説明

電力供給装置

【課題】 大型化を招くことなく、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれた場合の充電効率の低下を抑制できる共振型非接触充電用の電力供給装置を提供すること。
【解決手段】 共振型の非接触充電用の電力供給装置は、交流電力を供給されて磁界を発生する1次コイルを含む1次側共振回路と、1次側共振回路の1次側電流を検出する電流検出手段と、1次側共振回路の1次側電圧を検出する電圧検出手段と、1次側電流と1次側電圧とに基づいて力率を算出する力率算出手段と、力率と目標効率に相当するしきい値とを比較し、力率がしきい値を下回る場合に、力率を大きくするように、1次共振回路の特性を調整する特性調整手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置に関し、特に、電気自動車などの電池の充電に用いられる非接触型の電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触の電力伝送を用いて、電気自動車の電池の充電を行う技術が知られている。この技術では、自動車に搭載された2次側共振回路の2次コイルと、電力供給装置に搭載された1次側共振回路の1次コイルとを近接配置した状態で、1次側共振回路に共振周波数の交流電力を供給することによって1次コイルにおいて磁界を発生させる。そして、発生した磁界による電磁誘導によって2次側共振回路の2次コイルに発生した起電力を用いて電池を充電している。
【0003】
この技術において、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれた場合には、充電効率が低下する。具体的には、1次コイルが搭載された電力供給装置に対して2次コイルが搭載された自動車を適正位置に停車して充電を行わないと充電効率が低下する。
【0004】
特許文献1では、上記自動車の充電システムにおいて、電力供給装置に対して自動車が適正位置に停車されていない場合にユーザーにその旨を通知する技術が記載されている。特許文献2では、電力供給装置に複数の1次コイルを配置して、電力供給装置に対する自動車の位置に応じて、最も充電に適した1次コイルを選択して充電に用いる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−183814号公報
【特許文献2】特開2010−183812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1の技術では、自動車が適正位置に停車されていない場合には、運転者に通知はされ得るものの、自動車の停車位置をユーザーが修正しない限り充電効率の低下を抑制することができず、上記特許文献2では、自動車が適正位置に停車されていない場合の充電効率の低下を抑制し得るものの、電力供給装置が大型化するおそれがある。このような課題は、自動車の充電システムに限らず、共振型の非接触充電用の電力供給装置に共通する課題であった。
【0007】
本発明の主な利点は、共振型の非接触充電用の電力供給装置において、電力供給装置の大型化を招くことなく、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれた場合の充電効率の低下を抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1] 2次コイルを含む2次側共振回路と電池とを含む電池システムに対して、前記電池の充電のための電力を、電磁誘導を利用して非接触で供給する電力供給装置であって、
電磁誘導により前記2次コイルを介して前記電池システムに交流電力を供給するための磁界を発生する1次コイルを含む1次側共振回路と、
前記1次側共振回路の電流である1次側電流を検出する電流検出手段と、
前記1次側共振回路の電圧である1次側電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段により検出された前記1次側電流と前記電圧検出手段により検出された前記1次側電圧とに基づいて、力率を算出する力率算出手段と、
前記1次側共振回路における直列共振コンデンサ調整回路およびインダクタンス調整回路のうち少なくとも一方と、
前記1次側共振回路に前記交流電力を供給するためのインバータ回路と、
前記力率算出手段により算出された前記力率と目標効率に相当するしきい値とを比較し、前記力率が前記しきい値を下回る場合に、前記力率を大きくするように、前記直列共振コンデンサ調整回路の静電容量、および、前記インダクタンス調整回路のインダクタンス、および、前記インバータ回路によって前記1次側共振回路に供給される前記交流電力の周波数、のうちの少なくとも1つを調整する特性調整手段と、
を備える電力供給装置。
【0010】
1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれると、1次側共振回路および2次側共振回路の共振状態が、最適な共振状態から乖離して、電力供給装置から電池システムに電力を伝送する効率が低下する。この際、1次側電流と1次側電圧に基づいて決まる力率の値が小さくなる。上記構成の電力供給装置によれば、1次側電流と1次側電圧とに基づいて力率を算出し、当該力率がしきい値を下回った場合に、力率を大きくするように、1次側共振回路における直列共振コンデンサ調整回路の静電容量、および、インダクタンス調整回路のインダクタンス、および、インバータ回路によって1次側共振回路に供給される交流電力の周波数のうちの少なくとも1つを調整する。この結果、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれた場合でも、1次側共振回路および2次側共振回路の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態に修正することができる。そして、例えば、共振状態の修正のために、多数の1次コイルを用意する必要もないので、電力供給装置の大型化を抑制できる。したがって、電力供給装置の大型化を招くことなく、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下、および、当該効率の低下に起因する1次側電流の増加(過電流)による発熱等の問題を抑制することができる。
【0011】
さらに、上記構成の電力供給装置によれば、力率に基づいて、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下の発生を判断している。当該力率は、電池の充電状況、例えば、2次側電流、2次側電圧などの2次側の状況によって変化しないので、2次側と通信することなく、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下の発生を1次側だけで適切に判断することができる。
【0012】
[適用例2] 適用例1に記載の電力供給装置であって、
前記特性調整手段は、n段階(nは2以上の自然数)に亘って前記調整を実行可能に構成され、1段階の前記調整を行うごとに、前記力率と前記しきい値との比較を行って、前記力率が前記しきい値以上になるまで、前記調整を最大n回繰り返し、
前記調整がn回以内に前記力率が前記しきい値以上になった場合に充電を継続する、電力供給装置。
【0013】
上記構成の電力供給装置によれば、力率としきい値とを比較しながら、複数段階に亘って、1次側共振回路および2次側共振回路の共振状態を、適正な共振状態に近づけることができる。この結果、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれた場合に、1次側共振回路および2次側共振回路の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態により精度良く修正して、電池を充電することができる。
【0014】
[適用例3] 適用例2に記載の電力供給装置であって、さらに、
n段階目の前記調整を行った後に、前記力率が前記しきい値を下回る場合には、ユーザーに対して警告を行う警告手段を備える、電力供給装置。
【0015】
上記構成の電力供給装置によれば、所定段階の調整を行ってもなお力率がしきい値を下回る場合には、ユーザーに対して警告を行う。したがって、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が十分な調整ができないほどずれている場合には、その旨をユーザーに認識させることができる。この結果、ユーザーは、例えば、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置を変更するなどの対応を取ることができる。
【0016】
[適用例4] 適用例1ないし適用例3のいずれかに記載の電力供給装置であって、さらに、
充電中において、モニタリングされている前記力率の変化量と所定の異常変化量との比較を継続的に行い、前記力率の変化量が前記異常変化量を超えた場合には、充電に関する異常が発生したと判断する異常検出手段を備える、電力供給装置。
【0017】
上記構成の電力供給装置によれば、力率の変化量と所定の異常変化量との比較を、充電中に継続的に行うことによって、充電に関する異常(例えば、1次コイルと2次コイルとのギャップへの異物の混入)の発生を検出することができる。この結果、充電に関する異常が発生した場合に、充電の中止や、ユーザーへの通知などの対応を取ることができるので、充電に関する異常に起因する発熱等を抑制することができる。
