説明

電力供給回路及び該回路を備えた機器

【課題】 デバイスや回路の電気的状態を判定する電力供給回路、及びその回路を備えた機器を提供する。
【解決手段】 デバイスへ電力供給を行う電力供給回路であって、前記デバイスへ電力を供給する電力供給ラインに接続されたコンデンサと、前記電力供給ラインへ第1電圧を供給する電圧を生成する第1電圧生成手段と、前記第1電圧より低い第2電圧を生成し、前記第2電圧を前記電力供給ラインへ供給する第2電圧生成手段と、前記第2電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力し、前記電力供給ラインの電圧と閾値電圧とを比較を行い、前記電力供給ラインの電圧が閾値電圧より高ければ前記第1電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力し、前記出力部の電圧が閾値電圧より低ければ前記第1電圧生成回路へ電圧生成の停止指示を出力する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給回路及び該回路を備えた機器に関するものであり、故障の検知を行う機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デバイスを駆動する機器において、デバイスの電気的状態や機器の状態を検知する技術がある。デバイスとして記録ヘッドを備える記録装置において、記録ヘッドの故障の有無を判定し、故障がある場合には記録装置の動作を停止してその旨を表示する構成について特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−62264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されている構成では、記録ヘッドの電圧を供給している電力供給回路や電源装置(例えば、DC/DCコンバータ)を起動し、記録ヘッドに電圧の供給を行って、故障の有無のチェックを実施している。しかし、この方法では、記録ヘッドに対して動作状態と同じ電圧レベルで検出を行うため、記録ヘッドや電力供給回路などが故障してしまう可能性がある。特に、DC/DCコンバータを少なくとも1度は起動させ、記録ヘッドが正常であることを前提として、予め定めた電圧を供給するシーケンスとなっている。したがって、回路や電源ラインに不具合があれば、回路内の各種素子に熱的ストレス、電気的ストレスを与えることになる。
【0005】
本発明は、安全にデバイスや回路の電気的状態を判定する電力供給回路、及びその回路を備えた機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の電力供給回路は、デバイスへ電力供給を行う電力供給回路であって、前記デバイスへ電力を供給する電力供給ラインに接続されたコンデンサと、前記電力供給ラインへ第1電圧を供給する電圧を生成する第1電圧生成手段と、前記第1電圧より低い第2電圧を生成し、前記第2電圧を前記電力供給ラインへ供給する第2電圧生成手段と、前記第2電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力し、前記電力供給ラインの電圧と閾値電圧とを比較を行い、前記電力供給ラインの電圧が閾値電圧より高ければ前記第1電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力し、前記出力部の電圧が閾値電圧より低ければ前記第1電圧生成回路へ電圧生成の停止指示を出力する制御を行う制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、デバイスや回路の素子に熱的ストレスや電気的ストレスを与えることなく、安全に回路の状態の判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態における電力供給回路を説明する図である。
【図2】第1の実施形態における電力供給の制御フローである。
【図3】第2の実施形態における電力供給回路を説明する図である。
【図4】第2の実施形態における電力供給の制御フローである。
【図5】第2の実施形態における制御信号及び生成電圧の状態を説明する図である。
【図6】第2の実施形態の充電特性を説明するための図である。
【図7】実施形態における記録装置の斜視図である。
