説明

電位差電極および該電極の製造法

本発明は、電位差電極および傾斜ポリマーであって、それらの一方の表面から遠ざかるに従って濃度が高くなる導電性粒子、その同じ表面に向かうに従って濃度が高くなるイオノフォア分子、および該導電性粒子に近接して通る電気的連結部を共に含む電極およびポリマーに関する。本発明は、更にこれら電極およびポリマーを組み入れた装置、およびこれらの製造方法に関する。この新規材料は高度に堅牢で信頼性がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電位差電極、傾斜ポリマーおよび該傾斜物を含む電気的または感知的な要素の分野に関する。また電位差電極および傾斜ポリマーを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
電位差電極は生物学、化学および医薬の分野で広く適用されている。それらは溶液中のイオン種の濃度を検出し測定するために使用され、その最も知られた例はpHメータである。操作原理は良く知られている。
【0003】
電位差電極は被検物の検出にも用いることが出来る。被検物は、どのような標的であってもよく、この標的物質と特異的に相互作用可能なイオノフォアが対応していることが望ましい。被検物の例には、有機酸、アミン類、アミノアルコール類および医薬品が含まれる。電位差電極が適切なイオノフォアと結合すれば対応する被検物の検出が可能になる。電位差電極の応用は無数にあり、例えば生物医学的研究、臨床試験、医薬データの取得、工業汚染試験、食物試験および化学プロセスの制御である。
【0004】
現在、微細技術においては、イオン化可能物質の電気化学的検出、例えばキャピラリ電気泳動法およびマイクロチップアレイを利用する傾向が強い。
【0005】
電位差電極を分離法(たとえば高速液体クロマトグラフィ「HPLC」)と結びつけたものは実際には存在しない。しかしながら、そうした方法があれば、極微量でしかもしばしば他の物質と混合状態で取得される多数の興味ある物質がアクセス可能になる。これらの利用のためには特異性の低いセンサーが要求され、これは高い特異性が要求されるバッチ技術とは対照的である。
【0006】
特許出願EP0767372A1に開示されている基板電極には、カーボンファイバーを含むエポキシ樹脂(またはポリエステル−またはポリイミド樹脂)シリンダーが含まれており、この基板電極には旧来のポリ(ビニルアルコール)(PVC)系電位差膜が被覆されている。このため、膜−基板電極接合を最適化するためにこの著者が作成したデザインは複雑である。
【0007】
特許出願EP0684466A2に開示されている基板電極は固体状の導体または半導体であり、これを被覆している旧来のPVC/可塑剤/イオノフォア混合物には、更に導電ポリマーがプラスされている。
【0008】
特許出願EP0300662A2に開示されている従来型の被覆ワイヤ電位差電極は、カチオン性およびアニオン性界面活性剤の測定には最適化されている。
【0009】
特許出願US5,552,032には、塩素(または一般的にはハライドイオン)感知性電位差電極が記載されている。これはハロゲン化銀結晶電極材料に基づく電位差電極の改良型である。
【0010】
先行技術による電位差電極の問題は、安定性(電位ドリフト)、機械的堅牢性および鋭敏性に欠けることである。それらは寿命予測ができないので、所有者には維持費の形で固定出費が必要となる。さらにまた、それらは、HPLC検出、キャピラリ電気泳動法(CE)検出、挙動予測が困難な医薬品の溶解試験で使用するには不適切であり、ある種のデザイン電極は、HPLCやCE分離においてしばしば使用されるイオンペア剤と共に、あるいは溶解試験で用いられる洗剤と共に使用することができない。
【0011】
被検物感知に使用するのに好適で、先行技術の問題を解決する新しい電位差電極が必要であることは明らかである。
【特許文献1】特許出願EP0767372A1公報
【特許文献2】特許出願EP0684466A2公報
【特許文献3】特許出願EP0300662A2公報
【特許文献4】特許出願US5,552,032公報
【非特許文献1】ビュールマン(Beuhlmann)ら、ケミカルレビューズ 1998年、98巻、4号、1650〜1687頁
【非特許文献2】パウエル、T.F.(Pauwels, T. F.) ;リペンス、W.(Lippens, W.); ヘルマン、G.G.(Herman, G. G.); ゲーミン、A.M.(Goeminne, A. M.)ポリヘドロン(Polyhedron)1998, 17, 1715-23
【非特許文献3】メニフ、R.(Menif, R.);マーテル、A.E.(Martell, A. E.)ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティ−ケミカル コミュニケーションズ(Journal of the Chemical Society-Chemical Communications)1989,1521-23
【非特許文献4】Jarzebinska, A. ; Pietraszkiewicz, M.; Bilewicz, R. Materials Science & Engineering C-Biomimetic and Supramolecular Systems 2001, 18, 61-64
【非特許文献5】Pietraszkiewicz, M. ; Gasiorowski, R. Chemische Berichte 1990, 123, 405-06
【非特許文献6】Zielinska, D. ; Poels, I. ; Pietraszkiewicz, M. ; Radecki, J. ; Geise, H. J. ; Nagels, L. J. Journal of Chromatography A 2001,915, 25-33
【非特許文献7】Menif, R. ; Martell, A. E. Journal of the Chemical Society-Chemical Communications 1989,1521-23
【非特許文献8】De Backer, B. L.; Nagels, L. J. Analytical Chemistry 1996,68, 4441-45
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの実施形態は、サンプル中の被検物を選択的に検出する電位差電極であって、
−サンプル接触表面から遠ざかるに従って濃度が高くなる導電性粒子、
−サンプル接触表面に向かうに従って濃度が高くなるイオノフォア分子、および
−該導電性粒子に近接して通る電気的連結部
を含むポリマー材料製の感知体を含む電極である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、前記電気的連結部が銅製である前記電位差電極である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマー材料がポリ塩化ビニルである前記電位差電極である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマー材料が、ポリ(n−ブチルアクリレート)(poly(n−butylacrylate))、ポリ(ブチルアクリレート)(poly(butylacrylate))、架橋されたポリ(ブチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン(polystyrene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリ(塩化ビニル−コ−ビニルアセテート−コ−ビニルアルコール)(poly(vinylchloride−co−vinylacetate−co−vinylalchol))、ポリシロキサン(polysiloxane)、DC200シリコーンオイル、ポリ塩化ビニル、または高分子量ポリ塩化ビニルの1種以上を含む前記電位差電極である。
【0016】
本発明の別の実施形態は、前記導電性粒子の最高濃度が65%w/wである前記電位差電極である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、前記導電性粒子が黒鉛粉末である前記電位差電極である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、前記導電性粒子が、直径1〜2μmのカーボン粉末、黒鉛粉末、人造黒鉛粉末のいずれかである前記電位差電極である。
【0019】
本発明の別の実施形態は、前記導電性粒子が、電気的に重合された材料、酸化ポリピロールおよびその誘導体、酸化ポリチオフェン、ポリアニリン、貴金属類、金または白金のいずれかである前記電位差電極である。
【0020】
本発明の別の実施形態は、前記イオノフォア分子が、図11中の化合物1〜10よりなる群から選ばれた1種以上である前記電位差電極である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、前記イオノフォア分子が、テトラ(p−クロロ)フェニルボレート(tetra(p−chloro)phenylborate)、メチルトリドデシルアンモニウムクロライド(methyltridodecylammoniumchloride)および図11中の化合物11〜21よりなる群から選ばれた1種以上である前記電位差電極である。
【0022】
本発明の別の実施形態は、感知体が円筒形状である前記電位差電極である。
【0023】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマー材料が、少なくとも一部がハウジング中に封入されている前記電位差電極である。
【0024】
本発明の別の実施形態は、前記イオノフォア分子および導電性粒子が遷移領域でのみ混合されている前記電位差電極である。
【0025】
本発明の別の実施形態は、イオノフォア分子を含むポリマー材料の領域が、残りのポリマー材料よりも可塑剤を含んでいる前記電位差電極である。
【0026】
本発明の別の実施形態は、前記電位差電極を含むクロマトグラフィのフローセルである。
【0027】
本発明の別の実施形態は、溶離液をサンプル接触表面に噴霧するノズルを含む前記クロマトグラフィのフローセルである。
【0028】
本発明の別の実施形態は、前記電位差電極の作製方法であって、
(a)ポリマーの溶剤溶液中で導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b)その中に導電体を挿入する工程、
(c)該懸濁液を乾燥し、導電性粒子との固体複合ポリマーを形成する工程、
(d)該工程(c)の複合体の表面に、ポリマー材料、導電性粒子およびイオノフォア分子の溶液を加える工程、
(e)その混合物を乾燥する工程、
(f)導電性粒子の濃度を減少させながら、かつイオノフォア分子の濃度を増大させながら工程(d)と(e)を繰り返す工程、および
(g)電位差電極を得る工程
を含む方法である。
【0029】
本発明の別の実施形態は、前記電位差電極の作製方法であって、
(a)ポリマーの溶剤溶液中で導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b)その中に導電体を挿入する工程、
(c)該懸濁液を乾燥し、導電性粒子との固体複合ポリマーを形成する工程、
(d1)該粒子/ポリマー複合体の表面に、ポリマー材料およびイオノフォアの溶液を加える工程、
(e1)その混合物を乾燥する工程、
(f1)工程(d1)と(e1)を繰り返す工程、および
(g1)複合傾斜特性を持ち界面を持たない電位差電極を得る工程
を含む方法である。
【0030】
本発明の別の実施形態は、前記電位差電極の作製方法であって、
(a1)ポリマーの溶剤溶液中で導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b1)該懸濁液を蒸留水中に注入し沈殿物を形成する工程、
(b2)該沈殿物のサイズを小さくして残渣を形成する工程、
(c1)加圧して該残渣を乾燥し導電性粒子/ポリマー複合体を形成する工程
を含み、
ついで前記工程(d)〜(g)または(d1)〜(g1)を行う方法である。
【0031】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマーに対する前記導電性粒子の比率(w/w)が20〜90%導電性粒子の範囲である前記方法である。
【0032】
本発明の別の実施形態は、前記導電性粒子が、直径1〜2μmのカーボン粉末、黒鉛粉末、人造黒鉛粉末のいずれかである前記方法である。
【0033】
本発明の別の実施形態は、前記導電性粒子が、任意の電気的に重合された材料、酸化ポリピロールおよびその誘導体、酸化ポリチオフェン、ポリアニリン、貴金属類、金または白金のいずれかである前記方法である。
【0034】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマー材料が、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(塩化ビニル−コ−ビニルアセテート−コ−ビニルアルコール)、ポリシロキサン、DC200シリコーンオイル、または高分子量ポリ塩化ビニル(PVC)の1種以上である前記方法である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、工程(a)または(a1)の懸濁液における溶剤に対する固形分(導電性粒子およびポリマー)の割合(w/v)が1:(1〜10)である前記方法である。
【0036】
本発明の別の実施形態は、工程(a)または(a1)の溶剤が、DMSO、111トリクロロエタン、CCl、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドおよびTHFのいずれかである前記方法である。
【0037】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)の溶剤が、DMSO、111トリクロロエタン、CCl、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドおよびTHFのいずれかである前記方法である。
【0038】
本発明の別の実施形態は、前記イオノフォア分子が、図11中の化合物1〜10よりなる群から選ばれた1種以上である前記方法である。
【0039】
本発明の別の実施形態は、前記イオノフォア分子が、テトラ(p−クロロ)フェニルボレート、メチルトリドデシルアンモニウムクロライドおよび図11中の化合物11〜21よりなる群から選ばれた1種以上である前記方法である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)におけるポリマーが、室温またはそれ以下でゴム相の状態であるもののいずれかである前記方法である。
【0041】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)におけるポリマーがポリ(ブチルアクリレート)である前記方法である。
【0042】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)における固形分(ポリマーおよびイオノフォア)の組成が85〜99%ポリマーを含む前記方法である。
【0043】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)における固形分(ポリマーおよびイオノフォア)の組成が0.1〜3%イオノフォアを含む前記方法である。
【0044】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)において溶剤に対する固形分(ポリマーおよびイオノフォア)の比(w/v)が1:(8〜12)である前記方法である。
【0045】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)の溶液がさらに可塑剤を含む前記方法である。
【0046】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)において、膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の組成が55〜75%可塑剤を含む前記方法である。
【0047】
本発明の別の実施形態は、前記可塑剤が、o−ニトロフェニルオクチルエーテル(o−nitrophenyl octyl ether)、セバシン酸ジオクチル(dioctyl sebacate)、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(bis(2−ethylhexyl)phtalate)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(tris(2−ethylhexyl)phosphate)またはトリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート(tris(2−ethylhexyl)phosphate)のいずれかである前記方法である。
【0048】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)において、膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の組成が28〜38%ポリマーを含む前記方法である。
【0049】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)における膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の組成が0.1〜3%イオノフォアを含む前記方法である。
【0050】
本発明の別の実施形態は、工程(d)または(d1)において溶剤に対する膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の比(w/v)が1:(8〜12)である前記方法である。
【0051】
本発明の別の実施形態は、前記電位差電極を作製する方法であって、
a3)−溶剤を伴っていてもいなくてもよい前記工程(a)または工程(a1)にて定義される導電性粒子の懸濁液、または
−溶剤を伴っていてもいなくてもよくかつポリマーがポリシロキサンである前記工程(a)または工程(a1)にて定義される導電性粒子の懸濁液、または
−溶剤を伴っていてもいなくてもよくかつポリマーがDC200シリコーンオイルである前記工程(a)または工程(a1)にて定義される導電性粒子の懸濁液
を含むペーストを調製する工程、
b3)その中に導電体を挿入する工程、
c3)該粒子/ポリマー複合体の表面に、塩基、硬化剤およびイオノフォアを含む混合物を加え、任意に溶剤に溶解する工程、
d3)該構造体を脱ガスする工程、
e3)該構造体を加熱する工程、および
f3)複合傾斜特性を持ち界面を持たない電位差電極を得る工程
を含む方法である。
【0052】
本発明の別の実施形態は、工程(a)の前記溶剤がテトラヒドロフランである前記方法である。
【0053】
本発明の別の実施形態は、導電性粒子の最大濃度が20〜90%w/wである前記方法である。
【0054】
本発明の別の実施形態は、イオノフォア分子の最大濃度が0.1〜5%w/wである前記方法である。
【0055】
本発明の別の実施形態は
−1つの表面から遠ざかるに従い濃度が高くなる導電粒子、
−該表面に向かうに従い濃度が高くなるイオノフォア分子
を含む傾斜ポリマーである。
【0056】
本発明の別の実施形態は、2つの表面を含むポリマー材料から実質的に形成されており、該ポリマー材料が、
−1つの表面から遠ざかるに従い濃度が低くなる導電粒子、
−他方の表面から遠ざかるに従い濃度が低くなるイオノフォア分子
を含む傾斜ポリマーである。
【0057】
本発明の別の実施形態は、2つの表面を含むポリマー材料から実質的に形成されており、該ポリマー材料に含まれる導電粒子の濃度が両方の表面から遠ざかるに従い低くなる傾斜ポリマーである。
【0058】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマーが前記ポリマーの1種以上を含む傾斜ポリマーである。
【0059】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマーが前記導電性粒子の1種以上を含む傾斜ポリマーである。
【0060】
本発明の別の実施形態は、前記ポリマーが前記イオノフォアの1種以上を含む傾斜ポリマーである。
【0061】
本発明の別の実施形態は、前記方法において定義される工程を含み、1種以上の追加の導電体が組み入れられている傾斜ポリマーである。
【0062】
本発明の別の実施形態は、前記の方法において定義される工程を含み、工程(d)および(d1)のイオノフォアが存在しない前記の傾斜ポリマーを製造する方法である。
【0063】
本発明の別の実施形態は、前記の方法において定義される工程を含み、さらに導電性粒子の濃度が最も低い表面で2つの傾斜ポリマーを共に結合する工程を含む傾斜ポリマーを製造する方法である。
【0064】
本発明の別の実施形態は、前記傾斜ポリマーを含む電池である。
【0065】
本発明の別の実施形態は、可変抵抗器傾斜ポリマーである。
【0066】
本発明の別の実施形態は、可変キャパシタ傾斜ポリマーである。
【0067】
本発明の別の実施形態は、感圧センサー傾斜ポリマーである。
【0068】
本発明の別の実施形態は、溶剤または親油性分子センサー傾斜ポリマーである。
【0069】
本発明の別の実施形態は、被検物を感知するための前記傾斜ポリマーの用途である。
【0070】
本発明の別の実施形態は、薬物製剤からの薬物の溶解をインラインでモニターするための前記電位差電極の用途である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
本発明は、サンプル中の被検物を検出する電位差電極であって、
−サンプル接触表面から遠ざかるに従って濃度が高くなる導電性粒子、
−サンプル接触表面に向かうに従って濃度が高くなるイオノフォア分子、および
−該導電性粒子に近接して通る電気的連結部
を含むポリマー材料から実質的になる感知体
を含む電極に関する。
【0072】
したがって、本発明の1つの実施形態は、サンプル接触表面を有し被検物に選択的な電位差電極であり、該電極は実質的にポリマー材料から形成され、該ポリマー材料は、
−サンプル接触表面から遠ざかるに従って濃度が高くなる導電性粒子、
−サンプル接触表面に向かうに従って濃度が高くなり、該被検物と結合可能なイオノフォア分子、および
−該導電性粒子に近接して通る電気的連結部
を含有する。
【0073】
本発明の別の実施形態は、本発明の電極中に存在する傾斜ポリマーである。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、傾斜ポリマーは、2つの表面を含むポリマー材料から実質的に形成されており、該ポリマー材料は、
−1つの表面から遠ざかるに従い濃度が低くなる導電粒子、
−他方の表面から遠ざかるに従い濃度が低くなるイオノフォア分子、
−任意に、該導電性粒子に近接して通る電気的連結部
を含有する。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、傾斜ポリマーは、2つの表面を含むポリマー材料から実質的に形成されており、該ポリマー材料は、
−両方の表面から遠ざかるに従い濃度が低くなる導電粒子、
−任意に、該導電性粒子に近接して通る電気的連結部
を含有する。
【0076】
全体を通してポリマー材料を含む本発明の電極または傾斜ポリマーは、本発明者らにより非常に堅牢でありかつ高感度性であることが見出された。さらにまた、そうした電極または傾斜ポリマーは、HPLC、CEおよび溶解試験などの薬学的応用に好適であり、かつ非常に長期の操作においてもその高感度性を保つ。溶解試験の分野において、この堅牢な電位差電極は現在広く使用されている分光学的UVファイバー光学センサーよりも信頼性をもって実施できることを本発明者らは見出した。この電極または傾斜ポリマーにはイオノフォア分子を包含する分離および隔離膜がない。そのかわり、電極または傾斜ポリマーの一部分がイオノフォア分子を含んで本体のポリマー材料の一部分となり、電極または傾斜ポリマーが一体となっている。さらにまた、この電極または傾斜ポリマーは、より堅牢であり、かつ従来の「被覆線」電極において予測できない間隔で起こる電位の突然の変化にも影響されないことを本発明者らは見出した。イオノフォアまたは導電性粒子の濃度が高くなるまたは低くなるとの記述がある場合、その変化は急激ではなく徐々にまたは漸進的であることを意味する。以下に述べるように、イオノフォアまたは導電性粒子の濃度は本体の長手方向の距離またはサンプル接触表面での距離に対して傾斜的に変化する。イオン的な伝導性部分と電子的な伝導性部分との間に急激な界面の変化がないので機械的により安定している。
【0077】
電極の感知体には傾斜ポリマーが含まれており、この傾斜ポリマーには多様な用途があって、例えばフローセル、溶解センサー、電池、可変抵抗器、可変キャパシタ、圧力センサーおよび溶剤または親油性分子のセンサーにおいて使用される。
【0078】
本発明の一実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、その電気的連結部が銀、白金、金、アルミニウムのような任意の導電性金属で作製されている。
【0079】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、その電気的連結部が銅で作製されている。銅の使用は良好な導電性を与え、かつ安価である。本発明の電極または傾斜ポリマーを使用すれば銀または白金などの貴金属の使用を回避することができるので、この電極によって装置は非常に低価格になる。
【0080】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、そのポリマー材料がゴム状態の、または可塑剤の添加によりゴム状態になるポリマー材料である。そうした材料の例には、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、架橋されたポリ(ブチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(塩化ビニル−コ−ビニルアセテート−コ−ビニルアルコール)、ポリシロキサン、DC200シリコーンオイル、ポリ塩化ビニル(PVC)、または高分子量PVC、またはこれらの2種以上の組合せが挙げられる。
【0081】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、そのポリマーがポリ塩化ビニル(PVC)である。本発明者らは、PVCが良好な強度をもたらし、電極または傾斜ポリマーの導電性粒子およびイオノフォアと相溶性であることを見出した。
【0082】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、そのポリマーがポリ(ブチルアクリレート)を含む。その電極は、ポリ(ブチルアクリレート)を含むか、またはPVCと組合わせたポリ(ブチルアクリレート)を含んでいてもよい。本発明者らは、それが電極の構造物に良好な接着性を与えること、および電極の導電性粒子およびイオノフォアと相溶性であることを見出した。
【0083】
イオノフォア分子を含むポリマー材料の領域(図1、11)もまた膜であるとここでわかる、一方、導電性粒子を含むポリマー材料の残部(図1、10)もまた導電性複合体であるとわかる。
【0084】