【0018】
[適用例5] 2次コイルを含む2次側共振回路と電池とを含む電池システムに対して、前記電池の充電のための電力を、電磁誘導を利用して非接触で供給する電力供給装置であって、
電磁誘導により前記2次コイルを介して前記電池システムに交流電力を供給するための磁界を発生する1次コイルを含む1次側共振回路と、
前記1次側共振回路の電流である1次側電流を検出する電流検出手段と、
前記1次側共振回路における直列共振コンデンサ調整回路およびインダクタンス調整回路のうち少なくとも一方と、
前記1次側共振回路に前記交流電力を供給するためのインバータ回路と、
前記電流検出手段により検出された前記1次側電流と狙い値より大きな値であるしきい値を比較し、前記1次電流が前記しきい値を超えた場合に、前記1次側電流が前記狙い値に近づくように、前記直列共振コンデンサ調整回路の静電容量、および、前記インダクタンス調整回路のインダクタンス、および、前記インバータ回路によって前記1次側共振回路に供給される前記交流電力の周波数、のうちの少なくとも1つを調整する特性調整手段と、
を備える電力供給装置。
【0019】
1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれて、電力供給装置から電池システムに電力を伝送する効率が低下すると、2次側電流が一定で充電されている場合には、1次側電流が狙い値よりも大きくなる。上記構成の電力供給装置によれば、1次側電流が狙い値より大きな値であるしきい値を超えた場合に、1次側電流が狙い値に近づくように、直列共振コンデンサ調整回路の静電容量、および、インダクタンス調整回路のインダクタンス、および、インバータ回路によって1次側共振回路に供給される交流電力の周波数、のうちの少なくとも1つを調整する。この結果、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれた場合でも、1次側共振回路および2次側共振回路の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態に修正することができる。そして、例えば、共振状態の修正のために、多数の1次コイルを用意する必要もないため、電力供給装置の大型化を抑制できる。したがって、電力供給装置の大型化を招くことなく、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下、および、当該効率の低下に起因する1次側電流の増加(過電流)による発熱等の問題を抑制することができる。さらに、1次電流だけを基準にして、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下の発生を判断するため、簡易な構成で当該効率の低下の発生を判断できる。
【0020】
[適用例6] 適用例5に記載の電力供給装置であって、
前記特性調整手段は、n段階(nは2以上の自然数)に亘って前記調整を実行可能に構成され、一段階の前記調整を行うごとに、前記1次側電流と前記しきい値との比較を行って、前記1次側電流が前記しきい値以下になるまで、前記調整を最大n回繰り返し、
前記調整が前記n回以内に前記1次側電流が前記しきい値以下になった場合には充電を継続する、電力供給装置。
【0021】
上記構成の電力供給装置によれば、1次側電流としきい値とを比較しながら、複数段階に亘って、1次側共振回路および2次側共振回路の共振状態を、適正な共振状態に修正することができる。この結果、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が適正位置からずれた場合でも、1次側共振回路および2次側共振回路の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態により精度良く修正し、電池を充電することができる。
【0022】
[適用例7] 適用例6に記載の電力供給装置であって、さらに、
n段階目の前記調整を行った後に、前記1次側電流が前記しきい値を超えている場合には、ユーザーに対して警告を行う警告手段を備える、電力供給装置。
【0023】
上記構成の電力供給装置によれば、所定段階の調整を行ってもなお1次側電流がしきい値を超えている場合には、ユーザーに対して警告を行う。したがって、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置が十分な調整ができないほどずれている場合には、ユーザーにその旨を認識させることができる。この結果、ユーザーは、例えば、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置を変更するなどの対応を取ることができる。
【0024】
また、適用例5ないし適用例7のいずれかに記載の電力供給装置は、充電中において、充電状況によって変化する1次側電流に対応した異常検出用しきい値を設定し、1次側電流と異常検出用しきい値との比較を継続的に行い、1次側電流が異常検出用しきい値を超えた場合には、充電に関する異常が発生したと判断しても良い。こうすれば、異常が発生した場合に、充電の中止や、ユーザーへの通知などの対応を取り、充電に関する異常に起因する発熱等を抑制することが可能である。
【0025】
[適用例8] 適用例1ないし適用例7のいずれかに記載の電力供給装置であって、
前記直列共振コンデンサ調整回路は、
標準コンデンサと、
前記標準コンデンサと直列に配列されている1つ以上の容量減少用コンデンサと、
前記容量減少用コンデンサを有効な状態と無効な状態とに切り替える容量減少用コンデンサ切替スイッチと、
を含み、
前記特性調整手段による前記調整は、前記容量減少用コンデンサ切替スイッチをオンからオフにすることにより前記容量減少用コンデンサを前記無効な状態から前記有効な状態に切り替えることによって、前記1次側共振回路の静電容量を小さくすることを含む、電力供給装置。
【0026】
上記構成の電力供給装置によれば、1次側共振回路の静電容量を小さくすることによって、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下を抑制することができる。静電容量を小さくするための構成である容量減少用コンデンサと容量減少用コンデンサ切替スイッチは、1次コイルと異なり、充電時における2次コイルとの位置関係を考慮する必要がないため、配置の自由度が高い(例えば、1次コイルとは離れた場所にも配置できる)ので、電力供給装置の設計の自由度を損なうことを抑制できる。
【0027】
[適用例9] 適用例1ないし適用例8のいずれかに記載の電力供給装置であって、
前記インダクタンス調整回路は、
前記1次コイルの一部を有効な状態と無効な状態とに切り替えるインダクタンス切替スイッチを備え、
前記特性調整手段による前記調整は、前記インダクタンス切替スイッチをオフからオンにすることにより前記1次コイルの一部を前記有効な状態から前記無効な状態に切り替えることによって、前記1次側共振回路のインダクタンスを小さくすることを含む、電力供給装置。
【0028】
上記構成の電力供給装置によれば、1次側共振回路のインダクタンスを小さくすることによって、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下を抑制することができる。インダクタンスを小さくするための構成である1次コイルの一部を無効とするインダクタンス切替スイッチは、1次コイルを複数用意する場合と比較して、大幅に大きさを小さくできるため、電力供給装置の大型化を効果的に抑制できる。
【0029】
[適用例10] 適用例1ないし適用例9のいずれかに記載の電力供給装置であって、
前記特性調整手段による前記調整は、前記インバータ回路によって前記1次側共振回路に供給される交流の周波数を小さくすることを含む、電力供給装置。
【0030】
上記構成の電力供給装置によれば、前記インバータ回路によって1次側共振回路に供給される交流の周波数を小さくすることによって、1次コイルと2次コイルとの相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下を抑制することができる。また、1次側共振回路には、特別な構成を設ける必要がないため、電力供給装置の大型化を効果的に抑制できる。
【0031】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電力供給装置の制御方法および制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施例における非接触充電を行うシステムの電気的構成を示す図である。
【図2】電力供給装置100を用いて電池システム200の電池240を充電する使用例を示す図である。
【図3】第1実施例の充電処理の処理ステップを示すフローチャートである。
【図4】第1実施例の充電処理の処理ステップを示すフローチャートである。
【図5】1次側共振回路160の状態とスイッチSW1〜SW3の動作の対応を示す動作表である。
【図6】充電制御について説明する図である。
【図7】1次側共振回路160の特性の調整による力率および伝送効率の改善を説明するための図である。
【図8】第2実施例における非接触充電を行うシステムの電気的構成を示す図である。
【図9】第2実施例の充電処理の処理ステップを示すフローチャートである。