【図8】従来の電力供給回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施の形態における電力供給回路(電力供給装置)を説明する図である。電力供給回路は、後述する第1電圧生成回路と第2電圧生成回路を備えている。電力供給回路は、入力端子Tinを介してAC/DC電源(交流電圧を直流電圧に変換する回路)1から32ボルトの直流電圧を入力し、出力端子Toutを介してデバイス2に直流電圧を出力する。電力供給線(電力供給ライン)VHを介して、電力供給装置からデバイス2へ電力が供給される。GNDは、グランド線(グランドライン)である。この電力供給線(電力供給ライン)にはコンデンサC102が接続されており、電力供給回路で生成される電荷を蓄積する。
【0010】
この実施形態では、機器の例として記録装置、デバイス2の例として記録ヘッドとする。コントロールユニット3は、ASICやCPUなどの集積回路、メモリなどで構成され機器の制御を行う。コントロールユニット3は、後述する制御信号を出力するための出力ポート、信号を入力するための入力ポートを備えている。電力供給回路を備える機器が記録装置であれば、記録ヘッドが備える記録素子を駆動するための制御を行う。また、電力供給回路を備える機器が画像入力装置であれば、読取部が備える光学素子やセンサの制御を行う。
【0011】
第1電圧生成回路は、PWM制御方式の降圧型DC/DCコンバータを備えている。第1電圧生成回路は、トランジスタ(スイッチ素子)Q101、ダイオードD101、コイルL101、コンデンサC102、スイッチ制御回路5を備えている。スイッチ制御回路5は、定電圧フィードバック制御を行う。第1電圧生成回路は、更に抵抗R101、R102を備えており、スイッチ制御回路5は、抵抗R101、R102で分圧した電圧を入力する。スイッチ制御回路5は、この入力した電圧と基準電圧と比較回路で比較を行い、トランジスタQ101をオン/オフする信号を出力する。この信号は、例えば、パルス幅が制御された信号(PWM信号)である。
【0012】
また、電力供給回路は、抵抗R9、R10を備えており、抵抗R9、R10によりVH電圧を分圧する。コントロールユニット3は、この分圧された電圧をVH_MONI信号として入力する。オンオフ回路11は、制御ユニット3から出力される制御信号を入力し、スイッチ制御回路5へロジック電圧Vccの供給の制御を行う。これにより、ロジック電圧Vccの供給の制御により、スイッチ制御回路5の動作の開始や停止の制御を行う。なお、スイッチ制御回路5の動作の開始や停止の制御を行うために、制御ユニット3が別の信号を出力する形態でも構わない。
【0013】
第1電圧生成回路は、AC/DC電源1から供給される32ボルトから21ボルトの電圧を生成する。スイッチ制御回路(PWM制御IC)5から出力される信号に基づいてトランジスタQ101がオン/オフする。
【0014】
第2電圧生成回路8は、入力端子Vinを介して入力した電圧に基づき、12ボルトの直流電圧を生成する。この入力端子Vinを介して入力した32ボルトの電圧は、オンオフ回路11、制御ユニット3へも供給される。
【0015】
コントロールユニット3の駆動電圧(ロジック電圧、3.3ボルト)は、コントロールユニット内に設けられた電源回路(不図示)により、32ボルトの電圧から生成される。なお、このロジック電圧は、AC/DC電源1を多出力の構成として、AC/DC電源1で生成し、供給を受ける構成でも構わない。
【0016】
図2は、コントロールユニット3が行う制御フローである。この図2は、記録装置がオフ状態からスタートする場合を説明する。このスタート時におけるコンデンサC102の電位は、後述する閾値電圧Vth1より低いものとする。
【0017】
S1で、コントロールユニット3は、第2電圧生成回路8へ電圧生成の開始指示を出力する。第2電圧生成回路8の電圧生成をスタートさせる。第2電圧生成回路8の電圧生成によりコンデンサC102には電力が供給され、VHの電位は12ボルトまで上昇する。S2で、所定時間ウエイトする。S3で、VH_MONIの電圧値が閾値電圧Vth1より高いか判定する。Yesであれば、S4へ進み、スイッチ制御回路5のスタートと、第2電圧生成回路8の電圧生成をストップさせる。このために、コントロールユニット3は、第1電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力し、第2電圧生成回路へ電圧生成(あるいは電圧の出力)の停止指示を出力する。スイッチ制御回路5をスタートすることで第1電圧生成回路が電圧生成を開始する。これにより、第1電圧生成回路の電圧生成によりコンデンサC102には電力が供給されVHの電位は21ボルトまで上昇する。そして、S5で記録動作を行う。S6で記録動作を終了するか判定する。Yesであれば、S7でスイッチ制御回路5を停止させる。これにより、第1電圧生成回路が電圧生成を停止する。