本発明の1つの形態によれば、膜領域は導電性複合体領域よりも多くの可塑剤を含んでいる。本発明のこの形態によれば、膜領域における可塑剤の量は、40〜80%、50〜70%、60〜70%、60〜75%の間であり、好ましくは66%である。本発明のこの形態によれば、可塑剤は、o−ニトロフェニルオクチルエーテル(o−NPOE)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)またはトリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート(TOTM)のいずれかである。
【0085】
本発明の別の形態によれば、膜領域は導電性複合体領域におけると同じポリマーを含んでいる。たとえば、膜領域と導電性複合体領域は両方ともPVCを含んでいてもよい。それとは異なり、両領域はポリ(ブチルアクリレート)を含んでいてもよい。
【0086】
本発明の別の形態によれば、膜領域は導電性複合体領域とは異なる1種以上のポリマーを含んでいる。たとえば、膜領域はポリ(ブチルアクリレート)を含んでいてもよく、導電性複合体領域はPVCを含んでいてもよい。それとは異なり、膜領域はポリ(ブチルアクリレート)とPVCの混合物を含んでいてもよく、導電性複合体領域はポリ(ブチルアクリレート)を含んでいてもよい。ポリ(ブチルアクリレート)とは別のポリマー、例えばガラス転移温度の低い(低Tg)、すなわち室温以下の温度(30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20℃より低い)でゴム相であるいずれかのポリマーを採用してもよい。
【0087】
導電性複合体領域にポリ(n−ブチルアクリレート)(低Tg)を使用することにより、イオノフォア領域の取り付けに理想的な自己貼付性のベースが提供される。
【0088】
物質の量として本明細書で使用されるパーセンテージは、特に述べない限り、w/wをいう。
【0089】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、その導電性粒子の濃度が電極または傾斜ポリマーの本体の長手方向の両端間で傾斜している。導電性粒子の濃度は、1つのまたは両方の表面に向かって最も高くなる。本発明の1つの形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、導電性複合体領域における導電性粒子の最高濃度は20、30、40、50、60、70、80または90%以上の導電性粒子、またはこれら割合のいずれかの2つの間の領域内の値である。それは20〜90%、50〜80%、60〜80%、70〜80%、50〜70%、60〜70%、50〜60%であってもよく、好ましくは65%以上の導電性粒子である。
【0090】
電気的連結部に関連して本明細書で使用する近接しての語は、電気的連結部が導電性粒子のゾーンを通過することを意味する。電気的連結部が導電性粒子の最高濃度のゾーンを通過することは本発明の1つの形態である。
【0091】
導電性粒子の傾斜により、イオン的な伝導性(低粒子濃度)と電子的な伝導性(高粒子濃度)の間に連続的な遷移が得られる。
【0092】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、その膜領域における導電性粒子の最小濃度は5、10、20、40、または40%以下、またはこれら導電性粒子割合のいずれか2つの間の範囲内の値である。それは0〜40%、0〜30%、0〜20%、0〜10%、0〜5%、0〜3%導電性粒子であってもよく、好ましくは0%である。
【0093】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、その導電性粒子は直径1〜2μmのカーボン粉末、好ましくは黒鉛粉末、更に好ましくは人造のものである。本発明において好適に使用される他の導電性粒子には、例えば酸化されたポリピロールおよびその誘導体、酸化されたポリチオフェンおよびポリアニリン、貴金属、金または白金などの電気的に重合された材料(または他のイオン電子変換体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、その導電性粒子が1種類(たとえば全て黒鉛粉末)である。本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極では、その導電性粒子は2種以上である。たとえば、電極は黒鉛粉末と金の導電性粒子を含んでいてもよい。
【0095】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、そのイオノフォア分子は目的とする被検物へ非共有的に結合するのに好適な分子である。本発明の一実施形態によれば、イオノフォアは特異的に被検物に結合する。本発明の一実施形態によれば、イオノフォアは被検物に関係する基に特異的に結合する。本発明イオノフォアが1種類の被検物または被検物の基を認識することにより、他の物質が共存していても当該被検物を特異的に定性的および/または定量的に検出可能である。
【0096】
ここで用いられる被検物は、本発明の電極または傾斜ポリマーを用いて検出可能な目的とする物質である。本発明において有用となるためには、被検物はイオン化できる、すなわちカチオンおよび/またはアニオンを形成できることである。たとえば、被検物は液中、ゲル中、表面上、サンプル中などに存在するカチオンであってよい。本発明によれば、被検物または関係する被検物の一族は本発明の電極または傾斜ポリマー中に存在するイオノフォアと特異的に結合する。
【0097】
本発明におけるサンプルは、被検物が存在し得る、すなわち被検物がイオン化し得る如何なるものでも可能である。サンプルは、たとえば液、蒸気、ゲル、蒸気、半固体、液膜、水蒸気フィルム、懸濁液、コロイド、異種混合物、同種混合物などの形態を取り得る。サンプルの例には、食料品、飲料、体液、飲料水、排水、環境試料、化学生産品、化学試料、生物学的試料などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の1つの形態によれば、被検物は電極または傾斜ポリマー中の、特に膜領域中にイオンペアとして存在する。
【0099】
イオノフォアは当分野のいずれのものでもよく、カチオン性被検物用にはテトラ(p−クロロ)フェニルボレート(TCPB)を、そしてアニオン性被検物にはメチルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDDACl)が挙げられる。他のイオノフォアとしては、分子認識化合物であって、親油性の電極材料または傾斜ポリマーに可溶で、親水性サンプルに不溶な化合物はなんでもよい。有機酸の決定のために出願人が合成した例を図11に挙げた。本発明に用いるのに好適な当分野で公知の他のイオノフォアには、ビュールマン(Beuhlmann)ら、ケミカルレビューズ 1998年、98巻、4号、1650〜1687頁に記載されているものが挙げられ、これらは参照により本発明に組み入れられる。本発明に用いるのに好適な当分野で公知の他のイオノフォアには、カリックスアレーン(calixarenes)(たとえば図11の化合物11、12および15)、クラウンエーテル(たとえば図11の化合物16、17、18および21)、シクロデキストリン(たとえば図11の化合物19)、ホスホリル誘導体(たとえば図11の化合物20)および抗生物質(たとえば図11の化合物13および14)が挙げられる。分子認識化合物に親油性の「尾(tail)」を導入することにより、溶解度特性が向上する。
【0100】
当分野の電位差電極がイオン化可能な有機性被検物を測定する高感度性および選択性は、被検物の親油度によってほぼ決定される。被検物のlogP値が大きな正数の場合に最高の結果が得られる。ここでPはn−オクタノール/水の2相系の分散係数である。食品および飲料工業からの多くの有機酸はlogP値が低く(負)、したがって難しい対象である。本明細書で記載する電極または傾斜ポリマーと図11に示される尿素系−またはアザマクロ環(azamacrocycle)系イオノフォアとを組合せればそうした親油性被検物の検出が可能になり、それにより、バッチ中およびHPLCモード中で重要な分析が実行可能になることを本発明者らは見出した。
【0101】
本発明の1つの形態によれば、イオノフォアは尿素誘導体系またはアザマクロ環系のイオノフォアであり、図11の化合物1〜10よりなる群から選ばれたいずれかである。
【0102】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、そのイオノフォアの濃度が電極または傾斜ポリマーの本体の長手方向の両端間で傾斜している。イオノフォアの濃度は1個の傾斜が存在している場合は1つの表面に向かって最も高くなる。2つの傾斜ポリマーが後述するように「背中合わせ」に配置されている場合は、イオノフォア濃度は中間点に向けて最も高くなる。本発明の1つの形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、膜領域中のイオノフォアの最高濃度は0.1〜20%、0.1〜10%、0.1〜9%、0.1〜8%、0.1〜7%、0.1〜6%、0.1〜5%、0.1〜4%、0.1〜3%、0.1〜2%、0.1〜1%であり、好ましくは1%、最も好ましくは1〜2%イオノフォアである。有機酸の測定用には、このイオノフォアは図11からのいずれか1つの分子である。これらの表面活性レセプタ分子によって有機酸の検出性能は大きく増大する。0.2%比でMTDDAClを添加すると良好なイオン伝導性が得られる。
【0103】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、イオノフォアは単一のイオノフォア(たとえばイオノフォアが全て図11の化合物1である)を含む。本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、イオノフォアは少なくとも2種のイオノフォアの異種混合である。たとえば電極は図11における化合物1と2の混合物を含んでいてもよい。
【0104】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、膜領域中のイオノフォアの最低濃度は0〜0.09%、0〜0.08%、0〜0.07%、0〜0.05%、0〜0.025%であり、好ましくは0%イオノフォアである。
【0105】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、電気的連結部はイオノフォア粒子のゾーンを通過しない。
【0106】
本発明の別の実施形態において、イオノフォア分子と導電性粒子が、イオノフォア分子の最低濃度のゾーンと導電性粒子の最低濃度のゾーンの間の遷移領域で混合されている。
【0107】
本発明の1つの形態によれば、遷移領域は10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000または3000μmよりも浅いか同じ深さ、または上記のいずれか2つの間の範囲の値の深さを有している。深さは、10〜1000μm、50〜500μm、100〜400μm、200〜300、100〜200および50〜100μmの範囲であり得るし、好ましくは200μmよりも浅いか等しい。
【0108】
本発明の別の形態によれば、遷移領域の最も近い境界は、サンプル接触表面から1と400、10と400μm、50と300μm、70と200μmの間に、好ましくは100μmに位置している。
【0109】
この遷移領域において、イオン伝導性から電子伝導性への変換がより効率的に行われる。本発明の別の形態によれば、遷移領域の深さおよび/またはサンプル接触表面からの境界の距離はイオン伝導性から電子伝導性への変換が効率的に行われるようになっている。
【0110】
ここに記載した傾斜ポリマーおよび電極には導電性粒子の傾斜が含まれ、また、電極中に存在するイオノフォアは1つの機能性層からもう一つの機能性層へ連続した遷移を形成する。この遷移は、図3a、3bおよび3cにそれぞれ示すとおり線形、指数、または曲線を含む任意の類型であってよい。遷移は連続的であってもよい。それとは異なり、傾斜は完全には連続的でなくてもよく、不連続な段階で漸進していてもよく、たとえば線形(図4a)、指数的(図4b)またはS字型(図4a)であってもよい。傾斜は対称的でも非対称的でもよい(たとえば図5は非対称的傾斜を示す)。
【0111】
導電性複合体と膜の間に傾斜があるので、膜が導電体に機械的に強く接着するのは確実である。純粋な複合体から純粋な膜へ傾斜する間隔は典型的には200μmであるが、10〜1000μmの範囲で変化し得る。本発明者らは、複合体(黒鉛/PVC)の枝が膜(PVC、DOSおよびイオン)中に延び得ることを観察した。黒鉛の孤立した粒子は、表面に近い領域にまで、膜中深くに延びている。これらの領域ではこれらの粒子の濃度が極めて低いからといって、電極のインピーダンスが劇的に減少することはない。膜絶縁体傾斜の顕微鏡写真を図7に示す。以上のことから、本発明者らは、濃度分布は図6に示す傾斜になると推定した。この分布のために、濃度の線形変化を想定したが、他の提案されたモデルもまた適用可能である。
【0112】
本発明の電極または傾斜ポリマーの内部には、絶縁体の作製に使用した材料に応じて他の傾斜が存在してもよい。導電性複合体と傾斜膜の間の傾斜のほかに、絶縁体と膜の間の傾斜および絶縁体と導電体の間の傾斜が存在してもよい。これらの傾斜に対して、各成分のためのいろいろな傾斜特性があってもよい。
【0113】
絶縁体と膜の間に傾斜があれば、膜が絶縁体に機械的に強く接着するのは確実である。さらにまた、この傾斜は膜よりもインピーダンスが高いので、回路の短絡は全て防止される。純粋な絶縁体から純粋な膜へ傾斜する間隔は典型的には200μmであるが、しかし、10〜1000μmの範囲で変化し得る。図7の膜絶縁体傾斜の顕微鏡写真から、濃度分布は図5に示す傾斜になると推定した。この分布には濃度の線形変化が推測されているが、しかし他に提案されるモデルもまた適用可能である。
【0114】