【図10】定電流制御によって充電が行われる場合における1次側電流と伝送効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
A.第1実施例:
図1は、第1実施例における非接触充電を行うシステムの電気的構成を示す図である。このシステムは、電力供給装置100と、電池を備える電池システム200とを含んでいる。
【0034】
電力供給装置100は、電池システム200に対して、電池システム200が備える電池を充電するための電力を、電磁誘導を利用して非接触で供給する装置である。電力供給装置100は、電源110と、1次側整流回路120と、インバータ回路130と、電流検出器140と、電圧検出器150と、1次側共振回路160と、制御回路170と、電池システム200と通信を行うための1次側通信回路180とを備えている。
【0035】
電源110は、100Vあるいは200Vの家庭用電源などの交流電源である。1次側整流回路120は、電源110から供給された交流電力を整流して直流電力に変換する回路である。インバータ回路130は、1次側整流回路120から出力された直流電力をスイッチングして任意の周波数の交流電力を生成して1次側共振回路160に供給する回路である。インバータ回路130は、例えば、20kHz(キロヘルツ)程度の周波数の交流電力を生成可能な高周波フルブリッジインバータである。電流検出器140は、1次側共振回路160を流れる電流(以下、1次側電流Iinとも呼ぶ。)を検出する回路である。電圧検出器150は、1次側共振回路160に印可された電圧(以下、1次側電圧Vinとも呼ぶ。)を検出する回路である。
【0036】
1次側共振回路160は、後述する電池システム200の2次側共振回路210に対して非接触で電力を伝送するためのLC直列共振回路である。1次側共振回路160は、直列共振コンデンサとして、標準コンデンサCsと、第1の容量減少用コンデンサC1と、第2の容量減少用コンデンサC2とを備えている。これらの3つのコンデンサは、直列に接続されている。標準コンデンサCsは常に有効な状態にされている。一方、第1の容量減少用コンデンサC1は、第1の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW1によって、有効な状態と無効な状態とに切替可能に構成されている。第2の容量減少用コンデンサC2は、第2の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW2によって、有効な状態と無効な状態とに切替可能に構成されている。
【0037】
1次側共振回路160は、さらに、直列共振コンデンサと直列に配列された1次コイルL1を備えている。1次コイルL1は、例えば、心材としてのフェライトコアにリッツ線を巻いて形成されている。1次コイルL1の一部は、インダクタンス切替スイッチSW3によって、有効な状態と無効な状態に切替可能に構成されている。この結果、インダクタンス切替スイッチSW3を切り替えることによって、1次コイルL1のインダクタンスを2段階に切り替えることができる。ここで、コンデンサやコイルが無効な状態にあるとは、コンデンサやコイルの両極が短絡されて、当該両極間に電位差が生じないようにされている状態にあることを言う。コンデンサやコイルが有効な状態にあるとは、コンデンサやコイルの両極が短絡されておらず、当該両極間に電位差が生じ得る状態にあることを言う。
【0038】
制御回路170は、電力供給装置100の動作を制御する回路であり、CPUとメモリとを備えた汎用のコンピュータ、あるいは、電力供給装置100の制御を実現するために専用に設計されたハードウェアである。制御回路170は、例えば、制御プログラムを実行することによって、力率算出部M1と、インバータ制御部M2と、状態制御部M3と、警告部M4としての機能を実現する。力率算出部M1は、電流検出器140により検出された1次側電流と、電圧検出器150により検出された1次側電圧とに基づいて、1次側共振回路160の力率を算出する。ここで、1次側電流と1次側電圧との位相差をθ(1次側電流が1次側電圧に対して遅れる場合を正とする)とすると、力率φはtanθで表される。インバータ制御部M2は、インバータ回路130を制御して、1次側共振回路160に供給される交流電力の周波数を所望の値に制御する。状態制御部M3は、力率の値に基づいて、1次側共振回路160の状態を制御する。具体的には、状態制御部M3は、第1の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW1、第2の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW2、インダクタンス切替スイッチSW3の切替制御を行って、1次側共振回路160の状態を、後述する無調整状態、1段階調整状態、2段階調整状態、3段階調整状態のいずれかに制御する。警告部M4は、力率の値に基づいて、ユーザーに対する警告を行う。警告は、電池システム200に対する電力の供給に支障がある旨を利用者に対して通知するものであり、例えば、車両内のアラーム、利用者の家の表示装置への表示、利用者の携帯電話へのメールなどの態様で行われる。
【0039】
電池システム200は、2次側共振回路210と、2次側整流回路220と、充電回路230と、電池240と、モータ駆動回路250と、モータ260と、2次側通信回路270とを備えている。電池240は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの充電を行うことで繰り返し直流電源として利用可能な充電池である。モータ駆動回路250は、電池240から供給される直流電力をスイッチングして交流電力を生成して、生成した交流電力をモータ260に供給してモータ260を駆動する回路である。
【0040】
2次側共振回路210は、電力供給装置100の1次側共振回路160から電力を受け取るためのLC並列共振回路である。2次側共振回路210は、2次コイルL2と、2次コイルL2と並列に接続された並列共振コンデンサCpとを備えている。2次コイルL2は、1次コイルL1と同様に、例えば、心材としてのフェライトコアにリッツ線を巻いて形成されている。2次側整流回路220は、2次側共振回路210にて受け取った交流を整流して直流に変換する回路である。充電回路230は、2次側整流回路220から出力された直流電力を、降圧または昇圧して所望の電圧の電力に変換し、電池240に供給する回路である。これにより、充電回路230は、電池240を充電する。2次側通信回路270は、電力供給装置100の1次側通信回路180と通信を行う回路である。
【0041】
図2は、電力供給装置100を用いて、電池システム200の電池240を充電する使用例を示す図である。この例では、電池システム200は、車両に搭載されており、電池システム200の2次コイルL2は、中心軸が鉛直方向と平行になるように、車両本体の下端近傍に配置されている。電力供給装置100は、少なくとも1次コイルL1が、車両が駐車可能な地面の下に設置されている。1次コイルL1は、中心軸が鉛直方向と平行になるように、地表の近傍に配置されている。
【0042】
図2に示す使用例における充電の動作(充電処理)について説明する。図3および図4は、第1実施例の充電処理の処理ステップを示すフローチャートである。図5は、1次側共振回路160の状態とスイッチSW1〜SW3の動作の対応を示す動作表である。図6は、充電制御について説明する図である。図7は、1次側共振回路160の特性の調整による力率および伝送効率の改善を説明するための図である。
【0043】
先ず、充電を行う際は、ユーザーが、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置になるように、車両を駐車する。適正位置は、本実施例では、1次コイルL1の中心軸と2次コイルL2の中心軸が、同一直線上に並んだ位置である。この時の1次コイルL1と2次コイルL2との距離を適正ギャップとも呼ぶ。しかしながら、現実には、車両の停止位置のずれ、車両のタイヤの大きさの変化などにより、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置は、適正位置からコイルの中心軸方向および/または中心軸と垂直な方向にずれ得る。車両の駐車後、例えば、ユーザーが、図示しない操作手段(ボタンなど)を介して充電指示を行うと、充電処理が開始される。
【0044】
充電処理が開始されると、制御回路170の状態制御部M3は、1次側共振回路160を無調整状態に制御する(図3:ステップS10)。具体的には、図5に示すように、状態制御部M3は、第1の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW1をONに、第2の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW2をONに、インダクタンス切替スイッチSW3をOFFに制御する。無調整状態では、標準コンデンサCsが有効となり、第1の容量減少用コンデンサC1と、第2の容量減少用コンデンサC2は無効となる。また、1次コイルL1の全部が有効となる。
【0045】