【0018】
一方、S3の判定がNo(VH_MONIの電圧値が閾値電圧Vth1より低い)であればS7へ進む。S7で第2電圧生成回路8の電圧生成をストップさせる、またエラー通知を行う。
【0019】
以上のように、規定電圧より低い電圧の出力をデバイスに対して行い、その出力電圧を閾値電圧と比較を行い、その比較結果に基づいて規定の電圧を生成する動作を開始する。
【0020】
デバイスや回路の故障がなければVH_MONIの電圧値は閾値電圧Vth1より高くなるように、閾値電圧Vth1は定められている。デバイスや回路の故障がある場合に、VH_MONIの電圧値が閾値電圧Vth1より低くなる。このような制御構成により、故障が発生している回路やデバイスに高い電圧を供給することを防止できる。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施の形態における電力供給回路を説明する図である。第1の実施形態と同様の内容については、説明を省き、相違する点について説明する。
【0022】
第2の実施の形態における電力供給回路は、放電回路7を備えている。この放電回路7は、デバイス2へ出力する電圧を低下させる働きをする。放電回路7は、DC/DCコンバータ9の出力部に設けられている。放電回路7は、電源供給ラインとGND間に接続され、放電回路7を制御するDCHRG信号はコントロールユニット3から出力される。
【0023】
第1電圧生成回路は、AC/DC電源1から供給される32ボルトの電圧を入力し、17ボルトから24ボルト範囲で、コントロールユニット3から出力される指示に基づき電圧を生成する。
【0024】
オンオフ回路11は、入力電圧Vinとスイッチ制御回路5の電源端子Vccとの接続のオン/オフ、Vref端子とDTCとの接続のオン/オフ、SCP端子とGNDとの接続のオン/オフをそれぞれ制御する。オンオフ回路11が入力する信号ENB1及び信号ENB2号は、コントロールユニット3から出力される。つまり、オンオフ回路11は、スイッチ制御回路5の端子に出力する電圧を制御する。このスイッチ制御回路5は、例えば、1チップの集積回路である。
【0025】
第2電圧生成回路8は、DC/DCコンバータ9の出力部及び電源供給ラインに接続されている。PreCHRG信号は、第2電圧生成回路8の動作を制御する信号である。このPreCHRG信号は、コントロールユニット3から出力される。第2電圧生成回路8のPreCHRG信号を受けて、電圧12ボルトを生成して、DC/DCコンバータ9の出力部へ供給する。
【0026】
次に、DC/DCコンバータ9を簡単に説明する。DC/DCコンバータ9の入力電圧VHinがコンデンサC101を介して、スイッチング素子Q101に入力される。スイッチング素子Q101及びダイオードD101において変換された交流出力はチョークコイルL101、及びコンデンサC102で構成される平滑回路を介して直流電圧に変換出力される。この直流電圧VHが電源供給ラインを介して記録ヘッド2へ供給される。このDC/DCコンバータ9は、コントロールユニット3から出力される信号DACに基づいて、出力電圧を17ボルトから24ボルトの範囲で制御する。このため、DC/DCコンバータ9は、信号DACを入力するD/Aコンバータ40を備えている。D/Aコンバータ40は、デジタルデータをアナログデータに変換し、アナログデータに対応する電圧信号を出力する。
【0027】
平滑回路の出力端から検出された出力電圧信号VHは、抵抗R101及び抵抗R102により抵抗分圧され、その分圧された電圧がスイッチ制御回路(PWM制御IC)5内部の誤差増幅器52の非反転端子に入力される。スイッチ制御回路5は、定電圧フィードバック制御を行う。定電圧フィードバック制御の基準電圧は、基準電圧IC2で生成され、抵抗R7、R8の抵抗分圧値を誤差増幅器52の反転端子に入力している。
【0028】
スイッチ制御回路5は、内部基準電圧源Vref51、誤差増幅器52、PWMコンパレータ53、三角波発生回路54、出力ドライバー回路55、等の回路ブロックによって構成されている。定電圧フィードバック制御は、誤差増幅器52、コンパレータ53を含むスイッチ制御回路5、及び、抵抗R101,R102、C6、誤差増幅器52の入出力間に挿入される次定数回路6から構成されている。コンデンサC6及び時定数回路6は、フィードバックループの周波数特性を調整するための回路部品である。
【0029】