絶縁体と導電複合体の間の傾斜は前記の傾斜と類似しており、これは電極の前記の製造で予想しなかった結果である。傾斜は絶縁体中に90、80、70、60、50、40、30または20%(または前記値のいずれか2つの間の範囲における値)以上の黒鉛濃度から始まって、0%の濃度までである。PVCの濃度は絶縁体中に10、20、30、40、50、60、70または80%(または前記値のいずれか2つの間の範囲における値)以下の濃度から始まって、90、95または100%の濃度以下である。好ましくは、濃度傾斜は黒鉛60%/PVC40%から始まって、黒鉛0%/PVC100%までである。この傾斜の長さは比較的に小さく、1〜100μmで変化し得るがより長くてもよい。
【0115】
本発明の別の実施形態において、電極または傾斜ポリマーはさらにハウジング(ここでは絶縁体としても理解される)を含む。ハウジングはポリマー材料の長手方向の本体の少なくとも一部を内包している。ハウジングによりサンプル接触表面の少なくとも一部は露出される。このハウジングは多数の目的、たとえばつぎの1以上を果たす。
−電極中に存在するとき感知部分を物理的に保護する、
−電極に組み込まれたとき、感知部分のための到達手段を提供する、
−電気的接続を絶縁する。
【0116】
ハウジングはガラス、PVC、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのいずれの絶縁材料で構成されていてもよい。好ましくはPVCで作製されている。電極の製造中にPVCハウジングおよび溶剤を使用しハウジングの一部をその溶剤によって溶解すれば、絶縁体−膜の傾斜および上述の絶縁体伝導体複合体の傾斜が得られる。
【0117】
本発明の別の実施形態として本明細書に開示の電極または傾斜ポリマーでは、ハウジングが円筒状の被覆物である。
【0118】
本発明の別の実施形態は、ポリマー材料が円筒形状である。
【0119】
電極または傾斜ポリマーを円筒状にすれば、電極の接触表面を円形に形成することが可能なので、一般に入手される容器、例えばマイクロウェルプレートの形状に適合させることができる。さらにまた、これにより電極のハウジングが円筒になるので、効率的な強度/重量を持ったハウジング材料を使用することができる。
【0120】
本発明の別の実施形態において、電極のサンプル接触表面または傾斜ポリマーの片面または両面は円形である。これは、0.1〜5mm、0.1〜4mm、0.1〜3mm、0.1〜2mmの間であってよく、および好ましくは3mmである。
【0121】
本発明者は、界面を有さない本発明の電極または傾斜ポリマーが、予期せず、日常使用において予期できる高感度性および導電特性を増強した結果、機械的により堅牢な構造を提供することを見出した。
【0122】
本発明の別の実施形態は、本発明の電極または傾斜ポリマーを含むクロマトグラフィフローセルである。
【0123】
本発明の別の実施形態は、本発明の電極または傾斜ポリマーを含む溶解試験電極である。本発明者らは、本発明の電極によって作製された電位差電極のドリフトは極めて低く、それが予測可能である(図8)ことを見出した。これらの特性により、測定はインラインで実施可能である。すなわち、電極により溶解試験媒体の濃度変化が連続的かつリアルタイムに記録され;溶解試験中は電極が溶解試験媒体から離れることはない。このことは、サンプルを取り出してから測定し、電極を溶解試験溶液に間歇的に出し入れする従来の電位差電極とは対照的である。
【0124】
なお、本発明の電極または傾斜ポリマーには、通常の検量線のほかに追加の検量技術を適用することは可能である。最終濃度の測定はドリフトに対して非常に高感度である;この問題は単一点での検量または標準物質の添加により抑制することができる。単一点での検量は通常、電極を既知濃度の被検物中に置いて溶解を完了したら直ぐに実施する。簡単な減算および内挿を行なえば、発生したドリフトに対する検量値の補正が可能である。溶解の完了後に既知量の被検物を添加してもよい(標準物質添加)。
【0125】
電圧増加は開始時点の濃度および追加量に比例するので、最終濃度を推定することができる。この場合も、簡単な減算および内挿を行なえば、発生したドリフトに対する検量値の補正が可能である。
【0126】
本発明の別の実施形態は、本明細書に開示のクロマトグラフィ用フローセルであり、これにはさらに電極または傾斜ポリマー表面に溶離液を噴霧する手段が含まれる。この構成は「ウォール−ジェット」と呼ばれている。
【0127】
本発明者らは、旧来のフローセルでは高い内部抵抗が突然に発生するという問題が本発明フローセルにより未然に防止されることを見出した。これらの問題は、稼動中の電極に空気の泡が付着したり、あるいは参照電極の膜が目詰まりして起こる。両者の原因は旧来のフローセルでは検出が困難である。その場合には旧来のフローセルを撤去する必要があり、それでも、誤作動の原因は明らかにはならない。さらにまた、フローセルを再装着しても、一般にその問題は解決しない。後者の現象の場合には、ユーザーは電気化学的検出を当座は実施できない。本発明者らは、本発明のフローセルではそうした現象が生じないことを見出した。本発明フローセルの操作圧力はゼロであるために、空気泡が電極で形成すれば直ちに視覚的に感知され、秒単位で都合よく効果的に除去される。該参照電極は秒単位で除去することもできる。このフローセルの構造は、工業用の標準参照電極を差し込んだものであり、特別に構成する参照電極は不要である。
【0128】
本明細書に開示の傾斜ポリマーは2つの表面と縦長の本体を含んでいてよい。たとえば2つの円形の端部と縦長の本体を含むシリンダーは傾斜ポリマーの典型的な形状である。既に記載した傾斜ポリマーは、1つの表面に向かって濃度が増大する導電性粒子、および他の表面に向かって濃度が増大するイオノフォア分子を含んでいてよい。また、傾斜ポリマーは2つの表面を含み、この両表面の中点に向かって導電性粒子の濃度が減少してもよい。
【0129】
傾斜ポリマーはイオン性および導電性の間に遷移が必要な装置に導入されうる。したがって傾斜ポリマーは、たとえば電池に導入されてもよい。
【0130】
また、可変抵抗器または可変キャパシタに導入されてもよい。その構成では、構成要素は本質的に2つの傾斜が「背中合わせ」であり、そこでは導電性粒子が両表面の中点に向かって濃度が減少している。構成要素の端面は、最高濃度の導電性粒子を含んでおり、それは要素の中心(中点)に向かって濃度が減少する。たとえば傾斜は一端で60%黒鉛から中心で0%黒鉛となり他端で60%に増大する;この形は図9に示されている。中心エリアは室温以下でゴム相にあり、イオンおよび/またはイオノフォアを含んでいる。
【0131】
傾斜ポリマーはまた、圧力センサーに導入されてもよい。そうしたセンサーでは、導電性粒子が両表面の中点に向かって濃度が減少する2つの「背中合わせ」の傾斜がやはり形成される。たとえば傾斜は一端で40%PVC/60%黒鉛から中心で66%DOS/44%PVC/0%黒鉛となり他端で40%PVC/60%黒鉛となる。この傾斜が圧縮されると、容量および導電性が加えた圧力に比例して変化する。このようにして容量および/またはインピーダンス型圧力センサーが得られる。イオノフォアは中心エリアに存在してもしなくてもよい。
【0132】
上記の実施形態に記載された傾斜ポリマーは、溶剤または親油性分子センサー中に導入されてもよい。そうしたセンサーは傾斜の膨潤特性を基礎とする。多数の溶剤が傾斜ポリマーに捕捉され、ゴム相の膨潤を引き起こす。この特性はセンサーの導電性および容量に影響を与える。両方の性質を利用すれば溶剤濃度の測定が可能である。同じ系が、洗剤およびlogP(>1)の分子の測定に利用できる。これらの分子は溶液中でも気相中でも可能である。
【0133】
作製方法
電位差電極および傾斜ポリマーは以下の方法を用いて作製することができる。この方法は電極の構築を目指しているが、必須の工程は前記傾斜ポリマーの形成である。当業者は記載の方法を自分の技量の範囲内で利用すれば傾斜ポリマーを作製することができる。
【0134】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の電位差電極の作製方法であって、
(a)ポリマーの溶剤溶液中で導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b)その中に導電体を挿入する工程、
(c)該懸濁液を乾燥し、導電性粒子との固体複合ポリマーを形成する工程、
(d)該粒子/ポリマー複合体の表面に、ポリマー、導電性粒子およびイオノフォアの溶液を加える工程、
(e)その混合物を乾燥する工程、
(f)導電性粒子の濃度を減少させながら、かつイオノフォアの濃度を増大させながら工程(d)と(e)を繰り返す工程、および
(g)複合体の傾斜特性があり界面がない電位差電極を得る工程
を含む方法である。
【0135】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の電位差電極の作製方法であって、
(a)ポリマーの溶剤溶液中で導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b)その中に導電体を挿入する工程、
(c)該懸濁液を乾燥し、導電性粒子との固体複合ポリマーを形成する工程、
(d1)該粒子/ポリマー複合体の表面に、ポリマー材料およびイオノフォアの溶液を加える工程、
(e1)その混合物を乾燥する工程、
(f1)工程(d1)と(e1)を繰り返す工程、および
(g1)複合傾斜特性をもち界面をもたない電位差電極を得る工程
を含む方法である。
【0136】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の電位差電極の作製方法であって、
(a1)ポリマーの溶剤溶液中で導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b1)該懸濁液を蒸留水中に注入し沈殿物を形成する工程、
(b2)該沈殿物のサイズを小さくして残渣を形成する工程、
(c1)加圧して該残渣を乾燥し導電性粒子/ポリマー複合体を形成する工程
を含み、
ついで上記工程(d)〜(g)または(d1)〜(g1)を行う方法である。
【0137】
脱水後、電極は使用可能となる。
【0138】
この方法で形成された電位差電極は電極全体が連続したポリマーから構成されており、予想外の耐久性、強靭さおよび高感度性をもつ電極が提供される。またこの電極は界面をもたず、したがってその高感度性と導電性の特性は増大しており、しかしこれら特性は日常使用では予想することができる。
【0139】
この方法のためのポリマー材料、イオノフォア、導電性粒子および伝導体の特性および改変物は、上述した電極または傾斜ポリマーのためのものと同じである。
【0140】
本発明の一実施形態として本明細書に開示する方法では、工程(a)の懸濁液を円筒状の鋳型に注ぐ。このようにすれば、電極の接触表面を円形に形成することが可能なので、一般に入手される容器、例えばマイクロウェルプレートの形状に適合させることができる。さらにまた、これにより電極のハウジングが円筒になるので、効率的な強度/重量を持ったハウジング材料を使用することができる。本発明の1つの形態によれば、鋳型の型は電極のハウジングであってよい。
【0141】
工程(a)の懸濁液は、鋳型に一回で投入してもよいし、あるいは懸濁液の所望の量が加えられるまで、投入と乾燥を連続して繰り返してもよい。乾燥は室温でまたは温度を高めて(たとえば20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85または90℃よりも高い、あるいはこれらのいずれか2つの温度の間の範囲内)行ってよい。所望の量の複合体が加えられ懸濁液が乾燥された後、余分の複合体を研削と研磨で除去してよい。
【0142】
本発明によれば、工程(a)または(a1)の懸濁液は、溶剤中に導電性粒子(たとえば黒鉛)とポリマーを含む。ポリマーに対する導電性粒子の相対的比率(w/w)は、20、30、40、50、60、70、80、90%、あるいはこれらのいずれか2つのパーセンテージの間の範囲内にあり、残りはポリマーの適切な量により100%にする。導電性粒子の好ましい比率は、50〜70%、より好ましくは55〜65%、最も好ましくは60%であり、残りはポリマーで100%にする。
【0143】
同様に、工程(a)または(a1)の懸濁液における導電性粒子に対するポリマーの相対的比率(w/w)は、10、20、30、40、50、60、70、80%、あるいはこれらのいずれか2つのパーセンテージの間の範囲内にある。ポリマーの好ましい比率は20〜50%、より好ましくは30〜40%である。
【0144】
好適なポリマーの例には、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(塩化ビニル−コ−ビニルアセテート−コ−ビニルアルコール)、ポリシロキサン、DC200シリコーンオイルおよび好ましくは高分子量ポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。
【0145】
工程(a1)の溶液中の溶剤に対する固形分の比率は、溶剤1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60部未満、あるいはこれらのいずれか2つの値の間の範囲内の値に対して固形分(導電性粒子+ポリマー)1部である。溶剤に対する固形分(導電性粒子+ポリマー)の好ましい比率(w/v)は1:(1〜10)、より好ましくは1:(1〜5)、最も好ましくは約1:3である。
【0146】
本発明の方法で使用される溶剤は、ポリマーを溶解するいずれのものでもよい。そうした溶剤は当技術で知られており、DMSO、111トリクロロエタン、CCl、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミド、およびTHFが挙げられる。
【0147】
