示す楕円形の領域D2は、ウインドシールド4の外壁9において第二光路L2の基準光を反射させて第二光路受光素子27に導くことが可能な領域であり、本実施形態では上記領域D1と重ならないように設定されている。この領域D2に雨滴が付着すると、外壁9による基準光の反射量が減少するため、第二光路受光素子27の受光量R2が変化する。即ち領域D2は、第二光路L2の基準光を利用して第二光路受光素子27が雨滴の付着を検出する領域であり、以下では、検出領域D2というものとする。
【0031】
図1及び図3に示すように反射導光面60は、仮想平面Oの両側に跨る形態で設けられている。反射導光面60は、ウインドシールド4の外壁9及び基板部40の板面42に対して略平行であり、X方向において発光素子24と第三光路受光素子28との間且つ第一コリメートレンズ52と第二コリメートレンズ53との間となる位置に配置されている。反射導光面60は、各発光素子24から導かれた基準光を反射して同じ第三光路受光素子28へと導く。即ち、反射導光面60の反射作用を利用することで、ウインドシールド4を経由せずに基準光を第三光路受光素子28まで導く第三光路L3が形成されている。
【0032】
次に、CPU34が制御プログラムに従って実施するワイパ自動制御処理について、図5のフローチャートに従って説明する。尚、本自動制御処理は、イグニションスイッチ6がオンにされ且つワイパスイッチ12の作動位置としてオートが選択されることで開始され、イグニションスイッチ6がオフにされる又はワイパスイッチ12の作動位置としてオート以外が選択されることで終了する。
【0033】
ワイパ自動制御処理のステップS1では、RAM36を初期化する。続くステップS2では、ウインドシールド4への雨滴の付着を判定する初期雨判定を実施する。その結果、雨滴の付着ありと判定されると、ステップS3において、ワイパ6を一回だけ駆動する制御信号をワイパモータ駆動回路14に与えた後、ステップS4に移行する。一方、雨滴の付着なしと判定されると、ステップS4に直接移行する。
【0034】
ステップS4では、RAM36を初期化する。続くステップS5では、ウインドシールド4への雨滴の付着を判定する通常雨判定を実施する。その結果、雨滴の付着ありと判定されると、ステップS6において、ワイパ6を所定速度で所定回数駆動する制御信号をワイパモータ駆動回路14に与えた後、ステップS4に戻る。一方、雨滴の付着なしと判定されると、ステップS4に直接戻る。
【0035】
ここで、上記ステップS2における初期雨判定と、上記ステップS5における通常雨判定とについて詳細に説明する。
まず、初期雨判定について図6のフローチャートに従って説明する。
初期雨判定のステップS11では、各発光素子24を順次発光させて、第一〜第三光路受光素子26〜28の受光量R1,R2,R3をそれぞれ検出する。このとき、発光制御回路22には各発光素子24の発光量の和を設定値とするための制御信号を与え、また各検波・増幅回路29〜31にはそれぞれ信号増幅率を設定値とするための制御信号を与える。その結果、各受光素子26〜28の検出信号をそれぞれ検波・増幅回路29〜31から受信すると、それら検出信号が表す受光量R1,R2,R3を抽出してRAM36に記憶する。
【0036】
図7において「○」は、ステップS11で抽出される第一及び第二光路受光素子26,27の受光量R1,R2の和R1+R2を示している。かかる図7から判るように、受光量和R1+R2は、ウインドシールド4への雨滴の付着がないとき(A)に比べ、雨滴の付着があるとき(B)で減少する。これは、ウインドシールド4の領域D1,D2による反射量が雨滴の付着によって減少することに起因する。
【0037】
図7において「●」は、ステップS11で抽出される第三光路受光素子28の受光量R3を示している。かかる図7から判るように、受光量R3は、ウインドシールド4への雨滴の付着がないとき(A)と雨滴の付着があるとき(B)とで実質的に変化しない。これは、基準光がウインドシールド4を経由することなく直接的に第三光路受光素子28へ導光されていることに起因する。
【0038】
上述したように受光量和R1+R2は、ウインドシールド4への雨滴の付着があるときとないときとで変化するため、当該和R1+R2を監視すれば雨滴の付着判定が可能になると予測される。しかし、第一及び第二光路受光素子26,27の出力即ちそれら各素子26,27の検出信号が表す受光量R1,R2は周囲温度によって変動するため、受光量和R1+R2を単に監視するだけでは、雨滴の付着を正確に判定することができない。そこで本発明者らは、各受光素子26〜28の出力即ちそれら各素子26〜28の検出信号が表す受光量R1,R2,R3について周囲温度に対する変動係数が互いに略等しくなることを発見し、受光量和R1+R2と受光量R3との比R3/(R1+R2)をとって監視することにした。これは、比R3/(R1+R2)をとることで、周囲温度に対する各値R1,R2,R3の変動係数がキャンセルされ、しかも値R3は、理論上、雨滴の付着という点で当該比R3/(R1+R2)の値に影響を及ぼすことがないからである。