放電回路7は、スイッチ素子であるMOS−FETQ102とQ102の電流を制限するための抵抗R103で構成されている。スイッチQ102の一方はGNDに接続され、他方は、抵抗R103を介してVH出力に接続されている。スイッチ素子Q102の制御端子は、コントロールユニットに接続されている。スイッチ素子Q102は、コントロールユニット3からのDCHRG信号によってオンまたはオフする。スイッチ素子Q102がオンして導通すると、コンデンサC102に蓄積された電荷がグランドラインへ流れ、電圧VHは低下する。例えば、DCHRG信号が“Hi(ハイ)”レベルの時にスイッチ素子Q102は導通し、“Lo(ロウ)”レベルのときにはスイッチ素子Q102は遮断する。
【0030】
第2電圧生成回路8は、定電圧回路12と切り替え回路13、及び整流素子であるダイオードD2、電流制限のための抵抗R11で構成されている。定電圧回路12は、入力電圧VHinから直流電圧Vc(12ボルト)を生成している。切り替え回路13は、PreCHRG信号により、定電圧回路12の出力VcとダイオードD2のアノード端子との間の接続のオン/オフを行う。ダイオードD2のカソードは、抵抗R11を介してDC/DCコンバータ9のVH電圧ラインに接続されている。
【0031】
オンオフ回路11は、図3に示すように複数のスイッチ素子Q3、Q4、Q5、Q6、Q7で構成され、スイッチ制御回路の制御を行う。スイッチ素子Q3、Q4は、コントロールユニット3からのENB1信号で、直流電圧VHinをスイッチ制御回路5のVcc端子、及び基準電圧IC2へのVHin電圧の供給をオン/オフしている。
【0032】
ENB1信号に“Hi”レベルの信号(例えば3.3V)が入力されると、スイッチ制御回路に入力電圧VHinが供給され、スイッチ制御回路5内部の基準電圧51Vrefが立ち上がり、スイッチ制御回路の各入力端子にバイアス印加が可能な状態となりスイッチ制御回路5が起動すると共に基準電圧IC2も起動する。ここで内部基準電圧51のVref電圧は2.5Vとする。ENB1信号に“Lo”レベルの信号(例えば0V)が入力されると、スイッチ制御回路5、及び基準電圧IC2への入力電圧VHinは遮断される。スイッチ素子Q5、Q6は、コントロールユニットからのENB2信号で、DTC端子とVref端子間をオン/オフしている。
【0033】
DTC端子は休止期間調整回路であり、Vref端子とGND端子間を抵抗R2、R3で分圧することで設定される。DTC端子電位は、スイッチ制御回路5が出力するPWM信号の最大オンデューティー(オンの割合)を決定し、オンデューティー制限するための端子でPWMコンパレータの非反転端子に入力されている。
【0034】
ここで、DTC端子とVref端子間には抵抗R2と並列にコンデンサC4が接続される。またDTC端子とGND間には抵抗R3が接続される。
DTC端子の定常状態の電位VDTは、次式で決定される。
DT=Vref×R3/(R3+R2)・・・(式1)
例えば、VDTが1.48V以下の時がPWM信号のデューティーは100%であり、VDTが1.97V以上の時にPWMデューティーが0%に制御される。また、DTC端子に接続されているコンデンサC4は、スイッチ制御回路5が起動する時の過渡的な状態の時に徐々にPWM信号のデューティーを広げ、入力電流を抑制させながら起動するソフトスタート機能を持たせている。スイッチ制御回路の起動時の過渡的な電圧VDT(t)は、次式で表され、ソフトスタートによる起動時間を設定することが可能である。
【0035】
【数1】

【0036】
ENB2信号に“Hi”レベルの信号が入力されると、トランジスタQ5、Q6は導通し、スイッチ制御回路5のDTC端子電位は、Vref電位となりVDTは2.5Vに保持される。この電位は先ほど挙げた1.97Vよりも高い電位のため、PWMデューティーは0%に制御される。つまりオフ時間が100%となり、スイッチ素子Q101は遮断状態となる。
【0037】
また、ENB2信号に“Lo”レベルの信号が入力されると、トランジスタQ5、Q6は遮断され、VDT電位は、上記計算式で設定された値となりPWM制御の休止期間が設定される。一般に入力電圧VHinと出力電圧VHとの比から(VH/VHin)決まるデューティー比以上の値から100%の値の範囲で設定される。
【0038】