本発明の別の実施形態として本明細書に記載の方法では、工程(d)または(d1)(および(f))の溶液がさらに可塑剤を含む。本発明の方法によれば、イオノフォア含有領域のポリマー材料中の可塑剤の量は、40〜80%、50〜70%、60〜70%、60〜75%の間であり、好ましくは66%。50〜75%、55〜75%、60〜75%、65〜75%、50〜70%、50〜65%、50〜60%および好ましくは66%可塑剤である。本発明のこの形態によれば、ポリマー材料(導電性複合体)中の可塑剤の量は0〜37%、0〜20%、0〜10%の間であり、また、好ましくは0%である。
【0148】
本発明の別の実施形態として本明細書に記載の方法では、工程(d)または(d1)(および(f))の溶液はさらにイオノフォアを含む。本発明の方法によれば、電極中のイオノフォアの最高濃度は、膜領域において0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9または10%w/wと同じか低い。それは、0.1〜10%、0.1〜9%、0.1〜8%、0.1〜7%、0.1〜6%、0.1〜5%、0.1〜4%、0.1〜3%、0.1〜2%、0.1〜1%の間であってもよいし、好ましくは1%イオノフォアよりも低いか同じである。
【0149】
本発明の別の実施形態として本明細書に記載の方法では、工程(d)または(d1)および(f)の溶液はさらにポリマーを含む。本発明の方法によれば、電極の膜領域中のポリマーの最高濃度は、20〜45%、20〜40%、20〜35%、20〜30%、25〜45%、30〜45%、35〜45%の間であり、好ましくは33%である。
【0150】
本発明の方法によれば、工程(d1)の溶液はポリマーとイオノフォアを含み、導電性粒子を含まなくてもよい。その溶液は連続した適用(工程(f1))によって工程(c)または(c1)の複合体に適用される。本発明者らは、連続適用の間に工程(d1)で記載した溶液の組成を変化させることなく、サンプル接触表面方向に向かって濃度が増大するイオノフォア粒子の傾斜、およびサンプル接触表面方向に向かって濃度が減少する導電性粒子の傾斜が驚くべきことに形成されることを見出した。傾斜は、工程(d1)の溶液によって工程(c)または(c1)の複合体の溶解により形成される。この手順を用いると、深さ10〜1000μmの間の傾斜層(遷移領域)が得られる。
【0151】
工程(d1)で適用される溶液の容量によって、遷移領域の深さを調整することができる。それは通常、深さにおいて1、10、50、70、90、100、150、190、200、210、250、300μmよりも浅く、あるいはこれらのいずれか2つの深さの間の範囲の値、好ましくは150〜250μm、最も好ましくは約200μmである。
【0152】
工程(d1)で適用される溶液の容量は、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50μl未満、あるいはこれらのいずれか2つの容量の間の範囲の値であってよい。それは好ましくは15と35μlの間、より好ましくは20と30μlの間、最も好ましくは約25μlである。
【0153】
本発明の1つの形態によれば、工程(d1)の溶液は、溶剤(たとえばTHF)中に可塑剤、ポリマーおよびイオノフォアを含む。膜成分(可塑剤+ポリマー+イオノフォア)の組成物は、0、1、10、20、30、40、45、50、55、60、65、70、75、70、75または80%可塑剤、あるいはこれらのいずれか2つのパーセンテージの間の範囲の値、好ましくは55〜75%、より好ましくは60〜70%、最も好ましくは約65%可塑剤を含んでもよい。可塑剤は当技術のいずれでもよく、o−ニトロフェニルオクチルエーテル(o−NPOE)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)またはトリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート(TOTM)でもよく、好ましくはDOSである。
【0154】
工程(d1)の溶液中の膜成分(可塑剤+ポリマー+イオノフォア)の組成は、20、22、24、26、28、30、32、33、34、36、38、40、42、44、46、50、60、70、80、90、100%ポリマー未満、あるいはこれらのいずれか2つのパーセンテージの間の範囲の値、好ましくは28〜38%、より好ましくは32〜34%、最も好ましくは約33%ポリマーを含んでもよい。ポリマーは上記工程(a)〜(c)または(a1)〜(c1)で使用されている同じポリマーを含んでいる。
【0155】
工程(d1)の溶液中の膜成分(可塑剤+ポリマー+イオノフォア)の組成は、0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9または10%イオノフォア未満、あるいはこれらのいずれか2つのパーセンテージの間の範囲の値、好ましくは0.1〜3%、より好ましくは0.5〜2.5%、最も好ましくは1〜2%イオノフォアを含んでもよい。所望する適用に応じて、イオノフォアは当技術のいずれのものであってもよく、例えばカチオン性被検物にはテトラ(p−クロロ)フェニルボレート(TCPB)、アニオン性被検物にはメチルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDDACl)または図11に列挙してあるいずれか挙げられる。
【0156】
工程(d1)の溶液中の溶剤(たとえばTHF)の比率は、溶剤5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60部未満、あるいはこれらのいずれか2つの値の間の範囲内の値に対して固形分(可塑剤+ポリマー+イオノフォア)1部である。溶剤に対する膜成分(可塑剤+ポリマー+イオノフォア)の好ましい比率(w/v)は1:(8〜12)、より好ましくは1:(9〜11)、最も好ましくは約1:10である。
【0157】
膜成分(可塑剤+ポリマー+イオノフォア)の組成は、上記の限定の範囲内で変化し得る。当業者であれば、所望の組成を得るために膜成分の相対比率を普通に判断して必要な調整を加え組成物を製造する。
【0158】
本発明の1つの形態によれば、工程(d1)の溶液は、溶剤(たとえばTHF)中にポリマーおよびイオノフォアを含み、可塑剤を含まない。膜成分(前記ポリマー+前記イオノフォア)の組成は、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99%ポリマーより少ないかまたは同じ、あるいはこれらのいずれか2つのパーセンテージの間の範囲の値、好ましくは85〜99%、より好ましくは90〜99%、最も好ましくは98%と同じか少ないポリマーを含んでもよい。ポリマーはTg(ガラス転移温度)が室温より低いものであり、たとえばポリシロキサンまたは好ましくはポリ(ブチルアクリレート)である。
【0159】
工程(d1)の溶液中の膜成分(ポリマー+イオノフォア)の組成は、0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9または10%イオノフォア未満、あるいはこれらのいずれか2つのパーセンテージの間の範囲の値、好ましくは0.1〜3%、より好ましくは0.5〜2.5%、最も好ましくは1〜2%イオノフォアを含んでもよい。所望する用途に応じて、イオノフォアは当技術のいずれのものであってもよく、カチオン性被検物にはテトラ(p−クロロ)フェニルボレート(TCPB)、アニオン性被検物にはメチルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDDACl)が含まれる。
【0160】
膜成分(ポリマー+イオノフォア)の組成は、上記の限定の範囲内で変化し得る。当業者は、所望の組成を得るために膜成分の相対比率に必要な調整を施し、組成物の製造に通常の判断を用いればよい。
【0161】
本発明の1つの形態によれば、可塑剤が存在しない場合、工程(a)または(a1)および(d)または(d1)(および(f))で使用されるポリマーは同じであり、かつ室温より低いTg(ガラス転移温度)を有するもの、たとえばポリ(ブチルアクリレート)またはポリシロキサンである。本発明の1つの形態によれば、可塑剤が存在しない場合、工程(a)または(a1)および(d)または(d1)および(f)で使用されるポリマーが異なる。工程(a)または(a1)のポリマーは、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(塩化ビニル−コ−ビニルアセテート−コ−ビニルアルコール)、好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)であってもよく、工程(d)または(d1)および(f)のポリマーは、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリシロキサンまたは室温よりも低いTg(ガラス転移温度)を有するポリマーであってよい。
【0162】
この実施形態において、工程(d1)の溶液中の溶剤の比率は、溶剤5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60部未満、あるいはこれらのいずれか2つの値の間の範囲内の値に対して膜成分(ポリマー+イオノフォア)の一部である。溶剤に対する膜成分(ポリマー+イオノフォア)の好ましい比率(w/v)は1:(8〜12)、より好ましくは1:(9〜11)、最も好ましくは約1:10である。
【0163】
工程(f)および(f1)で実施する繰り返しの回数は、所望の傾斜の特性、遷移の深さおよび工程(d)または(d1)で適用される溶液の量によって変わる。繰り返しの回数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、あるいはこれらのいずれか2つの値の間の範囲内の値であってよい。繰り返しの好ましい回数は、1〜10の間、より好ましくは1〜7の間、そして最も好ましくは1〜3の間であってよい。
【0164】
脱水後、電極は使用可能となる。
【0165】
本発明の1つの形態によれば、被検物は、電極において、特に膜領域においてイオンペアとして存在する。このイオンペアを得るために、つぎの手順を用いる:
−組立ての間にイオンペア(または被検物)を膜成分に添加する(たとえば工程(c)または(c1)の溶液に添加する)ことによりイオンペアを導入する。
−完成した電極を被検物の溶液(たとえば0.1M HCl溶液900ml中にダポケチン(dapoxetine)30mg)に直接接触させることによりイオンペアを形成する。このプロセスの間に、被検物は溶液から電極中に抽出され、その場にイオンペアが形成される。このプロセスには5時間要する。
【0166】
本発明の別の実施形態において、ポリシロキサン膜を含む電極は次のように構築される:
a3)−溶剤を伴っていてもいなくてもよい上記工程(a)または工程(a1)で用いた導電性粒子の懸濁液、または
−溶剤を伴っていてもいなくてもよくかつポリマーがポリシロキサンである上記工程(a)または工程(a1)で用いた導電性粒子の懸濁液、または
−溶剤を伴っていてもいなくてもよくかつポリマーがDC200シリコーンオイルである上記工程(a)または工程(a1)で用いた導電性粒子の懸濁液
を含むペーストを調製する工程、
b3)その中に導電体を挿入する工程、
c3)該粒子/ポリマー複合体の表面に、塩基、硬化剤およびイオノフォアを含む混合物を加え、任意に溶剤(たとえばTHF)に溶解する工程、
d3)該構造体を脱ガスする工程、
e3)該構造体を加熱する工程、および
f3)複合傾斜特性を持ち界面を持たない電位差電極を得る工程。
脱水後、使用可能な電極が得られる。
【0167】
塩基および硬化剤は当技術で公知であり、重合で好適に用いられるものであればよい。好ましくは、それらはシルガード(Sylgard) 184(ダウ コーニング)の成分である。
【0168】
この実施形態において、工程(c3)の溶液中の任意の溶剤(たとえばTHF)の比率は、THFが0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、12、13、14、15、16、17、18,19、20、21、23、24、25,26、27、28、29、30、40、50、60部未満、あるいはこれらのずれか2つの値の間の範囲内の値に対して固形分混合物1部であってよい。溶剤に対する固形分混合物の好ましい比率(w/v)は、1:(0.1〜1)、最も好ましくは約1:0.5である。
【0169】
構造体は工程e3)で、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250℃以上、あるいはこれらのずれか2つの温度の間の範囲内の値の温度に加熱してよい。好ましくは、温度は100〜250℃、より好ましくは130〜220℃、最も好ましくは150〜200℃である。
【0170】
所望の用途に応じて、イオノフォアは当分野のいずれのものであってもよく、例えばカチオン性被検物にはテトラ(p−クロロ)フェニルボレート(TCPB)、アニオン性被検物にはメチルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDDACl)または図11に列挙してあるいずれかが挙げられる。
【0171】
工程(c3)の膜成分(塩基+硬化剤+イオノフォア)の組成には、0.1、0.25、0.5、0.75、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9または10%イオノフォア未満、あるいは上記パーセンテージのいずれか2つの間の範囲の値、好ましくは0.1〜3%、より好ましくは0.5〜2.5%、最も好ましくは1〜2%イオノフォアを含んでもよい。
【0172】
イオンペアは上記のように導入することができるし、また被検物を含有する有機溶剤に膨潤させることによって導入することができる。好ましい溶剤は、THFまたはDOSである。
【0173】
ポリシロキサンの性質は、DOSまたは他の可塑剤の導入によって転換されうる。用いたシリコンはシルガード(Sylgard)184 ダウ コーニングであった。