【0039】
以上より、ステップS12では、ステップS11においてRAM36に記憶された各受光素子26〜28の受光量R1,R2,R3を読み出し、それらの値R1,R2,R3から比R3/(R1+R2)を算出して現在比CRとする。また、ステップS13では、工場出荷前等、ウインドシールド4への雨滴の付着がない基準時に設定された比R3/(R1+R2)である記憶比CmをROM35から読み出す。尚、記憶比Cmの設定は、上記基準時にステップS11,S12と同様な処理を実施し、それにより算出された比R3/(R1+R2)を記憶比CmとしてROM35に記憶することで実現される。
【0040】
ステップS14では、ステップS13において読み出された記憶比Cmと、ステップS12において算出された現在比CRとの比CR/Cmを低下率Fとして算出する。尚、ステップS11の実行時においてウインドシールド4への雨滴の付着がある場合、低下率Fは1よりも大きな値となる。
【0041】
ステップS15では、ステップS14において算出された低下率Fが閾値Fth以上であるか否かを判定する。そして、低下率Fが閾値Fth以上である場合には、ウインドシールド4への雨滴の付着ありと判定する一方、低下率Fが閾値Fth未満である場合には、雨滴の付着なしと判定する。尚、本初期雨判定における閾値Fthは、外乱等により低下率Fに生じる誤差を加味しつつ、1よりも大きな値に設定されている。
【0042】
次に、通常雨判定について図8のフローチャートに従って説明する。
通常雨判定のステップS21では、ワイパ通過直後等の雨滴付着がないタイミングで発光制御回路22と検波・増幅回路29,30とを制御することにより、各発光素子24の発光量(の和)と検波・増幅回路29,30の各信号増幅率とを調整する。尚、本実施形態では、ステップS2の雨滴付着なしの判定後、又はステップS3若しくはS6の実行によるワイパ6の駆動に伴ってステップS21が実行される。そのため、上記調整中に各検波・増幅回路29,30から出力される検出信号は、雨滴がウインドシールド4に付着していない基準時の受光量R1,R2を表すものとして擬制することができる。そこで、本実施形態のステップS21では、第一及び第二光路受光素子26,27の検出信号が表す受光量R1,R2が基準値Rb1,Rb2となるように上記調整を行い、当該基準値Rb1,Rb2を基準時の受光量として設定する。
【0043】
ステップS22では、所定時間の遅延後等に各発光素子24を順次発光させて、第一及び第二光路受光素子26,27の受光量R1,R2を検出する。このとき、各発光素子24の発光量(の和)と検波・増幅回路29,30の各信号増幅率とは、それぞれステップS21で調整された値に保持される。その結果、第一及び第二光路受光素子26,27の検出信号をそれぞれ検波・増幅回路29,30から受信すると、それら検出信号が表す受光量R1,R2を抽出してRAM36に記憶する。
【0044】
ステップS23では、ステップS22においてRAM36に記憶された受光量R1,R2の和と、ステップS21において定められた基準値Rb1,Rb2の和とから求められる比率{100−100・(R1+R2)/(Rb1+Rb2)}%を算出して低下率Fとする。尚、ステップS22の実行時においてウインドシールド4への雨滴の付着がある場合、低下率Fは0%よりも大きな値となる。
【0045】
ステップS24では、ステップS23において算出された低下率Fが閾値Fth以上であるか否かを判定する。そして、低下率Fが閾値Fth以上である場合には、ウインドシールド4への雨滴の付着ありと判定する一方、低下率Fが閾値Fth未満である場合には、雨滴の付着なしと判定する。尚、本通常雨判定における閾値Fthは、外乱等により低下率Fに生じる誤差を加味しつつ、0%よりも大きな値に設定されている。
【0046】
このように第一実施形態では、ワイパ自動制御処理の初期雨判定において、各受光素子26〜28の受光量R1,R2,R3に内在する周囲温度の依存分をキャンセルしてなる比R3/(R1+R2)に基づき雨滴の付着判定をしているので、その判定が正確なものとなる。したがって、イグニションスイッチ6のオン且つワイパスイッチ12におけるオートの選択操作が行われた直後であっても、高い判定精度を実現することができる。しかも、ウインドシールド4への雨滴の付着がない基準時に上記比R3/(R1+R2)を取得するには、各受光素子26〜28の受光量R1,R2,R3を少なくとも一点の発光量について測定するだけでよい。したがって、基準時の各受光量R1,R2,R3の測定に必要な時間が短縮されるばかりでなく、RAM36の記憶容量が小さくて済むので、コストの低減を図ることができる。
