説明

電力ケーブル終端接続部の組立方法及び組立用工具

【課題】ゴム套管への電力ケーブルの挿入作業を容易化できるとともに、所望の特性を有する終端接続部を実現しうる電力ケーブル終端接続部の組立方法及び組立用工具を提供する。
【解決手段】電力ケーブル終端接続部を組み立てる際に、套管を長手方向に圧縮させた状態で保持しておき(第1工程)、この状態で套管内に電力ケーブルを挿入し(第2工程)、電力ケーブルの挿入が完了した後、套管の圧縮状態を解放する(第3工程)。
電力ケーブルの挿入時に套管が長手方向に伸張したり、撓曲したりするのを防止できるので、終端接続部の施工時の作業性、特に套管内に電力ケーブルを挿入するときの作業性が格段に向上される。また、電力ケーブルを装着することに伴いゴム套管が変形することはないので、終端接続部において所望の特性が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム套管内に電力ケーブルの端部を収容してなるゴム套管形の電力ケーブル終端接続部の組立方法及び組立用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)等の電力ケーブルと発電所等に配置される電力機器や架空送電線とを接続する際、電力ケーブルの終端部には、電力ケーブル気中終端接続部(以下、終端接続部)を使用した端末処理が施される。終端接続部のうち、特に電界緩和層を内蔵したゴム製の套管(以下、ゴム套管)を使用した終端接続部は、ゴム套管形終端接続部と呼ばれる。ゴム套管形終端接続部の基本構造は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
このゴム套管形終端接続部に使用されるゴム套管は、電界緩和層を内蔵した太径部と、太径部よりも外径が小さく外周面に襞が形成された細径部とを有している。ゴム套管の内径は、段剥ぎされた電力ケーブルの絶縁層の外径よりも小さく形成される。ゴム套管の太径部側の開口から段剥ぎされた電力ケーブルの先端部を挿入し、ゴム套管の内径を弾性変形により拡径させながら電力ケーブルを押し込むことにより、ゴム套管に電力ケーブルが密着状態で装着される。
この電力ケーブルの挿入作業を容易化できる技術として、組立用工具を利用してゴム套管を電力ケーブル側に向けて牽引する手法が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−159743号公報
【特許文献2】特開2009−171721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴム套管に電力ケーブルを装着する場合、ゴム套管の内径と電力ケーブルの絶縁層外径の組み合わせによっては、ゴム套管の拡径率(電力ケーブル装着前の套管内径に対する装着後の套管内径の比率)が大きく、ゴム套管と絶縁層との間に生じる摩擦力が非常に大きくなることがある。この場合、ゴム套管を電力ケーブル側に向けて非常に大きな力で牽引することとなる。
このとき、ゴム套管の太径部は長手方向に変形しにくいため、電力ケーブルを太径部に挿入する際には別段問題は生じない。しかしながら、ゴム套管の細径部は太径部に比較して長手方向に変形しやすく、電力ケーブルを細径部に挿入する際に、細径部(特に太径部近傍)が長手方向に伸びることがある。そして、ゴム套管の細径部が長手方向に変形すると、その状態で矯正することはできないため、ゴム套管を一旦抜き取って電力ケーブルを再挿入しなければならならず、ゴム套管を抜き取るための工具が必要なる上、施工時間も増大してしまう。また、ゴム套管内に電力ケーブルを挿入する際に、ゴム套管の細径部が撓曲すると、ゴム套管の貫通孔が変形して挿入抵抗が増大するため、電力ケーブルを挿入すること自体困難になる。さらに、ゴム套管の細径部が変形すると、作製した終端接続部の襞の間隔の乱れなどが生じ、放電特性(雷インパルス耐電圧特性など)も低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ゴム套管への電力ケーブルの挿入作業を容易化できるとともに、所望の特性を有する終端接続部を実現しうる電力ケーブル終端接続部の組立方法及び組立用工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、電力ケーブルの端部が、電気絶縁性の弾性材料からなる套管内に、密着状態で収容されてなる電力ケーブル気中終端接続部の組立方法であって、
前記套管を長手方向に圧縮させた状態で保持する第1工程と、
前記套管内に前記電力ケーブルを挿入する第2工程と、