次に、保護回路(タイマーラッチ式)について説明する。この機能は、DC/DCコンバータ9の出力電圧VHが短絡等で異常となった場合に強制的に出力をOFFさせて保護する機能である。出力電圧が低下すると誤差増幅器で誤差増幅され、誤差増幅器の出力電圧は低下しスイッチングデューティーを高める方向へ制御しようとする。すなわちスイッチ制御回路5のOUT端子の導通時間を長くする。SCP(Short Circuit Protection)コンパレータにより誤差増幅器52の出力がスレッショルド電圧(例えば1.25V)を低下するとUVLO回路を通じて短絡保護回路が働く、SCP端子はこの働きを一定期間マスクする機能である。マスクする時間設定は、SCP端子に接続するコンデンサで設定される(例えば0.01μFで6.3ms)。すなわち、SCP端子で設定された時間以上、誤差増幅器の出力電圧がスレッショルド電圧以下に低下していると低電圧保護回路(UVLO)回路を通してOut端子のDriver回路をオフすると共にPWMCOMPを停止させる。このSCP端子のマスク機能は、DC/DCコンバータ起動時の不具合を避けるために有効であり、DTC端子によって設定されるソフトスタート回路の時定数に合わせてマスクする時間を設定している。
【0039】
次に、図4と図5を用いて、電力供給回路の動作説明を説明する。図4は、記録装置におけるフローチャートである。図5は、電力供給回路の信号、電圧の状態を説明する図である。図5(a)は、記録ヘッド2が正常な場合の状態を示す。図5(b)は、記録ヘッド2の状態が正常でない場合の状態を示す。図5(c)は、印刷動作中に記録ヘッド2の状態が変化した場合を示す。
【0040】
コントロールユニット3は、ENB1とPreCHRG信号が”Lo”レベル、DCHRG信号とENB2信号が“Hi”レベルのイニシャル状態<ステップT0>から、VH_ENB1のみを”Hi”レベルにしてPWM制御IC5を起動する<ステップT1>。
イニシャル状態<ステップT0>では、ENB1信号は”Lo”レベルによりPWM制御IC5、及び基準電圧IC2へVHin電圧は供給されず、いずれも動作は停止している。また、ENB2信号は”Hi”“レベルが入力され、DTC端子電位はトランジスタQ5によりVref端子と接続され、SCP端子電位は、トランジスタQ7によりGNDに接続される。
【0041】
第2電圧生成回路8は、PreCHRG信号”Lo”レベルにより切り替え回路13により定電圧回路12とダイオードD2のカソードは遮断されている。放電回路7は、DCHRG信号”Hiレベル”によりスイッチ素子Q102は導通している。
【0042】
よって、イニシャル状態<ステップT0>では、DC/DCコンバータ9の動作は停止し、第2電圧生成回路8は遮断され、放電回路7は導通しているためDC/DCコンバータ出力電圧はゼロ電位に保持されている。
【0043】
次に、イニシャル状態の<ステップT0>から印刷シーケンスまでのステップについて説明する。オンオフ回路11は、ENB1信号が“Hi”レベル(例えば3.3V)になるとスイッチ制御回路5に入力電圧VHinが供給され、スイッチ制御回路5内部の基準電圧回路51が動作することで基準電圧Vrefが立ち上がり、スイッチ制御回路5の他の各入力端子にバイアス印加が可能な状態となる。また、基準電圧IC2も起動し、抵抗R7、抵抗R8の抵抗分圧値がPWM制御IC5の誤差増幅器の反転端子にPWM制御IC5の基準電圧として入力される<ステップT1>。
【0044】
次に、DCHRG信号を”Lo”レベルとし、またPreCHRG信号を”Hi”レベルとする<ステップT2>。DCHRG信号を”Lo”レベルとすることで放電回路7は導通状態から遮断状態となる。
【0045】
また、PreCHRG信号を”Hi”レベルとすると、切り替え回路13は定電圧回路12の出力VcとダイオードD2のアノード間を導通状態とし、出力電圧VcをダイオードD2及び抵抗R11を介してDC/DCコンバータ9の出力に供給する。
【0046】
ここで、定電圧回路12の出力電圧VcはDC/DCコンバータ9の出力電圧値VH24ボルトよりも低い電圧値(12ボルト)に設定されている。
第2電圧生成回路8からDC/DCコンバータ9の出力に供給される電圧VH´は、図4<T2区間>のような充電波形となる。この波形の充電特性は、便宜上、ダイオードD2の順方向電圧Vや、コンデンサC102の寄生成分等を無視すると、次式で表される特性となる。
【0047】
【数2】

【0048】
第2電圧生成回路8からVH出力に充電される電圧値VH´は、定電圧回路12の出力電圧Vcと抵抗R11、出力コンデンサC102、及びDC/DCコンバータ9の内部インピーダンスZ1、及び駆動していない記録ヘッド2の内部インピーンダンスZ2から決まる。
【0049】
また、この<ステップT2>の期間コントロールユニット3は、VH_MONI信号によりVH電圧値を抵抗R9、R10で抵抗分圧した値をモニタリングしている。つまり、<ステップT2>ではVH_MONI信号は、第2電圧生成回路8からの充電特性をモニタリングし、PreCHRG信号が“Hi”レベル、DCHRG信号が“Lo”レベルに切り替わった後の充電電圧波形をモニタリングしている。