また、第一実施形態では、ワイパ自動制御処理の初期雨判定に続く通常雨判定を、初期雨判定の場合よりも少ない演算処理量で実現できるので、判定時間が短縮される。
【0047】
さらに第一実施形態では、ウインドシールド4の外壁9において第一光路L1の基準光の検出領域D1と第二光路L2の基準光の検出領域D2とが互いに重複しないように雨滴検出装置20を構成している。これにより、ウインドシールド4への雨滴検出装置20の投影領域Sでは、雨滴の検出に関与しないデッドスペースが減少することとなるので、投影領域Sのうち検出領域D1,D2が占める割合、即ちサイズ効率が向上する。しかも雨滴検出装置20には、領域D1を検出対象とする受光素子と領域D2を検出対象とする受光素子とを別々に設けているので、第一及び第二光路L1,L2の基準光について各光量をより正確に知ることができる。
【0048】
またさらに第一実施形態では、雨滴検出装置20において反射面54及び反射導光面60をプリズム56及び各種レンズ52,53,58,59と一体化してなる光学体50を用いている。したがって、反射面54や反射導光面60を光学体50の他の要素とは別体に形成する場合に比べて、雨滴検出装置20の組立性が向上する。
【0049】
加えて第一実施形態では、雨滴検出装置20において各種素子24,26〜28が実装される基板部40とそれに略平行なウインドシールド4との間に、反射面54及び反射導光面60を含む光学体50を配置している。これにより、基板部40とウインドシールド4との対向方向において雨滴検出装置20の体格が小さくなるので、車両の運転者の視界を悪化させることなくサイズ効率の向上を達成することができる。
【0050】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態によるワイパ自動制御処理では、図9に示すように、通常雨判定のステップS31〜S35を初期雨判定のステップS11〜S15と同様に実施する。 このような第二実施形態によれば、通常雨判定においても、雨滴の付着判定を比R3/(R1+R2)に基づいて正確に行うことができるので、ワイパスイッチ12によりオートが選択されている間は継続して高精度の判定が実現される。
【0051】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態によるワイパ自動制御処理では、通常雨判定を図10に示すフローチャートに従って実施する。
具体的に第三実施形態の通常雨判定では、まずステップS41において、初期雨判定のステップS11と同様な処理を実施する。
【0052】
続くステップS42では、フェイルセーフ判定を行う。このフェイルセーフ判定では、次の条件(1)〜(3)のうち少なくとも一つが成立しないとき、正常である判定してステップS43に移行する。一方、条件(1)〜(3)が全て成立するときには、異常であると判定してステップS47に移行する。
(1)ステップS41においてRAM36に記憶された第一及び第二光路受光素子26,27の受光量R1,R2が共に0ではない。
(2)ステップS41においてRAM36に記憶された第三光路受光素子28の受光量R3が0である。
(3)発光制御回路22への制御信号の出力が0でない。
【0053】
正常と判定された後のステップS43〜S46では、初期雨判定のステップS12〜S15と同様な処理を実施する。一方、異常と判定された後のステップS47〜S50では、第一実施形態による通常雨判定のステップS21〜S24と同様な処理を実施する。
【0054】
このような第三実施形態によれば、上記条件(1)〜(3)のうち少なくとも一つが成立しない正常時には、第二実施形態と同様、ワイパスイッチ12によりオートが選択されている間継続して、比R3/(R1+R2)に基づく正確な通常雨判定を実現することができる。また一方、上記条件(1)〜(3)が全て成立する異常時には、比R3/(R1+R2)を用いない通常雨判定を初期雨判定に継続して実施することができるので、当該異常によりワイパ5を自動制御不能となる事態が回避される。
【0055】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態による自動制御処理では、初期雨判定を図11に示すフローチャートに従って実施する。