次に、電力供給装置100と電池システム200が協働して充電制御を行う(ステップS20)。具体的には、まず、電力供給装置100の制御回路170のインバータ制御部M2がインバータ回路130をスイッチング制御して、周波数fの交流電力を1次側共振回路160に供給する。すると、1次コイルL1に交流電流が流れるので、1次コイルL1の周囲に磁界が生成される。この磁界は、電磁誘導によって2次側共振回路210の2次コイルL2に起電力を発生させる。この結果、電池システム200に電力が非接触で供給される。言い換えれば、1次コイルL1と2次コイルL2とがトランスを形成していると言える。
【0046】
電池システム200に電力が供給されると、電池システム200の充電回路230は、供給された電力を用いて電池240の充電を行う。具体的には、図6に示すように、充電回路230は、充電の開始から電池240のSOC(State of Charge:充電率)が規定値を超える時刻Texまでの間においては、電池240に供給される電流が一定になるように充電を行う(定電流制御)。充電回路230は、時刻Texから充電終了までの間においては、電池240に印加される電圧が一定になるように充電を行う(定電圧制御)。このような制御を行うことによって、充電回路230は、速やかに、かつ、過充電を抑制しつつ、電池240を充電することができる。
【0047】
充電制御の開始直後に、制御回路170の力率算出部M1は、電流検出器140および電圧検出器150から電気信号を取得して、1次側電流Iinおよび1次側電圧Vinをそれぞれ検出する(ステップS30)。力率算出部M1は、検出した1次側電流Iinおよび1次側電圧Vinに基づいて、力率φaを算出する(ステップS40)。
【0048】
ここで、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置にある状態で、無調整状態の1次側共振回路160の共振周波数と、2次側整流回路220の共振周波数とが同じになるように回路が構成される。また、上述した交流電力の周波数fは当該共振周波数に設定される。このような理想的な状態では、1次側電流と1次側電圧との位相差は0となり、力率は1となる。このような共振型非接触電力伝送では、1次コイルL1と、2次コイルL2とが非接触であっても、高い伝送効率で電力を伝送できる。ここで、伝送効率は、(2次側電流×2次側電圧)/(1次側電流×1次側電圧)で表される。
【0049】
力率が1である理想的な共振状態は、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置にあるときに限られる。適正位置からの位置ずれは、共振状態を理想的な共振状態から乖離させる。この結果、力率が1より低下すると共に、1次側共振回路160から2次側共振回路210への電力の伝送効率が低下する。伝送効率が低下すると、伝送効率の低下分だけ1次側電流Iinが狙い値より増大する(過電流)。この電流の増大分に対応する熱エネルギーがインバータ回路130におけるスイッチング損失として放出され、インバータ回路130の発熱となる。力率は、伝送効率を表す指標であると言える。本実施例では、伝送効率の目標値(目標効率)に相当する力率(以下、目標力率φnmと呼ぶ。)をしきい値として用いている。
【0050】
力率φaが算出されると、制御回路170は、算出された力率φaが目標力率φnm以上であるか否かを判断する(ステップS50)。力率φaが目標力率φnm以上であると判断すると(ステップS50:YES)、制御回路170は、力率φaを基準力率φXとしてメモリに記憶する(ステップS60)。力率φaが目標力率φnm以上である場合は、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれが小さく、その結果、伝送効率があまり低下しておらず、目標効率を達成していると判断できる。
【0051】
一方、力率φaが目標力率φnmを下回ると判断すると(ステップS50:NO)、制御回路170の状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を1段階調整状態に制御する(ステップS70)。すなわち、状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を、無調整状態から1段階調整状態に切り替え、第1の容量減少用コンデンサC1に電力が印加される様にする。具体的には、状態制御部M3は、図5に示すように、第1の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW1をONからOFFに切り替える。すなわち、状態制御部M3は、第1の容量減少用コンデンサC1を無効な状態から有効な状態に切り替える。力率φaが目標力率φnmを下回る場合は、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれが大きく、その結果、伝送効率が低下して、目標効率を達成していないと判断できる。このため、かかる場合には、力率が大きくなるように1次側共振回路160の特性を調整すべく、状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を、無調整状態から1段階調整状態に切り替えている。
【0052】
ここで、力率が大きくなるように1次側共振回路160の特性を調整する具体的手法について説明する。充電中に電力供給装置100の1次側共振回路160から見たインピーダンスZは、以下の式(1)で表される。
【数1】


励磁リアクタンスXは、電力の伝送に有効な磁束に相当し、1次側漏れリアクタンスXおよび2次側漏れリアクタンスXは、電力の伝送に無効な磁束に相当する。また、1次コイルL1から2次コイルL2への電力の伝送効率の最大値ηmaxは以下の式(2)で表される。
【数2】

【0053】
ここで、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置にあり、かつ、1次側共振回路160が無調整状態にある状態を標準状態と呼ぶ。標準状態では、力率が1である。力率が1であることは、式(1)の虚数部=0であることに等しい。1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置のずれが発生すると、励磁リアクタンスXが減少し、1次側漏れリアクタンスXおよび2次側漏れリアクタンスXが増大する。その結果、力率が1より低下する、すなわち、式(1)の虚数部=0の関係が崩れて、虚数部は正の値になる。また、式(2)の値bが減少するので、伝送効率が低下することがわかる。
【0054】
力率を大きくすることは、虚数部を0に近づけることに等しい。虚数部が正の値になっている場合に虚数部を0に近づける手法には、直列共振コンデンサのリアクタンスXを大きくすることと、励磁リアクタンスXを増加させることと、2次側漏れリアクタンスXを減少させることが、式(1)から考えられる。ここで、直列共振コンデンサのリアクタンスX=1/2πfCである(f:1次側共振回路160に供給される交流の周波数、C:直列共振コンデンサの静電容量)。直列共振コンデンサのリアクタンスXを大きくするには、直列共振コンデンサの静電容量Cを小さくする、あるいは、1次側共振回路160に供給される交流の周波数を小さくすれば良い。また、励磁リアクタンスXを増加させ、2次側漏れリアクタンスXを減少させるには、1次コイルL1のインダクタンスを小さくすれば良い。
【0055】
つまり、力率が大きくなるように1次側共振回路160の特性を調整する具体的手法には、以下の3つが考えられる。
1)直列共振コンデンサの静電容量Cを小さくする
2)1次側共振回路160に供給される交流の周波数を小さくする
3)1次コイルL1のインダクタンスを小さくする
力率が大きくなるように、1次側共振回路160の特性を調整すると、励磁リアクタンスXの増加、および/または、2次側漏れリアクタンスXの減少が生じるので、式(2)から伝送効率が改善することが解る。
【0056】
図7を参照して概念的に説明すると、力率と、伝送効率とは、力率が大きいほど、伝送効率が大きくなる直線をなす関係にある。そして、1次側共振回路160が無調整状態である場合と、1次側共振回路160が調整状態である場合とで、それぞれ異なる直線となる。標準状態、すなわち、1次側共振回路160が無調整状態で、かつ、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置にある場合は、図7の点Aに示すように、力率は最大値である1となり、伝送効率も本システムの最大値であるηaとなる。図7の点Bは、1次側共振回路160が無調整状態である場合の力率が目標力率φnmを下回る値Ψbとなる程度に、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置からずれた状態(以下、位置ずれ大の状態と呼ぶ。)に対応する。この場合の伝送効率ηbは、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置にある場合の伝送効率ηaと比較して著しく低い値となる。ここで、1次側共振回路160の状態を無調整状態から調整状態に切り替えると、図7において矢印Lで示すように、力率と伝送効率との関係を示す直線は、同じ力率の場合の伝送効率が低くなる他の直線に変化してしまう。しかしながら、1次側共振回路160の状態を無調整状態から調整状態に切り替えると、位置ずれ大の状態のままで、力率を大きくすることができる。図7の例では、矢印Mで示すように、1次側共振回路160の状態を無調整状態から調整状態に切り替えることによって、力率が、値Ψbから目標力率φnmより大きい値Ψcまで大きくなったことが示されている。この結果、位置ずれ大の状態のままで、伝送効率を値ηbから値ηcに改善することができる(図7の点C)。