【0174】
前述の2つの「背中合わせ」の傾斜を含む傾斜ポリマーの構造において、上記の傾斜ポリマーまたは電極のいずれか2つは、膜領域(または導電性粒子の最低濃度)の表面で、溶剤(たとえばTHF、DMSO)によって互いに繋がっている。
【0175】
図1は、本発明による電位差電極9の一例の断面図である。電極は、ハウジング(絶縁体)5、ポリマー材料10、11および電気的連結部2を含んでいる。導電性粒子3は導電性複合体10中に配置されている。イオノフォア4は膜領域11中に配置されている。イオノフォア4はシリンダーの電気的連結部10の出口端に向けて最も濃度が低くなり、シリンダーのサンプル接触端8に向けて最も濃度が高くなる。イオノフォア4と導電性粒子3は遷移領域12で混合する。
【0176】
図2は、本発明による電位差電極9の別の例の断面図である。電極は、ハウジング(絶縁体)5、ポリマー材料1で作製されたシリンダー、および電気的連結部2を含んでいる。導電性粒子3はポリマー材料1を通して傾斜6中に配置されている。導電性粒子3はポリマー材料1の電気的連結部2の出口端に向けて最も濃度が高くなり、ポリマー材料のサンプル接触端8に向けて最も濃度が低くなる。イオノフォア4はポリマー材料を通して傾斜7中に配置されている。イオノフォア4はシリンダー1の電気的連結部の出口端に向けて最も濃度が低くなり、ポリマー材料のサンプル接触端8に向けて最も濃度が高くなる。イオノフォア4と導電性粒子3は遷移領域で混合する。
【0177】
図10Aおよび10Bは本発明によるフローセル17の一例を示す。HPLCカラム18の取り出し口はフローセル17の取り入れ口19に接続される。本発明の電極9のサンプル接触表面8に向けられた1以上の噴霧装置15が溶離液16を噴霧する。参照電極13もフローセル中に存在する。図10Bはフローセル17からの電極9の簡単な取り出しと挿入を示している。
【実施例1】
【0178】
本発明を以下の非限定的な実施例により説明する。
【0179】
1a.電極(A)の製造
電極の実質的な部分を形成する複合材料を黒鉛粒子とTHF(テトラヒドロフラン)中のPVCの懸濁液を調製することにより作製した。銅電極上で懸濁液を蒸発させることで複合材料を設けた。複合材料を乾燥した後、つぎのイオノフォア含有層を追加することで電極を拡げた。
【0180】
それぞれ異なるイオノフォアを含有する数種の混合物を調製した。
−サンプルに接触する最終層として、化合物1%、メチルトリドデシルアンモニウムクロライド(MTDDACl)0.2%、PVC33%および可塑剤65.8%からなる化合物1〜4をイオノフォアとして含有する混合物。
−サンプルに接触する最終層として、イオノフォア1%、PVC33%、および可塑剤66%からなる化合物5〜8と10に基づく混合物。
−サンプルに接触する最終層として、イオノフォア1%、PVC27%、および可塑剤72%からなる化合物9を組み入れた混合物。
−サンプルに接触する最終層として、MTDDACl6%、PVC33%、および可塑剤61%を含有するイオノフォアとしてMTDDAClに基づく混合物。
【0181】
アニオン感知性電極は、安定したベースラインが得られるまで、LCシステム中で溶離液を流して条件を整えた(数時間)。
【0182】
1b.電極の作製(別のB)
HPLC電位差センサーに用いるのに好適な電極を直径3mmの中心穴をもつPVCシリンダー(1×5cm)より作製する(たとえば図1参照)。穴の一方の側を銅の棒でシールする。穴の他方の側を黒鉛60%とPVC40%の導電性複合体で満たす:
1)黒鉛60%と高分子量PVC40%のTHF懸濁液(1/3比の固形分THF)を混合と撹拌により調製する。
2)工程(1)の懸濁液で穴を満たす。
3)懸濁液を室温または高められた温度で乾燥する。
4)穴が完全に満たされるまで工程2と3を繰り返す。
5)余分な黒鉛/PVC複合物を研削および研磨で取り除く。
【0183】
つぎに記載されているようにして、膜および傾斜を製造する:
1)65%DOS、32%PVCおよび2%TCPBを100mg量にて混合する。
2)この混合物を1mlTHFに溶解する。
3)1滴(25μl)をシリンダーに溜める。
4)THFを室温で蒸発させる(〜5mm)。
5)工程3と4を少なくとも3回(合計)繰り返す。
注:膜/THF溶液に複合体(60%黒鉛40%PVC)を溶解させて傾斜を形成する。記載されている手順を用いて、DOSおよびイオンの濃度が次第に減少し、PVCおよび黒鉛の濃度は次第に増加する±200μmの層を得る。脱水の後、使用可能な電極を得る。
【0184】
HPLCへの適用における寿命
2個の電極の寿命を流速1ml/mmの蒸留水に暴露することにより試験した。規則正しい間隔で電極の品質をHPLC実験により試験した。これらは、1mMHNO5%アセトニトリル溶離液を用いてユニバーサルカチオンカラム(4.6×100 ALLtech)上で6つのアミン(メチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ペンチル−およびヘキシルアミン)の分離と電位差検出よりなっていた。127リットルの蒸留水で4ヶ月後、電極の品質は、定常的な電位差測定に依然として許容可能であった。研究された寿命は、1ml/mmの流速で40時間/週の稼動での1年間の使用に等しい。
【0185】
1c.電極の作製(別のC)
HPLC用の電極は溶解試験への適用の特別な要求に適合させてもよい。
【0186】
溶解試験への適用での使用のための電極は、実施例1bに記載されたように作製される。PVCシリンダーは直径3mmの中空ガラスチューブに貼り付けられる。サンプルから糊を保護するために、ガラスPVC遷移部の上にシリコンチューブを配置する。
【0187】
バッチ(溶解試験)における再現可能な測定を確保するために、被検物が電極膜中にイオンペアとして存在する。このイオンペアを得るために、3つの可能な手順がある。
1)組立ての間に膜成分(膜製造の工程1)にイオンペアを加えてそれを導入する;
2)膜製造の工程1または2の間に被検物を膜混合物に加える;
3)イオンペアの製造後形成:電極を被検物溶液(たとえば30mg/900mlダポケチューン(dapoxetune)/0.1MHCl)に直接接触させることでイオンペアを形成する。この方法の間、被検物を溶液から抽出し電極に入れ、イオンペアをその場で形成する。この方法にかかる時間は典型的には5時間までである。
【0188】
溶解試験への適用における寿命
実験データによれば、溶解試験への適用における電極の寿命は〜6ヶ月と推定される。
【0189】
1d.電極の製造(別のD)
複合体の別の製造。均一な複合体はつぎの方法で得ることができる。
1)黒鉛60%と高分子量PVC40%のTHF懸濁液(固形/THF 1/3比)を混合と攪拌により調製する。
2)この混合物を蒸留水中に投入し沈殿させる。
3)沈殿物をブレンドすることによりサイズを減らす。
4)沈殿物を濾過し乾燥する。
5)乾燥された残渣をIRペレットプレス(3トン)によりペレットに圧縮する。
6)複合体ペレットをPVCチューブに固定し、銅線を挿入する。
膜の配置および傾斜の形成は前述の方法(実施例1b、1c)と同じである。
【0190】
1e.電極の作製(別のE)
ポリ(ブチルアクリレート)膜電極において、電極の構成でPVCおよび可塑剤をポリ(ブチルアクリレート)で置き換えることができる。この置き換えは部分的、すなわちPVCおよびDOSをポリ(ブチルアクリレート)膜および傾斜構成)で置き換え、または、完全に、すなわち全PVC(絶縁体は除く)をポリ(ブチルアクリレート)で置き換えることができる。
【0191】
最初のケースでは、電極の構成は、60%黒鉛、40%PVC/傾斜/98%ポリ(ブチルアクリレート)、2%イオンおよびイオノフォアである。
【0192】
2つ目のケースでは、電極の構成は、60%黒鉛、40%ポリ(ブチルアクリレート)/傾斜/ポリ(ブチルアクリレート)、2%イオンおよびイオノフォアである。
【0193】
ポリ(ブチルアクリレート)複合体は、非ポリ(ブチルアクリレート)膜、たとえばPVC/DOS用のベースとして使用しうる。このケースでは、電極の組成は、60%黒鉛、40%ポリ(ブチルアクリレート)/傾斜/65%DOS、32%PVC、2%イオンおよびイオノフォアである。
*注:60%黒鉛40%ポリ(ブチルアクリレート)はポリマーベースの膜の取り付け用の理想的な自己貼付ベースである。
【0194】
ポリ(ブチルアクリレート)は架橋ポリ(ブチルアクリレート)で置き換えることができ、架橋は全成分を混合した後そして傾斜を創造した後に開始される。
【0195】
1f.電極の作製(別のF)
ポリシロキサン膜電極はつぎのように構築されている。
1)図1に概略的に描かれているように電気的連結部(銅線)が固定されている中空ガラスチューブにペーストを入れる。
このペーストは、
60%黒鉛(1〜2ミクロン)30%PVC、または
60%黒鉛(1〜2ミクロン)30%ポリシロキサン、または
60%黒鉛(1〜2ミクロン)30%DC200シリコーンオイル
よりなる。
2)この層にポリシロキサンを記載のように塗布する:
ベースおよび硬化剤を混合し、〜2%TCPBおよび/またはイオノフォアを加える。傾斜をより一層延ばすために、この混合物をTHFに溶解する。典型的には、混合物/THFが2/1比で塗布する。
【0196】
混合物(THFはあってもなくてもよい)は工程1)のペースト上に塗布される。構造体は真空により脱気される。電極は150〜200℃に加熱される。温度はベース/硬化剤の比に依存する。水和後機能的電極を得ることになる。
【0197】
イオンペアは、上記(実施例1c)のように導入されるか、または被検物を含有する有機溶剤中で膨潤させることにより導入させることができる。好ましい溶剤はTHFまたはDOSである。
【0198】
ポリシロキサンの性質は、DOSまたは他の可塑剤の導入により転換させうる。用いるシリコンはシルガード 184 ダウ コーニングである。
【0199】
1g.電極の作製(別のG)
1)黒鉛60%と高分子量PVC40%のTHF懸濁液(固形/THF 1/3比)を混合と攪拌により調製する。
2)この混合物を蒸留水中に投入し沈殿させる。
3)沈殿物をブレンドすることによりサイズを減らす。
4)沈殿物を濾過し乾燥する。
5)乾燥された残渣をIRペレットプレス(3トン)によりペレットに圧縮する。
6)複合体ペレットをPVCチューブに固定し、銅線を挿入する。
7)65%DOS、32%PVCおよび2%TCPBを100mg量となるように混合する。
8)この混合物を1mlTHFに溶解する。
9)1滴(25μl)をシリンダーに溜める。
10)THFを室温で蒸発させる(〜5分)。
11)工程3と4を少なくとも3回(合計)繰り返す。
12)工程1〜11を繰り返して第2の構成要素を作製する。
13)傾斜ポリマーの両方の膜面を溶剤(THF)により一緒に貼り付ける。
【0200】
2.化合物1〜10の合成
【0201】
化合物1と2:
トリス(2−アミノメチル)アミンを3当量のオクタデシルイソシアネートまたはフェニルイソシアネートのクロロホルム溶液と室温で混合した。激しい発熱反応の後、混合物を還流下に3時間加熱し、室温に冷却し、濾過し、クロロホルムで洗浄し、乾燥した。
1の収率:87%、2−93%。LSIMS(NBA):1−1032(M+H)、2−504(M+H)
【0202】
化合物3:
2,6−ジアミノピリジンを温かいシクロヘキサンに溶かし透明溶液を得た。この熱い溶液に1当量のオクタデシルイソシアネートをゆっくりと加えた。1置換生成物を反応過程で沈殿させ、生成物が2置換されるのを妨げた。冷却の後、白色の生成物を濾過し、シクロヘキサンで洗浄し、減圧下に乾燥した。
収率 定量的。LSIMS(NBA):405(M+H)
【0203】
化合物4:
2,6−ジアミノピリジンを温かいクロロホルムに溶かし透明溶液を得た。この熱い溶液に2当量のオクタデシルイソシアネートをゆっくりと加えた。2置換生成物を反応過程で沈殿させた。冷却の後、2倍量のヘキサンを加えて化合物を沈殿させた。白色の生成物を濾過し、ヘキサンで洗浄し、減圧下に乾燥した。
収率 95%。LSIMS(NBA):700(M+H)
【0204】
化合物5:
2級アミノ基をもつヘキサアザ化合物をパウエル、T.F.(Pauwels, T. F.) ;リペンス、W.(Lippens, W.); ヘルマン、G.G.(Herman, G. G.); ゲーミン、A.M.(Goeminne, A. M.)ポリヘドロン(Polyhedron)1998, 17, 1715-23,およびメニフ、R.(Menif, R.);マーテル、A.E.(Martell, A. E.)ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティ−ケミカル コミュニケーションズ(Journal of the Chemical Society-Chemical Communications)1989,1521-23に記載されているように合成した。そのN−ヘキサオクチル誘導体を次のようにして得た:ヘキサ−アザ化合物(0.40g、0.62mmol)の塩酸塩とKCO(5g)の200mlドライアセトニトリル溶液を窒素ブランケット下に24時間攪拌した。n−オクチルブロマイド(0.78g、4mmol)の50mlドライアセトニトリル溶液を攪拌している溶液中に滴下した。テトラブチルアンモニウムイオダイド(0.15g)の触媒量を加え、混合物を2日間還流した。溶剤を真空下に除去して茶色がかったオイルを得。これに水酸化ナトリウム溶液(pH=12)100mlおよびクロロホルム100mlを加えた。水相をクロロホルム100mlづつの追加で数回抽出した。クロロホルム層を集め、無水KCO上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。得られたオイルを、クロロホルム−エタノール(80:20)溶離液を用いてカラムクロマトグラフィにより精製し、溶離液を蒸発させることにより黄色のオイルを得た(201mg、収率30%)。