【0050】
ここで、S10において、充電特性があらかじめ設定された閾値以下の場合は、記録ヘッド、またはDC/DCコンバータ出力、もしくは、DC/DC出力から記録ヘッド間の信号間の状態が適正でないと判断し、コントロールユニットはエラー信号を表示する。
【0051】
一例として、DC/DCコンバータ9の内部インピーダンスZ1を30kΩ、記録ヘッド2の内部インピーダンスZ2を750kΩ、抵抗R11を2.4kΩとすると異常が無い場合の充電波形は、図6(a)のようになる。ここで、VH_MONI端子の電位がVH電圧の1/5程度となるように抵抗R9、及び抵抗R10の定数を設定しておくと、VH_MONI端子で検出される電圧は、図6(b)のようになる。また、記録ヘッドの内部インピーダンスが10kΩ程度に変化した場合の充電波形は図6(c)のようになり、同じく記録ヘッド2の内部インピーダンスZ2が10kΩとした時のVH_MONI端子の電位は図6(d)のような充電特性となる。
【0052】
図6(a)〜図6(d)及び(式3)から明らかなように、記録ヘッドやDC/DCコンバータ出力端に何らかの異常が生じた場合は、DCDCコンバータ出力の内部インピーダンスZ1、記録ヘッド2の内部インピーダンスZ2との合成インピーダンスZが極端に低下した値となる。この合成インピーダンスZと第2電圧生成回路8内の抵抗R11との抵抗分圧比が変化するため、VH出力端の電圧値に変化が発生する。
【0053】
記録ヘッドの状態を正常と判断する閾値を図6(a)または図6(b)の値の±5%幅を見込んでおいても、記録ヘッドの内部インピーダンスが変化した場合の検出は十分に可能な値として検出することが出来る。
【0054】
なお、VH_MONI信号のモニタリングは、例えば、コントロールユニット3のASIC31に設けられたA/Dコンバータ(ADC)32でデジタル信号化され、記録ヘッドの正常状態、異常状態を判断する閾値に基づいて、ASIC31が判定する処理を行う。この閾値は、ASIC31に設けたレジスタやコントロールユニット内のメモリ(ROM)に保持される。
【0055】
S10において、この<ステップT2>でのモニタリングの値が正常値の範囲内であれば(YES)、記録ヘッドの状態は適正であると判断し、次のシーケンスである印刷シーケンス<ステップT3>に進む。一方、モニタリングの値が正常値と判断する閾値よりも低い場合(NO)は、記録ヘッドの内部インピーダンス、または、電源内部インピーダンスに異常があると判断し、ステップ<T8>に進む。
【0056】
次に、正常時の動作である<ステップT3>について説明する。印刷シーケンス<ステップT3>に移行すると、コントローラユニット3から“Lo”レベルのENB2信号が出力され、トランジスタQ5、Q6、Q7はオフ状態となる。
【0057】
DTC端子電圧は、式(2)から図9のようになりPWM制御ICは徐々にデューティーを広げる制御を行い、OCP端子はこの区間コンデンサC5で設定された時間PWM制御ICの短絡保護が掛からないようにマスクをかけている。よって出力電圧VHはあらかじめ設定された電圧値VH(VH>Vc)まで上昇する。
【0058】
このとき、PreCHRG信号は、”Hi”レベルの状態を維持したままでよい。つまり、DC/DCコンバータ9の出力電圧VHは定電圧回路12の出力電圧Vcよりも高い電圧値となる。しかし、整流素子であるダイオードD2のアノードがVH端子側で接続されているため、ダイオードD2に逆バイアスが印加される状態となるだけで、第2電圧生成回路8とDC/DCコンバータ9の出力端との間で電力のやり取りは発生しない。
【0059】
DC/DCコンバータ9の出力電圧がVH電圧まで上昇すると、記録ヘッドは印刷可能な状態となる。その後、図中には記載しないが、記録ヘッドに印刷データ、駆動信号をコントロールユニットから出力され、印刷データに従って用紙(被記録媒体)に記録を行う<ステップT4>。
【0060】
記録装置が、リアル方式のインクジェットプリンタであれば、被記録媒体に対して記録ヘッドを移動(走査)と被記録媒体の搬送を交互に行う。従って、印刷動作シーケンスにおいて、記録ヘッドが駆動する期間と記録ヘッドが駆動しない期間がある。この記録ヘッドが、記録ヘッドが駆動しない期間に移行したとき、ENB2信号を“Hi”レベルとする<ステップT5>。
【0061】
ENB2信号が“Hi”レベルとなると、トランジスタQ5、Q6、Q7は導通する。トランジスタQ5はDTC端子をVref電圧と接続するため、DC/DCコンバータ9のPWMDuty幅は0%に強制的に保持される。また、トランジスタQ7はSCP端子電位をGNDレベルに保持するため、短絡保護回路はマスクされた状態となる。