【0057】
図3のフローチャートに戻って、説明を続ける。ステップS70において1次側共振回路160が無調整状態から1段階調整状態に切り替えられると、無調整状態と比べて、直列共振コンデンサとして有効なコンデンサが、標準コンデンサCsと第1の容量減少用コンデンサC1の2つに増える。このように直列に接続されたコンデンサが増加すると、合成した静電容量は小さくなるので、1次側共振回路160の直列共振コンデンサの静電容量は小さくなる。すなわち、ステップS70では、1次側共振回路160の直列共振コンデンサの静電容量は小さくすることによって、力率を大きくしている。
【0058】
その後、充電制御を続けながら(ステップS80)、制御回路170の力率算出部M1は、再び、1次側電流Iinおよび1次側電圧Vinをそれぞれ検出し(ステップS90)、検出した1次側電流Iinおよび1次側電圧Vinに基づいて、力率φbを算出する(ステップS100)。続いて、制御回路170は、算出された力率φbが目標力率φnm以上であるか否かを判断する(ステップS110)。力率φbが目標力率φnm以上であると判断すると(ステップS110:YES)、制御回路170は、力率φbを基準力率φXとしてメモリに記憶する(ステップS120)。力率φbが目標力率φnm以上である場合は、ステップS70による1次側共振回路160の特性の調整によって、目標効率を達成したと判断できる。
【0059】
一方、力率φbが目標力率φnmを下回ると判断すると(ステップS110:NO)、制御回路170の状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を2段階調整状態に制御する(ステップS130)。すなわち、状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を、1段階調整状態から2段階調整状態に切り替える。具体的には、状態制御部M3は、図5に示すように、第2の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW2をONからOFFに切り替えて、第2の容量減少用コンデンサC2を無効な状態から有効な状態に切り替え、第2の容量減少用コンデンサC2に電力が印加される様にする。力率φbが目標力率φを下回る場合は、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれが大きく、1次側共振回路160を1段階調整状態としてもなお伝送効率が低く、目標効率を達成していないと判断できる。このため、かかる場合には、力率がさらに大きくなるように1次側共振回路160の特性を調整すべく、状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を、1段階調整状態から2段階調整状態に切り替えている。
【0060】
1次側共振回路160が2段階調整状態に切り替えられると、直列共振コンデンサとして有効なコンデンサが、標準コンデンサCsと第1の容量減少用コンデンサC1と第2の容量減少用コンデンサC2の3つに増える。この結果、1次側共振回路160の直列共振コンデンサの静電容量はさらに小さくなり、力率が大きくなる。
【0061】
その後、充電制御を続けながら(ステップS140)、制御回路170の力率算出部M1は、再び、1次側電流Iinおよび1次側電圧Vinをそれぞれ検出し(ステップS150)、力率φcを算出する(ステップS160)。続いて、制御回路170は、算出された力率φcが目標力率φnm以上であるか否かを判断する(ステップS170)。力率φcが目標力率φnm以上であると判断すると(ステップS170:YES)、制御回路170は、力率φcを基準力率φXとしてメモリに記憶する(ステップS180)。力率φcが目標力率φnm以上である場合は、ステップS130による1次側共振回路160の特性の調整によって、目標効率を達成したと判断できる。
【0062】
一方、力率φcが目標力率φnmを下回ると判断すると(ステップS180:NO)、制御回路170の状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を3段階調整状態に制御する(ステップS190)。すなわち、状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を、2段階調整状態から3段階調整状態に切り替える。具体的には、状態制御部M3は、図5に示すように、インダクタンス切替スイッチSW3をOFFからONに切り替えて、1次コイルL1の一部を有効な状態から無効な状態に切り替え、1次コイルL1のインダクタンスを小さくさせる。力率φcが目標力率φnmを下回る場合は、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれが大きく、1次側共振回路160を2段階調整状態としてもなお伝送効率が低く、目標効率を達成していないと判断できる。このため、かかる場合には、力率がさらに大きくなるように1次側共振回路160の特性を調整すべく、状態制御部M3は、1次側共振回路160の状態を、2段階調整状態から3段階調整状態に切り替えている。
【0063】
1次側共振回路160が3段階調整状態に切り替えられると、1次コイルL1の一部が無効になることにより、1次コイルL1のインダクタンスが小さくなる。この結果、力率が大きくなる。
【0064】
その後、充電制御を続けながら(ステップS200)、制御回路170の力率算出部M1は、再び、1次側電流Iinおよび1次側電圧Vinをそれぞれ検出し(ステップS210)、力率φdを算出する(ステップS220)。続いて、制御回路170は、算出された力率φdが目標力率φnm以上であるか否かを判断する(ステップS230)。力率φdが目標力率φnm以上であると判断すると(ステップS230:YES)、制御回路170は、力率φdを基準力率φXとしてメモリに記憶する(ステップS240)。力率φdが目標力率φnm以上である場合は、ステップS190による1次側共振回路160の特性の調整によって、目標効率を達成したと判断できる。
【0065】
一方、力率φdが目標力率φnmを下回ると判断すると(ステップS240:NO)、制御回路170の警告部M4は、充電制御を中止して、ユーザーに対する警告を実行する(図4:ステップS300)。力率φdが目標力率φnmを下回る場合は、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれが大きく、1次側共振回路160を3段階調整状態としてもなお伝送効率が低く、目標効率を達成していないと判断できる。かかる場合には、1次側共振回路160の特性の調整では、目標効率の達成は困難であると判断し、警告部M4は、ユーザーに警告して、車両の駐車位置の修正などの対応を促す。
【0066】
ステップS60、S120、S180、S240のいずれかで、目標力率φnmを達成した場合には、充電制御を継続する(ステップS250)。そして、充電制御を続けながら、制御回路170の力率算出部M1は、再び、1次側電流Iinおよび1次側電圧Vinをそれぞれ検出し(ステップS260)、力率φrを算出する(ステップS270)。そして、制御回路170は、メモリに記憶された基準力率φXと算出された力率φrとの差分Δφr(力率の基準力率φXからの変化量Δφr)が、異常検出用のしきい値である異常変化量Δφchgを超えているか否かを判断する(ステップS280)。変化量Δφrが異常変化量Δφchgを超えていると判断すると(ステップS280:YES)、制御回路170の警告部M4は、充電制御を中止して、ユーザーに対する警告を実行する(ステップS300)。変化量Δφrが異常変化量Δφchgを超えている場合は、充電中に何らかの異常が発生したと判断できる。充電中の異常には、1次コイルL1と2次コイルL2との間(図2の例では、車両と地表との間)への空き缶などの金属異物の侵入などが考えられる。
【0067】
一方、差分Δφrが異常変化量Δφchgを超えていないと判断すると(ステップS280:NO)、制御回路170は、充電が終了したか否かを判断する(ステップS290)。充電の終了は、電池システム200の充電回路230が、2次側通信回路270を用いた通信により、制御回路170に通知する。制御回路170は、当該通知の有無により充電が終了したか否かを判断する。充電が終了していない場合には(ステップS290:NO)、制御回路170は、ステップS250に戻って、上述した処理を繰り返す。一方、充電が終了した場合には(ステップS290:YES)、制御回路170は、充電を終了する。
【0068】
ステップS250〜S300の処理内容は、言い換えれば、
1)目標力率φnmを達成して充電を継続する場合における充電中において、力率の基準力率φXからの変化量Δφrをモニタリングする
2)モニタリングしている変化量Δφrが異常変化量Δφchgを超えるか否かを監視する
3)モニタリングしている変化量Δφrが異常変化量Δφchgを超えたら、充電に関する異常が発生したと判断して、充電を中止すると共にユーザーに警告する
という内容である。
【0069】