1 H-NMR(CDCl3):δ 0.81 (t, 18 H), 1.18-1.36 (m, 72 H), 2.28-2.39 (m, 28 H), 3.36 (s, 8 H), 7.07-7.13 (m, 8 H).
【0205】
化合物6と7:
これらの化合物の合成は、Jarzebinska, A. ; Pietraszkiewicz, M.; Bilewicz, R. Materials Science & Engineering C-Biomimetic and Supramolecular Systems 2001, 18, 61-64に記載されていた。化合物8、9および10はアルゴン雰囲気下で合成した。
【0206】
化合物8:
出発ヘキサアミン(化合物6でR=R1=Hの構造。図11)をPietraszkiewicz, M. ; Gasiorowski, R. Chemische Berichte 1990, 123, 405-06に記載の手順で合成した。ヘキサアミン(1当量)とアクリルニトリル(12当量)の溶液を40℃にて6時間攪拌した。蒸発の後、白色固体を得た。ついでシアノ基をTHF中のLiAlH(6当量)によりアルゴン下に還流して還元した。5時間後、過剰のLiAlHを10%NaOH水溶液でクエンチした。単離され乾燥された化合物を高められた温度でドライTHF中にてオクタデシルイソシアネート(6当量)と混合した。攪拌を3時間続け、溶剤を蒸発させた。MeOHを加え、形成された固体を濾過し、メタノールで洗浄し、真空下で乾燥した。
MALDI−TOF MS:2547(M
【0207】
化合物9:
マクロサイクリックヘキサアミン(その合成はPietraszkiewicz, M. ; Gasiorowski, R. Chemische Berichte 1990,123, 405-06)に記載されている)に基づくデンドリマー(dendrimer)の最初の生成物に対してオクタデシルイソシアネート(12当量)を加えた。混合物を高められた温度で48時間攪拌し続けた。得られた茶色の固体を温かいEtOHで3回洗浄した。冷却後、固体を溶液から沈殿させた。ついで、生成物を濾過し、真空下で乾燥した。
MALDI−TOF MS:5138.0(M
【0208】
化合物10:
還流しているTHF中で迅速に攪拌されているヘキサアミン(上記)4gの混合物に、コハク酸無水物(1g)を加えた。還流と攪拌を2時間続けた。コハク酸アミド誘導体を濾過し、冷たいTHFで洗浄し、乾燥した。固体を化合物8における前記と同様にして還元した。還元後、固体を30%水性ホルムアルデヒド(40ml)および蟻酸(30ml)と混合し、還流下に6時間加熱した。水と酸を蒸発させ、生成物を真空下に乾燥した。つぎの工程でその化合物をTHFに溶解し、オクタデシルイソシアネート(1当量)と高められた温度で6時間攪拌した。THFを蒸発させた後、固体を真空下に乾燥した。MALDI−TOF MS:904.6(M);MS(ES):904.7(M
【0209】
4.装置
液体クロマトグラフィは、Spectra Physics 8810定組成ポンプ、Valcoインジェクタ(10μLループ)、逆相Lichrospher 100-5 RP-8(メルク)が充填された125×4mmのカラム、溶離液1mMのHPOを用いて行なった。流速は0.5mL min−1であった。カラムの出口をフローセル内の被覆線電極の感知性膜を横切るように向かせた(Zielinska, D. ; Poels, I. ; Pietraszkiewicz, M. ; Radecki, J. ; Geise, H. J. ; Nagels, L. J. Journal of Chromatography A 2001,915, 25-33)。LCチュービング出口から電極までの距離は100μmであった。膜の電位は、高インピーダンス(1013Ω)増幅器を用いOrion800500Ross(登録商標)参照電極に対して測定した。検出信号は、Thermo Separation Products製のPC1000データ収集システムに記録した。
【0210】
5.有機酸の電位差検出
7つの酸(ほとんどジカルボン酸)を試験物質として用いた。これらの酸は自然界、そして食物/飲料工業に広く見出される。これらの酸はかなり親水性であり、ほとんど(−1)より低いlogP値をもつ(表1参照)。膜は、その成分の特性が親油性である場合には、親水性被検物を感知しない傾向がある。したがってどのようなイオノフォアホスト分子を選定するかが本質的である。イオノフォアと最も強い複合体を形成する分子は、もっとも高感度に検出される。
【0211】
図12:上部トレーシング:Lichrospher 100-5 RP8カラム(メルク)、125×4mm、溶離液1mMのHPO上で流速0.5mL min−1にての有機酸の分離。酒石酸(1、1×10−5M)、マロン酸(2、2×10−7M)、リンゴ酸(3、4×10−6M)、乳酸(4、1×10−4M)、クエン酸(5、1×10−5M)、フマル酸(6、2×10−5M)、コハク酸(7、2×10−5M)の混合物の10μLの注入。下部トレーシング:上部トレーシングと同じ条件、0.45μmフィルタで濾過後に市販のラガーピルズビール(lager pills beer)を注入。用いた電極被覆は33.8%PVC、66%o−NPOE、0.2%MTDDAClおよび1%リガンド3を含んでいた。
【0212】
全ての成分が非常に高感度に検出され、最も高い感度はマロン酸で得られた:120pgによりピークNo.2になる。この酸の検出限界は低ピコグラム領域である。下部トレーシングは、同じ条件において注入されたビールサンプル(ラガーピルズ、45μmフィルタ上で濾過した以外は清澄化せず、希釈なし、10μL注入)のクロマトグラムを示す。酒石酸(1)および乳酸(4)が同定できた。
【0213】
図13は、リガンド9およびTOTMを組み入れた被覆線電極を用いて記録されたHPLCクロマトグラムを示す。樹状型の化合物9を尿素単位でしっかり充填する。注入された濃度:1×10−5M、ピーク同定:(1)酒石酸、(2)マロン酸、(3)リンゴ酸、(4)乳酸、(5)クエン酸、(6)フマル酸、(7)コハク酸。
【0214】
化合物9に基づく電極は感度に劣るが、クエン酸に対しては好ましい(図13のクロマトグラム中のピーク5)。
【0215】
図14は、リガンド10および可塑剤としてTOPを組み入れた被覆線電極を用いて得られたクロマトグラムを示す。化合物10のケースでは、ただ1つカルバモイル基だけに利用できる。トレースA)注入された濃度:1×10−5M、ピーク同定:(1)酒石酸、(2)マロン酸、(3)リンゴ酸、(4)クエン酸、(5)フマル酸、(6)コハク酸。トレースB)注入された濃度およびピーク同定:(1)5×10−4M酒石酸、(2)2×10−4Mマロン酸、(3)2×10−4Mリンゴ酸、(4)5×10−3M乳酸、(5)5×10−4Mクエン酸、(6)5×10−6Mフマル酸、(7)5×10−4Mコハク酸。この化合物に基づく電極は、フマル酸に対して非常に高感度である(図14)。
【0216】
実施例4に記載したクロマトグラフィのシステムを用い、電位差検出器中で種々のイオノフォアを用いて得られた7つの有機酸の検出限界(pmol注入)を表1に列記する。
【0217】
【表1】

表1:7有機酸に対する電極の検出限界(pmol注入)
【0218】
静電的相互作用のみが起こる4級塩MTDDAClを組み込んだ電極で得られたデータを比較してみると、明らかに化合物由来の特別な相互作用によって膜は一層高感度になっている。
【0219】
鎖が開いている尿素およびマクロ環化合物8で修飾した膜で検出したマロン酸(1〜4)に対する検出限界は1pgまで下がっている(表1参照)。これはMTDDAClベースの電極より2桁低い。他の酸も全て注入濃度が4×10−6から2×10−5Mへと変化するところで高感度に検出された。
【0220】
アルキル鎖を持つヘキサアミンイオノフォア(図11化合物5〜7)での検出限界は、MTDDAClベース電極と比較すると、7つの酸のうち4つ(酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、クエン酸)について劇的に低下し、マロン酸についてはもっとも劇的な低下を示している。親油性アルキル鎖をもつ全てのアザマクロ環(azamacrocycles)は、マクロ環空間の大きさに関係なく(化合物5〜7)、極めて類似した選択性および検出限界を示している。
【0221】
マロン酸はモノアニオンとして、静電気的にまた水素結合によりイオノフォアと相互作用し得る(Menif, R. ; Martell, A. E. Journal of the Chemical Society-Chemical Communications 1989,1521-23)。さらに、この酸は他の被検物よりも親水性ではない(フマル酸を除く)。
【0222】
化合物10ではフマル酸で最高の結果が観察される(図14参照)が、他の酸の検出レベルはMTDDAClでのそれよりも悪い。化合物10ではそのただ1つの大きな親油性尾部に官能基が付いている。おそらく、マクロ環単位は膜−水界面には存在しない。その結果、界面での酸と化合物との静電気的な相互作用が減少していると思われる。
【0223】
一般的に検出限界は、マロン酸(もっとも検出された)<クエン酸、リンゴ酸および酒石酸<フマル酸およびコハク酸<乳酸の順であった。もっとも高感度に検出される酸であるマロン酸に対して得られる検出限界は1pmol(注入濃度)という低さである。これはかなり高感度であるが、これはlogP値が高い塩基性薬剤(たとえば4.03、3.24および2.91のlogPをそれぞれ有するブロムヘキシン(bromhexine)、アムブロキソール(ambroxol)およびクレンブテロール(clembuterol))をHPLC/電位差検出で得られる検出限界を更に100倍上回る。
【0224】
6.検量線
図15は、オクタアザシクロサイクル化合物(化合物7)からなる電極を用いて3つの酸に対して得られた検量線を示す。バッチ方式では、電位差検出器が常に検量線の一部に使われており、そこでは信号(mV)がlog(Canalyte)と線形に相関している。図15からの検量線は、信号(ピーク高または面積)と被検物濃度の間の直線的な相関を示している。
【0225】
マロン酸での相関係数は高く、すなわちp=0.99999(n=5)であり、また表1に列記した他の酸での相関係数は少なくとも0.97(n=4)である(図15には全てのデータをプロットしているわけではない)。旧来の電位差方法をHPLC条件で使用する場合には、状況への適応が多少必要になる。継続的に信号をモニターする電位差センサーを用いる場合には、検量線の低濃度部分が使用可能である。検量線のこの部分において注入濃度とピーク面積(またはピーク高さ)の間の直線的な関係が理論的に予測される(De Backer, B. L.; Nagels, L. J. Analytical Chemistry 1996,68, 4441-45)。表1の全ての酸に対して、1〜100pM領域でこの直線性が得られた。
【0226】
7.電極の長期間の安定性。
アザマクロ環化合物5と7を含む電極は少なくとも3ヶ月という操作寿命(クロマトグラフ条件での連続使用)をもっていた。これら化合物の計算された高logP値はそれぞれ20.6および16.7であった。logPが9.18という明らかに低いアザマクロ環化合物6を含む電極では、操作寿命が減少し数週間であった。イオノフォア含有電極が水溶液に暴露される場合に30×24(日数)×(時間)という寿命をもつために必要な最小の親油性logPは、一般的に10程度と推定される。鎖が開かれている尿素化合物1〜4を含む電極もまた、2週間というオーダーの操作寿命をもっていた。化合物1〜4のlogP値は、それぞれ25.4、10.1、9.6および18.6である。
【0227】
10個の合成リガンドを、カルボン酸に応答する電極膜中のイオノフォアとして試験し比較した。これらのリガンドは全てジカルボン酸およびトリカルボン酸のHPLC測定での検出限界を大きく改善した(MTDDAClと比較して)。最も高い感度は鎖が開かれている尿素化合物3で得られた。化合物7は長い操作寿命と高い感度を併有している。
【0228】
8.薬剤中薬物の「溶解試験」における適用
薬剤活性成分(API)の投与形態からの溶解速度の測定は、製薬工業において重要な品質指標試験である。電位差センサーはこの点で非常に有用であり得る。旧来のUV検出システムでは測定濃度範囲が極めて限られており、すなわちUV検出器が有用となる濃度直線範囲には限界がある(0〜2吸収単位)。UV検出器の応答は溶解している物質の濃度に直線的に相関するので、UV検出器からの出力信号は飽和する。しかし電位差センサーでは、センサーの応答が濃度の対数に依存するという利点がある。したがってこれは、もし低濃度側で良好な信号が得られるならば、センサー出力電圧は飽和しないので、非常に高い濃度でもモニターできるということを意味する。そうした挙動は図16で見ることができる。さらに、分光学的方法の使用を制限する要因、例えばフローセルの寸法、濁度、ならびに不溶粒子や気泡の存在、といった影響を電位差センサーは蒙らない。
【0229】
0.001MのHCl100ml中にガランタミン(galantamine)(「レミニルCR(reminyl CR)」と記されたカプセル中の球状粒子)8mgを溶解し、本発明の電位差電極でモニターした。HCl溶液を磁気攪拌棒で連続的に攪拌した。図17において、曲線Bは電位差センサーの出力信号を示す。この信号を、同じくHCl溶液中に懸架した参照電極を参照してモニターした。曲線Aは、図16から平滑化されたデータを用いて曲線Bから算出した。濃度対塩基性薬剤ガランタミンの時間的挙動が示されている。用いた電極には、PVC、イオノフォアとしてテトラ(p−クロロ)フェニルボレート(TCPB)および可塑剤としてDOSが含まれていた。
【0230】
観察された応答プロフィールは、溶解挙動を良好に描写している。本発明の電位差電極はまた、被覆線型の電極を傷める媒体(たとえば洗剤を含む媒体)中での測定も可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】本発明の電位差電極の一例。
【図2】本発明の電位差電極の一例。
【図3】連続的傾斜ポリマーであるが分布と粒径が不均一なためによるノイズを伴うポリマーの例(a、bおよびc)。
【図4】不連続的傾斜ポリマーの例(a、bおよびc)。
【図5】電極の傾斜ポリマー内における絶縁部(左)から膜(右)への成分の傾斜、ここでAはPVC、BはDOSおよびCはイオノフォアおよびイオンである。
【図6】電極の傾斜ポリマー内における導電性複合体(左)から膜(右)への成分の傾斜、ここでAは黒鉛、BはPVC、CはDOSおよびDはイオノフォアおよびイオンである。
【図7】電極の断面の反射型顕微鏡写真。
【図8】30mg/lのダポキセチン(dapoxetine)溶液中での電極の37℃約7日間に亘るドリフト。
【図9】2側面型センサーの傾斜ポリマー中での黒鉛濃度。
【図10A】本発明のフローセルの例。
【図10B】本発明のフローセルの例。
【図11−1】本発明における好適なイオノフォアの例であって、化合物11:カリックス[6]アレン(calix[6]arene)、化合物12:カリックス[4]アレン(calix[4]arene)、化合物13:バリノマイシン(valinomycin)、化合物14:ノナクチン(nonactin)、化合物15:アミンイオノフォアI、化合物16:ジベンゾ−18−クラウン−6、化合物17:ジベンゾ−24−クラウン−8、化合物18:ジベンゾ−30クラウン−10、化合物19:シクロデキストリン、化合物20:ホスホリル誘導体および化合物21(クラウンエーテル)。
【図11−2】本発明における好適なイオノフォアの例であって、化合物11:カリックス[6]アレン(calix[6]arene)、化合物12:カリックス[4]アレン(calix[4]arene)、化合物13:バリノマイシン(valinomycin)、化合物14:ノナクチン(nonactin)、化合物15:アミンイオノフォアI、化合物16:ジベンゾ−18−クラウン−6、化合物17:ジベンゾ−24−クラウン−8、化合物18:ジベンゾ−30クラウン−10、化合物19:シクロデキストリン、化合物20:ホスホリル誘導体および化合物21(クラウンエーテル)。
【図11−3】本発明における好適なイオノフォアの例であって、化合物11:カリックス[6]アレン(calix[6]arene)、化合物12:カリックス[4]アレン(calix[4]arene)、化合物13:バリノマイシン(valinomycin)、化合物14:ノナクチン(nonactin)、化合物15:アミンイオノフォアI、化合物16:ジベンゾ−18−クラウン−6、化合物17:ジベンゾ−24−クラウン−8、化合物18:ジベンゾ−30クラウン−10、化合物19:シクロデキストリン、化合物20:ホスホリル誘導体および化合物21(クラウンエーテル)。