【0062】
すなわち、DC/DCコンバータ9の出力電圧は、VH電圧が出力されていた状態から、PWMスイッチングデューティーが0%となりスイッチング動作が停止した状態となる。よって、出力電圧VHは、DC/DCコンバータの内部インピーダンスZ1と、記録ヘッド2の内部インピーダンスZ2との合成インピーダンスZと出力コンデンサC102の容量による放電時定数で出力電圧は通常徐々に低下していく。
【0063】
また、この<ステップT5>の期間に、コントロールユニット3は、VH_MONI信号を入力し、VH電圧値を抵抗R9、R10で抵抗分圧した値をモニタリングしている。
つまり、コントロールユニット3は、VH_MONI信号によってDC/DCコンバータ9の出力電圧値の放電状態(電圧レベル)をモニタリングしている。
【0064】
このときのVH出力の電圧値は、PreCHRG信号が”Hi”レベルであるため、前述の合成インピーダンスZ、定電圧回路12の出力電圧Vc、及び抵抗R11によって決定される電圧値まで低下する。先に説明した<ステップT2>と同様の閾値を用いて、VH_MONI端子の電圧値から、異常の有無が判定することができる。
【0065】
S20にて、VH電圧のモニタリングで異常が無ければ(YES)、コントロールユニット3は、S30にて、印刷終了であるか判断する。印刷を行う場合(NO)は、<ステップT3>に戻り、ENB2信号を“Lo”レベルとし、DC/DCコンバータを動作させる。印刷を終了する場合(YES)には、印刷動作の終了と判断して、PreCHRG信号を”Lo”レベルとする。
【0066】
これにより、切り替え回路13が電源供給ラインを切断し、定電圧回路12からVH電源ラインへの出力を止める。またDCHRG信号を”Hi”レベルにすることで、放電回路7のスイッチ素子Q102が導通し、抵抗R103を介してコンデンサC102の電荷を放電し、DC/DCコンバータ9の出力電圧をGNDレベルに落とす<ステップT6>。
【0067】
VH出力電圧をGNDレベルに低下させた後は、電力供給回路の消費電力を削減するため、ENB1信号を”Lo”レベルとし、スイッチ制御回路5のVcc端子、及び基準電圧回路へのVHin電圧の供給を停止する。この状態が印刷動作待ちのウエイト状態である<ステップT7>。
【0068】
次に、<ステップT2>及び<ステップT3>後の判断でVH_MONI端子電位が閾値Vth以下の場合について説明する。<ステップT2>の印刷シーケンスの前に、VH_MONI端子の電位Vchが閾値Vth以下と判断されたときは、ENB1信号を”Lo”レベル、DCHRG信号を“Hi”レベルとする<ステップT8>。<ステップT8>では、PreCHRG信号を“Lo”レベルと設定する。この設定により、第2電圧生成回路8の定電圧回路12とVH端子を遮断すると共に、DCHRG信号を“Hi”レベルとすることでVH端子の電位を放電回路7によってGNDレベルまで低下させる。そして、ENB1信号を“Lo”レベルとすると共に、サービスマンやユーザーに通知させるための処理を行う<ステップT9>。<ステップT9>では、ENB1信号“Lo”レベルによりスイッチ制御回路5及び基準電圧IC2へのVHin供給を停止する。
【0069】
なお、<ステップT5>後の判定処理で、VH_MONI端子電位が閾値Vth以下の場合についても<ステップT8>、<ステップT9>と同様の処理を行う。
【0070】
以上のように、DC/DCコンバータの起動前に、DC/DCコンバータの出力電圧値より出力電圧値が低い定電圧源を用いて、所定の電流値で電力供給を行い、その過程において、コンデンサへの充電特性を調べる。そして、その特性は、正常時と異常時で大きく異なることに着目して、正常か故障かを判定する。そのために、DC/DCコンバータの出力電圧値を、コントロールユニットでモニターする。
【0071】
また、記録動作の間(走査記録と走査記録の間のタイミング)に、オンオフ回路によりDC/DCコンバータの動作を遮断するとともに、第2電圧生成回路8の定電圧回路の出力電圧VcをDC/DCコンバータの出力電圧よりも低く設定する。この条件で、DC/DCコンバータの出力電圧VHの放電特性(下降特性)が、正常時と異常時とで大きく異なることに着目して、DC/DCコンバータの出力電圧値を、コントロールユニットでモニターする。そのモニターした電圧値と閾値とに基づいて、記録ヘッドの状態を判定する。
【0072】