具体的に第四実施形態の初期雨判定では、そのステップS51において、各発光素子24を順次発光させて第一〜第三光路受光素子26〜28の受光量R1,R2,R3をそれぞれ検出する。このとき、発光制御回路22には各発光素子24の発光量の和を設定値T1とするための制御信号を与え、また各検波・増幅回路29〜31にはそれぞれ信号増幅率を設定値A1,A2,A3とするための制御信号を与える。その結果、各受光素子26〜28の検出信号をそれぞれ検波・増幅回路29〜31から受信すると、それら検出信号が表す受光量R1,R2,R3を抽出してRAM36に記憶する。
【0056】
ステップS52では、各発光素子24の発光をステップS51とは発光量を変えて実施して、第一〜第三光路受光素子26〜28の受光量R1,R2,R3をそれぞれ検出する。このとき、発光制御回路22には各発光素子24の発光量の和を上記設定値T1と異なる設定値T2にするための制御信号を与え、また各検波・増幅回路29〜31にはそれぞれ信号増幅率を上記設定値A1,A2,A3とするための制御信号を与える。その結果、各受光素子26〜28の検出信号をそれぞれ検波・増幅回路29〜31から受信すると、それら検出信号が表す受光量R1,R2,R3を抽出してRAM36に記憶する。
【0057】
図12において「○」は、各ステップS51,S52で抽出される第一及び第二光路受光素子26,27の受光量R1,R2の和R1+R2を示している。また、図12において「ト」は、各ステップS51,S52における受光量和R1+R2の差と各ステップS51,S52における発光量T1,T2の差との比、即ち単位発光量に対する受光量和R1+R2の変化率を示している。かかる図12から判るように、発光量に対する受光量和R1+R2の変化率ト(以下、単に受光量和R1+R2の変化率という)は、ウインドシールド4への雨滴の付着がないとき(A)に比べ、雨滴の付着があるとき(B)で減少する。これは、ウインドシールド4の領域D1,D2による反射量が雨滴の付着によって減少することに起因する。
【0058】
図12において「●」は、各ステップS51,S52で抽出される第三光路受光素子28の受光量R3を示している。また、図12において「艟」は、各ステップS51,S52における受光量R3の差と各ステップS51,S52における発光量T1,T2の差との比、即ち単位発光量に対する受光量3の変化率を示している。かかる図12から判るように、発光量に対する受光量R3の変化率艟(以下、単に受光量R3の変化率という)は、ウインドシールド4への雨滴の付着がないとき(A)と、雨滴の付着があるとき(B)とで実質的に変化しない。これは、基準光がウインドシールド4を経由することなく直接的に第三光路受光素子28へ導光されていることに起因する。
【0059】
上述したように受光量和R1+R2の変化率トは、ウインドシールド4への雨滴の付着があるときとないときとで変化するため、当該変化率トを監視すれば雨滴の付着判定が可能になると予測される。しかし、第一及び第二光路受光素子26,27の各検出信号が表す受光量R1,R2の発光量に対する変化率は周囲温度によって変動するため、受光量和R1+R2の変化率ト(ここでは、各受光量R1,R2の発光量に対する変化率の和に等しい)を単に監視するだけでは、雨滴の付着を正確に判定することができない。そこで本発明者らは、各受光素子26〜28の検出信号が表す受光量R1,R2,R3の発光量に対する変化率について当該変化率の周囲温度に対する変動係数が互いに略等しくなることを発見し、受光量和R1+R2の変化率トと受光量R3の変化率艟との比艟/トをとって監視することにした。これは、比艟/トをとることで、各値R1,R2,R3についてその発光量に対する変化率の周囲温度に対する変動係数がキャンセルされ、しかも値艟は、理論上、雨滴の付着という点で当該比艟/トの値に影響を及ぼすことがないからである。
【0060】
以上より、ステップS53では、各ステップS51,S52においてRAM36に記憶された受光量R1,R2,R3を読み出し、それらの値から受光量和R1+R2の変化率ト並びに受光量R3の変化率艟を算出する。そしてさらに、算出された変化率ト,艟から比艟/トを算出して現在比CRとする。また、ステップS54では、ウインドシールド4への雨滴の付着がない基準時に設定された比艟/トとしての記憶比CmをROM35から読み出す。尚、記憶比Cmの設定は、上記基準時にステップS51〜S53と同様な処理を実施し、それにより算出された比艟/トを記憶比CmとしてROM35に記憶することで実現される。
【0061】
この後、ステップS55,S56では、第一実施形態による初期雨判定のステップS14,S15と同様な処理を実施することで、初期雨判定を完了する。
【0062】