前記電力ケーブルの挿入が完了した後、前記套管の圧縮状態を解放する第3工程と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、套管内に電力ケーブルを挿入する前に、予め套管を圧縮させた状態で保持しておくので、電力ケーブルの挿入時に套管が長手方向に伸張したり、撓曲したりするのを防止できる。また、套管を圧縮した状態で電力ケーブルを挿入した後、圧縮状態を解放することによって、所定の組立設計寸法が達成される。したがって、終端接続部の施工時の作業性、特に套管内に電力ケーブルを挿入するときの作業性が格段に向上される。また、電力ケーブルを装着することに伴いゴム套管が長手方向に変形することはないので、終端接続部において所望の特性が実現される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電力ケーブル気中終端接続部の組立方法において、前記套管が、電界の集中を緩和するための電界緩和層を内蔵した太径部と、この太径部よりも外径が小さい細径部を有し、
前記第1工程では、前記套管の前記細径部を圧縮させた状態で固定することを特徴とする。
この発明によれば、套管内に電力ケーブルを挿入する前に、予め套管の細径部を圧縮させた状態で保持しておくので、電力ケーブルの挿入時に可撓性の高い細径部が変形するのを効果的に防止できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電力ケーブル気中終端接続部の組立方法において、前記第1工程では、前記套管の直線性が保持されるように前記套管を圧縮することを特徴とする。
この発明によれば、電力ケーブルの挿入時に套管内に生じる面圧を、中心軸を中心とした放射状に分散させることができるので、電力ケーブルと套管との間に生じる摩擦力が低減されるとともに、套管を圧縮する際に套管が歪んで芯ずれが生じるのを防止できる。したがって、套管に電力ケーブルを装着する際の作業性がさらに容易化される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、電気絶縁性の弾性材料からなり、電界の集中を緩和するための電界緩和層を内蔵した太径部と、この太径部よりも外径が小さい細径部を有する套管内に、電力ケーブルの端部が密着状態で収容されてなる電力ケーブル気中終端接続部を組み立てる際に用いられる組立用工具であって、
前記太径部との境界となる前記細径部の一端に取り付けられる第1支持部材と、
前記細径部の他端に取り付けられる第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材を連結する連結部材と、
前記第1支持部材に接続され、前記電力ケーブルの挿入時に前記電力ケーブル側に牽引される牽引部材と、を備え、
前記連結部材が、前記細径部の長さよりも短いことを特徴とする。
この発明によれば、套管の細径部を容易に圧縮することができるので、上述した組立方法に係る発明を実現するのに有用である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の組立用工具において、前記套管の前記細径部が圧縮される際に当該套管の直線性を保持する直線性保持部材を備えることを特徴とする。
この発明によれば、套管の細径部を、直線性を保持しつつ容易に圧縮することができるので、上述した組立方法に係る発明を実現するのにさらに有用である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、套管内に電力ケーブルを挿入する前に、予め套管を圧縮させた状態で保持しておくので、電力ケーブルの挿入時に套管が長手方向に伸張したり、撓曲したりするのを防止できる。また、套管を圧縮した状態で電力ケーブルを挿入した後、圧縮状態を解放することによって、所定の組立状態になる。したがって、終端接続部の施工時の作業性、特に套管内に電力ケーブルを挿入するときの作業性が格段に向上される。また、電力ケーブルを装着することに伴いゴム套管が長手方向に変形することはないので、終端接続部において所望の特性が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の電力ケーブル気中終端接続部を示す部分断面図である。
【図2】終端接続部の組立方法の一例を示す図である。
【図3】套管の細径部の部分に設けられる組立用工具の具体例を示す斜視図である。
【図4】套管の細径部の部分に設けられる組立用工具の他の具体例を示す斜視図である。
【図5】套管の細径部の部分に設けられる組立用工具の他の具体例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した実施形態の一例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態の電力ケーブル気中終端接続部(以下、終端接続部)を示す部分断面図である。図1に示すように、終端接続部1は、電力ケーブル10の端部が、套管20に装着されて構成される。なお、図1には、電力ケーブル10の端部を套管20に装着する前の状態を示している。
【0015】