【図11−4】本発明における好適なイオノフォアの例であって、化合物11:カリックス[6]アレン(calix[6]arene)、化合物12:カリックス[4]アレン(calix[4]arene)、化合物13:バリノマイシン(valinomycin)、化合物14:ノナクチン(nonactin)、化合物15:アミンイオノフォアI、化合物16:ジベンゾ−18−クラウン−6、化合物17:ジベンゾ−24−クラウン−8、化合物18:ジベンゾ−30クラウン−10、化合物19:シクロデキストリン、化合物20:ホスホリル誘導体および化合物21(クラウンエーテル)。
【図12】化合物3に基づく本発明の電極を用いて得られたHPLCのトレース。上側のトレースは表1中の酸の混合物のクロマトグラムを示す。下側のトレースは注入したビールサンプルのクロマトグラムを表す。
【図13】表1に従った酸の混合物をサンプルとして用いて化合物9に基づく電極で記録したHPLCクロマトグラム。
【図14】表1に従った酸の混合物をサンプルとして用いて化合物10に基づく電極で記録したHPLCクロマトグラム(AおよびB)。
【図15】化合物7を含む電極を用いてHPLC条件における3つの酸のために得られた検量線。
【図16】バッチ条件における濃度に対する本発明の電極の対数的応答を示す曲線。
【図17】本発明の電位差電極を使用してガランタミン(galantamine)のHClへの溶解をモニタリング。
【符号の説明】
【0232】
1 シリンダー(ポリマー材料)
2 電気的連結部
3 導電性粒子
4 イオノフォア
5 ハウジング(絶縁体)
6 傾斜
7 傾斜
8 サンプル接触端
9 電位差電極
10 導電性複合体(ポリマー材料)
11 膜領域(ポリマー材料)
12 遷移領域
13 参照電極
15 噴霧装置
16 溶離液
17 フローセル
18 HPLCカラム
19 取り入れ口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の被検物を選択的に検出する電位差電極であって、
−サンプル接触表面から遠ざかるに従って濃度が高くなる導電性粒子、
−サンプル接触表面に向かうに従って濃度が高くなるイオノフォア分子、および
−該導電性粒子に近接して通る電気的連結部
を含むポリマー材料製の感知体を含む電極。
【請求項2】
前記ポリマー材料が、ポリ(n−ブチルアクリレート)(poly(n−butylacrylate))、ポリ(ブチルアクリレート)(poly(butylacrylate))、架橋されたポリ(ブチルアクリレート)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリ(塩化ビニル−コ−ビニルアセテート−コ−ビニルアルコール)(poly(vinylchloride−co−vinylacetate−co−vinylalchol))、ポリシロキサン(polysiloxane)、DC200シリコーンオイル、ポリ塩化ビニル、または高分子量ポリ塩化ビニルの1種以上を含む請求項1記載の電位差電極。
【請求項3】
前記導電性粒子が、直径1〜2μmのカーボン粉末、黒鉛粉末、人造黒鉛粉末のいずれかである請求項1または2記載の電位差電極。
【請求項4】
前記導電性粒子が、電気的に重合された材料、酸化ポリピロールおよびその誘導体、酸化ポリチオフェン、ポリアニリン、貴金属類、金または白金のいずれかである請求項1または2記載の電位差電極。
【請求項5】
前記イオノフォア分子が、図11中の化合物1〜10よりなる群から選ばれた1種以上である請求項1または4記載の電位差電極。
【請求項6】
前記イオノフォア分子が、テトラ(p−クロロ)フェニルボレート(tetra(p−chloro)phenylborate)、メチルトリドデシルアンモニウムクロライド(methyltridodecylammoniumchloride)および図11中の化合物11〜21よりなる群から選ばれた1種以上である請求項1〜4のいずれかに記載の電位差電極。
【請求項7】
前記ポリマー材料が、少なくともその一部がハウジング中に封入されている請求項1〜6のいずれかに記載の電位差電極。
【請求項8】
可塑剤を含んでいるポリマー材料が、イオノフォア分子を含んでいるポリマー材料の領域に残りのポリマー材料よりも多く配置されている請求項1〜7のいずれかに記載の電位差電極。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の電位差電極の作製方法であって、
(a)ポリマーの溶剤溶液中に導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b)その中に導電体を挿入する工程、
(c)該懸濁液を乾燥することによって、導電性粒子との固体状複合体ポリマーを形成する工程、
(d)該工程(c)の複合体の表面に、ポリマー材料、導電性粒子およびイオノフォア分子の溶液を加える工程、
(e)その混合物を乾燥する工程、
(f)導電性粒子の濃度を減少させながら、かつイオノフォア分子の濃度を増大させながら工程(d)と(e)を繰り返す工程、および
(g)電位差電極を得る工程
を含む。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の電位差電極の作製方法であって、
(a)ポリマーの溶剤溶液中に導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b)その中に導電体を挿入する工程、
(c)該懸濁液を乾燥することによって、導電性粒子を有する固体状複合体ポリマーを形成する工程、
(d1)該粒子/ポリマー複合体の表面に、ポリマー材料およびイオノフォアの溶液を加える工程、
(e1)その混合物を乾燥する工程、
(f1)工程(d1)と(e1)を繰り返す工程、および
(g1)複合傾斜特性を持ち界面を持たない電位差電極を得る工程
を含む方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の電位差電極の作製方法であって、
(a1)ポリマーの溶剤溶液中に導電性粒子の懸濁液を調製する工程、
(b1)該懸濁液を蒸留水中に注入し沈殿物を形成する工程、
(b2)該沈殿物のサイズを小さくして残渣を形成する工程、
(c1)加圧して該残渣を乾燥し導電性粒子/ポリマーの複合体を形成する工程
を含み、ついで請求項9および10に記載の工程(d)〜(g)または(d1)〜(g1)を行う方法。
【請求項12】
前記ポリマーに対する前記導電性粒子の比率(w/w)が20〜90%導電性粒子の範囲である請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記導電性粒子が、直径1〜2μmのカーボン粉末、黒鉛粉末、人造黒鉛粉末のいずれかである請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記導電性粒子が、電気的に重合された材料、酸化ポリピロールおよびその誘導体、酸化ポリチオフェン、ポリアニリン、貴金属類、金または白金のいずれかである請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー材料が、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ(塩化ビニル−コ−ビニルアセテート−コ−ビニルアルコール)、ポリシロキサン、DC200シリコーンオイル、または高分子量ポリ塩化ビニル(PVC)の1種以上である請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(a)または(a1)の懸濁液における溶剤に対する固形分(導電性粒子およびポリマー)の割合(w/v)が1:(1〜10)である請求項9〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(a)または(a1)の溶剤が、DMSO、111トリクロロエタン、CCl、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドのいずれかである請求項9〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(d)または(d1)の溶剤が、DMSO、111トリクロロエタン、CCl、N,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドおよびTHFのいずれかである請求項9〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記イオノフォア分子が、図11中の化合物1〜10よりなる群から選ばれた1種以上である請求項9〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記イオノフォア分子が、テトラ(p−クロロ)フェニルボレート、メチルトリドデシルアンモニウムクロライドおよび図11中の化合物11〜21よりなる群から選ばれた1種以上である請求項9〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
工程(d)または(d1)におけるポリマーが、室温以下においてゴム相であるいずれかのポリマーである請求項9〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
工程(d)または(d1)におけるポリマーがポリ(ブチルアクリレート)である請求項21記載の方法。
【請求項23】
工程(d)または(d1)における固形分(ポリマーおよびイオノフォア)の組成が85〜99%ポリマーを含む請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
工程(d)または(d1)における固形分(ポリマーおよびイオノフォア)の組成が0.1〜3%イオノフォアを含む請求項21〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
工程(d)または(d1)において溶剤に対する固形分(ポリマーおよびイオノフォア)の比(w/v)が1:(8〜12)である請求項22〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
工程(d)または(d1)の溶液がさらに可塑剤を含む請求項9〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
工程(d)または(d1)において、膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の組成が55〜75%可塑剤を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記可塑剤が、o−ニトロフェニルオクチルエーテル(o−nitrophenyl octyl ether)、セバシン酸ジオクチル(dioctyl sebacate)、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(bis(2−ethylhexyl)phtalate)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(tris(2−ethylhexyl)phosphate)またはトリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート(tris(2−ethylhexyl)phosphate)のいずれかである請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
工程(d)または(d1)において、膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の組成が28〜38%ポリマーを含む請求項26〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
工程(d)または(d1)における膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の組成が0.1〜3%イオノフォアを含む請求項26〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
工程(d)または(d1)において溶剤に対する膜成分(可塑剤、ポリマーおよびイオノフォア)の比(w/v)が1:(8〜12)である請求項26〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
請求項1〜8のいずれかに記載の電位差電極の製造方法であって、
a3)−溶剤を伴っていてもいなくてもよい請求項9〜20の工程(a)または工程(a1)にて定義される導電性粒子の懸濁液、または
−溶剤を伴っていてもいなくてもよくかつポリマーがポリシロキサンである請求項9〜20の工程(a)または工程(a1)にて定義される導電性粒子の懸濁液、または
−溶剤を伴っていてもいなくてもよくかつポリマーがDC200シリコーンオイルである請求項9〜20の工程(a)または工程(a1)にて定義される導電性粒子の懸濁液
を含むペーストを調製する工程、
b3)その中に導電体を挿入する工程、
c3)該粒子/ポリマー複合体の表面に、塩基、硬化剤およびイオノフォアを含み任意に溶剤に溶解した混合物を加える工程、
d3)該構造体を脱ガスする工程、
e3)該構造体を加熱する工程、および
f3)複合傾斜特性を持ち界面を持たない電位差電極を得る工程
を含む方法。
【請求項33】
請求項9〜32のいずれかに記載の方法を用いて得られ得る電極。
【請求項34】
請求項1〜9および33のいずれかに記載の電位差電極を含むクロマトグラフィのフローセル。
【請求項35】
溶離液をサンプル接触表面に噴霧するノズルを含む請求項34記載のクロマトグラフィのフローセル。
【請求項36】
請求項1〜9および33のいずれかに記載の電位差電極を含むインライン溶解試験電極。
【請求項37】
2つの表面を含むポリマー材料から実質的に形成された傾斜ポリマーであって、該ポリマー材料が、
−1つの表面から遠ざかるに従い濃度が低くなる導電粒子、
−他方の表面から遠ざかるに従い濃度が低くなるイオノフォア分子
を含むポリマー。
【請求項38】
2つの表面を含むポリマー材料から実質的に形成された傾斜ポリマーであって、該ポリマー材料に含まれる導電粒子の濃度が両方の表面から遠ざかるに従い低くなるポリマー。
【請求項39】
前記ポリマーが請求項2で定義されるポリマーの1種以上を含む請求項37または38記載の傾斜ポリマー。
【請求項40】
前記ポリマーが請求項3または4で定義される導電性粒子の1種以上を含む請求項37〜39のいずれかに記載の傾斜ポリマー。
【請求項41】
前記ポリマーが請求項4で定義されるイオノフォアの1種以上を含む請求項37〜40のいずれかに記載の傾斜ポリマー。
【請求項42】
請求項9〜32のいずれかの方法において定義される工程を含み、1種以上の追加の導電体が組み入れられている請求項37〜41のいずれかに記載の傾斜ポリマーを製造する方法。
【請求項43】
請求項9〜32のいずれかの方法において定義される工程を含み、工程(d)および(d1)のイオノフォアが存在しない請求項34〜38のいずれかに記載の傾斜ポリマーを製造する方法。
【請求項44】
請求項9〜32のいずれかの方法において定義される工程を含み、さらに導電性粒子の濃度が最も低い表面で2つの傾斜ポリマーを接合する工程を含む傾斜ポリマーを製造する方法。
【請求項45】
請求項37〜41に記載の傾斜ポリマーを含む電池。
【請求項46】
請求項37〜41に記載の可変抵抗器傾斜ポリマー。
【請求項47】
請求項37〜41に記載の可変キャパシタ傾斜ポリマー。
【請求項48】
請求項37〜41に記載の感圧センサー傾斜ポリマー。
【請求項49】
請求項37〜41に記載の溶剤または親油性分子センサー傾斜ポリマー。
【請求項50】
請求項37〜41に記載の傾斜ポリマーの、被検物を感知するための使用。
【請求項51】
請求項1〜8または33のいずれかに記載の電位差電極の、薬物製剤からの薬物の溶解をインラインでモニターするための使用。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図11−4】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図10A】
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【図10B】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−534949(P2007−534949A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509961(P2007−509961)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004501
【国際公開番号】WO2005/103664
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(307020198)ユニバーシタット アントウェルペン (1)
【Fターム(参考)】