このような第四実施形態によれば、初期雨判定において、受光量和R1+R2及び受光量R3の各変化率ト,艟に内在する周囲温度の依存分をキャンセルしてなる比艟/トに基づき雨滴の付着判定をしているので、その判定が正確なものとなる。したがって、イグニションスイッチ6のオン且つワイパスイッチ12におけるオートの選択操作が行われた直後であっても、高い判定精度を実現することができる。しかも、ウインドシールド4への雨滴の付着がない基準時に上記比艟/トを取得するには、各受光素子26〜28の受光量R1,R2,R3を少なくとも二点の発光量について測定すればよい。したがって、基準時の各受光量R1,R2,R3の測定に必要な時間が短縮されるばかりでなく、RAM36の記憶容量が小さくて済むので、コストの低減を図ることができる。
尚、以上説明した第四実施形態の初期雨判定については、第二実施形態の通常雨判定や第三実施形態の初期雨判定及び通常雨判定において第一実施形態の初期雨判定に対応する部分に適用することも可能である。
【0063】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態によるワイパ自動制御装置の雨滴検出装置は、図13及び図14に示す如き構造を有している。
第五実施形態の雨滴検出装置100において基板部40の板面42上には、第一実施形態の第一及び第二光路受光素子26,27が実装されていない。その代わりに板面42上には、仮想平面Oを挟む両側に一つずつ配置された受光素子110が実装されている。そこで以下では、受光素子110を第一受光素子110といい、第一実施形態の第三光路受光素子28と同一構成の受光素子を第二受光素子28というものとする。基板部40の一端44側から他端45側に向かうX方向においては、反射面54、第一コリメートレンズ52、発光素子24、第二受光素子28、第二コリメートレンズ53及び第一受光素子110がこの順で並んでいる。尚、図15に示すように本実施形態では、一方の第一受光素子110が検波・増幅回路29に接続され、他方の第一受光素子110が検波・増幅回路30に接続されている。
【0064】
図13及び図14に示すように雨滴検出装置100の光学体120には、第一実施形態の第一及び第二収束レンズ58,59とは異なる構成の第一及び第二収束レンズ122,123が備えられ、また新たな反射面126が備えられている。そこで以下では、第一実施形態の反射面54と同一構成の反射面を第一反射面54、反射面126を第二反射面126というものとする。
【0065】
第一収束レンズ122は、仮想平面Oを挟む両側に一つずつ設けられている。第一収束レンズ122は、仮想平面Oに対して同じ側の第一受光素子110が光軸上に位置する平凸レンズである。X方向において第一収束レンズ122は第二コリメートレンズ53と第一受光素子110との間に位置しており、当該第一収束レンズ122の光軸はウインドシールド4の外壁9に対して約45ー傾斜している。第一収束レンズ122には、仮想平面Oに対して同じ側の第一コリメートレンズ52及び第一反射面54を順次を経由した後、ウインドシールド4の外壁9によって反射された第一光路L1の基準光が、プリズム56を通じて入射される。第一収束レンズ122は、そのようにして入射される第一光路L1の基準光を、仮想平面Oに対して同じ側の第一受光素子110へ向かって自身の光軸に沿って導く。ここで、図16に模式的に示す楕円形の領域D1は、ウインドシールド4の外壁9において第一光路L1の基準光を反射させて第一受光素子110に導くことが可能な領域である。この領域D1に雨滴が付着すると、ウインドシールド4による基準光の反射量が減少するため、第一受光素子110の受光量r1が変化する。即ち領域D1は、第一光路L1の基準光を利用して第一受光素子110が雨滴の付着を検出する領域であり、以下では、検出領域D1というものとする。尚、図16において矩形の領域Sは、ウインドシールド4への雨滴検出装置100の投影領域を模式的に示している。
【0066】
第二収束レンズ123は、仮想平面Oを挟む両側に一つずつ設けられ、また第二反射面126も、仮想平面Oを挟む両側に一つずつ設けられている。第二反射面126は、ウインドシールド4の外壁9及び基板部40の板面42に対して略垂直とされ、X方向においては第一受光素子110よりも基板部40の他端45側に位置している。第二反射面126には、仮想平面Oに対して同じ側の第二コリメートレンズ53を経由した後、ウインドシールド4の外壁9によって反射された第二光路L2の基準光が、プリズム56を通じて導かれる。このようにして導かれた第二光路L2の基準光を第二反射面126は、仮想平面Oに対して同じ側の第二収束レンズ123へ向かって反射させる。
【0067】