以上の説明から解るように、本実施例における標準コンデンサCsと、第1の容量減少用コンデンサC1と、第2の容量減少用コンデンサC2と、第1の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW1と、第2の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW2との全体が、特許請求の範囲における直列コンデンサ調整回路に対応し、本実施例におけるインダクタンス切替スイッチSW3が、特許請求の範囲におけるインダクタンス調整回路に対応し、本実施例における状態制御部M3が、特許請求の範囲における特性調整手段に対応する。
【0070】
以上説明した第1実施例によれば、1次側電流Iinと1次側電圧Vinとに基づいて力率φa〜φcを算出し、当該力率φa〜φcが目標力率φnmを下回った場合に、力率を大きくするように、1次側共振回路160における直列共振コンデンサの静電容量、または、インダクタンスを調整する。この結果、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置が適正位置からずれた場合でも、1次側共振回路160および2次側共振回路210の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態に近づけることができる。そして、例えば、かかる共振状態の修正のために、多数の1次コイルを用意する必要もないため、電力供給装置100の大型化を抑制できる。したがって、電力供給装置100の大型化を招くことなく、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下を抑制することができる。電力伝送の効率の低下は、1次側電流Iinの増加(過電流)を招き、過電流は、発熱等の問題を引き起こす。
【0071】
また、第1実施例によれば、力率φa〜φdに基づいて、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下の発生を判断している。当該力率φa〜φdは、電池240の充電状況、例えば、充電回路230の制御の種類(定電流制御であるか、定電圧制御であるか)、2次側電流、2次側電圧などの電池システム200の状況によって変化しないので、電池システム200と通信することなく、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下の発生を電力供給装置100だけで適切に判断することができる。
【0072】
また、1次側共振回路160は、3段階に亘って、特性を調整可能に構成されている。そして、制御回路170は、一段階の調整を行うごとに、力率と目標力率φnmとの比較を行って、力率が目標力率φnm以上になるまで、最大3回に亘って、特性の調整を繰り返している。そして、1次側共振回路160の特性を3回調整するまでに、力率が目標力率φnm以上になった場合には充電を継続している。すなわち、力率としきい値である目標力率φnmとを比較しながら、3段階に亘って、1次側共振回路160および2次側共振回路210の共振状態を、適正な共振状態に近づけることができる。この結果、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置が適正位置からずれた場合に、1次側共振回路160および2次側共振回路210の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態により精度良く修正し、電池を充電することができる。なお、上記実施例では、3段階に亘って、1次側共振回路160の特性を調整可能としているが、第1の容量減少用コンデンサの数を適宜、変更すること等により、任意のn段階(nは自然数)に亘って、1次側共振回路160の特性を調整可能に構成しても良い。
【0073】
さらに、第1実施例によれば、3段階の調整を行ってもなお力率が目標力率φnmを下回る場合には、ユーザーに対して警告を行う。この結果、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置が十分な調整ができないほどずれている場合には、ユーザーにその旨を認識させることができる。この結果、ユーザーは、例えば、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置を変更する、すなわち、電池システム200が搭載された車両の駐車位置の修正などの対応を取ることができる。なお、警告を省略して、充電を中止することとしても良い。
【0074】
また、第1実施例によれば、力率が目標力率φnmを達成した後の充電期間中に、力率の変化量Δφrと異常変化量Δφchgとの比較を、継続的に行って、充電に関する異常の発生を検出することができる。この結果、充電に関する異常が発生した場合に、充電の中止や、ユーザーへの通知などの対応を取ることができるので、充電に関する異常に起因する発熱等を抑制することができる。なお、変化量Δφrをモニタリングして充電に関する異常を検出する処理は、省略され得る。
【0075】
B.第2実施例:
図8は、第2実施例における非接触充電を行うシステムの電気的構成を示す図である。第2実施例の電池システム200の電気的構成は、第1実施例の電池システム200と同一であるので、図8において図1と同一の符号を付し、その説明を省略する。第2実施例の電力供給装置100Aの電気的構成において、第1実施例の電力供給装置100と異なる点は、制御回路170Aにおいて、力率算出部M1に代えて、電流取得部M1Aを備えている点と、電圧検出器150を備えていない点である。第2実施例の電力供給装置100Aのその他の構成は、第1実施例の電力供給装置100と同一であるので、同一の構成については、図8において図1と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図9は、第2実施例の充電処理の処理ステップを示すフローチャートである。図9のフローチャートにおいて、図3、図4に示す第1実施例のフローチャートと同一の処理ステップについては、図3、図4と同一の符号を付し、異なるステップについては、符号の末尾に「A」を付している。充電処理において、上記第1実施例では、力率を目標力率φnmと比較することにより、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれに起因する伝送効率の低下が発生しているか否かを、判断している。これに代えて、第2実施例では、1次側電流を狙い値である目標電流より大きな値に設定された電流しきい値Inmと比較することにより、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれに起因する伝送効率の低下が発生しているか否かを、判断している。第2実施例での充電制御は、定電流制御(2次側電流を一定に保つ制御)によって行われる。このため、1次側電流の狙い値は、一定値となり、電流しきい値Inmについても一定値を用いることができる。充電制御を定電圧制御で行う場合には、1次側電流Iinの狙い値は、電池240の充電状況(SOCなどによって認識される)に応じて変動する。したがって、電流しきい値Inmについても1次側電流Iinの狙い値に応じて変動させれば良い。
【0077】
具体的には、図9に示すように、無調整状態で充電を開始した直後に、制御回路170Aの電流取得部M1Aは、1次側電流Iaを検出し(ステップS30A)、1次側電流Iaと電流しきい値Inmを比較している(ステップS50A)。その結果、1次側電流Iaが電流しきい値Inmを超えている場合には(ステップS50A:NO)、制御回路170Aは、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれに起因して許容範囲以上の伝送効率の低下が発生し、これに伴う過電流が発生していると判断できる。この場合には、制御回路170Aの状態制御部M3は、第1実施例と同様に、1次側共振回路160の状態を無調整状態から1段階調整状態に切り替えている(ステップS70)。そして、1次側電流Iaが電流しきい値Inm以下である場合には(ステップS50A:YES)、制御回路170Aは、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置ずれに起因する伝送効率の低下は許容範囲であると判断する。この場合には、制御回路170Aは、1次側電流Iaを基準電流IXとして記憶し(ステップS60A)、充電を継続する。
【0078】
1段階調整状態に切り替えた後に、さらに2段階調整状態に切り替えるか、そのまま充電を継続するかを判断する処理(ステップS90A〜S120A)と、2段階調整状態に切り替えた後に、さらに3段階調整状態に切り替えるか、そのまま充電を継続するかを判断する処理(ステップS150A〜S180A)と、3段階調整状態に切り替えた後に、充電を継続するか、充電を中止してユーザーに警告するかを判断する処理(ステップS210A〜S140A)についても、同様に、1次側電流Ib〜Idと電流しきい値Inmとの比較に基づいて行っている。
【0079】