電力ケーブル10は、ゴム又はプラスチック絶縁の電力ケーブル(例えばCVケーブル)である。電力ケーブル10は、導体11、導体11の外周部に形成された絶縁層12、絶縁層12の外周に形成された外部半導電層13、外部半導電層13の外周に形成された遮蔽層(図示略)及びシース14等を有する。電力ケーブル10を套管20に装着する場合、電力ケーブル10の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。また、導体11の先端には、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる導電性の導体引出棒15が圧着されている。
【0016】
套管20は、シリコーンゴム等の電気絶縁性の弾性材料からなる筒状体(いわゆるゴム套管)であり、中心軸に沿って貫通孔23が形成されている。貫通孔23の内径は、装着される電力ケーブル10の絶縁層12の外径よりも小さく設計される。
套管20は、電力ケーブル10の挿入口24側から段階的に外径が拡径する太径部21と、太径部21よりも外径が小さい細径部22とを有する。
太径部21には、電界の集中を緩和するための電界緩和層(ストレスコーン)211が内蔵されている。電界緩和層211は、例えばシリコーンゴムにカーボンを添加した半導電性のシリコーンゴムにより構成され、套管20を成形する際に太径部21と一体的に形成される。
細径部22の外周面には、突出長の異なる傘状の襞部221,222が長手方向に離間して交互に形成されている。
【0017】
導体引出棒15が接続された電力ケーブル10を、套管20の太径部21側の開口(挿入口24)から挿入し押し込むと、套管20の内径が弾性変形により拡径され、電力ケーブル10に套管20が密着状態で装着された終端接続部1となる。
終端接続部1においては、電力ケーブル10の絶縁層12と外部半導電層13の境界付近が、太径部21の電界緩和層211に位置する。また、導体引出棒15の先端は、套管20の細径部22側の開口から外部に向けて突出しており、電力機器等と接続するための接続端子や接続リード等が配設される。
【0018】
図2は、終端接続部1の組立方法の一例を示す図である。
図2に沿って、まず、套管20に電力ケーブル10を装着して終端接続部1を組み立てる際、套管20を電力ケーブル10側に牽引するために用いる組立用工具30について説明する。組立用工具30を用いることにより、套管20の細径部22を容易に圧縮することができる。
【0019】
組立用工具30は、太径部21との境界となる細径部22の一端に取り付けられる第1支持部材31、細径部22の他端(套管20の先端)に取り付けられる第2支持部材32、第1支持部材31と第2支持部材32を連結する複数本の連結部材33、第1支持部材31に接続され、電力ケーブル10の挿入時に電力ケーブル10側に牽引される複数本の牽引部材34等で構成される。
【0020】
第1支持部材31は、略中央に套管20の太径部21と細径部22の境界に嵌合される貫通穴を有する金属製(例えばアルミニウム製)の板状部材であり、貫通穴の直径に沿って2つの部材に分割可能となっている。2つの部材は、例えばボルトによって締着される。套管20内に電力ケーブル10を挿入したとき、套管20が半径方向に弾性変形して膨らむため、第1支持部材31の貫通穴31aの内径は、套管20の取り付け部分の外径よりも若干大きく設計されている。
また、第1支持部材31の一方の面(細径部22側の面)には、連結部材33を接続するリング部材36が固着され、他方の面(太径部21側の面)には、牽引部材34を接続するリング部材35が固着されている。
套管20内に電力ケーブル10を挿入する際、第1支持部材31は、2分割可能になっており、套管20の太径部21と細径部22との境界部分を挟み込むように取り付けられる。
【0021】
第2支持部材32は、套管20の先端部を保持する円筒状の保持部32aが突出形成された金属製(例えばアルミニウム製)の板状部材である。套管20内に電力ケーブル10を挿入したとき、套管20が半径方向に弾性変形して膨らむため、第2支持部材32の保持部32aの内径は、套管20の先端部の外径よりも若干大きく設計されている。第2支持部材32の一方の面(細径部22側の面)には、連結部材33を接続するリング部材37が固着されている。
第2支持部材32の略中央には、キャップ部材39が嵌着される貫通穴32bが形成されている。キャップ部材39は、例えばゴム、テフロン(登録商標)又は繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)製の栓状部材であり、キャップ保持部材38に取り付けられている。第2支持部材32の保持部32aの形成面とは反対の面に、キャップ保持部材38を例えばボルトで締着することにより、キャップ部材39が第2支持部材32の貫通穴32bに嵌着される。これにより、第2支持部材32で套管20の先端部を押圧するとき、套管20の端面はキャップ部材39と面接触することとなるので、套管20の先端部が損傷するのを防止できる。