第二収束レンズ123は、仮想平面Oに対して同じ側の第一受光素子110及び第二反射面126が光軸上に位置する平凸レンズである。X方向において第二収束レンズ123は第一受光素子110と第二反射面126との間に位置しており、当該第一収束レンズ122の光軸はウインドシールド4の外壁9に対して約45ー傾斜し且つ仮想平面Oに対して同じ側の第一収束レンズ122の光軸に対して約90ー傾斜している。第二収束レンズ123には、仮想平面Oに対して同じ側の第二反射面126が反射した第二光路L2の基準光が入射される。第二収束レンズ123は、そのようにして入射される第二光路L2の基準光を、仮想平面Oに対して同じ側の第一受光素子110へ向かって自身の光軸に沿って導く。ここで、図16に模式的に示す楕円形の領域D2は、ウインドシールド4の外壁9において第二光路L2の基準光を反射させて第一受光素子110に導くことが可能な領域であり、本実施形態では上記領域D1と重ならないように設定されている。この領域D2に雨滴が付着すると、ウインドシールド4による基準光の反射量が減少するため、第一受光素子110の受光量r1が変化する。即ち領域D2は、第二光路L2の基準光を利用して第一受光素子110が雨滴の付着を検出する領域であり、以下では、検出領域D2というものとする。
【0068】
このような第五実施形態のワイパ自動制御処理では、初期雨判定及び通常雨判定をそれぞれ図17及び図18に示すフローチャートに従って実施する。
まず、図17に示す第五実施形態の初期雨判定では、ステップS61において各発光素子24を順次発光させて、各第一受光素子110の受光量r1,r1と第二受光素子28の受光量r2とをそれぞれ検出する。このとき、発光制御回路22には各発光素子24の発光量の和を設定値とするための制御信号を与え、また各検波・増幅回路29〜31にはそれぞれ信号増幅率を設定値とするための制御信号を与える。その結果、各第一受光素子110及び第二受光素子28の検出信号をそれぞれ検波・増幅回路29〜31から受信すると、それら検出信号が表す受光量r1,r1,r2を抽出してRAM36に記憶する。
【0069】
本実施形態のステップS62,S63では、第一実施形態の比R3/(R1+R2)の場合と同様な原理によって、各第一受光素子110の受光量r1,r1の和モr1と第二受光素子28の受光量r2との比r2/モr1が監視される。具体的にステップS62では、ステップS61でRAM36に記憶された各第一受光素子110及び第二受光素子28の受光量r1,r1,r2を読み出し、それらの値r1,r1,r2から比r2/モr1を算出して現在比CRとする。また、ステップS63では、ウインドシールド4への雨滴の付着がない基準時に設定された比r2/モr1としての記憶比CmをROM35から読み出す。尚、記憶比Cmの設定は、上記基準時にステップS61,S62と同様な処理を実施し、それにより算出された比r2/モr1を記憶比CmとしてROM35に記憶することで実現される。
ステップS64,S65では、第一実施形態による初期雨判定のステップS14,S15と同様な処理を実施する。
【0070】
このような初期雨判定に対し、図18に示す第五実施形態の通常雨判定ではステップS71において、発光制御回路22と検波・増幅回路29,30とを制御することにより、各発光素子24の発光量(の和)と検波・増幅回路29,30の信号増幅率とを調整する。尚、本実施形態のステップS71は、第一実施形態による初期雨判定のステップS21と同様に、ワイパ通過直後等の雨滴付着がないタイミングで実行される。そこで、本実施形態のステップS71では、各第一受光素子110の検出信号が表す受光量r1,r1がそれぞれ基準値rb1,rb1となるように上記調整を行い、それら基準値rb1,rb1を各第一受光素子110の基準時の受光量として設定する。
【0071】
ステップS72では、所定時間の遅延後等に各発光素子24を順次発光させて、各第一受光素子110の受光量r1,r1を検出する。このとき、各発光素子24の発光量(の和)と検波・増幅回路29,30の信号増幅率とは、それぞれステップS71で調整された値に保持される。その結果、各第一受光素子110の検出信号をそれぞれ検波・増幅回路29,30から受信すると、それら検出信号が表す受光量r1,r1を抽出してRAM36に記憶する。
【0072】
ステップS73では、ステップS72でRAM36に記憶された各第一受光素子110の受光量r1,r1の和モr1と、ステップS71で定められた各第一受光素子110についての基準値rb1,rb1の和とから求められる比率{100−100・(モr1)/(モrb1)}%を算出して低下率Fとする。
ステップS74では、第一実施形態による通常雨判定のステップS24と同様な処理を実施する。
【0073】