図10は、定電流制御によって充電が行われる場合における1次側電流Iinと伝送効率との関係を示す図である。定電流制御によって充電が行われる場合において、1次側電流Iinと、伝送効率とは、1次側電流Iinが大きいほど伝送効率が小さくなるように、上に凸の曲線をなす関係にある。そして、1次側共振回路160が無調整状態である場合と、1次側共振回路160が調整状態である場合とで、それぞれ異なる曲線となる。標準状態、すなわち、1次側共振回路160が無調整状態で、かつ、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置にある場合は、図10の点Dに示すように、1次側電流Iinは最小値である狙い値Idとなり、伝送効率は本システムの最大値であるηdとなる。図10の点Eは、1次側共振回路160が無調整状態である場合の1次側電流Iinが上述した電流しきい値Inmを超える値Ieとなる程度に、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置からずれた状態(位置ずれ大の状態)に対応する。この場合の伝送効率ηeは、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置にある場合の伝送効率ηdと比較して著しく低い値となる。ここで、1次側共振回路160の状態を無調整状態から調整状態に切り替えると、図10において矢印Nで示すように、1次側電流Iinと伝送効率との関係を示す直線は、同じ1次側電流Iinの場合の伝送効率が低くなる他の直線に変化してしまう。しかしながら、1次側共振回路160の状態を無調整状態から調整状態に切り替えると、位置ずれ大の状態のままで、1次側電流Iinを小さくするとともに、伝送効率を改善することができる。図10の例では、矢印Oで示すように、1次側共振回路160の状態を無調整状態から調整状態に切り替えることによって、1次側電流Iinが値Ieから値Ifへと小さくなり、伝送効率が値ηeから値ηfへと向上していることが解る(図7の点E、点F参照)。
【0080】
また、上記第1実施例では、目標力率φnmを達成して充電を継続している場合において、力率の基準力率φXからの変化量Δφrをモニタリングして、モニタリングしている変化量Δφrと異常変化量Δφchgとを比較することによって、充電に関する異常を検出している。これに代えて、第2実施例では、電流しきい値Inm以下の1次側電流Iinを実現して充電を継続している場合において、基準電流IXからの1次側電流Iinの変化量ΔIrをモニタリングしている。そして、モニタリングしている変化量ΔIrが異常変化量ΔIchgを超えるか否かによって、充電に関する異常が発生したか否かを判断している。
【0081】
具体的には、図9に示すように、ステップS60A、S120A、S180A、S240Aのいずれかで、電流しきい値以下の1次側電流Iinを実現した場合には、充電制御を続けながら(ステップS250)、制御回路170の電流取得部M1Aは、1次側電流Irを検出する(ステップS260A)。そして、制御回路170は、検出された1次側電流Irのメモリに記憶された基準電流IXからの変化量ΔIrが、異常検出用のしきい値である異常変化量ΔIchgを超えているか否かを判断する(ステップS280A)。変化量ΔIrが異常変化量ΔIchgを超えていると判断すると(ステップS280A:YES)、第1実施例と同様に、制御回路170の警告部M4は、充電制御を中止して、ユーザーに対する警告を実行する(ステップS300)。一方、変化量ΔIrが異常変化量ΔIchgを超えていないと判断すると(ステップS280A:NO)、制御回路170は、充電が終了したか否かを判断し(ステップS290)、充電が終了していない場合には(ステップS290:NO)、ステップS250に戻って、上述した処理を繰り返す。一方、充電が終了した場合には(ステップS290:YES)、制御回路170は、充電を終了する。
【0082】
以上説明した第2実施例によれば、1次側電流Iinが狙い値より大きな値である電流しきい電流しきい値Inmを超えた場合に、1次側電流Iinが小さくなるように、すなわち、狙い値に近づくように、1次側共振回路160における直列共振コンデンサの静電容量、または、インダクタンスを調整する。この結果、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置が適正位置からずれた場合でも、1次側共振回路160および2次側共振回路210の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態に近づけることができる。そして、例えば、かかる共振状態の修正のために、多数の1次コイルを用意する必要もないため、電力供給装置100Aの大型化を抑制できる。したがって、電力供給装置100Aの大型化を招くことなく、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下、および、当該効率の低下に起因する1次側電流の増加(過電流)による発熱等の問題を抑制することができる。
【0083】
また、第2実施例によれば、1次側電流Iinだけを基準にして、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する電力伝送の効率の低下の発生を判断するので、簡易な構成で当該効率の低下の発生を判断できる。
【0084】
また、1次側共振回路160は、3段階に亘って、特性を調整可能に構成されている。そして、制御回路170は、一段階の調整を行うごとに、1次側電流Iinとしきい電流しきい値Inmとの比較を行って、1次側電流Iinが電流しきい値Inm以下になるまで、最大3回に亘って、特性の調整を繰り返している。そして、1次側共振回路160の特性を3回調整するまでに、1次側電流Iinが電流しきい値Inm以下になった場合には充電を継続している。すなわち、1次側電流Iinと電流しきい値Inmとを比較しながら、3段階に亘って、1次側共振回路160および2次側共振回路210の共振状態を、適正な共振状態に近づけることができる。この結果、第1実施例と同様に、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置が適正位置からずれた場合でも、1次側共振回路160および2次側共振回路210の共振状態を、当該ずれた位置における適正な共振状態により精度良く修正し、電池を充電することができる。
【0085】
さらに、第2実施例によれば、3段階の調整を行ってもなお1次側電流Iinが電流しきい値Inmを超えている場合には、ユーザーに対して警告を行う。この結果、第1実施例と同様に1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置が十分な調整ができないほどずれている場合には、ユーザーにその旨を認識させることができる。
【0086】
また、第2実施例によれば、電流しきい値Inm以下の1次側電流Iinを実現した後の充電期間中に、1次側電流の変化量ΔIrと異常変化量ΔIchgとの比較を、継続的に行って、充電に関する異常の発生を検出することができる。この結果、第1実施例と同様に、充電に関する異常が発生した場合に、充電の中止や、ユーザーへの通知などの対応を取ることができるので、充電に関する異常に起因する発熱等を抑制することができる。
【0087】
C.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0088】
・第1変形例:
上記実施例では、上述した1次側共振回路160の特性を調整する3つの具体的手法、すなわち、
1)直列共振コンデンサの静電容量Cを小さくする
2)1次側共振回路160に供給される交流の周波数を小さくする
3)1次コイルL1のインダクタンスを小さくする
のうち、1)と3)の手法、すなわち、1次側共振回路160のリアクタンスを調整する手法を用いている。1)と3)の手法と共に、または、これに代えて、2)の手法を用いても良い。この場合は、制御回路170のインバータ制御部M2によるインバータ回路130のスイッチング制御を変更して、1次側共振回路160に供給される交流電力の周波数fを標準状態より小さくすれば良い。こうすれば、1次コイルL1に対する2次コイルL2の位置が適正位置からずれた場合に、電力供給装置100および電池システム200から成るシステムの力率を上昇させると共に、電力の伝送効率を向上させることができる。上記1)〜3)の手法は、適宜、組み合わせて用いられても良いし、単独で用いられても良い。
【0089】
ここで、上記の3つの具体的手法の利点について述べる。1)の手法、すなわち、直列共振コンデンサの静電容量を小さくする場合には、静電容量を小さくするための構成(上記実施例では、第1の容量減少用コンデンサC1、第2の容量減少用コンデンサC2、第1の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW1、第2の容量減少用コンデンサ切替スイッチSW2)は、1次コイルL1と異なり、充電時における2次コイルL2との位置関係を考慮する必要がないため、配置の自由度が高い(例えば、1次コイルL1とは離れた場所にも配置できる)ので、電力供給装置100、100Aの設計の自由度を損なうことを抑制できる。
【0090】
2)の手法、すなわち、1次側共振回路160に供給される交流の周波数fを小さくする場合には、インバータ回路130のスイッチング制御を変更するだけで良いので、1次側共振回路160に、特別な構成を何ら設ける必要がなく、電力供給装置100、100Aの大型化を効果的に抑制できる。また、周波数fは、多段階に変更することが容易である。
【0091】
3)の手法、すなわち、1次コイルL1のインダクタンスを小さくする場合には、インダクタンスを小さくするための構成であるインダクタンス切替スイッチSW3は、1次コイルを複数用意する場合と比較して、大幅に大きさを小さくできるため、電力供給装置100、100Aの大型化を効果的に抑制できる。