套管20内に電力ケーブル10を挿入する際、第2支持部材32の保持部32aに、套管20の先端部が遊嵌される。
【0022】
連結部材33は、電力ケーブル10を挿入するときの牽引力で伸びない(又は伸びが極めて小さい)線状部材であり、例えば、ナイロン製ロープ、ナイロン製ベルト、金属ワイヤ、金属チェーン、金属ベルト又は金属ロッドなどで形成されている。
套管20内に電力ケーブル10を挿入する際、連結部材33の一端は第1支持部材31に固着されたリング部材36に接続され、連結部材33の他端は第2支持部材32に固着されたリング部材37に接続される(図2(b)、(c))。この状態で連結部材33の長さは、套管20の細径部22の長さよりも短くなっている。すなわち、第1支持部材31と第2支持部材32との距離を、套管20がフリーな状態(図2(a))のときの距離よりも短く保つことができる長さに、連結部材33の長さは設定されている。なお、連結部材33は最初からこのような長さである必要は無く、連結部材33を伸縮可能に構成しておき、套管20内に電力ケーブル10を挿入する工程において、前記の長さにしても良い。
【0023】
牽引部材34は、その一端が第1支持部材31に固着されたリング部材35に接続されており、他端が牽引力発生装置(図示略)に接続されている。牽引部材34も、連結部材33と同様、ナイロン製ロープなどで形成できる。
なお、図2では省略しているが、套管20の細径部22を圧縮する際に細径部の直線性が保持されるように、直線性保持部材を設けることが望ましい。
【0024】
次に、終端接続部1の組立方法について、図2(a)〜(d)に従って説明する。
套管20に電力ケーブル10を装着する場合、作業者は、図2(a)に示すように、套管20の太径部21と細径部22との境界部分を挟み込むように第1支持部材31を取り付け、第1支持部材31に固着されたリング部材35に牽引部材34を接続する。また、第2支持部材32の保持部32aに套管20の先端部を挿嵌する。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、第2支持部材32を押圧して套管20の細径部22を長手方向に圧縮し、第1支持部材31と第2支持部材32を連結部材33で連結することにより、細径部22の圧縮状態を保持する。このように、細径部22を長さ方向に圧縮しておくことにより、套管20内に電力ケーブル10を挿入するときに細径部22が軸方向にあるいは左右不均一に伸ばされて変形するのを効果的に防止することができる。本発明者らが実際に行ったときは、圧縮前の長さ850mmの細径部22を圧縮して、長さ800〜770mm(元の長さの94〜90%)まで縮めた状態で電力ケーブル10を挿入した。
【0026】
ここで、套管20の細径部22を圧縮する際、套管20の直線性が保持されるようにするのが望ましい。套管20の直線性を保持することにより、套管20内に電力ケーブル10を挿入するときに套管20の内周面に生じる面圧を、中心軸を中心とした放射状に分散させることができるので、電力ケーブル10と套管20との間に生じる摩擦力が低減される。また、套管20を圧縮する際に套管20が歪んで芯ずれが生じるのを防止できる。したがって、套管20に電力ケーブル10を装着する際の作業性が容易化される。
【0027】
次に、図2(c)に示すように、第1支持部材31に接続された牽引部材34を、牽引力発生装置(図示略)で電力ケーブル10側に牽引し、套管20の内径を弾性変形により拡径させながら套管20内に電力ケーブル10を徐々に挿入する。導体引出棒15の先端が第2支持部材32に取り付けたキャップ部材39に当接したらこれを外して貫通穴32bを開き、導体引出棒15が套管20から突出するまで、挿入作業を行う。
このとき、套管20の細径部22は圧縮された状態、すなわち変形しにくい状態となっている。したがって、套管20が撓曲して挿入抵抗が増大するのを防止できるので、套管20内に電力ケーブル10を比較的容易に挿入することができる。また、套管20が長手方向に伸張するのを防止できるので、電力ケーブル10の再挿入作業が必要となることもなく、所望の特性を有する終端接続部1が実現される。
【0028】
なお、套管20と電力ケーブル10との界面で生じる摩擦力を低減するために、予め套管20の貫通孔23の内周面と電力ケーブル10の絶縁層12の外周面に、シリコーングリス等の潤滑剤を塗布しておくのが望ましい。
【0029】
そして、図2(d)に示すように、套管20への電力ケーブル10の挿入が完了した後、連結部材33を取り外して細径部22の圧縮状態を解放して終端接続部1が組み立てられる。具体的には、連結部材33を取り外しても、套管20と電力ケーブル10との間に生じる摩擦力により細径部22の圧縮状態は保持されているので、牽引部材34をさらに軽く牽引することで、細径部22を牽引方向に伸張させて、元の状態に復元させる。