以上、各第一受光素子110がそれぞれ特許請求の範囲に記載の「受光素子」に相当し、それら第一受光素子110の組が特許請求の範囲に記載の「受光部」に相当する。また、第一反射面54が特許請求の範囲に記載の「反射部」及び「第一反射部」に相当し、第二反射面126が特許請求の範囲に記載の「第二反射部」に相当する。またさらに、初期雨判定のステップS63において読み出される記憶比Cmが特許請求の範囲に記載の「基準時の注目比」に相当し、初期雨判定のステップS62において算出される現在比CRが特許請求の範囲に記載の「雨滴検出時の注目比」に相当する。
【0074】
このように第五実施形態では、各第一受光素子110及び第二受光素子28の受光量r1,r1,r2に内在する周囲温度の依存分を第一実施形態の比R3/(R1+R2)の場合と同様にキャンセルしてなる比r2/モr1に基づき初期雨判定を行っている。したがって、イグニションスイッチ6のオン且つワイパスイッチ12におけるオートの選択操作が行われた直後であっても、高い判定精度を実現することができる。しかも、ウインドシールド4への雨滴の付着がない基準時に上記比r2/モr1を取得するには、各第一受光素子110及び第二受光素子28の受光量r1,r1,r2を少なくとも一点の発光量について測定するだけでよい。したがって、コストの低減を図ることができる。
また、第五実施形態でも、ワイパ自動制御処理の初期雨判定に続く通常雨判定を、初期雨判定の場合よりも少ない演算処理量で実現できるので、判定時間が短縮される。
【0075】
さらに第五実施形態では、ウインドシールド4の外壁9において第一光路L1の基準光の検出領域D1と第二光路L2の基準光の検出領域D2とが互いに重複しないように雨滴検出装置100を構成しているので、高いサイズ効率を実現することができる。しかも雨滴検出装置100には、領域D1を検出対象とする受光素子と領域D2を検出対象とする受光素子とを一つの受光素子110によって実現しているので、部品点数さらにはコストが低減される。
【0076】
またさらに第五実施形態では、雨滴検出装置100において第一及び第二反射面54,126と反射導光面60をプリズム56及び各種レンズ52,53,122,123と一体化してなる光学体120を用いている。したがって、第一及び第二反射面54,126や反射導光面60を光学体120の他の要素とは別体に形成する場合に比べて、雨滴検出装置100の組立性が向上する。
【0077】
加えて第五実施形態では、雨滴検出装置100において各種素子24,110,28が実装される基板部40とそれに略平行なウインドシールド4との間に、第一及び第二反射面54,126と反射導光面60を含む光学体50を配置している。これにより、基板部40とウインドシールド4との対向方向において雨滴検出装置100の体格が小さくなるので、運転者の視界を悪化させることなくサイズ効率の向上を達成することができる。
【0078】
尚、図19及び図20は、第五実施形態の変形例を示している。この変形例では、第一受光素子110が一つだけ仮想平面O上に配置されると共に、第一及び第二収束レンズ122,123が仮想平面Oの両側に跨る一平凸レンズから構成され、また第二反射面126が仮想平面Oの両側に跨る形態で形成されている。このような第五実施形態では、ワイパ自動制御処理の初期雨判定及び通常雨判定において、各第一受光素子110の受光量r1,r1に関する内容を一つの第一受光素子110の受光量r1に関する内容に変更することで、第五実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0079】
さらに第五実施形態(上記変形例を含む)では、第二実施形態に準じて通常雨判定を上記初期雨判定と同様な処理内容に変更してもよいし、あるいは第三実施形態に準ずる通常雨判定を上記通常雨判定に代えて実施してもよい。
またさらに第五実施形態(上記変形例を含む)では、第四実施形態に準ずる初期雨判定を上記初期雨判定に代えて実施してもよい。この場合、各第一受光素子110の受光量r1,r1の和の単位発光量に対する変化率が上記変化率トとして用いられることとなる。
【0080】
この他、第一〜第五実施形態では、反射導光面60、(第一)反射面54、第二反射面126のうち少なくとも一つを光学体50,120とは別体に形成するようにしてもよい。また、第一〜第五実施形態では、反射導光面60の配設位置に受光素子28を配設して、当該受光素子28により第三光路L3の基準光を発光素子24から直に受けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0081】