【0092】
・第2変形例:
上記実施例では、スイッチSW1〜SW3を用いて、段階的に(非連続に)、1次側共振回路160の特性を調整しているが、連続的に1次側共振回路160の特性を調整しても良い。例えば、バリアブルコンデンサを用いて、1次側共振回路160の直列共振コンデンサの静電容量を調整することにより、伝送効率を改善しても良い。
【0093】
・第3変形例:
上記第1実施例における伝送効率の低下を力率に基づいて判断する処理と、第2実施例における伝送効率の低下を1次側電流に基づいて判断する処理と、の両方を1つの電力供給装置において行っても良い。例えば、力率に基づく判断と、1次電流に基づく判断とを二重で行っても良い。こうすれば、充電に関する異常の検出や、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれを、ダブルチェックにより精度良く検出することができる。
【0094】
・第4変形例:
第1実施例および第2実施例において、充電処理のステップS20、S80、S140、S200の充電制御は、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する伝送効率の低下が発生しているか否かを判断するための充電制御であるため、ステップS250以降の充電制御より、1次側電流および2次側電流を小さく抑えることが好ましい。こうすれば、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する伝送効率の低下が発生している場合に、意図せず大きな1次側電流が流れることを抑制することができる。例えば、電池システム200の充電回路230は、充電処理の開始から所定時間(スタンバイ時間)は2次側電流を小さくし、所定時間経過後に2次側電流を大きくしても良い。そして、電力供給装置100の制御回路170は、充電処理の開始から所定時間内に、1次コイルL1と2次コイルL2との相対的な位置ずれに起因する伝送効率の低下が発生しているか否かの判断を行うこととすれば良い。
【符号の説明】
【0095】
100、100A...電力供給装置
110...電源
120...1次側整流回路
130...インバータ回路
140...電流検出器
150...電圧検出器
160...1次側共振回路
170、170A...制御回路
180...1次側通信回路
200...電池システム
210...2次側共振回路
220...2次側整流回路
230...充電回路
240...電池
250...モータ駆動回路
260...モータ
270...2次側通信回路
Cs、Cp、C1、C2...コンデンサ
L1、L2...コイル
SW1、SW2、SW3...切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次コイルを含む2次側共振回路と電池とを含む電池システムに対して、前記電池の充電のための電力を、電磁誘導を利用して非接触で供給する電力供給装置であって、
電磁誘導により前記2次コイルを介して前記電池システムに交流電力を供給するための磁界を発生する1次コイルを含む1次側共振回路と、
前記1次側共振回路の電流である1次側電流を検出する電流検出手段と、
前記1次側共振回路の電圧である1次側電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電流検出手段により検出された前記1次側電流と前記電圧検出手段により検出された前記1次側電圧とに基づいて、力率を算出する力率算出手段と、
前記1次側共振回路における直列共振コンデンサ調整回路およびインダクタンス調整回路のうち少なくとも一方と、
前記1次側共振回路に前記交流電力を供給するためのインバータ回路と、
前記力率算出手段により算出された前記力率と目標効率に相当するしきい値とを比較し、前記力率が前記しきい値を下回る場合に、前記力率を大きくするように、前記直列共振コンデンサ調整回路の静電容量、および、前記インダクタンス調整回路のインダクタンス、および、前記インバータ回路によって前記1次側共振回路に供給される前記交流電力の周波数、のうちの少なくとも1つを調整する特性調整手段と、
を備える電力供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給装置であって、
前記特性調整手段は、n段階(nは2以上の自然数)に亘って前記調整を実行可能に構成され、一段階の前記調整を行うごとに、前記力率と前記しきい値との比較を行って、前記力率が前記しきい値以上になるまで、前記調整を最大n回繰り返し、
前記調整がn回以内に前記力率が前記しきい値以上になった場合に充電を継続する、電力供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力供給装置であって、さらに、
n段階目の前記調整を行った後に、前記力率が前記しきい値を下回る場合には、ユーザーに対して警告を行う警告手段を備える、電力供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電力供給装置であって、さらに、
充電中において、モニタリングされている前記力率の変化量と所定の異常変化量との比較を継続的に行い、前記力率の変化量が前記異常変化量を超えた場合には、充電に関する異常が発生したと判断する異常検出手段を備える、電力供給装置。
【請求項5】
2次コイルを含む2次側共振回路と電池とを含む電池システムに対して、前記電池の充電のための電力を、電磁誘導を利用して非接触で供給する電力供給装置であって、
電磁誘導により前記2次コイルを介して前記電池システムに交流電力を供給するための磁界を発生する1次コイルを含む1次側共振回路と、
前記1次側共振回路の電流である1次側電流を検出する電流検出手段と、
前記1次側共振回路における直列共振コンデンサ調整回路およびインダクタンス調整回路のうち少なくとも一方と、
前記1次側共振回路に前記交流電力を供給するためのインバータ回路と、
前記電流検出手段により検出された前記1次側電流と狙い値より大きな値であるしきい値を比較し、前記1次電流が前記しきい値を超えた場合に、前記1次側電流が前記狙い値に近づくように、前記直列共振コンデンサ調整回路の静電容量、および、前記インダクタンス調整回路のインダクタンス、および、前記インバータ回路によって前記1次側共振回路に供給される前記交流電力の周波数、のうちの少なくとも1つを調整する特性調整手段と、
を備える電力供給装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力供給装置であって、
前記特性調整手段は、n段階(nは2以上の自然数)に亘って前記調整を実行可能に構成され、1段階の前記調整を行うごとに、前記1次側電流と前記しきい値との比較を行って、前記1次側電流が前記しきい値以下になるまで、前記調整を最大n回繰り返し、
前記調整が前記n回以内に前記1次側電流が前記しきい値以下になった場合には充電を継続する、電力供給装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電力供給装置であって、さらに、
n段階目の前記調整を行った後に、前記1次側電流が前記しきい値を超えている場合には、ユーザーに対して警告を行う警告手段を備える、電力供給装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の電力供給装置であって、
前記直列共振コンデンサ調整回路は、
標準コンデンサと、
前記標準コンデンサと直列に配列されている1つ以上の容量減少用コンデンサと、
前記容量減少用コンデンサを有効な状態と無効な状態とに切り替える容量減少用コンデンサ切替スイッチと、
を含み、
前記特性調整手段による前記調整は、前記容量減少用コンデンサ切替スイッチをオンからオフにすることにより前記容量減少用コンデンサを前記無効な状態から前記有効な状態に切り替えることによって、前記1次側共振回路の静電容量を小さくすることを含む、電力供給装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の電力供給装置であって、
前記インダクタンス調整回路は、
前記1次コイルの一部を有効な状態と無効な状態とに切り替えるインダクタンス切替スイッチを備え、
前記特性調整手段による前記調整は、前記インダクタンス切替スイッチをオフからオンにすることにより前記1次コイルの一部を前記有効な状態から前記無効な状態に切り替えることによって、前記1次側共振回路のインダクタンスを小さくすることを含む、電力供給装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の電力供給装置であって、
前記特性調整手段による前記調整は、前記インバータ回路によって前記1次側共振回路に供給される前記交流電力の周波数を小さくすることを含む、電力供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−130173(P2012−130173A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280117(P2010−280117)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(591206887)株式会社テクノバ (20)
【Fターム(参考)】