組み立てられた終端接続部1においては、電力ケーブル10の絶縁層12と外部半導電層13の境界付近が、太径部21の電界緩和層211に位置することとなる。すなわち、套管20内に電力ケーブル10を挿入した後、圧縮状態を解放することによって、所定の組立設計寸法が達成される。
【0030】
このように、本実施形態では、終端接続部1を組み立てる際に、套管20を長手方向に圧縮させた状態で保持しておき(第1工程、図2(b)参照)、この状態で套管20内に電力ケーブル10を挿入し(第2工程、図2(c)参照)、電力ケーブル10の挿入が完了した後、套管20の圧縮状態を解放する(第3工程、図2(d)参照)。
【0031】
套管20内に電力ケーブル10を挿入する前に、予め套管20を圧縮させた状態で保持しておくので、電力ケーブル10の挿入時に套管20が長手方向に伸張したり、撓曲したりするのを防止できる。また、電力ケーブル10を挿入した後、套管20の圧縮状態を解放することによって、所定の組立状態になる。したがって、套管20が変形することにより、挿入抵抗が増大したり、電力ケーブル10の再挿入作業を余儀なくされたりすることもなく、套管20への電力ケーブル10の挿入作業が格段に容易化される。また、組み立てられた終端端接続部1の品質も向上する。
実際に、套管20の細径部22を圧縮しない状態で電力ケーブル10を挿入した場合(第1支持部材31だけを用いた1点把持工法)に比較して、細径部22を圧縮すると50%以下の牽引力で電力ケーブル10を挿入できた。例えば、導体サイズが1000sq〜1400sqという大サイズのケーブルを套管20に挿入したケースでは、1点把持工法では1000kgf以上でも挿入できなかったが、細径部22を圧縮する前記実施形態の工法では400〜500kgfで挿入できた。また、電力ケーブル10に装着された套管20の細径部22の変形が改善されている(襞部の間隔のバラツキが少ない)ことが確認されている。
【0032】
図3は、套管の細径部の部分に設けられる組立用工具の別の具体例を示す斜視図である。図3に示す組立用工具30Aでは、第1支持部材31と第2支持部材32を連結する連結部材33として、金属チェーンを用いている。
【0033】
また、組立用工具30Aは、套管20の細径部22が圧縮される際に、套管20の細径部22の外周全体を覆うことにより、套管20の直線性を保持する直線性保持部材40Aを備えている。直線性保持部材40Aは、例えばテフロンや繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)製の円筒状部材であり、套管20の細径部22を挿通可能な貫通孔を有している。貫通孔の内径は、細径部22の大きな鍔部221の外径より若干大きい寸法になっており、直線性保持部材40Aに套管20の細径部22を挿入したとき、細径部22が直線保持部材40Aにより外側から覆われてその直線性が保持されるようになっている。直線性保持部材40Aの長さは、金属チェーンと略同一である。
直線性保持部材40Aの一端は、第1支持部材31に形成された環状溝に嵌着され、他端は、第2支持部材32に形成された環状溝に嵌着される。この状態で、第1支持部材31と第2支持部材32が連結部材33によって連結されることにより、直線性保持部材40Aは脱落不能に保持される。
【0034】
図4は、套管の細径部の部分に設けられる組立用工具の他の具体例を示す斜視図である。図4に示す組立用工具30Bでは、第1支持部材31と第2支持部材32を連結する連結部材33として、金属ロッドを用いている。金属ロッドは、例えばボルトによって第1支持部材31及び第2支持部材32に締着される。この場合、図2におけるリング部材36,37は省略される。
【0035】
また、組立用工具30Bは、套管20の細径部22が圧縮される際に、套管20の細径部22を部分的に把持することにより、套管20の直線性を保持する直線性保持部材40Bを備えている。図4に示すように、直線性保持部材40Bは、例えば套管20の細径部22を長手方向に3等分した位置に配設される。
直線性保持部材40Bは、例えばテフロン、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)又は金属製のリング状部材であり、貫通穴の径方向に2つの部材に分割可能となっている。直線性保持部材40Bを構成する2つの部材は、套管20の細径部22に形成された襞部221,222の間を把持するように、2本の連結部材33、33間に懸架され、例えばボルトによって締着される。
【0036】
図5は、套管の細径部の部分に設けられる組立用工具の他の具体例を示す斜視図である。図5に示す組立用工具30Cでは、第1支持部材31と第2支持部材32を連結する連結部材33として、テフロンロッドを用いている。テフロンロッドは、例えばボルトによって第1支持部材31及び第2支持部材32に締着される。この場合、図2におけるリング部材36,37は省略される。