さらに、第2電圧生成回路8の出力とDC/DCコンバータの出力との間に、抵抗を介して接続することで、DC/DCコンバータ出力の内部インピーダンスZ1、記録ヘッドの内部インピーンダンスZ2、がショート状態に近いインピーダンスとなっても、第2電圧生成回路8の出力の抵抗がリーク電流を制限するために、記録ヘッドやDC/DCコンバータにおいて熱的ストレス、電気ストレスが発生しない。
【0073】
(記録装置の説明)
図7は、実施の形態で説明した記録装置101の斜視図である。インクを吐出する記録ヘッド103をキャリッジ102に搭載し、キャリッジ102を矢印A方向に往復移動させて記録を行う。記録装置101は、記録紙などの記録媒体Pを給紙機構105を介して給紙し、記録位置まで搬送する。そして、その記録位置において記録ヘッド1033から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行う。
【0074】
キャリッジ102には、記録ヘッド103の他、例えば、インクカートリッジ106が搭載される。インクカートリッジ106は、記録ヘッド103に供給するインクを貯留する。なお、インクカートリッジ106は、キャリッジ102に対して着脱自在になっている。キャリッジ2には、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクをそれぞれ収容する4つのインクカートリッジが搭載されている。これら4つのインクカートリッジは、それぞれ独立して着脱できる。
【0075】
記録ヘッド103は、電気熱変換体を吐出口のそれぞれに対応して設け、記録信号に応じて対応する電気熱変換体に電圧値VHのパルス電圧を印加する。これにより、対応する吐出口からインクが吐出される。
【0076】
(その他の実施形態の説明)
なお、上述した実施形態では、電圧生成回路は2種類の電圧生成回路を備える形態であるが、3種類以上の電圧生成回路を備える形態でも構わない。また、電力供給回路で使用する素子の値、生成する電圧値、閾値などは、上述した数値に限定するものではない。
【0077】
また、回路の構成として、出力端子Toutとデバイスとの間に、更にコンデンサを接続する形態でも構わない。
【0078】
また、第1の実施形態において、図2のステップS4で第2電圧生成回路の電圧生成(電圧出力)を停止する構成であったが、ステップS4では生成を継続し、ステップS7で電圧出力を停止する構成でも構わない。
【0079】
また、第2の実施形態において、第1電圧生成回路は21ボルトの電圧を生成する形態でも構わない。
【符号の説明】
【0080】
2 103 記録ヘッド
3 コントロールユニット
5 スイッチ制御回路(PWM制御回路)
7 放電回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスへ電力供給を行う電力供給回路であって、
前記デバイスへ電力を供給する電力供給ラインに接続されたコンデンサと、
前記電力供給ラインへ第1電圧を供給する電圧を生成する第1電圧生成手段と、
前記第1電圧より低い第2電圧を生成し、前記第2電圧を前記電力供給ラインへ供給する第2電圧生成手段と、
前記第2電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力し、前記電力供給ラインの電圧と閾値電圧とを比較を行い、前記電力供給ラインの電圧が閾値電圧より高ければ前記第1電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力し、前記出力部の電圧が閾値電圧より低ければ前記第1電圧生成回路へ電圧生成の停止指示を出力する制御を行う制御回路とを備えることを特徴とする電力供給回路。
【請求項2】
前記電力供給回路は、更に前記コンデンサに蓄積された電荷を放電する放電回路を備え、前記第2電圧生成回路へ電圧生成の開始指示を出力する前に、前記放電回路を動作させることを特徴とする請求項1に記載の電力供給回路。
【請求項3】
前記第2電圧生成回路は、スイッチ素子をオン/オフするスイッチ制御回路と前記スイッチ制御回路へ電力供給を行う第2の制御回路を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力供給回路。
【請求項4】
請求項1に記載の電力供給回路を備え、前記デバイスを駆動することを特徴とする機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−50208(P2012−50208A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188652(P2010−188652)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】