2 ワイパ自動制御装置、4 ウインドシールド、5 ワイパ、6 イグニションスイッチ、8 内壁、9 外壁、10 ワイパ駆動装置(駆動手段)、12 ワイパスイッチ、14 ワイパモータ駆動回路、16 ワイパモータ、20,100 雨滴検出装置、22 発光制御回路、24 発光素子、26 第一光路受光素子、27 第二光路受光素子、28 第三光路受光素子,第二受光素子、29,30,31 各検波・増幅回路、32 CPU、34 記憶部、35 ROM、36 RAM、40 基板部、44 一端、45 他端、50,120 光学体、52 第一コリメートレンズ、53 第二コリメートレンズ、54 反射面・第一反射面、56 プリズム、58,122 第一収束レンズ、59,123 第二収束レンズ、60 反射導光面、110 第一受光素子、126 第二反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドに付着する雨滴を検出する雨滴検出装置であって、
基準光を発する発光素子と、
前記基準光を前記ウインドシールドに向けて反射する反射部と、
前記反射部を経由する第一光路によって前記ウインドシールドに導かれた後、当該ウインドシールドによって反射された前記基準光と、前記反射部を経由しない第二光路によって前記ウインドシールドに導かれた後、当該ウインドシールドによって反射された前記基準光とを受ける受光部と、
前記受光部の受光量に基づいて前記ウインドシールドへの雨滴の付着を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする雨滴検出装置。
【請求項2】
前記受光部は、前記ウインドシールドによって反射された前記第一光路の前記基準光を受ける第一光路受光素子と、前記ウインドシールドによって反射された前記第二光路の前記基準光を受ける第二光路受光素子とを有することを特徴とする請求項1に記載の雨滴検出装置。
【請求項3】
前記基準光を前記ウインドシールドの内壁側から前記ウインドシールドに入射させる光学体を備え、
前記反射部は前記光学体に形成されることを特徴とする請求項2に記載の雨滴検出装置。
【請求項4】
前記ウインドシールドに略平行に設けられ、前記発光素子、前記第一光路受光素子及び前記第二光路受光素子が実装される基板部を備え、
前記反射部は、前記基板部と前記ウインドシールドとの間に設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の雨滴検出装置。
【請求項5】
前記基板部の一端側から他端側に向かう方向において、前記反射部、前記発光素子、前記第一光路受光素子及び前記第二光路受光素子はこの順で配置されていることを特徴とする請求項4に記載の雨滴検出装置。
【請求項6】
前記反射部を第一反射部として備えると共に、前記ウインドシールドによって反射された前記第二光路の前記基準光を反射する第二反射部を備え、
前記受光部は、前記ウインドシールドによって反射された前記第一光路の前記基準光と、前記ウインドシールド及び前記第二反射部によって順次反射された前記第二光路の前記基準光とを受ける受光素子を有することを特徴とする請求項1に記載の雨滴検出装置。
【請求項7】
前記基準光を前記ウインドシールドの内壁側から前記ウインドシールドに入射させる光学体を備え、
前記第一反射部及び前記第二反射部は前記光学体に形成されることを特徴とする請求項6に記載の雨滴検出装置。
【請求項8】
前記ウインドシールドに略平行に設けられ、前記発光素子及び前記受光素子が実装される基板部を備え、
前記第一反射部及び前記第二反射部は、前記基板部と前記ウインドシールドとの間に設けられることを特徴とする請求項6又は7に記載の雨滴検出装置。
【請求項9】
前記基板部の一端側から他端側に向かう方向において、前記第一反射部、前記発光素子、前記受光素子及び前記第二反射部はこの順で配置されていることを特徴とする請求項15に記載の雨滴検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の雨滴検出装置と、
前記判定手段が雨滴の付着ありと判定した場合に、前記ウインドシールドを払拭するワイパを駆動する駆動手段と、
を備えることを特徴とするワイパ自動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−109518(P2009−109518A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34476(P2009−34476)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【分割の表示】特願2004−297680(P2004−297680)の分割
【原出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】