【0037】
また、組立用工具30Cは、套管20の細径部22が圧縮される際に、套管20の細径部22を部分的に把持することにより、套管20の直線性を保持する直線性保持部材40Cを備えている。図5に示すように、直線性保持部材40Cは、例えば套管20の細径部22を長手方向に3等分した位置に配設される。
直線性保持部材40Cは、例えばテフロンや繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)製のベルト部材であり、套管20の細径部22に形成された襞部221,222の間を把持するように、2本の連結部材33、33間に巻回される。
【0038】
図3〜5に示す組立用工具30A〜30Cを用いることにより、套管20の細径部22を直線性保持部材40A〜Cで外周側から支持し、直線性を保持しつつ容易に圧縮することができる。
【0039】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、実施形態では、套管20内に電力ケーブル10を挿入する際、可撓性の高い細径部22を圧縮させるようにしているが、套管20を全体的に圧縮するようにしてもよい。また、本発明を適用しうる套管の形状は、実施形態で示したものに制限されない。
【0040】
また例えば、終端接続部1の組立工程において、電力ケーブル10を挿入する際に、導体引出棒15の先端に牽引部材を接続し、牽引部材34の牽引方向とは逆方向に電力ケーブル10を牽引するようにすれば、套管20内への電力ケーブル10の挿入作業がさらに容易化される。この場合、キャップ部材39を取り外して、第2支持部材32の貫通穴32bを介して導体引出棒15の先端に接続した牽引部材を牽引することになる。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1 終端接続部
10 電力ケーブル
11 導体
12 絶縁層
13 外部半導電層
14 シース
15 導体引出棒
20 套管
21 太径部
211 電界緩和層
22 細径部
221,222 襞部
23 貫通孔
24 挿入口
30 組立用工具
31 第1支持部材
31a 貫通穴
32 第2支持部材
32a 保持部
32b 貫通穴
33 連結部材
34 牽引部材
35 リング部材
36 リング部材
37 リング部材
38 キャップ保持部材
39 キャップ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルの端部が、電気絶縁性の弾性材料からなる套管内に、密着状態で収容されてなる電力ケーブル気中終端接続部の組立方法であって、
前記套管を長手方向に圧縮させた状態で保持する第1工程と、
前記套管内に前記電力ケーブルを挿入する第2工程と、
前記電力ケーブルの挿入が完了した後、前記套管の圧縮状態を解放する第3工程と、を備えることを特徴とする電力ケーブル気中終端接続部の組立方法。
【請求項2】
前記套管が、電界の集中を緩和するための電界緩和層を内蔵した太径部と、この太径部よりも外径が小さい細径部を有し、
前記第1工程では、前記套管の前記細径部を圧縮させた状態で固定することを特徴とする請求項1に記載の電力ケーブル気中終端接続部の組立方法。
【請求項3】
前記第1工程では、前記套管の直線性が保持されるように前記套管を圧縮することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力ケーブル気中終端接続部の組立方法。
【請求項4】
電気絶縁性の弾性材料からなり、電界の集中を緩和するための電界緩和層を内蔵した太径部と、この太径部よりも外径が小さい細径部を有する套管内に、電力ケーブルの端部が密着状態で収容されてなる電力ケーブル気中終端接続部を組み立てる際に用いられる組立用工具であって、
前記太径部との境界となる前記細径部の一端に取り付けられる第1支持部材と、
前記細径部の他端に取り付けられる第2支持部材と、
前記第1支持部材と前記第2支持部材を連結する連結部材と、
前記第1支持部材に接続され、前記電力ケーブルの挿入時に前記電力ケーブル側に牽引される牽引部材と、を備え、
前記連結部材が、前記細径部の長さよりも短いことを特徴とする組立用工具。
【請求項5】
前記套管の前記細径部が圧縮される際に当該套管の直線性を保持する直線性保持部材を備えることを特徴とする請求項4に記載の組立用工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−105409(P2012−105409A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250472(P2010−250472)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】